(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外周に挿入部又はおねじ部を有する筒状の継手本体部と、当該継手本体部の挿入部を内側にスライドさせるスライド部又はおねじ部に螺合するめねじ部を有する筒状のナット部とを備え、
継手本体部は内側に管材を仮保持のためのOリングとナット部側に向けて拡径した継手本体テーパ部を有し、
ナット部は内側に管材を仮保持のためのOリングと継手本体部に向けて拡径したナットテーパ部を有し、
前記継手本体テーパ部からナットテーパ部に跨って配設した筒状のシール部材を有し、
シール部材は内側に接続する一対の管材を両側の開口部からそれぞれ挿入した状態で継手本体部とナット部とのスライド縮少又は締め付けにより縮径し、両側の管材の外周部にそれぞれくい込む一対の抜止部と、前記外周部にそれぞれ圧接しシールする一対のシール部を有し、
前記シール部はシール部材の内周側に沿ってリング状に突設した内周側の突部と、前記シール部材の外周側であって、且つ前記内周側の突部に対応した位置に合せてリング状に突設した外周側の突部とを有することを特徴とする管継手。
【背景技術】
【0002】
空調設備に用いられる冷媒用配管の分野においては、冷媒による劣化や浸食を防ぐために、また高圧の冷媒に耐えられるように銅管等の金属管が一般的に使用されている。
銅管の接続には、従来からろう付け接合が行われてきたが、近年は火災等の恐れがあることから機械的接続可能な継手が採用されている。
現在市販されているものには、因幡電機産業株式会社製の商品名「ファイヤーレスジョイント」、東尾メック株式会社製の商品名「おっぞんくん」、株式会社サンドー製の商品名「ロックジョイント」等がある。
しかし、現在市販されているものはいずれも両側におねじ部を有する筒状の継手本体にそれぞれ銅管を差し込み、それぞれ個別のナットにて締め付け配管接続するものである。
このような継手では継手本体の他にナットが2つ必要であり、継手本体の両側におねじ加工等が必要となるために材料費や加工費が高くなる。
また、配管締め付け作業として2ヶ所のナットを締め付ける必要があるために作業工数が多くなる問題もあった。
特許文献1,2には、一組の継手本体と締め付け体からなるくい込み式管継手を開示するが、巻きコイルにて締め付けるものであり、リング状のパッキンが必要なことから冷媒等に耐えられるものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、部品点数が少なく締結作業が容易な管継手の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る管継手は、外周に挿入部又はおねじ部を有する筒状の継手本体部と、当該継手本体部の挿入部を内側にスライドさせるスライド部又はおねじ部に螺合するめねじ部を有する筒状のナット部とを備え、継手本体部は内側に
管材を仮保持のためのOリングとナット部側に向けて拡径した継手本体テーパ部を有し、
ナット部は内側に
管材を仮保持のためのOリングと継手本体部に向けて拡径したナットテーパ部を有し、前記継手本体テーパ部からナットテーパ部に跨って配設した筒状のシール部材を有し、シール部材は内側に接続する一対の管材を両側の開口部からそれぞれ挿入した状態で継手本体部とナット部とのスライド縮少又は締め付けにより縮径し、両側の管材の外周部にそれぞれくい込む一対の抜止部と、
前記外周部にそれぞれ圧接しシールする一対のシール部を有
し、前記シール部はシール部材の内
周側に沿ってリング状に突設した
内周側の突部
と、前記シール部材の外周側であって、且つ前記内周側の突部に対応した位置に合せてリング状に突設した外周側の突部とを有することを特徴とする。
本発明は継手本体部とナット部との間隔が相互に縮少することでシール部材が縮径する点に特徴があり、スライド締結でも螺合締結でもよい。
本発明に係る管継手は、空調設備等の冷媒配管や冷凍機用オイル配管等に好適であるが、用途に限定はない。
継手本体部,ナット部及びシール部材はいずれも金属製であり、例えば黄銅材や青銅材が用いられる。
冷媒配管やオイル配管として一般的に銅管が用いられている。
【0006】
本発明係る管継手においては、継手本体テーパ部とナットテーパ部とのテーパ角度が
異なる非対象になっているのが好ましい。
管継手の両側からそれぞれ管材を突き合せるようにして差し込み、継手本体部とナット部とを圧縮工具、レンチやスパナを用いて、相互に差し込み又は螺合すると継手本体部側は継手本体テーパ部に沿ってシール部材の端部が奥側に進入及び縮径し、一方ナット部側においてもナットテーパ部に沿ってシール部材の端部が奥側に進入及び縮径する。
スライド式に継手本体部とナット部を締結する場合にはそれらのテーパ部が相互対象形状になっていてもよいが螺合締結の場合に継手本体テーパ部とナットテーパ部のテーパ角が対称になっていると、
図7(a)に模式的に示すように継手本体側テーパによる締め込みトルクとナット側テーパによる締め込みトルクが同時に発生し、この二つを合せた合力が高くなる。
小型の管継手にあっては、これでも問題がないが比較的大型の管継手にあっては、合力が大きいと締め込み作業が大変となる。
これに対して、継手本体テーパ部とナットテーパ部とのテーパ角を
相互に異なる非対称に、例えば継手本体側テーパ角をナット側テーパ角より初めが緩く途中から急にすると、
図7(b)に模式的に示すようにナット側テーパの締め込みトルクが先に上昇し、後から本体側テーパの締め込みトルクが上昇するので、これらの合力がテーパ対称である
図7(a)の状態よりも小さくなり、締め込み作業がしやすくなる。
具体的なテーパ形状例と締め込みトルク上昇例を後述するが、前記抜止部が摺接するテーパ部と前記シール部が摺接するテーパ部とのテーパ角が異なる二段以上のテーパ形状になっていると締め込みトルクの合力を低くすることができる。
この場合に抜止部が縮径するテーパ形状を二段以上に設定してもよい。
【0007】
本発明に係る管継手においては、シール部はシール部材の内側に沿ってリング状に突設した突部であり、突部の突出方向がシール部材の
内部方向である奥側に向けて斜め方向に設定してあるのが好ましい。
筒状のシール部材の内側に設けたシール部が縮径により銅管等の管材の外周部に押圧接触し、メタルタッチによるシール部を形成する。
この場合にシール部をリング状にシール部材の内側全周にわたって突設した突部にするとともに、突部の突出方向が奥側に向けて斜めになっていると、次のような効果が得られる。
筒状のシール部材の端部がテーパ部に沿って縮径する際に、突部がやや奥側に倒れ込む方向に縮径力が作用するが、その際に突部が奥側に向けてやや斜めになっていると、突部の先端部が管材の外周面に接触しやすく、その締め込みトルクも小さくなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る管継手は、継手本体部とナット部を相互にスライド縮少又は螺合するだけで内側に配設した筒状のシール部材の縮径により一対の管材を接続することができる。
よって、部品点数が従来の管継手よりも少なく、材料の削減及び加工工数の低減が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る管継手の構造例を以下図面に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されない。
前半の実施例は螺合方式で後半の実施例はスライド方式である。
【0011】
管継手10の部品構成例を
図2に示し、
図3にシール部材13の外観図を示す。
図1は、管材1,2の接続構造を断面図で示す。
管継手10は、おねじ部11aを有する筒状の継手本体部11と、このおねじ部11aに螺合するめねじ部12aを有する筒状のナット部12からなり、その内側に筒状のシール部材13を配設する。
【0012】
本実施例に係るシール部材13は、
図3に示すように黄銅材からなる略円筒形状になっている。
シール部材13は、
図2に示すように左右対称になっているが、必ずしも左右対称である必要はない。
図1,2に示すようにシール部材13の両側の開口部は、それぞれ部分的に切欠部13cを形成した抜止部13bになっている。
抜止部13bは、先端が内側に向けた尖った歯状になっていて縮径により管材1,2の外周面にくい込み、管材1,2が抜け出すのを防止したロック機構となっている。
切欠部13cの切り欠き底部より少し奥側には、内周全周にわたってリング状に突設した突部13aを左右一対に有する。
突部13aは、突出方向がやや奥側、斜め方向に設定してあり、本実施例では
図1(c)に示すθが10〜30°の範囲に設定してある。
また、この突起13aの先端が管材の外周面と密接し、シール性が高くなるように頂部が曲面形状になっている。
また、継手本体テーパ部及びナットテーパ部に沿って摺接及び縮径しやすいようにシール部材13の外周側にも突部を形成し、内側の突部13aの両側には凹部13d,13eを形成した例になっている。
また、シール部材13の内側中央部には、溝状のストッパー装着部13fを形成し、
図6に示したような割リング状のストッパー部材14を装着してある。
このストッパー部材14は、管材1,2を突き合せた状態で管継手10を締め込むと、縮径する抜止部13bの歯が管材1,2の外周部にくい込み、この管材を内側(奥側)に引き込むことになり、その引き込み量を吸収するためのものである。
よって、ストッパー部材14は弾性材が好ましい。
本実施例では、樹脂製で製作し内側に変形しやすいように底部14aの両側から内側方向にストッパー部14b,14bを立設した断面コ字形状になっている。
【0013】
次にテーパ部の形状を
図2,
図4(b)に基づいて説明する。
継手本体部(
図4で左側)11の内側に形成したテーパ形状のテーパ角と、ナット部(
図4で右側)12の内側に形成したテーパ形状のテーパ角とが異なるように設定してある。
継手本体部11側のテーパは、ナット部12から順にシール部材13のシール突部13aの外周側の突部が摺接する第1テーパ部11b,初めに抜止部13bの外周先端が摺接する水平又は水平に近い緩やかなテーパ角の第2テーパ部11c,やや急な第3テーパ部11d,この第3テーパ部11dよりもやや緩やかな第4テーパ部11eを有し、それより奥側は水平部11fとなっている。
ナット部12の内側に形成したテーパは、継手本体部11側からシール部材のシール部13aの外周側突部が摺接する第1テーパ部12b,水平又は緩やかなテーパ角の第2テーパ部12c,この第2テーパ部12cよりも急なテーパ角を有する第3テーパ部12dを有し、その次に水平部12eを有する。
【0014】
管継手10に両側から管材1,2を差し込んだ状態を
図1(b),
図4(a),(b)に示す。
差し込んだ管材が締め込み前に抜けるのを防止すべく、本実施例ではナット部12の内側にOリング16及び継手本体部11の内側にOリング15を設けた例になっている。
このOリング15,16は、ナット部を締め込む前に管材が抜け出すのを防止した仮保持機能を有するものである。
この状態からレンチ等を用いて、
図4(c)に示すように継手本体部11とナット部12を締め込む。
なお、継手本体部11とナット部12の外形部には、レンチ等が引っ掛かるように六角形状部11g,12fを有する。
図4,5に示した実施例はナット部12のナット側テーパが先に締め込まれ、次に継手本体部11の本体側テーパが締め込まれる例であるが、本発明は同時に締め込まれるのをさけて締め込み全体のトルクを低減したものであり、どちらが先に締め込まれてもよい。
図4(c)に示すように締め込み初めはナット側テーパの第3テーパ部12dにより、抜止部13bが締め込まれるように、本体側テーパの第3テーパ部11dより緩やかなテーパ角になっている。
ナット側の抜止部13bの歯が、管材1の外周面にくい込み管材1を引き込みながら緩め込ませる。
ナット側が本体側より先にシール部材を縮径し、ナット側の締め込みトルクが上昇する。
ナット側の抜止部13bが水平部12eに達するにつれて
図4(d)に示すようにナット側のシール部13aが第1テーパ部12bに沿って締め込まれ、トルクが発生するが抜止部13bが水平部12eに位置するので抜止部13bでのトルク上昇は小さい。
この際に同時的に
図4(d)に示すように本体側テーパの第3テーパ部11d,第4テーパ部11eにより本体側の抜止部13aが管材2の外周面にくい込み管材2を引き寄せる。
ナット側のシール部13aが水平に近い第2テーパ部12cに達すると、このシール部13aでのトルク上昇が小さく、本体側のエール部13aか本体側の第1テーパ部11bに沿って締め込まれるので本体側の締め込みトルクが上昇する。
これにより、
図7(b)のグラフに示すようにナット側と本体側とでのトルク上昇カーブに差が生じ合力が小さくなる。
水平部はナットの締め込み、バラツキを吸収する作用があり、ナットの締め込みにより、管材1,2が引き込まれるが割リングからなるストッパー部材14がこの引き込み量を吸収する。
継手本体部11の第1テーパ部11bの傾斜面に直角になるようにシール部13aの突出方向の角度θを合せ、ナット部12の第1テーパ部12bの傾斜面に直角になるようにシール部13aの突出方向の角度θをそれぞれ合せてあるので、突部13aが管材の外周面に圧接しやすい。
【0015】
次に継手本体部とナット部とをスライド締結し、シール部材を縮径することで管材を突き合せ連結する管継手の構造例を説明する。
図8は第2の実施例として管材1,2を突き合せ連結した状態の管継手100の構造例を示す。
部品の構成例を
図14に示す。
図1に示した実施例と主に相違するのは継手本体部111とナット部112とがスライド締結する点にあり、シール部材13Aの縮径に関してはほぼ同様である。
ただし、螺合締結の場合には継手本体部とナット部のテーパー形状が非対象であることが望ましいのに対して、スライド締結の場合には両方のテーパー形状が対象であってもよい。
スライド締結の場合は
図10に例を示すように圧縮工具20が必要になるが、ねじ部の廻し締め付き時に生じる管材へのねじれ力がなくなる。
【0016】
図8,9に示すように、継手本体部111は筒状の挿入部111aを有し、ナット部112はこの挿入部111aを内側にスライド移動させる筒状のスライド部112aを有する。
このスライド部112aはナット部112に一体的に形成してあり、軽量化が図られている。
継手本体部111の挿入部111aの外周部には先端側突部R
1と根元側突部R
2の2カ所に突部を形成してある。
一方、スライド部112aの内周部には突部が奥方向に押し込まれやすいようにテーパー部aを形成した奥側に係止部bを形成してある。
この係止部bより奥側は内径が係止部の内径よりも大きい拡径部cとなっている。
これにより
図9(a)、
図12(b)に示すように管材の連結前にあっては、突部R
1が係止部bと干渉し、ナット部から継手本体部が脱落するのを防止する。
図9(b)に示すように両側から管材1と2を突き合せ挿入し、継手本体部111の押圧部211とナット部112の押圧部212間を工具等で挟み込むように圧縮すると
図9(c)に示すようにテーパー部に沿ってシール部材13Aのシール部13aと抜止部13bが縮径し、前述した第1の実施例と同様に締結連結される。
このように第2の実施例では、スライド部112aの内側に挿入部111aを差し込むだけで内側に設けたテーパー部に沿って、シール部材13Aのシール部13aと抜止部13bが縮径する。
従って、第1の実施例がパイプレンチ等にてねじ込む際のねじれ力に耐えるだけの強度が継手本体部及びナット部に要求されるのに対して、この第2の実施例は管材を連結保持できるだけの強度にて充分であることから、肉厚を薄く設計でき、小型で軽量化された管継手となる。
第2の実施例においてはシール部材13Aの内周部中央にリング状の突部13gを一体的に形成し、管材の突き合せストッパー部とした。
また、
図8(b)に示すようにシール部材13Aの外周中央部に段差状の位置合せ部13h,13iを対向して形成し、挿入部111a側の押圧部11iとスライド部112a側の当接部12gとの間に、この位置合せ部が挟み込まれるようにした。
これにより差し込み連結部のシール部材13Aの位置ずれを防止することができ、シール部13a,抜止部13bの押圧力が安定する。
継手本体部111とナット部112とが差し込み締結された状態では、継手本体部111の外周部に設けた根元側の突部R
2がスライド部112aの内周部に設けた凹部dに位置し、抜止係止部eと係合する。
この際にスライド部112aの先端部fが継手本体部111の段差部11hに当たり、締結完了状態が目視で確認できるようになっている。
また、この段差部11hと先端部fとの間に沿って予めシール剤を塗布しておいてもよい。
【0017】
スライド締結工具20はナット部112と継手本体部111に相対的にスライド締結できるものであればその構造に制限はないが、
図10に一例を挙げる。
圧縮部23,24の間隔を支杆部21とハンドル部22の開閉操作により行う工具の例である。
この圧縮部23,24にて管継手の押圧部211,212を挟み挿入部をスライド部に差し込むことで管継手100を用いて管材1,2を連結する。
その動きを
図13に示す。