(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6358938
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】排気熱回収装置
(51)【国際特許分類】
F01N 5/02 20060101AFI20180709BHJP
H01L 35/30 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
F01N5/02 J
F01N5/02 G
H01L35/30
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-241032(P2014-241032)
(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2016-102446(P2016-102446A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】100084124
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 一眞
(72)【発明者】
【氏名】柴田 敏博
(72)【発明者】
【氏名】太田 真志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 孝司
【審査官】
首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4486963(JP,B2)
【文献】
特表2009−528207(JP,A)
【文献】
特開平11−027969(JP,A)
【文献】
特許第3767509(JP,B2)
【文献】
独国特許出願公開第10052953(DE,A1)
【文献】
特開2009−127544(JP,A)
【文献】
特表2015−523489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガスを導入する主排気流路と、該主排気流路から分岐し当該主排気流路と合流部において合流する迂回流路と、前記合流部において前記主排気流路と前記迂回流路を開閉する弁装置とを備える排気熱回収装置において、前記迂回流路には前記迂回流路内の排気ガスと熱交換をする熱交換器及び熱電発電装置が直列状に介装されており、前記弁装置は前記主排気流路及び前記迂回流路の一方を閉塞した状態で他方の流路面積を連続的に設定する単一の弁部材であり、前記熱交換器及び前記熱電発電装置は共通の冷却媒体の流路を具備し、前記内燃機関の冷却媒体を導入して熱交換を行うことを特徴とする排気熱回収装置。
【請求項2】
前記単一の弁部材を前記内燃機関の運転状態に応じて駆動し、前記主排気流路及び前記迂回流路の流路切換を行うと共に、前記主排気流路及び前記迂回流路の各々の流路面積調整を行う制御装置を備えたことを特徴とする請求項1記載の排気熱回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の内燃機関等の排気熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関で動く自動車の総合的な熱効率の向上のために、内燃機関の排気熱を熱交換器で回収し冷却媒体を加熱して暖機促進や暖房性能向上に供する排気熱回収装置を、排気管に介装することが多用されている。また、排気熱を直接電気へ変換し、補機駆動やバッテリー充電に供する熱電発電装置を排気管に介装することも提案されている。そこで、排気熱の更なる有効活用の観点から、熱交換器と熱電発電装置を両方とも排気管に介装する統合型の排気熱回収装置も考え得るが、互いに必要とされる運転領域が異なること、あるいは、両方とも必要としない運転領域(バイパス域)も存在することから、各装置への排気ガスおよび冷却媒体の供給を上手く制御する必要があり、その実現は困難となっている。
【0003】
理想的には、(α)熱電発電装置を介装する流路、(β)熱交換器を介装する流路、(γ)(α)(β)とも迂回して流れるバイパス流路、の三流路を独立して備え、三流路を選択的に切り替え得るとともに選択した複数流路における流量割合を連続的に分配制御できるような排気熱回収装置があれば好適であるが、そのような複数の独立流路および切り替えバルブを具備する大型システムは制御が困難となる上に、重量やスペースにおいて車両搭載上も著しく制限を受けるため、実現性が乏しい。
【0004】
そのような問題の一解決策として特許文献1においては、単一の筐体内に熱交換器と熱電発電装置(熱電発電素子)と板状バルブ体(開閉弁)とを備え、筐体内の排気ガスの流れを板状バルブ体の姿勢によって向きを変えることで、熱交換器と熱電発電素子への排気ガスの当たり方を変えて、疑似的に上記(α)(β)(γ)のような各流路を現出させる排気熱回収装置が開示されている。尚、特許文献2には、「内燃機関に接続される排気流路を構成する少なくとも二つの流路を備えた内燃機関の排気装置において、単一の弁部材によって流路切換を行うと共に各々の流路面積調整を適切に行い得る排気装置」が開示されている(特許文献2の段落〔0014〕に記載)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3767509号公報
【特許文献2】特許第4486963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される排気熱回収装置においては、上述の(α)(β)(γ)のような独立した流路を確保できないとともに、各流路におけるガス流量分配を大雑把にしか調節できないため、要求を満たせていない。
【0007】
実際の車両運転状態においては、内燃機関の高負荷運転時には、熱交換器と熱電発電素子には排気ガスを接触させることなく主排気流路(バイパス流路)にだけ流すことで、内燃機関の出力性能を確保するとともに過剰な熱回収および熱電発電を回避したい。しかしながら特許文献1の排熱回収装置によっては、内燃機関の高負荷時においても熱交換器と熱電発電素子に高温大流量のガスが当たってしまうため、熱交換器においては冷却水の沸騰が、熱電発電装置においては熱電発電素子への熱害が懸念される。もちろん、流路抵抗を最小にして内燃機関の出力性能を稼ぎたいとの本来目的も達成できない。
【0008】
また、内燃機関の低負荷乃至中負荷運転領域においては、熱回収および熱電発電に必要な熱量分だけの排気ガスを両者へ接触させるとともに、それ以上の不要な排気ガスは主排気流路へ流すというような各流路における流量調節(分配制御)が必要であるところ、特許文献1の排熱回収装置のような単一空間内における流向制御では実現が不可能である。さらに、主排気流路を内燃機関の運転状態によって絞り、消音要件を優先させるような制御も実現できない。
【0009】
そこで本発明は、簡略な流路構成及び単一の制御弁によって、各流路の選択とともに流量制御を可能とし、効率的な熱回収と熱電発電を実現し得る排気熱回収装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するため、本発明に係る排気熱回収装置は、内燃機関の排気ガスを導入する主排気流路と、該主排気流路から分岐し当該主排気流路と合流部において合流する迂回流路と、前記合流部において前記主排気流路と前記迂回流路を開閉する弁装置とを備え、前記迂回流路には前記迂回流路内の排気ガスと熱交換をする熱交換器及び熱電発電装置
が直列状に介装されており、前記弁装置は前記主排気流路及び前記迂回流路の一方を閉塞した状態で他方の流路面積を連続的に設定する単一の弁部材で
あり、前記熱交換器及び前記熱電発電装置は共通の冷却媒体の流路を具備し、前記内燃機関の冷却媒体を導入して熱交換を行うこととしたものである。
【0011】
上記の排気熱回収装置において、前記単一の弁部材を前記内燃機関の運転状態に応じて駆動し、前記主排気流路及び前記迂回流路の流路切換を行うと共に、前記主排気流路及び前記迂回流路の各々の流路面積調整を行う制御装置を備えたものとするとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述のように構成されているので、以下の効果を奏する。即ち、本発明の排気熱回収装置においては、主排気流路及び迂回流路の一方を完全に閉塞した状態で他方流路の面積を連続的に設定する弁装置を合流部に備えるとともに、迂回流路に熱交換器と熱電
発電装置が直列状に介装されており、弁装置は主排気流路及び迂回流路の一方を閉塞した状態で他方の流路面積を連続的に設定する単一の弁部材であり、熱交換器及び熱電発電装置は共通の冷却媒体の流路を具備し、内燃機関の冷却媒体を導入して熱交換を行うこととしているので、内燃機関の高負荷時には熱交換器と熱電発電
装置には排気ガスを接触させることなく主排気流路にだけ流すことで内燃機関の出力性能を確保できるとともに、過剰な熱回収および熱電発電を回避できる。また、主排気流路を閉塞しながら迂回流路の流路面積を任意に設定できるので、内燃機関の運転状態に応じ熱回収量及び熱電発電量を設定できる。さらに、迂回流路と主排気流路へ同時に流しながらその配分も任意に設定できるので、内燃機関の運転状態に応じた要求状態に対応可能となる。
【0014】
上記の排気熱回収装置において、単一の弁部材を内燃機関の運転状態に応じて駆動し、主排気流路及び迂回流路の流路切換を行うと共に、主排気流路及び迂回流路の各々の流路面積調整を行う制御装置を備えたものとすれば、熱回収及び熱電発電要求、内燃機関の出力性能要求、流路絞りによる消音要求等において、時々刻々の優先度に応じたトレードオフ制御が可能となる
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る排気熱回収装置の暖機状態を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る排気熱回収装置の暖機後の通常運転状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る排気熱回収装置の熱回収および熱電発電状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る排気熱回収装置の消音要件優先状態を示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る排気熱回収装置のバイパス状態を示す断面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る排気熱回収装置の暖機状態を示す断面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る排気熱回収装置の通常運転状態を示す断面図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る排気熱回収装置のバイパス状態を示す断面図である。
【
図9】本発明の更に他の実施形態に係る排気熱回収装置の暖機状態を示す断面図である。
【
図10】本発明の更に他の実施形態に係る排気熱回収装置の通常運転状態を示す断面図である。
【
図11】本発明の更に他の実施形態に係る排気熱回収装置の通常運転状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の望ましい実施形態について図面を参照して説明する。
図1乃至
図5は本発明の一実施形態に係る排気熱回収装置を示すものである。図示しない内燃機関に接続された上流側排気管EP1と車両後方へ延びる下流側排気管EP2との間に、排気熱回収装置1が接続されている。これらの接続方法については、本実施形態のように接続部J1及びJ2において溶接等で直接接続することとしてもよいし、フランジや継手装置を介して着脱自在に接続することとしてもよい。尚、図面の左方が排気ガスの上流側で、図示しない内燃機関より触媒コンバータ等を経て、排気ガスが排気管EP1内を流下する。そして、図の右方が排気ガスの下流側となる。
【0017】
排気管EP1に接続する分岐部4において主排気流路2と迂回流路3とに分岐しており、両流路は下流の合流部5において合流する。合流部5内には、両流路の流れを選択し、かつ流量配分を制御し得る弁装置である単一の弁部材10が配されている。迂回流路3には、上流側に熱電発電装置6が、下流側に熱交換器7が、直列状に介装されている。即ち、本発明における排気熱回収装置は全ての実施形態ともに、熱電発電装置6及び熱交換器7を介装する迂回流路と両方とも介装しない主排気流路との二つの流路で構成される。
【0018】
熱電発電装置6は、複数の熱電発電素子6aで熱交換フィン6bを挟持するとともに、熱電発電素子6aの外面には冷却媒体通路6cが設けられた構造である。迂回流路3を流れる排気ガスは熱交換フィン6b内を通過する際に熱交換し、その熱が熱電発電素子6aの内側面に伝達される。一方、熱電発電素子6aの外側面は冷却媒体流路6c内を流れる冷却媒体とも熱交換するが、ここにおいて、排気ガスからの伝熱と冷却媒体への伝熱の温度差ΔTが大きいほど、その発電量が大きくなる特性がある。熱交換器7は、複数の冷却フィン7aと複数の冷却媒体流路7bとが交互に積層されて熱交換器を形成しており、冷却フィン7aを通過する排気ガスが冷却媒体と熱交換する。尚、冷却媒体としては、内燃機関を冷却するための車両の冷却システムにて用いられるクーラント液をそのまま導入するのが好適であるが、その他の冷却媒体でも構わない。熱電発電素子としては、ゼーベック効果を利用したものが一般的であるが、上記の熱電発電素子6aは、それに限らず温度差によって発電する素子であればどのようなものでもよい。また、排気ガスは熱交換フィン6b内を通過するに従って温度が低下するので、温度変化に応じて上流側から下流側に向かって対応温度が異なる熱電発電素子を配置すれば、更に効率的な発電が可能となる。
【0019】
熱電発電装置6の冷却媒体流路6cと熱交換器7の冷却媒体流路7bとは連通管8を介して連通されている。導入管6aから冷却媒体流路6cに入った冷却媒体は熱交換を経て連通管8へ排出され、連通管8を通って冷却媒体流路7bへ流入し、更に熱交換を経て導出管7cから排出されて、図示しない車両の冷却水流路へ供される。尚、冷却媒体を流す方向、すなわち冷却媒体流路6cと熱交換器7の冷却媒体流路7bのどちらへ先に冷却媒体を通すかについては、本実施形態に限らず適宜設定すればよいが、本実施形態のように、温度差ΔTを大きく確保するため低い温度の冷却媒体を導入したい熱電発電装置6へ先に通し、熱電発電装置6によって加熱された後の冷却媒体が、より多くの熱を回収したい熱交換器7へ流入するという順序が、合理的である。
【0020】
弁部材10は断面扇形状であり、その要部分をピボット軸9により揺動自在に軸支され、弁部材10の外周壁面が迂回流路3の内壁面および主排気流路の内壁面に摺動自在に配設されている。弁部材10はアクチュエータACTに連結され、このアクチュエータACTを介して、電子制御ユニットECUにより内燃機関の運転状態に応じて駆動制御される。アクチュエータACTは、例えばステップモータ(図示せず)を有し、これが電子制御ユニットECUによって精密に回転駆動あるいは保持固定される。電子制御ユニットECUでは、各種センサ(酸素センサ、圧力センサ、水温センサ、回転センサ、アクセル開度センサ等)の検出信号等に基づき、内燃機関の運転状況、運転者のアクセルペダル等の操作状況、更には、車両姿勢や制動状況が監視され、所定のサイクルで、その時点における弁部材10の最適な位置が演算され、その位置まで回転し、あるいはその位置で停止するように、上記ステップモータの駆動信号が出力される。而して、上記のアクチュエータACT及び電子制御ユニットECUによって制御装置が構成され、主排気流路2と迂回流路3との間の流路切換(各流路の開閉)が行われると共に、主排気流路2および迂回流路3の各々の流路面積調整が行われる。尚、電子制御ユニットECUは、本システム専用に設置しても良いし、車両や内燃機関の電子制御ユニットに統合しても構わない。また、弁部材10の具体的な設定および駆動の詳細については、前掲の特許文献2に開示された弁部材を参考にすることができる。
【0021】
図1においては、主排気流路2が弁部材10によって全閉状態とされ、排気流路は迂回流路3側へ切り替えられる。従って、排気ガスaのすべてが迂回流路3に導入され、熱電発電装置6と熱交換器7にて熱交換された後、合流部5において主排気流路2へ排気ガスbとして排出される。更に、本実施形態においては、主排気流路2が全閉状態に維持された状態で、弁部材10の揺動駆動によって、出力要件及び消音要件に適合するように迂回流路3の流路面積が逐次調整される。例えば、弁部材10と迂回流路3との隙間を流れる排気ガスbの量が調整されると、弁部材10の「絞り機能」により「流量調節機能」が発揮される。尚、弁部材10は無段階に駆動し得るので、主排気流路2を全閉状態に維持した状態で、迂回流路3の流路面積を任意に調整することができる。
【0022】
図1の態様は、内燃機関の始動直後で内燃機関および冷却媒体が温まっていない冷間時、所謂暖機状態を示すもので、冷却媒体が一定温度に達するまでの暖機期間においては、早期に冷却媒体温度を向上させる要件が最優先される。従って、熱交換器7における熱回収が優先されるため、前述のように主排気流路2が、凹部11内に位置する弁部材10によって全閉状態とされ、排気流路は迂回流路3側へ切り替えられている。そして、排気ガスのすべてが迂回流路3に導入され、熱電発電装置6と熱交換器7にて熱交換された後、合流部5において主排気流路2へ排出される。この時、熱電発電装置6にて熱交換された排気ガスが熱交換器7へ流入することになるが、熱電発電素子自体は低熱伝導率のため熱回収量は微々たるものであり、悪影響はない。尚、暖機過程においては、弁部材10によって主排気流路2が全閉となるのが好ましいが、排気ガスの完全遮断が必須ではないので、主排気流路2の排気流量が必要なだけ絞られていれば、必ずしも全閉状態とする必要はなく、若干開いた状態でも構わない。
【0023】
図2の態様は、暖機が完了後の通常運転状態を示すものであり、内燃機関の中回転乃至高回転時の状態において適度な熱電発電および熱回収を実施するものである。この状態においては、弁部材10は主排気流路2と迂回流路3の両方に排気ガスを流せる範囲内で揺動し、時々刻々の優先要件に従い電子制御ユニットECUからの指示を受けて、各流路へ流す割合(配分)を決めている。すなわち、主排気流路2を流れる量eは隙間gによって決まり、迂回流路3を流れる量dは隙間fによって決まるので、これら両隙間の大きさをトレードオフ調整することで、熱電発電量および熱回収量と、消音量あるいは内燃機関の出力を適宜選択できる。
【0024】
このように本発明の排気熱回収装置によれば、前述の(α)(β)(γ)の独立した三流路とその切替弁を必要とせずに、特に(α:熱電発電素子を介装する流路)と(β:熱交換器を介装する流路)を統合し、二流路と単一の弁体だけの簡易な全体構成で、従来の課題を解決できる。更に、熱電発電および熱回収要件、消音要件、内燃機関出力要件を、車両側からの優先要求に従って統合的にトレードオフ制御することも可能となる。
【0025】
図3および
図4の態様は、暖機後の通常運転時においても
図2のように両流路に排気ガスを流すことをせず、あえて片側の流路のみに流すことで優先する要件を満たすものである。例えば
図3の態様は、迂回流路3を流れる排気ガス流量hを絞ることで熱電発電装置6および熱交換器7に流れる排気ガスの流速を遅くして、積極的に熱電発電量および熱回収量を増やすような制御形態である。また
図4の態様は、主排気流路2のみに排気ガスを流し、かつ排気ガス流量iを絞っている。このようにすることで、熱電発電および熱回収が不要の状態における消音要件を優先させることができる。
【0026】
図5の態様は、内燃機関の中回転乃至高回転時、あるいは高負荷時の状態を示すもので、主排気流路2が全開状態とされると共に、迂回流路3が全閉状態とされる。すなわち、前述の(γ)に対応する態様である。これにより、熱交換器と熱電発電素子に高温大流量の排気ガスを接触させることがなくなるので、熱交換器においては過度の熱回収および冷却水の沸騰を、熱電発電装置においては過度の発電や素子への熱害を、それぞれ防止できる。もちろん、主排気流路2(バイパス流路)にだけ抵抗なく排気ガスを流すことで、内燃機関の出力性能を確保することもできる。
【0027】
図6乃至
図8は、本発明の第2の実施形態に係る排気熱回収装置1xを示すものであり、前述の第1の実施形態に対して、熱電発電装置6と熱交換器7の配置順序が逆となっている。即ち、迂回流路3における上流側に熱交換器7を配置すると共に下流側に熱電発電装置6を配置したものである。このような配置とすることにより、内燃機関から流下してきた排気ガスが直接熱交換器7に導入されるため、暖機時の冷却媒体の早期温度上昇に寄与する。尚、冷却媒体の導入順序については、第1の実施形態と同様に熱電発電装置6へ先に通し、熱電発電装置6によって加熱された後の冷却媒体が熱交換器7へ流入するという順序が、合理的であるが、必要に応じて適宜順序を入れ替えても構わない
【0028】
図6の態様は、第1の実施形態における
図1の態様と同じ状態を示すものであり、内燃機関の暖機中の状態である。内燃機関から流下してきた排気ガスが直接熱交換器7に導入されるため、暖機時の冷却媒体の早期温度上昇に効果的である。
【0029】
図7の態様は、第1の実施形態における
図2の態様と同じ状態、すなわち暖機完了後の内燃機関の中回転乃至高回転時における状態を示すものであり、適度な熱電発電および熱回収を実施する状態である。この状態においては、弁部材10は主排気流路2と迂回流路3の両方に排気ガスを流せる範囲内で揺動し、時々刻々の優先要件に従い電子制御ユニットECUからの指示を受けて、各流路へ流す割合(配分)を決めている。この場合においても、熱電発電よりも熱回収を積極的に実施できる構造として有効である。
【0030】
図8の態様は、第1の実施形態における
図3の態様と同じ状態、すなわち内燃機関の中回転乃至高回転時、あるいは高負荷時の状態を示すもので、主排気流路2が全開状態とされると共に、迂回流路3が全閉状態とされる。この場合においては熱電発電装置6と熱交換器7の順序は関係が無いが、
図3の態様と同様に、熱交換器においては過度の熱回収および冷却水の沸騰を、熱電発電装置においては過度の発電や素子への熱害を、それぞれ防止できると共に、主排気流路2(バイパス流路)にだけ抵抗なく排気ガスを流すことで、内燃機関の出力性能を確保することもできる。
【0031】
図9乃至
図11は、本発明の第3の実施形態に係る排気熱回収装置1yを示すものであり、前述の第1の実施形態に対して、冷却媒体の流路および制御が異なる。
図9において、図示しない車両の冷却媒体通路から分岐してきた冷却媒体配管210が分岐211において第1導入管212および第2導入管213とに分かれ、第1導入管212は熱電発電装置6に、第2導入管213は熱交換器7へそれぞれ接続される。そして熱電発電装置6に接続された第1導出管214と熱交換器7に接続された第2導出管215は切換弁217に接続されている。冷却媒体の流れを切替える切換弁217は、第1導出管214内および第2導出管215内を流れて来る冷却媒体の流れを選択可能な所謂三方弁であり、第1導出管214からの冷却媒体と第2導出管215からの冷却媒体の流れについて、何れか一方を選択するか、あるいは両方を選択することが可能である。従って、熱電発電装置6と熱交換器7について、何れか一方のみに冷却媒体を流すことも、両方に冷却媒体を流すことも自在である。尚、三方弁の構造については周知であるため、図示を省略する。
【0032】
図9の態様は、第1の実施形態における
図1の態様と同じ状態であり、内燃機関の暖機中の状態である。暖機過程において早く車両の冷却媒体を昇熱させたいとの要求を優先して、切換弁217を操作して冷却媒体を熱交換器7のみに流す状態とし、熱電発電装置6には流さない。それにより、熱電発電装置6に冷却水の熱を奪われることがなくなるため、冷却媒体の早期温度上昇が促進される。
【0033】
図10の態様は、第1の実施形態における
図2の態様と同じ状態であり、内燃機関の中回転乃至高回転時の状態において適度な熱発電および熱回収を実施するものである。この状態においては、切換弁217を操作して熱電発電装置6と熱交換器7の両方に冷却媒体を流す状態とする。低い温度の冷却媒体を直接導入したい熱電発電装置6が熱交換器7の影響を受けることがなくなり、発電効率を高めることができる。特に寒冷地などにおいては、熱交換器7における常時熱回収によって暖房補助としたいニーズがあり、本実施形態によれば、熱発電と常時熱回収を効率的に両立させることができる。
【0034】
一方、内燃機関の中回転乃至高回転時の状態において、熱回収する必要がなく、積極的に熱発電を実施したいような場合においては、
図11の態様のように、切換弁217を操作して熱電発電装置6のみに冷却水を流し、熱交換器7への流入を止めると良い。但し、熱交換器7に排気ガスが流入し、熱交換器7内での冷却媒体が沸騰する懸念があるため、熱交換器7内で冷却媒体温度を何らかの手段で監視しておくことが好ましい。
【符号の説明】
【0035】
1 、1x、1y 排気熱回収装置
2 主排気流路
3 迂回流路
4 分岐部
5 合流部
6 熱電発電装置
6a 熱電素子
6b 熱交換フィン
6c 冷却媒体流路
6d 導入管
7 熱交換器
7a 熱交換フィン
7b 冷却媒体流路
7c 導出管
8 連通管
9 ピボット軸
10 弁装置
11 凹部
210、216 冷却媒体配管
211 分岐
212 第1導入管
213 第2導入管
214 第1導出管
215 第2導出管
217 切換弁