特許第6358909号(P6358909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特許6358909-作業車両 図000002
  • 特許6358909-作業車両 図000003
  • 特許6358909-作業車両 図000004
  • 特許6358909-作業車両 図000005
  • 特許6358909-作業車両 図000006
  • 特許6358909-作業車両 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6358909
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/025 20060101AFI20180709BHJP
   A01D 41/12 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   F01N3/025 101
   A01D41/12 E
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-195574(P2014-195574)
(22)【出願日】2014年9月25日
(65)【公開番号】特開2016-65519(P2016-65519A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2016年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】田部 彩
(72)【発明者】
【氏名】池田 博
【審査官】 小笠原 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−145056(JP,A)
【文献】 特開2012−255443(JP,A)
【文献】 特開2012−013027(JP,A)
【文献】 特開2009−079501(JP,A)
【文献】 特開2013−113263(JP,A)
【文献】 特開2009−257323(JP,A)
【文献】 特開2009−138703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/025
F01N 3/023
A01D 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンと、前記ディーゼルエンジンから排出された排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備えた排出ガス浄化装置と、作業装置とを備えた作業車両であって、
前記作業車両の状態を示す車両状態データを取得する車両状態データ取得部と、
前記排出ガス浄化装置のフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼させて除去するフィルタ再生処理の必要度に基づいて再生処理要求を出力するフィルタ再生要求部と、
前記再生処理要求と前記車両状態データとに基づいて前記フィルタ再生処理の始動指令及び停止指令を出力する浄化処理判定部と、
前記始動指令及び前記停止指令に応答して、自動的に前記フィルタ再生処理を実行するための機器を制御する機器制御部と、を備え
前記車両状態データにはエンジン回転数データが含まれており、
前記浄化処理判定部は、エンジン回転数がアイドリング回転数より高い基準エンジン回転数を超えていることをエンジン回転数条件とし、前記エンジン回転数条件が満たされているとともに前記再生処理要求が出力されている場合前記始動指令を出力し、前記エンジン回転数条件が満たされてない場合、または前記再生処理要求が出力されていない場合前記停止指令を出力し、
前記フィルタ再生処理が行われている間に、前記エンジン回転数が前記エンジン回転数条件を下回った場合、前記フィルタ再生処理を中断させる前記停止指令は所定遅延時間の経過後に出力される作業車両。
【請求項2】
前記フィルタ再生処理の中断時に、前記エンジン回転数条件が満たされることによる前記フィルタ再生処理の再開のための始動指令は、即時に出力される請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記作業装置が脱穀装置であり、前記車両状態データには前記脱穀装置が駆動中であることを示す脱穀ONデータが含まれており、前記浄化処理判定部は、脱穀ONデータを受け取っている間、強制的に前記停止指令を出力する請求項1または2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記再生処理要求の出力にもかかわらず前記始動指令が出力されない状態が所定時間続いた場合、強制再生準備モードが設定され、手動強制再生処理の実行を促す再生警告が報知される請求項1からのいずれか一項に記載の作業車両。
【請求項5】
前記強制再生準備モードにおいて、前記車両状態データに基づいて車両の駐車状態が判定された場合、前記手動強制再生処理の実行を指令する駐車再生開始操作スイッチを有効状態にする請求項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンと、ディーゼルエンジンから排出された排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備えた排出ガス浄化装置と、作業装置とを備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題を改善及び解決するために、ディーゼルエンジンなどに対する排出ガス規制が強化されている。建設機械や農業機械などの作業車両においても、このような排出ガス規制に対処するために排出ガスに含まれる粒子状物質(パーティキュレートマター)を低減させる技術が様々に開発されている。例えば、排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集する排出ガス浄化装置が作業車両に搭載されている。排出ガス浄化装置は、排出ガスを内部に設けたディーゼルパーティキュレートフィルタ(以下単にDPFと称する)に通過させて粒子状物質を捕集する。この捕集された粒子状物質は排出ガス浄化装置のDPFに徐々に堆積するので、DPFが目詰まりを起こして排気系の空気抵抗が大きくならないように、粒子状物質を適宜除去してDPFを再生しなくてはならない。
【0003】
DPFの再生制御の1つが特許文献1で開示されている。この再生制御では、DPFに堆積した粒子状物質の堆積量が所定値以上となったときに、車両状態にかかわらず、例えば車両状態がDPF再生処理に十分に適合していなくても、堆積した粒子状物質を自動的に燃焼させて除去する自動再生が行われる。但し、自動再生は粒子状物質の堆積量が堆積量しきい値以上になったときに実行されるが、自動再生の開始時からの所定時間内に、粒子状物質の堆積量が堆積量しきい値よりも低い警告解除しきい値未満になっていなければ、ディーゼルエンジンの回転数を上昇させるべく警告が発せられる。なお、特許文献1では、DPF再生処理が実行されると、車両状態に応じてDPFの再生が中断することは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−72319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記実情に鑑み、本発明は、排出ガス浄化装置のフィルタにおける粒子状物質の堆積状態のみならず、車両の状態も考慮して、フィルタ再生処理の始動と停止とが制御される技術が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ディーゼルエンジンと、前記ディーゼルエンジンから排出された排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備えた排出ガス浄化装置と、作業装置とを備えた、本発明による作業車両は、前記作業車両の状態を示す車両状態データを取得する車両状態データ取得部と、前記排出ガス浄化装置のフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼させて除去するフィルタ再生処理の必要度に基づいて再生処理要求を出力するフィルタ再生要求部と、前記再生処理要求と前記車両状態データとに基づいて前記フィルタ再生処理の始動指令及び停止指令を出力する浄化処理判定部と、前記始動指令及び前記停止指令に応答して、自動的に前記フィルタ再生処理を実行するための機器を制御する機器制御部とを備え
前記車両状態データにはエンジン回転数データが含まれており、前記浄化処理判定部は、エンジン回転数がアイドリング回転数より高い基準エンジン回転数を超えていることをエンジン回転数条件とし、前記エンジン回転数条件が満たされているとともに前記再生処理要求が出力されている場合前記始動指令を出力し、前記エンジン回転数条件が満たされてない場合、または前記再生処理要求が出力されていない場合前記停止指令を出力し、
前記フィルタ再生処理が行われている間に、前記エンジン回転数が前記エンジン回転数条件を下回った場合、前記フィルタ再生処理を中断させる前記停止指令は所定遅延時間の経過後に出力される。
【0007】
この構成によれば、フィルタ再生処理の始動は、フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼させて除去するフィルタ再生処理の必要度と車両の状態との2つの条件に基づいて行われる。このため、フィルタ再生処理の必要度が高くなれば、自動的にフィルタ再生処理が実行されるのではなく、車両状態がフィルタ再生処理に不適な場合には、そのフィルタ再生処理は、遅延される。また、フィルタ再生処理の停止も、フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼させて除去するフィルタ再生処理の必要度と車両の状態との2つの条件に基づいて行われる。このため、フィルタ再生処理の実行中であっても、車両状態がフィルタ再生処理に不適な状態となれば、そのフィルタ再生処理は、中断される。これにより、より適切なフィルタ再生処理が可能となる。
【0008】
一般にはDPFと呼ばれている排出ガス浄化装置のフィルタに捕集された粒子状物質は、高温のエンジン排気ガスによって燃焼させることで除去されるので、フィルタ再生処理を行うためにはエンジン排気ガス温度を上昇させる必要がある。アイドリング回転数を超える、高い基準エンジン回転数によって、フィルタ再生処理の要求されるエンジン排気ガス温度が得られる。この基準回転数はエンジン仕様に基づいて予め設定することが可能である。このことから、適切なフィルタ再生処理を行うため、本発明では、前記車両状態データにはエンジン回転数データが含まれており、前記浄化処理判定部は、エンジン回転数がアイドリング回転数より高い基準エンジン回転数を超えていることをエンジン回転数条件とし、前記エンジン回転数条件が満たされているとともに前記再生処理要求が出力されている場合、前記始動指令を出力する。また、前記浄化処理判定部は、前記エンジン回転数条件が満たされてない場合、または前記再生処理要求が出力されていない場合前記停止指令を出力する。
【0009】
エンジン回転数は、作業走行や非作業走行において、例えば、旋回走行や障害物の回避走行時には一時的に低下する。そのような時でも、常に、エンジン回転数条件が満たされないとしてフィルタ再生処理を中断することは適切ではない。このため、エンジン回転数条件が満たされずに、フィルタ再生処理が始動待機または中断されていた状況で、エンジン回転数が上昇してエンジン回転数条件が満たされた場合、運転者が意識的にエンジン回転数を上昇させた可能性が高いので、即時にフィルタ再生処理を実行することが好ましい。
【0010】
フィルタ再生処理では、エンジンが高速回転し、排ガス温度が高温となる。このため、フィルタ再生処理は、低速走行中より、高速走行中に行われることが好ましい。本発明の作業車両が、作業装置として脱穀装置を装備したコンバインである場合、低速走行となる刈取り脱穀作業中でのフィルタ再生処理を避けることは1つの好適な方策である。前記作業装置が脱穀装置であり、前記車両状態データには前記脱穀装置が駆動中であることを示す脱穀ONデータが含まれている場合、前記浄化処理判定部は、脱穀ONデータを受け取っている間、強制的に前記停止指令を出力するように構成することは、好適な実施形態の1つである。
【0011】
本発明では、フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼させて除去するフィルタ再生処理の必要度が高くても、車両の状態が適切でなければ、フィルタ再生処理は行われない。しかしながら、フィルタ再生処理が必要であるにもかかわらず、フィルタ再生処理が長時間行われなければ、フィルタの目詰まりが増加し、排出ガス浄化装置の性能悪化やエンジン性能の悪化を導く。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記再生処理要求の出力にもかかわらず前記始動指令が出力されない状態が所定時間続いた場合、強制再生準備モードが設定され、手動強制再生処理の実行を促す再生警告が報知される。この報知によって、運転者が手動強制再生処理を実行するための操作を行うことでフィルタ再生処理が始動し、フィルタの目詰まりが解消される。
【0012】
手動強制再生処理は、運転者が自ら操作デバイスを用いてフィルタ再生処理を起動させるものであるが、フィルタ再生処理ではエンジンが高速回転となるので、運転者がフィルタ再生処理をしっかり意識していることが重要であり、このため駐車状態で行うことが好ましい。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記強制再生準備モードにおいて、前記車両状態データに基づいて車両の駐車状態が判定された場合、前記手動強制再生処理の実行を指令する駐車再生開始操作スイッチを有効状態にするように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による作業車両に採用されている排出ガス浄化装置のフィルタ再生処理の基本原理を説明する模式図である。
図2】本発明による作業車両の実施形態の1つであるコンバインの側面図である。
図3】エンジン及び排出ガス浄化装置を示す平面図である。
図4】エンジン及び排出ガス浄化装置を示す左側面図である。
図5】フィルタ再生処理制御システムを説明する模式図である。
図6】フィルタ再生処理制御システムにおける制御の流れの一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による作業車両の具体的な実施形態を説明する前に、図1を用いて、本発明を特徴付けている、排出ガス浄化装置のフィルタ再生処理の基本原理を説明する。この排出ガス浄化装置は、ディーゼルエンジン(以下単にエンジンと略称する)から排出された排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備えており、フィルタ再生処理を通じて、フィルタに堆積した粒子状物質が燃焼して、フィルタから除去される。このため、フィルタ再生処理では、エンジンが高速回転させられ、高温の排気ガスがフィルタに送り込まれる。このフィルタは、一般にはDPFと呼ばれている。
【0015】
図1では、フィルタ再生処理を制御する制御系の機能ブロック図の一例が示されている。この制御系には、入力信号処理部71、機器制御部72、車両状態データ取得部61、フィルタ再生要求部62、浄化処理判定部63が含まれている。入力信号処理部71は、車両に装備されている機器の状態を検出するセンサやスイッチであるセンサ・スイッチ群9からのアナログ信号やディジタル信号を入力して、AD変換やフォーマット変換などの必要な前処理を施す。この信号には、DPFに関する情報であるDPF関連データや車両状態データが含まれる。車両状態データとしては、例えば、エンジン回転数、ブレーキ状態データ、車速データ、作業装置状態データなどが挙げられる。
【0016】
車両状態データ取得部61は、入力信号処理部71から車両の状態を示す車両状態データを受けとって、各機能部で要求される内容に変換して必要な機能部に送る。フィルタ再生要求部62は、排出ガス浄化装置のフィルタ(DPF)に堆積した粒子状物質を燃焼させて除去するフィルタ再生処理の必要度を算定し、算定された必要度が予め設定されたしきい値を超えた場合、再生処理要求を出力する。必要度は、入力信号処理部71から受け取るDPF関連データをパラメータとして、予め設定されている再生必要度算定アルゴリズムに基づいて算定される。DPF関連データには、再生必要度算定アルゴリズムの入力パラメータとなる、温度、圧力、使用時間などが含まれている。
【0017】
浄化処理判定部63は、フィルタ再生要求部62から出力された再生処理要求と車両状態データ取得部61から出力された車両状態データとに基づいてフィルタ再生処理の始動指令及び停止指令を出力する。機器制御部72は、浄化処理判定部63から始動指令を受け取ると、フィルタ再生処理を実行するために、フィルタ再生処理にかかわる機器に必要な制御信号を与える。逆に、浄化処理判定部63から停止指令受け取ると、フィルタ再生処理に関連する機器にフィルタ再生処理の実行を中止するための制御信号を与える。
【0018】
浄化処理判定部63には、エンジン回転数がアイドリング回転数より高い基準エンジン回転数を超えていることをエンジン回転数条件とし、フィルタ再生処理の実行条件の少なくとも1つとして、採用することができる。その場合には、車両状態データ取得部61は、入力信号処理部71から車両状態データの1つとして、エンジン回転数データを受け取る。浄化処理判定部63は、再生処理要求が出力されているとともに、エンジン回転数がしきい値として基準エンジン回転数を超えている場合、始動指令を出力する。基準エンジン回転数は、エンジン仕様やDPF仕様によっても異なるが、一般的には、2000RPM程度が好ましい。逆に、再生処理要求が出力されていても、エンジン回転数が基準エンジン回転数以下であれば、フィルタ再生処理は実行されない。フィルタ再生処理の実行中にエンジン回転数が基準エンジン回転数以下になれば、機器制御部72にフィルタ再生処理の停止指令が出力され、フィルタ再生処理は中断される。但し、作業車両の場合、ブレーキ操作などによって、短期的にエンジン回転数が下降することは少なくないので、短期間でエンジン回転数が再び基準エンジン回転数を超えるかどうかを待ち、基準エンジン回転数以下のエンジン回転数が所定時間持続した段階で、停止指令を出力するように構成するとよい。停止指令の出力を遅延させることになるこの所定時間は、1分以内、例えば20秒から30秒が適切であるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0019】
フィルタ再生要求部62が再生処理要求を長期にわたって出力しているにもかかわらず、車両の状態に基づくフィルタ再生処理の実行条件が満たされないことから、フィルタ再生処理が実行されないという不都合が生じ得る。この不都合を避けるため、図1で示されている例では、手動強制再生処理管理部64が備えられている。手動強制再生処理管理部64は、フィルタ再生要求部62から再生処理要求の出力にもかかわらず、浄化処理判定部63から始動指令が出力されない状態が所定時間続いた場合、強制再生準備モードを設定する。この強制再生準備モードでは、報知部73を通じて手動強制再生処理の実行を促す再生警告が報知される。具体的には、スピーカを通じて音声で手動強制再生処理を促してもよいし、あるいは表示パネルに手動強制再生処理を促すメッセージを表示してもよい。
【0020】
このような手動による強制的なフィルタ再生処理は、車両を駐車させて緊急避難的に行うことが好ましい。例えば、通常は非アクティブ(無効化)に設定されており、駐車ブレーキの作動や変速機構のニュートラル設定などを条件として、アクティブ(有効化)となる駐車再生開始操作スイッチ90を設ける。運転者が、アクティブとなった駐車再生開始操作スイッチ90を操作することで、フィルタ再生処理が実行される。これにより、不用意に、駐車再生開始操作スイッチ90が操作されてしまうことによる、意図に反したフィルタ再生処理の実行が抑制される。
【0021】
次に、図面を用いて、本発明による作業車両の具体的な実施形態の1つを説明する。図2は、作業車両の一例であるコンバインの側面図である。図3はそのコンバインのエンジン及び排出ガス浄化装置を示す平面図であり、図4エンジン及び排出ガス浄化装置を示す左側面図である。
【0022】
このコンバインは自脱型コンバインであり、クローラ式の走行装置1と、走行装置1によって支持される機体フレーム2とを備えている。機体フレーム2の前部には、植立穀稈を刈り取る昇降可能な刈取部3が備えられている。機体フレーム2の後部には、刈取穀稈を脱穀する脱穀装置4と穀粒を貯留する穀粒タンク5とが、左右方向に並べて配置されている。機体フレーム2の前部であって穀粒タンク5の前方には、運転者が搭乗する運転キャビン6が備えられている。運転キャビン6の下方には、エンジンユニット7が備えられている。穀粒タンク5には、穀粒タンク5内の穀粒を排出するアンローダ8が備えられている。
【0023】
刈取部3は、左右向きの揺動軸心周りで揺動可能に構成されている。刈取部3は、植立穀稈を引き起こす引起装置10Aと、引起穀稈を刈り取る刈取装置10Bと、刈取穀稈を脱穀装置4に搬送する搬送装置11と、を有している。引起装置10Aは、引起支持パイプ12を介して、刈取入力軸(図示省略)を収容する刈取ギヤケース13に支持されている。刈取部3の上部は、前防塵カバー14及び後防塵カバー15によって上方側から覆われている。
【0024】
図3に示すように、運転キャビン6には、運転者が着座する運転座席16が設けられている。運転座席16の前方側には、速度計17等の計器類を有するフロントパネル18が設けられている。運転座席16の左方側には、変速レバー19等の操作レバーを有するサイドパネル20が設けられている。運転キャビン6の右側部には、運転者が乗り降りする乗降口21が設けられている。乗降口21の下方側には、乗り降りの際の踏み台となる主ステップ22及び補助ステップ23が設けられている。
【0025】
図3及び図4に示すように、エンジンユニット7は、ディーゼルエンジンであるエンジン24と、このエンジン24からの排気を排出する排気管ユニット25と、排出ガス浄化装置26と、を有している。本実施形態では、排出ガス浄化装置26として、排気に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタいわゆるDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)を備えている。
【0026】
排出ガス浄化装置26は、その長手方向が前後方向となる姿勢で、エンジン24の上部に支持されている。排出ガス浄化装置26の前端下部には、エンジン24からの排気が流入する流入口26aが設けられている。流入口26aには、エンジン24のうち排気を排出する排出口24aが連通接続されている。排出ガス浄化装置26の後端左側部には、排出ガス浄化装置26による処理後の排気が流出する流出口26bが設けられている。流出口26bには、排気管ユニット25が連通接続されている。
【0027】
排出ガス浄化装置26のDPFに堆積した粒子状物質を燃焼させて除去するフィルタ再生処理を行う必要がある。このコンバインに搭載された排出ガス浄化装置26に対するフィルタ再生処理は図1を用いて説明した基本原理を流用している。図5には、エンジン24とその排気系と模式図と、フィルタ再生処理の制御に関係する機能部を示す機能ブロック図が示されている。
【0028】
図5に示すように、エンジン24のシリンダの上部には、当該シリンダ内に空気を導入するための開口である吸気ポート241が形成されるとともに、燃焼後のガス(燃焼ガス)をシリンダから排出するための開口である排気ポート242が形成されている。さらにシリンダの上部には、吸気ポート241を開閉するための吸気バルブ243と、排気ポート242を開閉するための排気バルブ244とが設けられている。
【0029】
吸気ポート241には、シリンダ内に導入される空気の流路となる管状の吸気マニホールド245が接続されている。また、排気ポート242には、シリンダから排出される燃焼ガスの流路となる管状の排気管ユニット25が接続されている。
【0030】
排気管ユニット25の途中に排出ガス浄化装置26が設けられている。排出ガス浄化装置26は、通過する排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集して浄化するものである。つまり、シリンダから排気ポート242を経て排出された燃焼ガスは、排出ガスとなって排気管ユニット25を通り、排出ガス浄化装置26で浄化される。
【0031】
この排出ガス浄化装置26は、内部にDPF260を有している。DPF260は、排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するためのフィルタであり、例えば、セラミック製で断面がハニカム構造となるように形成されている。つまり、DPF260の一端から他端にわたる長手方向に沿って、例えば六角柱のストロー状の多角形貫通孔が多数隣接しており、各貫通孔内には、DPF260の長手方向に沿って所定間隔で多孔質の隔壁が設けられている。
【0032】
DPF260の流入口から進入した排出ガスは、貫通孔内に形成された多孔質の隔壁を通過しつつDPF260の流出口へ向かって流れる。排出ガスに含まれる粒子状物質は、多孔質の隔壁に付着したり、貫通孔の内壁に付着したりすることでDPF260に捕集され、DPF260によって浄化された排気ガスは外部へ放出される。なお、エンジン24の排気系には、図示はしないが、DPF260の入側とエンジン24との間に、粒子状物質中の燃料及び燃焼ガス中の窒素酸化物を酸化するための酸化触媒(ディーゼル用酸化触媒)などが設けられている。
【0033】
排出ガス浄化装置26に対するフィルタ再生処理は、この実施形態では、フィルタ再生制御ユニット60から制御指令に基づく、エンジン制御ユニット70を介してのエンジン・排気系の制御によって実行される。つまり、フィルタ再生処理は、通常時とは異なるエンジン24の制御によって行われるが、その詳細はよく知られているので、ここでは省略される。また、主に、フィルタ再生処理の始動及び停止を管理するフィルタ再生制御ユニット60の構成及び機能は、図1を用いた説明が基本的に流用される。但し、図5では、機器制御部72の制御要素として、コンバインに搭載されている作業装置の1つである脱穀装置4、センサ・スイッチ群9に含まれる作業装置用スイッチとして、脱穀装置4の動作をON・OFFする脱穀スイッチ91が例示されている。
【0034】
図5を用いて説明されたフィルタ再生処理制御システムにおける制御の流れの一例が図6に示されている。
このフィルタ再生処理では、まず、フィルタ再生要求部62において、フィルタ再生処理の必要度としてのPM堆積量が算定される(#01)。この算定の一例として、例えば、DPF260の入側の排気圧力と、DPF260の出側の排気圧力との差圧によりPM堆積量を推定することができる。詳しくは、フィルタ再生制御ユニット60のフィルタ再生要求部62は、排出ガス浄化装置26の流入側付近の排気圧力を検出する流入側圧力センサ261が検出した排気圧力と、排出ガス浄化装置26の流出側付近の排気圧力を検出する流出側圧力センサ262が検出した排気圧力とから排出ガス浄化装置26の流入側と流出側での排気圧力の差からPM堆積量を算定する。PM堆積量が多いと排気圧力の差である差圧も大きく、PM堆積量が少ないと排気圧力の差圧も小さいという関係が利用される。なお、この実施形態では、排気圧力の差からPM堆積量を算定しているが、本発明はこれに限定されない。エンジン24の稼働時間や燃料の消費量などによりPM堆積量、つまりフィルタ再生処理の必要度を算定することも可能である。フィルタ再生処理の必要度の算出方法はどのようなものであってもよい。
【0035】
算定されたPM堆積量(フィルタ再生処理の必要度)が前もって設定されているしきい値を超えているかどうかチェックされる(#02)。ここで、PM堆積量がしきい値以上であれば(#02、Yes)、さらに始動フラグが「0」であるかどうかチェックされる(#03)。さらに始動フラグが「0」であれば(フィルタ再生処理が停止中)(#03、Yes)、さらには必要フラグが「0」であるかどうかチェックされる(#04)。必要フラグが「0」(フィルタ再生処理が不要)であれば(#04、Yes)、警告を行って手動強制再生処理に移行するための猶予時間を計測する警告タイマーがスタートし(#05)、必要フラグに「1」が入る(#06)。始動フラグが「0」でない場合フィルタ再生処理が実行中なので(#03、No)、及び必要フラグが「0」でない場合、再生処理が要求されているので(#04、No)、ステップ#05と#06の処理が省略される。
【0036】
ステップ#02で、PM堆積量がしきい値以下であれば(#02、No)、さらに始動フラグが「1」であるかどうかチェックされる(#11)。始動フラグが「1」(フィルタ再生処理が実行中)であれば(#11、Yes)、浄化処理判定部63によって停止指令が出力される(#12)。さらには必要フラグに「0」が入り(#13)、始動フラグに「0」が入る(#14)。その後、ステップ#01に戻る。ステップ#11で始動フラグが「1」でなければ(#11、No)、フィルタ再生処理が停止中であるので、直接ステップ#01にジャンプする。
【0037】
次に、車両状態データ取得部61がエンジン回転数や脱穀スイッチ91の状態などの車両状態データを取得する(#20)。取得した車両状態データに基づいて、現状の車両状態(例えばエンジン回転数)がフィルタ再生処理に適した状態であるかどうかチェックされる(#21)。車両状態がフィルタ再生処理に適していれば(#21、Yes)、さらに始動フラグが「1」であるかどうかチェックされる(#22)。始動フラグが「1」でなければ(フィルタ再生処理がまだ実行されていなければ)(#22、No)、浄化処理判定部63によって始動指令が出力される(#23)。これにより、フィルタ再生処理が実行されるので、始動フラグに「1」が入り(#24)、警告タイマーがリセットされる(#25)。ステップ#22のチェックで始動フラグが「1」であれば(#22、Yes)、フィルタ再生処理が実行中であるので、ステップ#01にジャンプする。
【0038】
ステップ#21で車両状態がフィルタ再生処理に適していなければ(#21、No)、さらに始動フラグが「1」であるかどうかチェックされる(#31)。始動フラグが「1」(フィルタ再生処理が実行中)であれば(#31、Yes)、浄化処理判定部63によって停止指令が出力される(#32)。さらに、始動フラグに「0」が入り(#33)、ステップ#01に戻る。
【0039】
ステップ#31で始動フラグが「1」でなければ(#31、No)、必要フラグが「1」であるかどうかのチェックされる(#41)。必要フラグが「1」であれば、さらに警告タイマーがタイプアップしているかどうかチェックされる(#42)。ステップ#41で必要フラグが「1」でなければ、及びステップ#42で警告タイマーがタイプアップしていなければ、ステップ#01に戻る。ステップ#41で必要フラグが「1」であり、及びステップ#42で警告タイマーがタイプアップしていれば、フィルタ再生処理の緊急度が高まっているので、警告強制再生処理が実行される(#50)。
【0040】
警告強制再生処理において、報知部73を通じて手動強制再生処理の実行を促す再生警告が報知される。具体的には、フロントパネル18に配置されている表示パネルに手動強制再生処理を促すメッセージが表示される。これにより、運転者は、コンバインをフィルタ再生処理に適した状態にし、駐車再生開始操作スイッチ90を押すことで、例外処理としてのフィルタ再生処理が実行される。
【0041】
次に、フィルタ再生処理の一例を説明する。まず、エンジン24に吸気スロットルの絞りを指令する信号が出力され吸気スロットルの絞りを行うとともにポスト噴射を行い、排出ガス浄化装置26の温度を、例えば、600℃になるように昇温する。このようなDPF再生によって、DPF260に堆積した粒子状物質は燃焼し、PM堆積量は減少する。再生モードにおいて、PM堆積量が大幅に減少したとき、例えばフィルタ再生処理を実行する前と比べてPM堆積量が80%減少したとき、DPF再生は終了する。
【0042】
〔別実施の形態〕
図5で示された機能部の区分けは一例であり、それぞれの機能部の統合や、各機能部の分割は任意である。本発明の制御機能が実現するものであればどのような構成でもよいし、またそれらの機能は、ハードウエアまたはソフトウエアあるいはその両方で実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、自脱型コンバインの他、普通型コンバイン、トラクタ、田植機等の農業用作業車両やバックホウやホイルローダ等の建設用作業車両にも利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
4 :脱穀装置(作業装置)
24 :ディーゼルエンジン
24a :排出口
25 :排気管ユニット
26 :排出ガス浄化装置
260 :DPF
60 :フィルタ再生制御ユニット
61 :車両状態データ取得部
62 :フィルタ再生要求部
63 :浄化処理判定部
64 :手動強制再生処理管理部
70 :エンジン制御ユニット
71 :入力信号処理部
72 :機器制御部
73 :報知部
90 :駐車再生開始操作スイッチ
91 :脱穀スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6