(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359148
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】噴砂対策構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/34 20060101AFI20180709BHJP
E02D 3/00 20060101ALI20180709BHJP
E02D 3/10 20060101ALI20180709BHJP
E02D 5/28 20060101ALI20180709BHJP
E02D 5/30 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
E02D27/34 A
E02D3/00
E02D3/10
E02D5/28
E02D5/30 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-96903(P2017-96903)
(22)【出願日】2017年5月16日
(62)【分割の表示】特願2013-116338(P2013-116338)の分割
【原出願日】2013年5月31日
(65)【公開番号】特開2017-155586(P2017-155586A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2017年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】船原 英樹
【審査官】
西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−060026(JP,A)
【文献】
特開2005−048460(JP,A)
【文献】
特開2011−221959(JP,A)
【文献】
特開平04−343920(JP,A)
【文献】
特開2013−079550(JP,A)
【文献】
特開2002−161504(JP,A)
【文献】
特開2010−112039(JP,A)
【文献】
特開昭63−011710(JP,A)
【文献】
特開2008−025222(JP,A)
【文献】
特開昭62−260919(JP,A)
【文献】
特開2000−136541(JP,A)
【文献】
特開平07−026545(JP,A)
【文献】
特開平08−165666(JP,A)
【文献】
特開平05−106216(JP,A)
【文献】
特開2005−016231(JP,A)
【文献】
特開平04−161610(JP,A)
【文献】
米国特許第04273475(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 7/04
E01C 7/32
E02D 3/00
E02D 3/10
E02D 5/28
E02D 5/30
E02D 27/32
E02D 27/34
E02D 29/12
E02D 31/10
G08B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤の地表面を、噴砂現象の発生を許容する噴砂誘導区域と、噴砂現象の発生を阻止して地震発生直後から通路として利用される前記噴砂誘導区域の地表面よりも標高の高い噴砂阻止区域とに区分けしてなる噴砂対策構造であって、
前記噴砂阻止区域は、高所区画領域、および前記噴砂誘導区域との境界に沿って立設される流入阻止壁の一方または両方を備えており、
前記噴砂誘導区域には、液状化層の内部から地表面に至る砕石からなる柱状体、樹脂製パイプ又は建築用鋼材からなる噴砂誘導手段が設けられていることを特徴とする噴砂対策構造。
【請求項2】
前記高所区画領域は、地盤材料からなる盛土、または所定厚さのコンクリート版を地表面に載置して形成され、
前記噴砂誘導手段は、前記噴砂誘導区域と前記噴砂阻止区域との境界付近に形成するとともに、
前記流入阻止壁の上端面は、前記噴砂誘導区域の地表面より高いことを特徴とする請求項1に記載の噴砂対策構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴砂現象に対処するための噴砂対策構造に関する。
【背景技術】
【0002】
飽和した砂地盤等において液状化が発生すると、地盤内の間隙水とともに砂等の土粒子が噴出する場合がある。この現象(以下「噴砂現象」という。)は、地震後数十分から数時間も継続する場合があるので、避難通路や資機材の搬出入路において噴砂現象が発生すると、迅速な避難や復旧を妨げる虞がある。
【0003】
液状化現象や噴砂現象を防止する技術としては、例えば、特許文献1,2に開示されたものが知られている。
【0004】
特許文献1の技術は、埋設構造物の両側に排水機能付きの矢板を設け、矢板を通じて間隙水を排出することにより、埋設構造物の周辺での液状化現象の発生を抑制するものである。一方、特許文献2の技術は、地下水面の上方且つ埋め立て土砂の下方に透水層を設けるとともに、透水層から地表に至る圧力抜き管を設け、圧力抜き管を通じて間隙水を排出することにより、噴砂現象の発生を抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2725516号公報
【特許文献2】特許第2871524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2の技術によれば、液状化現象や噴砂現象を抑制できるとされているものの、地震の規模が想定以上に大きい場合等には、噴砂現象等を抑制できるとされた区域においても、噴砂現象等の発生が懸念される。上記のとおり、噴砂現象が発生すると、迅速な避難や復旧を妨げる虞がある。
【0007】
このような観点から、本発明は、地表面において噴砂現象を許容する区域と阻止する区域とを制御することが可能な噴砂対策構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、地盤の地表面を、噴砂現象の発生を許容する噴砂誘導区域と、噴砂現象の発生を阻止して地震発生直後から通路として利用される
前記噴砂誘導区域の地表面よりも標高の高い噴砂阻止区域とに区分けしてなる噴砂対策構造であって、液状化抑制工が施されていない液状化層の内部から前記噴砂誘導区域に至る噴砂誘導手段を具備することを特徴とする。
なお、本明細書において、液状化抑制工とは、地盤締固め工法、砕石ドレーン工法、噴砂防止マット工法など、地盤の液状化を抑止する手段を意味している。
また、前記噴砂阻止区域は、高所区画領域、および前記噴砂誘導区域との境界に沿って立設される流入阻止壁の一方または両方を備えており、前記噴砂誘導区域には、液状化層の内部から地表面に至る砕石からなる柱状体、樹脂製パイプ又は建築用鋼材からなる噴砂誘導手段が設けられていることを特徴とする。さらに、前記高所区画領域は、地盤材料からなる盛土、または所定厚さのコンクリート版を地表面に載置して形成され、前記噴砂誘導手段は、前記噴砂誘導区域と前記噴砂阻止区域との境界付近に形成することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、地震動を受けて液状化層の間隙水圧が高まったときに、液状化層中の土砂が噴砂誘導手段(=噴砂の通り道)を通って噴砂誘導区域内に噴出するようになる。つまり、本発明によれば、液状化した土砂の噴出位置が噴砂誘導区域に集中するようになるので、噴砂阻止区域での噴砂現象の発生を抑制することが可能になる。なお、本発明は、液状化現象の発生を許容しつつも噴砂の発生位置をコントロールするものであり、液状化現象の発生を積極的に抑制するものではない。
【0010】
また、前記噴砂阻止区域は、前記噴砂誘導区域内の地表面よりも標高の高い高所区画領域を有するものであってもよい。高所区画領域を設けておけば、噴砂誘導区域に噴出した土砂が噴砂阻止区域内に流入したとしても、高所区画領域の周囲に留まるようになるので、地震発生直後から、噴砂阻止区域を避難通路や資機材の搬出入路などとして利用することが可能になる。なお、高所区画領域は、例えば、盛土によって形成することができるが、コンクリート等により形成してもよい。
【0011】
あるいは、前記噴砂阻止区域は、前記噴砂誘導区域との境界に沿って立設された流入阻止壁を有するものであってもよい。流入阻止壁を設けておけば、噴砂誘導区域に噴出した土砂が流入阻止壁によって堰き止められるようになるので、噴砂阻止区域が土砂で覆われてしまうことを防ぐことが可能になり、ひいては、地震発生直後から噴砂阻止区域を避難通路や資機材の搬出入路などとして利用することが可能になる。
【0012】
前記噴砂誘導区域に排水層を設けてもよい。排水層を設けておけば、噴出した土砂(液状化した土砂)が排水層に浸透するようになるので、噴出した土砂が噴砂阻止区域に流出することを防ぐことができ、ひいては、噴砂阻止区域が土砂で覆われてしまうことを防ぐことが可能になる。
また、前記噴砂阻止区域に、噴砂を噴砂誘導区域に導く噴砂誘導層を設けてもよい。このようにすると、噴砂(液状化した土砂)が噴砂阻止区域に向けて上昇してきた場合でも、噴砂が噴砂誘導区域に誘導されるようになるので、噴砂阻止区域の表面に噴砂が出現し難くなる。
なお、噴砂誘導区域に排水層を設け、排水層の隣に噴砂誘導層を設けてもよいし、排水層および噴砂誘導層の少なくとも一方のみを配置してもよい。
【0013】
前記噴砂誘導手段は、樹脂製パイプ、砕石からなる柱状体又は建築用鋼材(例えば、鋼管、H形鋼、I形鋼、山形鋼、溝形鋼、鋼矢板、シート、ケーブルなど)とするとよい。調達が容易な材料で噴砂誘導手段を構築すれば、低コスト化を図ることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、地表面において噴砂現象を許容する区域と阻止する区域とを制御できるようになるので、噴砂現象が発生しても、避難経路や資機材の搬出入経路等を確保することが可能になり、ひいては、地震発生直後の迅速な避難や復旧に貢献することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る噴砂対策構造を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る噴砂対策構造の変形例を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る噴砂対策構造の他の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る噴砂対策構造Aは、
図1の(a)に示すように、地震時に噴砂の発生が懸念される地盤の地表面を噴砂誘導区域1と噴砂阻止区域2とに区分けしてなるものであり、
図1の(b)に示すように、液状化抑制工が施されていない液状化層(地震時に液状化の発生が懸念される地層)Lの内部から非液状化層Gを貫通して噴砂誘導区域1の地表面に至る複数の噴砂誘導手段3,3,…と、噴砂誘導区域1に設けられた排水層4と、噴砂阻止区域2に設けられた噴砂誘導層5とを備えている。なお、非液状化層Gは、液状化が発生し難い土層(例えば、粘性土層、地下水面よりも上に位置する土層など)であり、液状化層Lの上側に位置している。
【0017】
噴砂誘導区域1は、噴砂現象の発生を許容する区域である。噴砂誘導区域1は、噴砂対策構造Aが形成される敷地のうち、噴砂で覆われても避難や災害復旧に大きな影響を与えない場所に設定する。
【0018】
噴砂阻止区域2は、噴砂現象の発生を阻止すべき区域である。噴砂阻止区域2は、噴砂対策構造Aが形成される敷地のうち、噴砂で覆われては困る通路に設定する。「噴砂で覆われては困る通路」とは、地震発生直後から利用される通路であって、例えば、敷地内の建物から敷地外の道路等へ至る避難通路、災害復旧用資機材の搬出入路のほか、緊急車両や高額な車両などの駐車場も含まれる。
【0019】
本実施形態の噴砂阻止区域2は、通路を含む領域に設定されていて、高所区画領域2aと、流入阻止壁2bとを備えている。なお、高所区画領域2aおよび流入阻止壁2bの一方または両方を省略してもよい。
【0020】
高所区画領域2aは、噴砂誘導区域1の地表面よりも標高の高い領域である。高所区画領域2aの上面は、通常時は通路として使用され、災害発生時においては避難通路となる。噴砂誘導区域1の地表面と高所区画領域2aとの標高差は、想定される噴砂の量等を考慮して適宜設定すればよいが、必要以上に大きくすると、通常時に高所区画領域2aを横断する際に支障を来す虞があるとともに、施工費が嵩む虞があるので、5〜100cmの範囲とするのが望ましい。本実施形態の高所区画領域2aは、適宜な地盤材料(例えば、土砂、砕石、岩ズリ、コンクリートガラなど)からなる盛土によって形成されている。なお、高所区画領域2aの形成方法に制限はなく、例えば、所定厚さのコンクリート版を地表面に載置して高所区画領域2aを形成してもよいし、噴砂誘導区域1を掘り下げることで、高所区画領域2aを形成してもよい。
【0021】
流入阻止壁2bは、噴砂誘導区域1に噴出した噴砂が噴砂阻止領域2に流入することを防ぐものであり、噴砂誘導区域1との境界に沿って立設されている。本実施形態の流入阻止壁2bは、コンクリート製であり、噴砂阻止区域2の縁部に沿って形成されていて、地盤の表層部に根入れされている。流入阻止壁2bの形式に制限はなく、例えば、地表面に載置されるコンクリート製のL型擁壁や逆T型擁壁を流入阻止壁2bとしてもよいし、複数の柱状材(鋼矢板、形鋼、鋼管、木杭など)を隙間無く連設したものを流入阻止壁2bとしてもよい。流入阻止壁2bの上端の高さは、想定される噴砂の量等を考慮して適宜設定すればよいが、本実施形態では、高所区画領域2aの上面の標高を超えている。なお、流入阻止壁2bの上端の高さを、高所区画領域2aの上面の標高以下としてもよい。
【0022】
噴砂誘導手段3,3,…は、液状化層Lで発生した泥水を噴砂誘導区域1に誘導する「水みち」を形成するものであり、噴砂阻止区域2の周囲のみに列状に配置されている。本実施形態では、噴砂誘導手段3の列を噴砂阻止区域2の両側に二列ずつ配置するとともに、噴砂誘導手段3の上端を流入阻止壁2b,2bで挟まれた領域の外側に位置させているが、噴砂誘導手段3の列数や配置を限定する趣旨ではない。
【0023】
各噴砂誘導手段3は、縦孔に砕石を投入して形成した柱状体(所謂グラベルドレーン)である。噴砂誘導手段3の下端部は、液状化層Lの内部に達しており、噴砂誘導手段3の上端部は、噴砂誘導区域1のうち、噴砂阻止領域2に隣接する領域に達している。なお、噴砂誘導手段3の構成は、非液状化層Gを貫通し、地盤中に水みち(噴砂の通り道)を形成し得るものであれば特に制限はなく、例えば、樹脂製の有孔パイプ(所謂ドレーンパイプ)や建築用鋼材(鋼管、H形鋼、I形鋼、山形鋼、溝形鋼、鋼矢板、面状材(シート)、線状材(ケーブル)など)からなる柱状体を噴砂誘導手段3としてもよい。
【0024】
排水層4は、噴砂誘導区域1の地表面に現れた噴砂を吸収する噴砂吸収層として機能するものであり、非液状化層Gの上面に設けられている。排水層4の透水係数は、非液状化層Gの透水係数よりも大きい。排水層4は、噴出した土砂(液状化した土砂)が速やかに浸透するよう、砕石やコンクリートガラなどで形成するとよい。排水層4を形成するには、原地盤(本実施形態では非液状化層G)の上面に砕石等を撒き出すか、あるいは、原地盤を掘り下げたうえで、砕石等を撒き出せばよい。排水層4の層厚は、想定される噴砂の量等を考慮して適宜設定すればよいが、必要以上に大きくすると、施工費が嵩む虞があるので、5〜200cmの範囲とするのが望ましい。
【0025】
噴砂誘導層5は、高所区画領域2aの盛土部分の下側に設けられていて、排水層4または地表面に連通している。噴砂誘導層5は、非液状化層Gの上面に設けられていて、非液状化層Gを突き破って噴砂阻止区域2に向けて上昇してきた噴砂(液状化した土砂)は、噴砂誘導層5を通って排水層4に誘導される。噴砂誘導層5は、土砂、砕石、岩ズリ、コンクリートガラなどの地盤材料で形成し、噴砂誘導層5の透水係数は、噴砂が速やかに排水層4に移動するように設定する。噴砂誘導層5を形成するには、原地盤(本実施形態では非液状化層G)の上面に砕石等を撒き出すか、あるいは、原地盤を掘り下げ、砕石等を撒き出せばよい。噴砂誘導層5の層厚は、想定される噴砂の量等を考慮して適宜設定すればよいが、必要以上に大きくすると、施工費が嵩む虞があるので、5〜200cmの範囲とするのが望ましい。なお、噴砂誘導層5は、噴砂阻止区域2の幅が広い場合(例えば、5m以上)に設けるとよい。噴砂阻止区域2の幅が狭い場合など、噴砂誘導手段3だけで噴砂をコントロールできる場合には、噴砂誘導層5を省略してもよい。
【0026】
本実施形態に係る噴砂対策構造Aによれば、地震動を受けて液状化層Lの間隙水圧が高まったときに、液状化層L中の土砂が噴砂の通り道である噴砂誘導手段3,3,…を通って噴砂誘導区域1内の地表面(本実施形態では、排水層4の上面)に噴出するようになる。つまり、噴砂対策構造Aによれば、噴砂の出口(噴出位置)がコントロールされ、液状化した土砂の噴出位置が噴砂誘導区域1に集中するようになるので、噴砂阻止区域2での噴砂現象の発生を抑制することが可能になる。また、噴砂誘導区域1と噴砂阻止区域2との境界付近のみに噴砂誘導手段3を形成しているので、液状化層Lの全域に液状化抑制工を施す場合に比べて、コストが安い。
【0027】
また、噴砂対策構造Aでは、噴砂阻止区域2の縁部に流入阻止壁2bを設けているので、噴砂誘導区域1に噴出した土砂が流入阻止壁2bによって堰き止められるようになる。つまり、噴砂対策構造Aによれば、噴砂阻止区域2が土砂で覆われてしまうことを防ぐことが可能になり、したがって、地震発生直後から噴砂阻止区域2を避難通路や資機材の搬出入路などとして利用することが可能になる。
【0028】
また、噴砂対策構造Aでは、噴砂誘導層5を設けているので、噴砂が噴砂阻止区域2に向けて上昇してきた場合でも、噴砂が排水層4に誘導されるようになり、したがって、噴砂阻止区域2の表面に噴砂が出現し難くなる。さらに、噴砂対策構造Aでは、噴砂阻止区域2に高所区画領域2aを設けているので、噴砂誘導区域1に噴出した土砂が噴砂阻止区域2内に流入したとしても、高所区画領域2aの周囲に留まるようになる。
【0029】
また、噴砂対策構造Aでは、噴砂誘導区域1の表層部(噴砂誘導区域1の地表面から所定深さの範囲)に排水層4を設けているので、噴砂誘導区域1の地表面に噴出した土砂が排水層4に浸透するようになり、したがって、噴出した土砂が噴砂阻止区域2に流出することを防ぐことができ、ひいては、噴砂阻止区域2が土砂で覆われてしまうことを防ぐことが可能になる。
【0030】
また、噴砂対策構造Aでは、高所区画領域2a、流入阻止壁2b、噴砂誘導手段3および排水層4を調達が容易な材料で構築しているので、低コスト化を図ることが可能になる。
【0031】
なお、噴砂対策構造Aの構成は、適宜変更してもよい。
本実施形態では、例えば、噴砂阻止区域2に高所区画領域2aおよび流入阻止壁2bの両方を構築した場合を例示したが、高所区画領域2aおよび流入阻止壁2bの両方あるいは一方を省略してもよい。
【0032】
また、本実施形態では、噴砂誘導手段3を鉛直方向に延在させた場合を例示したが、
図2に示すように、噴砂誘導手段3を斜めに配置し、噴砂誘導手段3の下部を噴砂阻止区域2の下方に位置させてもよい。噴砂誘導区域1から噴砂阻止区域2の下方の液状化層Lに向けて噴砂誘導手段3を形成しておけば、噴砂阻止区域2の下方において液状化が発生しても、液状化した土砂をより確実に噴砂誘導区域1に誘導することができ、したがって、噴射阻止区域2での噴砂の発生をより確実に抑制することが可能になる。
【0033】
また、本実施形態では、敷地の全体に排水層4および噴砂誘導層5を形成した場合を例示したが、適宜変更してもよい。例えば、図示は省略するが、噴砂誘導区域1のみに排水層4を形成し、噴砂誘導層5を省略してもよい。また、噴砂誘導区域1の一部分に排水機能を備える排水層を設けてもよい。
【0034】
図3に示すように、排水層4を省略してもよい。すなわち、
図3の噴砂対策構造Aでは、噴砂誘導区域1の表層部(地表面から所定深さの範囲)に非液状化層Gが存在していて、噴砂誘導手段3,3,…は、液状化層Lの内部から非液状化層Gを貫通して噴砂誘導区域1の地表面(非液状化層Gの上面)に達している。また、
図3の噴砂対策構造Aでは、非液状化層Gの一部を噴砂誘導層5に置換している。噴砂誘導層5は、盛土(高所区画領域2a)の直下に形成されていて、噴砂誘導層5の両側部は、噴砂誘導区域1に入り込んでいる。噴砂誘導層5のはみ出し量に制限はないが、例えば、噴砂誘導層5の両側部の1〜2m程度を噴砂誘導区域1に入り込ませるとよい。なお、図示は省略するが、盛土内に噴砂誘導層を形成してもよい。また、盛土を省略し、非液状化層Gの上面に舗装を施した場合には、舗装の下側に噴砂誘導層5を形成すればよい。
このような噴砂対策構造Aによれば、液状化層Lの間隙水圧が高まったときに、液状化層L中の土砂が噴砂の通り道である噴砂誘導手段3,3,…を通って噴砂誘導区域1内の地表面に噴出するようになる。また、噴砂が非液状化層Gを破って噴砂阻止区域2に向けて上昇してきた場合でも、噴砂誘導層5によって噴砂が噴砂誘導区域1に誘導されるので、噴砂が噴砂阻止区域2の盛土(高所区画領域2a)を破ることはない。
【0035】
なお、本実施形態では、噴砂誘導区域1の地表面を水平に整地した場合を例示したが、噴砂阻止区域2から離れる方向に噴砂が流動するように、噴砂誘導区域1の地表面に傾斜、段差、トレンチなどを設けてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 噴砂誘導区域
2 噴砂阻止区域
2a 高所区画領域
2b 流入阻止壁
3 噴砂誘導手段
4 排水層
5 噴砂誘導層
L 液状化層
G 非液状化層