(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大規模なプラントでは多数の機器や部材などが三次元的に配置されており、保守・点検等のために巡回するとき、多数の機器や部材の中の複数の監視対象部を順に確認する作業が必要になる。熟練者であれば、それらの機器や部材がどのように配置されているかといったプラントの全体構造や、そのプラントの中でどの機器や部材を監視対象部として順に確認する必要があるのかという知識を備えているため、適切な巡回経路を通って複数の監視対象部の巡回行動を行うことができる。しかし、プラントの全体構造や、どの機器や部材を監視対象部として確認する必要があるのかという知識を十分に備えていない者の場合、特定の監視対象部の確認を怠るというように、不適切な巡回経路を通って巡回行動を行ってしまう可能性がある。
【0005】
上記特許文献1に記載の装置でも、現在位置から目的地とする現場盤及び現場機器までの経路を入力することを行わせているが、その経路が適切か否かという観点での評価は行われていない。つまり、特許文献1に記載の装置は、巡回行動の訓練のために有効とは言えない。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、プラントの巡回行動の訓練のために有用な巡回訓練装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る巡回訓練装置の特徴構成は、複数の機器及び部材が三次元的に配置されたプラントモデルを表示する表示部と、
前記表示部に表示された前記プラントモデル上で、前記複数の機器及び部材の中の監視対象とする複数の監視対象部を被験者が仮想的に巡回行動したときの
三次元的な仮想巡回経路の履歴を含む仮想巡回情報を受け付ける仮想巡回情報受付部と、
前記仮想巡回情報受付部が受け付けた
三次元的な前記仮想巡回経路の履歴と、前記複数の監視対象部を巡回するときに基準となる
三次元的な基準巡回経路との類似性に基づいて、被験者による前記巡回行動を評価する巡回情報評価部とを備え
、
前記基準巡回経路には、当該基準巡回経路からの逸脱が許容される許容範囲が設定されており、
前記巡回情報評価部は、前記許容範囲を考慮した上で、前記基準巡回経路からの前記仮想巡回経路の逸脱距離に基づいて、前記類似性の指標値を導出する点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、巡回情報評価部は、仮想巡回情報受付部が受け付けた仮想巡回情報と、複数の監視対象部を巡回するときに基準となる基準巡回情報との類似性に基づいて、被験者による巡回行動を評価する。つまり、被験者による仮想的な巡回行動を示す仮想巡回情報が、客観的な基準巡回情報を用いて評価される。その結果、被験者は、自身による仮想的な巡回行動が客観的な基準(基準巡回情報)から見てどのようなものであるのかを知ることができる。
従って、プラントの巡回行動の訓練のために有用な巡回訓練装置を提供できる。
【0010】
また、この基準巡回経路は、プラントの全体構造についての知識や、そのプラントの中で複数の監視対象部をどの順序に確認する必要があるのかという知識を適切に用いて巡回行動を行った場合の巡回経路であるとも言える。つまり、仮想巡回経路と基準巡回経路との類似性が高ければ、プラント内の複数の監視対象部を巡回行動するため要求される、プラントの全体構造についての被験者の知識や、そのプラントの中で複数の監視対象部をどの順序に確認する必要があるのかについての被験者の知識も高いレベルにあると言える。従って、巡回情報評価部が、仮想巡回経路と基準巡回経路との類似性に基づいて被験者による巡回行動を評価することで、プラントの全体構造についての被験者の知識や、そのプラントの中で複数の監視対象部をどの順序に確認する必要があるのかについての被験者の知識を客観的に確かめるための訓練が可能になる。
【0012】
更に、基準巡回経路からの仮想巡回経路の逸脱距離が短いほど、被験者による巡回行動が適切であると言える。
そこで本特徴構成では、巡回情報評価部は、基準巡回経路からの仮想巡回経路の逸脱距離に基づいて、仮想巡回経路と基準巡回経路との類似性の指標値を導出する。つまり、基準巡回経路からの仮想巡回経路の逸脱距離に基づいて、被験者による巡回行動が適切であるか否かを客観的に判定できる。
【0014】
また更に、本特徴構成によれば、基準巡回経路からの仮想巡回経路の逸脱距離を厳密に導出するのではなく、巡回行動を行ったときに生じ得る誤差(即ち、基準巡回経路に対して設定される許容範囲)を考慮して、巡回情報評価部は類似性の指標値を導出することができる。
【0015】
本発明に係る巡回訓練装置の更に別の特徴構成は、前記巡回情報評価部は、前記基準巡回経路を所定長さ毎に分割した複数の個別巡回区間のそれぞれでの、前記基準巡回経路からの前記仮想巡回経路の逸脱距離に基づいて、前記類似性の指標値を導出し、前記許容範囲は前記個別巡回区間ごとに設定される点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、巡回情報評価部は、基準巡回経路を所定長さ毎に分割した複数の個別巡回区間のそれぞれでの、基準巡回経路からの仮想巡回経路の逸脱距離に基づいて、仮想巡回経路と基準巡回経路との類似性の指標値を導出する。つまり、基準巡回経路を所定長さ毎に分割した複数の個別巡回区間のそれぞれでの、基準巡回経路からの仮想巡回経路の逸脱距離に基づいて、被験者による巡回行動が適切であるか否かを客観的に判定できる。また、許容範囲が個別巡回区間ごとに設定されるので、基準巡回経路からの逸脱距離が相対的に大きくなってもよい区間では許容範囲を相対的に大きく設定し、基準巡回経路からの逸脱距離が相対的に小さくなければならない区間では許容範囲を相対的に小さく設定するといった変更が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して本発明の第1実施形態に係る巡回訓練装置10について説明する。
図1は、巡回訓練装置10を有する巡回訓練システムの構成を示す図である。図示するように、巡回訓練システムは、訓練の被験者が操作する巡回訓練装置10とプラントシミュレータ2と訓練データベース(DB)3とが通信ネットワーク1を介して互いに情報通信可能に接続されて構成される。
【0021】
プラントシミュレータ2は、複数の機器及び部材が三次元的に配置されたプラントモデル2aのデータを有するコンピュータ装置である。例えば、エンジン、発電機、ポンプ、弁、圧力計、温度計、流量計などの複数の機器、及び、配管などの複数の部材がプラントの構成要素として三次元的に配置されることでプラントモデル2aが構築される。そして、被験者が操作する巡回訓練装置10からの要求に応じて、通信ネットワーク1を介してプラントモデル2aのデータがプラントシミュレータ2から送信されることで、巡回訓練装置10の表示部11にそのプラントモデル2aの三次元画像が表示される。
【0022】
訓練DB3は、被験者が巡回訓練装置10を利用して巡回行動の訓練を行う際に用いる情報を記憶している。例えば、訓練DB3には、複数の機器及び部材の中の監視対象とする複数の監視対象部Tについての情報や、それら複数の監視対象部Tを巡回行動するときに基準となる基準巡回情報(例えば、後述する基準巡回経路20や基準巡回順序など)が記憶されている。他にも、訓練DB3には、プラントの各所における圧力値、温度値、流量値などの数値情報が記憶されている。
【0023】
巡回訓練装置10は、表示装置、演算処理装置、情報記憶装置、キーボードやマウス等の情報入力デバイスなどを有するコンピュータ装置を用いて構成され、表示部11と仮想巡回情報受付部12と巡回情報評価部13とを備える。
【0024】
表示部11は、コンピュータ装置の表示装置を用いて実現され、複数の機器及び部材が三次元的に配置されたプラントモデル2aを表示する。
【0025】
仮想巡回情報受付部12は、コンピュータ装置の情報入力デバイスを用いて実現され、表示部11に表示されたプラントモデル2a上で、複数の機器及び部材の中の監視対象とする複数の監視対象部Tを被験者が仮想的に巡回行動したときの履歴を含む仮想巡回情報を受け付ける。本実施形態では、仮想巡回情報受付部12は、複数の監視対象部Tを被験者が仮想的に巡回行動したときの三次元的な仮想巡回経路12aの履歴を含む仮想巡回情報を受け付ける。
【0026】
巡回情報評価部13は、コンピュータ装置の演算処理装置を用いて実現され、仮想巡回情報受付部12が受け付けた仮想巡回情報と、複数の監視対象部Tを巡回するときに基準となる基準巡回情報との類似性に基づいて、被験者による巡回行動を評価する。本実施形態では、巡回情報評価部13は、仮想巡回情報受付部12が受け付けた仮想巡回経路12aの履歴と、複数の監視対象部Tを巡回するときに基準となる三次元的な基準巡回経路20との類似性に基づいて、被験者による巡回行動を評価する。この基準巡回経路20は、例えば、熟練者が同じ複数の監視対象部Tを巡回行動したときの経路をデータ化したもの等である。
【0027】
次に、巡回訓練装置10を用いた巡回訓練の流れについて説明する。
図2は、表示部11に表示される画面例を示す図である。
図2に示すように、表示部11には複数の機器及び部材が三次元的に配置されたプラントモデル2aの画像が表示される。また、
図2に示す例では、仮想巡回情報受付部12としてのマウス等のポインタ11a(図中の矢印)及び仮想の人物像(所謂、アバター)11bも表示されている。そして、巡回訓練装置10を使用する巡回訓練の被験者は、マウス等を用いて、アバター11bをプラントモデル2a内で仮想的に移動させることや、複数の機器及び部材の中の監視対象とする複数の監視対象部Tを点検することなど、即ち、機器及び部材に対する監視処置などを実行できる。
【0028】
例えば、巡回訓練装置10を使用する巡回訓練の被験者は、マウス等を操作してアバター11bをプラントモデル2a内で移動させることができる。そうすると、演算処理装置は、移動後の地点を基準としたプラントモデル2aの画像データをプラントシミュレータ2及び訓練DB3から抽出し、表示部11の表示画面をその移動後の地点を基準とした画像に更新する。
【0029】
或いは、巡回訓練装置10を使用する巡回訓練の被験者が、マウス等を操作してポインタ11aを移動させ、画面上の特定の機器又は部材を選択操作(例えば、マウスによるクリック操作)すると、仮想巡回情報受付部12は、複数の監視対象部Tを被験者が仮想的に巡回行動する途中で、複数の監視対象部Tのうちの所定の監視対象部Tに対する被験者による仮想的な監視処置の入力を受け付けたと判定する。そうすると、巡回情報評価部13は、そのクリック操作により選択された特定の機器又は部材の監視処置(即ち、監視対象部Tに対する巡回)が被験者によって仮想的に行われたと判定する。
【0030】
巡回訓練装置10では、被験者が上述のようにして移動させたアバター11bの動線を繋ぐことで、被験者が仮想的に巡回行動したときの履歴である仮想巡回経路12aを取得できる。例えば、仮想巡回経路12aを表す座標情報は、アバター11bが移動した床面(地面)に沿った水平面内での二次元座標と、その床面(地面)の高さに対応した高さ方向の座標とを有する三次元座標で得られる。その結果、巡回訓練装置10は、被験者による仮想的な巡回行動の出発地点から目的地点までの間の仮想巡回経路12aを表す座標情報を得ることができる。巡回訓練装置10は、このようにして得た仮想巡回経路12aについての情報を、訓練DB3又は自身のコンピュータ装置の情報記憶装置内に記憶させる。
【0031】
また、巡回訓練装置10では、被験者が上述のようにマウス等でクリック操作した監視対象部T、即ち、巡回行動する途中で監視処置を行った監視対象部Tについての情報、及び、複数の監視対象部Tをどの順序で巡回したかについての巡回順序の履歴を取得できる。そして、巡回訓練装置10は、このようにして得た巡回行動する途中で監視処置を行った監視対象部Tについての情報、及び、複数の監視対象部Tに対する巡回順序の履歴についての情報を、訓練DB3又は自身のコンピュータ装置の情報記憶装置内に記憶させる。
【0032】
図3は、被験者の仮想巡回経路12aの例を示す図である。
図3では、仮想巡回経路12aを実線で示し、複数の監視対象部Tの例として、基礎状態T1、潤滑油状態T2、温度計T3、潤滑油量T4、圧力計T5を例示している。そして、図示するように、被験者は監視対象部T1〜T5に立ち寄って監視処置を行いながら巡回行動を行っている。
【0033】
このような被験者による巡回行動を評価するための手法として、被験者の仮想巡回経路12aに着目する手法と、被験者による巡回順序に着目する手法とがあり、それぞれの手法について以下に説明する。
【0034】
〔被験者の仮想巡回経路12aに着目する手法〕
巡回情報評価部13は、この手法において、その仮想巡回経路12aの履歴を基準巡回経路20と比較して評価する。この基準巡回経路20についての情報は、例えば訓練DB3に記憶されている。
図4は、基準巡回経路20からの仮想巡回経路12aの逸脱距離の決定手法を説明する図である。
図4では、基準巡回経路20を破線で示し、仮想巡回経路12aを実線で示す。巡回情報評価部13は、仮想巡回情報受付部12が受け付けた仮想巡回情報と複数の監視対象部Tを巡回するときに基準となる基準巡回情報との類似性に基づいて被験者による巡回行動を評価するために、基準巡回経路20からの仮想巡回経路12aの逸脱距離に基づいて、類似性の指標値を導出する。特に、本実施形態では、巡回情報評価部13は、基準巡回経路20を所定長さ毎に分割した複数の個別巡回区間のそれぞれでの、基準巡回経路20からの仮想巡回経路12aの逸脱距離に基づいて、類似性の指標値を導出する。
【0035】
具体的に説明すると、巡回情報評価部13は、
図4に示したような各個別巡回区間iで、基準巡回経路20からの仮想巡回経路12aの逸脱距離Ki(区間内で両者が最も離れた地点での距離)を導出する。次に、巡回情報評価部13は、被験者の巡回行動を評価するための指標値をhとし、i番目(i=1〜n)の区間での逸脱距離をKiとし、区間数をnとして、指標値hを、以下の数式1によって導出する。
【0037】
この指標値は、基準巡回経路20を基準値とした場合の仮想巡回経路12aの標準偏差とも言うべき値である。従って、巡回情報評価部13は、数式1で導出された指標値が小さいほど、基準巡回経路20に対する仮想巡回経路12aの類似性が高いと判定し、指標値が大きいほど、基準巡回経路20に対する仮想巡回経路12aの類似性が低いと判定する。例えば、巡回情報評価部13は、数式1で導出された指標値hを所定の基準値と比較して、指標値hが基準値以下であれば被験者の巡回行動に合格評価を下し、指標値hが基準値よりも大きければ被験者の巡回行動に不合格評価を下す。このように、巡回情報評価部13は、仮想巡回経路12aの履歴と基準巡回経路20との類似性に基づいて、被験者による巡回行動を評価している。そして、巡回情報評価部13は、その評価結果を表示部11に表示して被験者に認識させる。尚、上述のような基準値が複数あってもよく、その場合には、指標値hが複数段階にレベル分け(即ち、被験者の巡回行動が複数段階にレベル分け)される。
【0038】
〔被験者による巡回順序に着目する手法〕
この手法において、仮想巡回情報受付部12は、複数の監視対象部Tを被験者が仮想的に巡回行動したときの巡回順序の履歴を含む仮想巡回情報を受け付け、巡回情報評価部13は、仮想巡回情報受付部12が受け付けた巡回順序の履歴(即ち、仮想的に巡回行動する途中で行った監視処置の順序の履歴)と、複数の監視対象部Tを巡回するときに基準となる基準巡回順序との類似性に基づいて、被験者による巡回行動を評価する。
【0039】
例えば、プラント内のBOG(ボイルオフガス)圧縮機に関連する監視対象部Tを想定すると以下の(A)〜(J)のようになる。この場合、各監視対象部Tを巡回するときの順序の基準である基準巡回順序は、「ABCDEFGHIJ」の並び順である。この基準巡回順序についての情報は、例えば訓練DB3に記憶されている。
【0040】
(A)モーター基礎部の異常有無
(B)潤滑油の漏洩有無
(C)潤滑油量確認
(D)潤滑油温度確認
(E)潤滑油圧力確認
(F)循環水量が適量か
(G)異常振動がないか
(H)異常音はないか
(I)各圧力ゲージは正常値か
(J)その他異常の有無
【0041】
巡回情報評価部13は、被験者が仮想的に巡回行動する途中で行った監視処置の順序(巡回順序)が「BACDEFGHIJ」の時、文字列の類似度を評価する指標のレーベンシュタイン距離により、被験者の巡回順序と基準巡回順序との類似度を評価する。即ち、被験者の巡回順序の文字列に対し、「削除」、「挿入」、「置換」を繰り返し、基準巡回順序の文字列に到達する最小操作数をレーベンシュタイン距離として評価するものである。上記例においてA、Bの順序の入替を行う場合には、レーベンシュタイン距離を「2」とし、例えば文字列に一文字を追加する又は文字列から一文字を削除する場合には、レーベンシュタイン距離を「1」とする。また、レーベンシュタイン距離の最大値は、基準巡回順序の文字列数である10である。このようなレーベンシュタイン距離の導出、及び、距離の最大値の導出を、全ての監視対象部Tに対応する各文字に関して実施して合計する。このようにして、被験者による巡回順序と基準巡回順序とを比較して、レーベンシュタイン距離の最大値をRZとし、被験者の巡回順序についてのレーベンシュタイン距離をRとすると被験者の巡回順序についての得点P1は以下の数式2で導出できる。尚、数式2においてαは任意の補正係数を示す。
【0043】
この場合、被験者による巡回順序と基準巡回順序との差が小さければ(即ち、被験者による巡回順序が相対的に適切であれば)、被験者の巡回順序についてのレーベンシュタイン距離:Rは小さくなり、得点P1は大きくなる。
そこで、巡回情報評価部13は、数式2で導出された得点P1が大きいほど、基準巡回順序に対する、被験者による仮想的な巡回順序の類似性が高いと判定し、得点P1が小さいほど、基準巡回順序に対する、被験者による仮想的な巡回順序の類似性が低いと判定する。例えば、巡回情報評価部13は、数式2で導出された得点P1を所定の基準得点と比較して、得点P1が基準得点以上であれば被験者の巡回行動に合格評価を下し、得点P1が基準値よりも小さければ被験者の巡回行動に不合格評価を下す。そして、巡回情報評価部13は、その評価結果を表示部11に表示して被験者に認識させる。或いは、数式2で導出された得点P1と共にその評価結果を表示部11に表示してもよい。尚、上述のような基準得点が複数あってもよく、その場合には、得点P1が複数段階にレベル分け(即ち、被験者の巡回行動が複数段階にレベル分け)される。
【0044】
また、被験者のレーベンシュタイン距離:Rの導出に当たって、監視対象部Tのそれぞれに対して任意に重み付けを行ってもよい。例えば、重要な監視対象部Tに対して「2」の重み付けを行い、他の監視対象部Tに対して「1」の重み付けを行うことができる。この場合、「2」の重み付けが行われた監視対象部Tへの監視処置が抜け落ちる、例えば、上記文字列からその監視対象部Tに対応する文字が抜け落ちると、その文字を挿入するための「2」がレーベンシュタイン距離:Rの導出において計上される。これらの重み付けの値は例えば訓練DB3に記憶されている。そして、上記数式2において、レーベンシュタイン距離の最大値:RZが「10」であり、αが「1」である場合、重要度の高い「2」の重み付けがされた監視対象部Tへの監視処置が抜けていた場合にはレーベンシュタイン距離Rは「2」となって、得点P1は80点となる。これに対して、相対的に重要度の低い「1」の重み付けがされた監視対象部Tへの監視処置が抜けていた場合にはレーベンシュタイン距離Rは「1」となって、得点P1は90点となる。
【0045】
<第2実施形態>
第2実施形態の巡回訓練装置10は、基準巡回経路20には、基準巡回経路20からの逸脱が許容される許容範囲が設定されている点で上記実施形態と異なっている。以下に第2実施形態の巡回訓練装置10について説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0046】
図5は、基準巡回経路20の周囲に設定される、基準巡回経路20からの逸脱が許容される許容範囲の例を示す図である。この
図5では、基準巡回経路20を軸方向に沿って見たときの、基準巡回経路20と仮想巡回経路12aと許容範囲Zと逸脱距離Kiとを示す。そして、巡回情報評価部13は、許容範囲Zを考慮して、仮想巡回経路12aと基準巡回経路20との類似性の指標値を導出する。この許容範囲Zの値は、例えば巡回訓練装置10の運用者により設定される値であり、基準巡回経路20についての情報と関連付けられた状態で例えば訓練DB3に記憶されている。逸脱距離Kiは、第1実施形態で説明した値と同様である。
【0047】
巡回情報評価部13は、個別巡回区間毎の許容範囲をZ用いて、以下の数式3で、ゼロ指標値:hzを導出できる。このゼロ指標値:hzは、基準巡回経路20を基準値とした場合の許容範囲Zの標準偏差とも言うべき値である。
【0049】
そして、巡回情報評価部13は、数式1で導出した指標値hと数式3で導出したゼロ指標値とに基づいて、以下の数式4で示すような被験者の巡回行動を評価するための経路得点(指標値):P2を導出する。尚、αは任意の補正係数である。
【0051】
この場合、被験者の仮想巡回経路12aに関して数式4で導出した指標値hが小さければ(即ち、被験者による仮想巡回経路12aが基準巡回経路20に相対的に近ければ)、経路得点P2は大きくなる。
そこで、巡回情報評価部13は、数式4で導出された経路得点P2が大きいほど、基準巡回経路20に対する仮想巡回経路12aの類似性が高いと判定し、経路得点P2が小さいほど、基準巡回経路20に対する仮想巡回経路12aの類似性が低いと判定する。例えば、巡回情報評価部13は、数式4で導出された経路得点P2を所定の基準得点と比較して、経路得点P2が基準得点以上であれば被験者の巡回行動に合格評価を下し、経路得点P2が基準得点よりも小さければ被験者の巡回行動に不合格評価を下す。そして、巡回情報評価部13は、その評価結果を表示部11に表示して被験者に認識させる。尚、上述のような基準得点が複数あってもよく、その場合には、経路得点P2が複数段階にレベル分け(即ち、被験者の巡回行動が複数段階にレベル分け)される。
【0052】
また、
図6に示すように、許容範囲は、個別巡回区間毎に設定してもよい。つまり、基準巡回経路20からの逸脱距離が相対的に大きくなってもよい区間では許容範囲を相対的に大きく設定し、基準巡回経路20からの逸脱距離が相対的に小さくなければならない区間では許容範囲を相対的に小さく設定するといった変更が可能となる。
【0053】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、巡回訓練装置10の構成及び巡回訓練装置10を有する巡回訓練システムの構成について図面を用いて例示したが、それらの構成は適宜変更可能である。
また、上記実施形態では、表示部11の画像中にアバター11bを表示させ、そのアバター11bが移動した経路を仮想巡回経路12aとする例を示したが、アバター11bとは異なる画像(例えば、進行方向を示す矢印など)を表示部11の画像中に表示させるような変更も可能である。
【0054】
<2>
上記実施形態において、巡回情報評価部13は、仮想巡回経路12aの履歴と基準巡回経路20との類似性の指標値(例えば、数式4で導出される経路得点P2など)、並びに、巡回順序の履歴と基準巡回順序との類似性の指標値(例えば、数式2で導出される得点P1など)とを併せて、被験者による前記巡回行動を評価してもよい。例えば、巡回情報評価部13は、上記得点P1及び上記経路得点P2の合計得点を類似性の指標値として、被験者による巡回行動を評価してもよい。