(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池セルの破壊の原因となる燃料枯渇を抑制するため、各燃料電池に対するガス供給量の差を小さくすることが好ましい。これに対して、マニホールドの内部空間において局所的にガスの滞留部が生じると、その滞留部と対応する燃料電池セルに対するガス供給量が小さくなり、他の燃料電池セルに対するガス供給量との差が大きくなってしまう。そこで、本発明は、内部空間における局所的なガス滞留部の発生を抑制することのできるマニホールドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある側面に係るマニホールドは、複数の燃料電池セルにガスを分配するように構成されている。このマニホールドは、底壁と、側壁と、上壁と、を備えている。側壁は、底壁から上方に延びる。上壁は、各燃料電池が取り付けられるように構成されている。底壁、側壁、及び上壁は、マニホールドの内部空間を画定する。側壁及び上壁の少なくとも一方は、複数のガス導入口を有する。
【0006】
このマニホールドは、側壁が複数のガス導入口を有しているため、1つのガス導入口しか有していないマニホールドに比べて、内部空間における局所的なガス滞留部の発生を抑制することができる。なお、側壁が複数のガス導入口を有していてもよいし、上壁が複数のガス導入口を有していてもよい。
【0007】
好ましくは、側壁は、一対の第1側壁と、一対の第2側壁と、を有する。一対の第1側壁は、第1方向において互いに対向する。一対の第2側壁は、第1方向と直交する第2方向において互いに対向する。
【0008】
好ましくは、一対の第1側壁のうち一方の側壁は、複数の導入口を有する。
【0009】
好ましくは、第1側壁と第2側壁との第1境界部の内側面は、R形状である。この構成によれば、各燃料電池セルに対するガス供給量の差をさらに小さくすることができる。
【0010】
好ましくは、底壁と第1側壁及び第2側壁との第2境界部の内側面は、R形状である。
この構成によれば、各燃料電池セルに対するガス供給量の差をさらに小さくすることができる。
【0011】
好ましくは、マニホールドは、第1側壁及び第2側壁から外方に延びる第1フランジ部をさらに備えている。上壁は、第1フランジ部に固定される。
【0012】
好ましくは、第1側壁及び第2側壁と第1フランジ部との第3境界部の内側面は、R形状である。この構成によれば、各燃料電池セルに対するガス供給量の差をさらに小さくすることができる。
【0013】
好ましくは、第3境界部と上壁との間に第1隙間部が形成される。この構成によれば、この第1隙間部を有さないマニホールドに比べて、この第1隙間部においてマニホールドが変形しやすくなる。このため、マニホールドに燃料電池セルを接合材によって固定している場合において、その第1接合材に生じる応力が低減するため、燃料電池スタックの信頼性が向上する。
【0014】
好ましくは、上壁と第1側壁及び第2側壁との第4境界部の内側面は、R形状である。
この構成によれば、各燃料電池セルに対するガス供給量の差をさらに小さくすることができる。
【0015】
好ましくは、マニホールドは、第1側壁及び第2側壁の下端部から外方に延びる第2フランジ部をさらに備える。底壁は、第2フランジ部に固定される。
【0016】
好ましくは、第1側壁及び第2側壁と第2フランジ部との第5境界部の内側面は、R形状である。
この構成によれば、各燃料電池セルに対するガス供給量の差をさらに小さくすることができる。
【0017】
好ましくは、第5境界部と底壁との間に第2隙間部が形成される。
【0018】
好ましくは、マニホールドは、各導入口に取り付けられる複数の導入管をさらに備える。この構成によれば、振動などの外力がマニホールドに加わった際に生じる応力を各導入管に分散させることができる。なお、導入管の肉厚は、側壁及び底壁の肉厚よりも薄いことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、マニホールドの内部空間における局所的なガス滞留部の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[燃料電池スタック]
以下、本発明に係るマニホールドを採用した燃料電池スタックの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1〜
図3に示すように、燃料電池スタック100は、複数の燃料電池セル1と、マニホールド2と、を備えている。
【0022】
[マニホールド]
マニホールド2は、各燃料電池セル1にガスを分配するように構成されている。マニホールド2は、中空状であり、内部空間を有している。マニホールド2の内部空間には、第1導入管201及び第2導入管202を介して燃料ガスなどのガスが導入される。マニホールド2は、この内部空間と外部とを連通する複数の貫通孔27を有している。
【0023】
マニホールド2は、各燃料電池セル1を支持している。マニホールド2は、マニホールド本体21と、上壁22とを備えている。マニホールド本体21と上壁22とは、互いに別部材であって接合されている。なお、マニホールド本体21と上壁22とは、一体的に形成されていてもよい。このマニホールド本体21と上壁22とによって、マニホールド2の内部空間を画定している。この内部空間は、例えば、直方体状である。
【0024】
マニホールド本体21は、直方体状であって、上面が開口した内部空間を有する。詳細には、マニホールド本体21は、底壁23と、一対の第1側壁24と、一対の第2側壁25と、を有している。また、マニホールド本体21は、第1フランジ部26を有していてもよい。
【0025】
底壁23は、平面視(x軸方向視)が矩形状である。各第1側壁24及び各第2側壁25は、底壁23の周縁部から上方に延びている。一対の第1側壁24は、マニホールド2の内部空間の奥行き方向(z軸方向)において、互いに対向するように配置されている。また、一対の第2側壁25は、マニホールド2の内部空間の幅方向(y軸方向)において、互いに対向するように配置されている。奥行き方向と幅方向とは、平面視(x軸方向視)において互いに直交する。なお、奥行き方向は本発明の第1方向の一例であり、幅方向は本発明の第2方向の一例である。
【0026】
図4に示すように、一対の第1側壁24のうち一方の第1側壁24は、第1ガス導入口241及び第2ガス導入口242を有している。この第1ガス導入口241及び第2ガス導入口242から、マニホールド2の内部空間にガスが導入される。すなわち、マニホールド2の1つの内部空間に対して、2つのガス導入口241,242からガスを導入するように構成されている。
【0027】
第1ガス導入口241及び第2ガス導入口242は、円形状に形成されている。第1ガス導入口241及び第2ガス導入口242は、互いに同じ面積とすることが好ましい。第1ガス導入口241及び第2ガス導入口242は、高さ方向(x軸方向)において、第1側壁24の中央部に形成されていることが好ましい。
【0028】
また、第1ガス導入口241及び第2ガス導入口242は、幅方向(y軸方向)における第1側壁24の中心線に対して線対称となるように配置されていることが好ましい。第1ガス導入口241の中心と一方の第2側壁25との距離L1は、第2ガス導入口242の中心と他方の第2側壁25との距離L2と略等しくなるように各ガス導入口241,242が配置されていることが好ましい。また、第1ガス導入口241と第2ガス導入口242との距離L3は、距離L1又は距離L2よりも大きくなるように、各ガス導入口241,242が配置されていることが好ましい。
【0029】
この第1ガス導入口241及び第2ガス導入口242が形成された第1側壁24に、第1導入管201及び第2導入管202が取り付けられる。本実施形態では、
図5に示すように、第1導入管201及び第2導入管202は、第1側壁24の外側面に当接されている。なお、
図6に示すように、第1導入管201はガス導入口241に挿入され、第2導入管202は第2ガス導入口242に挿入されていてもよい。また、各導入管201,202は底壁23に対して平行に取り付けられていることが好ましいが、特にこれに限定されない。
【0030】
第1ガス導入口241から導入されるガスの流速と、第2ガス導入口242から導入されるガスの流速とは、互いに同じとすることが好ましい。
【0031】
第1フランジ部26は、各第1側壁24及び各第2側壁25の上端部から外方に延びている。第1フランジ部26は、環状である。
【0032】
マニホールド本体21は、1つの部材によって構成されている。すなわち、底壁23と各第1側壁24と各第2側壁25と各第1フランジ部26とは、1つの部材によって構成されている。例えば、マニホールド本体21は、耐熱性を有するような金属あるいは絶縁性セラミックスによって形成される。より具体的には、マニホールド本体21は、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、Ni基合金、MgO(酸化マグネシウム)、Al
2O
3(酸化アルミニウム)、MgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)、MgO・SiO
2(ステアタイト)、及び2MgO・SiO
2(フォルステライト)よりなる群から選ばれる少なくとも1種から形成されている。
【0033】
図7に示すように、第1側壁24と、第2側壁25との第1境界部20aの内側面は、R形状である。この第1境界部20aの内側面の曲率半径は、3〜30mm程度とすることができる。なお、第1境界部20aの内側面とは、マニホールド2の内部空間を臨む面である。
【0034】
図4及び
図8に示すように、底壁23と、第1側壁24及び第2側壁25との第2境界部20bの内側面は、R形状である。この第2境界部20bの内側面の曲率半径は、2〜20mm程度とすることができる。なお、第2境界部20bの内側面とは、マニホールド2の内部空間を臨む面である。
【0035】
第1側壁24及び第2側壁25と、第1フランジ部26との第3境界部20cの内側面は、R形状である。この第3境界部20cの内側面の曲率半径は、1〜10mm程度とすることができる。なお、第3境界部20cの内側面とは、マニホールド2の内部空間を臨む面である。
【0036】
図8に示すように、マニホールド2の内部空間の高さ方向(x軸方向)において、第3境界部20cと上壁22との間に第1隙間部28が形成されている。すなわち、上壁22の下面と第1フランジ部26の上面とは接触している一方、上壁22の下面と第3境界部20cの内側面とは接触していない。第1隙間部28は、全周に亘って形成されている。
【0037】
図4に示すように、上壁22は、マニホールド本体21の上面を塞ぐように、マニホールド本体21上に配置されている。詳細には、上壁22は、第1フランジ部26に固定されている。マニホールド2の内部空間を密閉するため、上壁22が全周に亘ってマニホールド本体21と接合されている。例えば、上壁22とマニホールド本体21とは、結晶化ガラスによって接合されている。上壁22は、上述したマニホールド本体21の材料の少なくとも一種から形成することができる。
【0038】
図9に示すように、上壁22は、各燃料電池セル1が取り付けられるように構成されている。詳細には、上壁22は、複数の貫通孔27を有している。各貫通孔27は、マニホールド2の幅方向(y軸方向)に延びている。また、各貫通孔27は、マニホールド2の奥行き方向(z軸方向)において、互いに間隔をあけて配置されている。
【0039】
図7及び
図8に示すように、マニホールド2の内部空間は、互いに直交する奥行きD、幅W、及び高さHを有している。奥行きDは、一対の第1側壁24間の距離である。本実施形態では、奥行きDは、ガスの導入方向(z軸方向)におけるマニホールド2の内部空間の寸法である。
【0040】
幅Wは、平面視(x軸方向視)において奥行きDと直交する方向におけるマニホールド2の内部空間の寸法である。すなわち、幅Wは、一対の第2側壁25間の距離である。また、高さHは、奥行きD及び幅Wと直交する方向における内部空間の寸法である。すなわち、高さHは、上壁22と底壁23との距離である。
【0041】
内部空間の奥行きDは、50〜450mm程度とすることができる。また、内部空間の幅Wは、30〜200mm程度とすることができる。また、内部空間の高さHは5〜50mm程度とすることができる。
【0042】
[燃料電池セル]
図1から
図3に示すように、各燃料電池セル1は、マニホールド2から上方に延びている。詳細には、各燃料電池セル1は、マニホールド2の上壁22から上方に延びている。燃料電池セル1の下端部101は、貫通孔27内に挿入されている。なお、燃料電池セル1の下端部101が貫通孔27内に挿入された状態において、燃料電池セル1の下端部101の外周面と貫通孔27の内壁面との間には隙間が形成されている。この隙間に第1接合材3が充填されていてもよい。
【0043】
各燃料電池セル1は、マニホールド2の内部空間の奥行き方向(z軸方向)に沿って、互いに間隔をあけて配置されている。また、各燃料電池セル1は、各主面が奥行き方向(z軸方向)を向くように配置されている。なお、各燃料電池セル1は、奥行き方向(z軸方向)に沿って等間隔に配置されていなくてもよい。また、本実施形態では各燃料電池セルが1列に配置されているが、複数列に配置されていてもよい。各燃料電池セル1は、第1集電部材4を介して互いに電気的に接続されている。第1集電部材4は、各燃料電池セル1の間に配置されており、隣り合う各燃料電池セル1を接続している。なお、第1集電部材4は、第2接合材5によって各燃料電池セル1に接合されている。第1集電部材4は、導電性を有する材料から形成されている。例えば、第1集電部材4は、酸化物セラミックスの焼成体又は金属などによって形成されている。
【0044】
図10に示すように、燃料電池セル1は、複数の発電素子部11と、支持基板12とを備えている。各発電素子部11は、支持基板12の両面に支持されている。なお、各発電素子部11は、支持基板12の片面のみに支持されていてもよい。各発電素子部11は、燃料電池セル1の長手方向(x軸方向)において、互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、本実施形態に係る燃料電池セル1は、いわゆる横縞型の燃料電池セルである。
【0045】
各発電素子部11は、電気的接続部17(
図12参照)によって互いに電気的に接続されている。また、燃料電池セル1の上端部102側において、支持基板12の一方面に形成された発電素子部11と他方面に形成された発電素子部11とが第2集電部材6(
図2参照)によって電気的に接続されている。なお、各発電素子部11は、直列に接続されている。
【0046】
図3に示すように、支持基板12は、支持基板12の長手方向(x軸方向)に延びる複数のガス流路121を内部に有している。ガス流路121は、マニホールド2の内部空間と連通している。各ガス流路121は、支持基板12の幅方向(y軸方向)において互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、各ガス流路121は、マニホールド2の幅方向(y軸方向)において互いに間隔をあけて配置される。
【0047】
燃料電池セル1の各ガス流路121のうち、両端部に形成されたガス流路121は、マニホールド2の内部空間の幅方向の端部と対応するように配置されている。例えば、幅方向(y軸方向)の両端部に形成されたガス流路121の流路の下端面の中心と、第2側壁25の内壁面との距離L4は、0.5〜15mm程度である。また、
図11に示すように、奥行き方向(z軸方向)におけるガス導入口241とガス流路121の流路の下端面の中心との距離L5は、1〜30mm程度である。
【0048】
なお、距離L4は、第2側壁25からの距離が幅方向において最も近いガス流路121の中心と、第2側壁25の内壁面との幅方向における距離である。また、距離L5は、複数のガス流路121のうちガス導入口241に対して最も近いガス流路121の中心と、ガス導入口241が設けられた第1側壁24の内壁面との奥行き方向における距離である。また、各ガス流路121は、基本的にyz平面視で長方形を描くように配置されていることが好ましいが、多少位置がずれていてもよい。
【0049】
支持基板12の長手方向(x軸方向)は、燃料電池セル1の長手方向と同じ方向である。各ガス流路121は、互いに実質的に平行に延びている。各ガス流路121は、支持基板12の長手方向の両端面において開口している。
【0050】
図12に示すように、支持基板12は、複数の第1凹部123を有している。各第1凹部123は、支持基板12の両面に形成されている。各第1凹部123は支持基板12の長手方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0051】
支持基板12は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板12は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、支持基板12は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板12の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。
【0052】
各発電素子部11は、燃料極13、電解質14、及び空気極15を有している。また、各発電素子部11は、反応防止膜16をさらに有している。燃料極13は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極13は、燃料極集電部131と燃料極活性部132とを有する。
【0053】
燃料極集電部131は、第1凹部123内に配置されている。詳細には、燃料極集電部131は、第1凹部123内に充填されており、第1凹部123と同様の外形を有する。各燃料極集電部131は、第2凹部131a及び第3凹部131bを有している。燃料極活性部132は、第2凹部131a内に配置されている。詳細には、燃料極活性部132は、第2凹部131a内に充填されている。
【0054】
燃料極集電部131は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部131は、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部131の厚さ、並びに第1凹部123の深さは、50〜500μm程度である。
【0055】
燃料極活性部132は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部132は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部132の厚さは、5〜30μmである。
【0056】
電解質14は、燃料極13上を覆うように配置されている。詳細には、電解質14は、あるインターコネクタ171から他のインターコネクタ171まで長手方向に延びている。すなわち、燃料電池セル1の長手方向において、電解質14とインターコネクタ171とが交互に配置されている。
【0057】
電解質14は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質14は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、電解質14は、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質14の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0058】
反応防止膜16は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜16は、電解質14と空気極15との間に配置されている。反応防止膜16は、電解質14内のYSZと空気極15内のSrとが反応して電解質14と空気極15との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。
【0059】
反応防止膜16は、希土類元素を含むセリアを含んだ材料から構成されている。反応防止膜16は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O
2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜16の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0060】
空気極15は、反応防止膜16上に配置されている。空気極15は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極15は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極15は、LSF=(La,Sr)FeO
3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O
3(ランタンニッケルフェライト)、又は、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。空気極15は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極15の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0061】
電気的接続部17は、隣り合う発電素子部11を電気的に接続するように構成されている。電気的接続部17は、インターコネクタ171及び空気極集電部172を有する。インターコネクタ171は、第3凹部131b内に配置されている。詳細には、インターコネクタ171は、第3凹部131b内に埋設(充填)されている。インターコネクタ171は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ171は、例えば、LaCrO
3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、インターコネクタ171は、(Sr,La)TiO
3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ171の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0062】
空気極集電部172は、インターコネクタ171と空気極15との間を延びるように配置される。例えば、
図12の左側に配置された発電素子部11の空気極15と、インターコネクタ171とを電気的に接続するように、空気極集電部172が配置されている。空気極集電部172は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。
【0063】
空気極集電部172は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極集電部172は、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、空気極集電部172は、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電部172の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
【0064】
図13に示すように、燃料電池セル1の下端部101は、緻密膜18によって覆われている。詳細には、緻密膜18は、支持基板12を覆っている。緻密膜18は、空気極集電部172と支持基板12との間から近位側に向かって延びている。
【0065】
緻密膜18は、緻密膜18の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密膜18の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。このガスシール機能を発揮するため、この緻密膜18の気孔率は、例えば、10%以下である。また、緻密膜18は、絶縁性セラミックスで構成されている。
【0066】
具体的には、緻密膜18は、上述した電解質14と反応防止膜16とによって構成することができる。緻密膜18を構成する電解質14は、支持基板12を覆っており、インターコネクタ171から支持基板12の下端近傍まで延びている。また、緻密膜18を構成する反応防止膜16は、電解質14と空気極集電部172との間に配置されている。なお、緻密膜18は、電解質14のみで構成されていてもよいし、電解質14及び反応防止膜16以外の材料によって構成されていてもよい。
【0067】
[第1接合材]
第1接合材3は、燃料電池セル1をマニホールド2に固定する。詳細には、第1接合材3は、燃料電池セル1とマニホールド2の上壁22とを接合している。第1接合材3は、燃料電池セル1の下端部101とマニホールド2の上壁22とを接合している。また、第1接合材3は、緻密膜18と接触している。なお、燃料電池セル1がマニホールド2に固定された状態において、貫通孔27とガス流路121とが連通している。
【0068】
第1接合材3は、例えば、結晶化ガラスである。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO
2−B
2O
3系、SiO
2−CaO系、又はSiO
2−MgO系が採用され得る。なお、本明細書では、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスを指す。なお、第1接合材3の材料として、非晶質ガラス、ろう材、又はセラミックス等が採用されてもよい。具体的には、第1接合材3は、SiO
2−MgO−B
2O
5−Al
2O
3系及びSiO
2−MgO−Al
2O
3−ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0069】
[発電方法]
以上のように構成された燃料電池スタック100は、次のようにして発電する。マニホールド2を介して各燃料電池セル1のガス流路121内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板12の両面を酸素を含むガス(空気等)に曝すことにより、電解質14の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。この燃料電池スタック100を外部の負荷に接続すると、空気極15において下記(1)式に示す電気化学反応が起こり、燃料極13において下記(2)式に示す電気化学反応が起こり、電流が流れる。
(1/2)・O
2+2e
−→O
2− …(1)
H
2+O
2−→H
2O+2e
− …(2)
【0070】
[製造方法]
次に、上述したように構成された燃料電池スタックの製造方法について説明する。
【0071】
まず、マニホールド2と複数の燃料電池セル1とを準備する。そして、
図14に示すように、第1集電部材4、及び第2接合材5によって、各燃料電池セル1を互いに接続し、セル集合体300を作製する。なお、この段階では第2接合材5は焼成されておらず、各燃料電池セル1は互いに仮止めの状態である。
【0072】
次に、
図15に示すように、セル集合体300の各燃料電池セル1の下端部101をマニホールド2の各貫通孔27に挿入する。なお、各燃料電池セル1が厚さ方向に沿って所定の間隔を保持するための治具を用いてもよい。
【0073】
次に、
図2に示すように、貫通孔27に挿入された燃料電池セル1とマニホールドの上壁22とを接合するように第1接合材3を塗布する。なお、第1接合材3は、燃料電池セル1の付け根に沿って塗布されている。また、第1接合材3は、燃料電池セル1の下端部101の外周面と貫通孔27の内壁面との隙間に充填されていてもよい。
【0074】
次に、第1接合材3及び第2接合材5に対して熱処理が加えられる。この熱処理によって、第1接合材3及び第2接合材5が固化され、燃料電池スタック100が完成する。詳細には、第2接合材5は、熱処理を施されることによって焼成される。この結果、各燃料電池セル1と第1集電部材4とが固定される。また、第1接合材3は、熱処理を施されることによって、非晶質材料の温度が結晶化温度まで到達する。そして、結晶化温度下にて材料の内部で結晶相が生成されて、結晶化が進行していく。この結果、非晶質材料が固化・セラミックス化されて、結晶化ガラスとなる。これにより、結晶化ガラスで構成される第1接合材3が機能を発揮し、各燃料電池セル1の下端部101がマニホールド2の上壁22に固定される。
【0075】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0076】
変形例1
上記実施形態では、燃料極集電部131が第2凹部131a及び第3凹部131bを有しているが、燃料極集電部131の構成はこれに限定されない。例えば、燃料極集電部131は第2凹部131a及び第3凹部131bなどの凹部を有していなくてもよい。この場合、燃料極活性部132は、燃料極集電部131上に形成されており、燃料極集電部131に埋設されていない。また、インターコネクタ171は、燃料極集電部131上に形成されており、燃料極集電部131に埋設されていない。
【0077】
変形例2
上記実施形態では、燃料電池セル1は、複数の発電素子部11を有している横縞型であったが、燃料電池セル1は、長手方向に延びる一つの発電素子部を有するような縦縞型であってもよい。また、燃料電池セル1は、横縞円筒型であってもよい。
【0078】
変形例3
上記実施形態では、第1ガス導入口241及び第2ガス導入口242は円形状であったが、ガス導入口の形状は特にこれに限定されず、例えば、楕円形や矩形状であってもよい。また、第1ガス導入口241と第2ガス導入口242とは、互いに異なる面積であってもよい。
【0079】
変形例4
上記実施形態では、2つのガス導入口241,242が形成されていたが、ガス導入口の数は特に限定されず、3つ以上であってもよい。また、上記実施形態では、第1ガス導入口241と第2ガス導入口242とは、同じ第1側壁24に形成されていたが、異なる側壁に形成されていてもよい。例えば、第1ガス導入口241は、一方の第1側壁24に形成され、第2ガス導入口242は、他方の第1側壁24に形成されてもよい。他にも、第1ガス導入口241は、第1側壁24に形成され、第2ガス導入口242は、第2側壁25に形成されていてもよい。他にも、各ガス導入口241,242が上壁22に形成されていてもよい。
【0080】
変形例5
上記実施形態では、マニホールド本体21の上面が開口しており、上壁22によってマニホールド本体21の上面が封鎖されているが、マニホールド2の構成はこれに限定されない。
【0081】
例えば、
図16に示すように、マニホールド本体21は、下面が開口しており、底壁23によってマニホールド本体21の下面を封鎖するような構成であってもよい。この場合、マニホールド本体21は、上壁22と、一対の第1側壁24と、一対の第2側壁25と、を有している。また、マニホールド本体21は、第2フランジ部29を有していてもよい。第2フランジ部29は、第1側壁24及び第2側壁25の下端部から外方に延びている。
【0082】
上壁22と、第1側壁24及び第2側壁25との第4境界部20dの内側面は、R形状である。この第4境界部20dの内側面の曲率半径は、2〜20mm程度とすることができる。なお、第4境界部20dの内側面とは、マニホールド2の内部空間を臨む面である。
【0083】
第1側壁24及び第2側壁25と、第2フランジ部29との第5境界部20eの内側面は、R形状である。この第5境界部20eの内側面の曲率半径は、1〜10mm程度とすることができる。なお、第5境界部20eの内側面とは、マニホールド2の内部空間を臨む面である。
【0084】
図17に示すように、マニホールド2の内部空間の高さ方向(x軸方向)において、第5境界部20eと底壁23との間に第2隙間部30が形成されている。すなわち、底壁23の上面と第2フランジ部29の下面とは接触している一方、底壁23の上面と第5境界部20eの内側面とは接触していない。第2隙間部30は、全周に亘って形成されている。
【0085】
図16に示すように、底壁23は、マニホールド本体21の下面を塞ぐように、マニホールド本体21上に配置されている。詳細には、底壁23は、第2フランジ部29に固定されている。マニホールド2の内部空間を密閉するため、底壁23が全周に亘ってマニホールド本体21と接合されている。例えば、底壁23とマニホールド本体21とは、結晶化ガラスによって接合されている。底壁23は、上述したマニホールド本体21の材料の少なくとも一種から形成することができる。
【0086】
変形例6
上記実施形態では、マニホールド2の内部空間は直方体状としたが、マニホールド2の内部空間の形状は特に限定されない。