特許第6359080号(P6359080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6359080改善された光学特性を有する、耐衝撃性に加工されたPMMA
<>
  • 特許6359080-改善された光学特性を有する、耐衝撃性に加工されたPMMA 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359080
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】改善された光学特性を有する、耐衝撃性に加工されたPMMA
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/00 20060101AFI20180709BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20180709BHJP
   C08L 25/12 20060101ALI20180709BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20180709BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20180709BHJP
   C08F 2/22 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   C08L51/00
   C08L33/04
   C08L25/12
   C08F265/06
   C08J5/00CEY
   C08F2/22
【請求項の数】19
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-504576(P2016-504576)
(86)(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公表番号】特表2016-514743(P2016-514743A)
(43)【公表日】2016年5月23日
(86)【国際出願番号】EP2014055489
(87)【国際公開番号】WO2014154543
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2016年5月26日
(31)【優先権主張番号】13160867.1
(32)【優先日】2013年3月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009128
【氏名又は名称】エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヴェアナー ヘース
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトル クレノフ
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス フリードリヒ デッセル
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク シュテアクレ
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−352837(JP,A)
【文献】 特開2008−239739(JP,A)
【文献】 特開2012−136644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料の全質量に対してそれぞれ、
I. 少なくとも1種のコア−シェル−シェル粒子10.0〜50.0質量%、好ましくは15.0〜45.0質量%、更に好ましくは20.0〜40質量%、前記コア−シェル−シェル粒子は、
a) 水及び乳化剤を装入し、
b)次の:
A) アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するアルキルメタクリラート50.0〜99.9質量部、好ましくは71.0〜99.9質量部、
B) アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するアルキルアクリラート0.0〜40.0質量部、好ましくは0.0〜29.0質量部、
C) 架橋性モノマー0.1〜10.0質量部及び
D) 一般式(I)
【化1】
[式中、基R1〜R5は、それぞれ相互に無関係に水素、ハロゲン、C1〜C6−アルキル基又はC2〜C6−アルケニル基を表し、基R6は、水素又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である]のスチレン系モノマー0.0〜8.0質量部
を有する第1の組成物20.0〜45.0質量部を添加し、かつ前記成分A)、B)、C)及びD)の全質量を基準として少なくとも85.0質量%の転化率にまで重合させ、
c) 次の:
E) (メタ)アクリラート80.0〜100.0質量部、
F) 架橋性モノマー0.05〜5.0質量部及び
G) 前記一般式(I)のスチレン系モノマー0.0〜25.0質量部
を有する第2の組成物35.0〜55.0質量部を添加し、かつ前記成分E)、F)及びG)の全質量を基準として少なくとも85.0質量%の転化率にまで重合させ、
d) 次の:
H) アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するアルキルメタクリラート50.0〜100.0質量部、
I) アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するアルキルアクリラート0.0〜40.0質量部及び
J) 前記一般式(I)のスチレン系モノマー0.0〜10.0質量部
を有する第3の組成物10.0〜30.0質量部を添加し、かつ前記成分H)、I)及びJ)の全質量を基準として少なくとも85.0質量%の転化率まで重合させる方法により製造された又は製造可能であり、
ここで、前記組成物b)、c)及びd)の記載された質量割合は合計して100.0質量部になり、
全ての物質A)〜J)の相対的割合は、コールター法により測定して、70.0〜125.0nmの範囲内の、好ましくは85.0〜110.0nmの範囲内の、特に90.0〜105.0nmの範囲内の全体半径を有するコア−シェル−シェル粒子が得られるように選択されていて、
II. 少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマー1.0〜90.0質量%、好ましくは1.0〜85.0質量、更に特に1.0〜80.0質量%、
III. スチレン−アクリルニトリルコポリマー0.0〜45質量%、好ましくは0.0〜30質量%、特に0.0〜10.0質量%、及び
IV. 他の添加剤0.0〜10.0質量%を有し、ここで、前記成分I)〜IV)の質量パーセントは合計で100.0質量%になり、かつ
II又はII、III及び/又はIVの混合物は、ASTM D 542による測定でIの屈折率とは0.01単位より大きく異ならない、好ましくは0.002単位より大きく異ならない、特に0.001単位より大きく異ならない屈折率を有するように選択されており
前記成形材料は、
a. ISO 179によるシャルピー衝撃強さが、23℃で少なくとも40.0kJ/m2、好ましくは少なくとも60.0kJ/m2、特に少なくとも80.0kJ/m2であり、
b. ASTM D 1003(1997)による曇り値が、80℃で最大15.0%、好ましくは80℃で最大10.0%、特に80℃で最大8%、さらに特に80℃で最大5%である、成形材料の製造方法
【請求項2】
Iによる方法において、各重合は60℃超でかつ90℃未満の範囲内の温度で実施されるか又は各重合はレドックス開始剤系により開始されることを特徴とする、請求項1に記載の成形材料の製造方法
【請求項3】
Iを得るための方法において、段階b)〜d)における前記重合は、ペルオキソ二硫酸塩の使用下で、好ましくはペルオキソ二硫酸アンモニウム及び/又はアルカリ金属ペルオキソ二硫酸塩の使用下で開始されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の成形材料の製造方法
【請求項4】
Iを得るための方法において、水90.00〜99.99質量部及び乳化剤0.01〜10.00質量部を装入し、ここで、記載された質量部の合計は100.00質量部になることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の成形材料の製造方法
【請求項5】
Iを得るための方法において、アニオン性又は非イオン性乳化剤を使用することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の成形材料の製造方法
【請求項6】
Iを得るための方法において、シードラテックスを有する水性エマルションを装入することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の成形材料の製造方法
【請求項7】
コールター法により測定して、10.0〜40.0nmの範囲内の粒子直径を有するシードラテックスを装入することを特徴とする、請求項に記載の成形材料の製造方法
【請求項8】
Iを得るための方法において、アルキル基中に12〜20個の炭素原子を有するアルキルアルコールを含有する水性エマルションを装入することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の成形材料の製造方法
【請求項9】
Iを得るための方法において、第2及び第3のモノマー混合物を消費量の程度に応じて計量供給することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の成形材料の製造方法
【請求項10】
IIによる少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマーは、その全質量を基準としてそれぞれ、
a) アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するアルキルメタクリラート繰返単位52.0〜100.0質量%、
b) アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するアルキルアクリラート繰返単位0.0〜40.0質量%及び
c) 前記一般式(I)のスチレン系繰返単位0.0〜8.0質量%
を有し、ここで、これらの質量パーセントは合計して100.0質量%になることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の成形材料の製造方法
【請求項11】
前記成形材料は、IIIによるスチレン−アクリルニトリルコポリマーを含有し、前記スチレン−アクリルニトリルコポリマーは、混合物の全質量を基準としてそれぞれ、
スチレン70〜92質量%
アクリルニトリル8〜30質量%及び
他のコモノマー0〜22質量%
からなる混合物の重合によって得られたことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の成形材料の製造方法
【請求項12】
前記成形材料は、その全質量部を基準として、IVによる添加剤として他のポリマーを0.1〜10.0質量%含有し、前記添加剤は、IIによる少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマーと比較して、少なくとも10%高い質量平均分子量を有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の成形材料の製造方法
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の成形材料の製造方法を用いた成形品の製造方法であって、
前記成形品は、
a. ISO 179によるシャルピー衝撃強さが、23℃で少なくとも40.0kJ/m2、好ましくは少なくとも60.0kJ/m2、特に少なくとも80.0kJ/m2であり、かつ
b. ASTM D 1003(1997)による曇り値が、80℃で最大15.0%、好ましくは80℃で最大10.0%、特に80℃で最大8%、更に特に80℃で最大5%である成形品の製造方法
【請求項14】
グレージング、好ましくは自動車及び/又は鉄道車両、建築又は機械のグレージングの製造のための、請求項1から12までのいずれか1項に記載の成形材料の製造方法
【請求項15】
グレージング、好ましくは自動車及び/又は鉄道車両、建築又は機械のグレージングの製造のための、請求項13に記載の成形品の製造方法
【請求項16】
通信機器、特にPDA、モバイルフォン、携帯電話、好ましくはスマートフォン;タブレットPC;TV機器;台所用品及び他の電子機器用のディスプレーの製造のための、請求項1から12までのいずれか1項に記載の成形材料の製造方法
【請求項17】
通信機器、特にPDA、モバイルフォン、携帯電話、好ましくはスマートフォン;TV機器;タブレットPC;台所用品及び他の電子機器用のディスプレーの製造のための、請求項13に記載の成形品の製造方法
【請求項18】
照明カバー、好ましくは室内照明用又は自動車照明装置用の照明カバーの製造のための、請求項1から12までのいずれか1項に記載の成形材料の製造方法
【請求項19】
照明カバー、好ましくは室内照明用又は自動車照明装置用の照明カバーの製造のための、請求項13に記載の成形品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性に加工された成形品、特に高めた温度で改善された光学特性を有する、耐衝撃性のPMMA、これから得られた成形品並びに成形材料及び成形品の使用に関する。
【0002】
既に以前から、成形材料に適切な量のいわゆる耐衝撃性改質剤を添加することにより、成形材料、特にポリ(メタ)アクリラート成形材料の耐衝撃性を改善できることは公知である。この場合、この技術において、乳化重合により製造された耐衝撃性改質剤、いわゆるコア−シェル粒子及び/又はコア−シェル−シェル粒子の使用が実施される。この粒子は、一般に、エラストマー相を有し、このコア−シェル構造の場合に大抵はコアが、コア−シェル−シェル構造の場合には大抵はコアにグラフトされた第1のシェルが、エラストマー相である。
【0003】
例えば、米国特許のUS3793402は、特に、硬質のコア、エラストマーの第1のシェル及び硬質の第2のシェルを有する多段階のコア−シェル−シェル粒子90〜4質量%を有するポリ(メタ)アクリラートを基礎とする、耐衝撃性成形材料が開示されている。コアと第2のシェルの典型的な主成分は、アルキル基中に1〜4個の炭素元素を有するアルキルメタクリラート、特にメチルメタクリラートである。この第1のシェルは、主にブタジエン、置換ブタジエン及び/又はアルキル基中に1〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリラートから構成されている。しかしながら、これは、共重合可能なモノマー単位、例えば共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー単位0〜49.9質量%、特に0.5〜30質量%を有することができる。この場合、US3793402によると、共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー単位、特にスチレン10〜25質量%の存在が、特に極めて好ましい。
【0004】
コア−シェル−シェル粒子の製造は、多段階の乳化重合により行い、この場合、熱的開始剤、例えばペルスルファート又はレドックス開始剤系が使用される。この場合、この重合は、0〜125℃の範囲内、特に30〜95℃の範囲内の温度で行われる。
【0005】
同様に、ドイツ国特許出願のDE4121652A1は、熱可塑性プラスチック、例えばポリメチルメタクリラート用の、少なくとも3相の乳化重合体からなる耐衝撃性改質剤を記載していて、この乳化重合体は、
A) エチレン性不飽和の、ラジカル重合可能なモノマーの架橋した単独重合体又は共重合体からなる硬質コア;
B) 次の
a) アルキル基中に1〜8個の炭素原子を有するアクリル酸のアルキルエステル;
b) 分子内に2以上の重合性二重結合を有する、少なくとも1つの架橋性コモノマー;
c) アリールアルキルアクリラート又はアリールアルキルメタクリラート;
d) エラストマー相の存在で製造された、少なくとも50℃のガラス転移温度を有するエチレン性不飽和の、ラジカル重合可能なモノマーの単独重合体又は共重合体からなる硬質相
から構成された、10℃以下のガラス転移温度を有する、コア材料の存在で製造されたエラストマー相を有する。
【0006】
この文献中で実例として記載された成形材料(実施例3)は、室温でのアイゾット−ノッチ付衝撃強さ6.2kJ/m2、−10℃で4.7kJ/m2及び−20℃で3.7kJ/m2を示す。この成形材料のビカー軟化温度は、この場合、97℃である。
【0007】
コア−シェル−シェル粒子の製造は、同様に多段階の乳化重合によって行い、この場合、アルカリ金属ペルオキソ二硫酸塩又はペルオキソ二硫酸アンモニウムを開始剤として使用し、かつこの重合を20〜100℃の範囲内の温度で、例えば50℃の温度で実施する。
【0008】
ドイツ国特許出願のDE4136993A1は、耐衝撃性が改質された成形材料を開示していて、この成形材料は、ポリメチルメタクリラートを基礎とする重合体10〜96質量%、及び多段階のコア−シェル−シェル粒子4〜90質量%を有し、この場合、コア及び第2のシェルの製造のために、それぞれ主にメチルメタクリラートを含むモノマー混合物を使用している。第1のシェル用のモノマー混合物は、アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するアクリル酸アルキルエステル及び/又はシクロアルキル基中に5〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルアクリラート60〜89.99質量%及びアルキル基中に1〜4個の炭素原子を有するアクリル酸−フェニル−アルキルエステル10〜39.99質量%並びに場合により他の成分を有する。このコア−シェル−シェル粒子の平均粒子直径は、50〜1000nmの範囲内、特に150〜400nmの範囲内にある。
【0009】
この文献によると、このコア−シェル−シェル粒子は、多段階のシードラテックス法によって得られ、この場合、ペルオキソ二硫酸アンモニウム又はアルカリ金属ペルオキソ二硫酸塩、例えばペルオキソ二硫酸カリウム、又は組み合わせた開始剤系を重合開始剤として使用し、この重合温度は、熱により活性化すべきペルオキソ二硫酸アンモニウム又はアルカリ金属ペルオキソ二硫酸塩の場合に、50〜100℃であるとしている。
【0010】
欧州特許のEP0828772B1は、多段階のコア−シェル粒子又はコア−シェル−シェル粒子を用いたポリ(メタ)アクリラートの耐衝撃性改質を記載していて、この粒子は、1つのコア、第1のシェル及び場合により第2のシェルからなり、かつ少なくとも2つの同じ反応性の二重結合を有するビニル系不飽和化合物を有しない。この場合、コアは第1の(メタ)アクリルポリマーを有する。第1のシェルは、低いガラス転移温度を有するポリマーを有し、このポリマーは、スチレン系モノマー0〜25質量%、特に5〜26質量%、及び−75〜−5℃のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成する(メタ)アクリルモノマー75〜100質量%を有する。場合により存在する第2のシェルは、第2の(メタ)アクリルポリマーを有し、このポリマーは第1の(メタ)アクリルポリマーと一致するか又はそれとは異なることもできる。このコア−シェル粒子又はコア−シェル−シェル粒子の全体の直径は、250〜320nmの範囲内にある。
【0011】
このコア−シェル粒子又はコア−シェル−シェル粒子の製造は、ここでも多段階の乳化重合によって80℃で行われ、この場合、開始剤として過硫酸カリウムが使用される。
【0012】
国際特許出願のWO2004/056893は、コア−シェル粒子又はコア−シェル−シェル粒子の効果的な製造方法を記載している。ポリアルキル(メタ)アクリラート成形材料の耐衝撃性改質のために特に150.0〜250.0nmの全体半径を有するコア−シェル粒子又はコア−シェル−シェル粒子が適していることが記載されている。この耐衝撃性改質剤は、できる限り少量で、特に室温での成形材料のノッチ付衝撃強さの十分な改善を可能にし、同時に成形材料の他の重要な特性、特に弾性率、溶融粘度、ビカー温度及びダイスエルを著しく悪化させない。得られた成形材料は、23℃でシャルピーによるノッチ付衝撃強さ(ISO179)が好ましくは少なくとも6.0kJ/m2であり、ASTM D 1003(1997)による23℃での曇り値が好ましくは最大2.5%である。しかしながらこの成形材料は80℃では、明らかに悪化した曇り値、つまり顕著な曇りを示す。
【0013】
しかしながら、特に照明及び(自動車)グレージングのような用途のための製品用の成形材料に課せられる基礎的な要求は、高めた温度での光学的透明性である。この場合、ASTM D 1003(1997)によりヘーズメーターBYK Gardner Hazegrad-plusを用いて測定して、15.0%以下、特に10.0%以下、さらに特に6.0%以下の曇り値を有する製品が、光学的に透明であると見なされる。
【0014】
照明及び(自動車)グレージングを製造するために用いられる成形材料についての望ましいのは、従って、高めた温度での曇りの増加を明らかに低減することである。従って、高めた温度でも極めて低い曇り値で高い透明度のような光学特性と組み合わせて靭性についての要求も満たされなければならない。特に、信号着色を備えた照明適用での製品の使用の際には、曇りの増加に基づく色度座標のシフトが生じるべきではなく、これが今まで耐衝撃性を改質した成形材料の使用を制限していた。
【0015】
従って、本発明の課題は、高い耐衝撃性及び改善された曇り挙動を有する成形材料を提供することであった。
【0016】
意外にも、請求項1に記載の成形材料及び請求項14に記載の成形品並びに請求項16〜21に記載の使用によって上述の課題が解決されることが見出された。好ましい実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0017】
本発明の主題は、全体の質量を基準として、それぞれ次の:
I. 少なくとも1つのコア−シェル−シェル粒子10.0〜50.0質量%、好ましくは15.0〜45.0質量%、更に好ましくは20.0〜40.0質量%、
II. 少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマー1.0〜90.0質量%、好ましくは1.0〜85.0質量%、更に好ましくは1.0〜80.0質量%、
III. スチレン−アクリルニトリルコポリマー0.0〜45質量%、好ましくは0.0〜30質量%、好ましくは0.0〜10質量%、及び
IV. 他の添加剤0.0〜10.0質量%を有し、
この場合、成分I〜IVの質量パーセントは合計して100.0質量%になり、かつ
この場合、II又はII、III、及び/又はIVの混合物は、ASTM D 542により測定して、Iの屈折率とは0.01単位より大きく異ならない、好ましくは0.002単位より大きく異ならない、特に0.001単位より大きく異ならない屈折率を有するように選択されている、
成形材料である。
【0018】
コア−シェル−シェル粒子のIは、
a) 水及び乳化剤を装入し、
b) 成分A)、B)、C)及びD)を有する第1の組成物20.0〜45.0質量部を添加し、かつ成分A)、B)、C)及びD)の全質量を基準として少なくとも85.0質量%の転化率まで重合させ、
c) 成分E)、F)及びG)を有する第2の組成物35.0〜55.0質量部を添加し、かつ成分E)、F)及びG)の全質量を基準として少なくとも85.0質量%の転化率まで重合させ、
d) 成分H)、I)及びJ)を有する第3の組成物10.0〜30.0質量部を添加し、かつ成分H)、I)及びJ)の全質量を基準として少なくとも85.0質量%の転化率まで重合させ、
その際、組成物b)、c)及びd)の記載された質量部は合計して100.0質量部となる
方法によって製造されるか又は製造可能である。
【0019】
各工程の重合の反応の進行の追跡は、公知のように、例えば質量測定により又はガスクロマトグラフィーによって行うことができる。
【0020】
Iを得るための方法において、工程a)で好ましくは水90.00〜99.99質量部及び乳化剤0.01〜10.00質量部を装入し、その際、記載された質量部は合計して100.00質量部になる。
【0021】
Iを得るための方法において、重合b)、c)及び/又はd)は、60℃を超えかつ90℃未満の範囲内の温度で実施するか、又はレドックス開始剤系により開始させることができる。
【0022】
好ましい実施態様の場合に、Iを得るための方法において、各重合を60℃を超えかつ90℃未満の範囲内の温度で実施するか又は各重合をレドックス開始剤系により開始させる。好ましくは、Iを得るための方法において、各重合を60℃を超えかつ90℃未満の範囲内の温度で実施する。
【0023】
Iを得るための方法の場合に、工程b)〜d)における重合を、他の実施態様の場合に、70℃を超えかつ85℃未満の範囲内で、好ましくは75℃を超えかつ85℃未満の範囲内の温度で行う。
【0024】
この開始は、乳化重合にとって慣用の開始剤を用いて行うことができる。適切な有機開始剤は、例えばヒドロペルオキシド、例えばtert−ブチル−ヒドロペルオキシド又はクメンヒドロペルオキシドである。適切な無機開始剤は、過酸化水素並びに、ペルオキソ二硫酸のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、特にペルオキソ二硫酸ナトリウム及びペルオキソ二硫酸カリウムである。上述の開始剤は、単独でも混合した形でも使用できる。開始剤は、好ましくはその都度の段階のモノマーの全質量を基準として0.05〜3.0質量%の量で使用される。
【0025】
他の好ましい実施態様の場合に、工程b)〜d)における重合を、ペルオキソ二硫酸塩の使用下で、好ましくはペルオキソ二硫酸アンモニウム及び/又はアルカリ金属ペルオキソ二硫酸塩の使用下で開始する。
【0026】
重合開始剤として、例えば、水相を基準として、アルカリ金属ペルオキソ二硫酸塩又はペルオキソ二硫酸アンモニウム0.01〜0.5質量%を使用することができ、この場合、重合は20〜100℃の温度で引き起こされる。好ましくは、レドックス系、例えば有機ヒドロペルオキシド0.01〜0.05質量%及びRongalit(登録商標)0.05〜0.15質量%からなるレドックス系を用いて20〜80℃の温度で作業する。硬質相の重合の場合に、一般に適切な量の連鎖移動剤、例えばメルカプタンを併用して、硬質相重合体の分子量を、この三相の乳化重合体で改質されるべき成形材料の分子量に適合させる。
【0027】
このバッチの安定化は、乳化剤及び/又は保護コロイドによって行うことができる。低い分散液粘度を得るために、乳化剤を用いた安定化が好ましい。乳化剤の総量は、モノマーA)〜J)の全質量を基準として、好ましくは0.1〜5質量%、特に0.5〜3質量%である。特に適切な乳化剤は、アニオン性及び/又は非イオン性の乳化剤又はこれらの混合物であり、特に:
・ アルキルスルファート、好ましくはアルキル基中に8〜18個の炭素原子を有するアルキルスルファート、アルキル基中に8〜18個の炭素原子を有しかつ1〜50個の酸化エチレン単位を有するアルキル−及びアルキルアリールエーテルスルファート;
・ スルホナート、好ましくはアルキル基中に8〜18個の炭素原子を有するアルキルスルホナート、アルキル基中に8〜18個の炭素原子を有するアルキルアリールスルホナート、スルホコハク酸とアルキル基中に4〜15個の炭素原子を有する1価アルコール又はアルキルフェノールとのエステル及び半エステル;場合によりこのアルコール又はアルキルフェノールは、1〜40個の酸化エチレン単位でエトキシ化されていてもよい;
・ リン酸部分エステル及びそのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、好ましくはアルキル基又はアルキルアリール基中で8〜20個の炭素原子を有しかつ1〜5個の酸化エチレン単位を有するアルキルホスファート及びアルキルアリールホスファート;
・ アルキルポリグリコールエーテル、好ましくはアルキル基中に8〜20個の炭素原子を有しかつ8〜40個の酸化エチレン単位を有するアルキルポリグリコールエーテル;
・ アルキルアリールポリグリコールエーテル、好ましくはアルキル基又はアルキルアリール基中で8〜20個の炭素原子を有しかつ8〜40個の酸化エチレン単位を有するアルキルアリールポリグリコールエーテル;
・ 酸化エチレン/酸化プロピレンコポリマー、好ましくは8〜40個の酸化エチレン単位又は酸化プロピレン単位を有するブロックコポリマー。
【0028】
Iを得るための方法の場合に、アニオン性及び/又は非イオン性乳化剤を使用できる。
【0029】
乳化重合は、一実施態様の場合に、パラフィンスルホナート、アルキルスルホスクシナート及びアルコキシル化及び硫酸化されたパラフィンの群から選択されるアニオン性乳化剤の存在で実施される。
【0030】
好ましくは、アニオン性乳化剤と非イオン性乳化剤との混合物が使用される。この場合、アニオン性乳化剤としてスルホコハク酸とアルキル基中に4〜15個の炭素原子を有する一価アルコール又はアルキルフェノールとのエステル又はモノエステルと、非イオン性乳化剤としてアルキルポリグリコールエーテル、好ましくはアルキル基中に8〜20個の炭素原子及び8〜40個の酸化エチレン単位を有するアルキルポリグリコールエーテルとの8:1〜1:8の質量比の混合物が特に好ましいことが示された。
【0031】
場合により、この乳化剤は保護コロイドと混合して使用することもできる。適切な保護コロイドは、特に部分鹸化されたポリビニルアセタート、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、タンパク質、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルスルホン酸、メラミンホルムアルデヒドスルホナート、ナフタレンホルムアルデヒドスルホナート、スチレン−マレイン酸コポリマー及びビニルエーテルマレイン酸コポリマーを有する。保護コロイドを使用する場合に、この保護コロイドの使用は好ましくは、モノマーA)〜J)の総量を基準として0.01〜1.0質量%の量で行われる。これらの保護コロイドは、重合の開始前に装入又は供給されていてもよい。
【0032】
好ましい実施態様の場合に、Iを得るための方法において、アルキル基中に12〜20個の炭素原子を有するアルキルアルカノールを有する水性エマルションを装入する。
【0033】
開始剤は装入又は添加されていてもよい。更に、開始剤の一部を装入し、残りを供給することもできる。
【0034】
好ましくは、この重合は、バッチを重合温度に加熱しかつ開始剤を、好ましくは水溶液の形で供給することにより開始される。乳化剤とモノマーの供給は別個に又は混合物として実施することができる。乳化剤とモノマーとの混合物を供給する場合、乳化剤とモノマーとは、重合反応器の前方に設けられた混合器中で予め混合するように行われる。好ましくは、装入されていない乳化剤の残り及びモノマーの残りを、重合の開始後に相互に別個に供給する。好ましくは、この供給は重合の開始の15〜35分後に始められる。
【0035】
更に、本発明の目的のために、装入物は、好ましくはアルキル(メタ)アクリラートの重合により得られるいわゆる「シードラテックス」を含むことが特に好ましい。
【0036】
好ましくは、シードラテックスを含む水性エマルションa)を装入する。好ましい実施態様の場合に、コールター法によって測定して、10.0〜40.0nmの範囲内の粒子直径を有するシードラテックスを装入する。
【0037】
この小さな半径は、シードラテックスの定義されたグラフト重合を行い、シードラテックスの周囲にシェルを構成させ、こうして製造された粒子の半径をコールター法によって測定することにより算定することができる。粒子サイズを測定する文献に公知のこの方法は、狭い測定開口部を粒子が通過する際に特徴的に変化する電気抵抗の測定に基づく。更なる詳細は、例えばNachr. Chem. Tech. Lab. 43, 553-566 (1995)から推知することができる。
【0038】
このシードラテックスに、本来のコアのモノマー成分、つまり第1の組成物が、好ましくは新たな粒子の形成が回避されるような条件下で添加される。それにより、第1の方法段階で生じた重合体は、シードラテックスを取り囲みシェル状に堆積する。同様に、第1のシェル材料(第2の組成物)のモノマー成分を、新たな粒子の形成が回避されるような条件下で乳化重合体に添加する。それにより、第2の段階で生じた重合体は、生じたコアを取り囲みシェル状に堆積する。この方法様式を、それぞれの次のシェルのためにも相応して繰り返すことができる。
【0039】
本発明の他の好ましい実施態様の場合に、本発明によるコア−シェル−シェル粒子は、シードラテックスの代わりに、好ましくは12〜20個の炭素原子を有する長鎖脂肪族アルコールを乳化させて装入する乳化重合法によって得られる。この方法の好ましい実施態様の場合に、長鎖脂肪族アルコールとしてステアリルアルコールを使用する。このコア−シェル−シェル構造は、上述の方法様式と同様に、新たな粒子の形成を回避しながら、相応するモノマーを段階的に添加及び重合させることにより得られる。重合方法についての更なる詳細について、当業者は、特許明細書のDE 3343766、DE 3210891、DE 2850105、DE 2742178及びDE 3701579から推知できる。
【0040】
しかしながら、具体的な方法様式とは無関係に、本発明の範囲内で、Iを得るための方法において、第2の組成物(c)による)及び第3の組成物(d)による)を消費量の程度に応じて計量供給することが特に全く好ましいことが判明した。
【0041】
鎖長の調節、特に第2のシェル(第3の組成物)の(共)重合体の鎖長の調節は、分子量調節剤の存在での、例えば特にこれについて公知のメルカプタン、例えばn−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール又は2−エチルヘキシルチオグリコラート、ペンタエリトリットテトラチオグリコラートの存在でのモノマー又はモノマー混合物の重合により行うことができ、その際、この分子量調節剤は、モノマー混合物を基準として、一般に0.05〜5質量%の量で、好ましくは0.1〜2質量%の量で、特に好ましくは0.2〜1質量%の量で使用される(例えば、H. Rauch-Puntigam, Th. Voelker著、「アクリル−及びメタクリル化合物(Acryl- und Methacrylverbindungen)」、Springer, Heidelberg, 1967; Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie、第XIV/1巻、第66頁、Georg Thieme、Heidelberg、1961又はKirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology、第1巻、第29611頁、J. Wiley, New York, 1978)。好ましくは、分子量調節剤としてn−ドデシルメルカプタンが使用される。
【0042】
本発明により、Iを得るための方法において、全ての物質A)〜J)の相対的割合は、コールター法により測定して、70.0〜125.0nmの範囲内の、好ましくは85〜110.0nmの範囲内の、特に90.0〜105.0nmの範囲内の全体半径を有するコア−シェル−シェル粒子が得られるように選択される。
【0043】
本発明の目的について、Iを得るための方法において、全ての物質A)〜J)の相対的割合を、物質A)〜J)の全質量が、水性分散液の全質量を基準として、少なくとも30質量%、好ましくは40〜50質量%であるように選択することが特に好ましい。
【0044】
この場合、「凝集物」の概念は、この意味範囲で、好ましくは分散液の濾過により合目的に、DIN4188によるフィルター織物番号0.90が張られたフィルタースリーブによって濾別することができる水に不溶性の成分を表す。本発明によるコア−シェル−シェル粒子は、分散液から例えば噴霧乾燥、凍結凝集(Gefrierkoagulation)、電解質状態による又は機械的又は熱的負荷による沈殿(これはDE 27 50 682 A1又はUS 4 110 843により脱ガス押出機を用いて実施可能)により得ることができる。噴霧乾燥の方法は、最も慣用の方法であるが、他に挙げた方法も、水溶性重合助剤を少なくとも部分的に重合体から除去するという利点を有する。
【0045】
コア−シェル−シェル粒子Iのためのb)による第1の組成物は、
A) アルキル基中に1〜20個、好ましくは1〜12個、特に1〜8個の炭素原子を有するアルキルメタクリラート50.0〜99.9質量部、好ましくは71.0〜99.9質量部、
B) アルキル基中に1〜20個、好ましくは1〜12個、特に1〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリラート0.0〜40.0質量部、好ましくは0.0〜29.0質量部、
C) 架橋性モノマー0.1〜10.0質量部及び
D) 一般式(I)のスチレン系モノマー0.0〜8.0質量部
【化1】
を有する。
【0046】
基R1〜R5は、それぞれ相互に無関係に、水素、ハロゲン、特にフッ素、塩素又は臭素、C1〜C6−アルキル基又はC2〜C6−アルケニル基、好ましくは水素を表す。基R6は、水素又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくは水素を表す。1〜6個の炭素原子を有する特に適切なアルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基並びにシクロペンチル基及びシクロヘキシル基である。
【0047】
従って、一般式(I)のスチレン系モノマーは、スチレン、側鎖中にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばα−メチルスチレン及びα−エチルスチレン、環にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばビニルトルエン及びp−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン及びテトラブロモスチレンを有する。
【0048】
一実施態様の場合に、第1の組成物は、
A) アルキル基中に1〜20個、好ましくは1〜12個、特に1〜8個の炭素原子を有するアルキルメタクリラート75.0〜99.9質量部、好ましくは85.0〜99.5質量部、
B) アルキル基中に1〜20個、好ましくは1〜12個、特に1〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリラート0.0〜24.9質量部、特に0.1〜14.9質量部、
C) 架橋性モノマー0.1〜5.0質量部、特に0.1〜2.0質量部及び
D) 一般式(I)のスチレン性モノマー0.0〜8.0質量部を有し、
ここで、記載の質量部は合計で100.0質量部となる。
【0049】
本発明の場合に、化合物A)、B)、C)及びD)は相互に異なり、特に化合物A)及びB)は架橋性モノマーC)を有しない。
【0050】
上述のアルキルメタクリラート(A)とは、メタクリル酸のエステルであると解釈され、例えばメチルメタクリラート、エチルメタクリラート、プロピルメタクリラート、イソプロピルメタクリラート、n−ブチルメタクリラート、sec−ブチルメタクリラート、tert−ブチルメタクリラート、ペンチルメタクリラート、ヘキシルメタクリラート、ヘプチルメタクリラート、オクチルメタクリラート、2−オクチルメタクリラート、エチルヘキシルメタクリラート、ノニルメタクリラート、2−メチル−オクチルメタクリラート、2−tert−ブチルヘプチルメタクリラート、3−イソプロピルヘプチルメタクリラート、デシルメタクリラート、ウンデシルメタクリラート、5−メチルウンデシルメタクリラート、ドデシルメタクリラート、2−メチルドデシルメタクリラート、トリデシルメタクリラート、5−メチルトリデシルメタクリラート、テトラデシルメタクリラート、ペンタデシルメタクリラート、ヘキサデシルメタクリラート、2−メチルヘキサデシルメタクリラート、ヘプタデシルメタクリラート、5−イソプロピルヘプタデシルメタクリラート、5−エチルオクタデシルメタクリラート、オクタデシルメタクリラート、ノナデシルメタクリラート、エイコシルメタクリラート、シクロアルキルメタクリラート、例えばシクロペンチルメタクリラート、シクロヘキシルメタクリラート、3−ビニル−2−ブチル−シクロヘキシルメタクリラート、シクロヘプチルメタクリラート、シクロオクチルメタクリラート、ボルニルメタクリラート及びイソボルニルメタクリラートである。
【0051】
本発明の特に好ましい実施態様によると、第1の組成物は、成分A)〜D)の全質量を基準として、メチルメタクリラートを少なくとも50質量%、合目的に少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも75質量%、特に好ましくは85質量%含有する。
【0052】
上述のアルキルアクリラート(B)とは、アクリル酸のエステルであると解釈され、例えばメチルアクリラート、エチルアクリラート、プロピルアクリラート、イソプロピルアクリラート、n−ブチルアクリラート、sec−ブチルアクリラート、tert−ブチルアクリラート、ペンチルアクリラート、ヘキシルアクリラート、ヘプチルアクリラート、オクチルアクリラート、2−オクチルアクリラート、エチルヘキシルアクリラート、ノニルアクリラート、2−メチル−オクチルアクリラート、2−tert−ブチルヘプチルアクリラート、3−イソプロピルヘプチルアクリラート、デシルアクリラート、ウンデシルアクリラート、5−メチルウンデシルアクリラート、ドデシルアクリラート、2−メチルドデシルアクリラート、トリデシルアクリラート、5−メチルトリデシルアクリラート、テトラデシルアクリラート、ペンタデシルアクリラート、ヘキサデシルアクリラート、2−エチルヘキサデシルアクリラート、ヘプタデシルアクリラート、5−イソプロピルヘプタデシルアクリラート、5−エチルオクタデシルアクリラート、オクタデシルアクリラート、ノナデシルアクリラート、エイコシルアクリラート、シクロアルキルアクリラート、例えばシクロペンチルアクリラート、シクロヘキシルアクリラート、3−ビニル−2−ブチル−シクロヘキシルアクリラート、シクロヘプチルアクリラート、シクロオクチルアクリラート、ボルニルアクリラート及びイソボルニルアクリラートである。
【0053】
架橋性モノマー(C)は、この重合条件下で架橋を引き起こすことができる全ての化合物を含む。これには、特に次のものが属する
(a) 二官能性(メタ)アクリラート、好ましくは一般式:
【化2】
[式中、Rは、水素又はメチルであり、nは、2以上の正の整数、好ましくは3〜20である]の化合物、特にプロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール及びエイコサンジオールのジ(メタ)アクリラート;
一般式:
【化3】
[式中、Rは、水素又はメチルであり、nは1〜14の正の整数を意味する]の化合物、特に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ドデカエチレングリコール、テトラデカエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピルグリコール及びテトラデカプロピレングリコールのジ(メタ)アクリラート;
グリセリンジ(メタ)アクリラート、2,2′−ビス[p−(γ−メタクリルオキシ−β−ヒドロキシプロポキシ)−フェニルプロパン]又はビス−GMA、ビスフェノール−A−ジメタクリラート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリラート、1分子当たり2〜10個のエトキシ基を有する2,2′−ジ(4−メタクリルオキシポリエトキシフェニル)プロパン及び1,2−ビス(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン;及び
(b) 三官能性又は多官能性の(メタ)アクリラート、特にトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート及びペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラート;
(c) 少なくとも2つの異なる反応性のC−C二重結合を有するグラフト架橋剤、特にアリルメタクリラート及びアリルアクリラート;
(d) 芳香族架橋剤、特に1,2−ジビニルベンゼン、1,3−ジビニルベンゼン及び1,4−ジビニルベンゼン。
【0054】
好ましくは、第1の組成物のモノマーの選択又はモノマーA)〜D)の質量割合の選択を、第1の組成物の重合によって得られるポリマーが少なくとも10℃、好ましくは少なくとも30℃のガラス転移温度Tgを有するように行う。この場合、この重合体のガラス転移温度Tgは公知のように、示差走査熱量測定(DSC)によって測定することができる。更に、ガラス転移温度Tgは、Fox式によっても近似的に予め計算できる。Fox T. G.著, Bull. Am. Physics Soc. 1, 3,第123頁(1956)によると次式が通用する:
【数1】
(式中xnは、モノマーnの質量分率(質量%/100)を表し、Tgnは、モノマーnのホモポリマーのケルビンで示すガラス転移温度を表す)。他の補助となる示唆を、当業者は、最も一般的な単独重合体についてのTg値を記載するPolymer Handbook 第2版、J. Wiley & Sons、New York(1975)から推知できる。
【0055】
コア−シェル−シェル粒子Iについてのc)による第2の組成物は、
E) (メタ)アクリラート80.0〜100.0質量部、
F) 架橋性モノマー0.05〜5.0質量部及び
G) 一般式(I)のスチレン系モノマー0.0〜25.0質量部
を有する。
【0056】
本発明の場合に、化合物E)、F)及びG)は相互に異なり、特に化合物E)は、架橋性モノマーF)を有しない。
【0057】
特別な実施態様の場合に、第2の組成物は、
E) (メタ)アクリラート92.0〜98.0質量部、
F) 架橋性モノマー0.1〜2.0質量部及び
G) 一般式(I)のスチレン系モノマー8.0〜20.0質量部
を有し、ここで、記載の質量部は好ましくは合計で100.0質量部となる。
【0058】
本発明の範囲内で、(メタ)アクリラートは、アクリラート、メタクリラート並びにこの2つの混合物を表す。従って、これは、次の式
【化4】
(式中、Rは、水素又はメチル基を表す)の少なくとも1つの基を有する化合物を有する。これには、特に上述のアルキルアクリラート及びアルキルメタクリラートが属する。更に、アリールアルキルアクリラート、特にベンジルアクリラート、フェニルエチルアクリラート、フェニルプロピルアクリラート、フェニルペンチルアクリラート及び/又はフェニルヘキシルアクリラートも、本発明の目的のために特に有用であることが判明した。これは、好ましくは、成分E)及びF)の全質量を基準として、0.1〜40.0質量%の範囲内の量で使用される。
【0059】
架橋性モノマーF)は、本発明の場合に、上述の架橋正モノマーC)を有する。
【0060】
好ましくはE)は、アルキル基中に3〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリラート及び/又はアルキル基中に7〜14個の炭素原子を有するアルキルメタクリラートを有する。
【0061】
本発明の特に全く好ましい実施態様の範囲内で、第2の組成物は
E) アルキル基中に3〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリラート及び/又はアルキル基中に7〜14個の炭素原子を有するアルキルメタクリラート、特にブチルアクリラート及び/又はドデシルメタクリラート90.0〜97.9質量部、
F) 架橋性モノマー0.1〜2.0質量部及び
G) 一般式(I)のスチレン系モノマー0.0〜20.0質量部、好ましくは8.0〜20.0質量部を有し、ここで、これらの質量部は好ましくは合計で100.0質量部となる。
【0062】
更に、モノマー第2の組成物のモノマーの選択又はモノマーE)、F)及びG)の質量割合の選択を好ましくは、第2の組成物の重合によって得られるポリマーが30℃未満、好ましくは10℃未満、特に0〜−75℃の範囲内のガラス転移温度Tgを有するように行う。この場合、重合体のガラス転移温度Tgは、既に上述のように、示差走査熱量測定(DSC)によって測定できるか及び/又はFox式によって近似的に予め計算することができる。
【0063】
コア−シェル−シェル粒子Iのためのd)による第3の組成物は、
H) アルキル基中に1〜20個、好ましくは1〜12個、特に1〜8個の炭素原子を有するアルキルメタクリラート50.0〜100.0質量部、
I) アルキル基中に1〜20個、好ましくは1〜12個、特に1〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリラート0.0〜40.0質量部及び
J) 一般式(I)のスチレン系モノマー0.0〜10.0質量部を有する。
【0064】
この第3の組成物は、好ましい実施態様の場合に、
H) アルキル基中に1〜20個、好ましくは1〜12個、特に1〜8個の炭素原子を有するアルキルメタクリラート60.0〜100.0質量部、好ましくは75.0〜100.0質量部、特に85.0〜99.5質量部、
I) アルキル基中に1〜20個、好ましくは1〜12個、特に1〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリラート0.0〜25.0質量部、特に0.1〜15.0質量部、
J) 一般式(I)のスチレン系モノマー0.0〜10.0質量部、好ましくは0.0〜8.0質量部を有し、ここで、記載の質量部は好ましくは合計で100.0質量部となる。
【0065】
本発明の特に好ましい実施態様によると、第3の組成物は、成分H)〜J)の全質量を基準として、メチルメタクリラートを少なくとも50質量%、合目的に少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも75質量%、特に85質量%含有する。
【0066】
更に、第3の組成物のモノマーの選択又はモノマーH)、I)及びJ)の質量割合の選択を好ましくは、第3の組成物の重合によって得られるポリマーが少なくとも10℃、好ましくは少なくとも30℃のガラス転移温度Tgを有するように行う。この場合、重合体のガラス転移温度Tgは、既に上述のように、示差走査熱量測定(DSC)によって測定できるか及び/又はFox式によって近似的に予め計算することができる。
【0067】
このコア−シェル−シェル粒子Iは、硬質の熱可塑性プラスチックのノッチ付衝撃強さの改善のために利用され、このプラスチックは、好ましくは本発明による成形材料、例えばポリ(メタ)アクリラート成形材料、特にポリメチルメタクリラート中で、硬質相と相溶性である。
【0068】
特に全く好ましくは、本発明の範囲内で、成形材料は、それぞれ成形材料の全質量を基準として:
I. 少なくとも1つのコア−シェル−シェル粒子10.0〜50.0質量%、好ましくは15.0〜45.0質量%、更に好ましくは20.0〜40質量%、このコア−シェル−シェル粒子は、
a) 水及び乳化剤を装入し、
b) 次の:
A) アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するアルキルメタクリラート50.0〜99.9質量部、好ましくは71.0〜99.9質量部、
B) アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するアルキルアクリラート0.0〜40.0質量部、好ましくは0.0〜29.0質量部、
C) 架橋性モノマー0.1〜10.0質量部及び
D) 一般式(I)
【化5】
[式中、基R1〜R5は、それぞれ相互に無関係に、水素、ハロゲン、C1〜C6−アルキル基又はC2〜C6−アルケニル基を表し、基R6は、水素又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である]
のスチレン系モノマー0.0〜8.0質量部
を有する第1の組成物20.0〜45.0質量部を添加し、かつこれらの成分A)、B)、C)及びD)の全質量を基準として少なくとも85.0質量%の転化率まで重合させ、
c) 次の:
E) (メタ)アクリラート80.0〜100.0質量部、
F) 架橋性モノマー0.05〜5.0質量部及び
G) 一般式(I)のスチレン系モノマー0.0〜25.0質量部
を有する第2の組成物35.0〜55.0質量部を添加し、かつこれらの成分E)、F)及びG)の全質量を基準として少なくとも85.0質量%の転化率まで重合させ、
d) 次の:
H) アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するアルキルメタクリラート50.0〜100.0質量部、
I) アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するアルキルアクリラート0.0〜40.0質量部及び
J) 一般式(I)のスチレン系モノマー0.0〜10.0質量部
を有する第3の組成物10.0〜30.0質量部を添加し、かつこれらの成分H)、I)及びJ)の全質量を基準として少なくとも85.0質量%の転化率まで重合させ、
ここで、組成物b)、c)及びd)の記載された質量部は合計で100.0質量部になり、
ここで、全ての物質A)〜J)の相対的割合は、コールター法により測定して、70.0〜125.0nmの範囲内の、好ましくは85.0〜110.0nmの範囲内の、特に90.0〜105.0nmの範囲内の全体半径を有するコア−シェル−シェル粒子が得られるように選択されていて;
II. 少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマー1.0〜90.0質量%、好ましくは1.0〜85.0質量%、更に好ましくは1.0〜80.0質量%、
III. スチレン−アクリルニトリルコポリマー0.0〜45質量%、好ましくは0.0〜30質量%、好ましくは0.0〜10.0質量%、及び
IV. 他の添加剤0.0〜10.0質量%を有し、
この場合、成分I)〜IV)の質量パーセントは合計で100.0質量%になり、かつ
この場合、II又はII、III、及び/又はIVの混合物は、ASTM D 542により測定して、Iの屈折率とは0.01単位より大きく異ならない、好ましくは0.002単位より大きく異ならない、特に0.001単位より大きく異ならない屈折率を有するように選択されている。
【0069】
好ましくは、IIによる少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマーは、この全質量を基準としてそれぞれ
a) アルキル基中に1〜20個、好ましくは1〜12個、合目的に1〜8個、特に1〜4個の炭素原子を有するアルキルメタクリラート繰返単位52.0〜100.0質量%、
b) アルキル基中に1〜20個、好ましくは1〜12個、合目的に1〜8個、特に4個までの炭素原子を有するアルキルアクリラート繰返単位0.0〜40.0質量%及び
c) 一般式(I)のスチレン系繰返単位0.0〜8.0質量%を有し、
ここで、これらの質量パーセントは合計で100.0質量%となる。
【0070】
特に好ましくは、IIによる少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマーは、この全質量を基準としてそれぞれ
a) アルキル基中に1〜20個、好ましくは1〜12個、合目的に1〜8個、特に1〜4個の炭素原子を有するアルキルメタクリラート繰返単位60.0〜100.0質量%、特に好ましくは75.0〜99.9質量%、殊に85.0〜99.5質量%、
b) アルキル基中に1〜20個、好ましくは1〜12個、合目的に1〜8個、特に4個までの炭素原子を有するアルキルアクリラート繰返単位0.0〜25.0質量%、特に好ましくは0.1〜15.0質量%、殊に0.5〜15.0質量%及び
c) 一般式(I)のスチレン系繰返単位0.0〜8.0質量%を有し、
ここで、これらの質量パーセントは合計で100.0質量%となる。
【0071】
本発明の特に好ましい実施態様の場合に、IIの少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマーは、この全質量を基準として、少なくとも50.0質量%、合目的に少なくとも60.0質量%、好ましくは少なくとも75.0質量%、特に少なくとも85.0質量%のメチルメタクリラート繰返単位を有する。
【0072】
更に、IIによる少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマーは、好ましくは1,000〜100,000,000g/molの範囲内の、好ましくは10,000〜1,000,000g/molの範囲内の、特に50,000〜500,000g/molの範囲内の数平均分子量を有する。この場合、この分子量は、例えば、ポリスチレンで校正するゲル浸透クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0073】
特に全く好ましくは、この成分IIは、2又はそれ以上の異なる(メタ)アクリルポリマーを有する。少なくとも1つの他の(メタ)アクリルポリマーが存在する場合、この(メタ)アクリルポリマーは低分子量であることが特に好ましい。低分子量の(メタ)アクリルポリマーは、1,000〜70,000g/molの範囲内の、好ましくは5,000〜60,000g/molの範囲内の数平均分子量を有する場合が特に好ましい。この低分子量の(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリルポリマーIIの全質量を基準として2〜20質量%、好ましくは5〜10質量%の割合であってもよい。低分子量の(メタ)アクリルポリマーのこの一部分の添加によって、射出成形又は射出圧縮成形における全体の達成される成形材料の加工性が改善される。当業者にとって、低分子量の(メタ)アクリルポリマーの形の慣用の流動改善剤は公知である。
【0074】
好ましくは、IIによる少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマーは、少なくとも1つのコポリマーとして、好ましくは少なくとも1つの高Tgコポリマーとして存在することもできる。「高Tg」とは本発明の意味範囲で、高Tgコポリマーが、ISO11357による窒素雰囲気下での示差走査熱量測定により測定して、ポリメチルメタクリラートよりも高いTg(ガラス転移温度)、好ましくは少なくとも110℃、特に少なくとも115℃、更に好ましくは少なくとも120℃、特に好ましくは更に少なくとも125℃を有することであると解釈される。「高Tg」組成物は、a)メチルメタクリラートと少なくとも1種の他のモノマーとからなる「高Tg」コポリマーであり、この際に生じるコポリマーは約105℃のポリメチルメタクリラートのTgよりも高いTgを有するか、又はb)(メタ)アクリルポリマーと少なくとも1つの混合可能な、部分的に混合可能な又は相溶性のポリマーとからなる混合物であり、この際に混合可能なポリマーの場合に全体のTgが、又は部分的に混合可能なポリマーの場合にTgの少なくとも1つが110℃よりも高いか、又はc)統計的に重合したPMMAよりもシンジオタクティックの度合いがより高いポリメチルメタクリラートである。
【0075】
コポリマーにおいて高いTgを付与することができる適切なモノマーは、これらに限定されるものではないが、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、置換されたスチレン、アルファ−メチルスチレン、無水マレイン酸、イソボルニルメタクリラート、ノルボルニルメタクリラート、t−ブチルメタクリラート、シクロヘキシルメタクリラート、置換されたシクロヘキシルメタクリラート、ビニルシクロヘキサン、フェニルメタクリラート、アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、メタクリルアミド、置換されたマレイミド、グルタルイミド及びマレイミドを有する。
【0076】
好ましい実施態様の場合に、本発明の成形材料は、IIIによるスチレン−アクリルニトリルコポリマーを、成形材料の全質量を基準として45質量%まで、特に1.0〜45質量%含有する。特に好ましくは、IIIによるスチレン−アクリルニトリルコポリマーは、混合物の重合により得られているか及び/又は得ることができ、この混合物は、混合物の全質量を基準としてそれぞれ
スチレン70〜92質量%
アクリルニトリル8〜30質量%及び
他のコモノマー0〜22質量%
からなる。
【0077】
本発明による成形材料は、特性を適切に改質するために、IVによる他の添加剤、特にポリマーを含有することができる。
【0078】
IVによる通常の添加剤は、その都度の適切な加工段階で混合することができる。この通常の添加剤には、特に染料、顔料、充填剤、強化繊維、離型剤、UV保護剤などが挙げられる。
【0079】
本発明による成形材料の全質量を基準として、この成形材料は、IVによる添加剤として、0.1〜10.0質量%、好ましくは0.5〜5.0質量%、特に1.0〜4.0質量%の他の重合体(AP)を含有することができ、この他の重合体は、IIによる少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマーと比較して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、特に少なくとも100%高い質量平均分子量を有する。この場合、この分子量は、例えば、ポリスチレンで校正するゲル浸透クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0080】
本発明の場合に特に適切な重合体(AP)は、その全質量を基準としてそれぞれ、好ましくは
a) アルキル基中に1〜20個、好ましくは1〜12個、合目的に1〜8個、特に1〜4個の炭素原子を有するアルキルメタクリラート繰返単位52.0〜100.0質量%、合目的に60.0〜100.0質量%、特に好ましくは75.0〜99.9質量%、殊に85.0〜99.5質量%、
b) アルキル基中に1〜20個、好ましくは1〜12個、合目的に1〜8個、特に1〜4個の炭素原子を有するアルキルアクリラート繰返単位0.0〜40.0質量%、合目的に0.0〜32.0質量%、特に好ましくは0.1〜17.0質量%、殊に0.5〜7.0質量%及び
c) 一般式(I)のスチレン系繰返単位0.0〜8.0質量%
を有し、ここで、これらの質量パーセントは合計で100.0質量%となる。
【0081】
本発明の特に好ましい実施態様の場合に、重合体(AP)は、その全質量を基準として、少なくとも50.0質量%、合目的に少なくとも60.0質量%、好ましくは少なくとも75.0質量%、特に少なくとも85.0質量%のメチルメタクリラート繰返単位を含有する。
【0082】
更に、この重合体(AP)は、好ましくは10,000〜100,000,000g/molの範囲内の、好ましくは50,000〜5,000,000g/molの範囲内の、合目的に100,000〜1,000,000g/molの範囲内の、特に250,000〜600,000g/molの範囲内の質量平均分子量を有する。この場合、この分子量は、例えば、ポリスチレンで校正するゲル浸透クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0083】
他の適切な重合体(AP)は、ポリアクリルニトリル、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート及びポリ塩化ビニルである。これらのポリマーは、個別に又は混合物として使用することができる。
【0084】
本発明による成形材料は、多様な方式で製造することができる。例えば、コア−シェル−シェル粒子Iの分散液を、混合成分の水性分散液と混合し、この混合物を凝集させ、水相を分離し、凝集物を溶融させて成形材料にすることができる。この方法の場合に、双方の材料の特に均質な混合を達成できる。これらの成分は、別個に製造し、単離し、その溶融物の形で又は粉末又は顆粒として混合し、多軸スクリュー押出機又はロール装置で均質化することもできる。
【0085】
好ましくは、本発明による成形材料は次の特性を有する:
a. ISO179によるシャルピー衝撃強さが、23℃で少なくとも40.0kJ/m2,好ましくは少なくとも60.0kJ/m2、特に少なくとも80.0kJ/m2でありかつ
b. ASTM D 1003(1997)による曇り値が、80℃で最大15.0%、好ましくは80℃で最大10.0%、特に80℃で最大8.0%、更に好ましくは80℃で最大5.0%である。
【0086】
この出願の他の主題は、本発明による成形材料から得られる成形品である。
【0087】
本発明による成形材料は、特に好ましくは1mmを越える壁厚を有する成形品、例えば良好に打ち抜き加工しかつ例えば電化製品用の印刷可能なパネルの製造のために使用可能な1〜10mmの厚さの押し出された帯材の製造のため、又は高品質の射出成形された成形品、例えば自動車窓ガラスの製造のために適している。例えば50μmの厚さの薄いシートも同様に製造することができる。
【0088】
好ましくは、本発明の成形品は、次の特徴を有する:
a. ISO179によるシャルピー衝撃強さが、23℃で少なくとも40.0kJ/m2、好ましくは少なくとも60.0kJ/m2、特に少なくとも80.0kJ/m2でありかつ
b. ASTM D 1003(1997)による曇り値が、80℃で最大15.0%、好ましくは80℃で最大10.0%、特に80℃で最大8.0%、更に好ましくは80℃で最大5.0%である。
【0089】
高めた温度での曇り値の増加が明らかに低減するという意外にも見出されたこれらの特性に基づいて、この製品は特に、照明及びグレージングのような適用のために適している。信号着色を備えた照明用途でこの製品を使用する場合、曇り値の増大による色度座標のシフトは期待されない。
【0090】
本発明による耐衝撃性に改質されたPMMAのための他の利用分野は自動車グレージングである。光学特性、例えば高めた温度でも極めて低い曇り値で高い透明度と組み合わせた靭性についての要求は満たされる。
【0091】
従って、本発明は、更に本発明による成形材料の使用並びに本発明による成形品の使用に関する。
【0092】
特に、本発明は、グレージング、好ましくは自動車及び/又は鉄道車両、建築又は機械のグレージングの製造のための本発明による成形材料の使用に関する。更に、好ましくは、本発明は、通信機器、特にPDA、モバイルフォン、携帯電話、好ましくはスマートフォン;タブレットPC;TV機器;台所用品及び他の電子機器用のディスプレーの製造のための使用に関する。これとは別に、本発明は、照明カバー、好ましくは室内用照明又は自動車照明装置用の照明カバーの製造のための使用に関する。
【0093】
特に、本発明は、更に、グレージングとして、好ましくは自動車及び/又は鉄道車両、建築又は機械のグレージングとしての本発明による成形品の使用に関する。更に、好ましくは、本発明は、通信機器、特にPDA、モバイルフォン、携帯電話、好ましくはスマートフォン;タブレットPC;TV機器;台所用品及び他の電子機器用のディスプレーとしての使用に関する。これとは別に、本発明は、照明カバー、好ましくは室内用照明又は自動車照明装置用の照明カバーとしての使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1】実施例2、3、4及び10及び比較例6の成形材料のシャルピー衝撃強さ及び曇り値の試験結果を示すグラフ。
【0095】
次の実施例は、本発明を詳細に説明する。
【0096】
実施例
コア−シェル−シェル粒子I
実施例1
シードラテックスの製造
シードラテックスを、エチルアクリラート98質量%及びアリルメタクリラート2質量%を有するモノマー組成物の乳化重合によって製造した。直径約20nmのサイズの粒子が、水中に約10質量%存在する。
【0097】
コア−シェル−シェル粒子の製造
次に記載する全てのコア−シェル−シェル粒子は、次の製造手順A(本発明による実施例B1、B2、B3、B4及びB5)又は次の製造手順B(比較例VB1)による乳化重合によって製造された。この場合、表1に記載のエマルション(i)〜(iii)を使用した。
【0098】
実施例B1、B2、B3、B4及びB5
製造方法Aによるコア−シェル−シェル粒子の製造
83℃(槽の内部温度)で、撹拌しながら水1.711kgを重合槽中に装入した。炭酸ナトリウム1.37g及びシードラテックスの添加を行った。引き続き、エマルション(i)を1時間にわたり供給した。エマルション(i)の流入の10分後に、エマルション(ii)を、約2時間の期間にわたり供給した。引き続き、エマルション(ii)の流入の約60分後に、エマルション(iii)を約1時間の期間にわたり供給した。エマルション(iii)の流入の30分後に30℃に冷却した。
【0099】
コア−シェル−シェル粒子の分離のために、分散液を−20℃で2日間にわたり凍結させ、その後でまた解凍し、凝集した分散液をフィルター織物によって分離した。固体の乾燥を50℃で乾燥庫中で行った(時間:約3日間)。コア−シェル−シェル粒子の粒子サイズ(表2参照)を、Coulter社のNano-Sizer (C) N5を用いて決定し、ここでは分散液中の粒子を測定した。
【0100】
比較例VB1
製造方法Bによるコア−シェル−シェル粒子の製造
52℃(槽の内部温度)で、撹拌しながら水1.711kgを重合槽中に装入し、酢酸0.10g、硫酸鉄(II)0.0034g、二亜硫酸ナトリウム0.69g並びにシードラテックスを添加した。引き続き、エマルション(i)を1.5時間にわたり供給した。エマルション(i)の流入の10分後に、水100g中に溶かした二亜硫酸ナトリウム7.46gを添加し、かつエマルション(ii)を約2.5時間の期間にわたり供給した。引き続き、エマルション(ii)の流入の約30分後に、水50g中に溶かした二亜硫酸ナトリウム0.62gを添加し、かつエマルション(iii)を約1.5時間の期間にわたり供給した。エマルション(iii)の流入の30分後に、30℃に冷却した。
【0101】
コア−シェル−シェル粒子の分離のために、分散液を−20℃で2日間にわたり凍結させ、その後でまた解凍し、凝集した分散液をフィルター織物によって分離した。固体の乾燥を50℃で乾燥庫中で行った(時間:約3日間)。コア−シェル−シェル粒子の粒子サイズ(表2参照)を、Coulter社のNano-Sizer (C) N5を用いて決定し、ここでは分散液中の粒子を測定した。
【0102】
表1:個々のエマルションの組成(全ての数値は[g])
【表1】
【0103】
成形材料の混合
実施例2、3、4、5、7、8、9及び10並びに比較例6
メチルメタクリラート単位85質量%及びメチルアクリラート単位15質量%からなるMw約50000g/molの低分子量の成形材料(NF)を製造した。
【0104】
更に、高い熱変形耐性により優れた成形材料のAltuglas(登録商標)HT 121(Arkema社、フランス国)を準備した(メタクリル酸を含む高TG成形材料)。
【0105】
ポリメチルメタクリラートを基礎とする、PLEXIGLAS(登録商標)7N(Evonik Industries AG社、Darmstadt)の成形材料(場合により上述の低分子量の成形材料(NF)の割合及び/又はAltuglas(登録商標)HT 121の割合と混合)、又はポリメチルメタクリラートを基礎とする、PLEXIGLAS(登録商標)8H(Evonik Industries AG社、Darmstadt)の成形材料を、それぞれコア−シェル−シェル粒子B1〜B5又はVB1と押出機を用いて混合し、その際、使用された成形材料又は混合された成形材料はそれぞれ(メタ)アクリルポリマーIIに相当した。個々の実施例及び比較例の組成物は表2に示されている。
【0106】
10Lの混合容器中に、それぞれの(メタ)アクリルポリマーII 4kg及びそれぞれのコア−シェル−シェル粒子I 2450g(38質量%)を秤量して入れた。この混合物を、偏心ドラムミキサーを用いて3分間強力に混合し、次いで、35mmのスクリュー直径を有する一軸スクリュー押出機Storkのホッパーに注いだ。235℃の融液温度でこれらの成分を混合し、押出ノズルからストランドを引き出し、水浴中で冷却し、同じ粒子サイズのペレットに造粒した。
【0107】
得られたペレットから、射出成形機Battenfeld BA 500でISO294による試験体を射出成形した。衝撃強さの決定のために、寸法80×10×4mmの試験体を250℃で射出成形した。光学特性の決定のために、65×40×3mmの小板を250℃の溶融温度で射出成形した。
【0108】
成形材料の試験
混合した成形材料から試験体を製造した。この成形材料及び対応する試験体は、次の測定方法に従って試験した:
・ ビカー軟化点(B50、16h/80℃):DIN ISO 306(1994年8月)
・ シャルピー衝撃強さ:ISO 179(1993)
・ 弾性率:ISO 527−2
・ 透過率(D65/10°):DIN 5033/5036
・ 曇り値(Hazemeter BYK Gardner Hazegrad-plus):ASTM D 1003(1997)
・ MVR(230℃、3.8kg):ISO 1133
【0109】
これらの試験結果を表2に見ることができる。比較例6の慣用の衝撃強さを改質した成形材料と比較して、本発明による混合物の明らかな利点が認識される。本発明による混合物は、高めた温度(80℃)でも、ASTM D1003により測定して5%未満の低い曇り値を示す。しかしながら、この場合に本発明による成形材料は、この成形材料の他の重要な特性、特にビカー軟化点及び弾性率を悪化させることなく、靭性の水準及び耐衝撃性は公知の成形材料(比較例6)と同様である。それどころか、部分的に、これに関して得られた値は、公知の成形材料と比べて改善されている(実施例10参照)。
【0110】
表2: 衝撃強さを改善した成形材料の試験結果((メタ)アクリルポリマーII中の38質量%のコア−シェル−シェル粒子Iの混合物の場合)
【表2-1】
【表2-2】
【0111】
図1は、実施例2、3、4及び10並びに比較例6の衝撃強さを改質した(それぞれの成形材料中で38質量%のコア−シェル−シェル粒子Iを有する混合物の場合)成形材料のシャルピー衝撃強さ及び23℃並びに80℃での曇り値の試験結果を示す。
【0112】
図1では、表2にも示したように、高めた温度で本発明による成形材料の曇り値の増加が明らかに低減することが認識でき、よってこの成形材料は照明及びグレージングのような適用に適している。特に、自動車グレージングで課せられる、光学特性、例えば高めた温度でも極めて低い曇り値での高い透明度と組み合わせた靭性についての要求は満たされる。実施例7では、低分子量の(メタ)アクリルポリマー又は流動性改善剤の添加の効果は、比較例6及び他の実施例と比べてMVRの明らかな影響により示される。
図1