【実施例】
【0023】
以下、実施例により、本発明についてさらに具体的に説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
実施例1(底部/胴部:PPホモポリマー/EPBターポリマー)
底部材用ラミネート紙:坪量250g/m
2の原紙の表面に、コロナ放電処理を行ないながら押出ラミネート機のTダイより285℃でポリプロピレンホモポリマー(PHA03A:サンアロマー社製;融点164℃,MFR42g/10min,密度0.9g/cm
3)を押し出し、チルロールにより冷却しながら加圧して、ポリプロピレンホモポリマーを厚さ30μmとなるように積層し、底部材用のPPホモポリマーラミネート紙を得た。
【0025】
胴部材用ラミネート紙:坪量300g/m
2の原紙の表面に、コロナ放電処理を行ないながら押出ラミネート機のTダイより285℃でエチレン−プロピレン−1−ブテンターポリマー(FL02C:日本ポリプロ社製,融点138℃,MFR20g/10min,密度0.9g/cm
3)を押し出し、チルロールにより冷却しながら加圧して、エチレン−プロピレン−1−ブテンターポリマーを厚さ40μmとなるように積層した。また、同様にしてもう一方の表面に厚さ30μmとなるようにエチレン−プロピレン−1−ブテンターポリマーを積層し、胴部材用のEPBターポリマーラミネート紙を得た。なお、試験に用いたEPBターポリマー(FL02C:日本ポリプロ社製)の構成モノマー比(モル比)を分析したところ、エチレン:プロピレン:1−ブテン=6.6:91.7:1.7であった。
【0026】
底部材用のPPホモポリマーラミネート紙は円形に、胴部材用のラミネート紙は扇形になるように打抜型を用いて打ち抜き、それぞれ円形ブランク、扇形ブランクとした。胴部材に用いる扇型ブランクは、丸めた両端を、紙容器成形機により溶着面温度が140〜240℃となるように熱風を送風して加熱溶着し、下方へとテーパー状に縮径された円筒状に成形した。その後、
図2(c)に示したように、円筒の上端部にカール加工を施して外巻きのカール部分を形成し、円筒下端部には略180°内側方向に折り曲げられた折り返し部分を形成した。他方、底部材に用いる円形ブランクには、その周縁部を略直角に折り曲げて屈曲部分を形成した。底部材の屈曲部分を、胴部材の折り返し部分に挟みこみ、紙容器成形機により溶着面温度が140〜240℃となるように熱風を送風して加熱溶着し、底部材と胴部材とを一体化して、実施例1のラミネート紙容器(144φ×75mm)を得た。
【0027】
比較例1(底部/胴部:EPBターポリマー/EPBターポリマー)
底部材用ラミネート紙及び胴部材用ラミネート紙として、いずれもEPBターポリマーラミネート紙を用いたほかは、実施例1と同様にして、比較例1のラミネート紙容器を得た。
比較例2(底部/胴部:PPホモポリマー/PPホモポリマー)
底部材用ラミネート紙及び胴部材用ラミネート紙として、いずれもPPホモポリマーラミネート紙を用いたほかは、実施例1と同様にして、比較例2のラミネート紙容器を得た。
比較例3(底部/胴部:EPBターポリマー/PPホモポリマー)
底部材用ラミネート紙としてEPBターポリマーラミネート紙、胴部材用ラミネート紙としてPPホモポリマーラミネート紙を用いたほかは、実施例1と同様にして、比較例3のラミネート紙容器を得た。
【0028】
<耐熱性試験>
上記実施例及び比較例のラミネート紙容器に、市販ビーフカレーを想定したモデル液(塩濃度約2wt%,粘度約3mPa・s(80℃),油濃度約1wt%)を充填し、電子レンジ(HEALSIO AX−HC2−R:シャープ社製)に入れ、出力600Wの条件で8分間加熱した。加熱後の容器の胴部内面及び底部内面の損傷状態について、下記基準に基づいて目視により評価した。
○:損傷が認められない。
□:若干損傷が認められるが、ほとんど問題ない。
△:損傷が認められ、外観上問題となる。
×:著しく損傷が認められる。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示すように、底部材をPPホモポリマーラミネート紙とした実施例1,比較例2では、いずれも電子レンジ加熱後の底部内面の損傷は認められなかった。これに対して、底部材がEPBターポリマーラミネート紙である比較例1,3では、電子レンジ加熱後、底部内面において著しい損傷が生じていた。他方、胴部材については、PPホモポリマーラミネート紙、EPBターポリマーラミネート紙のいずれの場合も、内面樹脂の損傷は認められなかった。
【0031】
また、
図3に、電子レンジ加熱後の実施例1及び比較例1のラミネート紙容器の底部内面を撮影した電子顕微鏡写真図を示す。
図3より、実施例1の底部内面の樹脂層は一様に平滑なままであるのに対し、比較例1では、底部内面のEPBターポリマーが部分的に溶解し、樹脂層表面が不均一になっていることが確認できる。
【0032】
つづいて、PPホモポリマーラミネート紙、EPBターポリマーラミネート紙及びPEホモポリマーラミネート紙を用い、各種の組み合わせにて加熱溶着した際の接着強度について評価した。
<接着性試験>
PPホモポリマーラミネート紙:坪量300g/m
2の原紙の表面に、コロナ放電処理を行ないながら押出ラミネート機のTダイより285℃でポリプロピレンホモポリマー(PHA03A:サンアロマー社製;融点164℃,MFR42g/10min,密度0.9g/cm
3)を押し出し、チルロールにより冷却しながら加圧して、ポリプロピレンホモポリマーを厚さ40μmとなるように積層した。また、同様にしてもう一方の表面に厚さ30μmとなるようにPPホモポリマーを積層し、PPホモポリマーラミネート紙を得た。
【0033】
EPBターポリマーラミネート紙:坪量300g/m
2の原紙の表面に、コロナ放電処理を行ないながら押出ラミネート機のTダイより285℃でエチレン−プロピレン−1−ブテンターポリマー(FL02C:日本ポリプロ社製,融点138℃,MFR20g/10min,密度0.9g/cm
3)を押し出し、チルロールにより冷却しながら加圧して、エチレン−プロピレン−1−ブテンターポリマーを厚さ40μmとなるように積層した。また、同様にしてもう一方の表面に厚さ30μmとなるようにエチレン−プロピレン−1−ブテンターポリマーを積層し、EPBターポリマーラミネート紙を得た
【0034】
PEホモポリマーラミネート紙:坪量280g/m
2の原紙の表面に、コロナ放電処理を行ないながら押出ラミネート機のTダイより285℃で低密度ポリエチレン(ペトロセンLW04−1:東ソー社製,融点133℃,MFR6.5g/10min,密度0.94g/cm
3)を押し出し、チルロールにより冷却しながら加圧して、ポリエチレンを厚さ40μmとなるように積層し、PEホモポリマーラミネート紙を得た
【0035】
以上で得られたPPホモポリマーラミネート紙、EPBターポリマーラミネート紙、PEホモポリマーラミネート紙を用い、(1)PPホモポリマー/EPBターポリマー、(2)EPBターポリマー/EPBターポリマー、(3)PPホモポリマー/PPホモポリマー、(4)PEホモポリマー/PPホモポリマー、(5)PEホモポリマー/EPBターポリマーのそれぞれの組み合わせにて、ヒートシール機(TP0701:テスター産業社製)を用い、圧力2kg/cm
2×温度230℃,250℃,270℃の各種条件にて加熱溶着した。溶着後の各ラミネート紙について、引っ張り試験機(オートグラフAGS−X:島津製作所製)を用い、試験片幅15mm、つかみ具間50mm、引張速度300mm/minの条件で、接着強度(引張強度)を測定した。
【0036】
【表2】
【0037】
表2に示すように、(1)PPホモポリマー/EPBターポリマーあるいは(2)EPBターポリマー/EPBターポリマーの組み合わせにおいては、シーラー設定温度230〜270℃で加熱して溶着した後、引張強度が約4〜7N/15mmであり、いずれも良好な接着強度が得られた。これに対して、(3)PPホモポリマー/PPホモポリマーの組み合わせでは、(1)又は(2)の約半分程度の引張強度しか得られず、接着強度に劣っていた。すなわち、(3)PPホモポリマー同士の場合、シーラー設定温度230〜270℃で加熱溶着しても、十分な接着強度が得られないことがわかった。また、PEホモポリマーを使用した(4)、(5)の組み合わせでは、さらに接着強度が低く、いずれも溶着されていない疑似接着状態であった。
【0038】
なお、(1)PPホモポリマー/EPBターポリマーの組み合わせでは加熱溶着後の接着強度が良好であったのに対して、(5)PEホモポリマー/EPBターポリマーの組み合わせでは加熱溶着できなかったことから、単独重合体と共重合体との組み合わせにおいて構成モノマー単位がわずかに共通しているだけでは、加熱溶着特性の点で不十分であると考えられる。すなわち、(5)で用いられたEPBターポリマーには、PEホモポリマーと共通するエチレンモノマーが含まれているものの、モル比がモノマー全体の6.6モル%と少量であり、この程度モノマー単位が共通しているだけでは、優れた加熱溶着特性は得られない。
【0039】
以上のように、底部材内面をPPホモポリマー、胴部材内面をEPBターポリマーとして形成したラミネート容器は、実施例1として示したように、電子レンジ加熱後において底部内面、胴部内面ともに樹脂層の損傷を生じることなく、また、底部−胴部の接合部がPPホモポリマー/EPBターポリマーの組み合わせからなっているため、上記(1)として示したように、従来の溶着温度で加熱溶着した場合も、優れた接着強度が得られることが明らかとなった。