特許第6359021号(P6359021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウーデ・インヴェンタ−フィッシャー・ゲーエムベーハーの特許一覧

特許6359021抽出反応器及び顆粒材料の抽出のためのプロセス
<>
  • 特許6359021-抽出反応器及び顆粒材料の抽出のためのプロセス 図000004
  • 特許6359021-抽出反応器及び顆粒材料の抽出のためのプロセス 図000005
  • 特許6359021-抽出反応器及び顆粒材料の抽出のためのプロセス 図000006
  • 特許6359021-抽出反応器及び顆粒材料の抽出のためのプロセス 図000007
  • 特許6359021-抽出反応器及び顆粒材料の抽出のためのプロセス 図000008
  • 特許6359021-抽出反応器及び顆粒材料の抽出のためのプロセス 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359021
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】抽出反応器及び顆粒材料の抽出のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   B01D 11/02 20060101AFI20180709BHJP
   C08G 69/46 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   B01D11/02 102
   C08G69/46
【請求項の数】20
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-540093(P2015-540093)
(86)(22)【出願日】2013年10月21日
(65)【公表番号】特表2016-502458(P2016-502458A)
(43)【公表日】2016年1月28日
(86)【国際出願番号】EP2013071987
(87)【国際公開番号】WO2014072167
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2016年8月23日
(31)【優先権主張番号】12191455.0
(32)【優先日】2012年11月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510051613
【氏名又は名称】ウーデ・インヴェンタ−フィッシャー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ズィーベッケ,エッケハルト
(72)【発明者】
【氏名】カッツァー,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ケーニヒスマン,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ベール,ミルコ
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−056991(JP,A)
【文献】 特開昭50−109287(JP,A)
【文献】 特開昭59−025803(JP,A)
【文献】 特表2001−524562(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/006610(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 11/00−11/04
B01J 8/00−8/42
B01J 19/00−19/32
C07B 31/00−63/04
C07C 1/00−409/44
C08G 69/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出反応器であって、複数の水平に構成された熱交換器部材(B)を有する、少なくとも一つの垂直に延在するフローパイプ(A)を含み、前記熱交換器部材(B)は前記フローパイプの断面を完全に又は部分的に埋め、顆粒材料及び抽出液(11)が前記熱交換器部材を通って流れ、
前記複数の熱交換器部材は前記フローパイプ(A)を個々の水平区画(1,2,3,4,5)にさらに分割し、前記顆粒材料のための少なくとも一つの頂部の入口(6)と、前記顆粒材料のための少なくとも一つの底部の出口(7)と、前記抽出液(11)のための少なくとも一つの底部の供給口(8)と、前記抽出液(11)のための少なくとも一つの頂部の出口(16)とを含み
記複数の熱交換器部材(B)は、一連に順に接続され、垂直方向一番上の熱交換器部材(B)から始まって熱交換媒体が流され、当該熱交換媒体は、最後の熱交換器部材(B)を通った後に、底部側の供給口(8)を通じて抽出反応器に導入され
前記最後の熱交換器部材の後、前記底部側の供給口(8)の前に、熱交換器(E)が、熱交換媒体の温度コントロールのために設置されており、及び/又はポンプ(D)があることを特徴とする、
、抽出反応器。
【請求項2】
少なくとも3つの熱交換器部材(B)が存在することを特徴とする、
請求項1に記載の抽出反応器。
【請求項3】
8から12の熱交換器部材(B)が存在することを特徴とする、
請求項1に記載の抽出反応器。
【請求項4】
前記熱交換器部材(B)が、垂直方向に配置されており
a)互いに等間隔であり、及び/又は
b)互いに異なる間隔であることを特徴とする、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の抽出反応器。
【請求項5】
前記熱交換器部材(B)が、カセットベース、バッフルベース、パイプコイル構造、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の抽出反応器。
【請求項6】
前記カセットベースが、9から96の間の、それぞれが顆粒材料と抽出液(11)のための個別のスペース(I)と、熱交換媒体のための接続スペース(II)とを有する個々のフロー部材(100)を含むことを特徴とする、
請求項5に記載の抽出反応器。
【請求項7】
前記カセットベースが、33から61の間の、それぞれが顆粒材料と抽出液(11)のための個別のスペース(I)と、熱交換媒体のための接続スペース(II)とを有する個々のフロー部材(100)を含むことを特徴とする、
請求項5に記載の抽出反応器。
【請求項8】
前記個々のフロー部材(100)が、流れ方向/垂直方向において、四角形又は六角形の断面を有し、また、円錐形の顆粒流入口(101)、通過トンネル(102)及び円錐形の顆粒出口(103)を有することを特徴とする、
請求項6又は7に記載の抽出反応器。
【請求項9】
前記抽出液(11)のための供給口(8)が、供給される抽出液(11)を前記フローパイプ(A)の全断面に渡って分配しうる液体ディストリビュータを含むことを特徴とする、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の抽出反応器。
【請求項10】
少なくとも幾つかの又は全ての区画(1,2,3,4,5)が、各区画(1,2,3,4,5)に存在する顆粒材料及び/又は抽出液(11)の温度を決定するための温度センサ(Tc)を有することを特徴とする、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の抽出反応器。
【請求項11】
抽出液(11)に可溶で、顆粒材料から、又は、ポリアミド6コポリマーの顆粒から、請求項1〜10のいずれか1項に記載の抽出反応器で抽出される、モノマー又はオリゴマー成分の抽出のための方法であって、
顆粒材料は、少なくとも一つの頂部側の入口(6)を通じて、垂直方向に延在するフローパイプ(A)の中にフィードされ、少なくとも一つの底部側の出口(7)の方向へ垂直方向下向きに導かれて、そこで抽出器から排出され、
抽出液(11)は、少なくとも一つの底部側の供給口(8)を通じて垂直方向に延在するフローパイプ(A)の中にフィードされ、少なくとも一つの頂部の出口(16)の方向に前記顆粒材料と向流して導かれて、そこで排出され、
垂直方向の温度勾配が、複数の熱交換器部材(B)を通じてフローパイプ(A)で作られることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記フローパイプ(A)中の温度は、垂直方向に頂部から底部へと上昇し、複数の熱交換器部材(B)を通じてセットされることを特徴とする、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記温度勾配が、前記フローパイプ中の前記抽出液(11)の最大温度が、各点において、所与の静水圧における抽出液(11)の沸点よりも少なくとも0.5から10℃下であるようにセットされることを特徴とする、
請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記温度勾配が、前記フローパイプ中の前記抽出液(11)の最大温度が、各点において、所与の静水圧における抽出液(11)の沸点よりも2℃から7℃下であるようにセットされることを特徴とする、
請求項11又は12に記載の方法。
【請求項15】
前記フローパイプの少なくとも一つの区画(2,3,4,5)において、最大抽出温度に達し、その後、前記抽出液の排出までそれを超過しない、
請求項11から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記フローパイプの全ての区画(2,3,4,5)において最大抽出温度に達し、その後、前記抽出液の排出までそれを超過しない、
請求項11から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記フローパイプ中の圧力が、絶対圧1.0から3.0barの間であることを特徴とする、
請求項11から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記フローパイプ中の圧力が、絶対圧1.0から2.0barの間であることを特徴とする、
請求項11から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記温度勾配が、一連に順番に接続された前記複数の熱交換器部材によってセットされ、当該熱交換器部材は、垂直方向一番上の熱交換器部材(B)から始まって、熱交換媒体が通って流れ、
前記熱交換媒体は、最後の熱交換器部材(B)を通過した後に底部側の供給口(8)を通って前記抽出反応器に導入され、導入の前に、熱交換器(E)を用いて底部側の供給口(8)での所定の抽出温度まで加熱されることを特徴とする、
請求項11から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
a)抽出液(11)として、水、又は、水とε−カプロラクタムとの混合物
b)熱交換媒体として、水、水及び水と混合可能なアルコールの混合物、又は、水とε−カプロラクタムとの混合物、が用いられることを特徴とする、
請求項11から19のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抽出反応器に関し、当該反応器では、特に顆粒ポリアミドである顆粒材料が抽出を受けて、抽出の間に抽出液で顆粒材料から可溶成分が溶出される。ポリアミド材料の場合、例えば、ポリアミド材料の製造のための重縮合反応の間に、顆粒材料中に残存したオリゴマー又はモノマー成分がある。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド6(又は共重合比率<30%のポリアミド6)の重縮合の間に、溶けて残存する原料カプロラクタムのオリゴマー(OM)及びモノマー(及び、コポリマーの製造のために必要とされる原料のOM)は、続いて接続される抽出ユニットで分離されねばならない。OMの含有量は一般的に6質量%以上であり、一般的に分離は、1又は複数ステップの抽出プロセスを用いて実施される。顆粒を形成するように冷却され粉砕されるポリマーは、抽出液(通常、様々なレベルのカプロラクタム含量の水)に向流して導かれる。それに従って抽出液がポリマー顆粒からモノマー及びオリゴマー(抽出可能物質)を吸収し、顆粒中の抽出可能物質の全含量は、1質量%以下に低減されうる。抽出可能物質の代わりにポリマーに残存している抽出液は、続く乾燥ステップで除去されねばならない。フローコントロールは通常、顆粒が抽出容器を通って頂部から濾過ベッドの底部へと導かれ、抽出液は下部から頂部へ導かれるようにする。顆粒と抽出液の一方向の流れは、バッフルを用いることによって適合されるよう意図されている。
【0003】
抽出液におけるモノマー及びオリゴマーの溶解性の差ゆえに、抽出はしばしば、2(又はより多くの)ステップで行われる。第一ステップで、オリゴマーが適切な抽出液(通常、5〜50質量%、好ましくは12〜25質量%のカプロラクタム比率の水)で分離される。さらなる一つの(又はさらに多くの)抽出ステップで、モノマーと残渣的に残存するオリゴマーとが、適切な抽出液(通常、0.5質量%、好ましくは0.1質量%より低いカプロラクタム比率の水)を用いることによってポリマーから除去される。
【0004】
ポリアミド6(コポリマー有りまたは無し)からのモノマー及びオリゴマーの抽出の間、抽出温度への強い依存性が確認される。基本的に、温度があがるほど、抽出速度及び効果は非常に高くなるといえる。実際には、抽出液の常圧での沸点よりもわずかに低い抽出温度が設定される。
【0005】
液体抽出の間に超えるべきでない最高抽出温度は、水性環境における高温でのポリアミド6の加水分解によって規定される。ポリマーへのダメージを避けるために、抽出液としてカプロラクタム含有量が25質量%までの水を用いて滞留時間が1時間を超える時には、140℃(好ましくは130℃)の抽出温度は、避けられるべきである。
【0006】
抽出温度についてのさらなる限定要素は、静水圧で規定される抽出カラム内の局所的な沸点である。プロセスに悪影響を及ぼさないようにこの温度を超過してはならない。
【0007】
抽出液の大気圧での沸点を超える抽出温度のさらなる上昇のために、いくつかの可能性が用いられる。
【0008】
1.抽出反応器の静圧高さ(hydrostatic height)の利用。流入口の抽出液の温度は、抽出カラムへの流入口の抽出液の局所的な沸点よりもわずかに低いが、抽出カラムの頂部における大気圧での沸点よりも高い。向流の顆粒の流れによって抽出液が冷却されるので、流出口においては、常に抽出液の温度は大気圧での沸点よりも低い。しかしながら、オリゴマーの分離のために予抽出容器を用いる時、顆粒の入口温度は非常に高いため、抽出液の冷却はほとんど行われない。入ってくる抽出液はわずかに過熱されうるのみで、有効性は低い。抽出は非加圧容器で行われる。
【0009】
抽出器の上部では温度が低く、またモノマー濃度が高いため、抽出液の密度は高くなる。抽出器上部からの重い液体が、抽出器の下部に急速に流れ込む逆流の危険がある。顆粒の流量分布が妨げられ、不均一な滞留時間分布が質の低下を招く。
【0010】
2.抽出反応器の静圧高さ(hydrostatic height)の利用。流入口での抽出液の温度は、抽出カラムの頂部での抽出液の大気圧での沸点よりも明らかに高いが、局所的な沸点よりも低い。抽出器の中間領域では、抽出液の一部が引き出されて抽出器の外部で冷却される。それから、液体流は再び除去ポイントの上から抽出器に入れられ、すぐに、抽出液の局所的な沸点と同じ又はそれよりも低い、抽出液の混合温度が生じる(US-2010/0048860A1参照)。結果として、120℃を超える最高抽出温度が抽出器の下部において達成され、結果的に、2段階抽出が実行される。抽出器の下部が高温で操作されうるため、抽出の効果は高い。抽出は、非加圧装置で行われる。
【0011】
明らかに低い温度と、抽出器上部でのモノマー濃度の増加の結果、抽出液の密度が大きく上昇する。1.の方法と比べて、逆流の危険を顕著に増す明確な温度限界が生じる。表面に過熱された液体が流れ、瞬間的にそこで激しく沸騰するため、操作者へのリスクが生じる。顆粒の流量分布が妨げられ、結果として、質の低下を伴う不均一な滞留時間分布となる。
【0012】
加圧抽出としての抽出反応器の操作。予備抽出ステップからの顆粒がポンプ圧を用いて抽出器にポンピングされ、そこではより高い温度がセットされうる。なぜなら、抽出の全工程におけるより高い圧力によって、局所的な沸騰が生じないからである(DE 10124579A1を参照)。抽出器の高さの全体で温度を上昇させることが可能なので、非常に高い抽出効果が得られる。抽出器を圧力容器として設計するため、より複雑で高コストとなる。
【0013】
より低い温度と抽出器上部でのモノマー濃度の上昇の結果、抽出液の密度が上昇する。重い液体が抽出器の上部から抽出器の下部へと急速に流れ込む逆流の危険がある。顆粒の流量分布が妨げられ、結果として、質の低下を伴う不均一な滞留時間分布となる。
【0014】
全てのバリエーションに共通することは、いずれも、顆粒及び抽出液の入口温度と、抽出反応器の表面からの熱損失のみに依存する内部温度プロフィールを有することにある。個々に制御された温度勾配を設定すること、最適には、抽出器のあらゆる高さにおいて抽出液の局所的な沸点からの差を最小とすることは、不可能である。
【0015】
一般的に、抽出器内部の顆粒及び抽出液の流れの制御は、円錐形のバッフルを用いることによって行われる(“Synthetische Fasern” (Synthetic Fibres), Munich, Vienna, 1995、 Fourne, Franz、スケッチ2を参照)。これは、水平な抽出エリア、つまり、抽出器の高さに比例する容量への依存性に関連する。このことは、抽出器はこのように高容量(>100トンPA/日)の構造上の高さを有するので、抽出器は構造物の高さについて決定的な影響を有するということを意味する。つまり従来の抽出器の構造では、容量が大きくなれば、直接的に建設技術においてさらなるコストを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】US-2010/0048860A1
【特許文献2】DE 10124579A1
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】“Synthetische Fasern” (Synthetic Fibres), Munich, Vienna, 1995、 Fourne, Franz
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
つまり本発明の目的は、抽出反応器の高さにわたって個別に温度勾配を設定する可能性を提供する、抽出反応器を開発することである。これは、プラントの能力と、最終製造物における所望のモノマー及びオリゴマー含量とに応じて、自動的に制御可能であるべきである。抽出反応器における最高温度は、いずれの点においても、それぞれの静水液体圧における抽出液の沸点の少なくとも0.5℃(好ましくは少なくとも2.0℃)下である。加えて、可能な限り短い滞留時間における最大抽出温度(しかしそれを超えない温度。例えば、加水分解による製品へのダメージを避けるため)に達する可能性も存在する。
【0019】
加えて、特にPA6に基づく顆粒材料が効果的に抽出を受けるような(つまりモノマー又はオリゴマー成分が除かれるような)抽出方法を示することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的は、抽出反応器に関しては請求項1の特徴によって達成され、抽出方法に関しては請求項14の特徴によって達成される。各従属項は、より有利な展開形を示している。
【0021】
すなわち、本発明によれば、顆粒材料、例えばポリアミド、特に好ましくはポリアミド6に基づくポリアミドからの液体抽出のために好適な抽出反応器が提供される。本発明の抽出反応器は、完全に又は部分的にフローパイプの横断面を埋め、顆粒材料と抽出液とが流れて通る水平に構成された複数の熱交換器部材を含む少なくとも一つの垂直に延在するフローパイプを含み、前記複数の熱交換器部材は前記フローパイプを個別の垂直区画に分割している。加えて、前記抽出反応器は、前記顆粒材料のための少なくとも一つの頂部側の入口、前記顆粒材料のための少なくとも一つの底部側の出口、抽出液のための少なくとも一つの下部側の供給口、及び、抽出液のための少なくとも一つの頂部側の出口を含む。
【0022】
すなわち本発明の抽出反応器は、ポリアミド顆粒のための垂直なフローパイプを用いることによって構成されている。顆粒は頂部から底部へ導かれ、底部は充填されたベッドである。抽出液は向流として導かれる。抽出液は、抽出反応器の下端の適切な液体ディストリビュータを通じて、抽出反応器の断面にわたって分配される。落下する顆粒と上昇する液体とは、液体と顆粒の栓流が形成されるように、整流器(カセットベース)によって直径方向にわたって均一に分配される。
【0023】
すなわち本発明の抽出反応器は、最適なボリューム利用の手段によって実行される抽出方法の最大の効果を可能とするものである。
【0024】
本発明によって次の利点が達成される。
【0025】
抽出液の温度制御が、抽出ベッドの全ての高さにわたって可能となる。
【0026】
温度勾配を設定する時に最大効率で個々の温度勾配を設定することは、抽出液の局所的な沸点又はその少し下で達成されうる。
【0027】
個々のフロー部材からなるカセットベースを用いる流れの制御は、抽出能力から独立して抽出ベッド高さを確定し、このことは、高能力かつ小さな構造高さを実現する。
【0028】
温度及び流れの制御は、抽出反応器の頂部と下部の間で密度差が大きい場合であっても、逆流を回避させる。
【0029】
さらに、本発明の抽出反応器では、抽出反応器の結果的な高さが要求される抽出能力から独立するように、フローバッフルが設計されうることが確認されうる。
【0030】
好ましい実施態様によれば、抽出反応器には、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、さらに好ましくは4から30、特に8から12の熱交換器部材が存在する。
【0031】
抽出反応器のさらなる実施態様が実施例によって示されるが、実施態様は、熱交換器部材が、
a)互いに等距離で、及び/又は
b)互いに異なる間隔で、
垂直方向に配置されることを示す。
【0032】
熱交換器部材が互いに異なる間隔である場合、温度、密度および抽出液の濃度勾配に応じた間隔の調整は計算可能であり、熱交換器部材の間隔は対応する方法で調整され、製造されうる。実態態様によれば、抽出反応器の抽出挙動は、抽出がおこなわれる各顆粒の詳細に応じて適合されうる。つまり熱交換器部材は、固定されて抽出反応器の中に予め挿入されうるが、また同様に、異なる抽出の目的に応じて熱交換器部材のその中での位置を変更できるように、高さを変更しうるような熱交換器部材もありえる。しかしながら、熱交換器部材は、固定された方法で予め挿入されていることが好ましい。
【0033】
前述の熱交換器部材の実施例に示される実施態様は、すなわち、カセットベース、バッフルベース、パイプコイル構造物及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0034】
複数の熱交換器部材について、同じ群から選ばれるものが常にあり、また、前述の可能性から、異なる熱交換器部材を選ぶことも可能である。
【0035】
つまりカセットベースは、熱交換器部材として特に好ましい。それぞれが顆粒及び抽出液のための個々のスペースを有し、また、熱交換のための媒体のためのスペースに接続している個々のフロー部材の数は、9から96、好ましくは33から61である。
【0036】
特に好ましくは、個々のフロー部材は、流れ方向/垂直方向において四角又は六角形の断面、円錐形の顆粒入口、通過トンネル及び円錐形の顆粒出口を有することが好ましい。
【0037】
好ましくはカセットベースは、ベース全体を形成するために近接して組み合わされている個々のフロー部材(四角形又は六角形)からなる。反応器壁面への継ぎ目は、適切な金属シートを用いて閉止されている。結果として、顆粒/抽出液のスペースから分離された、閉鎖された熱媒体のスペースが形成される。熱媒体スペースは、接続パイプによって外側から、熱伝導媒体(好ましくは水、水−アルコール又は水−カプロラクタム混合物)の流れが通る。結果として、各カセットベースは熱交換器として機能する。各フロー部材の組み合わせとしてのカセットベースの形態は、濾過ベッドの高さを、その直径から独立したものとする。個々のフロー部材は、それらが顆粒及び液体の流れの平均に合うように、密度差、流速、濃度差及びその上下隣のフロー部材からの間隔に応じて、設計されうる。抽出反応器の直径はすなわち、重要ではない。抽出能力が大きく、抽出反応器の直径が大きくなる場合、個々のフロー部材は増えるが、カセットベースの数又はそれらの間隔は変更されなくてもよい。すなわち、抽出能力が大きな場合(≧3500 Kg/h)も、抽出ベッドの高さは一定である。
【0038】
カセットベースを構成するための一つの要件は、それらが、全体構造を形成するために近接して挿入された個々のフロー部材から組み立てられているということである。一つのカセットベースの、その上に位置する隣のカセットベースからの水平間隔は、個々のフロー部材の直径、全体構造から全体構造での密度差に応じて、計算される。結果的に逆流が確実に回避されうる。或いは、上述のカセットベースに相当するフローに匹敵するパイプコイル構造も使用されうる。
【0039】
より直径が大きい場合、抽出能力の高さによって、全体構造当たりの個々のフロー部材の数は変わるが、個々の部材の寸法は変わらない。つまり抽出反応器の中のフロー部材全部の高さ(抽出反応器の円筒方向長さ)は、抽出能力全体に対して独立である。また、パイプコイル構造の直径は、抽出反応器の直径がより大きくなった時には拡大されうる。
【0040】
カセットベースの数は、達成される抽出精度や抽出反応器の長さに応じて、4から30、好ましくは8から12とさまざまである。一つのカセットベース中の個々のフロー部材の数は9から96、好ましくは33から61である。
【0041】
抽出液の供給口は好ましくは、供給された抽出液がフローパイプの断面全体に行きわたるように分配される、液体ディストリビュータを含む。
【0042】
抽出反応器のさらに有利な実施形態は、少なくともいくつか又は全ての区画が、各区画に存在する顆粒及び/又は抽出液の温度を決定するための温度センサー(Tc)を含むことである。
【0043】
また、各熱交換器部材は、
a)熱交換媒体のための個別の流入口を有し、当該流入口は各熱交換器部材の中を流れる熱交換媒体の量が制御され得るコントロールバルブを有し、
b)熱交換のための第一媒体のための第一の流入口と、熱交換のための第二媒体のための第二の分離された流入口とを有し、また、第一及び第二の媒体は異なる温度制御がされており、第一及び第二の流入口は対になってそれぞれが、三方弁を通じて一つの各熱交換器部材に接続されており、又は、
c)循環ポンプと熱交換器とを用いる熱交換のために、媒体のための分離された循環路を有している。
【0044】
また、複数の熱交換器部材がグループで温度制御されていてもよい。これは例えば、複数の熱交換器部材、好ましくは2から6、特に好ましくは2から3の熱交換器部材が熱交換器部材のグループを形成するように設計されているのでもよく、各グループの熱交換器部材が、各グループの熱交換器部材の垂直方向の一番上から始まって、熱交換媒体から流れが貫通するよう一続きに連続に接続されてもよい。
【0045】
熱交換媒体の複数の熱交換器部材への並行する供給も、同様にして可能である。
【0046】
さらに、熱交換器部材が、一連に続いて接続される熱交換器部材を、垂直方向一番上から始まって、好ましくは抽出液である熱交換媒体が通って流れ、熱交換媒体、好ましくは抽出液は、最後の熱交換器部材を通過したあとで、下部側の供給口をとおって抽出反応器に導入されることも好ましい。
【0047】
最後の熱交換器部材(すなわち、抽出方向は上から下で、最下部の熱交換器部材は抽出反応器につけられている)の後、下側の供給口の前に、好ましくは抽出液である熱交換媒体の温度制御のための熱交換器、及び/又はポンプが配置される。
【0048】
熱交換器又はポンプはすなわち、一連に続いて接続される個々の熱交換器部材を接続する接続ラインに含まれるか、または、そこに配置されている。
【0049】
また、このような個々の熱交換器部材の配置(連続的に接続されている)の場合、熱交換媒体(好ましくは抽出液)の温度制御のための熱交換器部材の後に、熱交換器がある場合もある。
【0050】
抽出反応器は、大気圧又は加圧(絶対圧1.0barから3.0bar、好ましくは絶対圧1.0barから2.0bar)で操作されうる。
【0051】
カセットベースを通る熱移動媒体の流れの制御は、3つの変形例で実行されうる(選択肢1,2、3が、それぞれ4つのコントロールシステムを例示している)。
【0052】
選択肢1:カセットベース又はカセットベースのグループあたりで一定の熱移動媒体温度での貫通流
【0053】
個々のカセットベースのそれぞれ(又は、6つまでのカセットベースのグループ)が、個別に温度制御に供される。カセットベースの上の個々のコンパートメントにおける抽出媒体温度に応じて、個々の熱移動媒体の流量が制御され、それゆえ、抽出媒体温度は所望の値に到達する。熱移動媒体の温度は、流路内で一定となる。
【0054】
選択肢2:定量の熱移動媒体による貫通流
【0055】
個々のカセットベースのそれぞれ(又は6つまでのカセットベースのグループ)が別々に温度制御される。カセットベース上の抽出媒体温度に応じて、個々の熱移動媒体の温度が制御され、ゆえに、個々のコンパートメントにおける抽出媒体温度が所望の値に到達する。制御範囲の全体にわたって一定の貫通流を有する三方混合弁が使用されるか(図面参照)、また、一定のオーバーフロー量で温度調整のための熱交換器を有しカセットベースにわたってポンプで駆動される熱交換媒体循環器が使用される。
【0056】
選択肢3:貫通流量に比例する向流における熱移動媒体の制御
【0057】
抽出液は熱移動媒体として使用され、最初に、抽出液は、抽出液に対する向流において、また、ポリアミド粒と同方向の流れにおいて、個々のカセットベース(B)を順番に通って導かれる。温度プロフィールの調節のため、熱移動媒体は、熱交換器(C)によって個々のカセットベースの間で加熱又は冷却される。一番下のカセットベースを出た後、熱移動媒体は、熱交換器(E)において抽出温度にされ、もし必要であれば、ポンプ圧(D)で抽出液として抽出反応器(A)の中に導かれる。抽出液の量は供給される顆粒の量に比例して調節されるため、熱移動媒体の量も、顆粒の量に比例する。結果として、温度プロフィールは全能力範囲において一定となる。
【0058】
3つの選択肢の組み合わせもまた可能である。カセットベース(B)は、2から6の、好ましくは2から3のカセットベースのために形成された温度コントロールシステムが形成されるように、グループを作るように組み合わせされる。熱移動媒体は、組み合わされたカセットベースを通って順番に導かれる。
【0059】
本発明はまた、モノマー又はオリゴマー成分を、本発明の前述の抽出反応器で抽出するための方法に関し、前記成分は抽出液に可溶で、好ましくはε−カプロラクタム又はポリアミド6オリゴマーであり、顆粒材料、好ましくはポリアミド6の顆粒からであり、又は、ポリアミド6の共重合体の顆粒からである。前記抽出反応器で、顆粒材料は、少なくとも一つの頂部の入口を通じて垂直に延在するフローパイプの中にフィードされ、少なくとも一つの底部出口の方向に垂直方向下向きに導かれ、そこで抽出反応器から取り出される。抽出液は、少なくとも一つの底部部の供給口を通じて垂直方向に延在するフローパイプにフィードされ、少なくとも一つの頂部の出口方向に、顆顆粒と向流して導かれ、そこで取り出される。垂直方向の温度勾配が複数の熱交換器部材を通じてフローパイプ中で製造される。
【0060】
本発明の抽出方法は、このようにポリアミド顆粒のための垂直方向のフローパイプを用いて実行される。顆粒は、充填されたベッドの中で頂部から底部へと導かれる。顆粒の流れに対する向流として好適な抽出液が導かれ、当該抽出液が顆粒からのモノマーとオリゴマー(抽出物)とを吸収し、反応器からそれらを運び出す。達成されうる抽出精度は、主に、温度、抽出液での濃度、オーバーフローレート、及び滞留時間の操作パラメータに依存する。
【0061】
特に、頂部から底部へと垂直方向にフローパイプ中で上昇する温度が、複数の熱交換器部材を通じてセットされる温度コントロール方法が提供される。
【0062】
好ましくは、温度勾配は、フローパイプ中の抽出液の最大温度が、いずれの点でも、少なくとも0.5℃から10℃、好ましくは2℃から7°、所与の静水圧下で抽出液の沸点よりも低くなるように設定される。また、温度コントロールは、前述の最大温度が迅速に達成され、かつ、決して超過されないようにデザインされうる(加水分解による材料へのダメージを回避するため)。
【0063】
フローパイプの中に行き渡る圧力は、好ましくは絶対圧1.0から3.0barの間、好ましくは絶対圧1.0から2.0barの間に調整されうる。
【0064】
対応する圧力は、例えば抽出反応器の頂部のガス室で測定されうる。先に示された圧力は、絶対真空に対する絶対圧を意味している。
【0065】
本方法は、次に述べられる3つのバリエーションで実行されうる。当該バリエーションにおいて、各熱交換器部材は、
【0066】
a)各熱交換器部材の中を流れる熱交換媒体の量が制御されうるコントロールバルブを有する、熱交換媒体のための個別の流入口を有し、各熱交換器部材は一定に温度制御された熱交換媒体が流れ、媒体の量は熱交換器部材ごとに、又は熱交換器部材のグループごとに異なっている。
【0067】
b)第一の熱交換媒体のための第一の個別の流入口と、第二の熱交換媒体のための第二の個別の流入口とを有し、第一及び第二の媒体は異なる温度制御がされており、第一及び第二の各流入口は、一つの熱交換器部材について対として三方弁を通じて接続されており、規定の温度が、各熱交換器部材または熱交換器部材のグループごとに、第一と第二の媒体を異なる混合割合とすることによってセットされる。
又は、
【0068】
c)循環ポンプと熱交換器のある熱交換媒体のための個別の循環装置を有し、媒体の温度及び/又は量が、各熱交換器部材又は熱交換器部材のグループごとに個別に調節される。
【0069】
温度勾配は、特に、一連に続いて接続され、垂直方向一番上の熱交換器部材から始まって、好ましくは抽出液である熱交換媒体が流れる複数の熱交換器部材によってセットされうる。熱交換媒体は好ましくは抽出液であり、最後の熱交換器部材を通った後、底側の供給口を通じて抽出反応器に導入され、導入の前に、底側の供給口での予め決められた抽出温度に熱交換器を用いて加熱される。
【0070】
向流で操作されるフローパイプ中の温度の調節は、熱交換器として働く複数(4から30、好ましくは8から12)のバッフルベース(例えばカセットベース)によって実行される。結果として、液体温度また顆粒の温度は、小刻みに調節されることが可能で、抽出反応器の長さにわたってほぼ均一な温度勾配がセットされうる。
【0071】
また、熱交換媒体が流れ、熱交換器として働くパイプコイル構造が用いられうる。抽出液の流れの冷却や加熱は、内部のカセットベースを通じて流れる液体の熱移動媒体(好ましくは水)を通じて行われる。
【0072】
小刻みの温度勾配の結果、フローバッフルを超えて小さな温度差のみがセットされうるが、このことは、フローバッフルを超える小さな密度差を生じる。従って、逆流を生じる原因は小さくなる。
【0073】
2から6、好ましくは2から3のカセットベースのグループのための温度コントロールシステムが形成されるように、カセットベースはグループを形成するように組み合されうる。熱移動媒体は、組み合わされたカセットベースを通じて順に導かれる。抽出反応器を通じた熱移動媒体の案内は、3つの異なるバリエーションで実行されうる(各4つの温度コントロールシステムのあるオプション1,2,3を参照。)
【0074】
選択肢1:一定温度を通じた制御
個々のカセットベース(又は6つまでのカセットベースのグループ)のそれぞれに、個別の温度制御が備えられる。カセットベースの上の抽出媒体温度に応じて、個々の熱移動媒体の流量が制御されて、抽出媒体温度が所望の値に達する。コントロールシステムの数は2からカセットベースの数までの間で、好ましくは4から6である。
【0075】
熱移動媒体(12,13,14,15)の温度は、各抽出温度(2,3,4,5)の下である。抽出反応器(1)の顆粒の出口領域の温度は、抽出液(11)の温度によって調節される。抽出液(16)の出口温度は最上部で調節された抽出温度(5)と顆粒の入口温度(6)との混合温度である。
【0076】
選択肢2:一定の貫流量を通じた制御
個々のカセットベース(又は6つまでのカセットベースのグループ)のそれぞれが、個別の温度コントロールを備える。カセットベースの上の抽出媒体温度に応じて、個々の熱移動媒体フローの温度が制御され、抽出液の温度が所望の値にされる。コントロールシステムの数は、2から全カセットベースの数までであり、好ましくは4から6である。
【0077】
熱移動媒体が加熱された媒体と冷却された媒体とから混合される温度調整のためのミキシングバルブ(例えば、選択肢2)を用いる場合、加熱された媒体の温度は各区画の各抽出温度よりも上である。冷却された媒体の温度は、各区画の各抽出温度よりも下である。抽出反応器の顆粒の出口領域における温度は、抽出液の温度によってセットされる。抽出液の出口温度は、最上部の制御された抽出温度と顆粒の入口温度との混合温度に対応する。
【0078】
選択肢3:比例する貫流量の向流中の熱移動媒体
抽出液が熱移動媒体として用いられ、また、抽出液は、抽出液に対して向流でまたポリアミド顆粒に対して並行流で、個々のカセットベースを通って順に導かれる。温度プロフィールの調節のため、熱移動媒体は、個々のカセットベースの間で熱交換器によって加熱又は冷却されうる。これはカセットベースの上の抽出媒体温度に応じて行われる。一番下のカセットベースを出た後、熱移動媒体は熱交換器において抽出温度にされ、必要であればポンプ圧で抽出液として抽出反応器に導入される。抽出液の量は導入される顆粒の量に比例するように調整されるので、熱移動媒体の量も顆粒の量に比例する。結果として、全能力範囲にわたって、温度プロフィールは一定になる。
【0079】
抽出温度(2,3,4,5)は、頂部から入れられる顆粒の顆粒温度と、加熱され或いは冷却された熱移動媒体によって温度コントロールされたスペースに底部から入る抽出液の温度との、混合温度としてそれぞれ作られる。抽出反応器(1)の顆粒出口領域の温度は、加熱された抽出液(21)の温度によって設定される。抽出液(16)の出口温度は、最上部の調整された抽出温度(5)と顆粒の入口温度(6)との混合温度に対応する。
【0080】
特に、
a)抽出液として、水又は水とε−カプロラクタムとの混合物、及び/又は
b)熱交換媒体として、水、水と混合可能なアルコールとの混合物、又は、水とε−カプロラクタムとの混合物
が用いられる。
【0081】
本発明は、続く実施態様と添付の図面とを参照してより詳しく説明されるが、示されたパラメータによって発明は制限を受けない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】本発明の抽出反応器の第一の実施態様である。
図2】本発明の抽出反応器の第二の実施態様である。
図3】本発明の抽出反応器の第三の実施態様である。
図4】本発明の抽出反応器で使用されうるカセットベースの平面図である。
図5図4に示されたカセットベースの個々のフロー部材の断面図である。
図6】本発明の抽出反応器の全高さにわたって作り出されうる温度勾配である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
図1は本発明の抽出反応器の第一の実施態様を示す。抽出反応器は、複数の熱交換器部材Bが挿入された垂直方向に位置するフローパイプAを含み、熱交換器部材Bは垂直方向に延在し、図1の例では全部で4つである。熱交換器部材はすなわちフローパイプAの断面積の全体を占めている。図1において、熱交換器部材Bは互いに等距離に配置されている。熱交換器部材BによってフローパイプAは個々の区画1,2,3,4,5にさらに分割されている。抽出反応器は頂部に入口6を有しており、そこを通じて顆粒材料(例えばPA6顆粒)が抽出反応器に供給されうる。頂部で供給される顆粒材料は、頂部から底部へと抽出反応器を通って流れ、抽出反応器の中で抽出を受けて、底部側の出口7で抽出反応器から出る。また、抽出反応器は、底部に、抽出液11のための入口8を有し、底部入口8は、最後の熱交換器部材の後に位置しており、つまり、抽出反応器の最も低い位置の部材である。抽出液11のための流入口8を通じて、抽出液11は底部から抽出反応器の中にフィードされうる。すなわち抽出液は、抽出反応器を底部から頂部へと通って流れ、頂部にある流出口又は出口16を通って抽出反応器から再び取り出される。つまり、抽出は、本発明の抽出反応器によって、向流で行われる。
【0084】
図1に示された実施態様では、各熱交換器部材Bに熱交換媒体が個別の流入口12,13,14,15を通って流れることが示されている。各熱交換器部材Bはまた同様に、対応する熱交換流体のための個別の流出口を有する。各熱交換器部材Bを通って流れる熱交換媒体の量の調節は、個別のバルブ12a、13a、14a、15aを用いて各流入口12,13,14,15でコントロールされうる。各バルブは、例えば、温度センサーTCを通じてコントロールされてもよく、そのため、各区画2,3,4,5において、例えば予め定められた温度が設定されうるし、各熱交換器部材Bを通って流れる熱交換流体の温度又は貫流量の調整によって、区画で予め設定された温度が調整されうる。
【0085】
図2は、本発明の抽出反応器のさらなる実施態様を示す。図1で既に使用された符号番号と同じ番号は同じ部材を示す。図1の実施態様に対して、図2の抽出反応器は、熱交換媒体の熱交換器部材Bの装置又は供給口が異なっている。すなわち各熱交換器部材Bは、2つの分離した流入口12及び22、13及び23、14及び24、又は15及び25を有しており、それらによって、熱交換のための2つの異なる熱交換媒体が各熱交換器部材Bに供給されうる。例えば、第一の媒体12,13,14,15の温度は、第二の媒体22,23,24,25の温度よりも高くされうる。流入口12及び22、13及び23、14及び24、15及び25を通じて供給される第一及び第二の媒体の各混合割合を通じて、各熱交換器部材Bは異なる温度制御をされうる。混合割合は、対応する三方弁又はミキシングバルブ12b、13b、14b、15bを通じて調節されうる。熱交換器部材Bを通じてそれぞれ導かれる媒体の全量は、こうして一定に保たれ、また、変更されうる。
【0086】
図3は本発明に従って、本発明の抽出反応器のさらなる実施例を示している。ここでも同じ参照符号は前述の図面で既に説明されたのと同じ部材を示している。図3の実施態様も、熱交換媒体の各熱交換器部材Bの異なる供給口によって前述の実施態様との相違点がある。図3の例では、熱交換媒体は、最上部の熱交換器部材から始まり、個々の熱交換器部材Bを順番に通って流れる。最後の熱交換器部材Bを通り過ぎた後、熱交換媒体は底部側の入口8を通って抽出反応器に供給される。この実施態様によれば、用いられる熱交換媒体はすなわち、抽出液11である。最上部に位置する第一の熱交換器部材Bを通り過ぎた後、熱交換媒体又は抽出液11は、個別のパイプラインを通って第二の熱交換器部材に供給される。このパイプライン、すなわち第一及び第二の熱交換器部材Bの間では、熱交換器Cが設置されてもよく、それによって熱交換媒体又は抽出液11の温度コントロールが行われうる。また、図3の抽出反応器は、熱交換媒体又は抽出液11の液流の中に配置されるポンプDを有する。さらなる熱交換器Eも同様に、続くポンプDに接続される。
【0087】
図4及び5は、図1から3に例として描かれた抽出反応器において熱交換器部材Bとして用いられうるカセットベースを示す。図4では、対応するカセットベースの上から見た平面図が描かれており、一方、2つの個別のフロー部材の断面図が図5に描かれている。図4では、対応するカセットベースがフローパイプAの断面いっぱいに入れられている実施例が示されている。つまりカセットベースBは複数の個々のフロー部材100を含み、フロー部材100は互いに連結されていて、図4の例では48個の部材が存在し、フローパイプの断面全体を埋めている。フロー部材100で埋められていない領域104はすなわち、連続する金属シートで封止されており、パイプを通って流れるすべての液体と顆粒は、対応するカセットベースBの個々のフロー部材100を通って導かれるようになっている。各フロー部材はコーン101を有し、コーン101を通って、個々のフロー部材100中で、流れ方向に頂部から底部へと流入が生じる。コーン101は通過トンネル102に開口しており、通過トンネル102は同様に続いて円錐状の出口103に開口している。図4に例示された実施態様によれば、すべての個々のフロー部材100は、四角形の平面(図4参照)をしているが、違った幾何学形態のフロー部材であってもよい。例えば、六角形であってもよい。
【0088】
コーン101から通過トンネル102へのテーパー形状の結果、個々のフロー部材の入口及び出口表面の間にスペースIが形成され、そのスペースを通じて例えば顆粒又は抽出液が導かれ、また、中間部のスペースIIを通じて、温度コントロール媒体が導かれうる。加熱媒体スペースIIを通じて、カセットベースの温度コントロールが可能となる。
【0089】
図6は本発明の抽出反応器で達成される温度勾配を示している。この抽出反応器は10の熱交換器部材Bを有し、当該熱交換器部材Bを通じて抽出液の温度制御がそれぞれ行われる。横軸には抽出反応器の高さ(m)が示されており、高さは頂部から底部に測定されている。縦軸には使用された抽出媒体の理論上の沸点が示され(上側の曲線)、示されるとおり、下に向かって高さが増加するとともに抽出媒体の静水圧が上昇する。下側の曲線は、各熱交換器部材Bを通じて温度コントロールされた抽出媒体の、実際にセットされた抽出温度を示している。
【実施例】
【0090】
[実施例1]
抽出液が抽出カラムのすべてのカセットを通って頂部から底部に、顆粒と並行する流れ(カセットフロー)で導かれる抽出カラムの使用。抽出液の排出のあと、温度をかけるために抽出液は熱交換器で加熱される。抽出液の輸送は遠心ポンプを用いて行われる。或いは、抽出液は先にカセットベースに通されることなく、直接に主たる抽出チャンバーに導入されるのでもよい。その場合、カセットベースは冷却又は加熱の効果を持たない。抽出カラムは6つのカセットベースを有する。カセット3とカセット4(下から数える)との間で、カセットフローが加熱蒸気によって管状の熱交換器を用いて加熱される。温度計が一番下のカセットの下と、各カセットベースの上とに挿入される。
【0091】
[装置]
抽出器直径:600mm
カセットベースの数:6個
カセットベースあたりのカセット部材の数:4個
カセットベースの間隔:等間隔
顆粒流量:60Kg/h
抽出液流量:65Kg/h
抽出器での顆粒の滞留時間:〜13時間
抽出前の顆粒の抽出物含量:9.2%
抽出前の抽出液の抽出物含量:〜0.0%
流入口の顆粒温度:95℃
【0092】
【表1】
【0093】
[実施例2]
抽出液が、抽出カラムのすべてのカセットを通って頂部から底部に、顆粒と並行する流れ(カセットフロー)で導かれる抽出カラムの使用。抽出液の排出のあと、温度をかけるために抽出液が熱交換器で加熱される。抽出液の輸送は遠心ポンプを用いて行われる。或いは、抽出液は先にカセットベースを通って流されることなく、直接に主たる抽出チャンバーに導入されるのでもよい。結果としてカセットベースは冷却又は加熱の効果を持たない。抽出カラムは9つのカセットベースを有する。カセット3と4との間、6と7との間(下から数える)で、カセットフローは加熱蒸気によって管状の熱交換器を用いて加熱される。温度計が一番下のカセットベースの下、及び、各カセットベースの上に挿入される。
【0094】
[装置]
抽出器直径:2,000mm
カセットベースの数:9個
カセットベースあたりのカセット部材の数:16個
顆粒流量:2,500Kg/h
抽出液流量:65Kg/h
抽出器での顆粒の滞留時間:〜11時間
抽出前の顆粒の抽出物含量:9.2%
抽出前の抽出液の抽出物含量:〜0.0%
流入口の顆粒温度:98℃
【0095】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6