【実施例】
【0025】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
実施例1
(1)PS−PGの分離
Lactobacillus casei YIT 9029(FERM BP−1366)の培養菌体を90℃にて30分間加熱し、凍結乾燥を行った。この加熱死菌体凍結乾燥物500mgを5mM Tris-maleate buffer(pH6.4)30mLに懸濁し、Mutanolysin(SIGMA)を添加して37℃、24時間、反応させた。反応液を遠心分離して得られた上清について、10mM リン酸buffer(pH6.0)/0.25M NaClを外液として、20時間、4℃にて透析した。透析内液を凍結乾燥し、凍結乾燥物を終濃度5mg/mLとなるように注射用蒸留水(扶桑薬品)に溶解した。これをセファクリル S−200 HR(GEヘルスケア、カラムサイズ:5×60cm)にアプライし、ゲル濾過を行った(流速:1mL/min、温度:4℃)。得られたフラクションについて、フェノール・硫酸法にてPS−PG画分を検出した。PS−PG画分を回収し、注射用蒸留水を外液として、20時間、4℃にて透析した。これを凍結乾燥し、73mgの精製PS−PGを得た。
【0027】
(2)PS−PGのアミノ基の保護
1.5mLのマイクロチューブに、PS−PG3mgを加え、ミリQ水500μLに溶解させた。調製したPS−PG水溶液に、アミノ基の脱プロトン化が起こるよう、50mMリン酸緩衝液(pH8.5)50μLと無水酢酸20μLを加え、アセチル化反応を開始した。反応溶液は室温で静置し、15分おきにボルテックスで攪拌した。また、すべてのアミノ基をブロックするために反応開始後1時間毎に、無水酢酸を20μLずつ追加した。この操作を5時間続けた。5時間後、反応溶液を透析膜(フナコシ製(スペクトロポア)、分画分子量3500)に入れ、蒸留水で1日透析した。透析によって若干白濁した溶液を200mLナス型フラスコに移し、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後のアセチル化PS−PGの収量は1.6mg(回収率53%)であった。
【0028】
(3)反応用糖鎖ストック溶液の調製
i)デキストランストック溶液の調製
0.5mLのマイクロチューブに、デキストラン5mgを加え、ミリQ水50μLに溶解させた(0.1mg/μL)。デキストランの修飾率を変化させるために、先に調製した0.1mg/μLを10倍ずつ希釈したストック溶液系列(最大10
25倍希釈:1×10
-1〜1×10
-26mg/μL)を調製した。調製法は、ストック溶液を10μLとり、0.5mLのマイクロチューブに加え、ミリQ水90μLを加え、混合することで希釈溶液を調製した。
【0029】
ii)PS−PGストック溶液の調製
0.5mLのマイクロチューブにアセチル化したPS−PG0.8mgを加え、ミリQ水40μLに溶解させた(0.02mg/μL)。PS−PGの修飾率を変化させるために、先に調製した0.02mg/μLを10倍ずつ希釈したストック溶液系列(最大10
10倍希釈:2×10
-2〜2×10
-12mg/μL)を調製した。調製法は、ストック溶液を10μLとり、0.5mLのマイクロチューブに加え、ミリQ水90μLを加え、混合することで希釈溶液を調製した。
【0030】
実施例1において合成した糖鎖修飾ナノビーズを表1及び表2にまとめ、これら糖鎖修飾ナノビーズの合成法を以下に詳述する。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
iii)ナノビーズへの糖鎖の修飾
ナノビーズとして、脂肪族アミノ基修飾ラテックスナノビーズ(粒径24±3nm:Molecular Probe社)(20LA−NH
2)、脂肪族アミノ基修飾ラテックスナノビーズ(粒径110±5nm:Molecular Probe社)(100LA−NH
2)、脂肪族アミノ基修飾ラテックスビーズ(粒径3.1μm:Molecular Probe社)(NP
3000)、アミノ基修飾シリカナノビーズ(粒径100nm:Micromod Partikeltechnologie GmbH社)(100SI−NH
2)、アミノ基修飾シリカナノビーズ(粒径500nm:Micromod Partikeltechnologie GmbH社)(500SI−NH
2)を用いた。デキストランは、分子量40,000(和光純薬社)のものを用いた。
ア.シリカナノビーズへのデキストランの修飾
0.5mLのマイクロチューブに、50mMリン酸緩衝液(pH8.5)20μL、シリカナノビーズ(100SI−NH
2、もしくは500SI−NH
2)20μL、100mMシアノ水素化ホウ素ナトリウム水溶液30μLを加え、デキストランストック溶液20μLを加えた。溶液をボルテックスで攪拌した後、45℃で1日加熱した。反応溶液を遠心分離(9,000rpm、5min、25℃)し、シリカナノビーズを沈殿させた。ビーズを吸い込まないように上澄みを取り除き、ナノビーズから反応溶液を洗浄するためにマイクロチューブにミリQ水70μLを加え、ボルテックスで攪拌した。再度、遠心分離(9,000rpm、5min、25℃)した後、上澄みを取り除き、ミリQ水70μLを加え、ボルテックスで攪拌した。この操作を2回繰り返した。
ここで、100SI−NH
2にデキストランを1×10
-1〜1×10
-26mg/μL用いて被覆したビーズを、100SD−1乃至100SD−26とし、500SI−NH
2にデキストランを1×10
-1〜1×10
-26mg/μL用いて被覆したビーズを、500SD−1乃至500SD−26とした。
イ.シリカナノビーズへのPS−PGの修飾
0.5mLのマイクロチューブに、50mMリン酸緩衝液(pH8.5)20μL、シリカナノビーズ(100SI−NH
2、もしくは500SI−NH
2)20μL、100mMシアノ水素化ホウ素ナトリウム水溶液30μLを加え、PS−PGストック溶液20μLを加えた。溶液をボルテックスで攪拌した後、45℃で3日加熱した。反応溶液を遠心分離(9,000rpm、5min、25℃)し、シリカナノビーズを沈殿させた。ビーズを吸い込まないように上澄みを取り除き、ナノビーズから反応溶液を洗浄するためにマイクロチューブにミリQ水70μLを加え、ボルテックスで攪拌した。再度、遠心分離(9,000rpm、5min、25℃)した後、上澄みを取り除き、ミリQ水70μLを加え、ボルテックスで攪拌した。この操作を4回繰り返した。
ここで、100SI−NH
2にPS−PGを2×10
-2〜2×10
-12mg/μL用いて被覆したビーズを、100SP−2乃至100SP−12とし、500SI−NH
2にPS−PGを2×10
-2〜2×10
-12mg/μL用いて被覆したビーズを、500SP−2乃至500SP−12とした。
【0034】
ウ.ラテックスナノビーズへのデキストランの修飾
0.5mLのマイクロチューブに、50mMリン酸緩衝液(pH8.5)20μL、ラテックスナノビーズ20μL、100mMシアノ水素化ホウ素ナトリウム水溶液30μLを加え、デキストランストック溶液20μLを加えた。溶液をボルテックスで攪拌した後、45℃で1日加熱した。反応溶液を遠心分離(10,000rpm、15min、25℃)し、ラテックスナノビーズを沈殿させた。ビーズを吸い込まないように上澄みを取り除き、ナノビーズから反応溶液を洗浄するためにマイクロチューブにミリQ水70μLを加え、ボルテックスで攪拌した。再度、遠心分離(10,000rpm、15min、25℃)した後、上澄みを取り除き、ミリQ水70μLを加え、ボルテックスで攪拌した。この操作を2回繰り返した。
ここで、20LA−NH
2にデキストランを1×10
-1〜1×10
-26mg/μL用いて被覆したビーズを、20LD−1乃至20LD−26とし、100LA−NH
2にデキストランを1×10
-1〜1×10
-26mg/μL用いて被覆したビーズを、100LD−1乃至100LD−26とした。
【0035】
エ.ラテックスナノビーズへのPS−PGの修飾
0.5mLのマイクロチューブに、50mMリン酸緩衝液(pH8.5)20μL、ラテックスナノビーズ20μL、100mMシアノ水素化ホウ素ナトリウム水溶液30μLを加え、PS−PGストック溶液20μLを加えた。溶液をボルテックスで攪拌した後、45℃で3日加熱した。反応溶液を遠心分離(10,000rpm、15min、25℃)し、ラテックスナノビーズを沈殿させた。ビーズを吸い込まないように上澄みを取り除き、ナノビーズから反応溶液を洗浄するためにマイクロチューブにミリQ水70μLを加え、ボルテックスで攪拌した。再度、遠心分離(10,000rpm、15min、25℃)した後、上澄みを取り除き、ミリQ水70μLを加え、ボルテックスで攪拌した。この操作を4回繰り返した。
ここで、20LA−NH
2にPS−PGを2×10
-2〜2×10
-12mg/μL用いて被覆したビーズを、20LP−2乃至20LP−12とし、100LA−NH
2にPS−PGを2×10
-2〜2×10
-12mg/μL用いて被覆したビーズを、100LP−2乃至100LP−12とした。
オ.ナノビーズ表面へのPS−PG結合量の定量
i)材料
NP3000について
脂肪族アミノ基修飾ラテックスナノビーズ(Molecular Probe社製)
粒子直径=3.1μm(Molecular Probe社公表データ)
粒子表面のアミノ基占有面積=21Å
2=0.21×10
-6μm
2(Molecular Probe社公表データ)
粒子の表面積=4×(×(3.1/2)
2=30.2μm
2
粒子表面のアミノ基数=30.2μm
2/0.21×10
-6μm
2=143,692,380
粒子表面のアミノ基モル数=143,692,380/6.02×10
23mol
-1=24.3×10
-17mol=243amol
【0036】
ii)
NP3000−8PSPGの合成
マイクロチューブに150μLのPBS(50mM,pH8.5)、75μLのアセチル化PS−PG水溶液(2.0mg/75μL:ビーズ表面のアミノ基に対して8等量のアセチル化PS−PG(モル数))、25μLのNP
3000水溶液(3.75×10
7個,0.230mg)、75μLのシアノ水素化ホウ素ナトリウム水溶液(100mM)を加えた。マイクロチューブを室温にて静置し、30分ごとにボルテックスにより撹拌した。これを8回繰り返した後,250rpmで撹拌しながら45℃にて72時間インキュベートした。
反応溶液を遠心分離し(11,000rpm,15min,4℃)、NP
3000成分を沈殿させ、上清を除去した。200μLの超純水を用いた洗浄操作を7回繰り返し、ペレットとしてPS−PG結合NP
3000(NP
3000−8PSPG)を得た。ビーズ表面のアミノ基に対して添加するアセチル化PS−PGのモル数(1等量,2等量,4等量,6等量)を変化させたこと以外は、上記と同じ方法により、NP
3000−PSPG、NP
3000−2PSPG、NP
3000−4PSPG、NP
3000−6PSPGを得た。
【0037】
iii)
1個のNP3000に結合したPS−PG量の算出方法
ペレットとして得られた各PS−PG結合NP
3000を凍結乾燥し、精密電子天秤により各PS−PG結合NP
3000の重量を測定した。各反応前後で増加した重量はナノビーズに結合したPS−PGによるものとし,1個のNP
3000に結合したPS−PG量を算出した。以下はその一例として、NP
3000−8PSPGの算出過程を示す。
反応前のNP
3000(3.75×10
7個)の重量は0.230mgであった。NP
3000−8PSPGの場合、反応、精製後の重量は0.284mgであった。これより、3.75×10
7個のNP
3000に54μgのPS−PGが結合したことが分かった。また、1個のNP
3000に結合したPS−PG重量は1.44pgと算出され(54μg/3.75×10
7個)、PS−PGの重量平均分子量30,000(g/mol)を用いると、1個のNP
3000に結合したPS−PGのモル数は48amolと算出された(1.44pg/30,000g・mol
-1)。NP
3000表面のアミノ基モル数は243amolであることより、NP
3000−8PSPGの場合、NP
3000表面に提示されたアミノ基の19.8%がPS−PGとの結合に用いられたことが分かった。
【0038】
iv)
NP3000へのPS−PG結合量の定量
1個のナノビーズ表面に結合したPS−PG量(モル数)を表3にまとめる。PS−PG添加量の増加に伴い,ナノビーズ1個に結合したPS−PG量は増加した。PS−PG添加量とPS−PG結合量とは正比例の関係にはなく、PS−PG1モル等量と2モル等量で結合量は同程度であった。4モル等量では2モル等量の約2倍の結合量が得られた。6モル等量では2モル等量の約14倍の結合量,8モル等量では2モル等量の約43倍の結合量が得られた。
【0039】
【表3】
【0040】
試験例1
(マウス由来マクロファージ細胞を用いたサイトカイン産生評価)
(1)細胞の培養、継代
10cmディッシュで培養したJ774.1細胞(マウスマクロファージ様株化細胞)は、ピペッティングおよびトリプシン処理によりディッシュ底面からはがし、その細胞懸濁液を遠心分離(1000rpm、3min)することにより、遠沈チューブ内に回収した。上清を吸引除去した後、そこに新鮮培地(10%非働化ウシ胎児血清、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、0.05mM 2−メルカプトエタノール含有RPMI−1640培地)を加え、ピペッティングによりJ774.1細胞を培地中に懸濁させた。得られたJ774.1細胞懸濁液を新しい10cmディッシュ内に注ぎ(2.0×10
5cells/mL、8mL)、37℃、5%CO
2インキュベーター内で培養した。これらの操作を3日毎に繰り返し、継代を行った。
【0041】
(2)細胞毒性試験
J774.1細胞懸濁液を細胞培養用96wellプレートに100μL/wellずつ分注し(1.0×10
5cells/well)、37℃、5%CO
2インキュベーター内で2時間インキュベートした。その後、使用培地に懸濁した各種PS−PG結合ナノビーズおよびコントロール(20LD−1、100LD−1、500SD−1、20LA−NH
2、100LA−NH
2、500SI−NH
2)を100μLずつ添加し、37℃、5%CO
2インキュベーター内で24時間培養した。その後、各wellにWST−1アッセイ溶液(WST−1/1−methoxy PMSの9/1混合水溶液)を10μL添加し、37℃、5%CO
2インキュベーター内で2時間呈色反応させた。その後、マイクロプレートリーダーで450nmおよび620nmの吸光度を測定した。
【0042】
(3)IL−12産生誘導実験
J774.1細胞懸濁液を細胞培養用96wellプレートに100μL/wellずつ分注し(1.0×10
5cells/well)、37℃、5%CO
2インキュベーター内で2時間インキュベートした。その後、使用培地にて懸濁した各種PS−PG結合ナノビーズおよびコントロール(20LD−1、100LD−1、500SD−1、20LA−NH
2、100LA−NH
2、500SI−NH
2)を100μLずつ添加し、37℃、5%CO
2インキュベーター内で24時間培養した。その後、培養上清を0.22μmフィルターでろ過し、得られたろ液を−30℃で保存した。Purified rat anti−mouse IL−12 p40/p70をNa
2CO
3緩衝液(pH9.6)で希釈し、ELISA用96wellプレートに50μLずつ添加し、4℃で一晩インキュベートした。各wellを0.05%Tween20を含むPBS(pH7.4)で洗浄後、1%BSAを含むNa
2CO
3緩衝液を100μLずつ添加し、37℃で90分間インキュベートした。各wellをPBSで洗浄後、サンプルおよび0.03%NaN
3を含むPBSで所定の濃度になるよう希釈したrecombinant mouse IL−12 p70を50μLずつ添加し、室温で90分間反応させた。各wellをPBSで洗浄した後、1%BSAを含むPBSで希釈したbiotin rat anti−mouse IL−12 p40/p70を50μLずつ添加し、室温で90分間反応させた。各wellをPBSで洗浄後、1%BSAを含むPBSで20000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンを50μLずつ添加し、暗中室温で30分間反応させた。各wellをPBSで洗浄後、TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)基質溶液を50μLずつ添加し、暗中室温で20分間反応させた。各wellに1M H
2SO
4を50μLずつ添加して発色反応を停止させ、マイクロプレートリーダーで450nmおよび620nmの吸光度を測定した。
【0043】
(4)細胞毒性
ナノビーズ表面をPS−PGで修飾すると、ナノビーズのJ774.1細胞に対するサイズ依存的な毒性は軽減されることが分かった。
【0044】
(5)IL−12産生誘導効果
i)
PS−PG修飾ラテックスナノビーズ(20LP−2)について
20LP−2を用いてIL−12産生誘導実験を行ったところ、粒子濃度1.0×10
13個/mLで、IL−12発現量は28,878pg/mLに達した。
【0045】
ii)
PS−PG修飾ラテックスナノビーズ(100LP−2)について
100LP−2を用いてIL−12産生誘導実験を行ったところ、粒子濃度が1.0×10
1〜1.0×10
9個/mLでは、IL−12発現量は濃度上昇に伴い251pg/mL〜512pg/mLの濃度範囲で変化していた。しかし、粒子濃度が1.0×10
11個/mLに達するとIL−12の生産量が5,026pg/mLまで急激に上昇した。
【0046】
iii)
PS−PG修飾シリカナノビーズ(500SP−2)について
500SP−2を用いてIL−12産生誘導実験を行ったところ、粒子濃度が1.0×10
1〜1.0×10
7個/mLでは、IL−12発現量は濃度上昇に伴い257pg/mL〜751pg/mLの濃度範囲で変化していたが、粒子濃度が1.0×10
9個/mLに達するとIL−12の産生量が892pg/mLまで急激に上昇した。
【0047】
iv)
PS−PG修飾ラテックスナノビーズ(NP3000−8PSPG)について
NP
3000−8PSPGを用いてIL−12産生誘導実験を行ったところ、粒子濃度が1.0×10
7個/mLで、IL−12産生量が921pg/mLまで急激に上昇した。約20nmのナノビーズでは1.0×10
13個/mL、約100nmのナノビーズでは1.0×10
11個/mL、約500nmのナノビーズでは1.0×10
9個/mLという粒子濃度に閾値(IL−12産生量が急激に上昇する粒子濃度)があったことから考えると、粒子径が大きくなるほど閾値となる粒子濃度が低下することが明らかとなった。
なお、前記NP
3000−8PSPGに相当する量の可溶化PS−PG(細胞壁から分離し可溶化されたPS−PGをビーズに被覆しない状態で添加)を用いてIL−12産生誘導実験を行ったところ、前記NP
3000−8PSPGの粒子濃度に相当する濃度域においてIL−12の産生は誘導されず、IL−12の発現量に顕著な差はなかった。
【0048】
v)
デキストラン修飾ラテックスナノビーズ(20LD−1)について
20LD−1を用いたものに関しては、粒子濃度が1.0×10
1〜1.0×10
13個/mLの範囲でIL−12の産生は誘導されず、IL−12の発現量に顕著な差はなかった。
【0049】
実施例2
(PS−PG修飾ナノビーズの粒径とIL-12産生量の相関)
(i)
PS−PG修飾ラテックスナノビーズの合成
0.5μLのマイクロチューブに50mMリン酸緩衝液(pH8.5)20.0μL、各サイズ(直径:200、300、1000、2000、3000nm)のNP(ラテックスナノビーズ)懸濁液20μL、100mMシアノ水素化ホウ素ナトリウム水溶液30.0μL、各サイズのNP表面に存在するアミノ基に対して8モル当量になるようにミリQ水で濃度調整したラクトバチルス・カゼイ由来PS−PG溶液を20μL加えた。その後、溶液をボルテックスにて撹拌し、45℃で72時間加熱した。その後、反応溶液を遠心し(11,000rpm、15min、4℃)ナノビーズを沈殿させた。ナノビーズ反応溶液の上清を取り除き、ミリQ水を加えボルテックスで撹拌した。再度、遠心分離(11,000rpm 15min 4℃)した後に上清を取り除き、ナノビーズにミリQ水を加えボルテックスで撹拌した。この操作を7回繰り返した。
【0050】
(ii)
ELISAによるIL−12濃度の定量
J774.1細胞(マウスマクロファージ様株化細胞)を96wellプレートに1×10
5cells/wellで分注し(100μL)、37℃5%CO
2で2時間インキュベートした。その後、濃度調整した(1.0×10
9個/mL)各サイズのPS−PG修飾ラテックスビーズ溶液を各wellに100μLずつ添加し、37℃5%CO
2で24時間インキュベートした。24時間後、培養上清を0.45μmフィルターにて濾過回収後、ELISA用サンプルとして−20℃で保存した。ELISA用96wellプレートにpurified rat anti−mouse IL−12 p40/p70(pH9.6のNa
2CO
3緩衝液で10μg/mLに希釈)を50μL添加し、4℃で一晩インキュベートしプレートへ固層化した。その後、0.05%Tween20−PBSにて5回洗浄し、1%BSA−Na
2CO
3緩衝液を100μL添加し4℃下で24時間インキュベートした。各wellをPBSにて4回洗浄し、サンプルおよび1%BSA−PBSで(4000pg/mL、2000pg/mL、1000pg/mL、500pg/mL、250pg/mL、125pg/mL、62.5pg/mL、0pg/mL)となるよう希釈したrecombinant mouse IL−12 p70を50μL添加し、室温で90分間反応した。各wellをPBSにて4回洗浄し、1%BSA−PBSで希釈したbiotin rat anti−mouse IL12 p40/p70(1.0μg/mL)を50μL添加し室温で90分間反応した。PBSにて4回洗浄後、1%BSA−PBSで20000倍希釈したペルオキシターゼ標識ストレプトアビジン溶液50μLを添加し、暗中室温下で30分間反応させた。PBSにて4回洗浄し、TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)基質溶液50μLを添加し、暗中室温下で20分反応させマイクロプレートリーダーにて620nmの吸光度を測定した。その後、1M H
2SO
4を50μL添加し反応を停止させ、マイクロプレートリーダーにて450nmおよび620nmの吸光度を測定した。
【0051】
(iii)結果
PS−PG修飾ラテックスナノビーズの担体の粒子径(200nm〜3000nm)とIL−12産生作用との関係を
図1に示す。
図1から明らかなように、粒子状担体の平均粒子径が300nm〜2000nmであるPS−PG含有粒子のIL−12産生誘導能が特に優れていることがわかる。
【0052】
実施例3
(
ラクトバチルス・ジョンソニー由来PS−PG含有粒子のIL−12産生誘導能)
(i)
ラクトバチルス・ジョンソニー由来PS−PG修飾ラテックスナノビーズの合成
ラクトバチルス・ジョンソニー YIT 0219
T(JCM 2012
T)由来PS−PG溶液の調製は、実施例1のラクトバチルス・カゼイ由来由来PS−PG溶液の調製方法と同様の方法により行った。
0.5μLのマイクロチューブに50mMリン酸緩衝液(pH8.5)20.0μL、直径:1μmのNP(ラテックスナノビーズ)懸濁液20μL、100mMシアノ水素化ホウ素ナトリウム水溶液30.0μL、NP表面に存在するアミノ基に対して8モル当量になるようにミリQ水で濃度調整した
ラクトバチルス・ジョンソニー由来PS−PG溶液を20μL加えた。その後、溶液をボルテックスにて撹拌し、45℃で72時間加熱した。その後、反応溶液を遠心し(11,000rpm、15min、4℃)ナノビーズを沈殿させた。ナノビーズ反応溶液の上清を取り除き、ミリQ水を加えボルテックスで撹拌した。再度、遠心分離(11,000rpm、15min、4℃)した後に上清を取り除き、ナノビーズにミリQ水を加えボルテックスで撹拌した。この操作を7回繰り返した。
(ii)
ELISAによるIL−12濃度の定量
J774.1細胞を96wellプレートに1×10
5cells/wellで分注し(100μL)、37℃、5%CO
2で2時間インキュベートした。その後、濃度調整した各サイズのPS−PG修飾ラテックスビーズ溶液を各wellに100μLずつ添加し、37℃、5%CO
2で24時間インキュベートした。24時間後、培養上清を0.45μmフィルターにて濾過回収後、ELISA用サンプルとして−20℃で保存した。ELISA用96wellプレートにpurified rat anti−mouse IL−12 p40/p70(pH9.6のNa
2CO
3緩衝液で10μg/mLに希釈)を50μL添加し、4℃で一晩インキュベートしプレートへ固層化した。その後、0.05%Tween20−PBSにて5回洗浄し、1%BSA−Na
2CO
3緩衝液を100μL添加し4℃下で24時間インキュベートした。各wellをPBSにて4回洗浄し、サンプルおよび1%BSA−PBSで(4000pg/mL、2000pg/mL、1000pg/mL、500pg/mL、250pg/mL、125pg/mL、62.5pg/mL、0pg/mL)となるよう希釈したrecombinant mouse IL−12 p70を50μL添加し、室温で90分間反応した。各wellをPBSにて4回洗浄し、1%BSA−PBSで希釈したbiotin rat anti−mouse IL12 p40/p70(1.0μg/mL)を50μL添加し室温で90分間反応した。PBSにて4回洗浄後、1%BSA−PBSで20000倍希釈したペルオキシターゼ標識ストレプトアビジン溶液50μLを添加し、暗中室温下で30分間反応させた。PBSにて4回洗浄し、TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)基質溶液50μLを添加し、暗中室温下で20分反応させマイクロプレートリーダーにて620nmの吸光度を測定した。その後、1M H
2SO
4を50μL添加し反応を停止させ、マイクロプレートリーダーにて450nmおよび620nmの吸光度を測定した。
【0053】
(iii)結果
ラクトバチルス・ジョンソニー由来PS−PG修飾ナノ粒子のJ774.1細胞に対するIL−12産生誘導能は、粒子濃度1×10
8粒子/mLで870,000pq/mLに達した。L.Johnsonii由来PS−PGは菌体レベルでIL−12産生誘導能を示さないことが知られていることから、この実験結果は、IL−12産生誘導を示さない乳酸菌由来のPS−PGでも、本発明のように粒子化(粒子状担体表面上に担持)することにより、IL−12産生誘導能を示すようになることを示唆している。