特許第6359243号(P6359243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359243
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/24 20180101AFI20180709BHJP
【FI】
   C09J7/24
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-87191(P2013-87191)
(22)【出願日】2013年4月18日
(65)【公開番号】特開2014-208732(P2014-208732A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2015年11月10日
【審判番号】不服2017-6294(P2017-6294/J1)
【審判請求日】2017年5月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-70991(P2013-70991)
(32)【優先日】2013年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】若木 裕之
(72)【発明者】
【氏名】武石 一路
(72)【発明者】
【氏名】井上 則英
【合議体】
【審判長】 國島 明弘
【審判官】 川端 修
【審判官】 原 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−45965(JP,A)
【文献】 特開平11−343469(JP,A)
【文献】 特開2010−275340(JP,A)
【文献】 特開2012−255071(JP,A)
【文献】 特開2009−262423(JP,A)
【文献】 特開2011−144231(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/055803(WO,A1)
【文献】 特開2011−132392(JP,A)
【文献】 特開平7−062299(JP,A)
【文献】 特開2007−144865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層(A)及び粘着層(X)の少なくとも2層からなる表面保護フィルムであり、
基材層(A)が、10Hzでの動的粘弾性測定の23℃におけるtanδ値(損失正接)が0.15以上かつ、50℃におけるtanδ値(損失正接)が0.08以上であって、スチレン系重合体からなる応力緩和樹脂(A−1)10〜20重量%と、ポリプロピレン(A−2)80〜90重量%とからなることを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項2】
前記スチレン系重合体が、10Hzでの動的粘弾性測定におけるtanδ値(損失正接)のピーク値が1.0以上の、スチレンとオレフィンとの共重合体である請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
粘着層(X)が、α−オレフィン系エラストマー及び/またはスチレン系エラストマーである請求項1または2に記載の表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学製品、建材、自動車部品、半導体ウエハ等に使用される表面保護フィルムに関する。詳しくは、被着体に対し適度な粘着強度を示し、高温下で輸送、保管や加工した場合であっても、被着体からの浮きや剥離がない表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
表面保護フィルムは、光学用途用や建材用の樹脂製品、金属製品、ガラス製品、半導体ウエハ等の被着体に貼付して使用し、これらの輸送、保管や加工時の傷付き、破損、または異物混入を防ぐ、あるいは表面保護フィルムを貼付したまま、次工程における支持体等の役割を果たしている。これらの表面保護フィルムは、一般には粘着性の無い表面層と、前記被着体と粘着させるための粘着層とからなる。表面層は通常、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体から形成される。
【0003】
表面保護フィルムに必要な特性としては、被着体に対し適度な粘着強度を示し、剥離除去に際しては粘着層が被着体へ残留しないことだけではなく、輸送、保管や加工、あるいは表面保護フィルムを貼付したまま、次工程における支持体等に使用時に、表面保護フィルムの浮きや剥がれがないことが要求される。特に、表面保護フィルムを被着体に貼り付けたものが、表面保護フィルムを剥離するまでの間に、高温条件下におかれる場合には、より一層高度なものが求められる。
【0004】
近年、ブラウン管ディスプレイから、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイへの移行や、多機能携帯電話、所謂スマートフォンに代表される携帯情報端末の普及が進んでいる。これらに用いる部材において、近年の高機能化、高性能化に伴い、大きな凹凸表面形状を持つあるいは表面処理を施された部材が増えており、表面保護フィルムの粘着層との接触面積が必然的に小さくなることから、表面保護フィルムが部分的に変形した状態になる。このような状態で、輸送、保管や加工、あるいは表面保護フィルムを貼付したまま、次工程における支持体等に使用時に、高温下におかれた場合、変形した部分は元の状態に回復しようとするため、表面保護フィルムは被着体から浮いたり、剥がれてしまったりする。
【0005】
従来より、一般に用いられてきた表面保護フィルムは、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルなどの上に、天然ゴムまたは変性天然ゴムに、適量の粘着付与剤等を配合した天然ゴム系粘着剤や、アクリル系共重合体にイソシアネート化合物やメチロール化合物で架橋三次元化して凝集力を高めたアクリル系粘着剤やポリイソブチレン等の合成ゴム系粘着剤が塗布されたものがある。
これら粘着剤塗布タイプの表面保護フィルムは、粘着層の粘着強度調整の自由度が比較的高く、浮きや剥がれがない粘着層を作成も可能だが、これら粘着剤では、粘着強度の向上による、被着体への汚染性が悪化するおそれがある。
【0006】
特開2012−131978号公報には、共押出成形により得られる表面保護フィルムであって、スチレン系エラストマー、粘着付与樹脂とポリオレフィン系樹脂の組成物からなることを特徴する樹脂組成物を粘着層とする表面保護フィルムが開示されている。しかしながら、同公報による方法では、常温下での貼付では、適度な粘着強度を示すが、特に大きな凹凸表面形状を持つあるいは表面処理を施された部材では、高温下で浮きや剥がれが発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−131978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、光学製品、建材、自動車部品、半導体ウエハ等に使用され、被着体に対し適度な粘着強度を示し、高温下で輸送、保管や加工、あるいは表面保護フィルムを貼付したまま、次工程における支持体等に使用した場合であっても、被着体からの浮きや剥離がなく、被着体への汚染のない、表面保護フィルムに関する。詳しくは、近年の被着体(部材)の、高機能化、高性能化に伴い、大きな凹凸表面形状を持つあるいは表面処理を施された被着体表面などに対し、適度な粘着強度を有し、かつ輸送、保管や加工、あるいは表面保護フィルムを貼付したまま、次工程における支持体等に使用時に、高温下におかれた場合において、貼付にて変形した表面保護フィルムの変形回復に対し、被着体に対し適度な粘着強度を示し、被着体への汚染のない、表面保護フィルムとするため、基材層に応力緩和性を持たせることにより、被着体からの浮きや剥離がない表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を鑑み、鋭意検討した結果、ある特定の樹脂組成物からなる基材層を有する表面保護フィルムにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、基材層(A)及び粘着層(X)の少なくとも2層からなる表面保護フィルムであり、基材層(A)が、10Hzでの動的粘弾性測定の23℃におけるtanδ値(損失正接)が0.15以上かつ、50℃におけるtanδ値(損失正接)が0.08以上であって、スチレン系重合体からなる応力緩和樹脂(A−1)10〜20重量%と、ポリプロピレン(A−2)80〜90重量%とからなる表面保護フィルムに関する。

【発明の効果】
【0011】
本発明の表面保護フィルムは、特には、高温下で輸送、保管や加工した場合であっても、被着体からの浮きや剥離がなく、光学用途だけでなく、建材用途、自動車部品用途、半導体ウエハ加工用途等の保護フィルムとしても産業上の利用価値は極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の表面保護フィルムは、基材層および粘着層の少なくとも2層からなる。
本発明の表面保護フィルムの基材層としては、10Hzでの動的粘弾性測定の23℃におけるtan δ値(損失正接)が0.15以上かつ、50℃におけるtan
δ値(損失正接)が0.08以上である応力緩和樹脂(A−1)と、ポリオレフィン(A−2)からなる。
本発明の基材層を形成する、応力緩和樹脂(A−1)の、10Hzでの動的粘弾性測定の23℃におけるtanδ値(損失正接)としては0.15以上かつ、50℃におけるtan
δ値(損失正接)としては0.08以上である。23℃におけるtan δ値(損失正接)が0.15未満または、50℃におけるtan δ値(損失正接)が0.08未満では、十分な応力緩和性が得られず、高温下で輸送、保管や加工、あるいは表面保護フィルムを貼付したまま、次工程における支持体等に使用した場合に、被着体からの浮きや剥離が発生するおそれがある。
【0013】
10Hzでの動的粘弾性測定の23℃におけるtan δ値(損失正接)が0.15以上かつ、50℃におけるtanδ値(損失正接)が0.08以上である応力緩和樹脂(A−1)としては、炭素数3以上のα−オレフィンを主成分とするオレフィン系重合体及び/またはスチレン系重合体が挙げられる。
【0014】
オレフィン系重合体を形成する、炭素数3以上のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、1−デセン、1−ドデセンなどを挙げることができる。オレフィン系重合体としては例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・4−メチルペンテン−1共重合体、プロピレン・1−ブテン・4−メチルペンテン−1共重合体、プロピレン・4−メチルペンテン−1・1−ドデセン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・1−ブテン・1−ヘキセン共重合体、1−ブテン単独重合体、4−メチルペンテン−1単独重合体などが挙げられる。上記tanδ値を満足する限りポリマー鎖構造としては、アイソタクチック構造やシンジオタクチック構造でも、アタクチック構造であってもよい。好ましくは、プロピレン・4−メチルペンテン−1共重合体、プロピレン・1−ブテン・4−メチルペンテン−1共重合体、4−メチルペンテン−1単独重合体、シンジオタクチック構造のプロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体である。より好ましくは、10Hzでの動的粘弾性測定におけるtanδ値(損失正接)のピーク温度が5℃以上の、プロピレンと少なくとも一種の炭素数4〜20とのオレフィンとの共重合体であり、炭素数4〜20のオレフィンの具体例としては、1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、1−デセン、1−ドデセンなどを挙げることができ、具体例としては、前記の、例えば、プロピレン・4−メチルペンテン−1共重合体、プロピレン・1−ブテン・4−メチルペンテン−1共重合体が挙げられる。
炭素数3以上のα−オレフィンを主成分とするオレフィン系重合体の230℃で測定したメルトフローレート(MFR)は、0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分の範囲にある。
【0015】
スチレン系重合体としては、ポリスチレン相をハードセグメントとして有する、スチレン系エラストマーが使用できる。具体的には、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SEBS)、及びこれらの水素化物、ポリスチレン、スチレン・イソブチレン・スチレントリブロック共重合体(SIBS)、スチレン・イソブチレンジブロック共重合体(SIB)を挙げることができる。好ましくはスチレン・イソブチレン・スチレントリブロック共重合体(SIBS)、スチレン・イソブチレンジブロック共重合体(SIB)、あるいはスチレン・イソブチレン・スチレントリブロック共重合体(SIBS)と、スチレン・イソブチレンジブロック共重合体(SIB)のブレンド物である。より好ましくは、10Hzでの動的粘弾性測定におけるtanδ値(損失正接)のピーク値が1.0以上のスチレンとオレフィンとの共重合体であり、具体例としては、前記の、例えば、スチレン・イソブチレン・スチレントリブロック共重合体(SIBS)、スチレン・イソブチレンジブロック共重合体(SIB)、あるいはスチレン・イソブチレン・スチレントリブロック共重合体(SIBS)と、スチレン・イソブチレンジブロック共重合体(SIB)のブレンド物が挙げられる。
スチレン系重合体の230℃で測定したメルトフローレート(MFR)は、0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分の範囲にある。
本発明においては、必要に応じて2種類以上の前記オレフィン系重合体またはスチレン系重合体を使用することもできる。
【0016】
本発明の基材層を形成する、ポリオレフィン(A−2)としては、公知のポリオレフィン樹脂であれば制限なく使用することが出来るが、具体的には例えば、プロピレン単独共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、1−ブテン単独重合体、プロピレン・オレフィンゴム・ブロック共重合体、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体、4−メチルペンテン−1単独重合体、4−メチルペンテン−1・プロピレン共重合体、4−メチルペンテン−1・1−ブテン共重合体、4−メチルペンテン−1・プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等を挙げることができる。
一般的には、プロピレン単独共重合体、プロピレン系共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが使用される。これらの中で、剛性や耐熱性が高く、フィッシュアイ(架橋ゲル)の発生がないポリプロピレンが好ましく、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと少なくとも1種の炭素数3以外のα−オレフィンからなる共重合体がより好ましい。
ポリオレフィン(A−2)の230℃で測定したメルトフローレート(MFR)は、0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分の範囲にある。
一般にこれらポリオレフィン(A−2)の10Hzでの動的粘弾性測定の23℃におけるtanδ(損失正接)は0.15未満かつ、50℃におけるtanδ(損失正接)が0.08未満であり、ポリオレフィン(A−2)のみの使用では、高温下で輸送、保管や加工した場合に、被着体からの浮きや剥離が発生するおそれがある。
【0017】
基材層における応力緩和樹脂(A−1)の含有量として3〜100重量%、好ましくは3〜70重量%、より好ましくは3〜50重量%、さらに好ましくは3〜30重量%である(応力緩和樹脂(A−1)とポリオレフィン(A−2)との合計を100重量%とする)。
【0018】
本発明の表面保護フィルムの粘着層(X)としては、表面保護フィルムの粘着層として使用されている公知の粘着剤であれば使用することが可能であるが、フィッシュアイの発生による被着体損傷や、粘着剤の被着体への移行、いわゆる糊残りの観点から、α−オレフィン系エラストマー及び/またはスチレン系エラストマーであることが好ましい。
α−オレフィン系エラストマーとしては、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が50℃未満または融点が観測されない、炭素数3以上のα−オレフィンを主成分とする共重合体である。具体的には例えばプロピレン単独共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、1−ブテン単独重合体、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体、4−メチルペンテン−1単独重合体、4−メチルペンテン−1・プロピレン共重合体、4−メチルペンテン−1・1−ブテン共重合体、4−メチルペンテン−1・プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体であり、好ましくはプロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体である。
【0019】
α−オレフィン系エラストマーの230℃で測定したメルトフローレート(MFR)は、0.1〜100g/10分、より好ましくは0.5〜50g/10分の範囲にある。
スチレン系エラストマーとしては、ポリスチレン相をハードセグメントとして有する公知のスチレン系エラストマーが使用できる。具体的には、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SEBS)、及びこれらの水素化物、スチレン・イソブチレン・スチレントリブロック共重合体(SIBS)、スチレン・イソブチレンジブロック共重合体(SIB)を挙げることができる。好ましくはスチレン・イソブチレン・スチレントリブロック共重合体(SIBS)、スチレン・イソブチレンジブロック共重合体(SIB)、あるいはスチレン・イソブチレン・スチレントリブロック共重合体(SIBS)と、スチレン・イソブチレンジブロック共重合体(SIB)のブレンド物である。
【0020】
上記のα−オレフィン系エラストマー及び/またはスチレン系エラストマーを、単独または各々異なる組成の成分をブレンドして使用することで、本発明の表面保護フィルムにおける粘着層(X)を形成することができる。また、本発明においては、粘着強度の制御を目的として、さらには本発明の特性を損なわない範囲で、上記のα−オレフィン系エラストマー及び/またはスチレン系エラストマーに対し、プロピレン単独共重合体、ランダムポリプロピレンやブロックポリプロピレン等のプロピレン系共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリオレフィン、各種オレフィン系エラストマー、マレイン酸変性等の変性ポリオレフィン、スチレン系エラストマーやポリエステルエラストマー等の樹脂改質剤を添加しても良い。これらは、単独または各々異なる組成の成分をブレンドして使用してもよく、また必要に応じて、本発明の表面保護フィルムとしての特性を損なわない範囲で、石油樹脂、水添系石油樹脂、スチレン系樹脂、クロマン・インデン樹脂、ロジン誘導体、テルペン系樹脂等の粘着付与剤、ポリオレフィン系ワックスやオリゴマー、シリコーン系ワックスやオリゴマーあるいはビーズ、シリカやタルクに代表されるアンチブロッキング剤等の公知の離形性付与剤、帯電防止剤、導電剤、耐候剤、結晶核剤、酸化防止剤を添加してもよい。
【0021】
本発明においては、離形性、剛性、寸法安定性、取扱性などを考慮し、基材層(A)の、粘着層(X)とは反対側の面に、少なくとも1層の表面層を設けることも可能である。表面層としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の公知の樹脂を、共押出成形、コーティング、ラミネート等の公知の方法で積層し使用することが出来る。これらの中でも、取り扱い性に優れたポリオレフィンの使用が好ましく、ポリオレフィンは、具体的には、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと少なくとも1種の炭素数3以外のα−オレフィンからなる共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが使用することが出来るが、これらの中で、フィッシュアイ(架橋ゲル)の発生がない、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと少なくとも1種の炭素数3以外のα−オレフィンからなる共重合体等のポリプロピレンがより好ましく、離形性の観点から、プロピレン・オレフィンゴム・ブロック共重合体がさらに好ましい。
これらは、単独または各々異なる組成の成分をブレンドして使用してもよく、また必要に応じて、本発明の表面保護フィルムとしての特性を損なわない範囲で、ポリオレフィン系ワックスやオリゴマー、シリコーン系ワックスやオリゴマーあるいはビーズ、シリカやタルクに代表されるアンチブロッキング剤等の公知の離形性付与剤、帯電防止剤、導電剤、耐候剤、結晶核剤、酸化防止剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0022】
基材層(A)と粘着層(X)を積層する方法については特に制限は無いが、あらかじめT−ダイ成形またはインフレーション成形にて得られた基材層フィルム上に、押出ラミネーション、押出コーティング等の公知の積層法により積層する方法や、基材層および粘着層を独立してフィルムとした後、各々のフィルムをドライラミネーションにより積層する方法等が挙げられるが、生産性の点から、基材層、粘着層を多層の押出機に供して成形する共押出成形が好ましい。共押出成形の方式としては、厚み精度の面からT−ダイ成形がより好ましい。
【0023】
本発明の表面保護フィルムにおける基材層(A)の厚みとしては、2〜400μ、好ましくは2〜300μ、より好ましくは2〜250μm、さらに好ましくは3〜200μmである。粘着層(X)の厚みとしては、2〜100μ、好ましくは2〜80μ、より好ましくは2〜60μm、さらに好ましくは2〜40μmである。
本発明の表面保護フィルムの厚みとしては、4〜500μm、好ましくは4〜350μm、より好ましくは4〜300μmである。
【0024】
上記の好ましい形態の基材層と粘着層を使用することで、被着体に対し適度な粘着強度を示し、高温下で輸送、保管や加工、あるいは表面保護フィルムを貼付したまま、次工程における支持体等に使用した場合であっても、被着体からの浮きや剥離がなく、さらには被着体への汚染がなく、光学用途だけでなく、建材用途、自動車部品用途、半導体ウエハ加工用途等に対して好適に利用できる。
【0025】
以下に本発明を実施例により詳細説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例]
[評価法]
(tan δ値(損失正接)の測定):
対象樹脂を、TAインスツルメント社製回転式レオメータAR2000exを用いて、昇温速度4 ℃ / m i n 、周波数10 H z、ひずみ0.05%にて、−50℃〜150℃の温度変化を与え、8mmパラレルプレートを用い、剪断モードにて溶融粘弾性を測定した。
tanδピーク温度は、融点以下の温度における、tanδ値が最大値になる温度である。
【0026】
(アクリル板最大粘着強度):
アクリル板を幅50mm、長さ125mmに切断し、この試験板に2kgのゴムローラーを用いて、表面保護フィルムを貼り付けた。次いで、室温23℃、湿度50%RHの条件下にて、オリエンテック製テンシロン万能試験機RTC−1225Aを用いて、300mm/分の速度で剥離(180度剥離)した時の剥離力を測定し、50mm幅あたりの剥離力を最大粘着強度(N/50mm)とした。
スティッキングがある場合、スティッキングの最大値を最大粘着強度(N/50mm)とした。
【0027】
(被着体粘着強度(初期)):
被着体として、レンズ部がアクリル樹脂からなり、3角柱形状のレンズ部の寸法が高さ26μm 、幅50μm であるプリズムシートを用意した。プリズムシートを幅50mm、長さ125mmに切断し、この試験板に2kgのゴムローラーを用いて、表面保護フィルムを貼り付けた。次いで、室温23℃、湿度50%RHの条件下にて、オリエンテック製テンシロン万能試験機RTC−1225Aを用いて、300mm/分の速度で剥離(180度剥離)した時の剥離力を測定し、50mm幅あたりの剥離力を粘着強度(N/50mm)とした。
【0028】
(高温下浮き/剥離評価):
被着体として、上記のレンズ部がアクリル樹脂からなり、3角柱形状のレンズ部の寸法が高さ26μm 、幅50μm であるプリズムシートを用意した。プリズムシートを幅50mm、長さ125mmに切断し、この試験板に2kgのゴムローラーを用いて、表面保護フィルムを貼り付けた。次いで、50℃、75%RH条件下に3日間放置後、目視にて被着体からの表面保護フィルムの浮きや剥離の状態を確認した。
【0029】
(被着体粘着強度(保管後)):
被着体として、レンズ部がアクリル樹脂からなり、3 角柱形状のレンズ部の寸法が高さ23μm 、幅50μm であるプリズムシートを用意した。プリズムシートを幅50mm、長さ125mmに切断し、この試験板に2kgのゴムローラーを用いて、表面保護フィルムを貼り付けた。次いで、50℃、75%RH条件下に3日間放置し、その後、室温23℃、湿度50%RHの条件下に1時間放置し、オリエンテック製テンシロン万能試験機RTC−1225Aを用いて、300mm/分の速度で剥離(180度剥離)した時の剥離力を測定し、50mm幅あたりの剥離力を粘着強度(N/50mm)とした。
【0030】
(メルトフローレート(MFR)):
ASTM D1238に準拠して、荷重2.16kg、所定の温度で測定した。
【0031】
(融点):
JIS K 7121に準拠し、示差走査熱量計(DSC)を用い、毎分10℃の加熱速度で測定される融解ピーク頂点の温度を融点とした。融解ピークが複数ある場合は最も高い温度を融点とした。
【0032】
[使用原料]
(PP−1):ブロックポリプロピレン
(融点160℃、エチレン成分12wt%、ロックウェル硬さ80、
MFR(230℃)6g/10分)
(PP−2):ホモポリプロピレン
(融点160℃、MFR(230℃)7g/10分)
(a−1):プロピレン・4−メチルペンテン−1・1−ブテン共重合体
(融点134℃、MFR(230℃)10g/10分、
tanδピーク温度34℃、tanδピーク値2.3、
23℃におけるtanδ値0.29、50℃におけるtanδ値0.91)
(a−2):シンジオタクチック−プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体
(融点155℃、融解熱量13J/g、MFR(230℃)10g/10分、
tanδピーク温度34℃、tanδピーク値2.3、
23℃におけるtanδ値0.21、50℃におけるtanδ値0.09)
(a−3):スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体とスチレン
−イソブチレン−スチレンジブロック共重合体との混合物
(MFR(230℃)30g/10分、
A硬度(ASTM D2240)14、
tanδピーク温度−27℃、tanδピーク値1.35、
23℃におけるtanδ値0.42、50℃におけるtanδ値0.39)
(a−4):プロピレン・エチレン共重合体(メタロセン触媒で製造)
(融点115℃、MFR(230℃)7g/10分、
tanδピーク温度−2℃、tanδピーク値0.18、
23℃におけるtanδ値0.09、50℃におけるtanδ値0.07)
(a−5):プロピレン・エチレン共重合体
(商品名:ビスタマックス、銘柄名:6202、エクソンモービルケミカル
社製、MFR(230℃)18g/10分、
tanδピーク温度−20℃、tanδピーク値2.05、
23℃におけるtanδ値0.10、50℃におけるtanδ値0.15)
(X−1):(a−3)と同原料
(X−2): スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合体
(商品名:FTR、銘柄名:FTR6125、Mw=1950、
軟化点 125℃、三井化学社製)
【0033】
(実施例1)
表面層、基材層及び粘着層用に40mmφの単軸押出機を兼ね備えた、ダイ幅400mmの3種3層T−ダイ成形機に上記樹脂を、表1記載の樹脂組成および各種層厚み比にて、トータル厚み35μmの表面保護フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0034】
(実施例2〜5)および(比較例1〜3)
各種層の樹脂組成および層厚み比を、表1記載の樹脂組成および層厚み比とし、実施例1と同様にして、トータル厚み35μmの表面保護フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。表1に示すように実施例1から5の表面保護フィルムは、高温下浮きや剥離が発生せずに、かつ適正な各粘着強度が得られた。
【0035】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0036】
被着体に対し適度な粘着強度を示し、高温下で輸送、保管や加工した場合であっても、被着体からの浮きや剥離がないので、光学製品、建材、自動車部品、半導体ウエハ等に使用される。
以下、参考形態の例を付記する。
<1>基材層(A)及び粘着層(X)の少なくとも2層からなる表面保護フィルムであり、基材層(A)が、10Hzでの動的粘弾性測定の23℃におけるtanδ値(損失正接)が0.15以上かつ、50℃におけるtanδ値(損失正接)が0.08以上である応力緩和樹脂(A−1)3〜100重量%と、ポリオレフィン(A−2)0〜97重量%とからなることを特徴とする表面保護フィルム。
<2>前記応力緩和樹脂(A−1)が、炭素数3以上のα−オレフィンを主成分とするオレフィン系重合体及び/またはスチレン系重合体からなる<1>に記載の表面保護フィルム。
<3>炭素数3以上のα−オレフィンを主成分とする前記オレフィン系重合体が、10Hzでの動的粘弾性測定におけるtanδ値(損失正接)のピーク温度が5℃以上の、プロピレンと炭素数4〜20から選ばれる少なくとも一種のオレフィンとの共重合体である<2>に記載の表面保護フィルム。
<4>前記スチレン系重合体が、10Hzでの動的粘弾性測定におけるtanδ値(損失正接)のピーク値が1.0以上の、スチレンとオレフィンとの共重合体である<2>に記載の表面保護フィルム。
<5>基材層(A)のポリオレフィン(A−2)が、ポリプロピレンである<1>乃至<4>のいずれかに記載の表面保護フィルム。