特許第6358994号(P6358994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リガクの特許一覧

<>
  • 特許6358994-X線CT装置 図000002
  • 特許6358994-X線CT装置 図000003
  • 特許6358994-X線CT装置 図000004
  • 特許6358994-X線CT装置 図000005
  • 特許6358994-X線CT装置 図000006
  • 特許6358994-X線CT装置 図000007
  • 特許6358994-X線CT装置 図000008
  • 特許6358994-X線CT装置 図000009
  • 特許6358994-X線CT装置 図000010
  • 特許6358994-X線CT装置 図000011
  • 特許6358994-X線CT装置 図000012
  • 特許6358994-X線CT装置 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6358994
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】X線CT装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20180709BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20180709BHJP
   A61B 6/10 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   G01N23/046
   A61B6/03 331
   A61B6/10 350
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-184671(P2015-184671)
(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公開番号】特開2017-58298(P2017-58298A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2017年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】100101867
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 寿武
(72)【発明者】
【氏名】原 幸寛
(72)【発明者】
【氏名】小池 崇文
(72)【発明者】
【氏名】山田 鮎太
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−140560(JP,A)
【文献】 特開2009−145062(JP,A)
【文献】 特開2013−127419(JP,A)
【文献】 特開平10−277023(JP,A)
【文献】 特開2014−110889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00− 6/14、
G01N 23/00−23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガントリ内に設定した検査位置に検査対象を配置して、X線CT検査を実行するX線CT装置であって、
前記ガントリ内に検査対象を搬送して前記検査位置に配置するための検査対象搬送機構と、
前記検査位置に配置された検査対象に対してX線を照射するX線源と、
前記X線源と対向配置され、検査対象を透過してきたX線を検出するX線検出器と、
前記検査位置に配置された検査対象に対し、前記X線源を接近または離間させるX線源移動手段と、
前記X線源と前記X線検出器を、前記検査位置に配置された検査対象の周囲で回転させる回転手段と、
開口寸法の異なる通過規制孔を有する複数種類の寸法規制用アタッチメントと、
前記検査対象搬送機構による前記ガントリ内への検査対象の搬入口に設けられ、選択された一つの前記寸法規制用アタッチメントが装着されるアタッチメント装着部と、
前記アタッチメント装着部に装着された寸法規制用アタッチメントの種類を判別するアタッチメント判別手段と、
前記アタッチメント装着部に装着された寸法規制用アタッチメントに応じて、前記検査位置に配置された検査対象に向かう前記X線源の移動範囲を規制するX線源衝突回避手段と、を備えたことを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記寸法規制用アタッチメントは、検査対象の大きさに応じて前記通過規制孔の開口寸法が規定してあり、
検査対象を通過させることができる通過規制孔を有する寸法規制用アタッチメントを選択し、前記アタッチメント装着部へ装着することを特徴とする請求項1のX線CT装置。
【請求項3】
前記複数種類の寸法規制用アタッチメントは、前記通過規制孔の開口寸法に応じてそれぞれ異なる部位に被検知部が設けてあり、
前記アタッチメント判別手段は、前記寸法規制用アタッチメントに設けた被検知部を検知して、当該被検知部の設置部位に基づき前記アタッチメント装着部に装着された寸法規制用アタッチメントの種類を判別することを特徴とする請求項1または2のX線CT装置。
【請求項4】
前記検査対象搬送機構は、前記回転手段の回転軸と平行に検査対象を搬送して前記検査位置へ配置する構成であり、
前記X線源衝突回避手段は、前記回転手段の回転軸に沿って前記通過規制孔の内周縁から前記検査位置の外周に引き延ばした仮想の面を境界面として、当該仮想の境界面に接触または交叉しないように、前記X線源の移動範囲を規制することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載したX線CT装置。
【請求項5】
前記検査位置に配置された検査対象に対し、前記X線検出器を接近または離間させるX線検出器移動手段と、
前記アタッチメント装着部に装着された寸法規制用アタッチメントに応じて、前記検査位置に配置された検査対象に向かう前記X線検出器の移動範囲を規制するX線検出器衝突回避手段と、をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載したX線CT装置。
【請求項6】
前記検査対象搬送機構は、前記回転手段の回転軸と平行に検査対象を搬送して前記検査位置へ配置する構成であり、
前記X線検出器衝突回避手段は、前記回転手段の回転軸に沿って前記通過規制孔の内周縁から前記検査位置の外周に引き延ばした仮想の面を境界面として、当該仮想の境界面に接触または交叉しないように、前記X線検出器の移動範囲を規制することを特徴とする請求項5のX線CT装置。
【請求項7】
前記X線源と前記X線検出器とを一体に移動させるX線源−X線検出器駆動機構を備えており、当該X線源−X線検出器駆動機構が前記X線源移動手段および前記X線検出器移動手段を構成していることを特徴とする請求項5または6のX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガントリ内に設定した検査位置に検査対象を配置して、X線CT(Computed Tomography)による検査を実行するX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、物体を透過したX線を様々な位置・方向から検出し、X線が通過した断面内の密度分布を数値計算によって求め画像化する装置である。X線CT装置は、主に医療診断の分野において利用されており、人体を検査対象とする医用X線CT装置については研究開発が進み、現在では優れた機能を備えたものが各種提案されている。
【0003】
また、工業分野においても、例えば金属物質の非破壊検査や包装物の内部検査などにX線CT装置が利用されており、本出願人も工業分野への用途に好適なX線CT装置をすでに提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
かかる特許文献1に開示されたX線CT装置は、X線源およびX線検出器の一方または双方を検査対象に接近または離間する方向へ移動させる機構を備え、X線源と検査対象との間の距離や、検査対象とX線検出器との間の距離を任意に調整できるように構成されている。このように、X線源と検査対象との間の距離や、検査対象とX線検出器との間の距離を調整することで、撮像倍率や分解能を変更することができる(特許文献1の図7図9図11図14を参照)。
【0005】
しかしながら、X線源やX線検出器が検査対象に対して接近し過ぎた場合、CTスキャン動作に際して、検査対象の周囲をX線源やX線検出器が回転したとき、検査対象にX線源やX線検出器が衝突してしまうおそれがある。したがって、特許文献1に開示されたX線CT装置では、X線源やX線検出器が検査対象に接近し過ぎないよう、余裕をもった調整が必要とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−38836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、検査対象に対するX線源の衝突を防止することのできるX線CT装置の提供を目的とする。
また本発明は、検査対象に対するX線検出器の衝突を防止することのできるX線CT装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、ガントリ内に設定した検査位置に検査対象を配置して、X線CT検査を実行するX線CT装置であって、ガントリ内に検査対象を搬送して検査位置に配置するための検査対象搬送機構と、検査位置に配置された検査対象に対してX線を照射するX線源と、X線源と対向配置され、検査対象を透過してきたX線を検出するX線検出器と、検査位置に配置された検査対象に対し、X線源を接近または離間させるX線源移動手段と、X線源とX線検出器を、検査位置に配置された検査対象の周囲で回転させる回転手段と、開口寸法の異なる通過規制孔を有する複数種類の寸法規制用アタッチメントと、検査対象搬送機構によるガントリ内への検査対象の搬入口に設けられ、選択された一つの寸法規制用アタッチメントが装着されるアタッチメント装着部と、アタッチメント装着部に装着された寸法規制用アタッチメントの種類を判別するアタッチメント判別手段と、アタッチメント装着部に装着された寸法規制用アタッチメントに応じて、検査位置に配置された検査対象に向かうX線源の移動範囲を規制するX線源衝突回避手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、寸法規制用アタッチメントは、検査対象の大きさに応じて通過規制孔の開口寸法を規定することが好ましい。
【0010】
オペレータは、検査対象の大きさに応じて、当該検査対象を通過させることのできる通過規制孔を有する寸法規制用アタッチメントを選択して、アタッチメント装着部へ装着する。そうすると、アタッチメント判別手段が、アタッチメント装着部に装着された寸法規制用アタッチメントの種類を自動的に判別する。そして、X線源衝突回避手段が、アタッチメント装着部に装着された寸法規制用アタッチメントに応じて、検査位置に配置された検査対象に向かうX線源の移動範囲を規制する。具体的には、検査位置に配置された検査対象と衝突するおそれのない範囲で、X線源を検査対象に接近できるようにする。これにより、検査対象に対するX線源の衝突を自動的に回避することができる。
なお、寸法規制用アタッチメントを交換することなく、大きさの異なる検査対象を検査位置へ搬送しようとした場合、通過規制孔の開口寸法よりも検査対象が大きければ、寸法規制用アタッチメントに接触して、検査対象を検査位置まで搬送することができない。これにより、X線源が衝突するおそれのある検査対象が検査位置へ配置されることが防止される。
【0011】
また、複数種類の寸法規制用アタッチメントは、通過規制孔の開口寸法に応じてそれぞれ異なる部位に被検知部が設けてあり、アタッチメント判別手段は、寸法規制用アタッチメントに設けた被検知部を検知して、当該被検知部の設置部位に基づきアタッチメント装着部に装着された寸法規制用アタッチメントの種類を判別する構成とすることができる。
【0012】
このように構成することで、簡単な仕組みで確実に寸法規制用アタッチメントの種類を判別することが可能となる。
【0013】
また、検査対象搬送機構は、回転手段の回転軸と平行に検査対象を搬送して検査位置へ配置する構成であり、X線源衝突回避手段は、回転手段の回転軸に沿って通過規制孔の内周縁から検査位置の外周に引き延ばした仮想の面を境界面として、当該仮想の境界面に接触または交叉しないように、X線源の移動範囲を規制する構成とすることができる。
【0014】
このように構成することで、通過規制孔の内周縁よりも内側に相当する領域へのX線源の移動が規制される。そして、通過規制孔を通過してきた検査対象は、通過規制孔の内周縁よりも内側に相当する領域に配置されるので、当該検査対象にX線源が衝突するおそれがなくなる。
【0015】
また、本発明に係るX線CT装置は、検査位置に配置された検査対象に対し、X線検出器を接近または離間させるX線検出器移動手段と、アタッチメント装着部に装着された寸法規制用アタッチメントに応じて、検査位置に配置された検査対象に向かうX線検出器の移動範囲を規制するX線検出器衝突回避手段と、をさらに備えた構成とすることができる。
【0016】
このように構成することで、X線検出器衝突回避手段が、アタッチメント装着部に装着された寸法規制用アタッチメントに応じて、検査位置に配置された検査対象に向かうX線検出器の移動範囲を規制する。具体的には、検査位置に配置された検査対象と衝突するおそれのない範囲で、X線検出器を検査対象に接近できるようにする。これにより、検査対象に対するX線検出器の衝突を自動的に回避することができる。
なお、寸法規制用アタッチメントを交換することなく、大きさの異なる検査対象を検査位置へ搬送しようとした場合、通過規制孔の開口寸法よりも検査対象が大きければ、寸法規制用アタッチメントに接触して、検査対象を検査位置まで搬送することができない。これにより、X線検出器が衝突するおそれのある検査対象が検査位置へ配置されることが防止される。
【0017】
ここで、検査対象搬送機構は、回転手段の回転軸と平行に検査対象を搬送して検査位置へ配置する構成であり、X線検出器衝突回避手段は、回転手段の回転軸に沿って通過規制孔の内周縁から検査位置の外周に引き延ばした仮想の面を境界面として、当該仮想の境界面に接触または交叉しないように、X線検出器の移動範囲を規制する構成とすることができる。
【0018】
このように構成することで、通過規制孔の内周縁よりも内側に相当する領域へのX線検出器の移動が規制される。そして、通過規制孔を通過してきた検査対象は、通過規制孔の内周縁よりも内側に相当する領域に配置されるので、当該検査対象にX線検出器が衝突するおそれがなくなる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係るX線CT装置によれば、検査対象に対するX線源やX線検出器の衝突を自動的に防止することを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るX線CT装置の外観を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るX線CT装置の外観を示す正面図である。
図3】本発明の実施形態に係るX線CT装置の内部構造を模式的に示す断面図である。
図4】正面ケーシングの内部構造を拡大して示す斜視図である。
図5】寸法規制用アタッチメントとアタッチメント装着部を示す正面図である。
図6】本発明の実施形態に係るX線CT装置の制御系を示すブロック図である。
図7】本発明の実施形態に係るX線CT装置の作用を説明するための図で、(a)は正面ケーシングの内部要素を正面側から見た図、(b)は各構成要素の動作を模式的に示す側面図である
図8図7と同じく、本発明の実施形態に係るX線CT装置の作用を説明するための図で、(a)は正面ケーシングの内部要素を正面側から見た図、(b)は各構成要素の動作を模式的に示す側面図である
図9図7と同じく、本発明の実施形態に係るX線CT装置の作用を説明するための図で、(a)は正面ケーシングの内部要素を正面側から見た図、(b)は各構成要素の動作を模式的に示す側面図である
図10図7と同じく、本発明の実施形態に係るX線CT装置の作用を説明するための図で、(a)は正面ケーシングの内部要素を正面側から見た図、(b)は各構成要素の動作を模式的に示す側面図である
図11】本発明の他の実施形態に係る寸法規制用アタッチメントの構成例を示す図で、(a)〜(c)は正面図、(d)〜(f)は側面断面図である。
図12】本発明の他の実施形態に係るX線源−X線検出器駆動機構を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態に係るX線CT装置は、主に工業分野での用途に適した構造としてあり、各種の工業製品等を検査対象として、X線CT(Computed Tomography)による検査を実行するための構成要素を備えている。
【0022】
〔全体構造〕
図1図3は本発明の実施形態に係るX線CT装置の全体構造を示している。なお、図3に示すX線CT装置の内部構造は、各構成要素を模式化して示してある。
これらの図に示すように、X線CT装置は、ガントリ10と正面ケーシング11とによって外観が構成されている。ガントリ10の正面には検査対象の搬入口12が開口している。図2に示すように、本実施形態では搬入口12を円形に形成したが、これに限定されるものではなく、搬入口12は必要に応じて任意の形状とすることができる。正面ケーシング11はこの搬入口12を覆うようにガントリ10の正面から突き出して設けられている。正面ケーシング11には開閉扉13が設けてあり、この開閉扉13を開いて正面ケーシング11の内側に検査対象を供給できるようになっている。ガントリ10、正面ケーシング11および開閉扉13は、いずれもX線を遮断する材料で製作されている。なお、開閉扉13には、X線を遮断する透明な板材からなる窓13aが組み込んであり、この窓13aから正面ケーシング11の内部を目視できるようになっている。
【0023】
図3に示すように、ガントリ10の内部には回転盤20が回転自在に配設してある。この回転盤20は、回転駆動モータ21から駆動力を受けて回転する。本実施形態において、回転盤20の回転中心軸Oと、円形をした搬入口12の中心は、ほぼ同じ軸上に配置してある。そして、回転盤20の中心軸O上であって搬入口12と回転盤20との中間位置に、検査対象Sを配置するための検査位置14が設定されている。後述するように、検査対象Sは正面ケーシング11内に設けた検査対象搬送機構30によって、搬入口12から搬入されて検査位置14へ配置される。
【0024】
回転盤20にはX線源22とX線検出器23とを搭載してある。これらX線源22とX線検出器23は、検査位置14を挟んで互いに対向して配設してある。そして、X線源22で発生したX線を検査位置14に配置した検査対象Sに照射し、検査対象Sを透過してきたX線をX線検出器23で検出することで、X線CTによる検査を実行する仕組みとなっている。X線CT検査に際して、X線源22とX線検出器23は、回転盤20と一体に回転する。すなわち、回転盤20と回転駆動モータ21は、これらX線源22とX線検出器23を回転させる回転手段としての機能を有している。
【0025】
回転盤20の正面側には、中心軸Oを挟んでそれぞれ径方向に延びる案内レール24,25が設けてある。X線源22は一方の案内レール24上を移動するスライダ26に搭載され、当該案内レール24に沿って径方向に移動自在である。また、X線検出器23は他方の案内レール25上を移動するスライダ27に搭載され、当該案内レール25に沿って径方向に移動自在である。回転盤20の裏面側には2台の駆動モータ28,29が搭載してある。X線源22は、ボールねじ等の動力伝達機構を介して一方の駆動モータ28から駆動力を受け、案内レール24に沿って移動する。同様に、X線検出器23は、ボールねじ等の動力伝達機構を介して他方の駆動モータ29から駆動力を受け、案内レール25に沿って移動する。一方の案内レール24、スライダ26、動力伝達機構(図示せず)および駆動モータ28は、検査位置14に配置した検査対象Sに対し、X線源22を接近または離間させるX線源移動手段としての機能を有している。また、他方の案内レール25、スライダ27、動力伝達機構(図示せず)および駆動モータ29は、検査位置14に配置した検査対象Sに対し、X線検出器23を接近または離間させるX線検出器移動手段としての機能を有している。
【0026】
図2図3および図4に示すように、正面ケーシング11の内部床面には検査対象搬送機構30が設置されている。この検査対象搬送機構30は、図示しない駆動モータからの駆動力を受けて水平面上で直交する2方向(X−Y方向)と高さ方向(Z方向)に移動する構成となっている。この検査対象搬送機構30の上面には保持台31が搭載されている。さらに、保持台31には、前後方向に延びる配置部31aが取り付けてあり、検査対象Sはこの配置部31aの上に配置される。
配置部31aに検査対象Sを配置した後、検査対象Sの中心を回転盤20の中心軸O上に位置合わせする。この位置合わせは、検査対象搬送機構30をY−Z方向に駆動して行う。続いて、検査対象搬送機構30をX方向に駆動して、配置部31aに配置した検査対象Sを、保持台31とともに回転盤20の中心軸Oと平行に移動し、搬入口12からガントリ10の内部へ搬入する。そして、検査対象Sを検査位置14へ配置する。なお、検査対象搬送機構30の移動方向の一つX方向は、既述した回転盤20の中心軸Oが延びる方向と一致している。
【0027】
〔寸法規制用アタッチメントとアタッチメント装着部〕
次に、図5を主に参照して、寸法規制用アタッチメントとアタッチメント装着部について詳細に説明する。
本実施形態に係るX線CT装置は、開口寸法の異なる通過規制孔41を有する複数種類の寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40C)を備えている。また、ガントリ10の搬入口12には、寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40C)を選択して装着するためのアタッチメント装着部42が形成してある。
本実施形態では、各寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40C)は、アクリル板等の平板材料を加工して同じ寸法形状に製作してある。なお、各寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40C)は同じ寸法形状に製作する必要はなく、必要に応じて異なった寸法形状に製作することもできる。
【0028】
各寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40C)には、それぞれ同じ位置にねじ等の締結具43が取り付けてあり、アタッチメント装着部42に設けたねじ孔等の締結箇所44に締結具43を締結することで、各寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40C)が同じ条件でアタッチメント装着部42へ装着される構成となっている。
【0029】
各寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40C)は、それぞれ適用される検査対象Sがその大きさに応じて決められている。そして、各寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40C)の通過規制孔41は、適用される検査対象Sの大きさに応じて開口寸法が規定されている。すなわち、寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40C)のいずれかを選択してアタッチメント装着部42へ装着するとともに、当該選択した寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40Cのいずれか)に適用される検査対象Sを保持台31の配置部31aへ配置した状態でガントリ10の内部へと搬入しようとしたとき、当該検査対象Sが通過できる大きさ(寸法形状)に通過規制孔41は設定してある。
なお、図5に示す通過規制孔41は、それぞれ円形状に形成してあるが、これに限定されるものではなく、半円形状や四角形状、あるいは検査対象Sの外形に対応する形状など、必要に応じて任意の形状に形成することができる。また、各寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40C)にそれぞれ異なる形状の通過規制孔41を形成してもよい。
【0030】
各寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40C)には、それぞれ異なる部位に被検知部45が設けてある。一方、アタッチメント装着部42には、装着された各寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40C)の被検知部45をそれぞれ検知するセンサ46が設けられている。これら被検知部45とセンサ46には、種々のセンサ手段を適用することができる。例えば、各寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40C)の被検知部45に磁石や金属片を固定する。そして、アタッチメント装着部42において、寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40Cのいずれか)を装着した状態で、同アタッチメントの被検知部45と対向する部位に、磁気検知センサや金属検知センサを取り付ける。このように構成すれば、磁気検知センサや金属検知センサによって、アタッチメント装着部42に装着された寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40Cのいずれか)の被検知部45を検出することが可能となる。
【0031】
〔制御系〕
次に、図6を主に参照して、本実施形態に係るX線CT装置の制御系について詳細に説明する。
X線CT装置の制御系は、コンピュータとその周辺機器で構成されており、中央処理部(CPU)50、記憶部51、操作部52、X線源制御部53、データ収集部54、画像再生部55、回転制御部56、駆動制御部57,58,59、アタッチメント判別部60、画像表示部61を含んでいる。記憶部51には、X線CT装置の動作制御やデータ処理等を実行するためのプログラムがインストールされており、中央処理部50はそのプログラムに従い各構成部を制御するための指令や、収集したデータの演算処理等を実行する。操作部52は、マウスやキーボード等の周辺機器からなり、X線CT装置の操作に必要な入力操作はこの操作部52を用いて行われる。
【0032】
X線源22はX線源制御部53に制御されてX線を発生し、検査位置14に配置した検査対象SにX線を照射する。そして、検査対象Sを透過してきたX線がX線検出器23で検出され、その検出信号がデータ収集部54に画像データとして収集されて、記憶部51に保存される。さらに、画像再生部55において、検査対象Sの断面画像や3次元画像として再生される。また、画像再生部55により再生された検査対象Sの断面画像や3次元画像は、例えば、液晶表示装置等により構成された画像表示部61に表示される。
【0033】
回転盤20を回転させる回転駆動モータ21は、回転制御部56からの制御信号に基づいて作動する。回転盤20の回転に伴い、回転盤20に搭載されたX線源22とX線検出器23が検査位置14に配置された検査対象Sの周囲を回転して、スキャニングが実行される。
【0034】
駆動モータ28は、駆動制御部57からの制御信号に基づいて、回転盤20上でX線源22を径方向に移動して、検査位置14に配置された検査対象Sに対してX線源22を接近または離間させる。中央処理部50は、操作部52から入力された撮像倍率や分解能の設定値に基づき、あらかじめ記憶部51に記憶してある撮像倍率や分解能とX線源−検査位置間距離との対照データを参照して、X線源22を設定位置へ移動させるための指令信号を駆動制御部57へ出力する。駆動制御部57は、この指令信号に従い駆動モータ28に制御信号を出力する。
【0035】
駆動モータ29は、駆動制御部58からの制御信号に基づいて、回転盤20上でX線検出器23を径方向に移動して、検査位置14に配置された検査対象Sに対してX線検出器23を接近または離間させる。中央処理部50は、操作部52から入力された撮像倍率や分解能の設定値に基づき、あらかじめ記憶部51に記憶してある撮像倍率や分解能とX線検出器−検査位置間距離との対照データを参照して、X線検出器23を設定位置へ移動させるための指令信号を駆動制御部58へ出力する。駆動制御部58は、この指令信号に従い駆動モータ29に制御信号を出力する。
【0036】
駆動モータ34は、駆動制御部59からの制御信号に基づき保持台31を移動させて、配置部31aに配置した検査対象Sを検査位置14まで搬送する。オペレータは、配置部31aに検査対象Sを配置した後、操作部52から操作信号を入力する。中央処理部50は、操作部52からの操作信号に基づき、検査対象Sを検査位置14へ搬送するための指令信号を駆動制御部59へ出力する。駆動制御部59は、この指令信号に従い駆動モータ34に制御信号を出力する。
【0037】
アタッチメント判別部60は、アタッチメント装着部42に設けられたセンサ46から検出信号を入力する。寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40C)の種類と被検知部45の設定部位との間の対照データは、あらかじめ操作部52から入力され、記憶部51に記憶されている。アタッチメント判別部60は、中央処理部50を介して当該対照データを参照し、センサ46から入力した検出信号により認識した被検知部45の設定部位から寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40C)の種類を判別する。このように、アタッチメント判別部60とアタッチメント装着部42に設けられたセンサ46は、アタッチメント装着部42に装着された寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40C)の種類を判別するアタッチメント判別手段としての機能を有している。
【0038】
また、中央処理部50は、アタッチメント装着部42に装着された寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40Cのいずれか)に応じて、検査位置14に配置された検査対象Sに向かうX線源22の移動範囲を規制するX線源衝突回避手段としても機能する。すなわち、アタッチメント判別部60が、アタッチメント装着部42に装着された寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40Cのいずれか)を判別すると、その判別結果は記憶部51に保存される。中央処理部50は、その判別結果に基づいて、当該寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40Cのいずれか)に適用される検査対象SにX線源22が接触しないように、X線源22の移動範囲を規制する。
具体的には、図7に示すように、回転盤20の中心軸Oに沿って、寸法規制用アタッチメント40Aの通過規制孔41の内周縁から検査位置14の外周に引き延ばした仮想の面を境界面Hとして、当該仮想の境界面Hに接触または交叉しないように、X線源22の移動範囲を規制する。
【0039】
さらに、中央処理部50は、アタッチメント装着部42に装着された寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40Cのいずれか)に応じて、検査位置14に配置された検査対象Sに向かうX線検出器23の移動範囲を規制するX線検出器衝突回避手段としても機能する。すなわち、アタッチメント判別部60が、アタッチメント装着部42に装着された寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40Cのいずれか)を判別すると、その判別結果は記憶部51に保存される。中央処理部50は、その判別結果に基づいて、当該寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40Cのいずれか)に適用される検査対象SにX線検出器23が接触しないように、X線検出器23の移動範囲を規制する。
具体的には、図8に示すように、回転盤20の中心軸Oに沿って、寸法規制用アタッチメント40Aの通過規制孔41の内周縁から検査位置14の外周に引き延ばした仮想の面を境界面Hとして、当該仮想の境界面Hに接触または交叉しないように、X線検出器23の移動範囲を規制する。
【0040】
〔作用説明〕
次に、図7図10を参照して、検査対象へのX線源およびX線検出器の衝突回避に関する作用を説明する。なお、図7および図8は、比較的小さい検査対象を検査位置へ配置する際の作用を模式的に示しており、図9および図10は、比較的大きい検査対象を検査位置へ配置する際の作用を模式的に示している。
【0041】
オペレータは、検査対象Sの大きさに応じて、当該検査対象Sを通過させることのできる通過規制孔41を有する寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40C)を選択して、アタッチメント装着部42へ装着する。その後に、保持台31の配置部31aへ検査対象Sを配置して、保持台31をX方向に移動させ当該検査対象Sをガントリ10の内部へ搬入し、検査位置14へ配置する。
なお、図に示す本実施形態では、保持台31も検査対象Sの大きさに応じて交換できる構成としてあり、図9図10に示す例では、大きい検査対象Sに対しては、当該検査対象Sを安定して配置できるように幅の広い配置部31aを備えた保持台31に交換して利用している。
【0042】
保持台31を移動させ当該検査対象Sをガントリ10の内部へ搬入する過程で、検査対象Sはアタッチメント装着部42の通過規制孔41を通過する。アタッチメント装着部42へ装着した寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40Cのいずれか)に適合する大きさの検査対象Sであれば、支障なく通過規制孔41を通過することができる(図7図10参照)。
【0043】
一方、アタッチメント装着部42へ装着した寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40Cのいずれか)に本来適合する検査対象Sよりも大きい検査対象Sが、誤って配置部31aへ配置された場合は、通過規制孔41の周壁に阻まれて当該検査対象Sはガントリ10の内部へ搬入することができない。これにより、X線源22やX線検出器23が衝突するおそれのある検査対象Sが、検査位置14へ配置されることを未然に防止することができる。
【0044】
また、既述したように、アタッチメント装着部42へ装着された寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40Cのいずれか)の種類は、被検知部45の設置部位をセンサ46が検出し、その検出信号に基づいてアタッチメント判別部60が判別している。
そして、当該寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40Cのいずれか)の種類に応じて、X線源衝突回避手段としての機能をもつ中央処理部50が、検査位置14に配置された検査対象Sに向かうX線源22の移動範囲を規制する。すなわち、検査位置14に配置された検査対象Sと衝突するおそれのない範囲で、X線源22を検査対象Sに接近できるようにする。具体的には、図7および図9に示すように、回転盤20の中心軸Oに沿って、寸法規制用アタッチメント(40Aまたは40C)の通過規制孔41の内周縁から検査位置14の外周に引き延ばした仮想の面を境界面Hとして、当該仮想の境界面Hに接触または交叉しないように、X線源22の移動範囲を規制する。これにより、検査対象Sに対するX線源22の衝突を自動的に回避することができる。
【0045】
同様に、アタッチメント装着部42へ装着された寸法規制用アタッチメント(40A,40B,40Cのいずれか)の種類に応じて、X線検出器衝突回避手段としての機能をもつ中央処理部50が、検査位置14に配置された検査対象Sに向かうX線検出器23の移動範囲を規制する。すなわち、検査位置14に配置された検査対象Sと衝突するおそれのない範囲で、X線検出器23を検査対象Sに接近できるようにする。具体的には、図8および図10に示すように、回転盤20の中心軸Oに沿って、寸法規制用アタッチメント(40Aまたは40C)の通過規制孔41の内周縁から検査位置14の外周に引き延ばした仮想の面を境界面Hとして、当該仮想の境界面Hに接触または交叉しないように、X線検出器23の移動範囲を規制する。これにより、検査対象Sに対するX線検出器23の衝突を自動的に回避することができる。
【0046】
〔他の実施形態〕
図11は、寸法規制用アタッチメントの他の構成例を示している。本発明のX線CT装置は、動物病院などで生きた小動物を検査対象SとしてX線CT検査を実施する用途にも適している。この種の用途に用いる場合は、検査中に小動物が検査位置14から逃げ出さないよう保持する仕組みが必要となる。そこで、図11に示す寸法規制用アタッチメント(70A,70B,70C)には、通過規制孔41の周縁から軸方向に筒状部71を延出して形成してあり、この筒状部71をガントリ10の内部へ挿入して配置する構成となっている。検査位置14に配置した小動物は、周囲をこの筒状部71で囲まれるため、検査位置14からの逃げ出しが阻止される。
【0047】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形実施や応用実施が可能であることは勿論である。
上述した実施形態では、X線源移動手段とX線検出器移動手段とをそれぞれ別々に設け、X線源22とX線検出器23とを個別に移動させる構成としたが、これら各移動手段を統合したX線源−X線検出器駆動機構を備え、X線源22とX線検出器23とを一体に移動させる構成することもできる。例えば、図12に示すように、支持プレート80の両端部にX線源22とX線検出器23を搭載し、ボールねじ等の動力伝達機構を介して駆動モータ81からの駆動力を受けて、支持プレート80を回転盤20に設けた案内レール82に沿って移動させる機構(X線源−X線検出器駆動機構)をもって、X線源22とX線検出器23とを一体に移動させてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、中央処理部50がX線源衝突回避手段の機能に加え、X線検出器衝突回避手段としても機能していたが、X線源衝突回避手段のみの機能に限定することもできる。
【符号の説明】
【0049】
10:ガントリ、11:正面ケーシング、12:搬入口、13:開閉扉、13a:窓、14:検査位置、
20:回転盤、21:回転駆動モータ、22:X線源、23:X線検出器、24,25:案内レール、26,27:スライダ、28,29:駆動モータ、
30:検査対象搬送機構、31:保持台、31a:配置部、
40A,40B,40C:寸法規制用アタッチメント、41:通過規制孔、42:アタッチメント装着部、43:締結具、44:締結箇所、45:被検知部、46:センサ、
50:中央処理部、51:記憶部、52:操作部、53:X線源制御部、54:データ収集部、55:画像再生部、56:回転制御部、57,58,59:駆動制御部、60:アタッチメント判別部、61:画像表示部、
70A,70B,70C:寸法規制用アタッチメント、71:筒状部、
80:支持プレート、81:駆動モータ、82:案内レール、
S:検査対象、O:中心軸、H:境界面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12