【実施例】
【0057】
実施例1:微生物種の調製
本発明の微生物は、当技術分野において公知の標準的な深水槽液中発酵培養プロセスを用いて増殖させる。
【0058】
バチルス属の種
バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、およびバチルス・プミルスの個々の発端培養物を、次の一般的プロトコールに従って増殖させる。栄養ブロス2g、AmberFerm(酵母抽出物)2g、およびマルトデキストリン4gを250ml容エルレンマイヤーフラスコに加える。蒸留した脱イオン水100mlを添加し、乾燥成分すべてが溶解するまで、フラスコを撹拌する。フラスコに覆いを掛け、121℃および15psiで作動するオートクレーブ中に30分間、置く。冷却後、純粋な微生物株の内の1種を1ml、フラスコに接種する。フラスコを密閉し、30℃でオービタルシェーカー上に置く。培養物を3〜5日間増殖させる。このプロセスを、混合物中の各微生物について繰り返す。このようにして、バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、およびバチルス・プミルスの発端培養物を調製する。
【0059】
蒸留した脱イオン水900mlと共に栄養ブロス18g、AmberFerm 18g、およびマルトデキストリン36gを1リットル容エフラスコに加えることによって、より大規模な培養物を調製する。上述したように、フラスコを密閉し、滅菌する。冷却後、250ml容エルレンマイヤーフラスコから得た微生物培地100mlを添加する。1リットル容フラスコを密閉し、オービタルシェーカー上に置き、30℃でさらに3〜5日間、増殖させる。
【0060】
発酵槽に導入する前の最後の増殖期に、1リットル容フラスコから得た培養物を、滅菌した6リットル容の容器に無菌条件下で移し、静止期に達するまで、通気しながら30℃で発酵培養を継続する。1部の酵母エキスおよび2部のデキストロースから作られた滅菌済み増殖培地を同様に詰めた個々の発酵槽に、各6リットル容培養フラスコの内容物を移す。pH7.0、かつそれぞれの種に対する最適温度において、好気条件下で個々の発酵槽を稼働させる。
【0061】
細胞密度が平均して10
11CFU/mlに達するまで、各発酵槽を稼働させる。次いで、個々の発酵槽の内容物を取り出し、ろ過し、遠心分離して、細菌細胞集団を得、続いてこれを、水分レベルが5%未満に下がるまで減圧下で乾燥させる。乾燥した試料の最終的な微生物数は、10
10〜10
11CFU/gである。
【0062】
ラクトバチルス属の種
ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、およびラクトバチルス・プランタルムの個別の精製された単離物を、各種に対して最適なpHおよび温度において、標準的な嫌気的液中発酵培養プロトコールを用いて別々の発酵槽中で増殖させる。
【0063】
発酵培養後、個々の培養物をろ過し、遠心分離し、約5%未満の水分レベルまで凍結乾燥させ、次いで、粒径が約200マイクロメートルとなるように粉砕する。
【0064】
乾燥させたバチルス微生物およびラクトバチルス微生物を混ぜ合わせて、1:10〜10:1の全バチルス対全ラクトバチルスの比率で、バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルムス(Bacillus licheniforms)、バチルス・プミルス、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、およびラクトバチルス・プランタルムを含み、微生物活性が10
8〜10
10CFU/g対である、最終的な乾燥微生物組成物を得る。
【0065】
実施例2:固体基質発酵培養による、微生物種の調製
本発明の微生物ミックスはまた、以下のプロセスに従って固体基質発酵培養によって調製することもできる。
【0066】
バチルス属の種
乳製品12%ミネラルミックス(Mineral Mix)4ポンド、米ぬか60lb、および大豆粉30lbを、ボートぎりを備えたジャケット付き水平ミキサーに加えた。混合しながら水および蒸気を加えて、スラリーを得た。2分間混合した後、小麦ふすま300lb、続いて追加の水および蒸気をミキサーに加えて、スラリーを再度作製した。ミキサーの温度を35〜36℃に制御しながら、バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、およびバチルス・プミルスを含み、初期微生物活性が約1×10
10CFU/gである、乾燥微生物混合物4lbを添加した。ミキサーに蓋をし、温度を34℃に調節し、内容物を最長4日間、混合させた。発酵培養後、ミキサーの内容物を金属製トレー上に取り出し、空気乾燥させた。乾燥後、生成物を約200マイクロメートル未満の粒径に粉砕した。得られた最終的なバチルス生成物は、微生物数が1×10
11CFU/g程度であり、水分が約5%未満であった。
【0067】
ラクトバチルス属の種
ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、およびラクトバチルス・プランタルムの混合培養物を、1部のイヌリン、2.2部の単離された大豆タンパク質、8部の米粉、ならびに0.25%w/wの塩化ナトリウム、0.045%w/wの炭酸カルシウム、0.025%w/wの硫酸マグネシウム、0.025%w/wのリン酸ナトリウム、0.012%w/wの硫酸鉄、および29.6%の水からなる混合物上で最長5日間、GMP条件下で発酵培養した。発酵培養の完了時に、混合物を含水率が5%未満になるまで凍結乾燥させ、粒径が800マイクロメートル未満となるように粉砕し、均質化した。粉末化された生成物の最終微生物濃度は、10
9〜10
11CFU/gである。
【0068】
最終的な微生物ミックス
乾燥させたバチルス微生物とラクトバチルス微生物を1:10〜10:1の比率で混ぜ合わせて、バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、およびラクトバチルス・プランタルムを含み、微生物活性が10
8〜10
10CFU/gである、最終的な乾燥微生物組成物を得た。
【0069】
実施例3:BOD減少のために最適なバチルス属とラクトバチルス属の比率の特定
実施例1の個々の乾燥微生物(バチルスおよびラクトバチルス)を1:1(組成物A)および1:10(組成物B)の比率で混合することによって、2種類の微生物組成物を調製した。これら2種の組成物を、酪農ラグーン(dairy lagoon)の汚水のBODを減少させる能力について比較した(
図1)。市販の汚水用製品(BiOWiSH Aqua、タイ製)を陽性対照として含めた。これらの結果から、BODを迅速に減少させるには、バチルス属対ラクトバチルス属の比率1:10(組成物B)が好ましいことが示されている。
【0070】
実施例4:実施例1の微生物を用いる汚水用製造物の配合
実施例1の個々の乾燥微生物(バチルスおよびラクトバチルス)を1:10(バチルス属:ラクトバチルス属)の比率で一緒に混合した。この乾燥微生物ミックスを、デキストロース(Clintose(登録商標)工業用デキストロース)で1:100に希釈した。このミックスに、3重量%の粉末状大豆レシチン(Nealanders International, Inc.)を添加した。この組成物の最終微生物数は、1×10
8CFU/gであった。
【0071】
実施例5:実施例2のプロセスを用いる、汚水用製造物の配合
実施例2のバチルスおよびラクトバチルスの固体基質発酵培養生成物を、約200マイクロメートルの平均粒径になるまで粉砕し、等比率で一緒に混合し、次いで、3重量%の粉末状大豆レシチン(Nealanders International, Inc)と混合した。微生物数が10
8〜10
9CFU/gであり水分が5%未満である最終生成物を得た。
【0072】
実施例6:汚水浄化槽を用いた下水設備の処理における、実施例4の汚水用製造物のパフォーマンス
米国ノースカロライナ州中部に位置する、住宅用の低圧管(LPP)の汚水浄化槽を用いた下水設備システム3つを、試験のために選択した。BOD(生物学的酸素要求量)、TSS(総浮遊物質)、およびFOG(脂肪、油、およびグリース)のベースライン測定を行い、次いで、最長で8週間の期間、実施例4で得た汚水処理配合物(formulation)200gを各システムに毎週添加した。各システムについて、BOD、TSS、およびFOGを毎週記録した。LPPの汚水浄化槽を用いた下水設備システム3つを平均した結果から、3つすべてのシステムにおいて、ベースラインに対する重要な生化学的測定値の有意な減少が示された(
図2〜4)。
【0073】
実施例7:汚水浄化槽を用いた下水設備処理における、実施例5の汚水用製造物のパフォーマンス
米国ノースカロライナ州中部の、住宅用のLPPの汚水浄化槽を用いた下水設備システム3つを、この研究のために選択した。各システムについて、BOD、TSS、TKN、およびFOGのベースライン測定を行い、次いで、最長で8週間の期間、実施例5で得た組成物200gを各システムに毎週添加した。3つのシステムのそれぞれについて、BOD、TSS、TKN、およびFOGを毎週記録した。LPPの汚水浄化槽を用いた下水設備システム3つを平均した結果から、3つすべてのシステムにおいて、ベースラインに対する重要な生化学的測定値の有意な減少が示されている。
【0074】
実施例8:競合する製品と比較したBODの減少
カリフォルニア州のセントラルバリー地域の地方酪農ラグーンから汚水を採取した。試料をまとめて、共通の貯蔵溶液を作った。貯蔵汚水をいくつかの300ml容BOD瓶にピペットで分注し、以下の実験計画を設定した。
【0075】
各瓶について初期BODを測定し、次いで、30℃で5日間保管した後に再び測定した。平均して、対照は、669mg/lのBOD減少を示したのに対し、実施例4の汚水処理組成物の場合は742mg/l、市販製品の場合は701mg/lのBOD減少を示した。
【0076】
実施例9:競合する製品と比較した総浮遊物質の減少
カリフォルニア州サンルイスオビスポのカリフォルニア州立工科大学(California Polytechnic State University)の酪農貯水池(dairy lagoon pond)から汚水を採取し、数本の2リットル容の瓶に分配し、以下の実験計画を設定した。
【0077】
瓶は、30℃で5週間、保管した。毎週、2つの50ml分取物を採取し、全固形物測定のために90℃で乾燥させた。
【0078】
実施例5の汚水処理物質を含む瓶は、対照および市販製品の両方よりも、高い総合的TSS減少率(%)を示した。
【0079】
実施例10:汚水浄化槽を用いた下水設備の競合する処理システムとの比較
米国ノースカロライナ州中部のいくつかの住宅用のLPPの汚水浄化槽を用いた下水設備システムを、この研究のために選択した。各システムについて、BOD、TSS、TKN、およびFOGのベースライン測定を行い、次いで、実施例5の組成物200gまたは市販製品(BiOWiSH(商標) Aqua FOG)200gのいずれかで、各システムを毎週処理した。各システムについて、BOD、TSS、TKN、およびFOGを毎週記録した。これらのLPPの汚水浄化槽を用いた下水設備システムを平均した結果を下記に示す。
【0080】
実施例11:果物洗浄による汚水のレメディエーション
実施例4の組成物を用いて、バナナ洗浄による汚水を処理した。バナナを収穫する際、ラテックス液体が放出される。典型的には、バナナは、ラテックスを除去するために流水(moving water)中に浸される。通常、この工程の結果として生じる汚水は、ラテックス濃度が高いため、再生および再使用の可能性が制限される。
【0081】
Coorporacion Bananera Nacional(Costa Rica)と協力して試験プログラムを設定して、本発明の汚水処理組成物がラテックスを除去し、かつ収穫後病害の発生率を低下させる能力を評価した。
【0082】
多量のバナナの洗浄によって形成された汚水プールから、試料を採取した。これらの試料は、水中の有機物負荷量(organic load)が最大である、1日のうちの遅い時間に採取した。150〜200mlの汚水を250ml容エルレンマイヤーフラスコに入れ、様々な濃度の実施例4の汚水処理組成物をそこに添加した。これらのフラスコを、穏やかに撹拌(オービタルシェーカー上で50rpm)しながら24〜26℃で12〜72時間、インキュベートした。本発明の微生物組成物が、72時間後に溶液の濁度を有意に低下させることが判明した(
図5)。
【0083】
これらの結果に基づき、より大規模な実地試験を実行した。実地試験の1日目および2日目に、バナナ洗浄水を分散剤Bactrol(登録商標)500で処理した。Bactrol(登録商標)6.5リットルを水60リットルに加えて希釈し、積み重ねたバナナより1メートル上に設置した滴下システムによって、収穫日にバナナに適用した。一日中ずっと、2〜3mg/lのレベルで塩素を水流中に注入した。試験の3日目および4日目に、実施例4の汚水処理組成物およびクエン酸のみで、水を処理した。
【0084】
図6では、従来の処理によって洗浄したバナナを、実施例4の組成物を用いて洗浄したものと比較している。
【0085】
実施例12:水泳プール処理
実施例5の微生物組成物を、100g/lの乾燥微生物生成物の濃度で水中に溶解させる。ポンプのスイッチを切った状態で、顕著なかすの層を表面に有する住宅用水泳プールのフィルター装置中に微生物溶液を注ぎ、1時間放置した後、ポンプのスイッチを入れる。24時間以内に、かすは有意に減少し、48時間経つと、目に見えるかすは残っていない。
【0086】
実施例13:汚水処理および果物/野菜洗浄のための、増大させた微生物の組成物
実施例1の細菌株ならびに汚水処理および果物/野菜洗浄にさらなる恩恵を与える能力に基づいて選択した追加の微生物を含む組成物を、実施例1で作り上げたものと同様の発酵培養システムを用いて設計した。
【0087】
バチルス属の種およびパエニバチルス属(Paenibacillus)の種
バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・プミルス、バチルス・コアグランス、バチルス・メガテリウム、およびパエニバチルス・ポリミキサの個々の発端培養物を、次の一般的プロトコールに従って増殖させた。栄養ブロス2g、AmberFerm(酵母抽出物)2g、およびマルトデキストリン4gを250ml容エルレンマイヤーフラスコに加えた。蒸留した脱イオン水100mlを添加し、乾燥成分すべてが溶解するまで、フラスコを撹拌した。フラスコに覆いを掛け、121℃およびI5psiで作動するオートクレーブ中に30分間、置いた。冷却後、純粋な微生物株の内の1種を1ml、フラスコに接種した。フラスコを密閉し、30℃でオービタルシェーカー上に置いた。培養物を3〜5日間増殖させた。このプロセスを、混合物中の各微小生物について繰り返した。このようにして、バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・プミルス、バチルス・コアグランス、バチルス・メガテリウム、およびパエニバチルス・ポリミキサの発端培養物を調製した。
【0088】
蒸留した脱イオン水900miと共に栄養ブロス18g、AmberFerm18g、およびマルトデキストリン36gを1リットル容フラスコに加えることによって、より大規模な培養物を調製した。
【0089】
上述したように、フラスコを密閉し、滅菌した。冷却後、250ml容エルレンマイヤーフラスコから得た微生物培地100mlを添加した。1リットル容フラスコを密閉し、オービタルシェーカー上に置き、30℃でさらに3〜5日間、増殖させた。
【0090】
発酵槽に導入する前の最後の増殖期に、1リットル容フラスコから得た培養物を、滅菌した6リットル容の容器に無菌条件下で移し、静止期に到達するまで、通気しながら30℃で発酵培養を継続した。1部の酵母エキスおよび2部のデキストロースから作られた滅菌済み増殖培地を同様に詰めた個々の発酵槽に、各6リットル容培養フラスコの内容物を移した。pH7で、それぞれの種に対する最適温度において、好気条件下で個々の発酵槽を稼働させた。
【0091】
細胞密度が平均して10
11CFU/mlに達するまで、各発酵槽を稼働させた。次いで、個々の発酵槽の内容物を取り出し、ろ過し、遠心分離して、細菌細胞集団を得、続いてこれを、水分レベルが5%未満に下がるまで減圧下で乾燥させた。乾燥した試料の最終的な微生物数は、10
10〜10
11CFU/gであった。
【0092】
ラクトバチルス属の種
ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、およびラクトバチルス・プランタルムの個別の精製された単離物を、各種に対して最適なpHおよび温度において、標準的な嫌気的液中発酵培養プロトコールを用いて別々の発酵槽中で増殖させた。
【0093】
発酵培養後、個々の培養物をろ過し、遠心分離し、約5%未満の水分レベルまで凍結乾燥させ、次いで、粒径が約100マイクロメートルとなるように粉砕した。
【0094】
乾燥させたバチルス微生物とラクトバチルス微生物を等比率で混ぜ合わせて、バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・プミルス バチルス・コアグランス、バチルス・メガテリウム、およびパエニバチルス・ポリミキサを含む最終的な乾燥微生物組成物を得た。
【0095】
実施例14:実施例13の増大させた微生物セットからの、汚水用製造物の調製
実施例13の乾燥させた微生物ミックスを、デキストロース(Clintose(登録商標)工業用デキストロース)で1:100に希釈する。このミックスに、3重量%の粉末状大豆レシチン(Nealanders International, Inc)を添加する。典型的には、最終的な微生物数は、1×10
9CFU/gである。