特許第6359091号(P6359091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6359091微生物に基づく汚水処理組成物およびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359091
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】微生物に基づく汚水処理組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20180709BHJP
   C02F 3/00 20060101ALI20180709BHJP
   C02F 3/34 20060101ALI20180709BHJP
   C02F 3/10 20060101ALI20180709BHJP
   C12R 1/125 20060101ALN20180709BHJP
   C12R 1/01 20060101ALN20180709BHJP
   C12R 1/25 20060101ALN20180709BHJP
   C12R 1/07 20060101ALN20180709BHJP
   C12R 1/10 20060101ALN20180709BHJP
【FI】
   C12N1/20 F
   C02F3/00 G
   C12N1/20 A
   C12N1/20 D
   C02F3/34 Z
   C02F3/10 Z
   C12N1/20 A
   C12R1:125
   C12N1/20 A
   C12R1:01
   C12N1/20 A
   C12R1:25
   C12N1/20 A
   C12R1:07
   C12N1/20 A
   C12R1:10
【請求項の数】22
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-515028(P2016-515028)
(86)(22)【出願日】2014年5月20日
(65)【公表番号】特表2016-528875(P2016-528875A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】US2014038833
(87)【国際公開番号】WO2014189963
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2017年3月15日
(31)【優先権主張番号】61/825,332
(32)【優先日】2013年5月20日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515310788
【氏名又は名称】バイオウィッシュ テクノロジーズ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】515310799
【氏名又は名称】カル ポリ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ショーウェル マイケル エス.
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ ジョエラ
(72)【発明者】
【氏名】パル ニルパム
(72)【発明者】
【氏名】カーペンター リチャード
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06410305(US,B1)
【文献】 中国特許出願公開第101538538(CN,A)
【文献】 特開2001−299328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00
C02F 3/00
Caplus/BIOISIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、およびバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)からなる細菌の混合物であって、該バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、およびバチルス・プミルスが、それぞれ個別に好気的に発酵培養され(fermented)、採取され、乾燥され、そして約200マイクロメートルの平均粒径を有する粉末を生じるように粉砕され、該混合物を構成する粉末の約60%超が、100〜800マイクロメートルのサイズ範囲内にある、該混合物と、
(b)ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、およびラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)からなる細菌の混合物であって、該ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、およびラクトバチルス・プランタルムが、それぞれ個別に嫌気的に発酵培養され、採取され、乾燥され、そして約200マイクロメートルの平均粒径を有する粉末を生じるように粉砕され、該混合物を構成する粉末の約60%超が、100〜800マイクロメートルのサイズ範囲内にある、該混合物
とを含み、
水に添加されると完全に分散し、かつ細菌の予備活性化を必要としない、
有機物を分解するための組成物。
【請求項2】
(a)のバチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、およびバチルス・プミルス対(b)のペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、およびラクトバチルス・プランタルムの比率が重量比で1:10〜10:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)のバチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、およびバチルス・プミルス対(b)のペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、およびラクトバチルス・プランタルムの比率が重量比で1:10である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
(b)のペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、およびラクトバチルス・プランタルムの比率が重量比で1:1:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
含水率が約5%未満であり、かつ最終細菌濃度が、前記組成物1グラム当たり約105〜1011コロニー形成単位(CFU)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
不活性担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記不活性担体がデキストロース一水和物である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記デキストロース一水和物が、約75〜95%(w/w)の濃度で存在する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
有機乳化剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記有機乳化剤が、約2〜5%(w/w)の濃度で存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記有機乳化剤が大豆レシチンである、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
汚水を請求項1に記載の組成物と接触させる段階を含む、該汚水を処理する方法。
【請求項13】
前記汚水が、都市下水、住宅用の汚水浄化槽を用いた下水設備の汚水、または産業廃水である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記産業廃水が、食品廃棄物、脂肪廃棄物、油廃棄物、グリース廃棄物、醸造所廃棄物、農業廃棄物、または日用品廃棄物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
汚水の処理が、汚水中の生物学的酸素要求量(BOD)、総浮遊物質(TSS)、総ケルダール窒素(TKN)、ならびに脂肪、油、およびグリース(FOG)を減少させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
水泳プール水を請求項1に記載の組成物と接触させる段階を含む、該水泳プール水を処理する方法。
【請求項17】
水泳プールろ過装置を前記組成物と接触させることによって、前記水を接触させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が固体支持体中に埋め込まれている、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
果物または野菜の洗浄による汚水を請求項1に記載の組成物と接触させる段階を含む、該汚水を汚染修復(remediate)する方法。
【請求項20】
果物または野菜を請求項1に記載の組成物と接触させる段階を含む、該果物および該野菜の表面から有機物を除去する方法。
【請求項21】
前記果物または前記野菜の外観を改善する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記果物がバナナである、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その内容の全体が参照により本明細書に組み入れられる、2013年5月20日に出願された米国特許仮出願USSN 61/825,332の優先権および恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、微小生物(microorganism)を含む汚水処理組成物およびそれらの組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
様々な下水処理方法および下水処理場が公知である。ほとんどの大規模な地方自治体システムでは、ベルトプレスのような機械的分離手段によって、液体から分離するためのポリマーを用いるかまたは用いずに、汚水中に含まれる固体を順次濃縮する、一連の沈殿池を使用する。水流に安全に放出することができる清潔な流出液を得るために、汚水処理作業では、有害な汚染物質を除去するために3つまたは4つの異なる処理段階を使用する。
【0004】
通常、予備的な汚水処理では、選別された汚水の重力沈降を行って、沈殿した固体を除去する。汚水中に懸濁した固体の半分は、一次処理によって除去される。この工程の残存物質は、一次汚泥と呼ばれる濃縮懸濁物であり、これはさらに別の処理を受けてバイオソリッドとなる。
【0005】
二次汚水処理は、生分解性物質を除去する生物学的工程を通じて遂行される。この処理工程では、溶解し懸濁した有機物を消費するために微小生物を使用して、二酸化炭素および他の副産物を生成する。有機物はまた、微小生物の群集を維持するのに必要とされる栄養物も提供する。微小生物が摂食するにつれて、微小生物の密度が増加し、微小生物は、浄化された水と分かれて、二次汚泥、生物汚泥、余剰活性汚泥(waste activated sludge)、または散水ろ床腐植質と呼ばれる濃縮懸濁物として、処理槽の底に沈殿する。
【0006】
飲料水源への直接的放出のように、極めて高品質の流出液が必要とされる場合、三次処理または高度処理が使用される。三次処理によって集められた固体残留物は、最終的な流出液を浄化するために添加された化学物質から主になり、これらの化学物質は放出前に再生利用され、したがって、バイオソリッド中には取り込まれない。
【0007】
必要とされているものは、望まれない生物物質または他の混入化合物もしくは汚染化合物を過剰に有する水のような物質を汚染修復する(remediate)ためにバイオレメディエーションを実行できる組成物および方法である。
【発明の概要】
【0008】
様々な局面において、本発明は、汚水の処理を強化する際の、有機物を分解するための微小生物の混合物を含む組成物を提供する。重要なことには、本発明の組成物は、水中で完全に分散し、かつ、使用前の細菌の予備活性化を必要としない。
【0009】
様々な局面において、本発明は、有機物を分解するための組成物を提供する。これらの組成物は、バチルス属(Bacillus)生物の混合物、またはバチルス属とラクトバチルス属(Lactobacillus)との混合物を含む。いくつかの態様において、これらの組成物は、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、およびラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)を含む。他の態様において、組成物は、バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・プミルス、バチルス・メアゲリウム(Bacillus meagerium)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、およびパエニバチルス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)を含む。混合物中の各生物は、個別に好気的に(バチルス属)または嫌気的に(ラクトバチルス属)発酵培養され(fermented)、採取され、乾燥され、そして約200マイクロメートルの平均粒径を有する粉末を生じるように粉砕され、混合物の約60%超が、100〜800マイクロメートルのサイズ範囲内にある。いくつかの態様において、バチルス属対ラクトバチルス属の比率は、1:10〜10:1である。好ましくは、バチルス属対ラクトバチルス属の比率は、バチルス属対ラクトバチルス属1:10である。他の態様において、ラクトバチルス属の比率は、1:1:1である。
【0010】
いくつかの局面において、この組成物の含水率は約5%未満であり、かつ最終細菌濃度は、組成物1グラム当たり約105〜1011コロニー形成単位(CFU)である。
【0011】
様々な局面において、組成物は、デキストロース一水和物のような不活性担体をさらに含む。好ましくは、デキストロース一水和物は、約75〜95%(w/w)の濃度で存在する。
【0012】
他の局面において、組成物は、有機乳化剤をさらに含む。有機乳化剤は、例えば大豆レシチンである。好ましくは、有機乳化剤は、約2〜5%(w/w)の濃度で存在する。
【0013】
また、汚水を、本発明のバチルス属とラクトバチルス属との混合物を含む組成物と接触させる段階によって、汚水を処理する方法も、本発明に含まれる。汚水は、例えば、都市下水、住宅用の汚水浄化槽を用いた下水設備の汚水、または産業廃水である。汚水は、食品廃棄物、脂肪廃棄物、油廃棄物、グリース廃棄物、醸造所廃棄物、農業廃棄物、または日用品廃棄物を含む。この方法により、汚水中の生物学的酸素要求量(BOD)、総浮遊物質(TSS)、総ケルダール窒素(TKN)、ならびに脂肪、油、およびグリース(FOG)は減少する。
【0014】
汚水を、本発明のバチルス属とラクトバチルス属との混合物を含む組成物と接触させることによって、水泳プール水を接触させる段階を含む、水泳プール水を処理する方法が、本発明にさらに含まれる。いくつかの局面において、水は、水泳プールろ過装置を組成物と接触させることによって、接触させられる。他の局面において、組成物は、固体支持体中に埋め込まれている。
【0015】
さらに別の局面において、本発明は、人工芝を、本発明のバチルス属とラクトバチルス属との混合物を含む組成物と接触させる段階によって、人工芝を浄化する方法も、提供する。
【0016】
別の局面において、本発明は、汚水を本発明のバチルス属混合物と接触させる段階によって、果物または野菜に由来する汚水を汚染修復する方法も含む。
【0017】
さらなる局面において、本発明は、果物または野菜を本発明のバチルス属混合物と接触させる段階によって、果物および野菜の表面から有機物を除去する方法も提供する。この方法により、果物または野菜の貯蔵寿命および/または外観が改善する。果物は、例えばバナナである。
【0018】
また、本発明の組成物を製造する方法も、本発明によって提供される。バチルス属とラクトバチルス属とを含む細菌の混合物は、各バチルス属生物を個別に好気的に発酵培養し;各ラクトバチルス属生物を個別に嫌気的に発酵培養し;各バチルス属生物および各ラクトバチルス属生物を採取し;採取した生物を乾燥させ;各バチルス属粉末を混ぜ合わせた粉末を生じるように、乾燥させた生物を粉砕して、バチルス属混合物を作製し;等量の各ラクトバチルス属粉末を混ぜ合わせてラクトバチルス属混合物を作製し、そしてバチルス属混合物とラクトバチルス属混合物を1:10〜10:1の比率で混ぜ合わせることによって、製造される。バチルス属生物は、バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、およびバチルス・プミルスである。ラクトバチルス属は、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、およびラクトバチルス・プランタルム、バチルス・メアゲリウム、バチルス・コアグランス、およびパエニバチルス・ポリミキサを含む。この混合物の含水率は約5%未満であり、かつ最終細菌濃度は、組成物1グラム当たり約105〜1011コロニー形成単位(CFU)である。
【0019】
バチルス属生物を含む細菌の混合物は、バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・プミルス、バチルス・メアゲリウム、バチルス・コアグランス、およびパエニバチルス・ポリミキサを個別に好気的に発酵培養し;各生物を採取し、採取した生物を乾燥させ;乾燥させた生物を粉砕して粉末を作製し、そして各バチルス属粉末を混ぜ合わせることによって、製造される。この混合物の含水率は約5%未満であり、かつ最終細菌濃度は、組成物1グラム当たり約105〜1011コロニー形成単位(CFU)である。
【0020】
他に規定されない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語はすべて、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において説明されるものと同様または等価な方法および材料を、本発明の実践において使用することができるが、適切な方法および材料を後述する。本明細書において言及する刊行物、特許出願、特許、および他の参照文献はすべて、その全体が参照により明確に組み入れられる。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先される。さらに、本明細書において説明される材料、方法、および例は、例示にすぎず、限定することを意図しない。
【0021】
[本発明1001]
(a)混合物中の各バチルス属(Bacillus)が、個別に好気的に発酵培養され(fermented)、採取され、乾燥され、そして約200マイクロメートルの平均粒径を有する粉末を生じるように粉砕され、該混合物の約60%超が、100〜800マイクロメートルのサイズ範囲内にある、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、およびバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)と、
(b)該混合物中の各ラクトバチルス属(Lactobacillus)が、個別に嫌気的に発酵培養され、採取され、乾燥され、そして約200マイクロメートルの平均粒径を有する粉末を生じるように粉砕され、該混合物の約60%超が、100〜800マイクロメートルのサイズ範囲内にある、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、およびラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum);または
(c)該混合物中の各バチルス属が、個別に好気的に発酵培養され、採取され、乾燥され、そして約200マイクロメートルの平均粒径を有する粉末を生じるように粉砕され、該混合物の60%超が、100〜800マイクロメートルのサイズ範囲内にある、バチルス・メアゲリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、およびパエニバチルス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)
のいずれかと
の該混合物を含み、
水に添加されると完全に分散し、かつ細菌の予備活性化を必要としない、
有機物を分解するための組成物。
[本発明1002]
段階(a)のバチルス属対段階(b)のラクトバチルス属の比率が1:10〜10:1である、本発明1001の組成物。
[本発明1003]
段階(a)のバチルス属対段階(b)のラクトバチルス属の比率が、バチルス属対ラクトバチルス属1:10である、本発明1002の組成物。
[本発明1004]
段階(b)のラクトバチルス属の比率が1:1:1である、本発明1001の組成物。
[本発明1005]
含水率が約5%未満であり、かつ最終細菌濃度が、前記組成物1グラム当たり約105〜1011コロニー形成単位(CFU)である、本発明1001の組成物。
[本発明1006]
不活性担体をさらに含む、本発明1001の組成物。
[本発明1007]
前記不活性担体がデキストロース一水和物である、本発明1006の組成物。
[本発明1008]
前記デキストロース一水和物が、約75〜95%(w/w)の濃度で存在する、本発明1007の組成物。
[本発明1009]
有機乳化剤をさらに含む、本発明1001の組成物。
[本発明1010]
前記有機乳化剤が、約2〜5%(w/w)の濃度で存在する、本発明1009の組成物。
[本発明1011]
前記有機乳化剤が大豆レシチンである、本発明1009の組成物。
[本発明1012]
段階(a)のバチルス属および段階(c)のバチルス属を含む、本発明1001の組成物。
[本発明1013]
段階(a)のバチルス属および段階(b)のラクトバチルス属を含む、本発明1001の組成物。
[本発明1014]
汚水を本発明1013の組成物と接触させる段階を含む、該汚水を処理する方法。
[本発明1015]
前記汚水が、都市下水、住宅用の汚水浄化槽を用いた下水設備の汚水、または産業廃水である、本発明1014の方法。
[本発明1016]
前記産業廃水が、食品廃棄物、脂肪廃棄物、油廃棄物、グリース廃棄物、醸造所廃棄物、農業廃棄物、または日用品廃棄物を含む、本発明1015の方法。
[本発明1017]
汚水の処理が、汚水中の生物学的酸素要求量(BOD)、総浮遊物質(TSS)、総ケルダール窒素(TKN)、ならびに脂肪、油、およびグリース(FOG)を減少させることを含む、本発明1015の方法。
[本発明1018]
水泳プール水を本発明1013の組成物と接触させる段階を含む、該水泳プール水を処理する方法。
[本発明1019]
水泳プールろ過装置を前記組成物と接触させることによって、前記水を接触させる、本発明1018の方法。
[本発明1020]
前記組成物が固体支持体中に埋め込まれている、本発明1018の方法。
[本発明1021]
人工芝を本発明1013の組成物と接触させる段階を含む、該人工芝を浄化する方法。
[本発明1022]
果物または野菜の洗浄による汚水を本発明1012の組成物と接触させる段階を含む、該汚水を汚染修復(remediate)する方法。
[本発明1023]
果物または野菜を本発明1012の組成物と接触させる段階を含む、該果物および該野菜の表面から有機物を除去する方法。
[本発明1024]
前記果物または前記野菜の貯蔵寿命および/または外観を改善する、本発明1023の方法。
[本発明1025]
前記果物がバナナである、本発明1023の方法。
[本発明1026]
以下の段階を含む、バチルス属とラクトバチルス属とを含む細菌の混合物を含む組成物を製造する方法:
(a)各バチルス属生物を個別に好気的に発酵培養する段階;
(b)各ラクトバチルス属生物を個別に嫌気的に発酵培養する段階;
(c)各バチルス属生物および各ラクトバチルス属生物を採取する段階;
(d)採取した該生物を乾燥させる段階;
(e)乾燥させた該生物を粉砕して粉末を作製する段階;
(f)各バチルス属粉末を混ぜ合わせて、バチルス属混合物を作製する段階;
(g)等量の各ラクトバチルス属粉末を混ぜ合わせて、ラクトバチルス属混合物を作製する段階;ならびに
(h)該バチルス属混合物と該ラクトバチルス属混合物を1:10〜10:1の比率で混ぜ合わせる段階。
[本発明1027]
前記バチルス属が、バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、およびバチルス・プミルスを含む、本発明1025の方法。
[本発明1028]
前記ラクトバチルス属が、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、およびラクトバチルス・プランタルム、バチルス・メアゲリウム、バチルス・コアグランス、およびパエニバチルス・ポリミキサを含む、本発明1025の方法。
[本発明1029]
前記混合物が、以下の特徴を有する、本発明1025の方法:
(a)約5%未満の含水率、および
(b)前記組成物1グラム当たり約105〜1011コロニー形成単位(CFU)の最終細菌濃度。
[本発明1030]
以下の段階を含む、バチルス属生物を含む細菌の混合物を含む組成物を製造する方法:
(a)バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・プミルス、バチルス・メアゲリウム、バチルス・コアグランス、およびパエニバチルス・ポリミキサを個別に好気的に発酵培養する段階;
(b)各生物を採取する段階;
(c)採取した該生物を乾燥させる段階;
(d)乾燥させた該生物を粉砕して粉末を作製する段階;ならびに
(e)各バチルス属粉末を混ぜ合わせる段階。
[本発明1031]
前記混合物が、以下の特徴を有する、本発明1030の方法:
(a)約5%未満の含水率、および
(b)前記組成物1グラム当たり約105〜1011コロニー形成単位(CFU)の最終細菌濃度。
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになり、それらに包含される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の微生物組成物のBOD試験の結果を示す。
図2】住宅用LPPシステムにおけるBOD減少の結果を示す。
図3】住宅用LPPシステムにおけるFOG減少を示す。
図4】住宅用LPPシステムにおけるTSS減少を示す。
図5】本発明の組成物で処理した際の、バナナ洗浄水の濁度の低下を示す写真である。
図6】従来法で処理したバナナ(A)および本発明の組成物で処理したバナナ(B)を示す写真である。本発明の組成物で処理した際の、バナナ洗浄水の濁度の低下を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は、汚水処理およびレメディエーションを強化するための微生物組成物を提供する。いくつかの局面において、微生物組成物は、バチルス属細菌とラクトバチルス属細菌との混合物を含み、バチルス対ラクトバチルスの比率は1:10〜10:1である。他の局面において、微生物組成物は、バチルス属の混合物を含む。具体的には、バチルス属およびラクトバチルス属の組成物は、バチルス・サブティリスと、バチルス・アミロリケファシエンスと、バチルス・リケニフォルミスと、バチルス・プミルスと、ペディオコッカス・アシディラクティシと、ペディオコッカス・ペントサセウスと、ラクトバチルス・プランタルムとの混合物を含む。バチルス属組成物は、バチルス・サブティリスと、バチルス・アミロリケファシエンスと、バチルス・リケニフォルミスと、バチルス・プミルスと、バチルス・コアグランスと、バチルス・メガテリウムと、パエニバチルス・ポリミキサとの混合物を含む。
【0024】
重要なことには、この組成物は水に添加されると完全に分散し、かつ、他の汚水処理微生物組成物とは違ってこれらの組成物は使用前の細菌の予備活性化を必要としない。
【0025】
これらの微生物組成物は、汚水中の生物学的酸素要求量(BOD)、総浮遊物質(TSS)、総ケルダール窒素(TKN)、ならびに脂肪、油、およびグリース(FOG)を減少させる。組成物はまた、ラテックスを分解して、バナナまたは他の果物および野菜を洗浄するのに使用された水からそれらを除去できるようにすること、ならびに蓄積する表面のかす(scum)および藻を水泳プールから除去することにも使用される。さらに、驚くべきことに、これらの組成物が、バナナまたは他の果物および野菜の洗浄の結果として生じる汚水に由来するラテックスを分解するだけでなく、バナナ収穫物における収穫後病害の発生率を低下させることも発見された。
【0026】
本明細書において使用される「微生物の、細菌」、または「微生物」という用語は、利益を与える微小生物を意味する。本発明による微生物は、生存可能または生存不可能であってよい。生存不可能な微生物は、代謝的に活性である。「代謝的に活性」とは、そのタイプの微生物に特徴的な少なくとも何らかの残存活性または二次代謝産物活性をそれらが示すことを意味する。
【0027】
本明細書において使用される「生存不可能な」という用語は、任意の公知の条件下で複製することができない細菌の集団を意味する。しかし、集団における通常の生物学的変異が原因で、集団のごく一部(すなわち5%またはそれ未満)が依然として生存可能であり、したがって、他の点では生存不可能と定義される集団において、適切な増殖条件下で複製することができる場合があることを理解すべきである。
【0028】
本明細書において使用される「生存可能な細菌」という用語は、複製が可能である適切な条件下で複製することができる細菌の集団を意味する。(上記に与えた)「生存不可能な」の定義を満たさない細菌の集団は、「生存可能」であるとみなされる。
【0029】
本明細書において使用される「廃棄物貯蔵設備」とは、有機性廃棄物を貯蔵、保管、および処理するための設備を意味する。
【0030】
本明細書において使用される「汚水」は、住居、事業用建物、公共の建物に由来し、地下水、地表水、および/または雨水を含む、家庭下水を主に対象とする。汚水はまた、果物および野菜などの生産物を加工または洗浄した結果としての水も含む。本発明の目的において、水泳プール水は、「汚水」の定義に含まれる。
【0031】
本明細書において使用される「処理」とは、有機物の効率的な分解を促進するように設計された微生物を有機性廃棄物に接種することを意味する。
【0032】
別段の記載が無い限り、本文書で言及する百分率はすべて、組成物の総重量に基づく重量を単位とする。
【0033】
本発明による製造物中で使用される微生物は、任意の従来の中温性細菌であってよい。細菌は、ラクトバチルス(Lactobacillacae)科およびバチルス科より選択されることが好ましい。より好ましくは、バチルス属およびラクトバチルス属より選択される細菌が、本発明の組成物に含まれる。
【0034】
バチルス属対ラクトバチルス属の比率が1:10〜10:1である組成物が好ましい。好ましくは、バチルス属対ラクトバチルス属の比率は、1:10である。
【0035】
他の好ましい組成物はラクトバチルス属の比率が好ましくは1:1:1であるものである。
【0036】
本発明に従って使用される細菌のレベルは、そのタイプに応じて変わる。本発明の製造物が1グラム当たり約105〜1011コロニー形成単位の量の細菌を含むことが好ましい。
【0037】
本発明による細菌は、当技術分野において公知の任意の標準的な発酵培養(fermentation)プロセスを用いて生産され得る。例えば、固体基質発酵培養または液中発酵培養。発酵培養物は、混合された培養物または単独の単離物であることができる。
【0038】
いくつかの態様において、細菌は、炭水化物の存在下で嫌気的に発酵培養される。適切な炭水化物には、イヌリン、フラクトオリゴ糖、およびグルコオリゴ糖が含まれる。
【0039】
細菌組成物は、粉末化され乾燥された形態で存在する。あるいは、細菌組成物は、液状形態で存在する。
【0040】
発酵培養後、細菌は、当技術分野の任意の公知の方法によって採取される。例えば、細菌は、ろ過または遠心分離によって採取される。
【0041】
細菌は、当技術分野において公知である任意の方法によって乾燥される。例えば、細菌は、空気乾燥されるか、または液体窒素中での凍結とそれに続く凍結乾燥によって乾燥される。
【0042】
本発明による組成物は、20%、15%、10% 9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%未満の含水率まで乾燥された。好ましくは、本発明による組成物は、5%未満の含水率まで乾燥された。
【0043】
いくつかの態様において、乾燥された粉末は、粒径を小さくするために粉砕される。細菌は、10℃、9℃、8℃、7℃、6℃、5℃、4℃、3℃、1℃、0℃未満、またはそれ未満の温度で、コニカル粉砕によって粉砕される。好ましくは、温度は、4℃未満である。
【0044】
例えば、粒径は、1500、1400、1300、1200、1100、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、または100マイクロメートル未満である。好ましくは、凍結乾燥された粉末は、粒径が800マイクロメートル未満となるように粒径を小さくするために粉砕される。約400マイクロメートル未満の粒径が最も好ましい。最も好ましい態様において、乾燥された粉末は、平均粒径が200マイクロメートルであり、混合物の60%が、100〜800マイクロメートルのサイズ範囲内にある。様々な態様において、凍結乾燥された粉末は、均質化される。
【0045】
様々な態様において、細菌組成物は、デキストロース一水和物のような不活性担体と混合される。デキストロース一水和物は、少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上の濃度で存在する。好ましくは、デキストロース一水和物は、約75〜95%(w/w)の濃度で存在する。
【0046】
他の局面において、細菌組成物は、例えば、大豆レシチンのような有機乳化剤を含む。有機乳化剤は、約1%、2%、3%、4%、5%、5、7%、8%、9%、または10%の濃度で存在する。好ましくは、有機乳化剤は、2〜5%(w/w)の濃度で存在する。
【0047】
さらに、所望の場合は、細菌組成物は、生存確率をさらに高めるために、例えば、糖マトリックス、脂肪マトリックス、または多糖マトリックス中にカプセル化されてよい。
【0048】
本発明の細菌組成物は、商業用水泳プール中、地方自治体の水泳プール中、および住宅用水泳プール中の水を含む、商業汚水、都市汚水、産業廃水、および住宅汚水を処理するのに使用される。細菌組成物はまた、例えば、使用されたアストロターフ(Astroturf)のような人工芝表面から有機物を除去するのにも使用され得る。
【0049】
1つまたは複数の態様は全体として、汚水処理方法に関する。廃棄物処理システムは、典型的な稼働期間中に、地域社会、産業、または住宅を源とする汚水を受け取り得る。例えば、汚水は、都市下水システムまたは他の大規模な下水システムから届けられ得る。あるいは、汚水は、例えば、食品加工工場またはパルプ製紙工場によってもたらされ得る。
【0050】
通常、汚水は、少なくとも1種の望ましくない有機構成成分を有する、廃棄物の任意の流れであってよい。本発明を用いて処理できる廃産物には、ヒトおよび動物の排泄物を含む、代謝過程によって生成する有機性廃棄物、ならびに産業廃棄物、廃水、および下水などが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0051】
本発明による水溶液または乾燥組成物は、下水産物および他の汚水産物中の生物学的酸素要求量(BOD)、総浮遊物質(TSS)、総ケルダール窒素(TKN)、ならびに脂肪、油、およびグリース(FOG)を減少させるのに使用され得る。本発明の組成物はまた、水泳プールを処理して表面のかすを除去し、藻を減らすのにも使用され得る。
【0052】
組成物は、バナナを洗浄するのに使用された水に由来するラテックスを生分解する。本発明の組成物はまた、例えば、果物および野菜を加工または洗浄する際などに、果物および野菜の表面から有機物質を除去するのに有用であり、例えば、これは、果物の貯蔵寿命、外観を改善すること、および収穫後病害の発生率を低下させるのに役立つ。
【0053】
組成物の溶液は、処理しようとする物質(液体、汚泥、もしくは固体)中にポンプで送り込まれるか、または表面もしくは物質の周囲の空間中に噴霧されるか、または浄化しようとする水が通過させられるフィルターに添加されてよい。乾燥した物質は、適用時にスラリーまたは溶液中に混合され、同様の様式で添加されてよい。
【0054】
組成物または本発明は、細菌組成物の作製に適した任意の方法によって製造される。好ましくは、バチルス属とラクトバチルス属とを含む細菌の混合物は、各バチルス属生物を個別に好気的に発酵培養し;各ラクトバチルス属生物を個別に嫌気的に発酵培養し;各バチルス属生物および各ラクトバチルス属生物を採取し;採取した生物を乾燥させ;各バチルス属粉末を混ぜ合わせた粉末を生じるように、乾燥させた生物を粉砕して、バチルス属混合物を作製し;等量の各ラクトバチルス属粉末を混ぜ合わせてラクトバチルス属混合物を作製し、そしてバチルス属混合物とラクトバチルス属混合物を1:10〜10:1の比率で混ぜ合わせることによって、製造される。バチルス属生物は、バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、およびバチルス・プミルスである。ラクトバチルス属は、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、およびラクトバチルス・プランタルム、バチルス・メアゲリウム、バチルス・コアグランス、およびパエニバチルス・ポリミキサを含む。この混合物の含水率は約5%未満であり、かつ最終細菌濃度は、組成物1グラム当たり約105〜1011コロニー形成単位(CFU)である。
【0055】
バチルス属生物を含む細菌の混合物は、バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・プミルス、バチルス・メアゲリウム、バチルス・コアグランス、およびパエニバチルス・ポリミキサを個別に好気的に発酵培養し;各生物を採取し、採取した生物を乾燥させ;乾燥させた生物を粉砕して粉末を作製し、そして各バチルス属粉末を混ぜ合わせることによって、製造される。この混合物の含水率は約5%未満であり、かつ最終細菌濃度は、組成物1グラム当たり約105〜1011コロニー形成単位(CFU)である。
【0056】
本発明を例示するために説明されるが、本発明を限定すると解釈されるべきではない以下の実施例を用いて、本発明をさらに良く理解することができる。
【実施例】
【0057】
実施例1:微生物種の調製
本発明の微生物は、当技術分野において公知の標準的な深水槽液中発酵培養プロセスを用いて増殖させる。
【0058】
バチルス属の種
バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、およびバチルス・プミルスの個々の発端培養物を、次の一般的プロトコールに従って増殖させる。栄養ブロス2g、AmberFerm(酵母抽出物)2g、およびマルトデキストリン4gを250ml容エルレンマイヤーフラスコに加える。蒸留した脱イオン水100mlを添加し、乾燥成分すべてが溶解するまで、フラスコを撹拌する。フラスコに覆いを掛け、121℃および15psiで作動するオートクレーブ中に30分間、置く。冷却後、純粋な微生物株の内の1種を1ml、フラスコに接種する。フラスコを密閉し、30℃でオービタルシェーカー上に置く。培養物を3〜5日間増殖させる。このプロセスを、混合物中の各微生物について繰り返す。このようにして、バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、およびバチルス・プミルスの発端培養物を調製する。
【0059】
蒸留した脱イオン水900mlと共に栄養ブロス18g、AmberFerm 18g、およびマルトデキストリン36gを1リットル容エフラスコに加えることによって、より大規模な培養物を調製する。上述したように、フラスコを密閉し、滅菌する。冷却後、250ml容エルレンマイヤーフラスコから得た微生物培地100mlを添加する。1リットル容フラスコを密閉し、オービタルシェーカー上に置き、30℃でさらに3〜5日間、増殖させる。
【0060】
発酵槽に導入する前の最後の増殖期に、1リットル容フラスコから得た培養物を、滅菌した6リットル容の容器に無菌条件下で移し、静止期に達するまで、通気しながら30℃で発酵培養を継続する。1部の酵母エキスおよび2部のデキストロースから作られた滅菌済み増殖培地を同様に詰めた個々の発酵槽に、各6リットル容培養フラスコの内容物を移す。pH7.0、かつそれぞれの種に対する最適温度において、好気条件下で個々の発酵槽を稼働させる。
【0061】
細胞密度が平均して1011CFU/mlに達するまで、各発酵槽を稼働させる。次いで、個々の発酵槽の内容物を取り出し、ろ過し、遠心分離して、細菌細胞集団を得、続いてこれを、水分レベルが5%未満に下がるまで減圧下で乾燥させる。乾燥した試料の最終的な微生物数は、1010〜1011CFU/gである。
【0062】
ラクトバチルス属の種
ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、およびラクトバチルス・プランタルムの個別の精製された単離物を、各種に対して最適なpHおよび温度において、標準的な嫌気的液中発酵培養プロトコールを用いて別々の発酵槽中で増殖させる。
【0063】
発酵培養後、個々の培養物をろ過し、遠心分離し、約5%未満の水分レベルまで凍結乾燥させ、次いで、粒径が約200マイクロメートルとなるように粉砕する。
【0064】
乾燥させたバチルス微生物およびラクトバチルス微生物を混ぜ合わせて、1:10〜10:1の全バチルス対全ラクトバチルスの比率で、バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルムス(Bacillus licheniforms)、バチルス・プミルス、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、およびラクトバチルス・プランタルムを含み、微生物活性が108〜1010CFU/g対である、最終的な乾燥微生物組成物を得る。
【0065】
実施例2:固体基質発酵培養による、微生物種の調製
本発明の微生物ミックスはまた、以下のプロセスに従って固体基質発酵培養によって調製することもできる。
【0066】
バチルス属の種
乳製品12%ミネラルミックス(Mineral Mix)4ポンド、米ぬか60lb、および大豆粉30lbを、ボートぎりを備えたジャケット付き水平ミキサーに加えた。混合しながら水および蒸気を加えて、スラリーを得た。2分間混合した後、小麦ふすま300lb、続いて追加の水および蒸気をミキサーに加えて、スラリーを再度作製した。ミキサーの温度を35〜36℃に制御しながら、バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、およびバチルス・プミルスを含み、初期微生物活性が約1×1010CFU/gである、乾燥微生物混合物4lbを添加した。ミキサーに蓋をし、温度を34℃に調節し、内容物を最長4日間、混合させた。発酵培養後、ミキサーの内容物を金属製トレー上に取り出し、空気乾燥させた。乾燥後、生成物を約200マイクロメートル未満の粒径に粉砕した。得られた最終的なバチルス生成物は、微生物数が1×1011CFU/g程度であり、水分が約5%未満であった。
【0067】
ラクトバチルス属の種
ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、およびラクトバチルス・プランタルムの混合培養物を、1部のイヌリン、2.2部の単離された大豆タンパク質、8部の米粉、ならびに0.25%w/wの塩化ナトリウム、0.045%w/wの炭酸カルシウム、0.025%w/wの硫酸マグネシウム、0.025%w/wのリン酸ナトリウム、0.012%w/wの硫酸鉄、および29.6%の水からなる混合物上で最長5日間、GMP条件下で発酵培養した。発酵培養の完了時に、混合物を含水率が5%未満になるまで凍結乾燥させ、粒径が800マイクロメートル未満となるように粉砕し、均質化した。粉末化された生成物の最終微生物濃度は、109〜1011CFU/gである。
【0068】
最終的な微生物ミックス
乾燥させたバチルス微生物とラクトバチルス微生物を1:10〜10:1の比率で混ぜ合わせて、バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、およびラクトバチルス・プランタルムを含み、微生物活性が108〜1010CFU/gである、最終的な乾燥微生物組成物を得た。
【0069】
実施例3:BOD減少のために最適なバチルス属とラクトバチルス属の比率の特定
実施例1の個々の乾燥微生物(バチルスおよびラクトバチルス)を1:1(組成物A)および1:10(組成物B)の比率で混合することによって、2種類の微生物組成物を調製した。これら2種の組成物を、酪農ラグーン(dairy lagoon)の汚水のBODを減少させる能力について比較した(図1)。市販の汚水用製品(BiOWiSH Aqua、タイ製)を陽性対照として含めた。これらの結果から、BODを迅速に減少させるには、バチルス属対ラクトバチルス属の比率1:10(組成物B)が好ましいことが示されている。
【0070】
実施例4:実施例1の微生物を用いる汚水用製造物の配合
実施例1の個々の乾燥微生物(バチルスおよびラクトバチルス)を1:10(バチルス属:ラクトバチルス属)の比率で一緒に混合した。この乾燥微生物ミックスを、デキストロース(Clintose(登録商標)工業用デキストロース)で1:100に希釈した。このミックスに、3重量%の粉末状大豆レシチン(Nealanders International, Inc.)を添加した。この組成物の最終微生物数は、1×108CFU/gであった。
【0071】
実施例5:実施例2のプロセスを用いる、汚水用製造物の配合
実施例2のバチルスおよびラクトバチルスの固体基質発酵培養生成物を、約200マイクロメートルの平均粒径になるまで粉砕し、等比率で一緒に混合し、次いで、3重量%の粉末状大豆レシチン(Nealanders International, Inc)と混合した。微生物数が108〜109CFU/gであり水分が5%未満である最終生成物を得た。
【0072】
実施例6:汚水浄化槽を用いた下水設備の処理における、実施例4の汚水用製造物のパフォーマンス
米国ノースカロライナ州中部に位置する、住宅用の低圧管(LPP)の汚水浄化槽を用いた下水設備システム3つを、試験のために選択した。BOD(生物学的酸素要求量)、TSS(総浮遊物質)、およびFOG(脂肪、油、およびグリース)のベースライン測定を行い、次いで、最長で8週間の期間、実施例4で得た汚水処理配合物(formulation)200gを各システムに毎週添加した。各システムについて、BOD、TSS、およびFOGを毎週記録した。LPPの汚水浄化槽を用いた下水設備システム3つを平均した結果から、3つすべてのシステムにおいて、ベースラインに対する重要な生化学的測定値の有意な減少が示された(図2〜4)。
【0073】
実施例7:汚水浄化槽を用いた下水設備処理における、実施例5の汚水用製造物のパフォーマンス
米国ノースカロライナ州中部の、住宅用のLPPの汚水浄化槽を用いた下水設備システム3つを、この研究のために選択した。各システムについて、BOD、TSS、TKN、およびFOGのベースライン測定を行い、次いで、最長で8週間の期間、実施例5で得た組成物200gを各システムに毎週添加した。3つのシステムのそれぞれについて、BOD、TSS、TKN、およびFOGを毎週記録した。LPPの汚水浄化槽を用いた下水設備システム3つを平均した結果から、3つすべてのシステムにおいて、ベースラインに対する重要な生化学的測定値の有意な減少が示されている。
【0074】
実施例8:競合する製品と比較したBODの減少
カリフォルニア州のセントラルバリー地域の地方酪農ラグーンから汚水を採取した。試料をまとめて、共通の貯蔵溶液を作った。貯蔵汚水をいくつかの300ml容BOD瓶にピペットで分注し、以下の実験計画を設定した。
【0075】
各瓶について初期BODを測定し、次いで、30℃で5日間保管した後に再び測定した。平均して、対照は、669mg/lのBOD減少を示したのに対し、実施例4の汚水処理組成物の場合は742mg/l、市販製品の場合は701mg/lのBOD減少を示した。
【0076】
実施例9:競合する製品と比較した総浮遊物質の減少
カリフォルニア州サンルイスオビスポのカリフォルニア州立工科大学(California Polytechnic State University)の酪農貯水池(dairy lagoon pond)から汚水を採取し、数本の2リットル容の瓶に分配し、以下の実験計画を設定した。
【0077】
瓶は、30℃で5週間、保管した。毎週、2つの50ml分取物を採取し、全固形物測定のために90℃で乾燥させた。
【0078】
実施例5の汚水処理物質を含む瓶は、対照および市販製品の両方よりも、高い総合的TSS減少率(%)を示した。
【0079】
実施例10:汚水浄化槽を用いた下水設備の競合する処理システムとの比較
米国ノースカロライナ州中部のいくつかの住宅用のLPPの汚水浄化槽を用いた下水設備システムを、この研究のために選択した。各システムについて、BOD、TSS、TKN、およびFOGのベースライン測定を行い、次いで、実施例5の組成物200gまたは市販製品(BiOWiSH(商標) Aqua FOG)200gのいずれかで、各システムを毎週処理した。各システムについて、BOD、TSS、TKN、およびFOGを毎週記録した。これらのLPPの汚水浄化槽を用いた下水設備システムを平均した結果を下記に示す。
【0080】
実施例11:果物洗浄による汚水のレメディエーション
実施例4の組成物を用いて、バナナ洗浄による汚水を処理した。バナナを収穫する際、ラテックス液体が放出される。典型的には、バナナは、ラテックスを除去するために流水(moving water)中に浸される。通常、この工程の結果として生じる汚水は、ラテックス濃度が高いため、再生および再使用の可能性が制限される。
【0081】
Coorporacion Bananera Nacional(Costa Rica)と協力して試験プログラムを設定して、本発明の汚水処理組成物がラテックスを除去し、かつ収穫後病害の発生率を低下させる能力を評価した。
【0082】
多量のバナナの洗浄によって形成された汚水プールから、試料を採取した。これらの試料は、水中の有機物負荷量(organic load)が最大である、1日のうちの遅い時間に採取した。150〜200mlの汚水を250ml容エルレンマイヤーフラスコに入れ、様々な濃度の実施例4の汚水処理組成物をそこに添加した。これらのフラスコを、穏やかに撹拌(オービタルシェーカー上で50rpm)しながら24〜26℃で12〜72時間、インキュベートした。本発明の微生物組成物が、72時間後に溶液の濁度を有意に低下させることが判明した(図5)。
【0083】
これらの結果に基づき、より大規模な実地試験を実行した。実地試験の1日目および2日目に、バナナ洗浄水を分散剤Bactrol(登録商標)500で処理した。Bactrol(登録商標)6.5リットルを水60リットルに加えて希釈し、積み重ねたバナナより1メートル上に設置した滴下システムによって、収穫日にバナナに適用した。一日中ずっと、2〜3mg/lのレベルで塩素を水流中に注入した。試験の3日目および4日目に、実施例4の汚水処理組成物およびクエン酸のみで、水を処理した。
【0084】
図6では、従来の処理によって洗浄したバナナを、実施例4の組成物を用いて洗浄したものと比較している。
【0085】
実施例12:水泳プール処理
実施例5の微生物組成物を、100g/lの乾燥微生物生成物の濃度で水中に溶解させる。ポンプのスイッチを切った状態で、顕著なかすの層を表面に有する住宅用水泳プールのフィルター装置中に微生物溶液を注ぎ、1時間放置した後、ポンプのスイッチを入れる。24時間以内に、かすは有意に減少し、48時間経つと、目に見えるかすは残っていない。
【0086】
実施例13:汚水処理および果物/野菜洗浄のための、増大させた微生物の組成物
実施例1の細菌株ならびに汚水処理および果物/野菜洗浄にさらなる恩恵を与える能力に基づいて選択した追加の微生物を含む組成物を、実施例1で作り上げたものと同様の発酵培養システムを用いて設計した。
【0087】
バチルス属の種およびパエニバチルス属(Paenibacillus)の種
バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・プミルス、バチルス・コアグランス、バチルス・メガテリウム、およびパエニバチルス・ポリミキサの個々の発端培養物を、次の一般的プロトコールに従って増殖させた。栄養ブロス2g、AmberFerm(酵母抽出物)2g、およびマルトデキストリン4gを250ml容エルレンマイヤーフラスコに加えた。蒸留した脱イオン水100mlを添加し、乾燥成分すべてが溶解するまで、フラスコを撹拌した。フラスコに覆いを掛け、121℃およびI5psiで作動するオートクレーブ中に30分間、置いた。冷却後、純粋な微生物株の内の1種を1ml、フラスコに接種した。フラスコを密閉し、30℃でオービタルシェーカー上に置いた。培養物を3〜5日間増殖させた。このプロセスを、混合物中の各微小生物について繰り返した。このようにして、バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・プミルス、バチルス・コアグランス、バチルス・メガテリウム、およびパエニバチルス・ポリミキサの発端培養物を調製した。
【0088】
蒸留した脱イオン水900miと共に栄養ブロス18g、AmberFerm18g、およびマルトデキストリン36gを1リットル容フラスコに加えることによって、より大規模な培養物を調製した。
【0089】
上述したように、フラスコを密閉し、滅菌した。冷却後、250ml容エルレンマイヤーフラスコから得た微生物培地100mlを添加した。1リットル容フラスコを密閉し、オービタルシェーカー上に置き、30℃でさらに3〜5日間、増殖させた。
【0090】
発酵槽に導入する前の最後の増殖期に、1リットル容フラスコから得た培養物を、滅菌した6リットル容の容器に無菌条件下で移し、静止期に到達するまで、通気しながら30℃で発酵培養を継続した。1部の酵母エキスおよび2部のデキストロースから作られた滅菌済み増殖培地を同様に詰めた個々の発酵槽に、各6リットル容培養フラスコの内容物を移した。pH7で、それぞれの種に対する最適温度において、好気条件下で個々の発酵槽を稼働させた。
【0091】
細胞密度が平均して1011CFU/mlに達するまで、各発酵槽を稼働させた。次いで、個々の発酵槽の内容物を取り出し、ろ過し、遠心分離して、細菌細胞集団を得、続いてこれを、水分レベルが5%未満に下がるまで減圧下で乾燥させた。乾燥した試料の最終的な微生物数は、1010〜1011CFU/gであった。
【0092】
ラクトバチルス属の種
ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、およびラクトバチルス・プランタルムの個別の精製された単離物を、各種に対して最適なpHおよび温度において、標準的な嫌気的液中発酵培養プロトコールを用いて別々の発酵槽中で増殖させた。
【0093】
発酵培養後、個々の培養物をろ過し、遠心分離し、約5%未満の水分レベルまで凍結乾燥させ、次いで、粒径が約100マイクロメートルとなるように粉砕した。
【0094】
乾燥させたバチルス微生物とラクトバチルス微生物を等比率で混ぜ合わせて、バチルス・サブティリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・プミルス バチルス・コアグランス、バチルス・メガテリウム、およびパエニバチルス・ポリミキサを含む最終的な乾燥微生物組成物を得た。
【0095】
実施例14:実施例13の増大させた微生物セットからの、汚水用製造物の調製
実施例13の乾燥させた微生物ミックスを、デキストロース(Clintose(登録商標)工業用デキストロース)で1:100に希釈する。このミックスに、3重量%の粉末状大豆レシチン(Nealanders International, Inc)を添加する。典型的には、最終的な微生物数は、1×109CFU/gである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6