特許第6359059号(P6359059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6359059生細胞を含む生物学的薬剤の取り扱い方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359059
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】生細胞を含む生物学的薬剤の取り扱い方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20180709BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20180709BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20180709BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20180709BHJP
   A61J 1/10 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   A61K35/17 Z
   A61K39/395 N
   A61P37/02
   A61M5/28
   A61J1/10 330Z
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-174984(P2016-174984)
(22)【出願日】2016年9月7日
(62)【分割の表示】特願2014-266252(P2014-266252)の分割
【原出願日】2012年5月2日
(65)【公開番号】特開2017-39728(P2017-39728A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2016年10月7日
(31)【優先権主張番号】61/528,493
(32)【優先日】2011年8月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/481,991
(32)【優先日】2011年5月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/565,225
(32)【優先日】2011年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/582,878
(32)【優先日】2012年1月4日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513276477
【氏名又は名称】イミュノバティブ セラピーズ,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハー−ノイ マイケル
【審査官】 伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】 Journal of Immunotherapy,2009年,Vol.32, No.2,p.169-180
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
A61K 39/395
A61J 1/00
A61M 5/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性のある容器あるいは注射器であって、
前記容器あるいは注射器は、生細胞を含み、前記生細胞は、非栄養性緩衝液中に含まれるマイクロビーズで被覆されたCD3/CD28を有するCD4+細胞であって、
前記マイクロビーズは、抗CD3モノクロナール抗体及び抗CD28モノクロナール抗体を有し、前記生細胞は、前記抗CD3モノクロナール抗体及び抗CD28モノクロナール抗体によって再活性化されており、
該生細胞は、前記非栄養性緩衝液中において冷蔵保存され且つ固定化され、前記生細胞は、前記非栄養性緩衝液に約6時間を越えて20℃より低い温度で保存後、前記非栄養性緩衝液における冷蔵保存前の該生細胞を特徴づけた生細胞自体の固有性および少なくとも一つの機能特性を維持し、前記生細胞は、前記非栄養性緩衝液中で保存された後に免疫学的に使用され、冷蔵温度範囲内で、該生細胞を維持する温度調整デバイス内にて梱包され、 前記少なくとも一つの機能特性は、サイトカインの発現であり、前記サイトカインはIFN−γであり、保存後のIFN−γの分泌レベルは、冷蔵保存時のレベルに比べて少なくとも約80%まで回復する、
柔軟性のある容器あるいは注射器。
【請求項2】
前記温度調整デバイスにおける好適な温度範囲が0℃〜10℃である、請求項1に記載の柔軟性のある容器あるいは注射器。
【請求項3】
前記非栄養性緩衝液における前記生細胞が少なくとも72時間安定である、請求項1又は2に記載の柔軟性のある容器あるいは注射器。
【請求項4】
前記非栄養性緩衝液における生細胞の濃度が1ml当り10細胞またはそれ以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の柔軟性のある容器あるいは注射器。
【請求項5】
前記少なくとも一つの機能特性は、さらに、CD40L、FasL、パーフォリン、およびグランザイムBの発現、共刺激分子の発現、接着分子の発現、サイトカイン、ケモカインまたはその組合せの分泌の発現を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の柔軟性のある容器あるいは注射器。
【請求項6】
柔軟性のある容器あるいは注射器であって、
前記容器あるいは注射器は、生細胞を含み、前記生細胞は、非栄養性緩衝液中に含まれるマイクロビーズで被覆されたCD3/CD28を有するCD4+細胞であって、
前記マイクロビーズは、抗CD3モノクロナール抗体及び抗CD28モノクロナール抗体を有し、前記生細胞は、前記抗CD3モノクロナール抗体及び抗CD28モノクロナール抗体によって再活性化されており、
該生細胞は、前記非栄養性緩衝液中において冷蔵保存され且つ固定化され、前記生細胞は、該非前記非栄養性緩衝液に約72時間を越えて20℃より低い温度で保存後、前記非栄養性緩衝液における冷蔵保存前の該生細胞を特徴づけた生細胞自体の固有性および少なくとも一つの機能特性を維持し、前記生細胞は、前記非栄養性緩衝液中で保存された後に免疫学的に使用され、冷蔵温度範囲内で、該生細胞を維持する温度調整デバイス内にて梱包され、 前記少なくとも一つの機能特性は、CD40L、FasL、パーフォリン、およびグランザイムBの発現、共刺激分子の発現、接着分子の発現、サイトカイン、ケモカインまたはその組合せの分泌の発現である、
柔軟性のある容器あるいは注射器。
【請求項7】
前記サイトカインはIFN−γであり、保存後のIFN−γの分泌レベルは、調製時のレベルに比べて少なくとも約80%まで回復する、請求項6に記載の柔軟性のある容器あるいは注射器。
【請求項8】
生細胞を含む生細胞組成物であって、
前記生細胞は、非栄養性緩衝液中に含まれるマイクロビーズで被覆されたCD3/CD28を有するCD4+細胞であって、
前記マイクロビーズは、抗CD3モノクロナール抗体及び抗CD28モノクロナール抗体を有し、前記生細胞は、前記抗CD3モノクロナール抗体及び抗CD28モノクロナール抗体によって再活性化されており、
該生細胞は、前記非栄養性緩衝液中において冷蔵保存され且つ固定化され、前記生細胞は、前記非栄養性緩衝液に約6時間を越えて20℃より低い温度で保存後、前記非栄養性緩衝液における冷蔵保存前の該生細胞を特徴づけた生細胞自体の固有性および少なくとも一つの機能特性を維持し、前記生細胞は、前記非栄養性緩衝液中で保存された後に免疫学的に使用され、冷蔵温度範囲内で、該生細胞を維持する温度調整デバイス内にて梱包され、 前記少なくとも一つの機能特性は、サイトカインの発現であり、前記サイトカインはIFN−γであり、保存後のIFN−γの分泌レベルは、冷蔵保存時のレベルに比べて少なくとも約80%まで回復する、
生細胞組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非栄養性緩衝液中で調製された生細胞懸濁液を含む生物学的薬剤の取り扱い方法に関する。特に、本発明は、非栄養性培地での生免疫細胞懸濁液の梱包、搬送、および流通に関連し、これにより、当該細胞は、生細胞自体の固有性、機能、および生存率を維持する。
【背景技術】
【0002】
細胞療法は、腫瘍、ウィルス、および細菌性病原体に対して将来的に実現性のある治療法である。細胞療法はまた、アンチエイジング治療、創傷治癒、および心疾患の治療と同様に、自己免疫疾患(例えば、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、および1型糖尿病など)、神経学的疾患(例えば、アルツハイマー病、ALS、およびパーキンソン病など)の治療に用いることができる。免疫システムの力を病気の治療または予防に利用することは、免疫療法の大きな目標である。様々な免疫療法の方法および組成物が、患者の免疫反応を高めるまたは抑えるために開発されている。細胞療法の方法は、細胞の増殖、分化、および/または活性化などのようなex vivo(エクソビボ)での操作を伴うことがある。単にわずかに操作されるにとどまらない細胞は、米国食品医薬品局(USFDA)だけでなく他の管轄権の監督官庁によっても、生物学的薬剤であると見なされている。これら生物学的薬剤が病気の治療または予防目的で市場に出るためには、製品を、事前に、新薬臨床試験(IND)申請資料またはその同等物の下で、人間での臨床試験にてまずは調べなければならない。
【0003】
商業利用目的で、生細胞を含む生物学的薬剤を製造するために用いるプロセスは、結果として生じる細胞が所定の固有性、機能および生存率の放出基準を有するように、標準化されなければならない。生物学的薬剤として使用するための細胞の増殖、分化、および/または活性化をもたらすプロセスは、細胞が高栄養な培地中に維持されるex vivoで通常起こる。しかし、これら細胞は、人間に投与される前に、非栄養性の注入緩衝液に移す必要がある。これら緩衝液は栄養分を含まないので、細胞は短い間のみ生存可能である。さらに、たとえ細胞が非栄養性の注入緩衝液に入れられた後も生存可能であったとしても、生細胞自体の固有性、および機能特性を急速に失う。固有性および機能特性を失った細胞は、生物学的薬剤として使用するには不適切と見なされる。この制限により、生物学的薬剤に使用される細胞は、ポイントオブケアにてまたはその近くでの調製が要求される。調製時の生細胞の限られた生存期間が故に、ポイントオブケアにてまたはその近くで細胞を調製するべきという要件により、この製品群の実用化が非常に制限される。
【0004】
生細胞は、高栄養な培地では比較的安定している。高栄養な培地は、例えば、X−Vivol5(バイオウィッタカー社:BioWhittaker,米国メリーランド州ウォーカーズビル所在)、RPMI 1640、DMEM、Ham’s F12、McCoys 7A、および培地 199を含む。培地は、血清、血清タンパク質、増殖抑制物質、ならびに、例えば細胞分裂促進モノクローナル抗体および遺伝子組み換えまたは遺伝子操作された細胞を選択する選択物質などのような増殖促進物質を含む、付加成分が追加されてもよい。しかし、患者への投与のために必要とされるような非栄養性緩衝液への細胞の移動は、細胞の固有性、細胞生存率、および細胞機能特性を急速に悪化させうる。非栄養性緩衝液は、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、5%ブドウ糖液、プラズマライト(Plasma−Lyte)(バクスター サイエンティフィック社:Baxter Scientific,米国イリノイ州 ディアフィールド所在)、およびノーモソル(Normasol)(アボット ラボラトリーズ社:Abbott Laboratories,米国イリノイ州 アボットパーク所在)のような等張液を含む。また、細胞が非栄養性緩衝液に移される際、活性化シグナルおよび/または分化シグナルを提供する試薬だけでなく、例えば刺激分子またはサイトカインのような他の成分も、非栄養性緩衝液に細胞が移される前に除去されるべきであると一般的に考えられている(米国特許第6,867,041号明細書 発明者Berenson等を参照)。よって、非栄養性緩衝液中の細胞は、一般的に生存期間が限られ、例えば、数分以内にそれ自体に固有の特性および活性を失い始め、2〜3時間を越えるとそれ自体の機能特性および固有の特性をほとんど維持しない。
【0005】
現在、生細胞を含む免疫療法組成物は、患者のポイントオブケアに近いcGMP施設にて生成されるのが一般的である(米国特許公開明細書第2003/0175242号、発明者Gruenberg参照)。生物学的薬剤と生細胞の調製は、cGMP施設にて高度に管理された無菌状態下で行われなければならない。生細胞は、cGMP施設にて操作され、患者への注入用に調製される。細胞が注入用に準備されると、細胞は、ポイントオブケアサイトに即座に移され、患者に投与される。この過程の一番の欠点は、cGMP施設が各ポイントオブケアサイトの近くに在る必要があることである。cGMP施設は、人員に巨額の資金を投下しなければならず、要求される規則及び規則の下で管理される。各ポイントオブケアにまたはその近くに、これらセンタを多数設置することは、非常に高い費用がかかり、かつ、これら薬剤群の商業的可能性を著しく制限する。これは、患者へのアクセス性を高めるように多数のcGMP施設を建設することによる膨大な費用を発生させるという難しい選択か、または、資本支出を最小限に抑えるために限られた数のcGMP施設だけを建設することによって患者のアクセス性を制限するという結果に導く。よって、非栄養性緩衝液において細胞の寿命を延ばすことを可能にする方法が、生細胞治療学の分野において、必要とされている。さらに、非栄養性の注入緩衝液中に懸濁した調製された細胞製品の梱包、搬送、および大量流通が可能な方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
調製後の養子免疫療法で用いられる細胞の固有性および機能を維持することに関する問題が、例えば、米国特許公開明細書第2003/0175272号 発明者Gruenbergに記載されている。この公報は、T細胞がサイトカイン生成という機能特性を維持するために、患者投与の直前(注入前4時間以内)に再活性化されなければならないことを教示している。製剤が自己血漿を含む場合にのみ、細胞の機能は最大48時間存続し得る。しかし、各対象患者から血漿を集めるから、大量流通および商業化に移し難い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1局面では、本発明は生物学的薬剤組成物を含む。薬剤組成物は、非栄養性緩衝液中で調製された生細胞を含む。生細胞は、非栄養性緩衝液に約6時間を越えて保存後、非栄養性緩衝液での調製前の該生細胞を特徴づけた生細胞自体の固有性および少なくとも一つの機能特性を維持する。生細胞は、非栄養性緩衝液での保存後、免疫療法に利用できる。生細胞は、非栄養性緩衝液における調製前の生細胞を特徴づけた生細胞自体の固有性および少なくとも一つの機能特性を、少なくとも72時間維持する。
【0008】
他の局面では、本発明は、生細胞を有する生物学的薬剤組成物の取り扱い方法を含む。この方法は、非栄養性緩衝液での前記生細胞の調製、および、非栄養性緩衝液中の生細胞を約20℃未満の保存温度での維持すること、を含む。生細胞は、非栄養性緩衝液での調製前の生細胞を特徴づけた生細胞自体の固有性および少なくとも一つの機能特性を維持する。生細胞は、非栄養性緩衝液において約72時間を越えて保存されたのち、免疫療法に利用できる。好ましくは、保存温度は、約4℃〜約8℃の範囲であり、非栄養性緩衝液中の細胞の濃度は、約107細胞/1ml以上である。T細胞の組成物では、好ましくは、生細胞は、活性化状態で調製される。T細胞を活性化するために、細胞表面の分子に反応性を有する固定化したモノクローナル抗体を用いることが好ましい。好ましくは、細胞表面の分子は、以下CD3、MHCI、MHCII、CD2から選択される第1の分子と第の共刺激分子との組合せである。好ましくは、共刺激分子はCD28である。生細胞は、可撓性を有する容器または注射器に入れられる。可撓性を有する容器または注射器は、生細胞を保存温度で維持する温度制御された装置内で梱包される。この方法はまた、温度制御された装置内のパッケージのポイントオブケアへの搬送および流通を含む。
【0009】
さらに他の局面では、本発明は、生細胞組成物をポイントオブケア施設に提供する方法を含む。この方法は、処理施設で非栄養性緩衝液中での前記生細胞を調製すること及び保存温度を約20℃未満に維持するために装備されたパッケージに入れて、細胞をポイントオブケア施設に搬送すること、を含む。生細胞は、免疫療法に有用な生細胞の固有性および少なくとも一つの機能特性を維持しつつ、最大約72時間まで保存温度に置かれる。
【0010】
さらに他の局面では、本発明は、患者に免疫療法を処置する方法を含む。この方法は、非栄養性緩衝液中で調製された生細胞を有する組成物を投与することを含み、当該組成物は投与前に非栄養性緩衝液において最大約72時間まで保存され、生細胞は、非栄養性緩衝液での調製前の該生細胞を特徴づけた生細胞自体の固有性および少なくとも一つの機能特性を維持し、免疫療法に有用である。
【0011】
さらに他の局面では、本発明は、患者に免疫療法を処置する別の方法を含む。本方法は、非栄養性緩衝液において調製された生細胞を含む組成物を投与することを含み、該組成物は、最大2年以上、例えば液体窒素の中で凍結状態で前もって保存された後、解凍および調製され、その後、非栄養性緩衝液において最大約72時間保存され、生細胞は、非栄養性緩衝液における調製前に生細胞を特徴付けた生細胞自体の固有性及び少なくとも一つの機能特性を維持し、免疫療法に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】事前に調整されていない搬送中の容器内の温度変化を示す図である。
図1B】事前に調整されたエーロゲル絶縁ボックス内で記録された温度を示す図である。
図1C】搬送中の空気温度を示す図である。
図2A-2C】梱包および搬送前後のHTC273細胞、HTC245細胞、およびHTC264細胞夫々に関して、CD40Lの発現を示す図である。
図3A-3C】梱包および搬送前後のHTC273細胞、HTC245細胞、およびHTC264細胞夫々に関して、細胞生存率を示す図である。
図4A-4C】梱包および搬送前後のHTC273細胞、HTC245細胞、およびHTC264細胞夫々に関して、IFN−γの分泌を示す図である。
図5A-5C】梱包および搬送前後、ならびに、梱包および搬送後に37℃で6時間培養した、HTC273細胞、HTC245細胞、およびHTC264細胞夫々に関して、IFN−γの分泌を示す図である。
図6A-6C】皮内(ID)投与、脊椎内(IT)投与および静脈内(IV)投与用に調製されたHTC273細胞、HTC264細胞、およびHTC245細胞夫々に関して、CD40Lの発現を示す図である。
図7A-7C】皮内(ID)投与、脊椎内(IT)投与および静脈内(IV)投与用に調製されたHTC273細胞、HTC264細胞、およびHTC245細胞夫々に関して、細胞生存率を示す図である。
図8A-8C】皮内(ID)投与、脊椎内(IT)投与および静脈内(IV)投与用に調製されたHTC273細胞、HTC264細胞、およびHTC245細胞夫々に関して、IFN−γの分泌を示す図である。
図9A-9C】皮内(ID)投与、脊椎内(IT)投与および静脈内(IV)投与用に調製され、24時間および48時間保存されたHTC273細胞、HTC264細胞、およびHTC245細胞夫々に関して、CD40Lの発現を示す図である。
図10A-10C】皮内(ID)投与、脊椎内(IT)投与および静脈内(IV)投与用に調製され、24時間および48時間保存されたHTC273細胞、HTC264細胞、およびHTC245細胞夫々に関して、IFN−γの分泌を示す図である。
図11A-11C】皮内(ID)投与、脊椎内(IT)投与および静脈内(IV)投与用に調製され、24時間および48時間保存されたHTC273細胞、HTC264細胞、およびHTC245細胞夫々の生存率を示す図である。
図12A-12D】図12A−12Cは、24時間、48時間および72時間保存後のHTC264細胞のCD40Lの発現、細胞生存率、IFN−γを示す図であり、図12Dは、72時間の保存後かつ37℃で24時間培養した後のHTC264細胞によるIFN−γの分泌を示す図である。
図13A-13D】図13A−13Cは、24時間、48時間および72時間保存後のHTC245細胞のCD40Lの発現、細胞生存率、IFN−γを示す図であり、図13Dは、72時間の保存後かつ37℃で24時間培養した後のHTC245細胞によるIFN−γの分泌を示す図である。
図14A-14D】図14A−14Cは、24時間、48時間および72時間保存後のHTC273細胞によるCD40Lの発現、細胞生存率、IFN−γを示す図であり、図14Dは、3つの異なる細胞バッチに関して、72時間の保存後かつ37℃で24時間培養した後のHTC273細胞によるIFN−γの分泌を示す図である。
図15A-15C】HTC245、HTC264、およびHTC273それぞれに関して、48時間後のCACおよびCFBのCD40Lの発現を示す図である。
図16A-16C】HTC245、HTC264、およびHTC273それぞれに関して、48時間後のCACおよびCFBの細胞生存率を示す図である。
図17A-17C】HTC245、HTC273、およびHTC264それぞれに関して、48時間後のCACおよびCFBのIFN−γの分泌を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[詳細な説明]
本発明は、非栄養性緩衝液中で調製された、長期間後も細胞特徴を呈しかつ免疫療法に役立つ、生細胞生物学的薬剤製品の梱包、保存、および流通に関する。これら生細胞生物学的薬剤は、非栄養性緩衝液において約72時間経過後でも、所定の固有特性および機能特性だけでなく生存率も維持できる。
【0014】
幾つかの例示的な実施形態において、生物学的薬剤として使用される免疫記憶Th1細胞は、生存率を保持し、所定の固有性(CD4+,CD45RO+,CD40Lhi,CD62Llo)を維持し、IFNガンマ>1000pg/106細胞数/4hというインターフェロンの分泌のような機能基準を取り戻す。これら免疫記憶細胞Th1は、CD3/C28被覆マイクロビーズを用いて非栄養性緩衝液中で調製され、冷蔵状態で保存された場合、少なくとも約72時間までこれら細胞特徴を呈することができる。
【0015】
生細胞を含む生物学的薬剤は、環境的に管理された状況で梱包されることにより所望の保存条件を確保し、かつ、宅配便(例えば、フェデラル・エクスプレス、ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)、および同様の国際宅配業者)によって世界中ほとんどどこのポイントオブケアにも搬送することができる。生細胞を有するパッケージは、冷蔵温度下で保存および搬送されるのが好ましい。ポイントオブケアにて、調製細胞がパッケージから取り出され、患者に投与される。調製細胞は、冷蔵パッケージから取り出された後最大6時間安定する。好ましくは、細胞は、最初にポイントオブケアにて冷蔵パッケージから取り出され、患者への投与前1時間から2時間室温に保たれる。搬送された細胞は、驚くほど安定しており、長期間保存しなかった細胞と同様の方法で使用することができる。もしくは、細胞を、ポイントオブケアまで冷凍状態で保存および搬送する。細胞は、ポイントオブケアにて冷凍状態で保存され、自動または半自動の閉じた無菌システム内にて調製され、その後、患者への投与前最大約72時間冷蔵状態にて現場で保存されてもよい。
【0016】
細胞製品が、新薬臨床試験(IND)申請資料またはその同等物の下のみで人体での評価が必要である生物学的薬剤であり、かつ、21 C.F.R. parts 211, 606および820に従って規定どおりにGMPの下で製造されることを割り出すために、生細胞という用語がFDAによって用いられるので、生細胞は、単にわずかに操作されるにとどまらないどの細胞であってもよい。
【0017】
生細胞は、固有性と機能基準が特徴づけられている限り、単一タイプまたは混合物のいずれであってもよい。生細胞は、未加工または加工されていてもよく、自己ドナー、同種異系ドナー、および/または異種ドナーから抽出されてもよい。生細胞が生物学的薬剤の活性成分である一方で、例えば、生物学的に活性なタンパク質、ペプチド、化学薬品、ヌクレオチド(RNA、DNA)および/またはデバイスのような他の物質が、生細胞に付与されてよい。生細胞は、調製時に自由に懸濁、表面またはデバイスに結合、または、デバイスもしくは材料中にカプセル化されてよい。生細胞は、病気または症状の発生の治療または予防目的である。生細胞は、体のどの部位にも、注入、注射または移植できる。
【0018】
機能特性とは、様々な機能、特に、細胞が行いかつ免疫療法および幹細胞療法に役立つ、免疫機能および分化機能を含むと理解される。これら免疫機能は、例えば、分子の分泌、細胞表面機能基の発現、分子の認識、分子への応答能力、ならびに、特定の細胞型への増殖および/もしくは変化を含み、または、体内の他の細胞を、増殖、変化、死亡させ、もしくは、正常機能もしくは病気機能だけでなく本技術で公知の他の免疫学的分化機能および細胞分化機能も改変する。免疫学的機能は、先天性免疫システム反応および/もしくは適応免疫システム反応、または、適応免疫反応もしくは先天性免疫反応の調節に関わる、分子のプロセスもしくは分子の次々に起こるプロセスもしくは分子の産生である。この機能は、細胞媒介免疫学的機能および/または液性系に関連し、いずれも免疫活性化機能および免疫抑制機能である。機能特性は、免疫記憶に関連するか、自己抗原および非自己抗原の区別化に関連するか、または、例えば、細菌、ウィルスもしくは真菌だけでなく腫瘍や他の異常もしくは好ましくない細胞や組織のような病原体の認識に関連してよい。他の機能は、特定の臓器、組織、もしくはロケーションへの輸送のような機能をとりなす表面分子、免疫反応を阻む、促進する、もしくは調節する、または、特定の細胞型への分化を可能とする表面分子、に関連してよい。
【0019】
この開示は、活性成分として非栄養性緩衝液で調製された生細胞を含む生物学的薬剤製品を記載する。幾つかの実施形態では、細胞は、免疫療法または幹細胞療法に用いられる生免疫細胞である。組成物は、室温で少なくとも約6時間、ならびに、冷蔵温度で少なくとも約24時間、好ましくは少なくとも約48時間、さらに好ましくは少なくとも約72時間、非栄養性緩衝液にて安定する。驚くことに、組成物中の生細胞は、非栄養性緩衝液で調製された後でさえ、培地を含む栄養の中で示した生細胞自体の固有性、生存率、および機能特性を維持することができる。本明細書中で記載される組成物は、処理施設からポイントオブケアまで適切な保存状態を維持する容器にて、民間の宅配業者によって、梱包可能であり、かつ有利に運送および流通できる。これにより、生細胞を含む治療的組成物の製造および投与における労力、時間、および費用の実質的な節約につながり得る。さらに、処理施設が、世界中のポイントオブケアサイト用に細胞を製造、梱包、および流通できるので、患者の生細胞治療的組成物の入手可能性が大きく高まる。
【0020】
この開示はまた、非栄養性緩衝液にて長期間に渡り生細胞懸濁液を保持する方法を記載する。この方法は、生細胞の非栄養性緩衝液への移動と、低温度での保存を含む。幾つかの実施形態では、生細胞組成物は冷蔵条件下で保存される。要望がある場合は、組成物を保存から外して、一定の時間室温下に置く。幾つかの実施形態では、生細胞の機能特性は、生細胞懸濁液を一定の時間およそ室温下に置いたのちに実質的に回復する。他の実施形態では、生細胞の機能特性は、生細胞懸濁液を一定の時間生理学的条件下に置いたのちに実質的に回復する。
【0021】
本明細書で記載される治療的組成物は生細胞を含む。生細胞は、細胞のうち70%を越える細胞が、適切な条件下にて、例えば増殖、分化、および/または活性化のようなex vivoでの様々な細胞操作が可能であるように、例えばトリパンブルー押出法、MTT法、またはATPレベルの生物発光検出のような適切な分析技法によって判別された結果生存可能である。しかし、組成物は、不活性化細胞、照射細胞、および/または生育不能細胞を含み得る。生細胞は、例えば、不死化細胞株、初代細胞培養、生体液、組織、臍帯血、末梢血、骨髄、細胞の凍結アリコートなどを含む多くのソースに由来し得る。他ソース由来の生細胞で、上に記載のようなex vivoでの操作が可能な生細胞もまた、本発明の範囲内である。
【0022】
治療的組成物中の細胞は同種異系細胞であってよい。例えば、同種異系ドナーの血または骨髄由来の細胞は、所望の方法で処理され、その後患者への注入用に調製できる。注射器、搬送パック、または人間用の製品を保持するための他の適したデバイスの中にある注入製剤は、患者に投与するためのポイントオブケアサイト用に梱包および搬送され得る。もしくは、治療的組成物中の細胞は、操作、調製、梱包、および搬送された自己細胞であってよく、同じ患者へ再度注入できる。生細胞はまた、人間以外のソース由来であってよく、人間への投与(異種)用に、操作、調整、梱包、および搬送される。人間への投与用に記載された同じ治療的組成物はまた、人間以外の治療および疾患予防に用いられ得る。
【0023】
組成物中の生細胞が免疫細胞である実施形態において、これら免疫細胞は、骨髄由来もしくは臍帯血由来の細胞、または、例えば好中球、好塩基球、および好酸球のような顆粒球由来の細胞を含み得る。免疫細胞はまた、単球、マクロファージ、樹枝状細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞、T細胞およびNKT細胞を含むリンパ球であり得る。T細胞は、例えば、CD4+細胞(TH0、TH1、TH2、TH17、およびTreg細胞を含む)および/またはCD8+細胞(Tc1およびTc2)であり得る。
【0024】
対象者の細胞免疫反応を高める免疫療法の一つは、養子免疫療法と呼ばれる細胞療法の一種である。細胞療法の薬は、その活性成分の全てまたは一部のみが生細胞である薬剤である。養子免疫療法は、対象者からの免疫細胞の除去、ex vivoでの処理(つまり、細胞の活性化、精製、および/または増殖)、ならびにその結果生成された細胞を同一の患者(自己治療)または異なる患者(同種異系治療)に注入すること、を伴う細胞療法である。
【0025】
生物学的薬剤製品は、養子免疫療法用のex vivoでの様々な操作を用いて操作された生細胞を含み得る。ex vivoで操作された生細胞は、例えば、LAK細胞(Rosenbergに対して発行された米国特許第4,690,915号)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)細胞(Rosenbergに対して発行された米国特許第5,126,132号)、細胞傷害性T細胞(Caiらに対して発行された米国特許第6,255,073号;およびCelisらに対して発行された米国特許第5,846,827号)、増殖された腫瘍排出リンパ節細胞(Termanに対して発行された米国特許第6,251,385号)、種主の他のリンパ球製剤(Bellらに対して発行された米国特許第6,194,207号;Ochoaらに対して発行された米国特許第5,443,983号;Riddellらに対して発行された米国特許第6,040,180号;Babbittらに対して発行された米国特許第5,766,920号;Boltonに対して発行された米国特許第6,204,058号)、CD8+腫瘍浸潤リンパ球(TIL)細胞(Figlin et al. (1997) Journal of Urology 158:740)、IL−2の存在下で抗CD3モノクローナル抗体を使って活性化されたCD4+T細胞(Nishimura (1992) J. Immunol. 148:285)、IL−2の存在下で抗CD3および抗CD28で共活性化されたT細胞(Garlie et al. (1999) Journal of Immunotherapy 22:336)、ex vivoで生成され、IL−2の存在下で抗CD3および抗CD28モノクローナル抗体(mAb)で増殖した抗原に特有のCD8+CTLT細胞(Oelke et al. (2000) Clinical Cancer Research 6:1997)、および患者への予防接種用にカルメット・ゲラン桿菌(BCG)と混ざった放射線照射自己腫瘍細胞を注入すること、を含み得る。放射線照射自己腫瘍細胞の注入の7日後には、排出リンパ節T細胞が抗CD3モノクローナル抗体(mAb)で活性化されて回復し、その後、IL2中で増殖する(Chang et al. (1997) Journal of Clinical Oncology 15:796)。
【0026】
例示的な一実施形態において、ここで開示する治療的組成物は、少なくとも幾つかのT細胞、好ましくは同種異系T細胞を含む。これらT細胞はまた、細胞表面の活性を介して活性化され、活性化されたTh1記憶細胞を形成することが好ましい。T細胞は、T細胞表面分子に特有な固定化したモノクローナル抗体の使用を含めた様々な方法で活性化できる。適した活性化されたT細胞は、例えば、米国特許第7,435,592号に記載され、参照によって本明細書に援用される。好ましくは、細胞は、モノクローナル抗体または他の結合剤によって架橋する細胞表面機能基を有する。好ましくは、これらモノクローナル抗体および/または結合剤は、例えば、T細胞を活性化するために固体表面での固定化によって架橋される。これらは、本明細書において、培養で活性化される細胞(CAC)といわれる。これらex vivoで準備されたCACは、将来使用するために冷凍可能または注入用に調製可能である。
【0027】
好ましい実施形態では、ex vivoで準備されたCACは、患者への投与に必要となるまで冷凍保存される。患者への投与前に、CACは、例えば、参照によって本明細書にて援用される米国特許第7,402,431で記載されるように、解凍、洗浄、ならびに、例えばCD3およびCD28のような細胞表面結合部の架橋によって栄養豊富な培地で再活性化される。架橋媒介とともにCACは、その後、洗浄され、例えば製剤緩衝液のような非栄養性緩衝液に移してよい。製剤緩衝にて再活性化された細胞は、本明細書中で、製剤緩衝液内細胞(CFB)といわれる。CFBは、治療目的で患者に投与され得る。通常、これら再活性化細胞は、非栄養性緩衝液に一旦移されると、生存期間が限られる。生細胞は、1mlあたり少なくとも約106個の細胞の濃度、好ましくは、1mlあたり約107個細胞以上の濃度で調製され得る。幾つかの実施形態では、生細胞は、1mlあたり約108個細胞以上の濃度で調製されてよい。細胞の特定濃度は、細胞の具体的な用途および治療プロトコルによって決められ得る。
【0028】
治療的組成物はまた、多くの他の成分を含む。これら成分は、例えば、所望の活性化状態に生細胞を維持する媒介を含み得る。例示的な一つの実施形態において、治療的組成物は、例えば、以下の実施例にて記載されるDynabeads ClinExVivo(商標)のような、活性化状態にT細胞を維持する媒介を含み得る。
【0029】
本発明は、生存期間を延ばすための生細胞組成物の保存および取り扱い方法を含む。本明細書で用いる生存期間は、CFBが生存率、所定の固有性および機能特性を維持する調製後の時間として定義される。通常、細胞は、患者への注入に適した非栄養性緩衝液に移される。細胞は、様々な非栄養性緩衝液に存在し得る。本明細書でいわれる非栄養性緩衝液とは、細胞蔓延および/または細胞増殖を支援する適切な要素が不足している、如何なるタイプの培地、緩衝液、または他の液体を意味する。非栄養性緩衝液は、通常、等張、USP無菌、発熱物質フリーであり、生細胞を無傷に維持するのに適切な要素および/または緩衝システムを含み、人間の非経口用に認可されている。例示的な実施形態では、非栄養性緩衝液は、ヒト血清アルブミン1%を有するプラズマライトA(バクスター サイエンティフィック社:Baxter Scientific,米国イリノイ州 ディアフィールド所在)である製剤緩衝液である。(マクケソン社:McKesson,米国カリフォルニア州 サンフランシスコ所在)
活性化細胞、特に活性化Th1細胞を有する実施形態では、細胞の非栄養性緩衝液への移行後も、細胞の活性化シグナルは維持される。例えば、細胞表面結合部の架橋により細胞が活性化される実施形態では、架橋は、非栄養性緩衝液で維持されることが好ましい。保存中に架橋を維持することは、保存からの移行後に組成物の機能特性を回復させることにとって重要である。活性化成分が非栄養性緩衝液で除去される細胞組成物は、活性化状態を維持している細胞と同様には回復しない。
【0030】
本明細書で記載される方法はまた、細胞の非栄養性緩衝液への移行後の生細胞の取り扱いを含む。生細胞組成物は、組成物の生存期間を伸ばすために、保存用に低温度環境に移され得る。非栄養性緩衝液の細胞が移される低温度は、保存温度とここでいわれる。通常、細胞は、非栄養性緩衝液に移行後できるだけ迅速に保存温度に移される。細胞は、好ましくは、非栄養性緩衝液に移行後約6時間未満で保存温度に移され、より好ましくは、非栄養性緩衝液に移行後約4時間未満で保存温度に移される。より好ましい実施形態において、細胞は、非栄養性緩衝液に移行後約1時間未満で保存温度に移される。
【0031】
組成物を保持する保存温度は変動するが、通常、生理的温度未満、つまり、約37度未満である。細胞は冷蔵温度で保存されることが好ましい。冷蔵温度は、約−2℃から約12℃の範囲内にあり得る。より好ましくは、細胞は、約0℃から約10℃の間の温度で保存される。最も好ましくは、細胞は、約4℃から約8℃の間で保存される。
【0032】
本明細書で記載される組成物はまた、製造施設または処理施設からポイントオブケアサイトまで梱包、搬送、および流通できる。製造施設または処理施設は、例えば、設定されたガイドラインに従って生物学的薬剤用に生細胞を取り扱うことができる、病院、診療所、または任意の生産施設のような施設があり得る。ポイントオブケアは、一般的に患者の投薬ケアを行う、病院、診療所、または他の現場があり得る。組成物は、通常、上に記載した保存温度の範囲内に組成物を保つ方法で、搬送用に梱包される。細胞は、様々な容器で保存および搬送される。細胞は、例えば、柔軟性のある容器、注射器などで保存および搬送され得る。搬送の際、注射器のような容器は、例えば絶縁ボックスのようなパッケージの中に設置され得る。パッケージまたはボックスは、細胞を有する容器がパッケージ内に設置される前に、所望の保存温度で前処理されていることが好ましい。例えば、組成物は、氷またはエアロゲルを充填したボックス内にて梱包され得る。パッケージは、外気温にかかわらず、所望の保存温度を保つことができる絶縁ボックスであることが好ましい。ボックスもまた、前処理、つまり、生細胞を有する容器が内部に設置される前に所望の温度で保管または設定されることが好ましい。好ましい実施形態では、パッケージは、生物学的薬剤の設置前に前処理され、冷蔵または冷凍下でポイントオブケアに搬送される。いかなるタイプの搬送方法を使用してもよいが、例示的な実施形態の搬送は、業務用の宅配便業者によるものである。
【0033】
本明細書で記載される組成物の生存期間は、組成物が保存温度範囲内で保存される場合に、驚くほど伸び得る。生細胞組成物の生存期間は、約6時間を上回って延び得る。生細胞組成物の生存期間は、好ましくは、約24時間を上回って延び得り、より好ましくは、約48時間を上回って延び得る。より好ましい実施形態では、組成物の生存期間は、最大約72時間まで伸び得る。最も好ましい実施形態では、生存期間は、最大約120時間まで伸び得る。約120時間を上回る保存期間もまた、本発明の範囲内である。
【0034】
本明細書で記載される方法によって保存された非栄養性緩衝液の細胞組成物は、保存期間中および保存完了後、それ自体の生存率、固有性、および機能を維持できる。細胞の生存率は、例えば、トリパンブルー押出法、MTT法、7−アミノ−アクチノマイシンD、またはATPレベルの生物発光検出のような分析技法を含む、当業分野で知られている様々な方法によって決定され得る。
【0035】
細胞の固有性は、様々な方法によって確認され得る。細胞は、組成物中の特定の細胞型を示す、表面および内部の細胞マーカーで測定され得る。表面マーカーは、国際ヒト白血球分化抗原会議の第1回から第8回ワークショップで指定された、合計247個のCD(分化抗原群)を有するモノクローナル抗体分化抗原群(CD)によって分類される。白血球は、白血球細胞の表面上に分子を各種はっきりと発現し、それら分子の多くは、系統別分化の様々な段階、または活性化もしくは非活性化の異なる状態のいずれかを反映する。白血球の細胞表面分子は、通常、抗白血球のモノクローナル抗体(mAbs)を使って検出される。モノクローナル抗体(mAbs)の様々な組合せを用いることで、B細胞、ヘルパーT細胞(Th)、細胞傷害性T細胞(Tc)、およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む機能的に異なる成熟リンパ球亜集団を含む、様々な白血球特定細胞型群の細胞表面免疫表現型を図で示すことができる。
【0036】
非栄養性培地での保存後も、組成物中の生細胞は、非栄養性培地での調製前に存在した機能特性を呈する。機能特性は、例えば、CD40L,FasL、パーフォリン、およびグランザイムBのような機能分子、共刺激分子4−1BBL、CD28、CTLA4、およびTNF関連活性化誘導サイトカイン(TRANCE)、TWEAK、PD−1、B7ファミリー、例えば、インテグリン、カドヘリン、およびセレクチンのような接着分子、ならびに、様々なサイトカインおよびケモカインの分泌の発現、ならびに、これらサイトカインおよびケモカイン用の受容体の発現を含む、様々な活動を含み得る。サイトカインおよびケモカインは、患者の免疫反応の本質を調節および決定し、ならびに、免疫細胞の輸送および免疫臓器の細胞配列を制御する、成長作用、分化機能および活性化機能を有する豊富な分泌タンパク質である。サイトカインは、例えば、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、GMCSF、IFNガンマなどを含み得る。
【0037】
幾つかの実施形態では、機能特性は、調製後および保存中ずっと維持され、酵素またはマーカーのレベルは、保存から移し搬送した直後に分析され得る。例えば、CD40Lの発現は、組成物を保存から移し、約2時間室温で培養できるようにした後に測定され得る。CD40Lの発現は、調製および保存時のCD40Lの発現レベルと類似点があり得る。例えば、図2Aから2Cを参照されたい。同様に、組成物中の生存細胞の数は、保存から移し、約2時間室温で培養した後に決定できる。生存細胞の数は、調製および保存時の細胞の生存率レベルと類似点があり得る。例えば、図3Aから3Cを参照されたい。
【0038】
他の実施形態では、機能特性は、細胞が生理学的条件に暴露されたのちに回復し得る。これは、患者への投与の際に、細胞組成物が、目的通りに機能し得、調製時の細胞に特有な成分を分泌または発現し得ることを示し得る。例えば、IFN−γの分泌は、細胞が調製され保存下に配置されると低下する可能性がある。IFNガンマは、本明細書中で、IFN−γまたはIFN−gといわれる。細胞を室温に戻してもIFN−gの分泌は復元しないが、24時間37℃で細胞を培養すると、IFN−γの分泌レベルが調製時のレベルと同じようなレベルまで増加する。例えば、図12D、13Dおよび14Dを参照されたい。有利には、保存中のIFN−γレベルの低下は、細胞リソースの枯渇を防止し得る。分泌用の細胞リソースが保存中に充分に保たれる場合、細胞は、適切な生理学的条件下でIFN−γの分泌を通常再開し得る。よって、投与前に組成物が長期間に渡り保存されたとしても、組成物の患者への投与により、依然、治療的組成物の投与の結果抽出されるIFN−γおよび他の炎症性サイトカインが患者に提供され得る。
【0039】
組成物の生存期間の延長は、様々な方法で実証され得る。本明細書で用いられるように、生存期間の延長は、上記に記載の保存期間の延長後でさえ、それ自体の生存率、固有性、および機能特性を維持している組成物中の生細胞に言及し得る。通常、組成物は、少なくとも24時間保存後は、調製時の活動に対して、非栄養性緩衝液中の決定的な特徴の活動のうち少なくとも約50%を維持する。調製時の活動に対して、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約85%、そしてさらに好ましくは少なくとも約90%、保存後に維持される。
【0040】
好ましい実施形態では、組成物は、少なくとも48時間の保存後、調製時の活動に対して、非栄養性緩衝液中の決定的な特徴の活動のうち少なくとも約50%を維持する。調製時の活動に対して、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約85%、そしてさらに好ましくは少なくとも約90%、保存後に維持される。
【0041】
より好ましい実施形態では、少なくとも72時間の保存後、組成物は、調製時の活動に対して、非栄養性緩衝液中の決定的な特徴の活動のうち少なくとも約50%を維持する。調製時の活動に対して、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約85%、そしてさらに好ましくは少なくとも約90%、保存後に維持される。
【0042】
細胞組成物は、様々な方法を用いて患者に投与され得る。組成物は、皮内、静脈内、腔内内、腫瘍内などに投与することができる。
実施例
材料:PE結合CD40Lをベックマン・コールター社(Beckman Coulter、米国カリフォルニア州 ブレア所在)から購入し、7―アミノ―アクチノマイシンD(7―AAD)(1000x)をケイマンケミカル社(Cayman Chemical Co.、米国ミシガン州 アナーバー所在)から購入し、プラズマライトAをバクスター サイエンティフィック社(Baxter Scientific、米国イリノイ州 ディアフィールド所在)から購入し、ヒト血清アルブミン(HSA)をマッケソン社(McKesson、米国カリフォルニア州 サンフランシスコ所在)から購入し、FcR結合阻害剤をeバイオサイエンス社(eBioscience、米国カリフォルニア州 サンディエゴ所在)から購入し、ダイナビーズクリネックスビボ(Dynabeads ClinExVivo)(商標)をインビトロジェン社(Invitrogen、米国カリフォルニア州 カールスバッド所在)から購入した。
【0043】
製剤緩衝液内細胞(CFB)の調製
培養で活性化される細胞(CAC)を、洗浄のためcRPMI培地に置いた。調製プロトコルの開始を示す時間を記録した。cRPMI培地の細胞を遠心分離し、上澄み液を除去し、細胞をcRPMI緩衝液中に再懸濁した。細胞生存率をトリパンブルー分析法を用いて測定した。生細胞の総数と濃度を用いて生細胞の百分率を測定した。サンプルが細胞生存率80%より大きい場合、細胞の再活性化および調製のために処理を継続した。
【0044】
CAC細胞は、1mlあたり1x107個の細胞濃度で再び懸濁された。1mlあたり1x107個の生細胞濃度で再活性化が行われた。再活性化は容積によるが24ウエルプレート、6ウエルプレートまたは75cm3のフラスコ内で行われた。ダイナビーズ クリネックスビボ(Dynabeads ClinExVivo)(商標)CD3/CD28が、細胞を再活性化するために添加され、36℃から38℃で5%のCO2で4時間培養された。約4時間培養した後、次に細胞は取り除かれて最終製剤緩衝液(FFB)の入った50mlのチューブに移された。FFBは、1%のHSAを添加したプラズマライト A(PlasmaLyte A)である。再活性化細胞は遠心分離され、上澄み液は取り除かれてFFB中で再懸濁された。これらは、製剤緩衝液内細胞(CFB)と呼ばれる。
【0045】
CFBは、1mlあたり107個の細胞濃度でFFBにて再び懸濁された。CFBは、皮内(ID)投与、脊椎内(IT)投与または静脈内(IV)投与用に懸濁された。細胞懸濁液の1mlは、皮内(ID)投与調剤として3mlの注射器に加えられ、脊椎腔内(IT)投与調剤として3ml、静脈内(IV)投与配合剤として5ml、それぞれの注射器に加えられた。適切な調剤の入ったこれらの注射器は平均温度約4℃で冷蔵保存された。
【0046】
保存後のサンプルの採取―
細胞および上澄み液は異なる時点で採取された。採取点は以下の通りであった:0(起点)、室温(RT)で2時間、4℃で48時間、および4℃で48時間保存後室温で2時間。
【0047】
各時点で、100ul(μl)の細胞懸濁液を採取し、細胞を400gで5分間4℃で回転させた。次に、上澄み液を後にELISA法法でIFNーγを検出するために別のチューブに移した。細胞はフローサイトメトリーのために染色バッファ150ul中で再懸濁された。いくつかの実験では、細胞は100ulのcRPMI培地に再懸濁され、37℃で24時間5%CO2でインキュベータ内で培養された。24時間培養した後上澄み液は取り除かれ、ELISA法法によりIFN−γを検出した。
【0048】
フローサイトメトリー(CD40Lおよび7−ADD)―
50ulの細胞懸濁液は上記150ulから3つのエッペンドルフチューブに移され、それぞれ染色なし、CD40L、および7ーADDと表記された。染色なしのチューブは、氷上で20分間培養された。CD40Lチューブは、製造者の指示に従って氷上で20分間FcR結合阻害剤とともにプレインキュベートされた。次に、染色緩衝液40ul(PBS+1%FBS)とPEーCD40L抗体10ulが、細胞懸濁液に添加されて、さらに20分間暗闇の氷上で培養された。
【0049】
細胞の生存率は、7ーAADのフローサイトメトリーにより試験された。7ーAADは死細胞または損傷を受けた細胞のDNA中にインターカレートし、7ーAAD陽性細胞の測定は細胞生存性の指標となる。7ーAADのチューブは400gで5分間6℃で遠心分離された。上澄み液を取り除いた後、細胞ペレットが100ulの1x7ーAAD液中で再懸濁された。チューブは、氷上で15分間暗闇で培養された。染色緩衝液1mlがCD40Lチューブに添加され、次に3つのチューブが一緒に遠心分離された。上澄み液を捨てた後で、細胞ペレットは0.4mlの染色緩衝液に再懸濁されてFACS機器が操作された。
【0050】
IFN―γELISA法―
上澄み液中で分泌されたIFNーγは、製造者の指示に従って、IFNーγサンドイッチELISA法キット(R&D Systems, Mpls. MN)によって測定された。
【0051】
実施例1
この実験は、製剤緩衝液内細胞(CFB)が、搬送後に低温で安定するかどうかを測定するために実施された。いくつかのバッチの細胞懸濁液をFFBで調製し、メールサービス(フェデラルエックスプレス)で搬送した。温度は、データロガーによってモニターされた。事前に調整されていないボックスおよび事前に調整されたエアロゲル絶縁ボックス内の温度変化がモニターされた。外部温度もまたモニターされた。3つの異なるバッチが調製および搬送された。上澄み液のサンプルは、培養で活性化された細胞(CAC)、調製直後のCFB、室温(RT)で2時間経過後のCFB、4℃で48時間経過後のCFB、4℃で48時間経過し室温で2時間経過後のCFB、から採取された。CACは、CD40Lの発現の検査を受け、残りの細胞は、CD40Lの発現と細胞の生存率の検査を受けた。
【0052】
図1Aおよび図1Bは、搬送中に細胞が曝される温度を示す。図1Aは、サンプルが事前に調整されたボックスで梱包されていない場合に、温度が、約48時間以内に約5℃から約13.7℃に変化したことを示す。サンプルは安定しており、温度の大幅な変動が許容されることを示す。図1Bは、事前に調整された絶縁ボックス内の温度が極めて安定したままであることを示す。その温度は、0.2℃から2.2℃に変化した。図1Cは、搬送中の外部温度の変化を示す。
【0053】
図2Aから図2Cは、CD40Lの発現がさほど変化しなかったことを示す。図3Aから図3Cは、搬送後の細胞生存率が搬送前の細胞生存率と似ていることを示す。これら結果は、パッケージ内での約2℃から約13℃のような広範囲内での治療的組成物の保存が、弊害をもたらすわけではないことを意味する。
【0054】
実施例2
本研究は、低温によってCFBの使用期限を延長可能かどうか測定するために実施された。室温でCFBを有する様々な製剤の安定性を試験した。CFBは、上述の通り、皮内(ID)投与、脊椎内(IT)投与、または静脈内(IV)投与用に調製された。低温安定が延長され得るかどうかを確認するために、これら製剤の安定性を試験した。
【0055】
バッチHTC264、HTC245、およびHTC273が、皮内(ID)投与、脊椎内(IT)投与または静脈内(IV)投与用に調製され、調整後室温で6時間、CD40Lの発現、細胞生存率、およびIFN−γの分泌の試験を受けた。図6Aから図6C図7Aから図7C、および図8Aから図8Cは、これら試験の結果を示す。全部で3つのこれらパラメーターは、室温で6時間後に安定する。図9Aから図9Cは、CD40Lの発現が4℃で48時間保存後に安定することを示す。図11Aから図11Cは、細胞生存率が4℃で48時間保存に安定することを示す。図10Aから図10Cは、IFN−γ分泌が、4℃で48時間後も回復しないことを示す。しかし、以下に示すとおり、これは、RPMIに戻して、24時間37℃で培養することで回復し得る。
【0056】
3つのバッチ(HTC264、HTC245、およびHTC273)は、皮内(ID)製剤、脊椎内(IT)製剤または静脈内(IV)製剤として調製された。各製剤に合計4つの注射器(室温、4℃で24時間、4℃で48時間、4℃で72時間)を作り、それぞれ異なる時間4℃で培養した。サンプルを、2時間室温に戻して培養した後に採取した。以下の表1は、各細胞バッチに関して実施された時間、サンプル、および試験を示す。IFN−γレベルもまた、細胞が24時間37℃で培養された時に測定した。
【0057】
【表1】
【0058】
図12Aから図12D図13Aから図13D、および図16Aから図14Dは、バッチHTC264、HTC245、およびHTC273それぞれの結果を示す。これらバッチの皮肉投与製剤が図に示す通り試験された。結果は、4℃のCFBは、72時間経過後でも(図12A図13Aおよび図16A)細胞表面上でCD40Lの発現を維持できることを示す。細胞生存率は、低温保存によってそれほど影響されなかった(図12B図13Bおよび図16B)。IFN−γ分泌レベル(図12C図13Cおよび図16C)は、細胞が2時間だけ室温(RT)に戻された場合に低下する。しかしながら、IFN−γレベルは、細胞がRPMI培地に戻され、24時間生理的温度(37℃)で培養される場合に、回復する(図12D図13Dおよび図14D)。これは、細胞が、72時間低温を保ったあとも依然IFN−γを分泌できることを意味する。これは、これら細胞が治療的に投与された場合に、IFN−γが、長期に渡って保存されていない細胞と同じレベルで患者内にて生成され得ることを意味する。
【0059】
実施例3
本実験は、CAC細胞とCFB細胞の安定性を比較するために実施された。3つの異なる細胞バッチは、皮内(ID)注射器として調製された。各バッチで、CAC用に注射器一つ、CFB用に注射器一つを準備した。CACを、cRPMIを用いて解凍および洗浄した。細胞のカウント後、細胞ペレットを、FFBを有する1mlあたり109個の細胞で再懸濁し、細胞懸濁液の1mlを3ml注射器に移した。CFBに関しては、細胞ペレットを、cRPMIを用いて1mlあたり109個の細胞内にて再懸濁し、抗CD3/抗CD28ビーズと混ぜた。細胞とビーズの混合物を、5%のCO2を用いて37℃で4時間培養した。細胞は、FFBで洗浄され、FFBを有する1mlあたり107個の細胞内にて再懸濁された。細胞懸濁液を3ml注射器に移した。各時点で、100ul(μl)のサンプルが、CD40L、IFN−γ、生存率の試験用に注射器から採取された。4℃で48時間培養後、いくつかのサンプルは、FFBを取り除くために400gで5分間遠心分離された。上澄み液を捨てた後で、細胞ペレットを、100ulのcRPMI培地で再懸濁し、37℃で2時間5%のCO2で培養した。上澄み液は、IFN−γの検出用に採取された。下の表2は、採取されたサンプルおよび実施された試験を列記する。
【0060】
【表2】
【0061】
本結果は、4℃で48時間のCACの培養が細胞表面でのCD40Lの発現が著しく減少したことを意味する。図15Aから図15Cを参照されたい。しかし、4℃で48時間のCFBの培養は、CD40Lの発現を維持することができ、これは、CD3とCD28の架橋結合が細胞の安定性にとって極めて重要であることを意味する。CFBは、4℃で48時間培養した後も、生存率を維持し得、大量のIFN−γを分泌し得る。図16Aから図16Cおよび図17Aから図17Cを参照されたい。
【0062】
実施例4
本研究は、イスラエルのエルサレムの生産施設からポイントオブケアへの梱包および搬送後の調製されたCFBの安定性を測定するために実施された。調整過程が終わると、細胞は、その生存率、固有性および機能特性を失い得る非栄養性の注入緩衝液に移されるので、CFB製品が、搬送中に72時間経過後、予め決められた固有性および機能特性を継続して満たすことを確認することは極めて重要であった。低温によって遺伝子発現および細胞の活動が減速し得り、かつ、この遺伝子発現は細胞を生理的温度に戻すことで回復し得ることが、知られている。このため、搬送は、事前認証済みで、冷蔵された、温度調整された容器を用いて行われる。
【0063】
CFB細胞は、搬送前の細胞特性(ベースライン時―4時間活性化後に調製された注射器=FF)をFF完了後最短72時間でニューヨークに搬送後に得られた細胞特性と比較することで、所定の固有性および機能特性が搬送中に72時間経過後に維持されるかどうかを確認するために試験した。
【0064】
所定の終点パラメーターは以下であった:
1.生存率試験:CFB生存率は、全ての試験時点で、生細胞の70%より大きくなければならない。
【0065】
2.ラピッドエンドトキシン試験:ベースライン時および4℃で72時間経過後に採取したサンプルのエンドトキシンレベルは、1mlあたり0.5Euより大きくなければならない。
【0066】
3.グラム染色:全ての試験時点で採取されたサンプルのスライド上にて、細菌は発見されてはならない。
4.表面染色:CD40L AM (CFB−CAC)≧30。
【0067】
5.USP減菌:全ての試験培地にて調製されたサンプルは成長しない。
6.ELISA法で試験されるIFNg分泌
6.1 4時間の活性化中に蓄積するIFNg>1000pgIFNg/1×106
6.2 ベースライン後24時間で蓄積するIFNg>6,000pg/1×106個細胞
6.3 2℃から8℃で72時間経過後、24時間で蓄積するIFNg>6,000pg/1×106個細胞
結果:
3つの別々の最終調整過程が、バッチHTC300の製剤に実施された。注射器に梱包された調製製品は、フライングカーゴ(FC)にてニューヨークに搬送され、イスラエルのエルサレムへ戻った。搬送中の注射器は、搬送パッケージ内の温度ロガーが示す通り、調製終了時から最大72時間まで2℃から8℃に保たれた。結果はすべて表3にまとめられている。
【0068】
【表3A】
【0069】
【表3B】
【0070】
表3から分かるように、3つの調製されたバッチは全て、所定の合格基準をパスしたので、示された流通条件におけるCFBの安定性を実証した。
本発明は、好ましい実施の形態に関して記載されているが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく当業者は形式上のおよび詳細において変更がされ得ることは認識されるであろう。
図1A
図1B
図1C
図2A-2C】
図3A-3C】
図4A-4C】
図5A-5C】
図6A-6C】
図7A-7C】
図8A-8C】
図9A-9C】
図10A-10C】
図11A-11C】
図12A-12D】
図13A-13D】
図14A-14D】
図15A-15C】
図16A-16C】
図17A-17C】