【文献】
WANG, Xuan et al.,Transparent, Conductive Graphene Electrodes for Dye-Sensitized Solar Cells,NANO LETTERS,2008年,Vol.8, No.1,p.323-327
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記グラフェン酸化物ゲルは、光学的に不透明な懸濁液を形成するために、反応容器内において、光学的に透明又は半透明なグラフェン酸化物ゲルを得るのに十分な時間、反応温度で粉末状又は繊維状のグラファイト材料を酸化液体中に含浸することにより調製され、前記グラフェン酸化物ゲルは、pHが5以下の酸媒体中に分散されたグラフェン酸化物分子から構成されていることを特徴とする請求項16に記載の方法。
前記グラフェン酸化物ゲルはpHが5以下の酸媒体中に分散されたグラフェン酸化物分子から構成され、前記グラフェン酸化物分子はゲル状であるとともに20重量%以上の酸素含有率を有することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
カーボンは、ダイヤモンド、フラーレン(0次元ナノグラファイト材料)、カーボンナノチューブ(1次元ナノグラファイト材料)、グラフェン(2次元ナノグラファイト材料)及びグラファイト(3次元ナノグラファイト材料)を含む5種類の特有な結晶構造を有することが知られている。
【0003】
カーボンナノチューブ(CNT)は、一枚の壁又は複数の壁で覆われたチューブ状構造を意味する。カーボンナノチューブは、数ナノメートルから数百ナノメートルのオーダーの直径を有する。その長さ方向の中空構造は、材料に特有な機械的、電気的及び化学的特性を付与する。CNTは、1次元ナノカーボン又は1次元ナノグラファイト材料である。
【0004】
バルク天然片状グラファイトは、隣接する単結晶の境界を画定する結晶粒界(アモルファス又は欠陥領域)を有する多数の粒子(又はグラファイト単結晶又は結晶質)から各粒子が構成される3次元グラファイト材料である。各粒子は、互いに平行に配向された多くのグラフェン面から構成される。グラファイト結晶質におけるグラフェン面は、2次元の六方格子を占有するカーボン原子から構成される。所定の粒子又は単結晶においては、グラフェン面は、結晶学的なc方向(グラフェン面又は基底面に垂直)のファンデルワールス力を介して積層及び結合される。ある粒子における全てのグラフェン面は互いに平行であるが、ある粒子におけるグラフェン面と近隣の粒子におけるグラフェン面とは一般的に配向が異なる。言い換えると、グラファイト粒子における様々な粒子の配向はそれぞれ異なる。
【0005】
グラファイト単結晶(微晶質)は、基底面(結晶学的なa又はb方向)におけるa方向に沿って測定された特性が結晶学的なc方向(厚さ方向)に沿って測定された場合とは劇的に異なる異方性である。例えば、グラファイト単結晶の熱伝導性は、基底面(結晶学的なa及びb軸方向)において約1,920W/mK(理論値)又は1,800W/mK(実測値)までであるが、結晶学的なc軸方向に沿った熱伝導性は10W/mK未満(一般的には5W/mK未満)である。その結果、異なる配向の多くの粒子から構成された天然のグラファイト粒子は、これら2つの極値間に位置する特性を有する。十分大きなサイズを有し、ある所望の方向に沿って互いに本質的に平行である全てのグラフェン面を有する(1つ又は複数の粒子を含む)バルクグラファイト粒子を製造することは多くの用途において非常に望ましいであろう。例えば、1つのバルクグラファイト粒子(例えば全てのグラフェン面が本質的に互いに平行である複数のグラフェン面の単一層単位)を有することは非常に望ましい。この単一層単位は特別な用途にとって十分な長さ/幅(例えばスマートフォンのCPU上の放熱シートとしての用途では5cm
2超)を有する。
【0006】
グラファイト結晶質の構成グラフェン面は、カーボン原子の個々のグラフェンシートを形成するために、グラファイト結晶質から抽出され又は単離される。単離された個々のグラフェンシートは、通常単層グラフェンと呼ばれる。厚さ方向のファンデルワールス力を通して結合された複数のグラフェン面の積層は、通常多層グラフェンと呼ばれ、一般的には300層までのグラフェン面(厚さ100nm未満)、より一般的には30層までのグラフェン面(厚さ10nm未満)、さらに一般的には20層までのグラフェン面(厚さ7nm未満)、最も一般的には10層までのグラフェン面(科学的コミュニティにおいて通常数層のグラフェンと呼ばれる)を有する。単層グラフェン及び多層グラフェンシートはまとめて「ナノグラフェンプレートレット」(NGP)と呼ばれる。グラフェン又はNGPは、0次元フラーレン、1次元CNT及び3次元グラファイトとは異なる新たなクラスのカーボンナノ材料(2次元ナノカーボン)である。
【0007】
我々の研究グループは、早くも2002年にグラフェン材料の開発及びこれらの製造方法を開拓した(特許文献1〜3)。
【0008】
NGPは、一般的に、
図1(a)(工程のフローチャート)及び
図1(b)(概念図)に示されたように、天然グラファイト粒子に強酸及び/又は酸化剤を挿入しグラファイト層間化合物(GIC)又はグラファイト酸化物(GO)を得ることにより得られる。これは、天然グラファイト粉末(
図1(a)における符号20及び
図1(b)における符号100)を硫酸、硝酸(酸化剤)及び他の酸化剤(例えば過マンガン酸カリウム又は塩化ナトリウム)の混合物中に含浸することにより頻繁に達成されることである。得られたGIC(22又は102)は、実際にいくつかのタイプのグラファイト酸化物(GO)粒子である。このGICは、水で繰り返し洗浄及び濯ぐことにより過剰な酸を除去し、個々に視覚的に識別可能で水中に分散されたグラファイト酸化物粒子を含むグラファイト酸化物懸濁液又は分散液が得られる。この濯ぎ工程の後に続く製造経路は2つある。
【0009】
経路1は、本質的に大量な乾燥GIC又は乾燥グラファイト酸化物粒子である「膨張可能なグラファイト」を得るために、懸濁液から水を除去する工程を備える。膨張可能なグラファイトを一般に800〜1,050℃の範囲の温度に約30秒間から2分間曝すことにより、GICは、30〜300の要因により急速な膨張を生じ、それぞれが剥離されたが多くが分離されない又はそれでも相互接続されたグラファイトフレークの集合体である「グラファイトウォーム」(24又は104)を形成する。グラファイトウォームのSEMが
図2(a)に示されている。
【0010】
経路1Aにおいて、これらのグラファイトウォーム(剥離されたグラファイト又は「相互連結された/分離されていないグラファイトフレークのネットワーク」)は再圧縮され、一般的に0.125mm(125μm)〜0.5mm(500μm)の範囲の厚さを有する柔軟なグラファイトシート又はフォイル(26又は106)が得られる。1つは、ほとんどが100nmより厚い(そのため定義によるナノ材料ではない)グラファイトフレーク又はプレートレットを含むいわゆる「膨張グラファイトフレーク」(108)の製造を目的として単純にグラファイトウォームを破壊するために、低強度のエアーミル又は押切機械を用いることを選択してもよい。
【0011】
剥離されたグラファイトウォーム、膨張グラファイトフレーク及び(通常柔軟なグラファイトシート又は柔軟なグラファイトフォイルと呼ばれる)再圧縮されたグラファイトウォームは、全て1次元ナノカーボン材料(CNT)又は2次元ナノカーボン材料(グラフェン)のいずれとも根本的に異なり、明らかに識別される3次元グラファイト材料である。
【0012】
特許文献4〜6に記載されているように、これらの柔軟なグラファイト(FG)フォイルは、ヒートスプレッダ材料として用いられるが、一般的に500W/mK未満(より一般的には300W/mK未満)の最大面内熱伝導度及び1,500S/cm以下の面内電気伝導度を示す。これらの低伝導度は、多くの欠陥、折り目がつけられた又は折りたたまれたグラファイトフレーク、グラファイトフレーク間の断絶又はギャップ、及び、非平行フレーク(例えば
図2(b)におけるSEM)の直接の結果である。多くのフレークは、非常に大きな角度で互いに傾斜される。この角度は、配向不整角度と呼ばれ、FGにおいては、約20〜40℃の範囲とすることができる。
【0013】
経路1Bにおいては、剥離グラファイトは、分離された単層及び多層グラフェンシート(まとめてNGPと呼ばれる、符号33又は112)を形成するために、特許文献2に記載されたように、(例えば超音波処理、高剪断ミキサー、高強度エアージェットミル又は高エネルギーボールミルを用いて)高強度機械的剪断を施される。単層グラフェンは0.34nmに薄くすることができ、一方、多層グラフェンは100nmまでの厚さを有することができる。多層NGPの厚さは一般的に20nm未満である。
【0014】
経路2は、グラファイト酸化物粒子から個々のグラフェン酸化物シートを分離/単離するために、グラファイト酸化物懸濁液の超音波処理を必要とする。これは、グラフェン面内分離が天然グラファイトにおける0.335nmから高酸化グラファイト酸化物における0.6〜1.1nmに増加し、近接面を保持するファンデルワールス力を著しく低下させるという理解に基づくものである。超音波出力は、グラフェン面シートをさらに分離し、分離又は単離された個々のグラフェン酸化物(GO)シートを形成するのに十分である。次いで、これらのグラフェン酸化物シートは、化学的又は熱的に還元され、一般的には0.01〜10重量%、より一般的には0.01〜5重量%の酸素含有率を有する「還元グラフェン酸化物」(RGO)が得られる。
【0015】
NGPは、0〜10重量%、より一般的には0〜5重量%、好ましくは0〜2重量%の酸素含有率を有する単層及び多層グラフェン又は還元グラフェン酸化物を含む。純粋なグラフェンは本質的に酸素を含有していない。(RGOを含む)グラフェン酸化物は、0.01〜46重量%の酸素を含有することができる。後述されるグラフェン酸化物ゲルは、一般的には20〜46重量%の酸素を含有する。本発明のグラフェン酸化物ゲル有来単一グラフェン層又はグラフェン単結晶は、一般的に0.01〜5重量%、より一般的には2重量%未満の酸素含有率を有する。
【0016】
電子装置熱管理用途(例えばヒートスプレッダとして)の(剥離グラファイトウォームを再圧縮することにより得られた)柔軟なグラファイトフォイルは、以下の主な欠陥を有する。
(1)上述したように、柔軟なグラファイト(FG)フォイルは、一般的には500W/mK未満、より一般的には300W/mK未満の比較的低い熱伝導度を示す。
(2)柔軟なグラファイトフォイルは、強度が低く、構造的整合性も不十分である。柔軟なグラファイトフォイルのバラバラになる高い傾向は、小型電子装置内での統合工程における取扱いを困難にする。
(3)FGフォイルの他の態様は、グラファイトフレークがFGシート表面から容易に脱離し、小型電子装置の他の部分に付着する傾向が高い。これらの高導電性フレーク(一般に横寸法1〜500μm、厚さ100nm超)は、電子装置の内部短絡及び欠陥を生じる。
(4)このような理由で、グラファイトフレークの脱離を防ぐためには、柔軟なグラファイトフォイルの片面又は両面上に保護樹脂コーティングを塗工する必要がある。この樹脂コーティングは、一般的に、高伝導性が要求される状況においてしばしば望ましくない態様である熱的又は化学的伝導性材料ではない。電気絶縁又は分離が要求される他の状況においては、この樹脂層は、いくつかの問題(例えば数回の熱サイクル後に層間剥離又は剥離を生じるようなFG層と樹脂コーティングとの間における熱膨張係数及び弾性定数のミスマッチ)を有する。
【0017】
ヒートスプレッダ又は熱的境界材料として用いられる他のシート状グラファイト材料は、カーボンナノチューブ(CNT)ペーパー(例えばBuckyペーパー)、カーボンファイバーマット(例えばカーボンナノファイバー又はCNFマット)及びカーボンペーパー(例えば短いカーボンファイバー製)を含む。これらのグラファイトシートは、FGフォイルと同様な欠点に悩まされる。例えば、個々のCNT又はCNFは高い熱伝導性(1,500〜3,000W/mK)を示すが、得られたCNT又はCNFペーパー又はマットは、電子流にとって不十分な断面を提供する又は電子流を妨げる個々のCNT又はCNFフィラメント間の少ない又は不十分な接触により一般に100W/mK未満、しばしば10W/mK未満の面内熱伝導性を示す。さらに、シート状グラファイト層と熱源との間の接触は、このようなグラファイト層(例えばCNTペーパー)と堅い装置部品(例えば携帯電話内のCPU)との間の限定された接触表面により通常不十分である。これは、熱源とグラファイト層との間の非効率な熱移動を生じる。
【0018】
同様に、不織集合体のフィルム又はペーパーシート(34又は114)内に詰め込まれた際の(純粋なグラフェン及びGROの個々のプレートレットを含む)NGPは、一般的に高い熱伝導性を示さない。熱伝導性は、フィルム又はペーパーが厚さ10μm未満のシート状に成形又は押圧された場合のみに1,000W/mK超となり、フィルム又はペーパーが厚さ1μm未満のシート状に成形又は押圧された場合のみに1,500W/mK超となることが知られている。これは特許文献7において報告されている。しかしながら、超薄フィルム又はペーパーシート(10μm未満)は、大量生産することが難しく、小型電子装置の製造においてヒートスプレッダとしてこれらの薄いフィルムを組み込もうとした場合、取り扱うことが難しい。さらに、(フィルム厚さの広い範囲にわたって高い熱伝導性を達成できない)熱伝導性の厚さ依存は望ましい態様ではない。
【0019】
一般に、グラフェン、グラフェン酸化物及びRGOのプレートレット製ペーパー(例えば減圧濾過工程により調製されたこれらのペーパーシート)は、多くの欠陥、折り目がつけられた又は折りたたまれたグラフェンシート、プレートレット間の断絶又はギャップ、及び、非平衡プレートレット(例えば
図3(b)におけるSEM)を示し、不十分な熱伝導度及び電気伝導度をもたらす。個々のNGP、GO又はRGOプレートレットのこれらのペーパー又は集合体は、壊れやすい傾向を有し、伝導性粒子を大気中に放出する。
【0020】
特許文献7は、金属、ガラス、セラミック、樹脂及びCVDグラファイトマトリクス材料で含浸されたNGPのマット、フィルム又はペーパーをさらに開示している。その後、特許文献8は、熱管理用途のNGP薄フィルム及びNGPポリマー組成も開示している。NGPを製造するために特許文献8により用いられた方法は、前記の特許文献2により開示された方法と同じである。意図された熱的界面材料であるNGPポリマー組成は、一般的に2W/mK以下の非常に低い熱伝導性を有する。特許文献8のNGPフィルムは、本質的に特許文献7に開示された発明と同じ個々のグラフェンプレートレットの不織集合体である。また、これらの集合体は、これらの集合体を含む電子装置における内部短絡問題を生じる、フィルム表面から脱離し分離されたグラファイト粒子を有する傾向が高い。これらの粒子は、実際の装置製造環境における取扱いが非常に困難である薄いフィルム(特許文献8により報告されたように10〜300nm)に製造されるまで、低い熱伝導性を示す。特許文献9は、ヒートスプレッダ用のCVD析出又はダイアモンド変換により製造されたグラフェン層を開示している。特許文献10は、金属マトリクス含浸NGPを報告している。しかしながら、金属マトリクス材料は重すぎるため、得られた金属マトリクス組成物は高い熱伝導性を示さない。
【0021】
熱管理用途の他の従来の材料は熱分解性グラファイトフィルムである。
図1(a)の下部は、従来の熱分解性グラファイトフィルム又はシートのポリマーから製造する典型的な工程を示す。この工程は、ポリマーフィルム46を500〜1,000℃の炭化温度で2〜10時間炭化して、炭化材料48を得ることから始まり、続いて、2,500〜3,200℃のグラファイト化温度で5〜24時間グラファイト化して、グラファイトフィルム50を形成する。これは、緩慢で、冗長で、エネルギー集約的な工程である。さらに、あるポリマー(例えばポリアクリロニトリル)の炭化は毒性種の放出を含む。
【0022】
他のタイプの熱分解性グラファイトは、炭化水素ガスを減圧環境下高温分解し、その後、基材表面にカーボン原子を析出することにより製造される。これは、本質的に化学的真空蒸着(CVD)工程である。特に、高配向熱分解性グラファイト(HOPG)は、非常に高温(一般に3,000〜3,300℃)で析出されたパイロカーボン又は熱分解性グラファイト上に一軸圧力を負荷することにより製造された材料である。これは、非常に高価でエネルギー集約的な技術的挑戦的工程である、保護雰囲気下で長時間の機械的圧縮と超高温を組み合わせた熱機械的処理を必要とする。この工程は、製造が非常に高価であるだけでなく、維持が非常に高価で困難な高真空及び超高温装置が要求される。このような極端な処理条件であっても、(HOPGを含む)得られるPGは、多くの欠陥、粒界及び配向不整(近隣のグラフェン面が互いに平行ではない)を有し、決して満足しない面内特性が生じる。典型的には、最良に調製されたHOPGシート又はブロックは、少しもグラファイト単結晶ではなく、むしろ、多くの粒子又は単結晶並びに大きな粒界及び欠陥をさらに含む。一般に、PG又はHOPGは、カーボン以外のいずれの元素も有さない。
【0023】
同様に、Ni又はCu表面上の炭化水素ガス(例えばC
2H
4)の触媒CVDにより調製されたグラフェン薄フィルム(2nm未満)は単粒子結晶ではなく、多くの粒界及び欠陥を有する多結晶質構造である(例えば非特許文献1)。触媒であるNi又はCuを有し、800〜1,000度で炭化水素ガス分子の分解を介して得られたカーボン原子は、Ni又はCuフォイル表面上に析出され、多結晶質である単層又は多層グラフェンを形成する。粒子は、一般的に100μmより小さく、より一般的には10μmより小さい。光学的に透明であり、電気的に伝導するこれらのグラフェン薄フィルムは、タッチスクリーン(インジウムスズ酸化物又はITOガラスを置換する)又は半導体(シリコーン、Siを置換する)用途に意図される。しかしながら、多結晶質グラフェンフィルムは、不十分な熱伝導性であり(多すぎる粒子又は多すぎる粒界及び異なる方向に配向された全ての粒子)、電子装置におけるヒートスプレッダとして用いられるためには不十分な厚さである。
【0024】
したがって、本発明の目的は、PG、HOPG又はCVDグラフェンフィルムの熱伝導性と同等又はこれよりも大きな熱伝導性を示すグラフェン酸化物(OG)ゲル由来単一又はモノリシックフィルムを提供することである。
【0025】
本発明の具体的な目的は、以下の特性を有する(個々又は組み合わせ)GOゲル由来単一又はモノリシック単位を提供することである。(1)この単一単位は、グラフェン単結晶(一粒子のみ)又は多結晶(不完全な粒界を有する多粒子)のいずれかである一体化されたグラフェンであり、粒子におけるグラフェン面が互いに本質的に平行に(例えば全ての粒子の結晶学的なc軸が互いに本質的に平行である)配向される。(2)この一体化されたグラフェン単位は、グラフェン又はGOの多数の個々のグラファイトフレーク又は個々のプレートレットの集合体又は積層ではなく、いずれの識別可能な又は個々のフレーク/プレートレットを含まない。(3)この一体化されたグラフェン単位は、バインダ、リンカー又は接着剤で個々のフレーク/プレートレットを接着又は結合することにより製造されない。その代わりに、GOゲルにおけるGO分子は、モノリシックグラフェン単位内において、外部から添加されたリンカー又はバインダ分子又はポリマーのいずれも用いることなく、互いに結合又は共有結合の形成を通して主にエッジ−エッジで結合される。(4)この単一又はモノリシックグラフェン単位(互いに本質的に平行な結晶学的なc軸を有する全てのグラフェン面を備えた単結晶又は多結晶)は、元々複数のグラファイト微粒子を有する天然グラファイト又は人工グラファイト粒子の重酸化から順番に得られたGOゲルから由来する。GOゲルになるための化学的酸化の前におけるこれらの開始グラファイト微粒子は、最初の長さ(結晶学的なa軸方向のL
a)、最初の幅(b軸方向のL
b)及び厚さ(c軸方向のL
c)を有する。この単一グラフェン単位は、一般的に元来の結晶質のL
a及びL
bよりも著しく大きい長さ又は幅を有する。
【0026】
本発明は、このようなGOゲル由来単一又はモノリシックグラフェン単位又は(不完全な粒界を有するグラフェン多結晶を含む)グラフェン単結晶を製造する方法又は工程も提供する。この工程は、層状(乾燥前の厚さが好ましくは10mm未満、より好ましくは1mm未満、最も好ましくは500μm未満)であることが好ましい大量のGOゲルの調製から始まる。次いで、このGOゲルの液体成分は部分的又は完全に除去され、同時又は順次に、このGO層は、グラフェン酸化物を熱処理することにより得られた一体化されたグラフェンフィルムに熱的に変換され、主にエッジ−エッジ様式で個々のグラフェン酸化物分子を化学的に組み合わせる。
【0027】
本発明の他の目的は、同程度の厚さ範囲のいずれの薄フィルムグラファイト材料によっても匹敵されない格別な熱伝導性、電気伝導性、機械的強度、表面硬度、及び、耐擦傷性の組み合わせを示すGO由来グラフェンモノリスの費用効果がある製造工程を提供する。
【0028】
特に、本発明は、GOゲルから単一又はモノリシックグラフェン層又はグラフェン単結晶の製造工程を提供する。この工程は、炭化ポリマー(例えばポリイミド)から又はCVD蒸着を用いて(HOPGを含む)熱分解性グラファイトを製造する工程におけるような超高温を含まない又は要求しない。本発明の工程は、簡単で、エネルギー集約的ではなく、高い拡張性を有する。
【0029】
この熱及び電気伝導性グラフェンモノリスは、(スマートフォンを含む)携帯電話、ノート型パソコン、タブレット、e−ブック、通信装置及びハンドヘルド演算装置のような小型電子装置、又は、ポータブル小型電子装置における熱管理用途に(例えばヒートスプレッダとして)用いられる。
【0030】
本発明の他の目的は、同程度の厚さ範囲のいずれの薄フィルムグラファイト材料によっても匹敵されない格別な熱伝導性、電気伝導性、機械的強度、表面平滑性、表面硬度、及び、耐擦傷性の組み合わせを示すGO由来単一グラフェン単位を提供することである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は、0.335〜0.40nmのグラフェン面間距離及び0.01〜10重量%の酸素含有率を有し、近密に充填され及び結合された平行なグラフェン面を含む単一グラフェン層又はグラフェン単結晶を提供する。この単一グラフェン層又はグラフェン単結晶は、2つのグラフェン面間の平均配向不整角度が好ましくは10度未満、一般的には5度未満であるグラフェン酸化物ゲルを100℃超の高温で熱処理することにより得られる。この単一グラフェン単位又はグラフェン単結晶の厚さは、熱管理用途においては一般的に1nm超、より一般的には10nm超(光学的に不透明)、さらに一般的には10μmである。
【0034】
以下、グラフェン単結晶は、単粒又は単分域化グラフェン或いは(不完全な粒界を有するが)多結晶質構造を意味する。全ての粒子における全てのグラフェン面は、互いに本質的に平行である。
【0035】
以下に用いられているような用語「グラフェン単結晶」は、単粒グラフェン結晶又は不完全な粒界を含む多数の粒子を有する多結晶を意味する。ただし、用語「単結晶」が多数の粒子を有する多結晶の明確な排除により達成される場合を除く。用語「単一」及び「モノリシック」は、多数の粒子を有する多結晶を排除することを意図し、全ての粒界は、グラフェンとプレートレットとの間のエッジ−エッジ化学的架橋を有さない単なるグラフェンシート又はグラファイトフレークの集合体の全体及びこれらの単位である。
【0036】
グラフェン酸化物ゲル由来単一又はモノリシックグラフェン層又はグラフェン単結晶は、優れた熱伝導性、電気伝導性、機械的強度、耐擦傷性、及び、表面グラファイトフレーク又は粒子が「脱落する」恐れの排除(実際、そこから剥離される個々のフレーク/プレートレットはない)の独特な組み合わせを有する。
【0037】
一実施形態においては、高伝導性グラフェンモノリス薄フィルムシートは以下の特性を有する。(a)600W/mK超(好ましくは1,000W/mK超、より好ましくは1,700W/mK超)の面内熱伝導性、(b)2,000S/cm超(好ましくは3,000S/cm超、より好ましくは5,000S/cm超、最も好ましくは10,000S/cm超)の面内電気伝導性、(c)60超(好ましくは80超)のロックウェル表面硬度及び(d)10MPa超(好ましくは40MPa超、より好ましくは60MPa超、最も好ましくは100MPa超)の引っ張り強度。
【0038】
グラフェン酸化物(GO)ゲル由来単一又はモノリシック単位は以下の特徴を(それぞれに又は組み合わせて)有する。
(1)この単一単位は、(不完全又は不十分な描写された粒界を有するが)グラフェン単結晶又は多数の粒子を有する多結晶のいずれかである一体化されたグラフェン目的物である。この単一グラフェン単位は、互いに本質的に平行に配向された多数のグラフェン面から構成される。具体的には、全ての粒子における全てのグラフェン面の結晶学的なc軸方向は、互いに本質的に平行である。
(2)膨張グラファイトフレーク又はグラフェンプレートレットのペーパー状シート(例えばペーパー製造工程により調製されたもの)と対照的に、この一体化されたグラフェン単位は、グラフェン、GO又はRGOの多数の個々のグラファイトフレーク又は個々のプレートレットの集合体又は積層体ではない。これは、多数のグラファイトフレーク(FGフォイル)又はグラフェンシート(グラフェンペーパー)の単純な集合体ではない単一グラフェン単位又はモノリスである。この単一グラフェン単位は、そこに分散された個々のグラファイトフレーク又は個々のナノグラフェンプレートレット(純粋なグラフェン、グラフェン酸化物及び還元されたグラフェン酸化物のプレートレット)を含まない。
(3)言い換えると、このグラフェンモノリスは、(グラファイト粒子の元来の構造を構成する)グラフェンシート又はグラファイトフレークを剥離し、次いで、これらの個々のシート/フレークをある方向に沿って再配向したものではない。このような集合方法は、裸眼又は低倍率光学顕微鏡(100〜1,000倍)により検出又は識別される個々のフレーク/シート/プレートレットの単なる集積物又は積層物をもたらす。
これに反して、元来のグラファイト粒子は、極度に酸化され、元来のグラフェン面が酸化され、それぞれから単離され、端部、殆どがグラフェン面上に高反応性官能基を有する個々の分子になる。これらの個々の(カーボン原子だけではなくOやHのような元素を含む)炭化水素分子は、反応媒体(例えば見ずと酸の混合物)中に溶解され、以下GOゲルと称するゲル状物質を形成する。次いで、このゲルは、乾燥GO層を形成するために除去された液体成分とともに平滑基材表面上で成形される。固体基材表面上で適宜分散され、加熱された場合、これらの高反応性分子は、互いに反応し、殆どがグラフェン面に沿った横方向、ある場合には、グラフェン面間で結合する。これらの架橋及び併合反応は進行し、分子が単一単位又はモノリスに(物理的に積層又は内包されるだけではなく)化学的に併合され、架橋され、一体化される。分子は、元来の同一性を完全に失い、もはや個々のシート/プレートレット/フレークではない。本質的に無限の分子量を有する本質的に巨大な1個の分子又は大きな数個の分子である単層構造(単一グラフェン単位)のみを有する。これは、(全体構造又は単位においてたった1つの粒子を有する)グラフェン単結晶、或いは、(一般には明確な粒界を認識できない複数の粒子を有する、例えば
図3(f))多結晶と記載されてもよい。全ての構成要素のグラフェン面は、横方向(長さ及び幅)に非常に大きく、互いに本質的に平行である。
詳細なX線回折法、原子間力顕微鏡法及び(選択された領域の回折を含む)電子顕微鏡法の研究は、グラフェンモノリスが(一般的には100μm以上、より一般的には1mm以上、最も一般的には1cm以上の長さ/幅を有する)巨大な複数のグラフェン面から構成されることを示している。これらの大きなグラフェン面は、従来のグラファイト結晶子におけるファンデルワールス力のみならず、共有結合も通して、厚さ方向に沿って積層され、結合される。理論に限定されず、ラマン、FTIR及び化学的分析用電子顕微鏡(ESCA)の組み合わせに基づく研究は、グラファイト内に沿った従来のsp
2だけではなく、sp
2(支配的)及びsp
3(存在するが弱い)の共存を示すように見える。
(4)この一体化されたグラフェン単位は、個々のフレーク/プレートレットをバインダ、架橋剤又は接着剤で接着又は結合することにより作製される。その代わりに、GOゲルにおけるGO分子は、外部から添加された架橋剤又はバインダ分子又はポリマーのいずれをも用いることなく、互いに結合又は共有結合の形成により主にエッジ−エッジで一体化されたグラフェン単位に溶け込まれる。
(5)この単一又はモノリシックグラフェン単位は、互いに本質的に平行である全ての粒子における結晶学的なc軸を有する単結晶又は(不十分に定義されたまたは不完全な粒界を有する)多結晶である。この単位は、元来多数のグラファイト結晶子を有する天然グラファイト又は人工グラファイト粒子から順に得られるGOゲル由来である。化学的に酸化される前に、これらの開始グラファイト結晶子は、最初の長さ(結晶学的なa軸方向のL
a)、最初の幅(b軸方向のL
b)及び厚さ(c軸方向のL
c)を有する。得られる単一グラフェン単位は、一般的に元来の結晶子のL
a及びL
bより大きな長さ又は幅を有する。この単一グラフェン単位の長さ/幅又はグラフェン単結晶の長さ/幅は、一般的に元来の結晶子のL
a及びL
bよりも大きい。多結晶子単一グラフェン単位における個々の粒子でさえも、元来の結晶子のL
a及びL
bよりも著しく大きな長さ又は幅を有する。これらは、元来の結晶子の最初のL
a及びL
bよりも2〜3倍大きいだけでなく、単一グラフェン単位自身の長さ又は幅と同等であってもよい。
【0039】
グラフェン酸化物由来モノリシックグラフェン層は、より厚くすることもできるが、ヒートスプレッダ用途には厚さが200μm未満であることが好ましい。さらに、モノリシックグラフェン層又はグラフェン単結晶は、厚さが1μm超かつ200μm未満であることが好ましい。ある用途においては、厚さが10μm超であることが好ましい。20〜100μmの厚さの範囲は、小型装置の熱管理用途に特に有用である。
【0040】
本発明の単一グラフェンシートは、天然グラファイト及び/又は仁孝グラファイトの剥離されたグラファイトウォーム又は剥離されたグラファイトフレークの再圧縮により製造された柔軟なグラファイトフォイルに関連する主な課題を解消する。剥離されたグラファイトウォーム又はフレークを再圧縮(例えばロール圧縮)するにより調製された柔軟なグラファイトシート又はフォイルは、グラファイトフレークを脱離し、大気中に放出し、最終的には危険な所に移動する(例えばグラファイトフレークの存在が内部短絡を引き起こす)高い傾向がある。さらに、柔軟なグラファイトシート又はフォイルは、比較的壊れやすく、脆い。そのため、実際の小型電子装置製造環境における取り扱いが困難である。これらは高い熱伝導性を有さない(最も一般的には300W/mk未満)。熱管理のために小型電子装置における柔軟なグラファイトシートの使用に関連するこれら及び他の主な課題は、本発明の単一グラフェン体により非常に効果的に解消される。
【0041】
単一グラフェンシートは、多数のグラファイト結晶子から構成された天然グラファイト又は人工グラファイト粒子から製造されたグラフェン酸化物ゲルに由来する。これらの結晶子は、一般的に100μm未満(より一般的には10μm未満)の最初の長さL
a(結晶学的なa軸方向)、より一般的には10μm未満のb軸方向の最初の幅L
b及びc軸方向の厚さL
c(一般的には0.2〜10μm)を有する。しかしながら、本発明のGO由来単一グラフェン層又はグラフェン単結晶は、一般的に少なくとも最初のL
aの2倍より大きな(より一般的には3倍より顕著に大きな)又は開始材料のグラファイト結晶子のL
bの2倍より大きな(より一般的には3倍より顕著に大きな)長さ又は幅を有する。単一グラフェン層又はグラフェン単結晶は、一般的には10μm以上、より一般的には100μm以上、さらに一般的には1cm以上の長さ又は幅を有する。これらは、基材表面上に析出された元来のGOゲル層の望ましくは100cm超の全幅を覆うようにしばしば延在する。
【0042】
単一グラフェン又はグラフェン単結晶の好適な加工条件としては、GOの熱処理温度は100〜1,000℃であり、単一グラフェン層又はグラフェン単結晶は600W/mK超の熱伝導性又は2,000S/cm超の電気伝導性を有する。或いは、熱処理温度は1,000〜1,500℃であり、得られる単一グラフェン層又はグラフェン単結晶は1,300W/mK超の熱伝導性又は3,000S/cm超の電気伝導性を有する。1,500〜2,500℃の熱処理温度については、単一グラフェン層又はグラフェン単結晶は1,600W/mK超の熱伝導性又は5,000S/cm超(又は8,000S/cm超)の電気伝導性を有する。2,500〜3,250℃の熱処理温度については、単一グラフェン層又はグラフェン単結晶は1,700W/mK超の熱伝導性又は8,000S/cm超(一般的には10,000S/cm超、多くの場合には15,000S/cm超)の電気伝導性を有する。
【0043】
単一グラフェン層又はグラフェン単結晶は、1nm程度、好ましくは10nm超、より好ましくは1μm超、さらに好ましくは10μm超の厚さを有する。ヒートスプレッダとして用いる場合には、厚さは一般的に10〜200μmの範囲、より一般的又は望ましくは20〜100μmの範囲である。上記したように、単一グラフェン層又はグラフェン単結晶は一般的に100μmよりも著しく大きい横寸法(長さ又は幅)を有する。
【0044】
単一グラフェン層又はグラフェン単結晶は、一般的に0.01〜5重量%、より一般的には0.01〜2重量%の酸素含有率を有する。再グラファイト化温度が2,000℃を超え、非常に厳しい保護雰囲気又は極めて高い真空環境下で実施される場合には、本質的に酸素を除去することができる。
【0045】
単一グラフェン層又はグラフェン単結晶の調製においては、グラフェン酸化物ゲルは5以下のpHを有する酸媒体中に分散されたグラフェン酸化物分子から構成され、グラフェン酸化物分子はゲル状であるとともに20重量%以上の酸素含有率を有する。
【0046】
GOゲルは、液状媒体中に分散されたグラフェン酸化物分子から構成されたグラフェン酸化物ゲルを得るために十分な時間、反応温度で、反応容器内の酸化液状媒体中に粉末状又は繊維状のグラファイト材料(例えば天然又は人工グラファイト粉末又はグラファイト繊維)を浸漬することにより得られる。グラフェン酸化物分子は、ゲル状であるとともに好ましく及び一般的に20重量%以上の酸素含有率(一般的には酸素の20〜46重量%)及び43,000g/mol未満の分子量を有する。好ましくは、グラフェン酸化物分子は、ゲル状であるとともに4,000g/mol未満の分子量を有し、より好ましくは、ゲル状であるとともに4,000〜6,000g/molの分子量を有する。
【0047】
単一グラフェン層又はグラフェン単結晶は、基材表面上にグラフェン酸化物ゲルの層を析出し、この析出されたグラフェン酸化物ゲルの層から残留液体を除去することにより製造される。次いで、熱還元及び/又は再グラファイト化のために、このグラフェン酸化物層を少なくとも100〜150℃の熱処理温度にあてる。再グラファイト化に良好な熱処理温度は300〜1,500℃である。必須ではないが、再グラファイト化の熱処理温度は1,500℃超であってもよく、1,500〜2,500℃の範囲であってもよい。要求があるのであれば、2,500℃超の温度を用いてもよい。
【0048】
グラフェン酸化物ゲルの調製用の開始材料は、天然グラファイト、人工グラファイト、メソフェーズカーボン、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、コークス、カーボンファイバ、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ又はこれらの組み合わせから選択されたグラファイト材料を含む。
【0049】
200μm超の厚さを有する単一グラフェン層又はグラフェン単結晶は、一般的に60超、しばしば100超の非常に高いロックウェル硬度を示す。従来の柔軟なグラファイトフォイル、熱分解性グラファイト又はバルクグラファイト箱のような高硬度を示さないことから、これは前例のないことである。
【0050】
本発明の単一グラフェン層又はグラフェン単結晶は、1,500S/cm超の電気伝導性、600W/mK超の熱伝導性、1.8g/cm
3超の物理的密度、及び/又は、40MPa超の引張り強度を示す。
【0051】
より高い再グラファイト化温度に関しては、グラフェンモノリシックは、3,000S/cm超の電気伝導性、1,000W/mK超の熱伝導性、2.0g/cm
3超の物理的密度、及び/又は、80MPa超の引張り強度を示す。さらには、5,000S/cm超の電気伝導性、1,500W/mK超の熱伝導性、2.1g/cm
3超の物理的密度、及び/又は、100MPa超の引張り強度を示す。
【0052】
本発明は、前述の単一グラフェン層又はグラフェン単結晶の製造方法も提供する。この方法は、(a)流体媒体中に分散されたグラフェン酸化物分子を有する光学的に透明又は半透明のグラフェン酸化物ゲルを調製するステップと、(b)支持基材の表面上にグラフェン酸化物ゲルの層を析出し、その上に析出されたグラフェン酸化物ゲルを形成するステップと、(c)析出されたグラフェン酸化物ゲル層から流体媒体を部分的又は完全に除去し、グラフェン酸化物層を形成するステップと、(d)グラフェン酸化物層を熱処理し、単一グラフェン層又はグラフェン単結晶を形成するステップとを備える。この方法は、グラフェン酸化物層を(例えば1セット又は複数セットのローラーを通してロールプレスすることにより)圧縮するステップも備える。
【0053】
特に、グラフェン酸化物ゲルは、光学的に透明又は半透明であるグラフェン酸化物ゲルを得るために十分な時間、反応温度で、酸化液体中に粉末状又は繊維状のグラファイト材料を浸漬することにより調製され、反応容器内で最初に光学的に不透明な懸濁液を形成する。グラフェン酸化物ゲルは、5超のpHを有する酸媒体中に分散されたグラフェン酸化物分子から構成され、グラフェン酸化物分子は、20重量%以上(一般的には20〜46重量%)の酸素含有率を有する。
【0054】
一般的には、グラフェン酸化物ゲルは、最初に光学的に不透明な懸濁液を形成するために、酸化剤中にグラファイト材料を浸漬し、光学的に透明又は半透明な溶液が形成されるまで酸化反応を続けることにより調製される。グラファイト材料は、天然グラファイト、人工グラファイト、メソフェーズカーボン、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、コークス、カーボンファイバ、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ又はこれらの組み合わせから選択される。
【0055】
この方法は、ロールツーロール法であることが好ましい。ステップ(b)及び(c)は、固体基材材料のシートをローラーから析出領域に搬送するステップと、固体基材材料のシート表面上にグラフェン酸化物ゲルの層を析出し、その上にグラフェン酸化物ゲル層を形成するステップと、グラフェン酸化物ゲルを乾燥し、基材表面上に析出された乾燥グラフェン酸化物層を形成するステップと、基材シート上に析出されたグラフェン酸化物層を収集ローラー上に収集するステップとを含む。この方法は、収集ローラー上に収集される前にグラフェン酸化物層を圧縮する追加ステップを含むことが好ましい。
【0056】
このグラフェン酸化物ゲルは、光学的に透明又は半透明であり、そこに分散された認識されない個々のグラフェン又はグラフェン酸化物シートと視覚的に均質である特徴を有する。これに対し、従来の個々のグラフェン又はグラフェン酸化物シート或いはグラファイトフレークの懸濁液は、裸眼で認識又は識別できる個々のグラフェンシート、グラフェン酸化物シート又はグラファイトフレークと比べて、不透明、暗く、黒色又は茶褐色に見える。
【0057】
グラフェン酸化物ゲルの液状媒体中に溶解されたグラフェン酸化物分子は、一般的に1,000未満、より一般的には500未満、最も一般的には100未満の鎖中の平均ベンゼン環数を有する芳香族鎖である。分子の大部分は、原子間力顕微鏡法、高分解TEM及び分子量測定の組み合わせから5又は6超のベンゼン環(主に10超のベンゼン環)を有する。これらのベンゼン環タイプ芳香族分子は、過度に酸化され、−COOH及び−OHのような官能基を含み、そのため、水のような極性溶剤中に(分散ではなく)「溶解」される。
【0058】
これらの溶解される分子は、樹脂のように振る舞い、良好な構造的整合性及び高い熱伝導性を有するグラフェン酸化物の干渉層を形成できる。対照的に、従来の個々のグラフェン又はグラフェン酸化物シート及びグラファイトフレークは、いずれの自己接着力又は凝集力も有さない。これらのシート又はフレークは、構造的整合性を有さない未結合粒子の緩く詰め込まれた集合体を形成する。
【0059】
本発明は、動力工具、小型電子部品又は通信機器(例えば携帯電話、タブレット、ラップトップコンピュータ、LCDディスプレイ等)、発光ダイオード(LED)点灯装置又はシステムのようなハンドヘルド装置内に用いられるヒートスプレッダ又はヒートシンク製品も提供する。軽量(金属及びセラミック材料に比べて低密度)、特別な熱伝導性、比較的高い構造的整合性、優れた表面硬度及び耐擦傷性、並びに、除去され又は著しく低減された大気中へ遊離グラファイト又はカーボン粒子を放出する傾向は、本発明のグラフェン酸化物塗工グラファイト層を理想の熱管理材料にする。
【0060】
要約すると、本出願は、単一グラフェン単位、一実施形態においては、ヒートスプレッダ用途の層を開示する。好適な一実施形態においては、このグラフェンモノリスは、0.335〜0.50nm(より一般的には0.336〜0.05nm)のグラフェン面間間隔及び1重量%未満の酸素含有率を有する、密に詰め込まれたギャップのない化学結合された平行グラフェン面を含む。単一グラフェン層は、一般的には10nm超の厚さを有し、そこに分散された個々のグラファイトフレーク又はグラフェンプレートレットを含まず、10度未満の2つのグラフェン面間の平均配向不整角度を有する。このグラフェンモノリスは、500℃超の温度でグラフェン酸化物ゲルを熱処理することから得られる。
【0061】
本発明の他の好適な実施形態は、0.335〜0.50nmのグラフェン面間間隔及び1重量%未満(一般的には0.001〜1重量%)の酸素含有率を有する、密に詰め込まれた化学結合された平行グラフェン面を含む単一グラフェン層(ヒートスプレッダ用途において特に有用である)である。この単一グラフェン層又はモノリスは、不完全な粒界を有する多結晶又は多粒構造を含み、そこに分散された個々のグラファイトフレーク又はグラフェンプレートレットを含み、500℃超の温度でグラフェン酸化物を熱処理することから得られる。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明は、互いに本質的に平行であり、密に詰め込まれ、化学結合されたグラフェン面を含むグラフェン単結晶から構成された層のような単一又はモノリシックグラフェン単位を提供する。これらのグラフェン面は、全ての試験片の長さ及び幅を覆うように延在され得る長さ及び幅で広い領域を覆う。このグラフェンモノリスは、X線回折により測定されたような0.335〜0.40nmのグラフェン面間の間隔及び0.01〜10重量%の酸素含有率を有する。この単一グラフェン層又はグラフェン単結晶は、100℃超、一般的には150℃超、より一般的には1,000〜1,500℃の範囲の温度でグラフェン酸化物ゲルを熱処理することから得られる。必須ではないが、熱処理温度は、1,500℃超、さらには2,000℃超とすることができる。このグラフェンモノリスにおける2つのグラフェン面間の平均配向不整角度は、好ましくは10度未満、一般的には5度未満である。大部分のグラフェン層は、配向不整角度がゼロであり、互いに本質的に平行である。これに対して、従来の柔軟なグラファイトシートにおける配向不整角度は10度より著しく大きい。
【0072】
グラフェン酸化物(GO)ゲル由来単一又はモノリシック単位は以下の特徴を(それぞれに又は組み合わせて)有する。
(1)この単一グラフェン単位は、グラフェン単結晶又は互いに本質的に平行に配向された多数の粒子を有する多結晶のいずれかである一体化されたグラフェン目的物である。全ての粒子及びそれらの構成の全てのグラフェン面の結晶学的なc軸方向は、互いに本質的に平行である。グラフェン多結晶における粒子は非常に不十分に描写された又は不完全な粒界を有する。これらの粒子は、いくつかの残留境界線(例えば
図3(f))を有する本質的に単粒である。このようなタイプのグラフェン多結晶は、散発的ではあるが整列された欠陥を有するグラフェン単結晶として記載される。SEM、TEM、(TEMによる)選択領域回折、X線回折、原子間力顕微鏡(AFM)、ラマン分光分析及び、FTIRを用いた広範囲な研究の後に、この結論が得られた。
(2)膨張グラファイトフレーク(柔軟なグラファイトフォイル)並びにグラフェン又はGOプレートレット系ペーパー(例えばペーパー製造工程により調製されたもの)は、グラフェン、GO又はRGOの多数の個々のグラファイトフレーク又は個々のプレートレットの単純な非結合集合体/積層体である。これに対して、この単一グラフェン単位は、個々のフレーク又はプレートレットを含まない完全に一体化された単一グラフェン単位又はモノリスである。
(3)言い換えると、このグラフェンモノリスは、(グラファイト粒子の元来の構造を構成する)グラフェンシート又はグラファイトフレークを剥離し、次いで、これらの個々のシート/フレークをある方向に沿って再配向したものではない。得られる集合体(ペーパー、膜又はマット)のフレーク又はシートは、裸眼又は低倍率光学顕微鏡(100〜1,000倍)により識別される個々のフレーク/シート/プレートレットとして残る。
これに反して、本発明単一グラフェン構造の調製のためには、元来のグラファイト粒子は、極度に酸化され、元来のグラフェン面が酸化され、それぞれから単離され、端部、殆どがグラフェン面上に高反応性官能基を有する個々の分子になる。これらの個々の(カーボン原子に加えてOやHのような元素を含む)炭化水素分子は、反応媒体(例えば見ずと酸の混合物)中に溶解され、以下GOゲルと称するゲル状物質を形成する。次いで、このゲルは平滑基材表面上で成形され、液体成分が乾燥GO層を形成するために除去される。加熱された場合、これらの高反応性分子は、互いに反応し、殆どがグラフェン面に沿った横方向、ある場合には、グラフェン面間で結合する。これらの架橋及び併合反応は進行し、分子が単一単位又はモノリスに併合され、架橋され、一体化される。分子は、同一性を完全に失い、もはや個々のシート/プレートレット/フレークではない。本質的に無限の分子量を有する巨大な1個の分子又は大きな数個の分子である単層構造(単一グラフェン単位)のみを有する。これは、(全体構造又は単位においてたった1つの粒子を有するグラフェン単結晶、或いは、(一般には明確な粒界を認識できない複数の粒子を有する)多結晶と記載されてもよい。全ての構成要素のグラフェン面は、横方向(長さ及び幅)に非常に大きく、互いに本質的に平行である。
SEM、TEM、選択領域回折法、X線回折法、原子間力顕微鏡法,ラマン分光分析及びFTIRを用いる詳細な研究は、グラフェンモノリスが(一般的には100μm以上、より一般的には1mm以上、最も一般的には1cm以上の長さ/幅を有する)巨大な複数のグラフェン面から構成されることを示している。これらの大きなグラフェン面は、従来のグラファイト結晶子におけるファンデルワールス力のみならず、共有結合も通して、厚さ方向に沿って積層され、結合される。理論に限定されず、ラマン及びFTIR分光分析の研究は、グラファイト内に沿った従来のsp
2だけではなく、sp
2(支配的)及びsp
3(存在するが弱い)の共存を示すように見える。
(4)この一体化されたグラフェン単位は、個々のフレーク/プレートレットをバインダ、架橋剤又は接着剤で接着又は結合することにより作製される。その代わりに、GOゲルにおけるGO分子は、外部から添加された架橋剤又はバインダ分子又はポリマーのいずれをも用いることなく、互いに結合又は共有結合の形成により主にエッジ−エッジで一体化されたグラフェン単位に溶け込まれる。
(5)この単一又はモノリシックグラフェン単位は、互いに本質的に平行である全ての粒子における結晶学的なc軸を有する単結晶(例えば
図3(e)))又は(不完全な粒界を有する、例えば
図3(f))多結晶である。この単位は、元来多数のグラファイト結晶子を有する天然グラファイト又は人工グラファイト粒子から順に得られるGOゲル由来である。化学的に酸化される前に、これらの開始グラファイト結晶子は、最初の長さ(結晶学的なa軸方向のL
a)、最初の幅(b軸方向のL
b)及び厚さ(c軸方向のL
c)を有する。これらの最初の個々のグラファイト粒子は、過度な酸化により、顕著な濃度の端部又は表面に接続された官能基(例えば−OH、−COOH等)を有する芳香族グラフェン酸化物粒子に化学的に変形される。GOゲルにおけるこれらの芳香族GO分子は、グラファイト粒子又はフレークの一部の元来の同一性を失う。得られるGO分子は、GOゲルから液状成分を除去することにより、本質的にアモルファス構造を形成する。これらのGO分子は、熱処理(再グラファイト化処理)により、化学結合され、単一又はモノリシックグラフェン単位に架橋される。
得られる単一グラフェン単位は、一般的に元来の結晶子のL
a及びL
bより大きな長さ又は幅を有する。この単一グラフェン単位の長さ/幅又はグラフェン単結晶の長さ/幅は、一般的に元来の結晶子のL
a及びL
bよりも大きい。多結晶子単一グラフェン単位における個々の粒子でさえも、元来の結晶子のL
a及びL
bよりも著しく大きな長さ又は幅を有する。これらは、元来の結晶子の最初のL
a及びL
bよりも2〜3倍大きいだけでなく、単一グラフェン単位自身の長さ又は幅と同等であってもよい。
(6)これらの独特な(酸素含有率を含む)化学的組成、形態学、(グラフェン間間隔を含む)結晶構造、及び、構造的態様(例えば欠陥、不完全な粒界又は粒界の欠損、シート間の化学結合及びギャップのないこと、並びに、グラフェン面において断絶のないこと)に起因して、グラフェン酸化物ゲル由来単一又はモノリシックグラフェン層は、優れた熱伝導性、電気伝導性、機械的強度及び(このグラフェンモノリス構造においては個々のフレーク又はプレートレットが本質的にないため、表面グラファイトフレーム又は粒子が「脱離する」傾向が排除されることを含む)耐擦傷性の独特な組み合わせを有する。
【0073】
前述した態様は、以下のようにさらに記載され、詳細に説明される。
【0074】
図1(b)に示されたように、グラファイト粒子(例えば符号100)は、一般的に多数のグラファイト結晶子又は粒子から構成される。グラファイト結晶子は、カーボン原子の六角形ネットワークの層面から構成される。カーボン原子が六角形に配置されたこれらの層面は、実質的に平坦であり、特定の結晶子においては、互いに実質的に平行及び等距離となるよに配向又は整列される。通常グラフェン層又は基底面と呼ばれるカーボン原子のこれらの層は、弱いファンデルワールス力により厚さ方向(結晶学的なc軸方向)に弱く結合され、これらのグラフェン層のグループが結晶子内で整列される。
【0075】
グラファイト結晶子構造は、通常c軸方向及びa軸(又はb軸)方向の2軸又は方向の用語で特徴付けられる。c軸は基底面に対して垂直な方向である。a軸又はb軸は(c軸方向に垂直な)基底面に平行な方向である。
【0076】
高度に整列されたグラファイト粒子は、結晶学的なa軸方向に沿った長さL
a、結晶学的なb軸方向に沿った幅L
b、及び、結晶学的なc軸方向に沿った厚さL
cを有するかなりのサイズの結晶子からなる。結晶子の構成グラフェン面は互いに高度に整列又は配向され、これにより、これらの異方性構造は、高い方向性を示す多くの特性をもたらす。例えば、結晶子の熱及び電気伝導性は面方向(a又はb軸方向)に沿って非常に大きいが、垂直方向(c軸)では比較的小さい。
図1(b)の上左部に示されているように、グラファイト粒子内の異なる結晶子は、一般に異なる方向に配向され、これにより、多結晶子グラファイト粒子の特異的な特性は全ての構成結晶子の方向性の平均値である。
【0077】
平行のグラフェン層を保持する弱いファンデルワールス力に起因して、天然グラファイトは、グラフェン層間の間隔がかなり開かれ、c軸方向に著しく膨張するように処理される。これにより、カーボン層の積層特性が実質的に保持される膨張グラファイト構造が形成される。柔軟なグラファイトの製造方法は公知であり、一般的な粒子は特許文献11に記載されている。一般的には、天然グラファイトのフレーク(例えば
図1(b)における符号100)は酸溶液中で層間挿入され、グラファイト層間化合物(GIC102)を形成する。GICは洗浄、乾燥され、次いで、高温に短時間曝されることにより剥離される。これは、フレークを元来の大きさの80〜300倍までグラファイトのc軸方向に膨張又は剥離させる。剥離されたグラファイトフレークは外見が虫状であり、通常ウォーム104と呼ばれる。非常に膨張されたグラファイトフレークのこれらのウォームは、ほとんどの用途において約0.04〜2.0g/cm
3の一般的な密度を有する、例えばウェブ、ペーパー、ストリップ、テープ、フォイル、マット等(一般的には「柔軟なグラファイト」106と呼ばれる)の膨張グラファイトの凝集又は一体化されたシートにバインダを用いることなく形成される。
【0078】
図1(a)の上左部は、柔軟なグラファイトフォイル及び樹脂含浸された柔軟なグラファイト複合体を製造するために用いられた従来の方法を示すフローチャートである。この方法は、グラファイト層間化合物22(GIC)を得るための、一般的にインターカラント(一般的には強酸又は酸混合物)によるグラファイト粒子20(例えば天然グラファイト又は合成グラファイト)の層間挿入から始まる。過剰な酸を除去するために水で濯いだ後、GICは「膨張可能なグラファイト」となる。次いで、GIC又は膨張可能なグラファイトは、高温環境(例えば800〜1,050℃の範囲の温度)に短時間(一般的には15秒〜2分間)曝される。この熱処理は、30〜数百の要因によりグラファイトをそのc軸方向に膨張することができ、これにより、これらの層間結合フレークの間に配置された大きな孔を有する分離されてはいないが剥離されたグラファイトフレークを含むウォーム様虫状構造24(グラファイトウォーム)が得られる。グラファイトウォームの例示が
図2(a)に描かれている。
【0079】
ある従来の方法においては、剥離されたグラファイト(又は多数のグラファイトウォーム)は、カレンダー又はロール押圧技術を用いることにより再圧縮され、一般的に厚さが100μm超の柔軟なグラファイトフォイル(
図1(a)における符号26又は
図1(b)における符号106)が得られる。柔軟なグラファイトフォイル表面と平行ではない配向の多くのグラファイトフレークが示され、多くの欠陥及び欠点がある柔軟なグラファイトフォイルの断面のSEMが
図2(b)に描かれている。
【0080】
これらのグラファイトフレークの配向不整及び欠陥の存在に大いに起因して、市販の柔軟なグラファイトフォイルは通常1,000〜3,000S/cmの面内電気伝導度、15〜30S/cmの面間(厚さ方向又はZ方向)電気伝導度、140〜300W/mkの面内熱伝導度及び約10〜30W/mkの面間熱伝導度を有する。これらの欠陥及び配向不整は、低機会強度(例えば欠陥はクラックが優先的に開始される潜在的応力集中部位である)にも起因し得る。これらの特性は多くの熱管理用途においては不十分である。
【0081】
他の従来の方法においては、剥離グラファイトウォーム24は樹脂で含浸され、次いで、圧縮され、通常低強度である柔軟なグラファイト複合体28を形成するように硬化される。また、樹脂の含浸により、グラファイトウォームの電気及び熱伝導度は2桁分低減される。
【0082】
剥離グラファイトは、全てのグラフェンプレートレットが100nmより薄い、たいていは10nmより薄い、多くの場合には単層グラフェンである(
図1(b)において符号112で示されている)、分離ナノグラフェンプレートレット33(NGP)を製造するために、高強度エアジェットミル、高強度ボールミル又は超音波装置を用いて高強度機械剪断/分離処理を施されてもよい。NGPは、1枚のグラフェンシート又は各シートがカーボンの2次元の六角形構造を有する多数のグラフェンシートから構成される。
【0083】
低強度剪断に関しては、グラファイトウォームは、ペーパー又はマット製造方法を用いてグラファイトペーパー又はマット106に形成され得るいわゆる膨張グラファイト(
図19(b)における符号108)に分離される傾向がある。この膨張グラファイトペーパー又はマット106は、個々のフレーク間において欠陥、断絶及び配向不整を有する個々のフレークの単なる集合体又は積層体である。
【0084】
NGPの幾何学的形状及び配向を定義するためには、NGPは、長さ(最大のサイズ)、幅(2番目に大きなサイズ)及び厚さを有することが記載されている。本願においては、厚さは100nm以下、好ましくは10nm未満の最小のサイズである。プレートレットがほぼ円形である場合、長さ及び幅は直径となる。本発明で定義されたNGPにおいては、長さ及び幅は、200μmより大きくすることができるが、1μmより小さくすることができる。
【0085】
(単層及び/又は数層のグラフェンシートを含む、
図1(a)における符号33)多数のNGPの大部分は、フィルム又はペーパーの製造方法を用いて、グラフェンフィルム/ペーパー(
図1(a)における符号34又は
図1(b)における符号114)に製造される。
図3(b)は、ペーパー製造方法を用いて個々のグラフェンシートから調製されたグラフェンフィルム/ペーパーの断面のSEM画像を示す。この画像は、折り畳まれ又は断絶され(一体化されていない)、プレートレット配向の殆どがフィルム/ペーパー表面に平行ではない、多くの個々のグラフェンシートの存在、並びに、多くの欠陥又は欠点の存在を示す。密に詰め込まれた際のNGP集合体は、フィルム又はペーパーが10μm未満の厚さを有するシートに成形及び強圧縮される場合には1,000W/mK超の熱伝導度を示し、フィルム又はペーパーが1μm未満の厚さを有するシートに成形及び強圧縮される場合には1,500W/mK超の熱伝導度を示す。多くの電子装置におけるヒートスプレッダは、取り扱いやすさ及び構造的整合性の考察に主に基づいて25μm超、望ましくは50μm超の厚さ(装置体積の制約に起因して200μm以下)を有することが通常要求される。
【0086】
単一グラフェン層の前駆体はグラフェン酸化物(GO)ゲルである。このゲルは、反応容器内において、粉末状又は繊維状のグラファイト材料20を強酸化液体に含浸し、最初は光学的に不透明である懸濁液又はスラリーを形成することにより得られる。この光学的な不透明は、酸化反応の最初に個々のグラファイトフレークが、また、後の段階で個々のグラフェン酸化物フレークが可視波長を散乱し、不透明で一般的に暗色な液体が得られることをもたらす。グラファイト粉末と酸化剤との反応が十分高い温度で十分な時間行われた場合、この不透明な懸濁液は、認識できる個々のグラファイトフレーク又はグラファイト酸化物プレートレットを含まない「グラフェン酸化物ゲル」(
図1(a)における符号21)と呼ばれる均質流体である半透明又は透明な溶液に変化される。
【0087】
言い換えると、このグラフェン酸化物ゲルは、光学的に透明又は半透明であり、そこに分散された認識できる個々のグラファイト、グラフェン又はグラフェン酸化物のフレーク/プレートレットを有さない視覚的に均質である。これに対して、従来の個々のグラフェンシート、グラフェン酸化物シート及び膨張グラファイトフレークの懸濁液は暗い色、黒色又は濃い茶色に見え、個々のグラフェン又はグラフェン酸化物シート或いは膨張グラファイトフレークは裸眼又は低倍率光学顕微鏡(100〜1,000倍)により認識可能又は識別可能である。
【0088】
グラフェン酸化物ゲルの液状媒体中に溶解されたグラフェン酸化物分子は、一般的には1,000未満、より一般的には500未満、多くは100未満の鎖内の平均ベンゼン環数を有する芳香族鎖である。ほとんどの分子は、原子間力顕微鏡、高解像度TEM及び分子量測定法の組み合わせにより測定された5又は6超のベンゼン環(ほとんどは10超のベンゼン環)を有する。我々の元素分析に基づき、−COOH及び−OHのような官能基を高濃度に含むこれらのベンゼン環型芳香族分子は、過度に酸化され、これにより、水のような極性溶媒中に「可溶」(分散可能ではない)である。これらのゲル状のグラフェン酸化物ポリマーの削除された分子量は、一般的には200〜43,000g/モル、より一般的には400〜21,500g/モル、最も一般的には400〜4,000g/モルである。
【0089】
これらの可溶分子は、ポリマーのような挙動を示し、互いに良好に反応及び化学結合され、良好な構造強度及び高い熱伝導度を有する単一グラフェン層を形成する。従来の個々のグラフェンシート、グラフェン酸化物シート又はグラファイトフレークは、自己反応力又は凝集性結合力のいずれも有さない。
【0090】
具体的及び最も著しく、GOゲル中に存在するこれらのグラフェン酸化物分子は、ゲルが乾燥され、十分な高温で十分な時間加熱処理された際に、互いに化学結合でき、非常に長く広いグラフェン層(例えば
図3(a))に一体化される。これらのグラフェン層は、互いに平行な試験片の幅(数百センチメートルまで)と同じ幅で延在する。個々のグラフェンプレートレット又はシートは認識されないが、これらは十分に架橋され、互いに化学的に一体化され、層状単一体が形成される。これらの単一体は、厚さ方向(又はZ方向)に沿って互いに化学的に結合されると思われる。X線回折研究は、d間隔(グラフェン面内距離)が約0.335nm(0.02重量%未満の酸素を有する)から0.40nm(約5.0〜10重量%)に回復されることを確認する。これらのグラフェン層間にいずれのギャップもないと思われ、そのため、これらの層は、グラフェン単結晶である、ある大きな単一体に本質的に結合される。
図3(a)は、このような巨大な単一体の一例を示す。単一層間にいずれかの境界があると思われるが、これらの認識された境界は顕著に異なる層間の幅に起因する。各層は互いに平行に多数のグラフェン面の1つから構成される。これらの外見上個々の単一層は、実際1つの一体化単位又はグラフェン単結晶に形成されている。このようなグラフェン単結晶の製造方法はさらに
図3(c)に示される。
【0091】
本発明のグラフェン単結晶は、化学的組成、ミクロ構造、形態学、製造方法、全ての化学的及び物理的特徴並びに意図される用途について、触媒CVDグラフェン薄フィルムとは基本的に異なり、明らかに区別される。
(a)
図3(d)に概念的に示されているように、結晶(例えばCu又はNi)表面上における炭水化物のCVDにより得られる従来のグラフェン多結晶は、一般的に10μm未満(多くの場合5μm未満)の粒径を有する多くの粒子から構成される。これらの粒子は互いに異なる配向を有する。
(b)これに対して、
図3(e)は、たった1つの単粒又はドメインを有する本発明のグラフェン単結晶の概念を示す。電子又はフォノンの移動を妨げる粒界はないため、この単粒単結晶は非常に高い電気伝導度及び熱伝導度を有する。
(c)
図3(f)は、不完全な粒界を有する「多結晶」である本発明の他のグラフェン単結晶の概念を示す。全ての粒子におけるグラフェン面は互いに平行に配向される。
(d)GO由来の本発明のグラフェン単結晶は、一般的に水素(H)を含まない0.01〜5%の酸素含有率を有する。これに対して、CVDグラフェンフィルムは、酸素を含まないある程度の水素含有率を有する。
(e)一般的には、Cu又はNi上に成長されたCVDグラフェンフィルムは、2nm未満の厚さ(基礎となるCu又はNiフォイルは、析出カーボン層が2nmを超える場合には触媒効果をもたらさない)を有する単層又は不均質な数層のグラフェンである。したがって、これらの超薄層は光学的に透明であり、タッチパネルスクリーン用途においてITOガラスに置き換えられる。これに対して、我々のグラフェンモノリスは、一般的に10nm超(より一般的には1μm超、さらに一般的には10μm超)の厚さを有するため、一般的に光学的に不透明である。本発明のグラフェンモノリスは、著しく高い熱伝導度を有し、ヒートスプレッダである電子装置(例えば携帯電話)に提供される場合、より容易に取り扱われる。
【0092】
単一グラフェン層は、電子装置内のヒートスプレッダとして単独で用いられる。また、この単一グラフェン層は2層構造又は多層構造の塗工層とすることができる。言い換えると、グラフェン酸化物由来単一グラフェン単位の層は、2層構造又は3層構造を形成するグラファイト材料の基材又はコア層の1つ又は2つの主要表面上に塗工される。グラファイトコア又は基材層は層の両側に2つの主要表面を有する。主要表面の1つがGO由来単一グラフェンの層で塗工される場合、2層積層体が得られる。主要表面の両方がGOで塗工される場合、3層積層体が得られる。例えば、1つは単一グラフェン塗工層上の保護材料の層をさらに析出してもよく、これにより、4層積層体が作製される。この保護層は、ある用途、例えば携帯電話又はラップトップパソコンのCPUからGO塗工層に熱を転移し、GO塗工がCPUにより発生された熱を放散する用途においては絶縁樹脂層である。絶縁層は内部短絡を防ぐために必要である。さらに任意に、材料(例えば熱伝導材料)の他の層はこの4層積層体の両側上に析出され、5層積層体を作製することができる。
【0093】
単一グラフェン塗工積層体は、好ましくは1mm以下、さらに好ましくは200μm未満、最も好ましくは100μm未満の厚さを有する。厚さは、より好ましくは10μm超、さらに好ましくは10〜100μmの間、最も好ましくは10〜50μmの間である。10μm未満の厚さは、熱管理用途(例えばマイクロ電子装置内のヒートスプレッダとして)において装置内に積層体の部品を組み込もうとした際に、積層体の取り扱いが難しくなるであろう。
【0094】
グラフェン系グラファイトコア層を用いた特別の場合においては、構成のグラフェンシート(NGP)は、3.35〜33.5nmの厚さを有する多層グラフェンシートを含むことが好ましい。得られるグラファイトコア層は、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm未満の厚さを有する。多層グラフェンシートは、6.7〜20nmの厚さを有する場合、1つは別格の熱伝導度を有するグラファイトコア層を容易に製造することができる。
【0095】
グラフェン系グラファイトコア層は酸素を含まない純粋なグラフェンを含むことが望ましい。純粋なグラフェンは、グラファイト材料の酸化を必要とすることなく、直接超音波処理により得られる。
図1(a)の上部に示されているように、(酸化又は他の化学的処理に曝されることのない)純粋なグラファイト粒子20は、高強度超音波処理に直接曝され、純粋なグラフェンシートを製造してもよい。複数の純粋なグラフェンシートは、例えばペーパー製造工程を介して凝集させ、グラフェンペーパー/フィルム38を形成してもよい。グラファイトコアフォイルである純粋なグラフェンペーパー/フィルムは、1層又は2層のGOゲルで塗工され、熱処理後に単一グラフェン塗工積層体42が得られる。
【0096】
ゲル状のGO塗工材料は一般的に20〜46重量%の酸素含有率を有する。積層体を形成するために、グラファイトコア層の主要表面上に析出された後、その次の熱処理工程は、一般的には0.01〜10重量%、より一般的には0.01〜5重量%に酸素含有率を自然に低減する。
【0097】
グラフェンゲル形成用の有用な酸化剤の代表例としては、硝酸、硝酸ナトリウム(NaNO
3)、NaClO
4、KClO
4、過マンガン酸カリウム、スルホン酸、過酸化水素、及び、これらの混合物が含まれる。
【0098】
グラフェン酸化物はグラフェン酸化物ゲルから得られる。一実施形態においては、ゲルは、pHが5以下の酸媒体中に分散され、20重量%以上の酸素含有率を有するグラフェン酸化物分子から構成される。特に、ゲルは、pHが5以下の酸液状媒体中に分散され、20重量%以上の酸素含有率を有するグラフェン酸化物分子から構成されるグラフェン酸化物ゲルを得るのに十分な反応温度、反応時間で、反応容器内において粉末状又は繊維状のグラファイト材料を酸化液体中に含浸することにより得られる。
図1(a)に示されたように、単一グラフェン酸化物塗工積層体は、グラファイトコアそう35の主要表面の片面又は両面にグラフェン酸化物ゲル21の層を析出することにより形成され、GOゲル塗工グラファイトフォイル36が形成される。GOゲル塗工層中のゲルから在留液体を除去し、GOゲル塗工積層体に熱処理を施すことにより、所望のGO塗工グラファイトフォイル積層体40が得られる。
【0099】
グラフェン酸化物ゲル形成用の開始グラファイト材料は、天然グラファイト、人工グラファイト、メソフェーズカーボン、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、コークス、カーボンファイバ、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ又はこれらの組み合わせから選択される。グラファイト材料は、20μm未満、より好ましくは10μm未満、さらに好ましくは5μm未満、最も好ましくは1μm未満の大きさを有する粉末状又は短いフィラメント状であることが好ましい。
【0100】
例示として9.7μmの平均粒径を有する人工グラファイトを用いる一般的な工程は、一般的に0〜60℃の温度で一般的に少なくとも3日、好ましくは5日、より好ましくは7日以上の間、スルホン酸、硝酸及び過マンガン酸カリウムの酸化剤混合物(3:1:0.05の重量比)中にグラファイト粒子を分散させる工程を含む。得られるゲル中のグラフェン酸化物分子の平均分子量は、処理時間が3日である場合は約20,000〜40,000g/モルであり、処理時間が5日である場合は10,000g/モル未満であり、処理時間が7日より長い場合は4,000g/モル未満である。要求されるゲル形成時間は元来のグラファイト材料の粒径に依存し、粒径が小さければ小さいほど要求される時間は短くなる。臨界のゲル形成時間が到達されない場合、グラファイト粉末及び酸化剤の懸濁液(酸化剤溶液中に分散されたグラファイト粒子)は、個々のグラファイト粒子又はフレークが液状媒体中に懸濁された(溶解されてはいない)ままを意味する完全に不透明であることは基本的に重要である。この臨界時間を超えるとすぐに、懸濁液全体は、過度に酸化されたグラファイトが元来のグラファイトの同一性を完全に失い、得られるグラフェン酸化物分子が酸化剤溶液中に完全に溶解され、均質溶液(もはや懸濁液又はスラリーではない)を形成することを意味する光学的に透明又は半透明になる。
【0101】
さらに、要求されるゲル形成時間よりも処理時間が短い懸濁液又はスラリーは洗浄及び乾燥され、ナノグラフェンプレートレット(NGP)を作製するために剥離及び分離され得るグラファイト酸化物粉末又はグラファイト層間化合物(GIC)粉末に簡単に回復される。十分な量の強酸化剤及び十分な酸化時間がなければ、グラファイト又はグラファイト酸化物粒子はGOゲル状に変換されない。
【0102】
したがって、(グラファイトコア層に用いられる)NGPは、グラファイト材料に酸化、剥離及び分離を組み合わせた処理を施すことにより作製してもよい。このグラファイト材料は、天然グラファイト、人工グラファイト、メソフェーズカーボン、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、コークス、カーボンファイバ、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ又はこれらの組み合わせから選択される。NGPは、(a)直接超音波処理、(b)カリウム溶解層間挿入及び水/アルコール誘導剥離、又は、(c)非酸化グラファイト材料の超臨界流体層間挿入/剥離/分離のような工程によっても作製される。これらの工程は、酸素を含まない純粋なグラフェンを製造する。
【0103】
本発明のグラフェン酸化物由来単一グラフェン塗工積層体は、一般的には800W/mK超、より一般的には(フィルム厚さが10μm超である場合)1,000W/mK超、しばしば1,700W/mK超の熱伝導度を有する。この後者の値は、一般的にグラファイトコア層が単一グラフェン塗工層と比べて比較的薄い場合及び最終熱処理温度が2,500℃超である場合に得られる。塗工積層体は、一般的には3,000S/cm超(さらには10,000S/cm超)の電気伝導度を有する。この(3,000S/cm超及び20,000S/cmまでの)高電気伝導度は、1,000W/mK超(1,900W/mKまで)の熱伝導度とともに達成される。単一グラフェン塗工積層体は、(1,500S/cm超の)高電気伝導度、(600W/mK超の)高熱伝導度、(1.4g/cm
3)の比較的高い物理的密度及び(10MPa超、しばしば40MPa超、120MPa超も可能である)の比較的高い引張り強度の組み合わせを頻繁に示す。単一グラフェン層塗工積層体は、グラファイトコアフォイル(特に柔軟なグラファイトフォイル及び再圧縮グラフェンプレートレットフォイル)において脱離する(大気中に遊離カーボン又はグラファイト粒子を放出する)傾向を排除する優れた表面硬度及び耐擦傷性を示す。
【0104】
全く驚くべきことに、多くの試料において、単一グラフェン層塗工積層体は、2,000S/cm超の電気伝導度、800W/mK超の熱伝導度、1.8g/cm
3超の物理的密度及び40MPa超の引張り強度を有する。この優れた特性の組み合わせは、いずれのグラファイト又は非グラファイト材料でも達成されない。場合によっては、塗工積層体は、3,000S/cm超(20,000S/cmまで)の電気伝導度、1,500W/mK超(1,900W/mKまで)の熱伝導度、2.0g/cm
3超の物理的密度及び40MPa超(120MPa)の引張り強度を示す。このタイプのグラフェン酸化物塗工積層体は、携帯機器におけるヒートスプレッダとして用いてもよい。
【0105】
本発明は単一グラフェン層又はグラフェン単結晶の製造方法も提供する。この方法は、(a)流体媒体中に分散されたグラフェン酸化物分子を有し、光学的に透明又は半透明なグラフェン酸化物ゲルを調製する工程と、(b)支持基材の表面上にグラフェン酸化物層を析出し、その上に析出グラフェン酸化物ゲル層を形成する工程と、(c)析出グラフェン酸化物ゲル層から流体媒体を部分的又は完全に除去し、グラフェン酸化物層を形成する工程と、(d)グラフェン酸化物層を熱処理し、単一グラフェン層又はグラフェン単結晶を形成する工程とを備える。この方法は、熱処理工程の前、最中及び/又は後にグラフェン酸化物層を圧縮する工程をさらに有利に備えてもよい。
【0106】
グラフェン酸化物ゲルは、最初に光学的に不透明な懸濁液を形成するために、反応容器内において、光学的に透明又は半透明なグラフェン酸化物ゲルを得るのに十分な時間、反応温度で粉末状又は繊維状のグラファイト材料を酸化液体中に含浸することにより調製される。グラフェン酸化物ゲルはpHが5以下の酸媒体中に分散されたグラフェン酸化物分子から構成され、グラフェン酸化物分子は20重量%以上の酸素含有率を有する。GOゲル調製用の開始材料は、天然グラファイト、人工グラファイト、メソフェーズカーボン、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、コークス、カーボンファイバ、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ又はこれらの組み合わせからから選択されたグラファイト材料である。
【0107】
この方法においては、(b)工程及び(c)工程は、ローラーから析出ゾーンに固体基材材料のシートを搬送する工程と、固体基材材料のシートの表面上にグラフェン酸化物ゲルの層を析出し、その上にグラフェン酸化物ゲル層を形成する工程と、グラフェン酸化物ゲルを乾燥し、基材表面上に析出された乾燥グラフェン酸化物層を形成する工程と、収集ローラー上にグラフェン酸化物層析出基材シートを収集する工程とを有利に備える。これは、単一グラフェン材料の連続大量生産が可能な本質的にロールツーロール法である。この方法は、収集ローラー上に収集される前に、グラフェン酸化層を圧縮する工程をさらに備えてもよい。
【0108】
この方法においては、グラフェン酸化物ゲルは、いずれかの塗工、成形、スプレイ又は液体分散工程を用いて支持基材の主要表面上に析出されてもよい。有用な基材の代表的な例示は、ガラス、セラミック、ポリマー、金属及びグラファイトフォイルのフィルム又はシートを含む。
【0109】
塗工層から液体媒体を除去することにより、得られる塗工積層体は、個々のグラフェン酸化物分子を互いに化学結合し得る(これよりも高くすることは可能であるが、一般的には100〜1,000℃の)熱処理又は再グラファイト化処理を施される。この熱処理は、驚くべきことに他の小さなグラフェン酸化物分子の再結合、重合又は鎖成長を可能とし又は活性化し、非カーボン元素(例えば全てのH及びほとんどのO)が除去され、巨大なグラフェンシートが形成される。グラフェン酸化物分子は、互いに平行に延在する複数の単一グラフェン層に組み合わされ及び一体化され、これらのグラフェン層は中断することなく塗工層の全長を覆うことができるように思われる。言い換えると、これらのグラフェン層はそれぞれ完全な単一グラフェン単位である。これらの完全な単一グラフェン層は、本質的に(例えば
図3(a)又は
図3(c)に概念的に示されているように)全てのグラフェン面がある一方向に沿って配向されるグラフェンブロックである1つの単一単位を実際に構成する。
【0110】
本発明の単一グラフェン層は、しばしば(
図3(e)に概念的に示されているように)単結晶又は(例えば
図3(f)に概念的に示されているように)本質的にグラフェン単結晶である不完全な粒界を有する多結晶である。これに対して、触媒表面(Cu又はNi)上の触媒化学蒸着析出(CVD)により調製された従来のグラフェンフィルム(厚さ2nm未満の単層又は数層)は、本質的に一般的には100μm未満、より一般的には10μm未満の粒径を有する多結晶子グラフェンである。このCVDはグラフェンフィルムは、半導体材料(例えばFETトランジスタにおけるSiの置換)又はタッチパネルスクリーン(例えば携帯電話画面のようなディスプレイ装置に用いられるITOガラスの置換)としての使用を意図している。このCVDグラフェンは、炭化水素ガス分子の触媒分解及び一般的に800〜1,000℃のCVD温度でのCu又はNi上のカーボン原子の析出により得られる。これらのCVDフィルムは一般的に2nmより薄く、本発明のグラフェン単結晶は一般的に10nmより厚い(しばしば10μmより厚い)にも関わらず、CVDグラフェンフィルムの電気伝導度(2,000S/cm未満)及び熱伝導度(500W/mK未満)は一般的に本発明のグラフェン単結晶のものよりも著しく低い。
【0111】
高度に配向されたグラフェン面の単一体(又は「単結晶」)は、熱伝導度、電気伝導度、構造的整合性(強度及び取扱容易性)の前例のない組み合わせを示す。これらの特性は、いずれのグラファイト又は非グラファイト材料でも対応が取れない。
【0112】
熱処理工程は、得られる塗工積層体の表面仕上げを改良するために、カレンダー又はロールプレス操作により補助される。単一グラフェン層の厚さは、10μm未満とすることができるが、好ましくは10〜200μmの間、より好ましくは20〜100μm間である。
【0113】
上記のように、剥離グラファイトフレーク又はグラファイトウォームの再圧縮により調製された柔軟なグラファイトフォイルは、比較的低い熱伝導度及び機械的強度を示す。グラファイトウォームは、たぶん非常に膨張されたグラファイトフレーク間で機械的連動に起因して、いずれの結合材料を用いることなく圧縮により柔軟なグラファイトフォイルに形成される。これらのフレークのかなりの部分が(熱及び電気伝導度に関する高度な異方性により明示されるような)柔軟なグラファイトシートの両面に平行な方向に配向されるが、多くの他のフレークはゆがめられ、ねじられ、屈められ、これらのシート表面に非平行な方向に配向される(
図2(b))。この観察は、公開文献又は特許文献で発表された多くの走査型電子顕微鏡(SEM)により立証されている。さらに、大量のグラファイトフレークの存在はフレーク間に大量の界面をもたらし、非常に高い接触抵抗(熱抵抗及び電気抵抗)を生じる。
【0114】
その結果、得られる柔軟なグラファイトフォイルの電気又は熱伝導度は、完全なグラファイト単結晶又はグラフェン層に期待される値から劇的に逸脱している。例えば、グラフェン層の理論的な面内電気伝導度及び熱伝導度は、それぞれ1〜5×10
4S/cm及び3,000〜5,000W/mKであることが求められる。しかしながら、柔軟なグラファイトフォイルの対応する実測値は、それぞれ達成される値よりも一桁低い1〜3×10
3S/cm及び140〜300W/mKである。これに対して、本発明の単一グラフェン塗工グラファイトフォイルにおける対応する値は、それぞれ約3.5〜20×10
3S/cm(3,500〜20,000S/mK)及び600〜2,000W/mKである。
【0115】
本発明は、熱管理用途、例えば(携帯電話、ノートブックパソコン、eブック及びタブレットのような)マイクロ電子装置におけるヒートスプレッド、柔軟なディスプレイ、発光ダイオード(LED)、動力工具、コンピュータCPU及びパワーエレクトロニクスとしての用途に用いられる高熱伝導性単一グラフェン層又はグラフェン塗工積層体をも提供する。我々は本発明のGO塗工グラファイト積層体の様々な製品又は用途を請求する異なる特許出願を提出している。
【実施例】
【0116】
参照例1:ナノグラフェンプレートレット(NGP)の調製
(化学的層間物質及び酸化剤である)濃硫酸、硝酸及び過マンガン酸カリウムの混合物中に含浸され、グラファイト層間化合物(GIC)を調製する、12μmの平均直径を有する切断されたグラファイトファイバを開始材料として用いた。まず80℃の真空オーブン内でファイバセグメントを24時間乾燥させた。次いで、ファイバセグメントを入れた3つ口フラスコ内に、適切に冷却及び攪拌しつつ、濃硫酸、発煙硝酸及び過マンガン酸カリウム(4:1:0.05の重量比)の混合物をゆっくりと添加した。16時間の反応の後、酸処理グラファイトファイバを濾過し、溶液のpHレベルが6になるまでイオン交換水を通して洗浄した。100℃で一晩乾燥させた後、得られたグラファイト層間化合物(GIC)に、管状炉内で1,050℃の熱衝撃を45秒間施し、剥離グラフェン(ウォーム)を形成した。得られた剥離グラファイト(EG)の5gを、65:35の比率でアルコールと蒸留水からなる2,000mlのアルコール溶液と12時間混合し、懸濁液を得た。次に、混合物又は懸濁液に、200Wの出力で様々な時間超音波照射を施した。2時間の超音波処理の後、EG粒子を効果的に薄いNGPに細分化した。次いで、懸濁液を濾過し、80℃で乾燥し、残留溶媒を除去した。このようにして調製されたNGPは約9.7nmの平均厚さを有する。
【0117】
参照例2:メソカーボンミクロビーズ(MCMB)由来の単層グラフェンの調製
メソカーボンミクロビーズ(MCMB)をChina Steel Chemical社から購入した。この材料は約16μmのメジアン粒径及び約2.24g/cm
3の密度を有する。酸溶液(4:1:0.05の比率のスルホン酸、硝酸及び過マンガン酸カリウム)で10gのMCMBを72時間層間挿入した。反応の完了後、混合物をイオン交換水中に注ぎ、濾過した。層間挿入されたMCMBを5%HCl溶液で繰り返し洗浄し、硫酸イオンのほとんどを除去した。次いで、濾液のpHが中性になるまで試料を繰り返しイオン交換水で洗浄した。スラリーを60℃の真空オーブン内で24時間乾燥及び貯蔵した。乾燥された粉末試料を石英チューブ内に載置し、1,080℃の所望の温度に予め設定された水平管状炉内に45秒間挿入し、グラフェン材料を得た。TEM及び原子間力顕微鏡研究はNGPのほとんどが単層グラフェンであることを示している。
【0118】
参照例3:純粋なグラフェンの調製
一般的な方法において、約20μm以下のサイズに粉砕された5gのグラファイトフレークを、(分散剤:DuPont社製のZonyl(登録商標)FSOを0.1重量%の含む)1,000mLのイオン交換水中に分散し、懸濁液を得た。グラフェンシートの剥離、分離及び小型化のために、85Wの超音波エネルギーレベルでBranson S450超音波処理装置を15分〜2時間用いた。
【0119】
実施例1:グラフェン酸化物(GO)ゲルの調製
30℃の4:1:0.05の比率の硫酸、硝酸ナトリウム及び過マンガン酸カリウムからなる酸化剤溶液を用いたグラファイトフレークの酸化によりグラファイト酸化物ゲルを調製した。酸化剤混合溶液中で(粒径14μmの)天然グラファイトフレークを含浸及び分散すると、懸濁液又はスラリーは光学的に不透明及び暗く見える。懸濁液は、反応の最初の52時間は不透明なままである。しかしながら、反応時間が52時間を過ぎると、懸濁液は、次第に光学的に半透明に(少し曇って)変わり、懸濁液の色が黒色から茶褐色に変化する。96時間後、懸濁液は、突然光学的に透明な淡褐色の溶液になる。溶液は、非常に均一な色であり、いずれかの分散された個々の物体の欠乏を示す透明であるように見える。全ての溶液は、一般的なポリマーゲルと非常に似たゲルのように振る舞う。
【0120】
驚くべきことに、このゲルをガラス表面上に成形し、成形フィルムから液状媒体を除去することにより、光学的に透明なグラフェン酸化物の薄フィルムが得られる。この薄フィルムは、通常のポリマーフィルムのように見え、感じ、振る舞う。しかしながら、(一般的には100℃超、より一般的には1,000℃超、さらに一般的には1,500℃超、2,500℃超でも可能な)温度で一般的に1〜3時間の再グラファイト化により、このGOフィルムは、大型のグラフェン単結晶からなり又は大型のグラフェン単結晶である単一グラフェン単位に変形される。これは、電子装置におけるヒートスプレッダとして直接実装される独立型の単一グラフェン層である。また、多くの用途の1つとして、単一グラフェン層は、グラファイト基材層の表面上に析出され、後述の熱伝導性積層体を形成してもよい。
【0121】
グラファイト材料フォイル(グラファイトペーパー、フィルム、マット等)上にGOゲルの層を成形し、ゲルから液状内容物を除去することにより、得られる固体塗工層は非常に良好にグラファイトフォイルに貼着する。実際に、GO塗工とグラファイトフォイルとの間の結合は非序に強く、熱処理後、GO由来単一グラフェン層は、グラファイトフォイル材料を引き裂き又は除去することなく、グラファイトフォイルから引き剥がされない。これは、再グラファイト化によるGOゲルが優れた凝集力を有することを意味する。これは非常に驚くべき観察である。
【0122】
GOフィルム(液状媒体が除去され、ガラス表面上に塗工されたGOゲル)、150℃で1時間熱還元されたGOフィルム、及び、再グラファイト化GOフィルム(単一グラフェン層)のX線回折曲線は、それぞれ
図5(a)、
図5(b)及び
図5(c)に示されている。乾燥されたGOフィルム(
図5(a))の約2θ=12度のピークは、約0.7nmのグラフェン間間隔(d
002)に対応する。150℃の熱処理により、GOフィルムは、グラフェン間間隔を縮小する工程の開始を示し、天然グラファイト粒子の元来の構造の部分的回復を示す22度で中心を合わされたハンプの形成を示す。2,500℃の温度で1時間の熱処理によって、d
002間隔は、天然グラファイトの0.335nmに近似する約0.336nmに縮小される。
【0123】
広範囲にわたる様々な温度の熱処理により得られるGO由来単一グラフェンフィルムのグラフェン間間隔は、
図6(a)に要約される。GO由来単一グラフェン層の対応する酸素含有率は
図6(b)に示される。同様の最終熱処理温度範囲の相関関係としてプロットされたGO由来単一グラフェン層及び対応する柔軟なグラファイト(FG)フォイルの熱伝導度は
図6(c)に要約される。500℃程度の低い熱処理温度はGO中の平均グラフェン間間隔を、天然グラファイトのものよりも近い0.4nm未満に戻すのに十分であることを指摘するのは重要である。このアプローチの良さは、このGOゲル戦略が、互いに本質的に平行であるグラフェン面の全てに対してグラフェンモノリス内のカーボン原子のグラフェン面を再編成及び再配向することを可能とするという見解である。これは、対応する柔軟なグラファイトフォイルの熱伝導度(200W/mK)の2倍より大きな420W/mK超の熱伝導度をもたらす。カーボン原子のこれらのグラフェン面は、元来の天然グラファイト構造を構成するグラフェン面から逸脱する。集合体又は「グラファイト成形体」にランダムに詰め込まれた際の元来の天然グラファイト粒子は、ランダムに配向された構成のグラフェン面を有し、比較的低い熱伝導度を示し、本質的にゼロ強度(構造的整合性のない)を有する。これに対して、単一グラフェン層の強度は一般的に40〜140MPaの範囲内である。
【0124】
800℃程度の低い熱処理温度により、得られる単一グラフェン層は、同一の熱処理温度で柔軟なグラファイトフォイルの244W/mKと対照的に、1,148W/mKの熱伝導度を示す。実際のところ、例えどんなに熱処理温度が高くとも(例えば2,800℃程度の高さ)、柔軟なグラファイトフォイルは600W/mKより低い熱伝導度を示すだけである。2,800℃の熱処理温度では、本発明の単一グラフェン層は1,807W/mKの熱伝導度を実現する。
【0125】
図2(a)、
図3(a)及び
図3(b)の十分な調査及び比較は、グラフェン単結晶又はグラフェンモノリスにおけるグラフェン層が互いに実質的に平行に配向されることを示すが、これは柔軟なグラファイトフォイル又はグラフェン酸化物ペーパーの場合ではない。単一グラフェン単位における2つの同定可能な層の間の傾斜角度はたいていは5度未満である。これに対して、2つのグラファイトフレーク間の角度の多くが10度超、いくつかは45度程度である(
図3(b))柔軟なグラファイトにおいては、非常に多くの折り畳まれたグラファイトフレーク、よじれ及び配向不整がある。到底不適切ではないが、NGPペーパー(
図3(b))におけるグラフェンプレートレット間の配向不整は高く、プレートレット間に多くのギャップがある。単一グラフェン単位は本質的にギャップがない。
【0126】
図4(a)は、それぞれ、グラファイト化又は再グラファイト化用の最終熱処理温度の相関関係としてプロットされたGO由来単一グラフェン層(▲)、RGOの減圧濾過により調製されたGOペーパー(■)、及び、FGフォイル(◆)の熱伝導度を示す。これらのデータは、所定の熱処理温度で達成可能な熱伝導度に関する単一グラフェン層又はグラフェン単結晶の優位性を明確に示している。
【0127】
比較のために、ポリイミドフィルムを不活性雰囲気内で500℃1時間及び1,000℃3時間炭化し、次いで、このフィルムを2,500〜3,000℃の範囲の温度で1〜5時間グラファイト化し、従来のグラファイトフィルム及び熱分解性グラファイト(PG)を形成した。
図4(b)は、最終グラファイト化又は再グラファイト化温度の相関関係としてプロットされたGO由来単一グラフェン層(■)、1時間(×)及び3時間(▲)熱処理されたポリイミド由来熱分解性グラファイト(PG)の熱伝導度を示す。これらのデータは、ポリイミドを炭化し、次いで炭化されたポリイミドをグラファイト化することにより作製された従来の熱分解性グラファイト(PG)が、同じ熱処理(グラファイト化又は再グラファイト化)温度で同じ長さの熱処理時間処理されたGO由来単一グラフェン層単独(■)と比較して、一貫して低い熱伝導度を有することを示す。例えば、ポリイミド由来のPGは、2,000℃1時間のグラファイト化処理後に820W/mKの熱伝導度を有し、2,000℃3時間のグラファイト処理後に1,242W/mKの熱伝導度を有する。これらの観察は、従来のPGアプローチに対してGOゲルアプローチを用いる利点を明確かつ顕著に示している。実際のところ、例えどんなにグラファイト化時間がPGに対して長くとも、熱伝導度はGOゲル由来単一グラフェン層のものより常に低い。言い換えると、単一グラフェン層は、化学的組成、構造、形態学、製造方法及び特性の観点から、基本的に柔軟なグラファイト及び熱分解性グラファイトとは異なり、明らかに識別される。
【0128】
上記結論は、GO由来単一グラフェン層(◆)の電気伝導度が、調査された最終グラファイト化又は再グラファイト化温度の全範囲にわたって、RGOプレートレット由来のGOペーパー(■)及びFGフォイル(×)のものより優れていることを示す
図4(c)におけるデータによりさらに支持される。
【0129】
実施例2:コア又は基材グラファイトフォイル上に塗工されたグラフェン酸化物由来単一グラフェン層を有する積層体の調製及び試験
参照例1〜3において調製されたNGPは、グラファイトフォイルとして用いられる薄いペーパー又はフィルム状に(例えば減圧濾過技術を用いて)作製される。調査された他のグラファイトフォイルは、カーボンナノチューブペーパー(オハイオ州DaytonのBuckeye Composites社製のBuckeyeペーパー)、カーボンナノファイバマット(オハイオ州CedarvilleのApplied Sciences社製のCNT)、数種類の異なる厚さを有する柔軟なグラファイトフォイル(Graftech及びTimcal Graphite社製)、社内で調製されたグラファイトエポキシ複合フィルム、社内で調製されたカーボン−カーボン複合層(フェノール樹脂で強化され、炭化されたカーボンファイバマット)及びカーボンペーパー(Toray社製)を含む。我々は、厚さがナノメートルオーダーのCNT及びグラフェンフィルムも調製している。これらのナノ薄フィルムは、まずプラスチックフィルム(PETフィルム、ポリエチレンテレフタレート)上に析出された。PETフィルムは電気絶縁層として作用し、携帯電話又はラップトップコンピュータのCPUからヒートスプレッダ層を電気的単離する。
【0130】
グラフェン酸化物由来単一グラフェン塗工の調製のために、実施例1において調製されたグラフェン酸化物ゲルを用いた。場合によっては、GOゲル内に個々のNGPを添加し、混合物ゲル又はNGP−GOゲルスラリーを形成した。これらの場合においては、完全に分離されたNGPプレートレットをグラフェン酸化物ゲル中に分散し、約1〜50重量%(好ましくは5〜20重量%NGP)のプレートレット濃度を有するグラフェンプレートレットゲルを作製した。ゲル中のNGPの分散を促進するために超音波を用いた。
【0131】
次に、乾燥及び加熱部を備えた塗工装置を用いて、グラファイトフォイルの主要表面の片面又は両面上に純粋なGO及びNGP−GOゲル又はスラリーを成形した。場合によっては、GOゲル又はNGP−GOゲル混合物を基材上に成形し、ドクターブレードにより規制し、その上に均一な塗工を形成した。塗工中の液体を真空オーブン内でさらに除去し、固体GO塗工を形成した。次いで、得られた塗工グラファイトフォイル(塗工積層体とも呼ぶ)に100℃から約3,000℃までの温度の熱処理を施した。数種類の温度範囲、100〜1,000℃、1,000〜1,500℃、1,500〜2,500℃、及び、2,500〜3,000℃を用いた。
【0132】
実施例3:様々なグラフェン酸化物由来単一グラフェン塗工グラファイトフォイルの電気及び熱伝導度測定
単一グラフェン層塗工グラファイトフォイル(例えば柔軟なグラファイトフォイル、FG)、(ガラス表面に塗工され、剥離され、熱処理された)GO由来単一グラフェン層単独、及び、(塗工を有しない)FGフォイル単独に対して4点プローブ試験を行い、面内電気伝導度を測定した。レーザーフラッシュ法(Netzsh熱拡散装置)を用いてこれらの面内熱伝導性を測定した。
【0133】
様々なフィルム又は積層体の面内熱及び電気伝導度並びに引張り特性を調査した。いくつかの重要な観察が(例えば
図8(a)、
図8(b)及び
図8(c)に要約されているような)試験結果から得られる。
(1)約75μmの厚さを有する柔軟なグラファイトフォイル単独(FG、
図4(a)における▲)の熱伝導度は、FGフォイルが700℃以上で熱処理されない場合、237W/mK未満である。(ぞれぞれの場合においてグラファイト化処理の1時間の間に)後の再圧縮熱処理温度が700℃から2,800℃に上昇するにしたがって、FGフォイルの熱伝導度は、熱処理により誘発されたグラファイト構造の限定された再配向を示す237W/mKから582W/mKに上昇する。これに対して、(ガラス表面上にGOゲルの層を析出し、1時間の減圧によりGO層から液体を除去し、ガラス表面から乾燥固体GO層を剥離することにより得られた)GO由来単一グラフェン層単独の熱伝導度は、983W/mKから1,807W/mKに上昇する(
図8(a)における■)。これは、単一グラフェン層にエッジ−エッジで架橋又は結合され、完全かつ整然と結合されたグラフェンプレートレットの単一単位に一体化される全てのGO分子がグラフェン単結晶である、熱処理により誘発されたグラファイト構造の顕著又は劇的な再配向を示す。
(2)対応する一連のGO由来単一グラフェン塗工FGフォイル(
図8(a)における◆)の熱伝導度は、698WmKから1,803W/mKに上昇する。これは、構成の特性から複合特性を予測するために通常用いられる複合則から理論的に予測された熱伝導度(
図8(a)における×)よりも著しく高い。各塗工層はおおよそ75μmの厚さを有する。これらのデータは、(グラフェン酸化物ゲル由来の)GO由来単一グラフェン塗工とFGフォイルコア層との予期しない相乗効果を明確に示す。
(3)
図8(b)は、ポリイミドを炭化し、次いでこの炭化されたポリイミドをグラファイト化することにより作製され、GO由来単一グラフェン層単独(■)又は単一グラフェン層塗工FG積層体(◆)と比べて一貫して低い熱伝導度を有する、同じ熱処理(グラファイト化又は再グラファイト化)温度、同じ長さの熱処理時間で処理された従来の熱分解性グラファイト(PG)を示す。例えば、ポリイミド由来のPGは、2,000℃で1時間のグラファイト化処理後の熱伝導度が820W/mKであり、2,000℃で3時間のグラファイト化処理後の熱伝導度が1,242W/mKである。これらの観察は、従来のPGアプローチに対してGOゲルアプローチを用いる利点を明確かつ顕著に示している。実際のところ、例えどんなにグラファイト化時間がPGに対して長くとも、熱伝導度はGOゲル由来単一グラフェン又は単一グラフェン塗工FG積層体のものより常に低い。言い換えると、GO由来単一グラフェン層及び単一グラフェン塗工グラファイトフォイルは、化学的組成、構造、形態学、製造方法及び特性の観点から、基本的に熱分解性グラファイトとは異なり、明らかに識別される。
(4)
図8(c)は、FGフォイル表面へのGOゲルの塗工によりGO塗工積層体を形成し、次いで熱処理により単一グラフェン塗工積層体を形成する際の電気伝導度の劇的な相乗効果を示す。単一グラフェン塗工積層体の全ての電気伝導度は、複合則により予測されたものよりも著しく高い。
【0134】
実施例4:様々なグラフェン酸化物由来単一グラフェン塗工グラファイト積層体の引張り強度
塗工層当たりおおよそ10〜80μmの間で変化する塗工厚さを有する一連のGO由来単一グラフェン塗工FGフォイルを調製した。コアFGフォイルはおおよそ100μmの厚さを有する。様々な塗工積層体及び未塗工の対応物(コア層のみ)の引張り強度の測定に汎用の試験装置を用いた。
引張り強度は塗工/コアの厚さ比の相関関係としてプロットされる(
図9(a))。このデータは、柔軟なグラファイトフォイルの引張り強度がGO由来単一グラフェン塗工の厚さに伴って単調に増加することを示している。(GO由来単一グラフェン層の析出に起因する試験片の厚さの増加の効果は、実際の試験片の断面積により試験片の破壊力を分割することにより説明される。)12MPaから121MPaへの引張り強度の10倍もの増加は、FGフォイルの2つの主要表面上に均一に析出された2層の塗工層(それぞれの厚さは80μm)により観測される。この結果は、かなり鮮烈であり、GOゲル由来GO層(単一グラフェン単位又はグラフェン単結晶)がそれ自体で材料の種類であるとの理解をさらに反映する。
【0135】
試験片の破面のSEM研究は、これらのフォイル及び積層体の破損が(存在する場合、GO由来単一グラフェン塗工層からではなく)FGフォイル自身から、しばしばFG表面又は端部付近から常に始まることを示している。FG表面又は端部は、クラック開始を促進する機械的応力集中部として作用する大量の表面欠陥を有しているように思われる。単一グラフェン塗工層の存在は、表面欠陥を顕著に延ばし、クラック開始ステップを遅らせることができる。応力が十分に高い場合には、最終的な引張り破損をもたらすクラックがやがてFG表面/端部付近から開始される。
【0136】
他の予期しない観察は、単一グラフェンの塗工量の増加に伴って、単一グラフェン塗工積層体の引張り強度が、柔軟なグラファイト型材料の一般的な強度よりも一桁高い121MPaに達するまで単調に増加するとの理解を示す。これは、グラファイトフォイルにGOを結合し得る強い接着力をGOゲルが有し、GOゲル中のGO分子が互いに組み合わされ、一体化されて、比較的高い凝集力をもたらす比較的欠陥のない大きく強い単一グラフェン層又は単結晶を形成することを支持するように思われる。
【0137】
実施例5:様々なグラフェン酸化物塗工グラファイトフォイルの表面耐擦傷性(擦傷視認性及び擦傷深さの観点から)及び硬度
いわゆるFord Lab Test Method(FLTM)BN108-13を用いて擦傷試験を行った。この装置は、5つのビームに連結された長さ250mmの可動式プラットフォームからなる。各ビームの一端には、スクラッチピンが取り付けられている。各ピンの先端に、高度に研磨された硬化スチールボール(直径1.0±0.1mm)が配置されている。各ピンは、それぞれ7N、6N、3N、2N及び0.6Nの力を及ぼす重量で負荷される。圧縮空気の駆動により、ビームが試験片表面を横切ってピンを引っ張り、擦傷を生じさせる。擦傷はおおよそ100mm/sの摺動速度で形成される。全ての試験は室温で行われた。この試験方法は粒子表面が評価される必要があるが、本研究においては、試験片の平滑表面のみを試験した。
【0138】
試験片プラークを擦傷した後、キセノン光源を内蔵した反射光偏光顕微鏡により評価した。対象物の総グレイスケール値である「グレイスケール量」の測定には、Image Analysis Softwareを有する画像分析装置を用いた。カメラの対象レンズは擦傷に対して90度の角度で配置される。次いで、対象レンズにより約1mmの長さの擦傷部分を撮影する。次に、各擦傷線の電気信号を一体化し、記録する。対象物の光学的質量Mは、対象物における全てのピクセルのグレイレベル値GLの合計値である。個々のグレイレベル値は、0は黒であり、225は白である0〜255の範囲の単位ステップにおいて画像分析プログラムにより特定される。この光学的質量Mは、nがピクセル数である、M=ΣGL
i(iからnまでの合計)から計算される。対象物の輝度Bは、Aが対象物の面積を表す、B=M/Aから計算される。擦傷と背景との間の輝度の比率変化は、ΔB=[(B
scratch−B
background)/(B
background)]×100により得られる、擦傷視認性ΔBである。干渉計を用いて擦傷の深さを測定した。倍率を5倍に設定した。走査領域の深さヒストグラムから深さを測定した。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて擦傷を調べた。
【0139】
選択された試験片において、押込試験も行った。ロックウェル硬度試験はASTM D785試験工程に従った。圧子は直径(ロックウェルRスケール)12.5mmの球状スチールボールであった。ロックウェル硬度数は、15秒間の588Nの重負荷の後、さらに15秒間の98Nの軽負荷をかける回復不可能な押込の大きさである。通常の硬度は、算出された面積で割った負荷として定義される。
【0140】
図9(b)、
図9(c)及び
図9(d)は、それぞれ、塗工/コア層の厚さ比の相関関係としてプロットされた一連のGO由来単一グラフェン塗工FGフォイルの擦傷視認性、擦傷深さ及びロックウェル硬度を示す。これらのデータは、高いレベルの擦傷視認性及び深い擦傷痕を有する塗工のないFGフォイルが耐擦傷性ではないことを示す。耐擦傷性はGO由来単一グラフェン塗工の薄層の析出により顕著に改良され、単一グラフェン塗工が厚ければ厚い程耐擦傷性は良好になる。この耐擦傷性は、
図9(d)に示されたような単一グラフェン塗工に起因する改良された表面硬度を反映するものである。
【0141】
実施例6:様々なタイプの単一グラフェン塗工グラファイトフォイルの特性
研究されたグラファイトフォイルの例示には、NGPペーパー、CNTペーパー、CNFマット、グラファイト−エポキシ複合体フィルム、カーボン−カーボン複合体層、カーボンペーパー、GOゲル結合NGP複合体、及び、塗工の熱処理後PETフィルムを取り付けた)PET支持グラフェンフィルムが含まれる。GO塗工グラファイトフォイルの幅広いアレイの物理的及び機械的特性は下記の表1に要約されている。コア又は基材単独上の様々な特性の改良は、GOゲル由来単一グラフェン層の優れた特性又はGOゲル由来単一グラフェン層とコア/基材層との相乗効果に起因する。これらの優れた特性は、コア層単独(例えば柔軟なグラファイト)、触媒CVDグラフェンフィルム及び(HOPGを含む)熱分解性グラファイトでは観察されない。
【0142】
【表1】
【0143】
これらのデータは、GO由来単一グラフェン塗工がグラファイト層の電気伝導度、熱伝導度、引張り強度、耐擦傷性及び硬度を顕著に改良することをさらに示している。優れた耐擦傷性及び表面硬度は、フォイル表面からいずれかのグラファイト又はカーボン粒子を引っ掻き取ることを低減又は防止する。
【0144】
試料21−Aと21−Bとの間及び試料22−Aと22−Bとの間の比較により非常に興味深く重要な結果が示される。CNT及びCNF性のペーパー又はマットは比較的不十分な強度及び硬度を示す。おそらく、これらの多孔性ペーパー又はマット構造は樹脂を含浸させることができるが、電気伝導度及び熱伝導度が劇的に低減されるであろう。むしろ、マット又はペーパー構造の両面をGOゲルの薄層で塗工し、GO層を1,000℃で1時間乾燥及び再グラファイト化することにより、両材料の引張り強度が3〜4倍増加する。さらに、CNTペーパー及びCNFマットの電気伝導度及び熱伝導度は一桁増加する。これらの優れた特性の単独又は組み合わせは、例え樹脂マトリクスが1,500℃で長時間炭化されたとしても、樹脂含浸CNTペーパー及びCNFマットでは達成されない。カーボン−カーボン複合体は、例え樹脂含浸及び炭化を繰り返されたとしても、1,000S/cm(一般的には500S/cm以下)の電気伝導度を達成できず、1,000W/mK(一般的には300W/mK以下)の熱伝導度を達成できないことは公知である。
【0145】
実施例7:グラフェン酸化物由来単一グラフェンフォイルを含む放熱システム
スマートフォン及びラップトップコンピュータのような様々なマイクロ電子装置の表面温度を測定するために、赤外線サーモグラフィー系ハンドヘルド装置を用いた。例えば、
図7は、同じビデオプログラムを10分間作動する2台の個々のスマートフォンの表面温度範囲を示す。一方のスマートフォン(上部画像)には、38.6℃程度の外表面温度を示すCPUとケースの間に2枚の柔軟なグラファイト(FG)フォイルが含まれている。CPU付近の内部温度は、やがては装置を破損し得る危険温度の60又は70℃よりもおそらく非常に高い。これに対して、他方のスマートフォン(下部画像)には、25.4℃の外表面温度を示す1枚のGO由来単一グラフェン塗工FGフォイルが含まれている。この例示は、熱管理システムにおけるGO塗工グラファイトフォイル系ヒートスプレッダ層の有効性を鮮明に示している。
【0146】
図8(a)及び
図8(b)に示されているように、本発明の単一グラフェン塗工グラファイトフォイルは、超高温グラファイト化処理を耐え抜く必要がない。炭化樹脂(例えばポリイミド)又は他のカーボン材料のグラファイト化は、一般的には2,000℃超、最も一般的には2,500℃超の温度を必要とする。グラファイト化温度は、炭化材料又は熱分解性グラファイトの熱伝導度を1,600〜1,700W/mKに達するためには、最も一般的には2,800〜3,200℃の範囲である。これに対して、本発明のGO塗工積層体の一般的な熱処理温度(再グラファイト化処理)は、(100〜150℃程度でも可能であるが)2,500℃、より一般的には1,500℃よりも著しく低い。
【0147】
例えば、(1,000〜1,500℃の炭化に4時間及び2,000℃のグラファイト化に1時間の)5時間炭化及びグラファイト化されたポリイミド(PI)は、820W/mKの熱伝導度を有する。これに対して、500℃で計2時間のGOの熱処理により、我々は、876W/mKの熱伝導度を達成した。これは非常に驚くべきことであり、誰もこのような低グラファイト化温度を可能としたものはいない。さらに、同じ2,000℃で1時間のGO由来単一グラフェン塗工グラファイトフォイルの熱処理は、1,680W/mKの熱伝導度をもたらす。明らかに、これは、劇的に速く、エネルギー集約的が低く、費用効果が良好な方法である。得られる製品は、熱分解性グラファイトよりも遙かに優れている。単一グラフェン塗工グラファイトフォイル、単一グラフェン層自身(GOゲル由来)及び熱分解性グラファイトは、化学的組成、形態学、構造、製造方法及び様々な特性の観点から、基本的に異なり、材料のクラスを明らかに識別される。
【0148】
結論として、我々は、グラフェン酸化物ゲル由来単一グラフェン層又はグラフェン単結晶を開示している。化学的組成、構造、形態学、製造方法、及び、この材料の新しいクラスの特性は、柔軟なグラファイトフォイル、ポリマー由来熱分解性グラファイト、(HOPGを含む)CVD由来PG、及び、CVDグラフェン薄フィルムとは基本的に異なり、明らかに識別される。本発明の材料により示された熱伝導度、電気伝導度、耐擦傷性、表面硬度、及び引張り強度は、従来の柔軟なグラファイトシート、グラフェンペーパー又は他のグラファイトフィルムが達成されたものよりもかなり高い。これらのGO由来単一グラフェン材料の実施形態は、優れた電気伝導度、熱伝導度、機械的強度、表面耐擦傷性、硬度、及び、剥離傾向なしの組み合わせを有する。