(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
[燃料電池スタック]
以下、本発明に係る燃料電池スタックの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1及び
図2に示すように、燃料電池スタック100は、複数の燃料電池セル1と、マニホールド2と、一対の端部集電部材3と、を備えている。この燃料電池スタック100は、筐体150によって覆われている。筐体150の材質は、例えば、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、又はNi基合金などである。
【0022】
[マニホールド]
マニホールド2は、各燃料電池セル1にガスを分配するように構成されている。マニホールド2は、中空状であり、内部空間を有している。マニホールド2の内部空間には、導入管201を介して燃料ガスなどのガスが供給される。マニホールド2は、この内部空間と外部とを連通する複数の貫通孔27を有している。
【0023】
マニホールド2は、各燃料電池セル1を支持している。マニホールド2は、マニホールド本体21と、上壁22とを備えている。マニホールド本体21と上壁22とは、互いに別部材であって接合されている。なお、マニホールド本体21と上壁22とは、一体的に形成されていてもよい。このマニホールド本体21と上壁22とによって、マニホールド2の内部空間を画定している。
【0024】
マニホールド本体21は、直方体状であって、上面が開口した内部空間を有する。詳細には、マニホールド本体21は、底壁23と、側壁24と、を有している。側壁24は、底壁23の周縁部から上方に延びている。導入管201は、側壁24に取り付けられており、マニホールド2の内部空間と連通している。導入管201は、例えば、上方に延びている。
【0025】
例えば、マニホールド本体21は、耐熱性を有するような金属あるいは絶縁性セラミックスによって形成される。より具体的には、マニホールド本体21は、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、Ni基合金、MgO(酸化マグネシウム)、Al
2O
3(酸化アルミニウム)、MgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)、MgO・SiO
2(ステアタイト)、及び2MgO・SiO
2(フォルステライト)よりなる群から選ばれる少なくとも1種から形成されている。
【0026】
上壁22は、マニホールド本体21の上面を塞ぐように、マニホールド本体21に取り付けられている。例えば、上壁22とマニホールド本体21とは、結晶化ガラス等によって接合されている。上壁22は、上述したマニホールド本体21の材料の少なくとも一種から形成することができる。
【0027】
上壁22は、各燃料電池セル1が取り付けられるように構成されている。詳細には、上壁22は、複数の貫通孔27を有している。各貫通孔27は、マニホールド2の幅方向(y軸方向)に延びている。また、各貫通孔27は、配列方向(z軸方向)において、互いに間隔をあけて配置されている。
【0028】
[燃料電池セル]
各燃料電池セル1は、マニホールド2から上方に延びている。詳細には、各燃料電池セル1は、マニホールド2の上壁22から上方に延びている。燃料電池セル1の下端部は、貫通孔27内に挿入されている。燃料電池セル1の下端部は、上壁22から下方に突出していてもよい。燃料電池セルの長手方向(x軸方向)の長さは、例えば、100〜300mm程度とすることができる。なお、燃料電池セル1の下端部が貫通孔27内に挿入された状態において、燃料電池セル1の下端部の外周面と貫通孔27の内壁面との間には隙間が形成されている。この隙間に、後述する第3接合材103が充填されていてもよい。
【0029】
各燃料電池セル1は、配列方向(z軸方向)に沿って、互いに間隔をあけて配置されている。なお、各燃料電池セル1は、配列方向に沿って、等間隔に配置されていることが好ましいが、等間隔に配置されていなくてもよい。
【0030】
図3に示すように、燃料電池セル1は、複数の発電素子部11と、支持基板12とを備えている。
【0031】
[支持基板]
支持基板12は、マニホールド2から上方に延びている。すなわち、支持基板12は、上下方向に延びている。支持基板12は、支持基板12の長手方向(x軸方向)に延びる複数のガス流路121を内部に有している。各ガス流路121は、支持基板12の幅方向において互いに間隔をあけて配置されている。ガス流路121は、マニホールド2の内部空間と連通している。
【0032】
支持基板12の長手方向(x軸方向)は、燃料電池セル1の長手方向と同じ方向である。各ガス流路121は、互いに実質的に平行に延びている。各ガス流路121は、支持基板12の長手方向の両端面において開口している。
【0033】
図4に示すように、支持基板12は、複数の第1凹部123を有している。各第1凹部123は、支持基板12の両面に形成されている。各第1凹部123は支持基板12の長手方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0034】
支持基板12は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板12は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、支持基板12は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板12の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。
【0035】
[発電素子部]
各発電素子部11は、支持基板12の両面に支持されている。なお、各発電素子部11は、支持基板12の片面のみに支持されていてもよい。各発電素子部11は、燃料電池セル1の長手方向(x軸方向)において、配列されている。すなわち、各発電素子部11は、上下方向に配列されている。本実施形態に係る燃料電池セル1は、いわゆる横縞型の燃料電池セルである。
【0036】
各発電素子部11は、発電素子本体部110と、電気的接続部111と、を有している。発電素子本体部110は、燃料極13、電解質14、及び空気極15を有している。また、各発電素子部11は、反応防止膜16をさらに有している。燃料極13は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極13は、燃料極集電部131と燃料極活性部132とを有する。
【0037】
燃料極集電部131は、第1凹部123内に配置されている。詳細には、燃料極集電部131は、第1凹部123内に充填されており、第1凹部123と同様の外形を有する。各燃料極集電部131は、第2凹部131a及び第3凹部131bを有している。燃料極活性部132は、第2凹部131a内に配置されている。詳細には、燃料極活性部132は、第2凹部131a内に充填されている。
【0038】
燃料極集電部131は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部131は、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部131の厚さ、並びに第1凹部123の深さは、50〜500μm程度である。
【0039】
燃料極活性部132は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部132は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部132の厚さは、5〜30μmである。
【0040】
電解質14は、燃料極13上を覆うように配置されている。詳細には、電解質14は、隣り合うインターコネクタ112間を長手方向に延びている。すなわち、燃料電池セル1の長手方向において、電解質14とインターコネクタ112とが交互に配置されている。
【0041】
電解質14は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質14は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、電解質14は、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質14の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0042】
反応防止膜16は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜16は、電解質14と空気極15との間に配置されている。反応防止膜16は、電解質14内のYSZと空気極15内のSrとが反応して電解質14と空気極15との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。
【0043】
反応防止膜16は、希土類元素を含むセリアを含んだ材料から構成されている。反応防止膜16は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O
2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜16の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0044】
空気極15は、空気極活性部151と、空気極集電部152とを有している。空気極活性部151は、反応防止膜16上に配置されている。空気極活性部151は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極活性部151は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極活性部151は、LSF=(La,Sr)FeO
3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O
3(ランタンニッケルフェライト)、又は、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。空気極活性部151は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極活性部151の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0045】
空気極集電部152は、空気極活性部151上に配置されている。空気極集電部152は、空気極活性部151上から隣の発電素子部11に向かって延びている。詳細には、空気極集電部152は、隣の発電素子部11の電気的接続部111であるインターコネクタ112まで延びている。空気極集電部152は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。
【0046】
空気極集電部152は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極集電部152は、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、空気極集電部152は、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電部152の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
【0047】
各発電素子部11のうち、最も下方に配置される下側発電素子部11aを除いた残りの発電素子部11は、電気的接続部111としてインターコネクタ112を有している。インターコネクタ112は、隣り合う発電素子本体部110同士を互いに電気的に接続するように構成されている。
【0048】
インターコネクタ112は、第3凹部131b内に配置されている。詳細には、インターコネクタ112は、第3凹部131b内に埋設(充填)されている。インターコネクタ112は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ112は、例えば、LaCrO
3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、インターコネクタ112は、(Sr,La)TiO
3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ112の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0049】
図5に示すように、各発電素子部11のうち、最も下方に配置される下側発電素子部11aは、発電素子本体部110と、電気的接続部111とを有している。なお、支持基板12の両面に発電素子部11が配置されている場合、支持基板12の両面のそれぞれに下側発電素子部11aが配置されている。電気的接続部111は、発電素子本体部110と電気的に接続している。また、電気的接続部111は、発電素子本体部110から下方に延びている。この下側発電素子部11aの電気的接続部111は、第1接続部113と、第2接続部114とを有している。
【0050】
第1接続部113は、上述したインターコネクタ112と同様の構成を有している。すなわち、第1接続部113は、燃料極集電部131の第3凹部131b内に配置されている。第1接続部113は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される。第1接続部113の材質は、上述したインターコネクタ112の材質のいずれかとすることができる。
【0051】
第2接続部114は、上述した空気極集電部152と同じ材料から構成することができる。第2接続部114は、第1接続部113と電気的に接続されている。また、第2接続部114は、第1接続部113から下方に延びている。
【0052】
燃料電池セル1の下端部は、緻密膜18によって覆われている。詳細には、緻密膜18は、支持基板12を覆っている。緻密膜18は、第2接続部114と支持基板12との間から下方に延びている。
【0053】
緻密膜18は、緻密膜18の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密膜18の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。このガスシール機能を発揮するため、この緻密膜18の気孔率は、例えば、10%以下である。また、緻密膜18は、絶縁性セラミックスで構成されている。
【0054】
具体的には、緻密膜18は、上述した電解質14と反応防止膜16とによって構成することができる。緻密膜18を構成する電解質14は、支持基板12を覆っており、第1接続部113から支持基板12の下端近傍まで延びている。また、緻密膜18を構成する反応防止膜16は、電解質14と第2接続部114との間に配置されている。なお、緻密膜18は、電解質14のみで構成されていてもよいし、電解質14及び反応防止膜16以外の材料によって構成されていてもよい。
【0055】
[端部集電部材]
図1及び
図2に示すように、一対の端部集電部材3は、複数の燃料電池セル1から構成される燃料電池セル集合体から電力を取り出すように構成されている。すなわち、各燃料電池セル1のうち、配列方向(z軸方向)の両端部に配置される各燃料電池セル1に、各端部集電部材3が取り付けられている。なお、一対の端部集電部材3は、取り付けられる位置が互いに異なるだけであって互いの構成は実質的に同じであるため、以下では、一方の端部集電部材3のみについて説明する。
【0056】
図5に示すように、端部集電部材3は、配列方向の端部に配置された燃料電池セル1の下側発電素子部11aと電気的に接続される。詳細には、端部集電部材3は、下側発電素子部11aの電気的接続部111に接続されている。
【0057】
図6に示すように、端部集電部材3は、接合部31と、引出し部32とを有している。端部集電部材3は、1つの部材によって構成されている。例えば、端部集電部材3は、一枚の金属板から構成されている。端部集電部材3の板厚は、例えば、0.1〜2.0mm程度とすることができる。端部集電部材3は、金属材料から構成されている。好ましくは、端部集電部材3は、ステンレス材料から構成される。具体的には、端部集電部材3は、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、又はNi基合金から構成されている。
【0058】
接合部31は、板状である。具体的には、接合部31は、配列方向視(z軸方向視)において、矩形状を有している。接合部31の幅W1は、例えば、下側発電素子部11aの幅と同じ程度とすることができる。
【0059】
図5に示すように、接合部31は、下側発電素子部11aに接合されている。詳細には、接合部31は、電気的接続部111に接合されている。例えば、接合部31は、第1接合材101によって、下側発電素子部11aに接合されている。なお、第1接合材101は、例えば、(Mn,Co)
3O
4、(La,Sr)MnO
3、及び(La,Sr)(Co,Fe)O
3などから選ばれる少なくとも1種である。
【0060】
図6に示すように、引出し部32は、接合部31から下方に延びている。引出し部32の幅W2は、接合部31の幅W1よりも小さい。引出し部32は、例えば、接合部31の下端の幅方向(y軸方向)の中央部から延びている。
【0061】
引出し部32は、鉛直部321と、延在部322と、を有している。鉛直部321は、引出し部32のうち上下方向に延びる部分であり、接合部31から下方に延びている。また、延在部322は、引出し部32のうち水平方向に延びる部材である。延在部322は、鉛直部321の下端部から側方に延びている。詳細には、延在部322は、鉛直部321の下端部から水平方向に延びている。また、延在部322は、燃料電池セル1から離れる方向に延びている。
【0062】
図5に示すように、延在部322は、上壁22に沿って延びている。延在部322は、上壁22と間隔をあけて延びている。延在部322と上壁22との絶縁性を確保するために、延在部322と上壁22との間に電気絶縁性部材を配置していてもよい。
【0063】
図2に示すように、引出し部32の先端部は、筐体150を超えて、筐体150の外部まで延びている。具体的には、延在部322の先端部が筐体150の外部まで延びている。例えば、筐体150は取出し孔を有しており、引出し部32はこの取出し孔を介して筐体150の外部へと延びている。この引出し部32の先端部に、外部回路のリード線などが取り付けられている。例えば、引出し部32の先端部には、リード線を取り付けるための取付孔又は取付凹部などが形成されていてもよい。
【0064】
[セル間集電部材]
各燃料電池セル1は、セル間集電部材4を介して互いに電気的に接続されている。セル間集電部材4は、各燃料電池セル1の間に配置されており、隣り合う各燃料電池セル1を電気的に接続している。セル間集電部材4は、導電性を有する材料から形成されている。例えば、セル間集電部材4は、酸化物セラミックスの焼成体又は金属などによって形成されている。なお、セル間集電部材4は、第2接合材102によって各燃料電池セル1に接合されている。第2接合材102は、例えば、第1接合材101の材料として挙げたいずれかの材料で構成することができる。
【0065】
[表裏接続部材]
各燃料電池セル1において、支持基板12の一方面に形成された発電素子部11と、支持基板12の他方面に形成された発電素子部11とは、表裏接続部材5によって電気的に接続されている。詳細には、表裏接続部材5は、支持基板12の一方面及び他方面のそれぞれにおいて最も上方に配置される各発電素子部11同士を電気的に接続している。
【0066】
[第3接合材]
各燃料電池セル1は、第3接合材103によって、マニホールド2に固定されている。第3接合材103は、燃料電池セル1とマニホールド2の上壁22とを接合している。第3接合材103は、燃料電池セル1の下端部とマニホールド2の上壁22とを接合している。
図5に示すように、第3接合材103は、緻密膜18と接触している。なお、燃料電池セル1がマニホールド2に固定された状態において、貫通孔27とガス流路121とが連通している。
【0067】
第3接合材103は、例えば、結晶化ガラスである。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO
2−B
2O
3系、SiO
2−CaO系、又はSiO
2−MgO系が採用され得る。なお、本明細書では、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスを指す。なお、第3接合材103の材料として、非晶質ガラス、ろう材、又はセラミックス等が採用されてもよい。具体的には、第3接合材103は、SiO
2−MgO−B
2O
5−Al
2O
3系及びSiO
2−MgO−Al
2O
3−ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0068】
[発電方法]
以上のように構成された燃料電池スタック100は、次のようにして発電する。マニホールド2を介して各燃料電池セル1のガス流路121内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板12の両面を酸素を含むガス(空気等)に曝すことにより、電解質14の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。この燃料電池スタック100を外部の負荷に接続すると、空気極15において下記(1)式に示す電気化学反応が起こり、燃料極13において下記(2)式に示す電気化学反応が起こり、電流が流れる。
(1/2)・O
2+2e
−→O
2− …(1)
H
2+O
2−→H
2O+2e
− …(2)
【0069】
なお、燃料ガスは、ガス流路121内を上方に向かって流れる。そして、ガス流路121から燃料電池セル1の上方に排出された燃料ガスは、空気と反応して燃焼する。このため、燃料電池セル1の上方は高温となっている。
【0070】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0071】
変形例1
上記実施形態では、燃料極集電部131が第2凹部131a及び第3凹部131bを有しているが、燃料極集電部131の構成はこれに限定されない。例えば、燃料極集電部131は第2凹部131a及び第3凹部131bなどの凹部を有していなくてもよい。この場合、燃料極活性部132は、燃料極集電部131上に形成されており、燃料極集電部131に埋設されていない。また、インターコネクタ112及び第1接続部113は、燃料極集電部131上に形成されており、燃料極集電部131に埋設されていない。
【0072】
変形例2
上記実施形態では、端部集電部材3の鉛直部321は、上下方向と実質的に平行に延びているが、鉛直部321の構成はこれに限定されない。例えば、
図7に示すように、鉛直部321は、上下方向に対して傾斜した状態で下方に延びていてもよい。詳細には、鉛直部321は、下方に行くにつれて燃料電池セル1から離れるように傾斜している。
【0073】
変形例3
上記実施形態では、引出し部32の幅W2は一定であるが、引出し部32の幅W2は一定でなくてもよい。例えば、
図8に示すように、引出し部32は、引出し本体部323と、中間部324とを有していてもよい。なお、引出し本体部323は、上記実施形態の延在部322に相当し、中間部324は、上記実施形態の鉛直部321に相当している。
【0074】
中間部324は、引出し本体部323と接合部31との間に配置されている。中間部324は、接合部31から下方に延びている。中間部324の幅W3は、接合部31の幅W1よりも小さく、引出し本体部323の幅W4よりも大きい。なお、中間部324の幅W3は、接合部31から離れるにつれて小さくなっている。中間部324の幅W3が引出し本体部323の幅W4よりも大きいとは、中間部324の上端部における幅W3が引出し本体部323の幅W4よりも大きいことを意味する。引出し本体部323の幅W4は、接合部31の幅W1よりも小さい。
【0075】
なお、中間部324の幅W3は、接合部31から離れるにつれて小さくなっていなくてもよい。例えば、
図9に示すように、中間部324の幅W3は、一定であってもよい。
【0076】
変形例4
上記実施形態では、端部集電部材3の引出し部32の幅W2は、接合部31の幅W1よりも小さいが、端部集電部材3の構成はこれに限定されない。例えば、
図10に示すように、引出し部32の幅W2は、接合部31の幅W1と略同じであってもよい。この場合、接合部31から同じ幅の鉛直部321が下方に延びている。接合部31は、下側発電素子部31aに接合される部分であり、鉛直部321は接合部31から下方に延びる部分であって下側発電素子部31aに接合されていない。
【0077】
変形例5
上記実施形態では、端部集電部材3は、下側発電素子部11aの電気的接続部111に接合されているが、特にこれに限定されない。例えば、
図11に示すように、端部集電部材3は、下側発電素子部11aの発電素子本体部110に接合されていてもよい。この場合、下側発電素子部11aは、電気的接続部111を有していなくてもよい。
【0078】
変形例6
上記実施形態では、延在部322は、マニホールドの上面と略平行に延びているが、特にこれに限定されない。例えば、
図12に示すように、延在部322は、鉛直部321から離れるにつれて、マニホールドの上壁22の上面から離れるように傾斜して延びていてもよい。また、
図13に示すように、延在部322は、鉛直部321から離れるにつれて、マニホールド2の上壁22の上面に近付くように傾斜して延びていてもよい。このときのマニホールド2の上壁22の上面に対する延在部322の角度θは、特に制限されないが、例えば、約0.5〜20度とすることができる。
【0079】
変形例7
図14に示すように、接合部31及び引出し部32は、表面に酸化皮膜300を有していてもよい。引出し部32の酸化皮膜は、接合部31の酸化皮膜よりも薄い。具体的には、接合部31の酸化皮膜の厚さは、例えば、0.5〜40μm程度であり、引出し部32の酸化皮膜300の厚さは、例えば、0.1〜20μm程度である。なお、接合部31のうち、第1接合材101と接する面には、酸化皮膜300を有していなくてもよいし有していてもよい。
【0080】
接合部31の酸化皮膜300の厚さは、例えば、接合部31の中央部を接合部31と直交する面で切断し、その切断面にて測定することができる。また、引出し部32の酸化皮膜300の厚さは、例えば、延在部322の任意の位置において延在部322に垂直な面で切断し、その切断面にて測定することができる。
【0081】
本変形例において、接合部31及び引出し部32は、例えば、Cr(クロム)を含有する合金等によって構成される。このような合金としては、Fe−Cr系合金鋼(ステンレス鋼など)、又はNi−Cr系合金鋼などを用いることができる。また、上述した酸化皮膜300としては、酸化クロム膜などを例示することができる。接合部31を引出し部32よりも高温で熱処理することによって、引出し部32の酸化皮膜300を接合部31の酸化皮膜300よりも薄くすることができる。
【0082】
変形例8
上記実施形態では、端部集電部材3の接合部31は、下側発電素子部11aの外表面Sと略平行に延びているが、これに限定されず、以下のような構成とすることができる。
【0083】
図15に示すように、端部集電部材3の接合部31は、第1接合材101を介して、下側発電素子部11aの外表面Sに接合される。接合部31は、表面に酸化クロム膜301Yを有している。具体的には、接合部31は、基材301Xと酸化クロム膜301Yとを有する。
【0084】
基材301Xは、板状に形成される。基材301Xの厚みは特に制限されないが、例えば0.1〜4.0mmとすることができる。
【0085】
基材301Xは、Cr(クロム)を含有する合金によって構成される。このような合金としては、Fe−Cr系合金鋼(ステンレス鋼など)、又はNi−Cr系合金鋼などを用いることができる。基材301XにおけるCrの含有割合は特に制限されないが、例えば4〜30質量%とすることができる。
【0086】
基材301Xは、Ti(チタン)やAl(アルミニウム)を含有していてもよい。基材301XにおけるTiの含有割合は特に制限されないが、例えば0.01〜1.0at.%とすることができる。基材301XにおけるAlの含有割合は特に制限されないが、例えば0.01〜0.4at.%とすることができる。基材301Xは、TiをTiO
2(チタニア)として含有していてもよいし、AlをAl
2O
3(アルミナ)として含有していてもよい。
【0087】
酸化クロム膜301Yは、基材301X上に形成される。酸化クロム膜301Yは、基材301Xを覆う。酸化クロム膜301Yは、基材301Xの表面全体を覆っていることが好ましいが、基材301Xの表面を部分的に覆っていなくてもよい。酸化クロム膜301Yの厚みは特に制限されないが、例えば1μm〜20μmとすることができる。
【0088】
酸化クロム膜301Yは、酸化クロム(Cr
2O
3)を主成分として含む。具体的には、酸化クロム膜301Yは、酸化クロムを50wt%以上含む。酸化クロム膜301Yは、Mn、Fe、Cr、Mo、Siなどを不純物として含有していてもよい。酸化クロム膜301Yは、RF(radio-frequency)マグネトロンスパッタ装置を用いてCrターゲットをArスパッタリングし、反応ガス(例えば、酸素)との反応により酸化物を成膜することによって形成することができる。
【0089】
図15に示すように、基材301Xは、下側発電素子部11aの外表面Sに垂直な断面において、第1面Y1、第2面Y2及び角部Y3を含む。
【0090】
第1面Y1は、下側発電素子部11aの外表面Sに対して角度を有する。すなわち、第1面Y1は、外表面Sと平行ではなく、外表面Sに対して傾斜している。第1面Y1は、角部Y3側に向かうほど外表面Sに近づく。外表面Sに対する第1面Y1の角度θ1は特に制限されないが、例えば0.5度〜45度とすることができる。なお、
図15に示す例では、第1面Y1が平坦に形成されているが、実際には微小な凹凸が形成されていてもよい。
【0091】
第1面Y1において、酸化クロム膜301Yは、基材301Xを覆っていることが好ましい。第1面Y1に形成された酸化クロム膜301Yの厚みは、角部Y3に近づくほど厚く形成されていてもよい。
【0092】
第2面Y2は、第1面Y1に連なる。第2面Y2は、下側発電素子部11aの外表面Sに対して角度を有する。すなわち、第2面Y2は、外表面Sと平行ではなく、外表面Sに対して傾斜している。第2面Y2は、角部Y3側に向かうほど外表面Sに近づく。外表面Sに対する第2面Y2の角度θ2は特に制限されないが、例えば45度〜135度とすることができる。
【0093】
また、第2面Y2は、第1面Y1に対して角度を有する。すなわち、第2面Y2は、第1面Y1と平行ではなく、第1面Y1に対して傾斜している。第1面Y1に対する第2面Y2の角度θ3は特に制限されないが、例えば30度〜135度とすることができる。なお、
図15に示す例では、第2面Y2が平坦に形成されているが、実際には微小な凹凸が形成されていてもよい。
【0094】
第2面Y2において、酸化クロム膜301Yは、基材301Xを覆っていることが好ましい。第2面Y2に形成された酸化クロム膜301Yの厚みは、角部Y3に近づくほど厚く形成されていてもよい。
【0095】
角部Y3は、第1面Y1と第2面Y2とによって形成される。本実施形態において、「第1面Y1と第2面Y2とによって形成される」とは、“第1面Y1と第2面Y2とによって規定される”、“第1面Y1と第2面Y2とによって区画される”、及び“第1面Y1と第2面Y2との間に設けられる”のうち少なくとも1つを意味する。
【0096】
角部Y3は、第1面Y1と第2面Y2とが屈曲するように連なることで形成されていてもよいし、第1面Y1と第2面Y2とが他の1以上の面(湾曲面又は屈曲面)を介して連なることで形成されていてもよい。
【0097】
角部Y3において、酸化クロム膜301Yは、基材301Xを覆っていることが好ましい。角部Y3に形成された酸化クロム膜301Yは、角部Y3周辺において他の部分よりも厚く形成されていてもよい。
【0098】
角部Y3は、第1面Y1及び第2面Y2それぞれよりも下側発電素子部11aの外表面Sに近接している。角部Y3は、端部集電部材3の第1先端部301aに設けられる。本変形例において、角部Y3は、端部集電部材3のうち、下側発電素子部11aの外表面Sに最も近接する部位である。角部Y3から外表面Sまでの距離Dは特に制限されないが、0.5〜2000μmとすることができる。
【0099】
下側発電素子部11aから端部集電部材3に流れる電流は、端部集電部材3のうち下側発電素子部11aの外表面Sに近接する角部Y3に集中する。角部Y3に電流が集中すると、角部Y3の温度が上昇するため、角部Y3に形成された酸化クロム膜301Yの温度が上昇して、酸化クロム膜301Yの電気抵抗が低下する。その結果、下側発電素子部11aから端部集電部材3へスムーズに電流を流すことができるため、下側発電素子部11aと端部集電部材3との電気的接続性を向上させることができる。
【0100】
また、角部Y3を形成する第1面Y1及び第2面Y2のそれぞれが外表面Sに対して角度を有しているため、角部Y3を第1導電性接合材102aに挿入した際に、第1導電性接合材102a中の気泡を角部Y3周辺から排除することができる。その結果、下側発電素子部11aと端部集電部材3との電気的接続性を更に向上させることができる。