(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記EL共通層の膜厚は、前記画素電極の主面を被覆する部分の膜厚よりも、前記画素電極の端部を被覆する部分の膜厚の方が厚いことを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施の形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0015】
また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0016】
(第1の実施形態)
<表示装置の構造>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置100の概略構成を示す上面図である。有機EL表示装置100は、基板101上に形成された、画素部(表示領域)102、走査線駆動回路103、データ線駆動回路104、及びドライバIC105を備えている。さらに、走査線駆動回路103及びデータ線駆動回路104に信号を与えるためのFPC(Flexible Printed Circuits)を備えていてもよい。
【0017】
図1に示す画素部102には、複数の画素がマトリクス状に配置される。各画素には、データ線駆動回路104から画像データに応じたデータ信号が与えられる。それらデータ信号を、各画素に設けられたトランジスタを介して画素電極に与えることにより、画像データに応じた画面表示を行うことができる。トランジスタとしては、典型的には、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)を用いることができる。但し、薄膜トランジスタに限らず、電流制御機能を備える素子であれば、如何なる素子を用いても良い。
【0018】
図2は、
図1に示す有機EL表示装置100における画素部102の概略構成を示す断面図である。本実施形態において、画素201は、赤(R)に対応するサブ画素201R、緑(G)に対応するサブ画素201G及び青(B)に対応するサブ画素201Bを含む。各サブ画素には、薄膜トランジスタ202が設けられる。薄膜トランジスタ202を用いて各サブ画素201R、201G及び201Bをオン/オフ制御することにより、各サブ画素に対応する任意の色を発光させ、1つの画素として様々な色を表現できる。
【0019】
図2では、サブ画素として、RGBの三原色を用いる構成を示したが、本実施形態はそれに限定されるものではなく、RGBに白(W)又は黄(Y)を加えた4つのサブ画素で画素201を構成することもできる。また、画素配列として、同一色に対応する画素がストライプ配列された例を示したが、その他デルタ配列やベイヤー配列、又はペンタイル構造を実現する配列であってもよい。
【0020】
図3は、
図2に示す画素201をA−A’で切断した断面の概略構成を示す断面図である。
図3において、基板301上には、下地層302として、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム等の無機材料で構成される絶縁層が設けられ、その上に薄膜トランジスタ303が形成されている。
【0021】
基板301としては、ガラス基板、石英基板、フレキシブル基板(ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートその他の曲げることが可能な基板)を用いることができる。基板301が透光性を有する必要がない場合には、金属基板、セラミックス基板、半導体基板を用いることも可能である。
【0022】
薄膜トランジスタ303は、公知の方法で形成すればよい。また、トップゲート型であってもボトムゲート型であってもよい。本実施形態の有機EL表示装置100では、薄膜トランジスタ303を覆うように第1の絶縁層304を設け、薄膜トランジスタ303に起因する凹凸を平坦化する構造としている。第1の絶縁層304としては、樹脂材料を用いることが好ましい。例えば、ポリイミド、ポリアミド、アクリル等の有機材料を用いることができる。有機材料に代えて、酸化シリコン等の無機材料を用いることも可能である。さらに、下層側が酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁無機材料、上層側がポリイミド、ポリアミド、アクリル等の絶縁有機材料の2層で構成された積層膜を第1の絶縁層304に適用しても良い。
【0023】
第1の絶縁層304上には、画素電極305が設けられる。画素電極305は、第1の絶縁層304に形成されたコンタクトホールを介して薄膜トランジスタ303に接続されている。本実施形態の有機EL表示装置100において、画素電極305は、有機EL素子を構成する陽極(アノード)として機能する。
【0024】
画素電極305は、有機EL素子から発した光を上方向(第1の絶縁層304を通過しない方向)に出射するか、下方向(第1の絶縁層304を通過する方向)に出射するかで異なる構成とする。例えば、光を上方向に出射する場合、画素電極305として反射率の高い金属膜を用いるか、酸化インジウム系透明導電膜や酸化亜鉛系透明導電膜といった仕事関数の高い透明導電膜と金属膜との積層構造を用いれば良い。逆に、光を下方向に出射する場合、画素電極305として上述した透明導電膜を単層で用いれば良い。
【0025】
画素電極305の上には、第1のEL共通層306が設けられる。第1のEL共通層306は、画素電極305から後述する発光層307への正孔(ホール)の移動を補助する機能を有する機能層である。具体的には、公知の正孔注入層、正孔輸送層またはそれらの積層構造を用いることができる。例えば、正孔注入層としては、芳香族アミン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、フェニルアミン誘導体などが知られている。正孔輸送層としては、PEDOT/PSSなどが知られている。
【0026】
本実施形態の有機EL表示装置100は、この第1のEL共通層306が、画素電極305の主面及び端部を被覆するように設けられている。「画素電極の主面」とは、画素電極において発光層と向かい合う面を指す。「画素電極の端部」とは、画素電極を平面視した場合における縁(エッジ)を指す。本実施形態の有機EL表示装置100では、
図3に示されるように、画素電極305の露出部分全体を覆うように、第1のEL共通層306が設けられる。
【0027】
このとき、画素電極305の端部が十分な膜厚の第1のEL共通層306で被覆される。これにより、画素電極305と後述する共通電極309との短絡(ショート)を防止することができる。
【0028】
さらに、後述の実施形態で説明するが、画素電極305と薄膜トランジスタ303とを接続するためのコンタクトホールに起因する凹部を、第1のEL共通層306で充填することも可能である。したがって、第1のEL共通層306により、画素電極305の画素電極305の主面が形成する凹部を平坦化することができる。この凹部を平坦化することで、その上に配置される発光層307や第2のEL共通層308の形状が平坦化され、画素電極305と共通電極309との間に不所望なリークや短絡が発生するのが抑えられる。
【0029】
なお、後述するが、本実施形態では、第1のEL共通層306を静電方式の液滴吐出法(例えばインクジェット法)を用いて形成する。
【0030】
第1のEL共通層306の上には、発光層307が設けられる。発光層307は、正孔と電子とが再結合する際のエネルギーにより光を発する機能層である。発光層307として公知の有機性発光材料を用いることができる。例えば、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、パラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体などが知られている。また、これら有機性発光材料をRGBの各色に発光させるため、適当な材料を添加しても良い。例えば、DCM、ローダミン、ナイルレッド等の赤色用材料、クマリン、キナクリドン等の緑色用材料又はペリレン、テトラフェニルブタジエン等の青色用材料を添加しても良い。
【0031】
本実施形態の有機EL表示装置100では、従来のバンク構造を採用していないため、画素電極305の面積を十分に有効活用して、有機EL素子を形成することができる。例えば、画素電極305と発光層307とがほぼ全域で重なるように両者を配置することにより、画素電極305全体を有機EL素子の陽極として活用することができる。
【0032】
但し、画素電極305の端部は、電界乱れが生じやすく、第1のEL共通層306や発光層307の膜厚が不均一になりやすい。そのため、発光層307の端部が、画素電極305の端部から内側に0.5〜1.5μmの範囲に位置するように制御することが好ましい。本実施形態では、第1のEL共通層306と同様に、発光層307も静電方式の液滴吐出法で形成するため、精度の高い位置制御が可能である。勿論、発光層307の端部が画素電極305の端部より外側に位置するように制御しても構わない。
【0033】
発光層307の上には、第2のEL共通層308が設けられる。第2のEL共通層308は、隣接する共通電極309から発光層307への電子の移動を補助する機能を有する機能層である。具体的には、公知の電子注入層、電子輸送層またはそれらの積層構造を用いることができる。例えば、電子注入層としては、LiF等の金属フッ化物が知られている。電子輸送層としては、トリアジン誘導体などが知られている。
【0034】
本実施形態の有機EL表示装置100では、第2のEL共通層308を複数の画素に跨って設けているが、画素単位に分離させても良い。また、省略して設けない構造とすることも可能である。
【0035】
第2のEL共通層308の上には、共通電極309が設けられる。本実施形態の有機EL表示装置100において、共通電極309は、有機EL素子を構成する陰極(カソード)として機能する。
【0036】
共通電極309は、有機EL素子から発した光を上方向(絶縁層304を通過しない方向)に出射するか、下方向(絶縁層304を通過する方向)に出射するかで異なる構成とする。例えば、光を上方向に出射する場合、共通電極309として酸化インジウム系透明導電膜や酸化亜鉛系透明導電膜を用いれば良い。それ以外にも光が透過される程度の厚みである5〜30nm程度のMgAg合金等の仕事関数の低い金属膜を用いてもよい。逆に、光を下方向に出射する場合、共通電極309として、光が反射される程度の厚み(上述した厚みの10倍程度である50〜300nm程度)を持つMgAg合金等の仕事関数の低い金属膜を用いれば良い。
【0037】
共通電極309の上には、第2の絶縁層310が設けられる。第2の絶縁層310は、外部からの水分や汚染物質の侵入を防ぐための封止膜として機能する。第2の絶縁層310としては、緻密な膜質を有する窒化シリコン系もしくは酸化アルミニウム系の絶縁層を用いることが好ましい。
【0038】
第2の絶縁層310の上には、ブラックマスク311が設けられる。本実施形態の有機EL表示装置100では、ブラックマスク311として、カーボンブラック(黒色顔料)を分散させた樹脂層を用いる。ただし、これに限らず、遮光層としての機能を果たすものであれば、導電層をブラックマスク311として設けても良い。
【0039】
ブラックマスク311の上には、第3の絶縁層312が設けられる。第3の絶縁層312は、基板301上に形成された有機EL素子やその他の各要素を保護するための保護層として機能する。例えば、第3の絶縁層312としては、ポリイミド、アクリル等の樹脂材料で構成される樹脂層を設けても良い。また、酸化シリコン層などの無機材料で構成される絶縁層を設けても良い。
【0040】
図3においては図示しないが、第3の絶縁層312の上に、さらに偏光板やタッチパネルを設けても良い。その場合には、有機EL素子やその他の各要素を機械的な外因(例えば、タッチパネルを押した際の圧力)等から保護する機能をも持つ。また、必要に応じて、第3の絶縁層312上にカラーフィルタを設けても良い。
【0041】
以上のように、本実施形態の有機EL表示装置100は、画素電極305の主面及び端部を第1のEL共通層306で被覆した構造としている。これにより、従来のバンクを用いずに、画素電極305の端部を十分な膜厚の第1のEL共通層306で被覆することが可能となり、EL素子を構成する画素電極と共通電極との間の短絡を防止することができる。
【0042】
さらに、画素電極305のコンタクトホールに起因する凹部を第1のEL共通層306で充填することができるため、バンクを用いずに、画素電極305のコンタクトホールを平坦化することができる。
【0043】
以下、上述した構成を備える本実施形態の有機EL表示装置100の製造工程について、
図4〜7を参照して説明する。
【0044】
<表示装置の製造方法>
まず、
図4(A)に示すように、基板301上に下地層302を形成し、その上に公知の方法により薄膜トランジスタ(TFT)303を形成する。そして、薄膜トランジスタ303の形成により生じた凹凸を平坦化するように、第1の絶縁層304を形成する。
【0045】
基板301としては、ガラス基板、石英基板、フレキシブル基板(ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートその他の曲げることが可能な基板)等を用いることができる。基板301が透光性を有する必要がない場合には、金属基板、セラミックス基板、半導体基板を用いることも可能である。
【0046】
下地層302としては、典型的には、酸化シリコン系絶縁膜、窒化シリコン系絶縁膜またはそれらの積層膜を用いることができる。下地層302は、基板301からの汚染物質の侵入を防いだり、基板301の伸縮により発生する応力を緩和したりする機能を有する。
【0047】
薄膜トランジスタ303は、本実施形態では、トップゲート型TFTを形成する例を示しているが、逆スタガ型TFTであっても良い。また、スイッチング素子として機能する素子であれば、薄膜トランジスタなどの三端子素子に限らず、二端子素子を形成しても良い。
【0048】
第1の絶縁層304は、ポリイミドやアクリルといった樹脂材料を塗布し、その後樹脂材料を硬化させて形成すれば良い。第1の絶縁層304の膜厚は、薄膜トランジスタ303に起因する凹凸を平坦化するに十分な膜厚であれば良い。典型的には、1〜3μmとすることができるが、これに限定されるものではない。
【0049】
次に、
図4(B)に示すように、第1の絶縁層304に薄膜トランジスタ303に達するコンタクトホールを形成した後、公知の方法により画素電極305を形成する。本実施形態では、公知のスパッタ法によりITO(Indium Tin Oxide)とアルミニウム膜との積層膜を形成した後、公知のフォトリソグラフィにより積層膜をパターン形成して画素電極305を形成する。各画素電極305は、複数の画素に対応する位置にそれぞれ対応するようにパターン形成される。
【0050】
次に、
図5(A)に示すように、第1のEL共通層306を形成する。本実施形態では、第1のEL共通層306として、正孔注入層及び正孔輸送層を積層した機能層を形成する。第1のEL共通層306を構成する具体的な材料については、上述した通りである。それぞれの機能層の膜厚は、各層が正孔注入層や正孔輸送層としての機能を発揮する範囲で適宜決定すれば良い。
【0051】
本実施形態では、第1のEL共通層306の形成に、静電方式の液滴吐出法を用いる。液滴吐出法としては、代表的にはインクジェット法が知られる。静電方式の液滴吐出法は、必要な材料を溶媒に分散させた状態で基板上に滴下し、局所的に必要とする薄膜を形成する手法である。この手法によれば、精度の高い位置合わせを行うことにより局所的な薄膜形成が可能となり、フォトリソグラフィを用いることなく、微細な成膜加工が可能となる。
【0052】
本実施形態で使用する静電方式の液滴吐出法は、ノズルから非常に微細な液滴を吐出することが可能である。典型的には、0.1fl(フェムトリットル)から1.0pl(ピコリットル)の範囲の液滴を約0.2μmの位置合わせ精度で制御して吐出可能である。静電方式の液滴吐出法は公知技術である。本実施形態では、液滴吐出用のノズルを複数設けることにより一度に多くの画素に対して液滴を吐出可能とした液滴吐出装置を用いる。
【0053】
静電方式の液滴吐出法を用いた場合、吐出される液滴が極めて微細なものとなる。したがって、本実施形態のように、第1のEL共通層306を構成する有機材料を有機溶媒に分散させて吐出した場合、液滴が画素電極305に到達する前に溶媒のみがほとんど蒸発する。つまり、第1のEL共通層306を構成する有機材料が、実質的に固体材料となった状態で画素電極305に付着する。そのため、従来のバンクのような壁を設けなくても、狙った位置のみに選択的に第1のEL共通層306を形成することが可能である。
【0054】
具体的には、本実施形態では、第1のEL共通層306を構成する有機材料を溶媒に分散させ、その液滴を静電方式の液滴吐出法を用いて画素電極305の主面及び端部に対して滴下することにより第1のEL共通層306を形成する。その際、第1のEL共通層306の膜厚は、液滴の滴下量や滴下回数で容易に制御することができる。そのため、局所的な膜厚制御を容易に行うことが可能である。
【0055】
したがって、滴下量もしくは滴下回数を選択的に増加させることにより、画素電極305の端部における膜厚を所望の膜厚とすることができる。これにより、バンクのような要素を別途設けることなく、第1のEL共通層306を用いて画素電極305と共通電極308との間の短絡を防ぐことができる。
【0056】
また、画素電極305には、画素電極305と薄膜トランジスタ303とを接続するためのコンタクトホールに起因する凹部が存在する。しかし、本実施形態では、凹部に集中的に液滴を吐出して、凹部を第1のEL共通層306で充填することが可能である。これにより、第1のEL共通層306を用いて画素電極305の主面が形成する凹部を平坦化することが可能である。
【0057】
さらに、本実施形態では、液滴吐出法を用いることにより従来のバンク構造を不要としたため、バンクの形成に必要な各種プロセス(樹脂の塗布工程、硬化工程、パターニング工程)を省略することができる。その上、EL共通層を形成した後の溶媒を揮発させるための焼成工程をも省略することができる。これらの結果、有機EL表示装置の製造工程を大幅に削減することが可能である。
【0058】
次に、
図5(B)に示すように、第1のEL共通層306の上に発光層307を形成する。本実施形態では、発光層307の形成にも上述した静電方式の液滴吐出法を用いる。これにより、バンクを形成することなく、所望の位置に選択的に発光層307を形成することが可能である。しかし、蒸着マスクを精度よく位置合わせすることができれば公知の蒸着法を用いて形成しても良い。発光層307を構成する具体的な有機材料については、上述した通りである。
【0059】
次に、
図6(A)に示すように、複数の画素に跨って第2のEL共通層308を形成する。本実施形態では、第2のEL共通層308として、電子注入層及び電子輸送層を積層した機能層を形成する。第2のEL共通層308を構成する具体的な材料については、上述した通りである。それぞれの機能層の膜厚は、各層が電子注入層や電子輸送層としての機能を発揮する範囲で適宜決定すれば良い。
【0060】
本実施形態では、第2のEL共通層308の形成にも上述した静電方式の液滴吐出法を用いる。これにより、第1のEL共通層306及び発光層307を完全に覆うように第2のEL共通層308を形成した際、各層の端部において十分な膜厚を確保することができる。なお、スループットの向上を優先した場合、第2のEL共通層308を公知の蒸着法により形成しても良い。また、第2のEL共通層308を省略しても良い。
【0061】
次に、
図6(B)に示すように、有機EL素子の陰極として機能する共通電極309と、封止膜としての第2の絶縁層310を形成する。共通電極309や第2の絶縁層310を構成する具体的な材料については、上述した通りである。
【0062】
本実施形態では、公知のスパッタ法を用いて共通電極309と第2の絶縁層310とを大気開放せずに連続形成する。共通電極309に使用する金属は、MgAg合金等の仕事関数の低い金属であるが、これらの金属は酸化し易いという特長を有する。したがって、共通電極309を形成したら、そのまま酸素に触れることなく第2の絶縁層310を形成することが望ましい。
【0063】
次に、
図7(A)に示すように、薄膜トランジスタ303の上方にブラックマスク311を形成する。本実施形態では、カーボンブラックを含有した樹脂材料を用いてブラックマスク311を形成する。具体的には、カーボンブラックを含有した樹脂材料を溶媒に分散させ、上述した静電方式の液滴吐出法を用いて薄膜トランジスタ303の上方に選択的に形成する。これにより、ブラックマスク311を形成するに当たり、従来のように樹脂材料の塗布工程、硬化工程、パターニング工程が不要となるため、有機EL表示装置の製造工程の簡略化が可能である。
【0064】
勿論、公知の方法でブラックマスクを形成しても構わない。例えば、クロム等の金属膜をパターン化したり、カーボンブラックを含有した樹脂層をパターン化したりしてブラックマスク311を形成しても良い。
【0065】
次に、
図7(B)に示すように、保護層として第3の絶縁層312を形成する。本実施形態では、第3の絶縁層312として、ポリイミドやアクリル等の樹脂層を印刷法により形成する。印刷法を用いることにより、選択的に樹脂層を形成することが可能であるため、有機EL表示装置の周辺部分にある外部取り出し端子群を避けて第3の絶縁層312を形成することが可能である。
【0066】
以上のようにして、
図3を用いて説明した第1実施形態に係る有機EL表示装置100が完成する。本実施形態によれば、第1のEL共通層306を静電方式の液滴吐出法により形成するため、バンク構造を採用しなくても、画素電極305の端部を十分な膜厚で被覆することができる。その結果、画素電極305の端部において、画素電極305と共通電極309との間の短絡を防止することができる。
【0067】
また、液滴の滴下量や滴下回数を制御することにより、選択的に集中して第1のEL共通層306を構成する有機材料を塗布することができる。そのため、画素電極305の主面が形成する凹部を第1のEL共通層306を構成する有機材料で充填して平坦化することも可能である。
【0068】
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置200の概略構成を示す断面図である。第2の実施形態に係る有機EL表示装置200と第1の実施形態に係る有機EL表示装置100との違いは、第2の実施形態に係る有機EL表示装置200は、ブラックマスク311が、共通電極309と第2の絶縁層310との間に設けられている点である。その他の構成は、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100と同じである。
【0069】
本実施形態の場合、共通電極309を形成した後、窒素雰囲気中にて静電方式の液滴吐出法によりブラックマスク311を形成する。そして、窒素雰囲気を保ったまま基板をスパッタ装置に搬入し、第2の絶縁層310を形成する。
【0070】
本実施形態に係る有機EL表示装置200においても、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100と同様に、画素電極305の主面及び端部を静電方式の液滴吐出法により形成した第1のEL共通層306で被覆した構造としている。したがって、本実施形態に係る有機EL表示装置200も、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100について説明した効果と同様の効果を奏する。ブラックマスクが第1の実施形態のものと比べて発光層307に近いので、より光学的な隣接画素への漏れ光が少なくなる。
【0071】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態に係る有機EL表示装置300の概略構成を示す断面図である。第3の実施形態に係る有機EL表示装置300と第1の実施形態に係る有機EL表示装置100との違いは、第3の実施形態に係る有機EL表示装置300は、ブラックマスク311が、第2のEL共通層308と共通電極309との間に設けられている点である。その他の構成は、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100と同じである。
【0072】
本実施形態では、第2のEL共通層308に接するように、静電方式の液滴吐出法によりブラックマスク311を形成する。そのため、液滴吐出法に用いる溶媒(カーボンブラックを含有した樹脂材料を分散させる溶媒)としては、第2のEL共通層308に対して影響を与えない溶媒(例えばフルオロエーテル等のフルオロカーボン系の溶媒)を用いることが好ましい。
【0073】
また、第2のEL共通層308が存在しない場合は、第1のEL共通層306や発光層307に接するようにブラックマスク311が形成される。この場合も、第1のEL共通層306や発光層307に影響を与えない溶媒(例えばフルオロエーテル等のフルオロカーボン系の溶媒)を用いることが好ましい。
【0074】
本実施形態に係る有機EL表示装置300においても、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100と同様に、画素電極305の主面及び端部を静電方式の液滴吐出法により形成した第1のEL共通層306で被覆した構造としている。したがって、本実施形態に係る有機EL表示装置300も、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100について説明した効果と同様の効果を奏する。
【0075】
また、画素電極305の端部と共通電極309との間にブラックマスク311が加わるため、電界乱れが生じやすく、第1のEL共通層306や発光層307の膜厚が不均一になりやすい画素電極の端部上にブラックマスク311ある形となり、画素電極305と共通電極309との間の短絡をより効果的に防止することが可能である。
このような効果を持たせるには、ブラックマスク311として絶縁性の高いものを用いることが好ましい。さらに、本実施形態に係る有機EL表示装置300の場合、ブラックマスクが第1の実施形態のものと比べて発光層307に近いので、より光学的な隣接画素への漏れ光が少なくなる。
【0076】
(第4の実施形態)
図10は、本発明の第4の実施形態に係る有機EL表示装置400の概略構成を示す断面図である。第4の実施形態に係る有機EL表示装置400と第1の実施形態に係る有機EL表示装置100との違いは、第4の実施形態に係る有機EL表示装置400は、第2のEL共通層308が、第1のEL共通層306や発光層307と同様に、画素ごとに分離して設けられている点である。その他の構成は、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100と同じである。
【0077】
なお、
図10において、薄膜トランジスタ303の一部を構成する電極(例えばドレイン電極)11の上には、コンタクトホールを介して画素電極305が形成されている。そして、画素電極305の主面が形成する凹部(コンタクトホールに起因する凹部)には、第1のEL共通層306が充填されている。この構造は、第4の実施形態に限るものではなく、上述した第1〜第3の実施形態においても共通であるし、後述する各実施形態においても共通である。
【0078】
本実施形態では、第2のEL共通層308を静電方式の液滴吐出法を用いて形成することにより、画素ごとに選択的に形成する。具体的には、
図10に示すように、第2のEL共通層308は、第1のEL共通層306の端部を被覆するように形成され、かつ、複数の画素間において分離している。換言すれば、第1のEL共通層306、発光層307及び第2のEL共通層308といった有機材料で構成される各層が複数の画素に跨って形成されない構造となる。その結果、複数の画素間において、有機材料で構成される各層を介したキャリア移動が発生せず、各画素間を流れるリーク電流をより低減することが可能である。
【0079】
なお、各画素の間に第1のEL共通層306、発光層307及び第2のEL共通層308といった有機材料で構成される各層が存在しないため、共通電極309と第1の絶縁層304とが接する構造となる。これも本実施形態に係る有機EL表示装置400における構造上の特徴である。
【0080】
また、第2の絶縁層308が、第1の絶縁層306の端部を被覆する構造となるため、画素電極305を基準としてみると、画素電極305の端部、第1のEL共通層306の端部、第2のEL共通層308の端部の順に、各端部が外側(隣接する画素に向かう側)に向かって位置する構造となる。平面視においては、発光層307にオーバーラップし更に取り囲むように画素電極305が配置され、画素電極305にオーバーラップし更に取り囲むように第1のEL共通層306が配置され、第1のEL共通層306にオーバーラップし更に取り囲むように第2のEL共通層308が配置される形となる。これも本実施形態に係る有機EL表示装置400における構造上の特徴と言える。
【0081】
また、コンタクトホール上には発光層307が形成されない形となっている。これは発光層307がコンタクトホール直上にあった場合、第1のEL共通層306の厚みが他の箇所とは異なり、通常とは異なる発光が発光層307で発生して制御が困難となるからである。
【0082】
本実施形態に係る有機EL表示装置400においても、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100と同様に、画素電極305の主面及び端部を静電方式の液滴吐出法により形成した第1のEL共通層306で被覆した構造としている。したがって、本実施形態に係る有機EL表示装置400も、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100について説明した効果と同様の効果を奏する。
【0083】
さらに、上述したように、画素ごとにEL共通層や発光層を設けて、画素間に跨ってEL共通層や発光層が存在しない構成とすることにより、各画素間におけるキャリア移動によるリーク電流を低減することができる。
【0084】
(第5の実施形態)
図11は、本発明の第5の実施形態に係る有機EL表示装置500の概略構成を示す断面図である。第5の実施形態に係る有機EL表示装置500と第1の実施形態に係る有機EL表示装置100との違いは、第5の実施形態に係る有機EL表示装置500は、第2のEL共通層308が画素ごとに分離して設けられている点(第4の実施形態と同様)と、画素電極305の端部において局所的に第1のEL共通層306の膜厚が厚く形成されている点である。その他の構成は、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100と同じである。
【0085】
本実施形態の有機EL表示装置500においては、点線で囲まれた枠21に示されるように、第1のEL共通層306の膜厚が画素電極305の端部において局所的に厚くなっている。これにより、画素電極305の端部における画素電極305と共通電極309との間の短絡をより効果的に防止することが可能である。
【0086】
本実施形態では、第1のEL共通層306を静電方式の液滴吐出法により形成するため、膜厚の制御が容易である。したがって、本実施形態では、画素電極305の端部において、第1のEL共通層306を構成する有機材料を集中的に付着させることにより、画素電極305の端部だけ局所的に膜厚を他の部分よりも厚くしている。そのためには、液滴の滴下量もしくは滴下回数を、画素電極305の端部において増加させれば良い。
【0087】
本実施形態に係る有機EL表示装置500においても、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100と同様に、画素電極305の主面及び端部を静電方式の液滴吐出法により形成した第1のEL共通層306で被覆した構造としている。したがって、本実施形態に係る有機EL表示装置500も、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100について説明した効果と同様の効果を奏する。
【0088】
さらに、上述したように、画素電極305の端部において、第1のEL共通層306の膜厚を局所的に他の部分よりも厚くしているため、画素電極305と共通電極309との間の短絡をより効果的に防止することができる。
【0089】
(第6の実施形態)
図12は、本発明の第6の実施形態に係る有機EL表示装置600の概略構成を示す断面図である。第6の実施形態に係る有機EL表示装置600と第1の実施形態に係る有機EL表示装置100との違いは、第6の実施形態に係る有機EL表示装置600は、第2のEL共通層308が画素ごとに分離して設けられている点(第4の実施形態と同様)と、ブラックマスク311が第2の絶縁層310と第4の絶縁層313とで挟まれている点である。その他の構成は、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100と同じである。
【0090】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の製造方法によりブラックマスク311まで形成した後、さらに第4の絶縁層313をスパッタ法等により形成する。その結果、本実施形態の有機EL表示装置600は、ブラックマスク311が、第2の絶縁層310と第4の絶縁層313とで挟まれた構造となる。これにより、第2の絶縁層310上に異物等が存在していた場合であっても、その影響を低減した状態で第4の絶縁層313を形成することができる。そのため、第2の絶縁層310及び第4の絶縁層313における封止膜としての機能をより高めることができ、信頼性の高い有機EL表示装置を実現することができる。
【0091】
本実施形態では、ブラックマスク311をスピンコーティング法により形成する。すなわち、カーボンブラックを含有した樹脂材料を液状もしくはゲル状の状態でスピンコーティング法により塗布し、その後、光照射により硬化させてからパターニングしてブラックマスク311を形成する。その際、液状もしくはゲル状の物質が段差(凹凸)に集まる特性を利用する。さらにブラックマスク311の厚さを精密に制御したい場合は、蒸着法により形成すればよい。
【0092】
例えば、第2の絶縁層310に生じる段差(例えば、画素電極や発光層に起因する段差)や異物による段差が存在する場合、スピンコーティングされた樹脂材料を含む溶液は、それらの段差に集まる。そのため、ブラックマスク311を形成するためにカーボンブラックを含有した樹脂材料を含む溶液をスピンコーティングすると、基板上に段差が存在したとしても平坦化することができる。したがって、第2の絶縁層310上の段差を軽減した上で第4の絶縁層313を形成することができるため、より信頼性の高い封止膜を形成することができる。
【0093】
本実施形態に係る有機EL表示装置600においても、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100と同様に、画素電極305の主面及び端部を静電方式の液滴吐出法により形成した第1のEL共通層306で被覆した構造としている。したがって、本実施形態に係る有機EL表示装置600も、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100について説明した効果と同様の効果を奏する。
【0094】
さらに、上述したように、第2の絶縁層310上の段差を軽減した上で第4の絶縁層313を封止膜として設けているため、より信頼性の高い有機EL表示装置を実現することができる。
【0095】
(第7の実施形態)
図13は、本発明の第7の実施形態に係る有機EL表示装置700の概略構成を示す断面図である。第7の実施形態に係る有機EL表示装置700と第1の実施形態に係る有機EL表示装置100との違いは、第7の実施形態に係る有機EL表示装置700は、第2のEL共通層308が画素ごとに分離して設けられている点(第4の実施形態と同様)と、1つの画素電極上にRGB各色に対応する発光層が形成されている点である。その他の構成は、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100と同じである。
【0096】
図13において、画素電極305aの上には、赤色に発光する発光層307R、緑色に発光する発光層307G及び青色に発光する発光層307Bが設けられている。なお、画素電極305bの上には、緑色に発光する発光層307Gのみが設けられているが、他の色に対応する発光層であっても良い。
【0097】
本実施形態では、発光層307の形成に静電方式の液滴吐出法を用いるため、約0.2μmの精度で微細な塗り分けが可能である。したがって、従来のようなバンク構造を用いることなく、同一の画素電極上にそれぞれ異なる色に対応する発光層を形成することができる。そして、画素電極305a上の発光層307R、発光層307G及び発光層307Bを同時に点灯することにより、白色(W)に発光する画素として機能させることができる。すなわち、各発光層307R、発光層307G及び発光層307Bを、それぞれRGB各色に対応するサブ画素として機能させ、画素全体として白色発光を可能としている。
【0098】
本実施形態の有機EL表示装置700は、RGB各色に対応する画素に加えて、白色に対応する画素を設けることにより、色純度の微調整や画像の滑らかな表示を実現することができる。
【0099】
各画素の配列は様々なパターンを取り得る。各画素の配列パターンについて
図14を用いて説明する。
図14は、本実施形態に係る有機EL表示装置700における画素部の概略構成を示す平面図である。
【0100】
図14(A)において、41と44Rは、R(赤)に対応するサブ画素、42と44Gは、G(緑)に対応するサブ画素、43と44Bは、B(青)に対応するサブ画素である。この場合、44R、44G及び44Bは、
図13を用いて説明したサブ画素であり、同一の画素電極上に形成されている。これらのサブ画素44R、44G及び44Bを用いて白(W)に対応するサブ画素として機能させることができる。そして、RGBWの各色に対応するサブ画素を用いて構成される1つの画素の発光色を決定することができる。
【0101】
図14(B)は、サブ画素44R、44G及び44Bの配置が異なるだけで、基本的な構成は
図14(A)に示した配列パターンと同様である。
【0102】
図14(C)は、サブ画素41〜43をストライプ形状に設け、その上側部分を区切ってサブ画素44R、44G及び44Bとしたものである。この場合もサブ画素44R、44G及び44Bが、全体として、W(白)に対応するサブ画素として機能する。
【0103】
図14(D)は、いわゆるダイヤモンドペンタイルと呼ばれる配列パターンに、本実施形態のサブ画素44R、44G及び44Bを追加した例である。この場合もサブ画素44R、44G及び44Bが、全体として、W(白)に対応するサブ画素として機能する。
【0104】
本実施形態の画素構造は、上述した
図14に示す配列パターンに限らず、RGBWを用いるすべての配列パターンに対して適用可能である。尚、
図14(A)で点線にて示した範囲が1つの画素400Aで、サブ画素41〜43、44R、44G、44Bそれぞれ1つを含む。同じく
図14(B)で点線にて示した範囲が1つの画素400Bで、サブ画素41〜43、44R、44G、44Bそれぞれ1つを含む。
図14(C)で点線にて示した範囲が1つの画素400Cで、サブ画素41〜43、44R、44G、44Bそれぞれ1つを含む。
図14(D)で点線にて示した範囲が1つの画素400Dで、サブ画素41、43を2つ含み、サブ画素42を3つ含み、サブ画素44R、44G、44Bそれぞれ1つを含む。
【0105】
また、本実施形態では、同一の画素電極上にRGB各色に対応する発光層を設けて白画素として機能させたが、例えば同一の画素電極上にRG各色に対応する発光層を設けてY(黄)に対応する画素として機能させることも可能である。その場合、RGBYを用いるすべての配列パターンに対して適用可能である。このように、同一の画素電極上に必要な発光層を塗り分けることにより、所望の発光色のサブ画素として機能させることができる。
【0106】
さらに、
図13においては、各発光層307R、307G及び307Bの膜厚を同じ膜厚で記載しているが、少なくとも1層の膜厚が残りの発光層の膜厚と異なっていても良い。例えば、RG各色に対応する発光層307R及び307Gよりも、Bに対応する発光層307Bの膜厚を薄くすることも可能である。膜厚の制御は、上述した通り、液滴吐出法による液滴の滴下量もしくは滴下回数で容易に制御することができる。
【0107】
このように、画素内もしくは画素間で任意に各発光層307R、307G及び307Bの膜厚を制御することにより、マイクロキャビティ効果が得られるように調整し、有機EL表示装置の輝度と色純度とを向上させることが可能である。
【0108】
本実施形態に係る有機EL表示装置700においても、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100と同様に、画素電極305の主面及び端部を静電方式の液滴吐出法により形成した第1のEL共通層306で被覆した構造としている。したがって、本実施形態に係る有機EL表示装置700も、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100について説明した効果と同様の効果を奏する。
【0109】
さらに、上述したように、同一の画素電極上にそれぞれ異なる発光色に対応する発光層を設けているため、製造工程を増やすことなく、白色に対応するサブ画素を形成することができる。これにより、製造工程を増やすことなく、有機EL表示装置の輝度や色純度の向上と滑らかな画像表示とを実現することができる。
【0110】
(第8の実施形態)
図15は、本発明の第8の実施形態に係る有機EL表示装置800の概略構成を示す断面図である。第8の実施形態に係る有機EL表示装置800と第1の実施形態に係る有機EL表示装置100との違いは、第8の実施形態に係る有機EL表示装置800は、第2のEL共通層308が画素ごとに分離して設けられている点(第4の実施形態と同様)と、第2の絶縁層310を形成した後に、透明樹脂材料を塗布する点である。その他の構成は、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100と同じである。
【0111】
図15(A)に示す構造においては、第2の絶縁層310を形成した後、透明樹脂層(例えば、透光性を有するアクリル樹脂材料で構成される層)をスピンコーティング法(溶液塗布法)、または蒸着法により形成する工程を行う。ただし、ここでは透明樹脂で構成される薄膜を形成することが目的ではないため、溶液を滴下した後、基板をスピンさせて完全に溶液を飛ばしても良い。この場合でも、第2の絶縁層310上には吸着した透明樹脂材料で構成される極めて薄い膜が残存する。この透明樹脂材料で構成される層は10〜50nmの厚さで形成される。
【0112】
その際、塗布された溶液は、段差に集まる特性を有するため、第2の絶縁層310上に塗布された透明樹脂材料を含む溶液は段差に集まる。この場合の段差とは、第2の絶縁層310の表面が起伏を有することにより生じた段差もあり得るし、第2の絶縁層310上に異物が存在することにより生じた段差もあり得る。そして、段差に集まった溶液は、スピン工程の後もそのままそこに残存する。
【0113】
図15(A)の場合、第2の絶縁層310は、下層に存在する画素電極305、EL共通層306及び308、発光層307に起因する段差(点線で囲まれた部分)を有しているため、塗布された透明樹脂材料を含む溶液は、そのような段差に集まる。そして、その状態のまま光照射等により透明樹脂材料を硬化させると、段差に対して選択的に透明樹脂51を残存させることができる。つまり、第2の絶縁層310に生じた段差を透明樹脂51により平坦化することができる。
【0114】
このように、本実施形態では、第2の絶縁層310に生じた段差を透明樹脂51で平坦化した後に第4の絶縁層313を形成するため、第4の絶縁層313にピンホールや膜剥がれが生じる可能性を低減することができる。また、第2の絶縁層310にピンホール等が存在していても、第4の絶縁層313でカバーできるため、さらなる封止効果が期待できる。したがって、外部からの水分や汚染物質の侵入を効果的に防ぐことができ、信頼性の高い有機EL表示装置を実現することができる。
【0115】
図15(B)の場合、第2の絶縁層310に生じた段差を透明樹脂51で平坦化した後、ブラックマスク311を形成する。そして、ブラックマスク311上に第4の絶縁層313を形成することにより、第2の絶縁層310と第4の絶縁層313との間にブラックマスク311を挟み込む構造とすることができる。
【0116】
図15(A)及び(B)に示す構造において、第2の絶縁層310上に異物が存在した場合は、
図16に示すように、異物52の周囲に透明樹脂51が形成され、異物52に起因する段差が軽減される。そのため、異物52の上から第4の絶縁層313を形成しても、異物52の乗り越え部分で段切れを起こすことがない。したがって、異物52の影響を受けることなく、信頼性の高い封止膜を形成することが可能となり、信頼性の高い有機EL表示装置を実現することができる。
【0117】
本実施形態に係る有機EL表示装置800においても、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100と同様に、画素電極305の主面及び端部を静電方式の液滴吐出法により形成した第1のEL共通層306で被覆した構造としている。したがって、本実施形態に係る有機EL表示装置800も、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100について説明した効果と同様の効果を奏する。
【0118】
なお、第6の実施形態のように、透明樹脂51を用いないでも、ブラックマスク311の形成過程にて、異物52の周囲に透明樹脂51と同じような形状でブラックマスク311が残存する。よって異物52の影響を受けることなく信頼性の高い封止膜の形成が可能となる。このように、
図15(B)のような形態は、特に異物52に対して信頼性の高いデバイスが必要な時に採用することが望ましい。透明樹脂51とブラックマスク311の材料の両方が異物52の周囲に付着し、より異物の周囲を覆いやすくなるからである。
図15(A)のような形態は、ブラックマスク311の製造工程にて第2の絶縁層310のピンホール等に起因して発光層307に水分等が侵入してダメージが入ることを防ぐのに有効である。
【0119】
さらに、上述したように、第2の絶縁層310を形成した後に、透明樹脂材料を含む溶液を塗布する工程を追加することにより、第2の絶縁層310が形成する段差や第2の絶縁層310上に存在する異物に起因する段差を軽減することができる。そして、第2の絶縁層310の上にピンホール、膜剥がれ、段切れといった不具合のない第4の絶縁層313を形成することにより、さらに信頼性の高い封止構造を有する有機EL表示装置を実現することができる。
【0120】
(第9の実施形態)
図17は、本発明の第9の実施形態に係る有機EL表示装置900の概略構成を示す断面図である。第1の実施形態に係る有機EL表示装置100との違いは、画素部102の外側(基板端側)に外部からの水分の侵入を防ぐための水分遮断構造を備えた点である。その他の構成は、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100と同じである。
【0121】
図17に示されるように、画素部102の外側には、水分遮断構造61とカソードコンタクト部62とが設けられる。水分遮断構造61とは、外部からの水分の侵入を防ぐ目的で設けられた構造体である。基本的には、第1の絶縁層304の一部に開口部を設け、その内部を第2の絶縁層310及び第3の絶縁層312で覆った構成となっている。
【0122】
なお、本実施形態では、薄膜トランジスタ303を構成するソース/ドレイン電極と同時に形成された導電層63を第1の絶縁層304に開口部を設ける際のエッチングストッパーとして用いている。勿論、これに限らず、薄膜トランジスタ303を構成するゲート電極と同時に形成された導電層や活性層と同時に形成された半導体層をエッチングストッパーとして用いてもよい。
【0123】
水分遮断構造61を設けることにより、積層された各絶縁層や導電層の界面を伝って外部から水分が侵入する可能性を大幅に低減することができ、信頼性の高い有機EL表示装置を実現することができる。
【0124】
また、カソードコンタクト部62は、陰極309と配線64とを電気的に接続するためのコンタクト部である。配線64は、薄膜トランジスタ303を構成するソース/ドレイン電極と同一の材料で形成され、陰極309に与える共通電圧を引き回すための配線である。それと同時に、第1の絶縁層304に開口部を設ける際のエッチングストッパーとしての機能も有する。勿論、薄膜トランジスタ303を構成するゲート電極と同一の材料で配線64を形成することも可能である。
【0125】
なお、本実施形態では、第1の絶縁層304に開口部を設けた後、画素電極305と同一の材料で構成されるパッド電極65を形成し、陰極309と配線64とがパッド電極65を介して電気的に接続された構造となっている。このような構造とした場合、配線64上に成膜された導電層を除去する必要がなく、配線64の表面を必要以上に荒らさないで済むという利点がある。勿論、パッド電極65を省略し(つまり、配線64上に成膜された導電層を除去し)、配線64と陰極309とが直接接続された構造とすることも可能である。
【0126】
以上説明した本実施形態に係る有機EL表示装置900では、水分遮断構造61に加えてカソードコンタクト部62を設けた構成を例示しているが、カソードコンタクト部62を省略することも可能である。
【0127】
以上のとおり、本実施形態に係る有機EL表示装置900は、画素部の外側に外部からの水分の侵入を防ぐための構造体(水分遮断構造61)を設けた構造となっている。そのため、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100が奏する効果に加えて、より信頼性の高い有機EL表示装置を実現できるという効果を奏する。
【0128】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0129】
また、上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。