(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6358924
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】捕虫器
(51)【国際特許分類】
A01M 1/08 20060101AFI20180709BHJP
A01M 1/04 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
A01M1/08
A01M1/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-218886(P2014-218886)
(22)【出願日】2014年10月28日
(65)【公開番号】特開2016-82928(P2016-82928A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】502440894
【氏名又は名称】内山 世紀
(74)【代理人】
【識別番号】100080724
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 久喜
(74)【代理人】
【識別番号】100174816
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 貴久
(72)【発明者】
【氏名】内山 世紀
【審査官】
坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−289122(JP,A)
【文献】
特開2011−4657(JP,A)
【文献】
特開2009−268438(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第1716753(EP,A1)
【文献】
特開2010−97915(JP,A)
【文献】
特開2013−118046(JP,A)
【文献】
特開2008−173035(JP,A)
【文献】
特開2007−74908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引式捕虫器であって、吸引開口近傍にLED式紫外線放射器を設け、該紫外線放射器は空間を有する筒状体であり、且つ該吸引開口近傍部に開口がありその他に少なくとも1ヶ所開口を有し、該空間にLEDの発熱部が露出しているか、又は該紫外線放射器の外側表面にLEDが設けられていることを特徴とする捕虫器。
【請求項2】
該吸引開口は長孔であり、該紫外線放射器はほぼ該吸引開口と同じ長さの長尺状である請求項1記載の捕虫器。
【請求項3】
該紫外線放射器のLEDが紫外線を放射する側にカバーを設けたものである請求項1又は2記載の捕虫器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕虫器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
捕虫器は、昆虫類を誘引し捕獲、殺虫するものである。例えば、食品工場では、そこに虫等が入ることは衛生上許されない。そこでその入口出口は完全に虫類に対してシール(網等)されている。しかし、開放されているところでは、シールは意味がない。
【0003】
そこで、できるだけ侵入する虫を減らすため、または所定エリアに虫をできるだけ近づけないように、殺虫器が使用されている。従来の捕虫器としては、簡単なものでは吊り下げタイプの単なる粘着テープ、紫外線ランプで誘引して電気で殺虫するもの、紫外線ランプで誘引し粘着剤で捕獲するもの等である。
【0004】
しかし、これらの方法では衛生管理面での問題が多く、手入れも煩雑であるため、最近では、接近した虫を積極的に捕獲する吸引式が使用されはじめている。これは、ファン等で、空気を吸引し、吸引開口付近に来た虫を強制的に吸い込むものである。
【0005】
また、最近では、紫外線ランプの製造時の環境汚染の問題から、できるだけ水銀の使用を控えたいという要望がある。これに呼応してLEDによって、紫外線が放射できるものが開発されてきている。このUV−LEDは、開発途上ということもあり、エネルギィーの発光効率は、良いものではない。紫外線の高い出力を求めると高熱を発するため、熱によるLED素子の劣化を招いてしまう。そのため発生した熱を効率よく逃がしてやる必要がある。
【0006】
このUV−LEDの熱を逃がす方式は、空冷式(放熱板)方式と水(液)冷式とがあり、従来の空冷式の多くは、単に放熱板を外部に突出させているだけである。これでは、どうしても冷却効率が悪く、また、水(液)冷式は、循環装置など大げさな機械となってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明では、特別な装置を用いず、効率的に冷却できるLEDを使用した捕虫器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような状況に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明捕虫器を完成したものであり、その特徴とするところは、吸引式捕虫器であって、吸引開口近傍にLED式紫外線放射器を設け、該紫外線放射器は内部に空間を有する筒状体であり、且つ該吸引開口近傍部に開口がありその他に少なくとも1ヶ所開口を有し、該空間にLEDの加熱部が接当若しくは露出している点にある。
【0009】
本発明において吸引式捕虫器とは、近づいた虫を吸引することによって捕虫するものである。吸引の方法は、ファン(扇風機のようなもの)が回転することによって風を起こすだけの簡単なものから、真空ポンプのようなもの等自由である。しかし、虫が軽量であるため、わずかな風でもその風に乗って吸引される。
【0010】
吸引式捕虫器には、当然ながら吸引口がある。その中に吸い込まれると、出ることができないか、又は非常に出にくい構造になっている。例えば、吸引の風圧により蓋が開閉する、捕獲した空間に比べて開口部が極端に小さい等である。また、一般的にこの種の捕虫器には、虫を誘引するための紫外線ランプが設けられている。これに誘われて近づいてきた虫を吸引するのである。しかし、これらのことは本発明の要旨ではない。
【0011】
LED式紫外線放射器とは、LEDによって紫外線が放射されるものである。勿論、可視光も同時に放射するものであってもよい。最近、紫外線を放射するLEDが開発され、従来の放電により水銀発光する紫外線ランプから替わってきている。これは、製造時に公害が少ない、寿命が長い、消費電力が少ない等の理由からである。
【0012】
このLED式紫外線放射器は、内部に空間を有する筒状体にLEDを外側に向けて固着したものである。通常は、長尺状のものである。例えば、限定はしないが、筒状体の断面が高さ1cm〜10cm、厚み1cm〜10cmで長さが、20cm〜2m程度のものである。
筒状体の断面形状は、円形、楕円形、半円形、三角形、長方形等自由であるが、台形状が好適である。
【0013】
LEDは、通常多数固着する。例えば、限定はしないが、10〜200個等である。LEDの固着の方向は、紫外線の放射方向が、虫の飛来する方向を向いているのがよいが、反射等を考慮してその他の方向に向けて取り付けてもよい。
【0014】
本発明のLED式紫外線放射器は筒状体に固着されており、当然発熱する。これを封止すると相当温度が上がり問題である。よって、通常はこのような筒状体の外側にまで放熱板を延ばして放熱しているか、筒状体を開放して放熱している。
【0015】
本発明では、この筒状体を開放するのではなく、捕虫器の吸引開口側(吸引開口近傍)に狭い開口を設けている。換言すると、狭い開口が吸引開口に近接するようにLED式紫外線放射器を取り付けているということである。これは、吸引開口に吸い込まれる空気の流れによって、ベンチュリー効果を持たせるためである。即ち、吸引開口に吸い込まれていく空気により、筒状体の狭い開口から空気が吸引され、筒状体内の空気が狭い開口から排出される。筒状体には、この狭い開口とは別に、空気を吸引するための流入開口が設けられているため、その間で空気の流れが生じる。この流入開口の位置は、筒状体の長手方向の1方又は両方の端部、又は狭い開口の反対側等である。
【0016】
この狭い開口の大きさは、機能的には、ベンチュリー効果がある程度のサイズであるが、実際には、幅が1〜5mm、長さは、吸引開口とほぼ同じ程度まで可能である。例えば、吸引開口が1mならほぼ1mまで可能である。
【0017】
また、この狭い開口は、1つでなく、複数設けてもよい。その場合、小さい開口は、幅が1〜5mmで長さ自由である。
【0018】
さらに、筒状体のLEDにはカバーを設けてもよい。このカバーは単なる紫外線透過フィルムでもよいが、LEDは、照射直線性が高いため、広い範囲(広い角度で)照射できるように散乱させるカバーを用いてもよい。例えば、カバーを鑢等で細かい凹凸を設ける、散乱フィルムを貼る等である。
【0019】
上記説明したLED式紫外線放射器は、1つでも複数でもよい。捕虫器の吸引開口側(吸引開口近傍)に対向して複数もうけても、1つでもよい。要するにベンチュリー効果が得られればよい。
【0020】
本発明殺虫器は、壁にかける方法、台に置く方法、吊るす方法その他自由に設置できる。また、そのために係止具や引っ掛け孔等を設けておいてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明捕虫器には次のような大きな利点がある。
(1) 吸引式であり、捕虫性能が優れている。
(2) LEDを用いているため、消費電気が少なく、安価である。
(3) ベンチュリー方式で、LEDを空冷しているため、LEDの温度が高温にならない。
(4) 冷却効率が高いため、LEDの熱劣化を軽減し寿命が延びる。
(5) 冷却効率が高いため、高出力のLEDが使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】LED式紫外線放射器4近傍の断面図である。
【
図3】他のLED式紫外線放射器4近傍の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
図1は、本発明捕虫器1の1例を示す斜視図であるが、内部の構造も概略示している。吸引開口部2が横長に設けられている。ここに虫が近づくと、吸引され吸い込まれていく。吸引の方法はこの例では、ファン3が回り、空気の流れを作っているだけである。吸引開口部2の上下には、LED式紫外線放射器4が設けられている。
吸引開口部2からファン3を通り、下方の虫溜5に至る。そこで虫は落下し、空気は外部に排出される。この虫溜5には、粘着剤や殺虫剤を塗布しておいてもよい。
【0024】
図2は、
図1のLED式紫外線放射器4近傍の断面図である。LED式紫外線放射器4の筒状体6は、断面形状がこの例では扁平した蒲鉾状(変形した三角形)である。その吸引開口部2近傍部に長くて細いスリット7が設けられている。ここから、筒状体6の内部空気が外に排出されるのである。
【0025】
また、筒状体6の外側表面にLED8が多数設けられている。これにより、外側に向けて紫外線が照射される。この例では、筒状体6の内部に空気が入る開口は図示されていないが、長手方向の端部に設けられている。
【0026】
ファン3が回転し、吸引が始まると、吸引開口部2に向けて空気の流れが生じ、それに伴って筒状体6内部の空気も引っ張られることになる。この空気の流れによって、LED8が冷却され、高温にならない。
【0027】
図3は、LED式紫外線放射器4の他の例である。この例では、通常の蛍光灯のような直管タイプのもので、中にLED8を設けた基板が挿入されている。そして、吸引開口側にスリット7が設けられている。この例でも、筒状体6に空気が入る方の開口は図示していないが、これも1端又は両端にある。
【符号の説明】
【0028】
1 本発明捕虫器
2 吸引開口部
3 ファン
4 LED式紫外線放射器
5 虫溜
6 筒状体
7 スリット
8 LED