特許第6359058号(P6359058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6359058シトクロムP450、及びテルペンの酵素的酸化のためのそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359058
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】シトクロムP450、及びテルペンの酵素的酸化のためのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/53 20060101AFI20180709BHJP
   C12N 15/29 20060101ALI20180709BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20180709BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20180709BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20180709BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20180709BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20180709BHJP
   C12N 9/02 20060101ALI20180709BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20180709BHJP
   C12P 7/40 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   C12N15/53ZNA
   C12N15/29
   C12N15/62 Z
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C12N9/02
   C07K19/00
   C12P7/40
【請求項の数】46
【外国語出願】
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2016-160545(P2016-160545)
(22)【出願日】2016年8月18日
(62)【分割の表示】特願2014-539289(P2014-539289)の分割
【原出願日】2012年10月25日
(65)【公開番号】特開2017-42161(P2017-42161A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2016年9月16日
(31)【優先権主張番号】11187409.5
(32)【優先日】2011年11月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル シャルク
(72)【発明者】
【氏名】ファビエンヌ ドゥゲリー
【審査官】 濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5993019(JP,B2)
【文献】 特表2009−504138(JP,A)
【文献】 特開2011−55721(JP,A)
【文献】 特表2005−503163(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/061656(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/065126(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C12N 1/00
C12P 7/40
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
PubMed
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのテルペン化合物を酸化するための方法において、
a)P450レダクターゼ(CPR)の存在で、テルペン化合物と、配列番号:1又は2に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、シトクロムP450活性を有し、かつ任意にさらに膜アンカー配列を含む少なくとも1つのポリペプチドとを接触させること、
b)任意に、工程a)において製造された酸化させたテルペンを単離すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、配列番号:1又は2に対して少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記ポリペプチドが、配列番号:1又は2を含む、請求項2に記載の方法
【請求項4】
前記ポリペプチドが、任意に膜アンカー配列と共に、配列番号:1又は2からなる、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法
【請求項5】
前記ポリペプチドが、単環式又は多環式のモノテルペン及びセスキテルペンから選択される少なくとも1つのテルペン化合物を酸化することができる、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法
【請求項6】
前記単環式又は多環式のモノテルペン又はセスキテルペンが、環状部分上で置換基として少なくとも1つのメチル基を含む、請求項に記載の方法
【請求項7】
前記単環式又は多環式のモノテルペン又はセスキテルペンが、ジザエン、アルファ−セドレン、アルファ−ロンギピネン、アルファ−フネブレン、ツジョセン、バレンセン、ベータ−カミグレン、アロアロマデンドレン、アルファ−ネオクロベン、イソサチベン、レデン、S−リモネン、アルファ−フムレン、アルファ−グルユネン、アルファ−ピネン、ベータ−フネブレン、R−リモネン及びベータ−ピネンからなる群から選択される、請求項に記載の方法
【請求項8】
前記単環式又は多環式のモノテルペン又はセスキテルペンが、ジザエン、アルファ−セドレン、アルファ−フネブレン、バレンセン及びツジョセンからなる群から選択される、請求項に記載の方法
【請求項9】
ジザエンが、クシモル、ジザナール及び/又はジザン酸にさらに酸化される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、配列番号:3、4又はそれらの補体に対して少なくとも90%同一のヌクレオチド配列を含む核酸によりコードされている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記核酸が、配列番号:3、4又はそれらの補体に対して少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記核酸が、配列番号:3、4又はそれらの補体を含む、請求項11に記載の方法
【請求項13】
前記核酸が、任意に膜アンカー配列をコードするヌクレオチド配列と共に、配列番号:3、4からなり、又はそれらの補体からなる、請求項12に記載の方法
【請求項14】
前記工程a)を、テルペン化合物の酸化を促す条件下で酸化させたテルペン化合物の存在で、少なくとも1つの前記ポリペプチドを発現するために形質転換させたヒトでない宿主生物又は宿主細胞を培養することにより実施し、該生物又は細胞は、さらにCPRを発現する、請求項から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
さらに、前記工程a)の前に、少なくとも1つの前記ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸でヒトでない宿主生物又は宿主細胞を形質転換し、該生物又は細胞が、少なくとも1つの前記ポリペプチドを発現することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒトでない宿主生物が、植物、原核生物又は真菌である、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記ヒトでない宿主生物が、微生物である、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項18】
前記微生物が、細菌又は酵母である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記細菌がE.coliであり、かつ前記酵母がサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒトでない宿主細胞が、植物細胞である、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項21】
配列番号:1又は2に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、かつシトクロムP450活性を有し、かつさらに膜アンカー配列を含む、ポリペプチド。
【請求項22】
配列番号:1又は2に対して少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、請求項21に記載のポリペプチド。
【請求項23】
配列番号:1又は2を含む、請求項22に記載のポリペプチド。
【請求項24】
膜アンカー配列と共に、配列番号:1又は2からなる、請求項21から23までのいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項25】
前記ポリペプチドが、単環式又は多環式のモノテルペン及びセスキテルペンから選択される少なくとも1つのテルペン化合物を酸化することができることを特徴とする、請求項21から24までのいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項26】
前記単環式又は多環式のモノテルペン又はセスキテルペンが、環状部分上で置換基として少なくとも1つのメチル基を含むことを特徴とする、請求項25に記載のポリペプチド。
【請求項27】
前記単環式又は多環式のモノテルペン又はセスキテルペンが、ジザエン、アルファ−セドレン、アルファ−ロンギピネン、アルファ−フネブレン、ツジョセン、バレンセン、ベータ−カミグレン、アロアロマデンドレン、アルファ−ネオクロベン、イソサチベン、レデン、S−リモネン、アルファ−フムレン、アルファ−グルユネン、アルファ−ピネン、ベータ−フネブレン、R−リモネン及びベータ−ピネンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項26に記載のポリペプチド。
【請求項28】
前記単環式又は多環式のモノテルペン又はセスキテルペンが、ジザエン、アルファ−セドレン、アルファ−フネブレン、バレンセン及びツジョセンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項25に記載のポリペプチド。
【請求項29】
請求項21から28までのいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項30】
配列番号:3、4又はそれらの補体に対して少なくとも90%同一のヌクレオチド配列を含む、請求項29に記載の核酸。
【請求項31】
配列番号:3、4又はそれらの補体に対して少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を含む、請求項30に記載の核酸。
【請求項32】
配列番号:3、4又はそれらの補体を含む、請求項31に記載の核酸。
【請求項33】
膜アンカー配列をコードするヌクレオチド配列と共に、配列番号:3、4からなり、又はそれらの補体からなる、請求項29に記載の核酸。
【請求項34】
請求項29から33までのいずれか1項に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項35】
ウィルスベクター、バクテリオファージ、又はプラスミドの形での、請求項34に記載の発現ベクター。
【請求項36】
転写、翻訳開始又は終止を調節する少なくとも1つの調節配列、例えば転写プロモーター、オペレーター又はエンハンサー、又はmRNAリボソーム結合部位に操作可能に連結され、及び任意に少なくとも1つの選択マーカーを含む請求項29から33までのいずれか1項に記載の核酸を含む、請求項34又は35に記載の発現ベクター。
【請求項37】
請求項29から33までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの核酸を有するために形質転換された、ヒトでない宿主生物又は宿主細胞。
【請求項38】
前記ヒトでない宿主生物が、植物、原核生物又は真菌である、請求項37に記載のヒトでない宿主生物。
【請求項39】
前記ヒトでない宿主生物が、微生物である、請求項37に記載のヒトでない宿主生物。
【請求項40】
前記微生物が、細菌又は酵母である、請求項39に記載のヒトでない宿主生物。
【請求項41】
前記細菌がE.coliであり、かつ前記酵母がサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)である、請求項40に記載のヒトでない宿主生物。
【請求項42】
植物細胞である、請求項37に記載のヒトでない宿主細胞。
【請求項43】
以下、
a)請求項29から33までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの核酸を有するために形質転換させたヒトでない宿主生物又は宿主細胞を培養し、請求項21から28までのいずれか1項に記載の少なくとも1つのポリペプチドを発現又は過剰発現すること、
b)工程a)において培養したヒトでない宿主生物又は宿主細胞からポリペプチドを単離すること
を含む、請求項21から28までのいずれか1項に記載の少なくとも1つのポリペプチドを製造するための方法。
【請求項44】
さらに、工程a)の前に、請求項29から33までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの核酸でヒトでない宿主生物又は宿主細胞を形質転換して、請求項21から28までのいずれか1項に記載のポリペプチドを発現又は過剰発現する工程を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
テルペン化合物を酸化できる変異体ポリペプチドを製造するための方法であって、
(a)請求項29から33までのいずれか1項に記載の核酸を選択する工程、
(b)選択した核酸を改質して、少なくとも1つの突然変異体核酸を得る工程、
(c)宿主細胞又は単細胞生物を突然変異体核酸配列で形質転換して、突然変異体核酸配列によってコードされたポリペプチドを発現する工程、
(d)テルペン化合物を酸化する少なくとも1つの変異体活性についてポリペプチドをスクリーニングする工程、
(e)任意に、ポリペプチドが所望の変異体活性を有さない場合に、プロセス工程(a)〜(d)を、所望の変異体活性を有するポリペプチドが得られるまで繰り返す工程、
(f)任意に、所望の変異体活性を有するポリペプチドが、工程(d)において同定された場合に、工程(c)において得られた対応する突然変異体核酸を単離する工程
を含む、前記方法。
【請求項46】
請求項1から8までのいずれか1項において適用されたシトクロムP450活性を有するポリペプチドをコードする核酸を含み、かつさらにP450レダクターゼ(CPR)をコードする核酸を含む発現ベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テルペン分子を酸化できるシトクロムP450の核酸配列及びアミノ酸配列を提供する。本発明のシトクロムP450と、酸化させることを意図したテルペン分子との接触を含むテルペン分子を酸化する方法も提供する。特に、前記方法は、種々の技術分野、例えば香料及びフレーバーにおいて使用されてよい酸化させたテルペン分子を製造するためにin vitro又はin vivoで実施してよい。本発明は、核酸を含む発現ベクターも提供する。ヒトでない宿主生物、又は核酸で形質転換させた細胞も本発明の目的である。
【背景技術】
【0002】
テルペンは、ほとんどの生物(微生物、動物及び植物)において見出される。これらの化合物は、5個の炭素単位、いわゆるイソプレン単位から構成され、それらの構造に存在するこれらの単位の数によって分類される。従って、モノテルペン、セスキテルペン及びジテルペンは、それぞれ炭素原子10個、15個及び20個を含むテルペンである。ジテルペンは、例えば、植物界に広く見出され、2500種を超えるジテルペン構造が記載されている(Connolly and Hill, Dictionary of terpenoids, 1991, Chapman & Hall, London)。テルペン分子及びそれらの酸化された誘導体は、それらのフレーバー特性及びフレグランス特性並びにそれらの化粧品効果、医薬品効果及び抗菌効果のため、長年の間関心がある。種々の方法、例えば蒸気蒸留又は溶媒抽出によって得られた植物抽出物は、テルペン分子の酸化させた誘導体の源として使用される。代わりに、植物抽出によって見出された又は生合成プロセスによって得られたテルペン分子は、化学的プロセス及び酵素的プロセスを使用して酸化される。
【0003】
テルペンの酵素的酸化は、しばしば、疎水性基質、例えばテルペン分子の形質転換をより親水性の基質中で触媒化することができるシトクロムP450(P450)と言われる酵素を含む。シトクロムP450酵素は、細菌、古細菌及び真核生物中で見出されるヘムタンパク質のスーパーファミリーを形成する。最も一般の活性の1つに、シトクロムP450は、分子酸素の1つの酸素原子を基質分子に挿入することによってモノオキシゲナーゼとして作用し、一方で、他の酸素原子は水に還元される。
【0004】
この触媒反応は、分子酸素の活性化のために2つの電子を要求する。真核生物からのP450は、外部還元剤及び電子源としてNADPHを使用する。2つの電子は、同時にシトクロムP450活性部位に転移され、この転移は、電子供与体タンパク質、シトクロムP450レダクターゼ(CPR)を要求する。あるCPRは、あるシトクロムP450に特異的でない。CPRは、得られた生物におけるいくつかのP450のための電子供与体タンパク質である。さらに、ある生物からのCPRは、他の生物からのP450のための電子供与体タンパク質として作用できる。いくつかの場合に、P450は、電子供与体タンパク質として作用でき、又はCPRからP450への電子輸送の効率を改良できるシトクロムb5に結合されてもよい。真核生物細胞において、及び特に植物において、P450及びCPRは、一般に膜結合タンパク質であり、かつ小胞体に関連する。これらのタンパク質は、N末端膜貫通ヘリックスによって膜に固定される。
【0005】
多くのP450は、低い基質特異性を有し、かつ従って、多くの多様な構造、例えば種々のテルペン分子の酸化を触媒化できる。これらの酵素のほとんどは、与えられた基質で特定の位置選択性及び立体選択性を有するが、しかししばしば特定の基質からいくつかの生成物の混合物を製造する。かかるP450は、通常、分子、例えば生体異物の分解及び解毒において含まれ、かつ一般に、細菌及び動物において見いだせる。一方で、生合成経路において含まれるP450は、通常、あるタイプの基質についての特異性、並びに位置選択性及び立体選択性を示す。これは、ほとんど植物P450についての場合である。
多数のP450が自然に、及び特に植物において見いだされる。ある植物ゲノムは、P450についてコードする数百の遺伝子を含みうる。多くの植物P450は、植物において存在する極めて多数のP450を考慮して特徴付けられるが、ほとんどそれらの機能が知られていないままである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Connolly and Hill, Dictionary of terpenoids, 1991, Chapman & Hall, London
【非特許文献2】Pouwels et al., Cloning Vectors: A Laboratory Manual, 1985, Elsevier, New York、及び Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press
【非特許文献3】Schardl et al. Gene 61: 1-11, 1987
【非特許文献4】Zubay, Biochemistry, Addison- Wesley Pub. Co., (1983)
【非特許文献5】Altschul, (J. Mol. Biol. 219:555-65, 1991)
【非特許文献6】Stemmer、DNA shuffling by random fragmentation and reassembly : in vitro recombination for molecular evolution. Proc Natl Acad Sci U S A., 1994, 91(22): 10747-1075
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、新たな酵素反応を触媒化することができ、その結果、新たに酸素化化合物の酵素的製造する新たなP450について、又はより容易に入手できてよい種々の反応タイプを介した、例えば種々の基質から酸素化化合物を製造することについて調査することが所望される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
いくつかのP450は既に特徴付けられている。特に、本発明のシトクロムP450と一定のパーセンテージの配列同一性を有するシトクロムP450は、基質としてテルペン分子を使用することが報告されている。
【0009】
本発明のP450に最も近いP450は、最も近い配列が、本明細書において記載されたアミノ酸配列と67%の同一性を共にするモロコシ(Sorghum biocolor)からのP450(受託番号EER94164)である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシトクロムP450によって製造された酸素化テルペンの中で、いくつかは香料及びフレーバーの分野で非常に有用である。特に、ジザエンのヒドロキシル化によって製造されるクシモル(khusimol)は、ベチバー油の鍵となる成分の1つであり、それ自体価値のある付香成分である。本発明のシトクロムP450を使用するジザエンの酸化は、困難であり高価なプロセスであるベチバーからクシモルを単離するための有利な変法を提供する。我々の知る限り、クシモルの製造のための酵素的プロセスは公知でない。現在まで酵素適合性が公知でない、いくつかの他の価値のある付香成分及びフレーバー成分は、以下に記載されるように、本発明のシトクロムP450を使用して製造されうる。
【0011】
本発明のシトクロムP450によって製造された他の酸素化テルペンは、他の目的、例えば医薬生成物又は農薬生成物のために有用である。従って、本発明のシトクロムP450は、種々の分野の産業において有用な興味深い特性を有し、かつ野生型から単離することが困難またはさらに不可能であり、生物合成によって製造することが困難または不可能である多様な分子に対する新たな生合成経路を開く。
【0012】
本発明の目的は、酸素化テルペン、特にクシモルを、経済的な方法で製造するための方法を提供することである。従って、本発明は、わずかな浪費、より良好なエネルギー効率及び資源効率のプロセス、並びに化石燃料に対する減少した依存性を有する、酸素化テルペンを製造するための目的物を有する。さらに、テルペン分子を酸化できる酵素を提供することが目的であり、かかる酸化生成物は、香料成分及び/又はアロマ成分として有用である。
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細
本発明は、経済的な、信頼性のある、再現のある方法で、テルペンを酵素的に酸化するための方法を提供する。
【0015】
本明細書において意図されているように、本明細書において挙げられた全ての化合物は、図1において示したそれらの式によって定義される。
【0016】
“シトクロムP450”または“シトクロムP450活性を有するポリペプチド”は、テルペン分子の酸化を触媒化して、酸素化化合物、例えばアルコール、アルデヒド、ケトン又はカルボン酸を形成できるポリペプチドとして本発明の目的のために意図される。好ましい一実施態様に従って、シトクロムP450は、ただ1つの酸素原子をテルペン化合物に付加することによってモノオキシゲナーゼとして作用する。ポリペプチドの、特定のテルペンの酸化を触媒する能力は、実施例8において詳述されるように酵素アッセイを実行することによって単純に確認できる。
【0017】
本発明に従って、“ポリペプチド”は、本発明の実施態様のいずれかにおいて定義されたようなそれらのシトクロムP450活性を維持し、かつ配列番号:1又は2の対応するフラグメントと定義されたパーセンテージの同一性を共有する、短縮されたポリペプチドを含むことも意味する。
【0018】
2つのペプチド配列又はヌクレオチド配列の同一性のパーセンテージは、2つの配列のアライメントが生じる場合に2つの配列において同一であるアミノ酸残基又は核酸残基の数の関数である。同一残基は、アライメントの与えられた位置で2つの配列において同一である残基と定義される。配列同一性のパーセンテージは、本明細書において使用されるように、最も短い配列における残基の合計数によって分ける2つの配列間の同一の残基の数をとり、100をかけることによって最適なアライメントから算出される。最適なアライメントは、同一性のパーセンテージが最も高い可能性があるアライメントである。ギャップは、1つ又は双方の配列中に、最適なアライメントを得るためにアライメントの1つ以上の位置で導入される。これらのギャップは、同一でない残基として、配列同一性のパーセンテージの計算のために考慮に入れられる。
【0019】
アミノ酸又は核酸の配列同一性のパーセンテージを測定する目的のためのアライメントは、コンピュータプログラム及び例えばウェブ上で入手できる公的に入手可能なコンピュータプログラムを使用する種々の方法で得られてよい。有利には、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/bl2seq/wblast2.cgiで国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information(NCBI))から入手できるデフォルトパラメータに対するBLASTプログラム(Tatiana et al, FEMS Microbiol Lett., 1999, 174:247−250, 1999)セットは、ペプチド配列又は核酸配列の最適なアライメントを得るため、及び配列同一性のパーセンテージを算出するために使用されてよい。
【0020】
本発明の目的の1つは、配列番号:1又は2に対して少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含み、かつシトクロムP450活性を有するポリペプチドである。
【0021】
好ましい一実施態様において、シトクロムP450活性を有するポリペプチドは、単環式又は多環式のモノテルペン及びセスキテルペンから選択される少なくとも1つのテルペン化合物の酸化を触媒化することができるポリペプチドとして意図される。好ましい一実施態様において、該セスキテルペン又はモノテルペンは、環状部分上に置換基として少なくとも1つのメチル基を含む。より好ましい一実施態様に従って、本発明のシトクロムP450は、該メチル基を酸化して、第一級アルコールを提供する。
【0022】
好ましい一実施態様に従って、テルペン化合物は、ジザエン、アルファ−セドレン(cedrene)、アルファ−ロンギピネン(longipinene)、アルファ−フネブレン(funebrene)、ツジョセン(thujopsene)、バレンセン(valencene)、ベータ−カミグレン(chamigrene)、アロアルマデンドレン(alloaromadendrene)、アルファ−ネオクロベン(neoclovenene)、イソサチベン(isosativene)、レデン(ledene)、s−リモネン(limonene)、アルファ−フムレン(humulene)、アルファ−グルユネン(gurjunene)、アルファ−ピネン(pinene)、ベータ−フネブレン、R−リモネン及びベータ−ピネンからなる群から選択される。より好ましい前記テルペン化合物は、ジザエン、アルファ−セドレン、アルファ−フネブレン、バレンセン及びツジョセンから選択される。最も有利には、前記テルペン化合物はジザエンである。
【0023】
好ましい一実施態様において、1つの酸素原子を、メチル基に付加して、第一級アルコール、アルデヒド及び/又はカルボン酸を提供する。最も好ましい一実施態様において、ジザエンは、クシモル、ジザナール(zizanal)及び/又はジザン酸(zizanoic acid)に酸化される。
【0024】
アルデヒド及び/又はカルボン酸が形成される場合に、該アルデヒド及び/又はカルボン酸は、本発明のP450による、又は他のファミリーからの1つ以上の酵素、例えばアルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドレダクターゼ、アルデヒドオキシダーゼによって、第一級アルコールのさらなる酸化によって形成される。後者の酵素は、例えば、本発明のポリペプチドを発現できる、あらゆる宿主生物又は宿主細胞に存在する。
【0025】
好ましい一実施態様に従って、ポリペプチドは、配列番号:1又は2に対して、少なくとも75%、有利には少なくとも80%、有利には少なくとも85%、有利には少なくとも89%、有利には少なくとも90%、より有利には少なくとも95%、及びさらにより有利には少なくとも98%の同一のアミノ酸配列を含む。より好ましい一実施態様に従って、ポリペプチドは、配列番号:1又は2を含む。さらにより有利には、ポリペプチドは、配列番号:1及び2からなる。
【0026】
本発明の好ましい一実施態様において、配列は、膜アンカー配列も含む。配列番号:1又は2によって示される配列、又は要求された同一性のパーセンテージを有するそれらの誘導体は、P450活性を提供するポリペプチドの一部である。膜アンカー配列は、酵素の触媒活性中で含まれない。アンカー配列は、膜に結合できる。適したアンカー配列は、ペプチドが発現される生物に依存し、かつ一般のタイプの宿主生物について設計された配列は、当業者に公知である。あらゆる適したアンカー配列を、本発明のポリペプチドと組み合わせて使用してよい。従って、好ましい一実施態様に従って、ポリペプチドは、膜アンカー配列と組み合わせて、配列番号:1又は2を含む。
【0027】
より有利には、本発明のポリペプチドは、場合により膜アンカー配列と組み合わせて、配列番号:1又は2からなる。
【0028】
ポリペプチドとアンカー配列とを組み合わせない場合に、かかるポリペプチドは、細胞膜に結合しない。この場合、配列番号:1又は2のポリペプチドは、有利には、細胞質中でのその溶解性を改良するために改質されてよい。
【0029】
他の好ましい実施態様に従って、ポリペプチドは、遺伝子工学によって得られた配列番号:1又は2の変異体であるアミノ酸配列を含む。他の場合、前記ポリペプチドは、配列番号:3、4又はそれらの補体を改質することによって得られるヌクレオチド配列によってコードされたアミノ酸配列を含む。より好ましい実施態様に従って、シトクロムP450活性を有するポリペプチドは、遺伝子工学によって得られた配列番号:1又は2の変異体であるアミノ酸配列、すなわち配列番号:3、4又はそれらの補体のいずれか1つを改質することによって得られるヌクレオチド配列によってコードされたアミノ酸配列からなる。
【0030】
以下に記載されているように、本発明の核酸の天然の又は人工の突然変異によって得られた核酸によってコードされたポリペプチドも、本発明に含まれる。
【0031】
アミノ末端及びカルボキシル末端で追加のペプチド配列の融合から得られるポリペプチド変異体も、本発明のポリペプチドに含まれる。特に、かかる融合は、ポリペプチドの発現を高めることができ、タンパク質の精製において有用であり、ポリペプチドを膜に固定できる方法を改良し、又は所望の環境又は発現システムでポリペプチドの酵素活性を改良する。かかる追加のペプチド配列は、例えばシグナルペプチドであってよい。従って、本発明は、本発明のポリペプチドの変異体、例えば他のオリゴペプチド又はポリペプチドとの融合によって得られたもの、及び/又はシグナルペプチドに連結させたものを含む。他の機能性タンパク質、例えばテルペン生合成経路、有利にはテルペン合成酵素からのタンパク質との融合から得られるポリペプチドも、本発明のポリペプチドに含まれる。ペプチド配列との融合から得られる変異体である本発明のポリペプチドの特に好ましい一例は、本発明のポリペプチド(シトクロムP450活性を有する)とCPRとの双方を含む融合ポリペプチドである。
【0032】
他の実施態様に従って、ポリペプチドは、ベチバー(Vetiveria zizanioides)(L.)Nashから単離される。
【0033】
前記実施態様のいずれかに従ってポリペプチドをコードする核酸は、本発明の目的でもある。
【0034】
好ましい一実施態様に従って、核酸は、配列番号:3、4又はそれらの補体に対して、少なくとも70%、有利には少なくとも75%、有利には少なくとも80%、有利には少なくとも85%、有利には少なくとも90%、有利には少なくとも93%、より有利には少なくとも95%、及びさらにより有利には少なくとも98%の同一のヌクレオチド配列を含む。より好ましい一実施態様に従って、核酸は、配列番号:3、4又はそれらの補体を含む。さらにより好ましい一実施態様に従って、核酸は、場合により膜アンカー配列をコードするヌクレオチド配列と一緒に、配列番号:3、4又はそれらの補体からなる。
【0035】
他の実施態様に従って、核酸は、ベチバー(L.)Nashから単離される。
【0036】
本発明の核酸は、一本鎖形又は二本鎖形(DNA及び/又はRNA)におけるデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドを含むと定義されてよい。“ヌクレオチド配列”の用語は、別々のフラグメントの形で、又はより大きい核酸の成分としてポリヌクレオチド分子又はオリゴヌクレオチド分子を含むとも解されるべきである。本発明の核酸は、実質的に内因性材料を汚染することを有さないものを含むある単離されたヌクレオチド配列も含む。本発明の核酸は短縮されてよいが、但し、前記のように本発明に含まれるポリペプチドをコードする。
【0037】
より好ましい一実施態様に従って、前記実施態様のいずれかに従った少なくとも1つの核酸は、配列番号:3、4又はそれらの補体を改質することによって得られるヌクレオチド配列を含む。有利には、前記核酸配列は、配列番号:3、4又はそれらの補体を改質することによって得られるヌクレオチド配列からなる。
【0038】
配列番号:3、4又はそれらの補体の突然変異によって得られた配列を含む核酸は、本発明に含まれるが、但し、それらを含む配列は、配列番号:3、4又はそれらの補体の対応するフラグメントとの同一性の少なくとも定義されたパーセンテージ共有し、かつそれらは、前記実施態様のいずれかにおいて定義されたように、シトクロムP450活性を有するポリペプチドをコードする。突然変異は、これらの核酸のあらゆる種類の突然変異、例えば点突然変異、挿入突然変異及び/又はフレームシフト突然変異であってよい。変異体核酸は、そのヌクレオチド配列を特定の発現系に適応するために製造されてよい。例えば、細菌発現系は、アミノ酸が好ましいコドンによってコードされる場合に、ポリペプチドをより効率的に発現することが公知である。遺伝子コードの縮重によって、1つ以上のコドンが、同一のアミノ酸をコードできる場合に、多重DNA配列は、同一のポリペプチドについてコードでき、全てのこれらのDNA配列は、本発明に含まれる。
【0039】
本発明は、少なくとも1つのテルペン化合物を酸化するための方法も提供し、該方法は、
a)シトクロムP450レダクターゼ(CPR)の存在で、該テルペン化合物と本発明の少なくとも1つのポリペプチドとを接触する工程、
b)任意に、工程a)において製造された酸化させたテルペンを単離する工程
を含む。
【0040】
本発明のポリペプチドによって酸化されたテルペン化合物及び本発明のポリペプチド自体は、前記実施態様のいずれかに定義されている。
【0041】
前記方法を、さらに詳細に説明されるように、in vitro及びin vivoで実施してよい。
【0042】
前記方法をin vitroで実施する場合に、テルペン化合物と接触されるべき本発明のポリペプチド及びCPRは、標準タンパク質又は酵素抽出技術を使用して、それ発現するあらゆる生物から抽出することによって得られる。宿主生物が単細胞生物又は培地中に本発明のポリペプチドを放出する細胞である場合に、例えば膜アンカーが存在しない場合に、ポリペプチドは、培地から、例えば遠心分離、続いて場合により洗浄工程及び適した緩衝溶液中での再懸濁によって採取されてよい。前記生物又は細胞が、その細胞内でポリペプチドを蓄積する場合に、ポリペプチドは、細胞の破壊又は溶解、及び細胞溶解物からポリペプチドのさらなる抽出によって得られてよい。P450及びCPRが膜アンカー配列、例えば植物における野生型P450及びCPRを含む場合に、それらは、膜に結合され、かつ従って、細胞溶解物の膜分画に位置している。膜分画(ミクロソーム)は、公知の方法を使用する粗細胞溶解物の特異的な遠心分離によって他のタンパク質分画から容易に分離されうる。
【0043】
in vitro法について、本発明のポリペプチド及びCPRは、独立して、単離された形で又はタンパク質抽出物の一部として提供されてよく、かつ至適pHでの緩衝溶液中で懸濁される。適宜、塩、DTT、NADPH、NADH、FAD、FMN及び他の種類の酵素補因子を、酵素活性を最適化するために添加してよい。適した条件は、以下の実施例においてより詳細に記載されている。
【0044】
テルペン化合物を、さらに、懸濁液又は溶液に添加し、そして至適温度、例えば15〜40℃、有利には25〜35℃、より有利には30℃でインキュベートする。インキュベート後に、製造した酸化させたテルペンを、場合により溶液からポリペプチドを取り出した後に、標準単離方法、例えば溶媒抽出及び蒸留によってインキュベートした溶液から単離してよい。
【0045】
CPRは、P450及びテルペン化合物を接触させる間に存在する必要がある。
【0046】
他の好ましい実施態様に従って、テルペン化合物を酸化する方法を、in vivoで実施する。この場合、前記方法の工程a)は、テルペン化合物の酸化を促す条件下で酸化させたテルペン化合物の存在で、本発明の少なくとも1つのポリペプチドを発現するために形質転換させたヒトでない宿主生物又は宿主細胞を培養することを含み、該生物又は細胞は、さらにCPRを発現する。
【0047】
テルペン化合物及びポリペプチドは、本発明のあらゆる実施態様において定義されている。
【0048】
かかるプロセスの一実施態様において、酸化させたテルペン化合物を、本発明のポリペプチドを発現する宿主生物又は宿主細胞によって製造する。この場合、テルペン化合物は、非環式テルペン前駆体からの該テルペン化合物の形成を触媒化することができるテルペン合成酵素によって、宿主生物又は宿主細胞中で製造される。前記テルペン合成酵素を、宿主生物又は宿主細胞によって自然に製造してよく、又は宿主生物又は宿主細胞がかかるテルペン合成酵素を発現しない場合に、発現するために形質転換してよい。
【0049】
代わりの一実施態様において、宿主細胞を使用する場合に、又は宿主生物が微生物である場合に、酸化されるテルペン化合物を、該細胞又は微生物の培地に添加してよい。テルペン化合物は、細胞又は微生物の膜を介して浸透し、従って、該宿主細胞又は宿主微生物によって発現した本発明のポリペプチドとの反応のために利用できる。
【0050】
より好ましい一実施態様に従って、前記方法は、さらに、工程a)の前に、本発明の少なくとも1つの核酸でヒトでない生物又は細胞を形質転換して、該生物又は細胞が本発明の少なくとも1つのポリペプチドを発現する工程を含む。ポリペプチド及び核酸は、前記実施態様のいずれかにおいて定義されている。
【0051】
in vivo方法の実施は、予めポリペプチドを単離することなく前記方法を実施することができるため、特に有利である。前記反応は、形質転換した生物又は細胞内で直接生じて、ポリペプチドを発現する。
【0052】
触媒活性のために、P450は、P450活性を再構成するために、NADPH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート、還元形)から電子をP450活性部位に輸送できるP450レダクターゼ(CPR)と組み合わせて使用されるべきである。CPRは、in vitro及びin vivoでプロセスを実施するために存在すべきである。前記方法をin vivoで実施する場合に、CPRは、宿主生物又は宿主細胞中に天然に存在してよく、又はかかる生物又は細胞を、本発明のポリペプチドを発現するための形質転換前に、形質転換と同時に、又は形質転換後に、CPRを発現するために形質転換してよい。本発明の好ましい一実施態様において、宿主細胞又は宿主生物を、本発明のポリペプチド及びCPRの双方を含む融合ポリペプチドで形質転換する。
【0053】
他の好ましい実施態様において、CPRは植物CPRである。最も有利には、CPRは、シロイスナズナ(Arabidopsis thaliana)に由来する。
【0054】
ヒトでない生物又は細胞は、有利には、非環式テルペン前駆体、ゲラニルピロホスフェート、ファルネシルピロホスフェート又はゲラニルゲラニルピロホスフェートの製造の代謝中で含まれるポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子でさらに形質転換されてよい。かかるポリペプチドは、例えばMEP経路の酵素、MVA経路の酵素、及び/又はプレニルトランスフェラーゼを含む。
【0055】
本発明の実施態様のいずれかにおいて記載された、酸化させたテルペン化合物の存在での、シトクロムP450活性を有するポリペプチドでの及びCPRでの、又は双方を含む融合ポリペプチドでのヒトでない生物又は細胞の形質転換は、テルペンの酸化について実施するために十分である。それにもかかわらず、非環式テルペン前駆体の及び/又はイソペンテニルジホスフェート(IPP)もしくはジメチルアリルジホスフェート(DMAPP)の製造において含まれる少なくとも1つの酵素でのさらなる形質転換は、酸化させるために利用できるテルペン化合物の量を増加する利点を有する。
【0056】
前記生物又は細胞は、ポリペプチドを“発現”することを意味するが、但し該宿主生物又は宿主細胞は、該ポリペプチドをコードする核酸を含むために形質添加され、この核酸は、mRNAに転写され、そしてポリペプチドが、宿主生物又は宿主細胞中で見出される。“発現”の用語は、“非相同発現”及び“過剰発現”を含み、後者は、形質転換していない生物又は細胞中で測定されるものを超える、及びそれより多いmRNA、ポリペプチド及び/又は酵素の活性のレベルをいう。ヒトでない宿主生物又は宿主細胞を形質転換するための適した方法のより詳細な記載は、本発明の特定の目的として、かかる形質転換したヒトでない宿主生物又は宿主細胞について記載された明細書の一部で、及び実施例で以下に記載されている。
【0057】
生物、例えば微生物を形質転換して、それらがテルペン合成酵素を発現するための方法は、当業者に既に公知である。かかる方法は、例えばジザエン合成酵素、すなわちファルネシルピロホスフェートからのジザエンの製造を触媒化することができる酵素で多様な宿主生物及び細胞の形質転換を記載しているWO 2010/134004号において見出せる。
【0058】
本発明をin vivoで実施するために、宿主生物又は宿主細胞を、酸化させたテルペンの製造を促す条件下で培養させる。かかる条件は、宿主生物又は宿主細胞の成長を導くあらゆる条件である。有利には、かかる条件は、宿主生物又は宿主細胞の最適な成長のために設計される。従って、宿主がトランスジェニック植物である場合に、最適な成長条件、例えば最適な光条件、水条件及び栄養条件を提供する。宿主が単細胞生物である場合に、酸化させたテルペンの製造を促す条件は、宿主の培地に適した補因子の添加を含んでよい。さらに、培地は、テルペン酸化を最大化するように選択されてよい。最適な培養条件は、当業者に公知であり、本発明に特有でない。適した条件の例は、次の実施例におけるより詳細な方法において記載されている。
【0059】
本発明のin vivoでの方法を実施するために適したヒトでない宿主生物は、あらゆるヒトでない多細胞又は単細胞生物であってよい。好ましい一実施態様において、本発明をin vivoで実施するために使用されるヒトでない宿主生物は、植物、原核生物又は真菌である。あらゆる植物、原核生物又は真菌を使用できる。特に有用な植物は、多量のテルペンを自然に製造するものである。より好ましい一実施態様において、植物は、ナス科(Solanaceae)、イネ科(Poaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、マメ科(Fabaceae)、アオイ科(Malvaceae)、キク科(Asteraceae)又はシソ科(Lamiaceae)から選択される。例えば、前記植物は、タバコ属(Nicotiana)、ナス属(Solanum)、モロコシ属(Sorghum)、アラビドプシス属(Arabidopsis)、アブラナ属(Brassica)(ナタネ(rape))、ウマゴヤシ属(Medicago)(アルファルファ)、ワタ属(Gossypium)(綿)、ヨモギ属(Artemisia)、サルビア属(Salvia)及びハッカ属(Mentha)から選択される。有利には、前記植物は、タバコ(Nicotiana tabacum)の種に属する。
【0060】
より好ましい一実施態様において、本発明の方法をin vivoで実施するために使用されるヒトでない宿主生物は、微生物である。あらゆる微生物を使用できるが、さらにより好ましい実施態様に従って、該微生物は細菌又は真菌である。有利には、前記真菌は酵母である。最も有利には、前記細菌はE.coliであり、かつ前記酵母は、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)である。
【0061】
これらの生物のいくつかは、自然に酸化されるテルペンを製造しない。本発明の方法を実施するために適切であるために、これらの生物は、前記テルペンを製造するために形質転換される。それらは、前記で説明されているように、前記実施態様のいずれかに従って記載された核酸での形質転換の前、形質転換と同時、又は形質転換後に、形質転換されてよい。
【0062】
単離された高次真核細胞を、完全な生物の代わりに、本発明の方法をin vivoで実施するための宿主としても使用できる。適した真核細胞は、あらゆるヒトでない細胞であってよいが、しかし有利には植物細胞である。
【0063】
本発明の方法をin vivoで実施するために適した宿主生物又は宿主細胞を形質転換するための重要な手段は、本発明のあらゆる実施態様に従った核酸を含む発現ベクターである。かかるベクターは、従って、本発明の目的でもある。
【0064】
本明細書において使用される“発現ベクター”は、制限されることなく、ウィルスベクター、バクテリオファージ及びプラスミドを含む、あらゆる線状又は環状の組換えベクターを含む。当業者は、発現系に従って適したベクターを選択することができる。一実施態様において、発現ベクターは、転写、翻訳、開始及び終止を調節する少なくとも1つの調節配列、例えば転写プロモーター、オペレーター又はエンハンサー、又はmRNAリボソーム結合部位に操作可能に連結され、及び場合により少なくとも1つの選択マーカーを含む本発明の核酸を含む。ヌクレオチド配列は、調節配列が、本発明の核酸に機能的に関連する場合に、“操作可能に連結”される。
【0065】
本発明の発現ベクターは、さらに以下で開示されるように、本発明の核酸を含む宿主生物及び細胞中で、遺伝子的に形質転換された宿主生物及び/又は細胞を製造する方法において、並びに本発明のポリペプチドを製造又は作成するための方法において使用される。
【0066】
本発明のあらゆる実施態様に従って少なくとも1つの核酸を含むために形質転換された、組換えたヒトでない宿主生物及び細胞は、本発明の方法を実施するための非常に有用な手段でもある。かかるヒトでない宿主生物及び細胞は、従って、本発明の他の目的である。好ましい一実施態様において、かかる宿主生物及び細胞は、本発明のあらゆる実施態様に従ってポリペプチドを非相同的に発現又は過剰発現する。
【0067】
好ましい一実施態様に従って、ヒトでない宿主生物又は宿主細胞は、さらに、前記で記載されたように、P450−レダクターゼ(CPR)を発現する。CPRは、宿主生物又は宿主細胞中に天然に存在してよく、又はかかる生物又は細胞を、本発明のポリペプチドを発現するための形質転換前に、形質転換と同時に、又は形質転換後に、CPRを発現するために形質転換してよい。本発明の好ましい一実施態様において、宿主細胞又は宿主生物を、本発明のポリペプチド及びCPRの双方を含む融合ポリペプチドを発現するために形質転換する。
【0068】
他の好ましい一実施態様において、前記生物又は細胞は、酸化されるテルペンを製造することができる。これは、前記生物又は細胞は、前記テルペンの形成を触媒化することができるテルペン合成酵素を発現する場合である。宿主生物又は宿主細胞がかかるテルペン合成酵素を自然に発現しない場合に、P450活性を有するポリペプチドでの形質転換前に、形質転換と同時に、又は形質転換後に、形質転換することができる。
【0069】
ヒトでない生物又は細胞は、有利には、非環式テルペン前駆体、ゲラニルピロホスフェート、ファルネシルピロフォスフェート又はゲラニルゲラニルピロホスフェートの製造の代謝中で含まれるポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子でさらに形質転換されてよい。かかるポリペプチドは、例えばMEP経路の酵素、MVA経路の酵素、及び/又はプレニルトランスフェラーゼを含む。本発明の実施態様のいずれかにおいて記載された、本発明のポリペプチドでの、及びCPRでの、又は双方を含む融合ポリペプチドでの、テルペン化合物を製造することができるヒトでない生物又は細胞の形質転換は、テルペンの酸化について実施するために十分である。それにもかかわらず、非環式テルペン前駆体の及び/又はイソペンテニルジホスフェート(IPP)もしくはジメチルアリルジホスフェート(DMAPP)の製造において含まれる少なくとも1つの酵素でのさらなる形質転換は、酸化させるために利用できるテルペンの量を増加する利点を有する。
【0070】
本発明のヒトでない宿主生物及び細胞のタイプは、テルペン化合物を酸化するための方法のあらゆる実施態様において記載されている。
【0071】
“形質転換させた”の用語は、宿主を遺伝子操作して、前記実施態様のいずれかにおいて要求されたそれぞれの核酸の1つ、2つ又はそれ以上のコピーを含有させたことを意味する。有利には、“形質転換させた”の用語は、形質転換される核酸によってコードしたポリペプチドを非相同的に発現する、及び該ポリペプチドを過剰発現する宿主をいう。従って、一実施態様において、本発明は、形質転換されていない同様の生物よりも高い量でポリペプチドを発現する、形質転換させた生物を提供する。
【0072】
トランスジェニック宿主生物又は宿主細胞、例えば植物、真菌、原生動物、又は高次真核細胞の培養物の製造について、当業者に公知のいくつかの方法がある。細菌、真菌、酵母、植物及び哺乳動物細胞の宿主との使用に適したクローニングベクター及び発現ベクターは、例えば、Pouwels et al., Cloning Vectors: A Laboratory Manual, 1985, Elsevier, New York、及び Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Pressにおいて記載されている。特に高次植物及び/又は植物細胞のためのクローニングベクター及び発現ベクターは、当業者に入手可能である。例えば、Schardl et al. Gene 61: 1−11, 1987を参照。
【0073】
宿主生物又は宿主細胞を形質転換してトランスジェニック核酸を有するための方法は、当業者によく知られている。トランスジェニック植物の製造のために、例えば現在の方法は以下を含む:植物プロトプラストのエレクトロポレーション、リポソーム媒介形質転換、アグロバクテリウム媒介形質転換、ポリエチレングリコール媒介形質転換、微粒子銃、植物細胞のマイクロインジェクション、及びウィルスを使用する形質転換。
【0074】
一実施態様において、形質転換したDNAは、ヒトでない宿主生物及び細胞のクロモソーム中に組込んで、安定な組換えシステムをもたらす。当業者に公知のあらゆるクロモソーム組込み方法は、制限されることなく、レコンビナーゼ媒介カセット変換(RMCE)、ウィルス部位特異的クロモソーム挿入、アデノウィルス及び前核の注入を含む、本発明の実施において使用されてよい。
【0075】
本明細書において前記されているように、in vitroでテルペン化合物を酸化するための方法を実施するために、本発明のポリペプチドを製造する方法を提供することが非常に有利である。従って、本発明は、
a)本発明による少なくとも1つの核酸を含み、かつ本発明の少なくとも1つのポリペプチドを発現又は過剰発現するために形質転換させたヒトでない宿主生物又は宿主細胞を培養すること、
b)工程a)において培養したヒトでない宿主生物又は宿主細胞から本発明のポリペプチドを単離すること
を含む、本発明のポリペプチドを製造するための方法を提供する。
【0076】
好ましい一実施態様に従って、前記方法は、さらに、工程a)の前に、本発明による少なくとも1つの核酸でヒトでない宿主生物又は宿主細胞を形質転換して、本発明によるポリペプチドを発現又は過剰発現する工程を含む。
【0077】
ヒトでない宿主生物又は宿主細胞の形質転換及び培養を、in vivoで酸化させたテルペンを製造する方法について前記で記載されたように実施してよい。工程b)を、当業者に公知のあらゆる技術を使用して、生物又は細胞から特定のポリペプチドを単離するために実施してよい。
【0078】
本明細書において言われる“ポリペプチド変異体”は、式(I)のテルペン化合物の酸化を触媒化でき、かつ前記実施態様のいずれかに従って配列同一性の十分なパーセンテージを有するポリペプチドを意味する。かかる変異体ポリペプチドは、1つ以上の欠失、挿入又は置換を受ける核酸配列によってコードされる。
【0079】
変異体は、保存的に置換された配列を含んでよく、得られたアミノ酸残基が、同様の物理化学的特徴を有する残基によって置換されることを意味する。保存的置換の例は、他の残基についてある脂肪族置換基への、例えば他のものからIIe、Val、Leu又はAlaへの置換、又は他の残基について極性残基への、例えばLysとArgとの、GluとAspとの、又はGinとAsnとの置換を含む。Zubay, Biochemistry, Addison− Wesley Pub. Co., (1983)を参照。かかる置換の効果は、置換スコアマトリックス、例えばAltschul, (J. Mol. Biol. 219:555−65, 1991)において開示されているようなPAM−120、PAM−200、及びPAM−250を使用して算出されうる。他のかかる保存的置換、例えば同様の疎水特性を有する全体領域の置換がよく知られている。本発明のポリペプチドは、より多様な変異体を生じるために、保存的でない置換を受けてもよいが、但しかかる変異体は、所望されたシトクロムP450活性を保持する。変異体は、変異体ポリペプチドについてコードする核酸配列中に、ヌクレオチドを欠失及び挿入することによっても製造できる。
【0080】
本発明のポリペプチドの変異体を、例えば所望された、高められたもしくは低減させた酵素活性、改質した位置化学もしくは立体化学、又は変更させた基質利用もしくは生成物分布、基質についての高められたアフィニティー、1つ以上の所望の化合物の製造のための改良された特異性、酵素反応の高められた速さ、特定の環境(pH、温度、溶媒等)におけるより高い活性もしくは安定性、又は所望の発現系における改良された発現レベルを得るために使用してよい。変異体又は部位特異的突然変異は、当業者に公知のあらゆる方法によって製造されてよい。野生型のポリペプチドの変異体及び誘導体は、他の又は同一の系列もしくは種の自然に生じる変異体又は変異体のヌクレオチドを単離することによって、又は本発明のポリペプチドについてコードするヌクレオチド配列の人工的にプログラムした突然変異によって得られてよい。野生型のアミノ酸配列の改変を、多数の通常の方法のいずれかによって行ってよい。
【0081】
本発明のポリペプチドのアミノ末端及びカルボキシル末端での追加のペプチド配列の融合から得られるポリペプチド変異体は、ポリペプチドの発現を高めるために使用されてよく、タンパク質の精製において有用であってよく、又は所望の環境もしくは発現系におけるポリペプチドの酵素活性を改良してよい。かかる追加のペプチド配列は、例えばシグナルペプチドであってよい。従って、本発明は、本発明のポリペプチドの変異体、例えば他のオリゴペプチド又はポリペプチドとの融合によって得られたもの、及び/又はシグナルペプチドに連結させたものを含む。
【0082】
従って、一実施態様において、本発明は、テルペン化合物の酸化を触媒化することができる変異体ポリペプチドを製造するための方法を提供し、該方法は、
(a)前記実施態様のいずれかに従って核酸を選択する工程、
(b)選択した核酸を改質して、少なくとも1つの突然変異体核酸を得る工程、
(c)宿主細胞又は単細胞生物を突然変異体核酸で形質転換して、突然変異体核酸配列によってコードされたポリペプチドを発現する工程、
(d)少なくとも1つの改質されたシトクロムP450活性についてポリペプチドをスクリーニングする工程、
(e)任意に、ポリペプチドが所望の変異体シトクロムP450活性を有さない場合に、プロセス工程(a)〜(d)を、所望の変異体シトクロムP450活性を有するポリペプチドが得られるまで繰り返す工程、
(f)任意に、所望の変異体シトクロムP450活性を有するポリペプチドが、工程(d)において同定された場合に、工程(c)において得られた対応する突然変異体核酸を単離する工程
を含む。
【0083】
工程(b)において、多数の突然変異核酸配列を、例えばランダム突然変異、部位特異的突然変異、又はDNAシャッフリングによって製造してよい。遺伝子シャッフリングの詳細な手法は、Stemmer、DNA shuffling by random fragmentation and reassembly : in vitro recombination for molecular evolution. Proc Natl Acad Sci U S A., 1994, 91(22): 10747−1075において見いだせる。要するに、DNAシャッフリングは、組換えのために選択された少なくとも2つの核酸を含む、in vitroでの公知の配列のランダム組換えのプロセスを言う。例えば、突然変異は、野生型配列のフラグメントにライゲーションできる制限部位に置かれる突然変異配列を含むオリゴヌクレオチドを合成することによって特定の座で導入されてよい。ライゲーションに続いて、得られた再構築した配列が、所望のアミノ酸の挿入、置換又は欠失を有する類似体をコードされる。代わりに、オリゴヌクレオチド指定部位特異的突然変異法を実施して、予め決定したコドンを置換、欠失又は挿入によって改変できる、改変した遺伝子を提供してよい。
【0084】
従って、配列番号:3、4又はそれらの補体を含むポリペプチドをコードする核酸を、シトクロムP450をコードするあらゆる他の核酸で組換えてよく、例えばベチバー(L.)Nashを除いた生物から単離される。従って、例えば本発明の実施例において開示されているような標準法に従って宿主細胞を形質転換するためにしようされてよい突然変異核酸が得られてよく、かつ分離されてよい。
【0085】
工程(d)において、工程(c)において得られたポリペプチドを、少なくとも1つの改質されたシトクロムP450活性についてスクリーニングする。発現させたポリペプチドをスクリーニングしてよい所望の改質されたシトクロムP450活性の例は、KM値又はVmax値によって測定されてよい高められた又は低減された酵素活性、改質された位置化学又は立体化学、及び改変された基質利用率又は生成物分布を含む。酵素活性のスクリーニングを、当業者によく知られている方法及び本発明の実施例において開示されている方法に従って実施してよい。
【0086】
工程(e)は、プロセス工程(a)〜(d)の繰り返しを提供し、有利には並行して実施してよい。従って、著しい数の突然変異核酸を製造するために、多くの宿主細胞は、高められた数のポリペプチドの続くスクリーニングを可能にする、同時の種々の突然変異核酸で形質転換してよい。所望の変異体ポリペプチドを得る機会は、従って、当業者の自由で増加させてよい。
【0087】
本明細書において挙げられた全ての文献は、挙げられた文献に関連する方法及び/又は材料を開示及び記載する参照をもって本明細書に組込まれたものとする。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】挙げられた化合物の構造を示す図。
図2】定義したテルペンヒドロキシラーゼ活性(先行技術)を有する選択したP450モノオキシゲナーゼのアミノ酸配列のアライメントを示す図。全てのP450酵素において見出された観察された領域に下線を引く。テルペンヒドロキシラーゼ特異性オリゴヌクレオチドを設計するために使用された6つの領域に矢印で下線を引く。矢印の方向は、オリゴヌクレオチドの配向を示す。
図3】E.coliにおける改良された非相同発現のために2つのベチバーP450において導入されたN−末端(膜アンカー)改質を示す図。
図4】VzP521−11組換えタンパク質で得られた代表的なCO−示差スペクトルを示す図。
図5】2シストロン性構造におけるP450とCPRとの間のスペーサー領域の配列を示す図。P450の終わりでの、及びCPRの開始でのDNA及びアミノ酸配列を示す。
図6】ベチバーP450 VzP521−16及びアラビドプシス属からのCPR(tcATR1)を発現するE.coliでの(+)−ジザエンの生物変換のGCMS分析を示す図。A. 合計イオンクロマトグラム。B. 基質(1)、及び対応する化合物の同一性及び構造を有する生成物(2〜4)の質量スペクトル。
図7】ジザエンの酵素的酸化の連続工程を示す図。
図8】ベチバーP450によるいくつかのテルペン分子の生物変換のGCMS分析の合計イオンクロマトグラムを示す図。基質に対応するピークを示し、生成物の分子量を示す。
図9】生成物を同定したいくつかのテルペン分子のベチバーP450による生物変換を示す図。
図10】ベチバーP450、CPR及びジザエン合成酵素のE.coliにおける同時発現のために設計された人工オペロンの構造を示す図。
図11】非相同メバロン酸経路を使用するFPPの製造のための酵素と一緒に、(+)−ジザエン合成酵素、ベチバーP450 VzP521−16−1及びアラビドプシス属CPRを発現するE.coli細胞によって製造されたセスキテルペンのGCMS分析の合計イオンクロマトグラムを示す図。
【実施例】
【0089】
本発明を、次の実施例の方法によってさらに詳細に記載する。
【0090】
実施例1
RNA抽出及びcDNAライブラリー構築
ベチバー(Vetiveria zizanioides (L.) Nash)植物を、苗床(The Austral Plants Company, Les Avirons, The Reunion Island, France)から得た。植物を、温室(Lullier Agronomy research Station, Geneva, Switzerland)においてポットで栽培し、そして6ヶ月から1年の茂みを分けることによって栄養繁殖した。根の収穫のために、植物を、ポットから取り出し、そして水道水で洗った。
【0091】
RNAの抽出のために、いくつかの植物からの根を刈り取った:若い植物(繁殖後4〜6ヶ月)、よく発達した密な根系を有する年数を経た植物(繁殖後1〜2年)、及びポットから取り出して24〜36時間後の室温で乾燥した若い植物。その根を、植物の気部から切断し、液体窒素で凍結した。その根を、最初に、ワーリングブレンダー(Waring Blendor (Waring Laboratory, Torrington, USA))を使用して液体窒素中で大まかに切り刻み、そして乳鉢及び乳棒を使用して微粉まで研磨した。合計RNAを、Kolosova et al (Kolosova N, Miller B, Ralph S, Ellis BE, Douglas C, Ritland K, and Bohlmann J, Isolation of high−quality RNA from gymnosperm and angiosperm trees. J. Biotechniques, 36(5), 821−4, 2004)において記載された方法に従って抽出し、続いて改質した。抽出緩衝液の20mlの容量を、研磨した組織の2グラムについて使用し、そして抽出緩衝液を、PVP(ポリビニルピロリドン、Sigma−Aldrich)の2%(w/v)で懸濁した。CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド、Sigma−Aldrich)抽出のために、核酸ペレットを、2mlのTE緩衝液(10mM Tris−HCl、pH8、1mM EDTA)中で再懸濁し、そして抽出を2mlの5M NaCl及び1mlの10% CTABで実施した。イソプロパノール沈澱のために、核酸ペレットを500μlのTE中で溶解した。最終RNAペレットを50μlの水で再懸濁した。
【0092】
アダプター連結二重鎖cDNAライブラリーを、1μgのmRNAから、MarathonTM cDNA増幅キット(Clontech, Takara Bio Europe)を使用して、製造者のプロトコルに従って製造した。
【0093】
実施例2
P450特異性オリゴヌクレオチドの設計
テルペンヒドロキシラーゼ活性を有する植物P450についてオリゴヌクレオチドの設計特異性を設計するために、P450をヒドロキシル化する公知のテルペンからのアミノ酸配列を選択した:スペアミントからのリモネン6−ヒドロキシラーゼ(GenBank受託番号AAD44150)、ペパーミントからの2つのリモネン3−ヒドロキシラーゼ(GenBank受託番号AAD44152及びAAD44151)、タバコからのエピ−アリストロチェンヒドロキシラーゼ(Genbank受託番号AAK62343)、ヒヨシアムス・ムチクス(Hyoscyamus muticus)からのプレムナスピロジエノキシゲナーゼ(GenBank受託番号ABS00393)、スコッチスペアミントからの2つのリモネンヒドロキシラーゼ(Genbank受託番号AAQ18707及びAAQ18708)、タバコからのジテルペンヒドロキシラーゼ(Genbank受託番号AAD47832)並びにCYP71D科からの2つの種類、ジャガイモからのCyp71D4(Genbank受託番号CAC24711)及びチャコポテト(chaco potato)からのCYP71D6(Genbank受託番号P93530)。その配列を、ClustalWプログラム(Thompson, J.D., Higgins, D.G. and Gibson, T.J. (1994); CLUSTAL W: improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting, position specific gap penalties and weight matrix choice; Nucleic Acids Res. 22, 4673−4680)で整列させた。アライメントを図2において示す。
【0094】
相同のP450 cDNAのフラグメントのPCR増幅のために使用されるオリゴヌクレオチドを設計するために、保存領域をこのアライメント中で選択した。パラメータ、例えば全ての配列にわたるアミノ酸の保存及び低いコドン縮重を有するアミノ酸の存在率を、これらの領域の選択で検討した。さらに、植物ゲノムが多くの異なる代謝で含まれる多数のP450を含むため、全てのP450に共通する機能に関する領域を故意に避けた。これらの領域は、例えば、そのチオレート側鎖によってヘム鉄を共有結合する完全な保存システイン残基に隣接のヘム結合ドメイン(本アライメントにおけるPFGxGRRICPGモチーフ)、いわゆる、レドックスパートナータンパク質との相互反応で及びヘムタンパク質関連の安定化においておそらく含まれる‘メアンダー’(本アライメントにおけるFxPERFモチーフ)、及びヘムの末端鎖上で活性部位(モチーフ)に位置し、プロトン輸送及び酸素活性において含まれるIヘリックス領域((A/G)GTETSS)を含んだ。そして、植物テルペンモノオキシゲナーゼの特徴を推定する6つの保存された領域を選択した(図1において矢印で下線を引いた)。
【0095】
3’縮重コア及び5%コンセンサスクランプを含むハイブリッドプライマーを、コンセンサス縮重ハイブリッドオリゴヌクレオチドプライマー(Consensus−Degenerated Hybrid Oligonucleotide Primers (CODEHOP))ストラテジー(Rose T.M., Schultz E.R., Henikoff J.G, Pietrokovski S., McCallum CM., and Nenikoff S.; 1998; Consensus−degenerated hybrid oligonucleotide primers for amplification of distantly related sequences; Nucleic Acids Research 26(7), 1628−1635)に従って、及びhttp://blocks.fhcrc.org/blocks/codehop.htmlで入手できるコンピュータプログラムのオンラインインターフェースを使用して、これらの領域から設計した。オリゴヌクレオチドを設計して、192の最大縮重度及び60〜64℃のアニーリング温度を有する11〜15塩基の縮重したコアを有した。このアプローチを使用して、3つのセンスプライマー(P450−Terp−F1〜F3(配列番号:5〜7))及び4つのアンチセンスプライマー(P450−Terp−R1〜R4(配列番号:8〜11)を、図1(表1)において示した6つの保存させた領域から設計した。
【0096】
表1. テルペンヒドロキシラーゼ特異性オリゴヌクレオチド。それぞれのプライマーの縮重させたコアの配列は、より下の場合に示され、コンセンサスクランプはより上の場合に示される。ヌクレオチド配列は、順方向プライマーについて5’から3’末端を、逆方向プライマーについて3’から5’末端で示される。ヌクレオチド配列における縮重は、IUPACのある文字コードを使用して示される。
【0097】
【表1】
【0098】
実施例3
ベチバーP450 cDNAのPCR増幅
実施例2において記載されたプライマーを、ベチバーcDNAライブラリーから、P450 cDNAフラグメントのPCRによる増幅のために使用した。PCRを、Advantage(登録商標)2 Polymerase Mix(Clontech、Takara Bio Europe)を使用して実施した。それぞれのPCR混合物は、50μLの合計容量で、5μLのAdvantage(登録商標)2 PCR Buffer、200μMのdNTP、200nMのそれぞれのオリゴヌクレオチドプライマー、5μLの200倍希釈cDNA、1μLのAdvantage(登録商標)2 Polymerase Mixを含んだ。次の条件を、増幅のために使用した:
− 94℃で3分の変性
− 以下
・94℃で1分の変性
・最初のサイクルについて65℃で、及びそれぞれ次のサイクルで64℃で1分のアニーリング
・72℃で2分の伸長
を15サイクル
− 以下
・94℃で1分の変性
・58℃で1分のアニーリング
・72℃で2分の伸長
を20サイクル
− 最終的に72℃で10分の伸長。
【0099】
種々のPCRを、テルペンヒドロキシラーゼ特異性のセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの可能な組合せで実施した。期待したサイズを有するアンプリコンを、TOPO TAクローニングキット(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用してpCR(登録商標)2.1−TOPOベクター中にクローンし、挿入をDNA配列に受けさせ、そしてその配列を、BLASTXアルゴリズム(Altschul, S.F., Gish, W., Miller, W., Myers, E.W., and Lipman, DJ. (1990) J. Mol. Biol. 215, 403−410)を使用するGenBank非重複タンパク質データベース(NCBI)に対して比較した。
【0100】
プライマーのいくつかの組合せ(P450−terp−F1(配列番号:5)とP450−terp−R2(配列番号:9)、P450−terp−F3(配列番号:7)とP450−terp−R3(配列番号:10)、及びP450−terp−F1(配列番号:5)とP450−terp−R4(配列番号:11))は、期待したサイズを有し、かつP450活性に対して相同性を示すDNAフラグメントを提供した。特徴化されたテルペンモノオキシゲナーゼと相同性を示すフラグメントのみが、保持された(配列決定されたフラグメントの約50%)。選択したDNA配列を、整列し、そして1167−bpコンセンサスDNA配列(CA521(配列番号:12)を推定した。CA521から推定したアミノ酸配列は、公知の植物テルペンモノオキシゲナーゼと45%高い同一性を示した。
【0101】
完全長配列を、cDNA末端の迅速増幅(RACE)の技術で得た。MarathonTM cDNA Amplification Kit(Clontech、Takara Bio Europe)を全てのRACE実験のために使用した。典型的なRACE反応混合物は、50μlの最終容量で、5μlのAdvantage(登録商標)2 PCR Buffer(Clontech、Takara Bio Europe)、200μMのそれぞれのdNTP、1μlのAdvantage(登録商標)2 Polymerase Mix(Clontech、Takara Bio Europe)、200μMのアダプター特異的プライマー、200μMのcDNA特異的プライマー、及び5μlの200倍希釈したアダプター結合ベチバー根cDNAを含む。増幅を、Eppendorf Mastercycler Gradiant thermal cyclerで実施した。熱サイクル条件は以下であった:94℃で1分、94℃で30秒及び72℃で3分を5サイクル、94℃で30秒及び70℃で3分を5サイクル、94℃で30秒及び68℃で3分を20サイクル。適宜、増幅の二回目を、ネストオリゴヌクレオチドを使用して実施した。期待したサイズを有するアンプリコンを、pCR(登録商標)2.1−TOPOベクター(Invitrogen、Carlsbad、CA)中にクローンし、そして挿入をDNA配列に受けさせ、そしてその配列を、BLASTXアルゴリズム(Altschul, S.F., Gish, W., Miller, W., Myers, E.W., and Lipman, D.J. (1990) J. Mol. Biol. 215, 403−410)を使用するGenBank非重複タンパク質データベース(NCBI)に対して比較した。
【0102】
CA−521末端の増幅のために、センスオリゴヌクレオチド及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを、PCRを生じるDNAフラグメントから推定し、そして3’RACE及び5’RACE:CA521−F1(配列番号:13)、CA521−F2(配列番号:14)、CA521−R1(配列番号:15)及びCA521−R2(配列番号:16)において使用した。センスオリゴヌクレオチドを使用して、CA521フラグメントと176個の同一の残基のオーバーラップを有する、500bpフラグメント(CA635(配列番号:17))を得た。このCA635フラグメントは、終止コドンを含む追加の138bpコード領域、続いて3’の翻訳されていない領域を含んだ。5’RACEは、5’末端で欠測243bpコード領域を含む426bpフラグメント(CA884(配列番号:18))を提供した。
【0103】
オリゴヌクレオチドを、再構築された完全長配列の開始領域及び終止領域、CA521−開始(配列番号:19)、CA521−終止(配列番号:20)から設計し、完全長cDNAの増幅のためのプライマーとして使用した。この増幅を、Pfu DNAポリメラーゼ(Promega、Madison、WI、USA)を使用して、5μlのPfu DNAポリメラーゼ10X緩衝液、200μMのそれぞれのdNTP、0.4μMのそれぞれのプライマー、2.9単位のPfu DNAポリメラーゼ及び2.5μlの200倍希釈したベチバーcDNAを含む50μlの最終容量で、実施した。熱サイクル条件は以下であった:95℃で1.5分;95℃で45秒及び64℃で30秒及び72℃で4分を30サイクル;並びに72℃で10分。PCR生成物を、TOPO TAクローニングキット(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用してpCR(登録商標)2.1−TOPOベクター中にクローンし、DNA配列を調整した。いくつかのクローンの配列から、93%の配列同一性を有する2つの別個のDNA配列(VzP521−11(配列番号:21)及びVzP521−16(配列番号:22))を保持した。それぞれ513及び514残基から構成される推定されたアミノ酸配列は、89%の同一性を有した。配列データベースにおいて最も近い適合を有するVzP521−11(配列番号:23)及びVzP521−16(配列番号:24)のアミノ酸配列の同一性を以下に挙げる。
【0104】
【表2】
【0105】
最も近い一般に入手でき、かつ機能的に特徴化されたタンパク質とのアミノ酸配列同一性を以下の表において挙げる:
【表3】
【0106】
ポリペプチドVzP521−11(配列番号:23)及びVzP521−16(配列番号:24)は、膜アンカーである部分及び触媒化P450活性の原因である活性領域を含む。VZP521−11及びVzP521−16の活性部位を、それぞれ配列番号:1及び2において示す。これらの活性配列についてコードする核酸配列を、それぞれ配列番号:3及び4において示す。
【0107】
実施例4
細菌におけるベチバーP450の非相同発現
真核生物P450モノオキシゲナーゼにおいて、タンパク質のN末端配列は、これらの酵素の膜局在化のために必須な膜アンカーを構成する。プロリンが豊富な領域(521−11(配列番号:23)及び521−16(配列番号:24)におけるPPGP)によって範囲を設定されたタンパク質のこの部分は、酵素活性の特異性の調整に必須ではない。従って、この領域は、触媒活性に対して効果を有さない、欠失、挿入又は突然変異によって改質されてよい。しかしながら、植物P450を含む、真核生物P450のN末端領域の特異的改質は、微生物において発現させる場合に、検出された組換えタンパク質のレベルに対してポジティブな効果を有することが示されている(Halkier et al (1995) Arch. Biochem. Biophys. 322, 369−377; Haudenschield et al (2000) Arch. Biochem. Biophys. 379, 127−136)。従って、これらの以前の観察に基づいて、P450の膜アンカー領域VzP521−11及びVzP521−16を、再設計して、図3において示した改質を導入した。
【0108】
改質したcDNAを以下のようにPCRによって得た。膜アンカータンパク質に対応する最初のフラグメントをプライマーPfus−NdeI(配列番号:25)及び鋳型として521_fus_r(配列番号:26)(プラスミドP2−2−48(Haudenschield et al (2000) Arch. Biochem. Biophys. 379, 127−136)と)を使用して増幅した。2つの他のフラグメントを、プライマー521−fus−f(配列番号:27)及び521−Hind(配列番号:28)、並びに鋳型としてVzP521−11(配列番号:21)又はVzP521−16(配列番号:22)cDNAを使用して増幅させた。PCRの二回目を、鋳型として最初のPCR生成物、及び2つの後者のPCR生成物のいずれか、並びにプライマーとしてPfus−NdeI(配列番号:25)及び521−Hind(配列番号:28)を使用して実施した。全てのPCRを、Pfu DNAポリメラーゼ(Promega、Madison、WI、USA)で、5μlのPfu DNAポリメラーゼ10X緩衝液、200μMのそれぞれのdNTP、0.4μMのそれぞれのプライマー、2.9単位のPfu DNAポリメラーゼ及び2.5μlの200倍希釈したベチバーcDNAを含む50μlの最終容量で、実施した。熱サイクル条件は以下であった:95℃で1.5分;95℃で45秒及び64℃で30秒及び72℃で4分を30サイクル;並びに72℃で10分の最終工程。2つのPCR生成物、VzP521−11−1(配列番号:37)及びVzP521−16−1(配列番号:38)を、NdeI及びHindIII制限酵素で消化し、そしてそれぞれN末端で改質されたVzP521−11及びVzP521−16 P450(VzP521−11−1(配列番号:35)及びVzP521−16−1(配列番号:36)アミノ酸配列)を含む、プラスミドpCW−218−521−11及びpCW−218−521−16を提供するpCWori発現プラスミド(Barnes H.J (1996) Method Enzymol. 272, 3−14)中に連結した。
【0109】
非相同発現のために、JM109 E.coli細胞を、218−521−11又は218−521−16発現プラスミドで形質転換させる。形質転換体の単コロニーを使用して、50μg/mLのアンピシリンを含む5mLのLB培地に培養物を植えた。細胞を、10〜12時間37℃で育てる。そして、培養物を使用して、50μg/mLのアンピシリン及び1mMチアミンHCLを補った250mLのTB培地(Terrific Broth)に植えた。その培養物を、28℃で3〜4時間、穏やかな撹拌(200rpm)でインキュベートし、75mg/Lのδ−アミノレブリン酸(sigma)及び1mMのIPTG(イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド)を添加し、そしてその培養物を、28℃で24〜48時間200rpmの撹拌で維持した。
【0110】
P450酵素の発現を、E.coliタンパク質画分中でCO結合スペクトル(Omura, T. & Sato, R. (1964) /. Biol. Chem. 239, 2379−2387)を測定することによって、質的に及び量的に評価できる。タンパク質抽出のために、細胞を遠心分離(10分、5000g、4℃)し、そして35mLの氷冷緩衝液1(100mM トリス−HCl pH7.5、20%グリセロール、0.5mM EDTA)中で再懸濁した。水中で、0.3mg/mlのリゾチーム(鶏の卵白から、Sigma−Aldrich)のある容量を添加し、その懸濁液を、撹拌しながら10〜15分4℃で置いた。その懸濁液を、10分7000gで遠心分離し、そしてそのペレットを20mLの緩衝液2(25mM KPO4 pH7.4、0.1mM EDTA、0.1mM DTT、20%グリセロール)中で再懸濁した。その懸濁液を、−80℃で1サイクルの凍結融解を受けさせ、0.5mM PMSF(フェニルメチルスルホニルフルオリド、Sigma−Aldrich)を添加し、そしてその懸濁液を3回、20分間超音波破砕させた。その懸濁液を、10分10000gで(細胞の残骸を取り除くために)遠心分離し、そしてその上澄みを回収し、2時間100000gで遠心分離した。そのペレット(膜タンパク質画分)を、2〜3mlの緩衝液3(50mM トリス−HCl pH7.4、1mM EDTA、20%グリセロール)中で再懸濁した。COスペクトルを測定するために、そのタンパク質画分を、2mLの最終容量まで緩衝液3で希釈(1/10)した。亜ジチオン酸ナトリウム(Na224)のいくつかの結晶を添加し、その試料を、2つのキュベットに分け、そして基準線を370〜500nmで記録した。そして試料キュベットを、一酸化炭素で飽和させ、そして種々のスペクトルを記録した。P450酵素の濃度を、91mM-1・cm-1の減少したCO複合体についての伸長率(Omura, T. & Sato, R. (1964) J. Biol. Chem. 239, 2379−2387)を使用して、450nmでのピークの幅から評価できる。
【0111】
この方法に従って、450nmでの最大吸光度を有する典型的なCOスペクトルを、P450酵素への固有の折りたたみについて証明する、組換えVzP521−11−1(配列番号:35)及びVzP521−16−1(配列番号:36)タンパク質について測定した(図4)。
【0112】
実施例5
細菌における植物P450レダクターゼの非相同発現
植物P450の活性を再構築するために、第二の膜タンパク質の存在が必須である。このタンパク質、P450レダクターゼ(CPR)は、NADPH(ニコチンアデニンジヌクレオチドホスフェート、還元形)からの電子のP450活性部位への輸送中に含まれる。ある植物からのCPRは、他の植物からのP450酵素の活性を補うことができることが示されている(Jensen and Moller (2010) Phytochemsitry 71, 132−141)。
【0113】
いくつかのCPRコードヌクレオチド配列は、種々の植物源から報告されている。例えば、2つの別個のCPR、ATR1及びATR2(NCBI受託番号CAA46814.1及びCAA46815)は、シロイスナズナにおいて同定されている(Urban et al (1997) /. Biol. Chem. 272(31) 19176−19186)。これらのCPRは、種々の植物種からのいくつかのP450酵素を補うことが示されている。短縮された形のATR1(17個のN−末端アミノ酸欠失)についてコードするcDNA(配列tcATR1−opt(配列番号:29)を、E.coliでの発現のために最適なコドン使用頻度(DNA 2.0、Menlo Park、CA、USA)を使用し合成し、かつそれぞれ5’末端及び3’末端でNcoI及びBamHI制限酵素を含んだ。このcDNAを、プラスミドpJ206−tcATR1−optを提供するpJ206プラスミド(DNA 2.0、Menlo Park、CA、USA)中に連結した。その挿入物を、pJ206−tcATR1−optプラスミドからNcoI及びBamHI制限酵素で消化し、そしてプラスミドpACYC−tcATR1−optを提供するpACYCDuet−1発現プラスミド(Novagen、Merck Chemicals)の対応する制限部位を連結した。E.coli細胞におけるCPRの機能的発現を、シトクロムCの酵素還元に従って評価できる。プラスミドpACYC−tcATR1−optを使用して、B121(DE3)(Novagen)又はJM109(DE3)(Promega、Madisson、WI、USA)E.coli細胞を形質転換した。培養条件、タンパク質発現及び細胞を有さないタンパク質製造を、実施例4において記載したように行った。そのタンパク質を、5μMのFAD、5μMのFMN、40mMシトクロムC(sigma−Aldrich)、1mM MgCl2で懸濁した1mLのトリス pH7.4で希釈した。反応を、0.12mmolのNADPH(Sigma)の添加により開始した。シトクロムCの還元を、0.5〜2分にわたってOD550nmの増加を測定することによって記録した。レダクターゼ特異的活性(mUnits/μLで)を、次の式:(OD最終−OD開始)/21/時間(秒)/容量(μL)X60000(mUnits/μLで)を使用して算出した。組換えATR1で測定した典型的な活性は、7〜10mUnits/mLの範囲であった。
【0114】
実施例6
2つのプラスミドを使用するP450及びP450レダクターゼの同時発現
植物P450を使用する細胞全体の生体内変化のために、単一の宿主細胞におけるP450及びCPRタンパク質の同時発現を要求する。この同時発現を、2つのプラスミドを使用して得ることができる。例えばBL21 StarTM(DE3) E.coli細胞(Invitrogen、Carlsbad、CA)を、プラスミドpACYC−tcATR1−opt及びプラスミドpCW−218−521−11又はpCW−218−521−16で同時形質転換させた。形質転換させた細胞を、カルベニシリン(50μg/ml)及びクロラムフェニコール(34μg/ml)LBアガロースプレート上で選択した。単コロニーを使用して、同一の抗生物質で補った5mLの液体LB培地をインキュベートした。その培養物を37℃で一昼夜インキュベートした。翌日、同一の抗生物質で補った2〜250mLのTB培地及び1mMチアミンHCLを一昼夜培養物の0.2mLに植えた。37℃での培養の6時間後に、その培養物を28℃まで冷却させ、そして1mMのIPTG及び75mg/Lのδ−アミノレブリン酸を添加した。その培養を24〜36時間維持した。タンパク質分画を、実施例4において記載したように製造し、組換えP450及びCPRの発現を、それぞれ実施例4及び5において記載した手法を使用して評価した。
【0115】
実施例7
1つのプラスミドを使用するP450及びP450レダクターゼの同時発現
ベチバーP450についてエンコードするcDNA及びCPRについてコードするcDNAを含む2シストロン性構成物を有する発現プラスミドを製造した。その構成物を、2つのコード領域間に、リボソーム結合部位(RBS)を含むスペーサー配列を挿入するために設計した。
【0116】
E.coli至適コドン使用頻度(DNA 2.0、Menlo Park、CA、USA)で合成したtcATR1−opt cDNA(配列番号:29)を、開始コドン、スペーサー配列(配列番号:30)及びRBS配列を含む30bp 伸長の前に、5’末端に付加して改質した。tcATR1−opt cDNAを、2390−CPR−F2(配列番号:31)及び2390−CPR−R2b(配列番号:32)を使用して、Pfu DNAポリメラーゼ(Promega、Madison、WI、USA)を使用して、5μlのPfu DNAポリメラーゼ10X緩衝液、200μMのそれぞれのdNTP、0.4μMのそれぞれのプライマー、2.9単位のPfu DNAポリメラーゼ及び2.5μlの50ngのpJ206−tcATR1−optプラスミドを含む50μlの最終容量で、増幅した。熱サイクル条件は以下であった:95℃で1.5分;95℃で45秒及び60℃で30秒及び72℃で4分を30サイクル;並びに72℃で10分。アガロースゲル上での精製後に、PCR生成物を、HindIIIによって消化したpCW−218−521−11及びpCW−218−521−16プラスミド中で、製造者の使用説明書に従って、In−Fusion(登録商標)Dry−Down PCR Cloning Kit(Clontech、Takara Bio Europe)を使用して連結した。得られた2つのプラスミドpCW−2391−521−11及びpCW−2392−521−16は、それぞれtcATRl−opt配列に続くVzP521−11−1及びVzP521−16−1配列からなる2シストロン性構成物を含む。
【0117】
E.coli細胞を、これらの2つのプラスミドの1つで形質転換し、そして膜タンパク質画分を、実施例4において記載されたように製造した。P450及びCPR発現を、実施例4及び5において記載したように、CO結合スペクトル及びNADPH還元アッセイに従って証明した。
【0118】
実施例8
ベチバーP450及びCPRを発現するE.coliの全細胞を使用するジザエンからクシモルへの生物変換
(+)−ジザエンの酸化を、ベチバーP450及びCPRを発現するE.coliの全細胞を使用して実施できる(生物変換)。ジザエンを、特許WO 2010/134004号において記載された方法に従って遺伝子操作したE.coli細胞を使用して、及び配列受託番号HI931369を有するセスキテルペン合成酵素を使用して製造した。
【0119】
簡単に、BL21StarTM(DE3)E.coli細胞(Invitrogen Ltd)を、プラスミドpACYC−4506及びプラスミドpETDuet−VzZS−optで形質転換した。プラスミドpACYC−4506は、メバロン酸をFPPに変換する生合成経路の5つの酵素:メバロン酸キナーゼ(MvaK1)、ホスホメバロン酸キナーゼ(MvaK2)、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(MvaD)、イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ(idi)及びファルネシル二リン酸合成酵素(FPS)についてコードする遺伝子を含む。このプラスミドを構築するために、FPS遺伝子を、S. cerevisiaeゲノムDNAから増幅し、そしてpACYCDuet−1の最初の多重クローン部位(MCS)中で連結し、そしてMvaK1、MvaK2、MvaD及びidiについての遺伝子をコードするオペロンを、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)(ATCC BAA−334)のゲノムDNAから増幅し、そして第二のMCS中に連結した。pETDuet−VzZS−optは、ベチバー(+)−ジザエン合成酵素のコドン最適化版を含む(WO 2010/134004号の配列番号:11において記載されている)。
【0120】
形質転換した細胞の単コロニーを使用して、カルベニシリン(50mg/ml)及びクロラムフェニコール(34mg/ml)で補った5mLのLB培地をインキュベートした。培養物を37℃で一昼夜インキュベートした。翌日、同一の抗生物質で補った1LのTerrific Broth(TB)培地に、1/100容量の一昼夜培養物を植えた。37℃で6時間のインキュベート後に、培養物を28℃まで冷却し、そして1mMのIPTG、1g/mLの濃度で0.5N NaOH中でメバロノラクトン(Sigma−Aldrich)を溶解し30分37℃で溶液をインキュベートすることによって製造した2g/Lのメバロン酸、及び100g/LのAmberliteTMXADTM−4樹脂(Rhom and Haas)を培養物に添加した。48時間のインキュベート後に、樹脂を回収し、水で洗浄し、ジエチルエーテルの3容量で溶出した。その溶媒を回収し、そしてその生成物を、シリカゲルによって、溶媒としてn−ヘキサンを使用してフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。(+)−ジザエンを含む画分をプールし、蒸留によって溶媒を取り出し、そして残りを、酸化アッセイのための基材として使用した。
【0121】
E.coli細胞(BL21StarTM(DE3)E.coli細胞(Invitrogen Ltd)又はJM109(DE3)(Promega))を、プラスミドpCW−2391−521−11又はpCW−2392−521−16で形質転換し、又は細胞を、プラスミドpCW−218−521−11又はpCW−218−521−16及びpACYC−tcATR1−optで同時形質転換し、そして3%グリセロールで補ったTB培地、又は1%グルコースで補ったLB培地中で育てた。培養物を、1の光学密度に達するまで37℃でインキュベートした。そして培養物を、28℃にし、1mMのIPTG及び74μg/mlのδ−アミノレブリン酸を添加し、そしてその培養物を24時間インキュベートした。
【0122】
細胞を、指数成長相で採取し、遠心分離し、そして5%グリセロール又は3%グルコースで補ったリン酸カリウム緩衝液50mM pH7.0の0.5容量中で再懸濁した。基質((+)−ジザエン)を、10mgのTween(登録商標)20(sigma−Aldrich)、10mgの消泡剤(Erol DF、PMC Ouvrie、Lesquin、France)、20mgの(+)−ジザエン及び1mlの水から構成される混合物として0.5mg/mlの最終濃度で添加した。変換を、穏やかな撹拌で20℃で24時間行った。培養液を酢酸エチルの2容量で抽出し、そして抽出物を、Agilent 5975に連結したAgilent 6890 Series GCシステム上でGCMSによって分析した。GCを、30m SPB−1キャピラリーカラム(Supelco、Belief onte、PA)によって0.25mm内部直径で満たした。キャリヤーガスは、1mL/分の一定流でHeであった。開始炉温度は、50℃(1分保持)、続いて10℃/分〜300℃/分の勾配であった。生成物の同定は、質量スペクトル及び保持指数の、確実な基準及び内部データベースとの比較に基づいた。
【0123】
これらの条件において、(+)−ジザエンの酸化を、VzP521−11−1及びVzP521−16−1組換えタンパク質を含む細胞で観察した。3つの生成物を観察し、そしてGCMS分析によって同定した:(+)−ジザエンの連続酸化から得られるクシモル、ジザナール、及びジザン酸。VzP521−11−1及びVzP521−162−1酵素は、従って(+)−ジザエンのクシモルへの酸化を触媒化する。クシモルのジザナール及びジザン酸へのさらなる酸化を、組換えP450によって、又は内因性E.coli酵素活性によって触媒化できる(図7)。
【0124】
実施例9
ベチバーP450及びCPRを発現するE.coliの全細胞を使用する他のモノテルペン及びセスキテルペン分子の生物変換
ベチバーP450及びCPRを発現するE.coli細胞を製造し、育て、そして生物変換を、実施例8において記載したリン酸カリウム緩衝液中で得た細胞を使用して実施した。
【0125】
アッセイを、いくつかのテルペン分子で実施し、そして酸素化テルペン分子の形成を、実施例8において記載したGCMS分析を使用して評価した。(+)−ジザエンに加えて、生物変換を次の分子で観察した:(+)−リモネン、(−)−リモネン、アルファ−ピネン、アルファ−セドレン、アルファ−ロンギピネン、アルファ−フネブレン、ツジョセン、バレンセン、ベータ−カミグレン、アロアルマデンドレン、アルファ−ネオクロベン、イソサチベン、レデン、アルファ−フムレン、アルファ−グルユネン、ガンマ−グルユネン、ベータ−フネブレン、アルファ−コパエン(copaene)、アルファ−グルユネン及びベータ−ピネン。これらの分子の構造を図1において示す。これらの生物変換のGCMS分析からのクロマトグラムの例を図8において示す。試験した基質のいくつかについて、生成物を同定でき、かつ図9において示す。
【0126】
実施例10
ベチバーP450を使用する化合物のin vitro酸化
ベチバーからのP450を使用するセスキテルペンの酸化を、細胞溶解物又は部分的に生成したタンパク質を使用してin vitroでも実施できる。
【0127】
E.coli細胞(BL21StarTM(DE3)E.coli細胞(Invitrogen Ltd)又はJM109(DE3)(Promega))を、プラスミドpCW−2391−521−11又はpCW−2392−521−16で形質転換し、又は細胞を、プラスミドpCW−218−521−11又はpCW−218−521−16及びpACYC−tcATR1−optで同時形質転換した。細胞培養条件、タンパク質発現及び膜タンパク質製造を、実施例4及びにおいて記載したように行った。これらのタンパク質画分を、(+)−ジザエン又は実施例9において挙げたテルペン分子のin vitroでの変換のために使用した。典型的なアッセイを、20〜50μLのタンパク質、0.4mgのNADPH(Sigma)、5μMのFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド、Sigma)、5μMのFMN(フラビンモノヌクレオチド、Sigma)、100mMトリス緩衝液pH7.4の1mLの合計容量中で0.05mgの(+)−ジザエンから構成した。いくつかのアッセイにおいて、NADPH再構築系を添加し、そして25mMのグルコース6−ホスフェート(Sigma)及び6mUnitsのグルコース6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(Sigma)からなった。アッセイを、2〜12時間30℃でインキュベートした。そして試料を、酢酸エチルの1容量で2回抽出し、そして実施例8において記載されたようにGCMSによって分析した。
【0128】
このアプローチを使用して、同一の生成物を、実施例8及び9において記載されたような全体のE.coli細胞を使用した場合に得た。
【0129】
実施例11
遺伝子操作した細胞におけるクシモルのin vivo製造
(+)−ジザエンの酸化生成物を、遺伝子操作したE.coli細胞中でも実施して、炭素源、例えばグルコース又はグリセロールからセスキテルペンを製造できる。プラスミドを、P450、P450レダクターゼ及びテルペン合成酵素から構成されるオペロンを含むpCWori(Barnes H.J (1996) Method Enzymol. 272, 3−14)プラスミドから製造した。そして、2つのプラスミドを、pCW−2391−521−11又はpCW−2392−521−16におけるCPR配列の終止コドンの後に、RBS配列及び(+)−ジザエン合成酵素(VzZS)についてコードする最適化配列を挿入することによって製造した。
【0130】
VzZSを、プライマー2401−VzZS−F(配列番号:33)及び2401−VzZS−R(配列番号:34)を使用して、pETDuet−VzZS−optプラスミド(WO 2010/134004号において記載されている)から増幅した。PCRを、Pfu DNAポリメラーゼ(Promega、Madison、WI、USA)を使用して、5μlのPfu DNAポリメラーゼ10X緩衝液、200μMのそれぞれのdNTP、0.4μMのそれぞれのプライマー、2.9単位のPfu DNAポリメラーゼ及び50ngの鋳型を含む50μlの最終容量で実施した。熱サイクル条件は以下であった:95℃で1.5分;95℃で45秒及び60℃で30秒及び72℃で4分を30サイクル;並びに72℃で10分。PCR生成物を精製し、HindIII及びEcorI制限酵素で消化したpCW−2391−521−11又はpCW−2392−521−16プラスミド中で連結した。このライゲーションを、製造者の使用説明書に従って、In−Fusion(登録商標)Dry−Down PCR Cloning Kit(Clontech、Takara Bio Europe)を使用して実施した。得られたプラスミドpCW−2401−521−11及びpCW−2402−521−16は、それぞれVzP521−11−1又はVzP521−16−1配列、tcATRl−opt配列(P450レダクターゼ)及びVzZS配列((+)−ジザエン合成酵素)からなる挿入部を含む(図10)。
【0131】
他の発現プラスミドを、完全なメバロン酸経路のための酵素をコードする遺伝子からなる2つのオペロンを含んで製造した。大腸菌アセトアセチル−CoAチオラーゼ(atoB)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)HMG−CoA合成酵素(mvaS)、黄色ブドウ球菌HMG−CoAレダクターゼ(mvaA)及びサッカロミセス・セレビジエFPP合成酵素(ERG20)遺伝子からなる第一の合成オペロンを、化学的に合成((DNA2.0、Menlo Park、CA、USA)し、そしてNcoI−BamHIで消化したpACYCDuet−1ベクター(Invitrogen)を連結して、pACYC−29258を得た。このプラスミドの遺伝子は、アセチル−CoAからメバロン酸塩への変換に必要な酵素について、及びFPP合成酵素についてコードする。第二オペロンは、メバロン酸塩のIPP及びDMAPPへの変換に必要な4つの酵素についてコードする遺伝子を含み、以下のプライマーを使用してプラスミドpACYC−4506(実施例8)を増幅した:5’−AAGGAGATATACATATGACAAAAAAAAGTTGGTGTCGGTCAGG−3’(順方向)及び5’−CTTTACCAGACTCGAGTTACGCCTTTTTCATCTGATCCTTTGC−3’(逆方向)。得られたアンプリコンを、In−Fusion 2.0 Dry−Down PCR Cloning Kit (Clontech)を使用して、NdeI−XhoIで消化したpACYC−29258中にクローンし、pACYC−29258−4506ベクターを提供した。
【0132】
OverExpressTMC43(DE3)E.coli細胞(Lucigen(登録商標)Corporation)を、プラスミドpACYC−29258−4506及びプラスミドpCW−2401−521−11、又はプラスミドpCW−2402−521−16で同時形質添加させた。形質転換した細胞の単コロニーを使用して、カルベニシリン(100mg/ml)及びクロラムフェニコール(17mg/ml)で補った5mLのLB培地をインキュベートした。その培養物を、37℃で一昼夜培養し、それを使用して、2g/Lの酵母抽出物、3%グリセロール、10μMのFeSO4、100μg/mlのカルベニシリン及び17μg/mlのクロラムフェニコールで補ったM9培地に植えた。その培養物を、6時間37℃でインキュベートし、25℃まで冷却し、そして0,1mMのIPTG、74μg/mlのδ−アミノレブリン酸及び1/10容量のドデカンを添加した。48時間後に、その培養物を、tert−ブチルメチルエーテル(MTBE)の2容量で抽出し、そしてその抽出物を、最初に80℃に設定し、1分保持し、10℃/分〜300℃の勾配である炉温度を除いて、実施例8において記載したGCMSによって分析した。
【0133】
セスキテルペン(+)−ジザエン及び誘導されたアルコール及びアルデヒド(クシモル及びジザナール)を検出した。ジザン酸も少量の生成物として見出された(図11)。この実験は、遺伝子操作した細胞において、セスキテルペン(+)−ジザエンが製造され、かつ非相同P450及びCPR錯体によって酸化されたことを示す。
【0134】
この実施例は、本発明によるポリペプチドを発現するために形質転換させたE.coli細胞が、P450レダクターゼとの組合せで使用する条件で、テルペン化合物、例えばジザエンを酸化することができることを示す。形質転換させたE.coli細胞での他の酵素は、かかる酸化に必須でない。実際に酸化テルペンも、E.coli細胞をシトクロムP450で形質転換させた場合に、レダクターゼ及びテルペン合成酵素を製造するが、低量である。形質転換させたE.coli細胞を有するかかる他の酵素を、シトクロムP450について基質として使用できるテルペンの量を増加する特有の目的のために添加する。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]