(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0019】
〔第1実施形態〕
図1には、本第1実施形態に係る燃料電池システム10Aが示されている。燃料電池システム10Aは、主要な構成として、燃料処理装置12、燃料電池スタック14及びバーナ16を備えている。
【0020】
燃料処理装置12は、原料ガス供給路18を介して図示しないガス源に接続され、当該ガス源から原料ガス供給路18を通じて都市ガス又はLPG等の原料ガスが供給される。原料ガス供給路18の途中には、原料ガス供給路18を流通する原料ガスの流量を調整可能な原料ガス流量調整弁44と、原料ガス供給路18を流通する原料ガスの流量を検出する原料ガス流量計54と、が設けられている。
【0021】
また、燃料処理装置12は、改質水供給路20を介して図示しない給水源に接続され、当該給水源から改質水供給路20を通じて改質用の水(改質水という)が供給される。改質水供給路20の途中には、改質水供給路20を流通する改質水の流量を調整可能な改質水流量調整弁46と、改質水供給路20を流通する改質水の流量を検出する改質水流量計56と、が設けられている。
【0022】
また、燃料処理装置12は、選択酸化空気供給路22を介して図示しない空気源に接続され、当該空気源から選択酸化空気供給路22を通じて選択酸化用の空気(選択酸化空気という)が供給される。選択酸化空気供給路22の途中には、選択酸化空気供給路22を流通する選択酸化空気の流量を調整可能な選択酸化空気流量調整弁48と、選択酸化空気供給路22を流通する選択酸化空気の流量を検出する選択酸化空気流量計58と、が設けられている。
【0023】
図示は省略するが、燃料処理装置12は、改質触媒、シフト触媒及びPROX触媒を有している。改質触媒は、原料ガス供給路18を通じて供給された原料ガスを、改質水供給路20を通じて供給された改質水を利用して水蒸気改質する。シフト触媒は、改質触媒で発生した一酸化炭素を水蒸気と反応させて水素と二酸化炭素に変換し、一酸化炭素濃度を低減させる。PROX触媒は、貴金属触媒上で、一酸化炭素と、選択酸化空気供給路22を通じて供給された選択酸化空気中の酸素と、を反応させて二酸化炭素に変換し、一酸化炭素を酸化除去する。
【0024】
また、燃料処理装置12には燃料ガス排出路24の一端が接続されている。燃料処理装置12は、以上の構成により、原料として供給された原料ガス、改質水及び選択酸化空気から、排出物として、水素ガスを含む燃料ガスを生成し、生成した燃料ガスを燃料ガス排出路24へ排出する。なお、燃料処理装置12は、原料ガス供給路18、改質水供給路20及び選択酸化空気供給路22と、燃料ガス排出路24と、が連通している構造となっている。
【0025】
燃料電池スタック14は、燃料ガス供給路26(燃料ガス排出路24)を介して燃料処理装置12に接続され、燃料処理装置12から燃料ガスが供給される。また、燃料電池スタック14は、カソード空気供給路28を介して図示しない空気源に接続され、当該空気源からカソード空気供給路28を通じてカソード供給用の空気(カソード空気という)が供給される。カソード空気供給路28の途中には、カソード空気供給路28を流通するカソード空気の流量を調整可能なカソード空気流量調整弁50と、カソード空気供給路28を流通するカソード空気の流量を検出するカソード空気流量計60と、が設けられている。
【0026】
図示は省略するが、燃料電池スタック14は、固体高分子型の燃料電池スタックであり、積層された複数の燃料電池セルを有している。個々の燃料電池セルは、電解質層と、電解質層の表裏面に各々積層された燃料極(アノード極)及び空気極(カソード極)とを有している。
【0027】
燃料極には燃料ガス供給路26を通じて燃料処理装置12から燃料ガスが供給される。燃料極では、下記の(1)式で示されるように、燃料ガス中の水素が水素イオンと電子とに分解される。燃料極で生成された水素イオンは、電解質層を通って空気極に移動し、燃料極で生成された電子は、外部回路を通って空気極に移動する。
(燃料極反応)
H
2 →2H
++2e
− …(1)
【0028】
一方、空気極にはカソード空気供給路28を通じてカソード空気が供給される。空気極では、下記の(2)式で示されるように、電解質層を通ってきた水素イオンと、外部回路を通ってきた電子が、酸化ガス中の酸素と反応して、水が生成される。
(空気極反応)
4H
++O
2+4e
− →2H
2O …(2)
【0029】
そして、電子が燃料極から空気極に移動することにより、個々の燃料電池セルで発電が行われる。また、個々の燃料電池セルは、発電時に上記の反応に伴って発熱し、空気極で生成された水は水蒸気とされる。
【0030】
燃料電池スタック14にはアノード排ガス排出路30及びカソード排ガス排出路32の一端が各々接続されている。燃料電池スタック14は、以上の構成により、原料として供給された燃料ガス及びカソード空気から、排出物として、電力、熱、アノード排ガス及びカソード排ガスを生成し、このうちアノード排ガスをアノード排ガス排出路30へ排出し、カソード排ガスをカソード排ガス排出路32へ排出する。なお、燃料電池スタック14で生成された電力は図示しない電力負荷へ供給され、
【0031】
なお、燃料電池スタック14で生成された熱は図示しない排熱回収部によって回収される。また、燃料電池スタック14は、燃料ガス供給路26及びカソード空気供給路28と、アノード排ガス排出路30及びカソード排ガス排出路32と、が連通している構造となっている。
【0032】
バーナ16は、バーナガス供給路34(アノード排ガス排出路30)を介して燃料電池スタック14に接続されている。バーナガス供給路34(アノード排ガス排出路30)の途中には、アノード排ガスに含まれる水蒸気を凝縮させる図示しないドレンポットを含む凝縮水回収部が設けられており、水蒸気が除去されたアノード排ガスには未反応の水素ガスが残存しており、この未反応の水素ガスを含むアノード排ガスは、バーナガス供給路34を通じてバーナガスとしてバーナ16に供給される。
【0033】
また、バーナ16は、燃焼空気供給路36を介して図示しない空気源に接続され、当該空気源から燃焼空気供給路36を通じて燃焼用の空気(燃焼空気という)が供給される。燃焼空気供給路36の途中には、燃焼空気供給路36を流通する燃焼空気の流量を調整可能な燃焼空気流量調整弁52と、燃焼空気供給路36を流通する燃焼空気の流量を検出する燃焼空気流量計62と、が設けられている。
【0034】
バーナ16にはバーナ排ガス排出路38の一端が接続されている。バーナ16は、原料として供給されたバーナガスと燃焼空気との混合ガスを燃焼させて燃料処理装置12の改質触媒を加熱し、排出物としてのバーナ排ガスをバーナ排ガス排出路38へ排出する。なお、バーナ16は、バーナガス供給路34及び燃焼空気供給路36と、バーナ排ガス排出路38と、が連通している構造になっている。
【0035】
カソード排ガス排出路32とバーナ排ガス排出路38は合流部40で合流され、合流部40よりも下流側が1本の排ガス排出路42になっており、排ガス排出路42の途中には、排ガス排出路42を流通する排ガスを排ガス排出路42の下流側へ送出する負圧を発生させる排気ブロワ64が設けられている。
【0036】
次に、
図2を参照して燃料電池システム10Aの制御系の構成を説明する。燃料電池システム10Aは制御部70Aを備えている。制御部70Aは、CPU72、ワークメモリ等として用いられるメモリ74、HDD(Hard Disk Drive)又はフラッシュメモリを含む不揮発性の記憶部76及びインタフェース(I/F)部78を備えている。
【0037】
記憶部76には、CPU72によって実行される燃料電池システム制御プログラム80と、目標流量テーブル82が記憶されている。
【0038】
例として
図3に示すように、目標流量テーブル82には、排気ブロワ64の出力と、原料ガス供給路18、改質水供給路20、選択酸化空気供給路22、カソード空気供給路28及び燃焼空気供給路36の各供給路を流通する原料の目標流量と、が燃料電池システム10Aの運転状態(工程)毎に記憶されている。
【0039】
制御部70AのI/F部78には、燃料電池システム10Aの流量計群84が接続され、ブロワ駆動回路86を介して排気ブロワ64が接続され、流量調整弁駆動回路88を介して燃料電池システム10Aの流量調整弁群90が接続されている。なお、流量計群84には原料ガス流量計54、改質水流量計56、選択酸化空気流量計58、カソード空気流量計60及び燃焼空気流量計62が含まれており、流量調整弁群90には原料ガス流量調整弁44、改質水流量調整弁46、選択酸化空気流量調整弁48、カソード空気流量調整弁50及び燃焼空気流量調整弁52が含まれている。
【0040】
また、制御部70AのI/F部78には、表示パネルや操作スイッチを含む操作パネル92と、燃料電池システム10Aの各部の状態を検出するセンサ群94と、が接続されている。なお、センサ群94には、燃料電池システム10Aが設置された建物の分電盤に設けられ消費電力を検出するCTセンサ等が含まれる。
【0041】
なお、燃料処理装置12は本発明における燃料処理装置の一例であり、燃料電池スタック14は本発明における燃料電池スタックの一例であり、バーナ16は本発明におけるバーナの一例である。また、排気ブロワ64は本発明における負圧発生部の一例であり、原料ガス流量調整弁44、改質水流量調整弁46、選択酸化空気流量調整弁48、カソード空気流量調整弁50及び燃焼空気流量調整弁52は本発明における流量調整弁の一例である。また、原料ガス流量計54、改質水流量計56、選択酸化空気流量計58、カソード空気流量計60及び燃焼空気流量計62は本発明における流量検出部の一例であり、制御部70Aは本発明における第1制御部の一例であり、記憶部76は本発明における第1記憶部の一例である。
【0042】
次に本第1実施形態の作用として、制御部70Aによって実行される燃料電池システム制御処理について、
図4を参照して説明する。
【0043】
燃料電池システム制御処理のステップ100において、制御部70Aは、燃料電池システム10Aが運転中か否か判定する。例えば操作パネル92の運転スイッチがオフされている等の場合には、ステップ100の判定が否定されて燃料電池システム制御処理を終了する。一方、操作パネル92の運転スイッチがオンされている場合は、ステップ100の判定が肯定されてステップ102へ移行する。
【0044】
ステップ102において、制御部70Aは、燃料電池システム10Aの工程遷移条件が成立したか否か判定する。
図3に示すように、燃料電池システム10Aの状態(工程)は、「起動工程」「発電工程」「停止工程」及び「待機工程」に大別されており、「起動工程」は更に「パージ工程」、「燃料処理装置昇温工程」及び「燃料改質工程」に細分化されている。そして、各工程には、各工程に遷移する条件が予め設定されており、制御部70Aは、センサ群94の各センサによって検出された燃料電池システム10Aの各部の状態が、予め設定された何れかの工程の工程遷移条件に合致したか否かを判定することで、ステップ102の判定を行う。
【0045】
燃料電池システム10Aの各部の状態が何れかの工程の工程遷移条件に合致した場合には、ステップ102の判定が肯定されてステップ104へ移行し、ステップ104において、制御部70Aは、目標流量テーブル82から、遷移する工程に対応する排気ブロワ64の出力及び各供給路18,20,22,28,36毎の原料の目標流量を読み出す。そして、ステップ106において、制御部70Aは、排気ブロワ64の出力を目標流量テーブル82から読み出した排気ブロワ64の出力に設定する。また、次のステップ108において、制御部70Aは、各流量計54,56,58,60,62によって検出された各供給路18,20,22,28,36を流通する原料の流量が、目標流量テーブル82から読み出した各供給路18,20,22,28,36毎の原料の目標流量に一致するように、各供給路18,20,22,28,36の各流量調整弁44,46,48,50,52の開度制御を開始し、ステップ100に戻る。
【0046】
上記処理により、「パージ工程」では排気ブロワ64が10%の出力で駆動され、排気ブロワ64によって排ガス排出路42に生じた負圧が各供給路18,20,22,28,36に及ぶ。また「パージ工程」では原料ガス供給路18、改質水供給路20、選択酸化空気供給路22及びカソード空気供給路28は目標流量=0とされ、燃焼空気供給路36のみ目標流量=20L/minとされている。このため、原料ガス流量調整弁44、改質水流量調整弁46、選択酸化空気流量調整弁48及びカソード空気流量調整弁50は全閉とされ、燃焼空気流量調整弁52のみ、燃焼空気流量計62によって検出された流量が目標流量に一致する開度に制御される。上記制御により、燃焼空気のみが排気ブロワ64によって生じた負圧によりバーナ16に供給され、バーナ16の内部空間を燃焼空気で置換する「パージ工程」が行われる。
【0047】
また、「燃料処理装置昇温工程」では排気ブロワ64が20%の出力で駆動され、排気ブロワ64によって排ガス排出路42に生じた負圧が各供給路18,20,22,28,36に及ぶ。また「燃料処理装置昇温工程」では改質水供給路20、選択酸化空気供給路22及びカソード空気供給路28は目標流量=0とされ、原料ガス供給路18は目標流量=1L/min、燃焼空気供給路36は目標流量=10L/minとされている。このため、改質水流量調整弁46、選択酸化空気流量調整弁48及びカソード空気流量調整弁50は全閉とされ、原料ガス流量調整弁44及び燃焼空気流量調整弁52は、流量計54,62によって検出された流量が目標流量に一致する開度に制御される。
【0048】
上記制御により、排気ブロワ64によって生じた負圧によって燃焼空気がバーナ16に供給されると共に、原料ガスが原料ガス供給路18、燃料処理装置12、燃料ガス排出路24(燃料ガス供給路26)、燃料電池スタック14、アノード排ガス排出路30(バーナガス供給路34)を経由してバーナ16に供給され、燃料処理装置12の改質触媒を所定温度まで昇温する「燃料処理装置昇温工程」が行われる。
【0049】
また、「燃料改質工程」では排気ブロワ64が40%の出力で駆動され、排気ブロワ64によって排ガス排出路42に生じた負圧が各供給路18,20,22,28,36に及ぶ。また「燃料改質工程」ではカソード空気供給路28のみ目標流量=0、原料ガス供給路18は目標流量=2L/min、改質水供給路20は目標流量=7cc/min、選択酸化空気供給路22は目標流量=1L/min、燃焼空気供給路36は目標流量=20L/minとされている。このため、カソード空気流量調整弁50は全閉とされ、原料ガス流量調整弁44、改質水流量調整弁46、選択酸化空気流量調整弁48及び燃焼空気流量調整弁52は、流量計54,56,58,62によって検出された流量が目標流量に一致する開度に制御される。
【0050】
上記制御により、排気ブロワ64によって生じた負圧によって、原料ガス、改質水及び選択酸化空気が燃料処理装置12に供給される。一方、燃料処理装置12から排出された燃料ガス及び燃焼空気がバーナ16に供給されて燃焼する。燃焼の際のエネルギーを用いて、燃料処理装置12に供給された原料ガス、改質水及び選択酸化空気から燃料処理装置12で燃料ガスを生成する「燃料改質工程」が行われる。
【0051】
また、「発電工程」では排気ブロワ64が50%の出力で駆動され、排気ブロワ64によって排ガス排出路42に生じた負圧が各供給路18,20,22,28,36に及ぶ。また「発電工程」では原料ガス供給路18は目標流量=3L/min、改質水供給路20は目標流量=10cc/min、選択酸化空気供給路22は目標流量=1.5L/min、カソード空気供給路28は目標流量=35L/min、燃焼空気供給路36は目標流量=10L/minとされている。このため、各流量調整弁44,46,48,50,52は流量計54,56,58,60,62によって検出された流量が目標流量に一致する開度に制御される。なお、上記の目標流量は単なる一例であり、「発電工程」における目標流量は、CTセンサによって検出される消費電力に応じて時々刻々と変化する。
【0052】
上記制御により、排気ブロワ64によって生じた負圧によって、原料ガス、改質水及び選択酸化空気が燃料処理装置12に供給されると共に、燃料処理装置12から排出された燃料ガス及びカソード空気が燃料電池スタック14に供給され、燃料電池スタック14から排出されたバーナガス及び燃焼空気がバーナ16に供給される。そして、燃料電池スタック14の個々の燃料電池セルの燃料極で前出の(1)式の燃料極反応が生ずると共に、個々の燃料電池セルの空気極で前出の(2)式の空気極反応が生ずることにより、燃料電池スタック14で発電する「発電工程」が行われる。
【0053】
また、「停止工程」では排気ブロワ64が20%の出力で駆動され、排気ブロワ64によって排ガス排出路42に生じた負圧が各供給路18,20,22,28,36に及ぶ。また「停止工程」ではカソード空気供給路28のみ目標流量=0、原料ガス供給路18は目標流量=1L/min、改質水供給路20は目標流量=4cc/min、選択酸化空気供給路22は目標流量=0.5L/min、燃焼空気供給路36は目標流量=10L/minとされている。このため、カソード空気流量調整弁50は全閉とされ、原料ガス流量調整弁44、改質水流量調整弁46、選択酸化空気流量調整弁48及び燃焼空気流量調整弁52は、流量計54,56,58,62によって検出された流量が目標流量に一致する開度に制御される。
【0054】
上記の制御により、排気ブロワ64によって生じた負圧により、原料ガス、改質水及び選択酸化空気が燃料処理装置12に供給されると共に、燃料処理装置12から排出された燃料ガス及び燃焼空気がバーナ16に供給されることで、燃料電池スタック14における発電は停止する一方、「発電工程」の再開に備えて燃料処理装置12における燃料処理とバーナ16の燃焼は継続する「停止工程」が行われる。
【0055】
また、「待機工程」では排気ブロワ64の駆動が停止される。また「待機工程」では各供給路18,20,22,28,36の目標流量=0とされている。このため、各流量調整弁44,46,48,50,52は全て全閉とされる。上記制御により、燃料処理装置12、燃料電池スタック14及びバーナ16が全て動作を停止する「待機工程」が行われる。
【0056】
以上説明したように、本第1実施形態では、排気ブロワ64によって排ガス排出路42に生じた負圧が各供給路18,20,22,28,36に及ぶ構成となっていることから、各供給路18,20,22,28,36には、原料の流量を調整可能な流量調整弁44,46,48,50,52を設ける一方、原料を各供給路の下流側へ送出するための補機を省略している。これにより、燃料電池システム10Aの小型化及び低コスト化を実現できる。また、排気ブロワ64をバーナ排ガス排出路38とカソード排ガス排出路32の合流部40よりも下流に設けているので、排気ブロワ64の数が1つで済み、燃料電池システム10Aの一層の小型化及び低コスト化を実現できる。
【0057】
また、本第1実施形態では、燃料電池システム10Aの現在の工程(運転状態)に対応する各供給路18,20,22,28,36の原料の目標流量を記憶部76から読み出し、各流量計54,56,58,60,62で検出した各供給路18,20,22,28,36における原料の流量が、記憶部76から読み出した目標流量に一致するように各流量調整弁44,46,48,50,52の開度を制御しているので、各供給路18,20,22,28,36における原料の流量を、燃料電池システム10Aの運転状態毎に適正に制御することができる。
【0058】
〔第2実施形態〕
次に本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0059】
図5には、本第2実施形態に係る燃料電池システム10Bが示されている。燃料電池システム10Bは、第1実施形態で説明した燃料電池システム10Aと比較して、各供給路18,20,22,28,36に設けられていた流量計54,56,58,60,62が省略されている点で相違している。
【0060】
図6には、燃料電池システム10Bの制御系の概略構成を示す。燃料電池システム10Bでは、第1実施形態で説明した制御部70Aに代えて制御部70Bを備えている。制御部70Bは、記憶部76に目標流量テーブル82に代えて目標開度テーブル96が記憶されており、I/F部78に流量計群84が接続されていない点で相違している。
【0061】
目標開度テーブル96は、
図7に示すように、排気ブロワ64の出力と、各供給路18,20,22,28,36に設けられた各流量調整弁44,46,48,50,52の目標開度と、が燃料電池システム10Bの運転状態(工程)毎に記憶されている。なお、目標開度テーブル96に記憶されている目標開度は、各供給路18,20,22,28,36における原料の流量が目標流量テーブル82に記憶された目標流量に一致するときの各流量調整弁44,46,48,50,52の開度を実験的に求めることで設定されている。
【0062】
なお、本第2実施形態において、制御部70Bは本発明における第2制御部の一例であり、記憶部76は本発明における第2記憶部の一例である。
【0063】
次に
図8を参照し、本第2実施形態に係る燃料電池システム制御処理について、第1実施形態で説明した燃料電池システム制御処理と異なる部分についてのみ説明する。
【0064】
本第2実施形態に係る燃料電池システム制御処理では、燃料電池システム10Bの各部の状態が何れかの工程の工程遷移条件に合致することで、ステップ102の判定が肯定された場合にステップ110へ移行し、ステップ110において、制御部70Bは、目標開度テーブル96から、遷移する工程に対応する排気ブロワ64の出力及び各流量調整弁44,46,48,50,52の開度を読み出す。そして、ステップ112において、制御部70Bは、排気ブロワ64の出力を目標開度テーブル96から読み出した排気ブロワ64の出力に設定する。また、次のステップ114において、制御部70Bは、各供給路18,20,22,28,36の各流量調整弁44,46,48,50,52の開度を、目標開度テーブル96から読み出した各流量調整弁44,46,48,50,52毎の目標開度に一致させる制御を行う。
【0065】
上記の制御により、第1実施形態と同様に、各供給路18,20,22,28,36における原料の流量を、燃料電池システム10Bの運転状態毎に適正に制御することができる。また、本第2実施形態では、第1実施形態で説明した燃料電池システム10Aから流量計54,56,58,60,62を省略しているので、燃料電池システム10Aと比較しても一層の小型化及び低コスト化を実現できる。
【0066】
次に本発明に係る燃料電池システムの他の構成を説明する。
図9に示されている燃料電池システム10Cは、第2実施形態で説明した燃料電池システム10Bと比較して、燃料処理装置12と燃料電池スタック14を接続する燃料ガス排出路24(燃料ガス供給路26)の途中に、燃料ガス排出路24(燃料ガス供給路26)を流通する燃料ガスを燃料ガス排出路24(燃料ガス供給路26)の下流側へ送出する負圧を発生させる排気ブロワ66が設けられている点で相違している。
【0067】
燃料電池システム10Bは排気ブロワが排気ブロワ64の1個のみであるので、特に燃料処理装置12に接続された原料ガス供給路18、改質水供給路20及び選択酸化空気供給路22に原料を吸引する力を生じさせるためには、燃料処理装置12や燃料電池スタック14、バーナ16における圧力損失にも依存するが、排気ブロワ64が大幅に大型化する可能性もある。
【0068】
これに対して燃料電池システム10Cは、排気ブロワ64に加えて排気ブロワ66が設けられており、排気ブロワ66によって発生された負圧が原料を吸引する力として原料ガス供給路18、改質水供給路20及び選択酸化空気供給路22に及ぶ。このため、排気ブロワが1個のみの構成では排気ブロワを極端に大型化する必要がある等の場合に、燃料電池システム全体としての小型化及び低コスト化を実現することが可能となる。なお、第1実施形態で説明した燃料電池システム10Aに排気ブロワ66を追加してもよいことは言うまでもない。
【0069】
また、
図10に示されている燃料電池システム10Dは、
図9に示した燃料電池システム10Cと比較して、改質水供給路20の途中に、改質水供給路20を流通する改質水を改質水供給路20の下流側へ送出するポンプ68及び改質水流量計56が設けられている点で相違している。
【0070】
燃料電池システム10Cにおいて、燃料処理装置12に接続された原料ガス供給路18、改質水供給路20及び選択酸化空気供給路22に原料を吸引する力を生じさせるために、排気ブロワ66が発生させる必要がある負圧は、個々の供給路毎に相違している可能性がある。燃料電池システム10Dでは、原料を吸引する力を生じさせるために必要な負圧が、各供給路のうち改質水供給路20が最大である場合を想定し、改質水供給路20にポンプ68を追加している。
【0071】
これにより、特定の供給路に原料を吸引する力を生じさせるために負圧発生部(排気ブロワ66)が極端に大型化する必要がある等の場合に、燃料電池システム全体としての小型化及び低コスト化を実現することが可能となる。なお、第1実施形態で説明した燃料電池システム10Aや第2実施形態で説明した燃料電池システム10Bにポンプ68を追加してもよいことは言うまでもない。
【0072】
なお、上記では負圧発生部として排気ブロワ64,66を適用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、負圧発生部としてファンやポンプ等を適用することも可能である。
【0073】
また、上記では固体高分子型の燃料電池システムに本発明を適用した態様を説明したが、本発明は他の型式の燃料電池システムに適用することも可能である。