特許第6359244号(P6359244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359244
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20180709BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20180709BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20180709BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   H01F37/00 S
   H01F37/00 M
   H01F37/00 G
   H01F37/00 A
   H01F41/12 C
   H01F27/24 K
   H01F27/255
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-107847(P2013-107847)
(22)【出願日】2013年5月22日
(65)【公開番号】特開2014-229731(P2014-229731A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年4月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】阿部 有希
(72)【発明者】
【氏名】山家 孝志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩文
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−260073(JP,A)
【文献】 特開平04−049608(JP,A)
【文献】 特開2004−273657(JP,A)
【文献】 特開2011−199265(JP,A)
【文献】 特開2011−228483(JP,A)
【文献】 特開2007−335833(JP,A)
【文献】 特開2002−164233(JP,A)
【文献】 特開2007−200962(JP,A)
【文献】 特開2011−198970(JP,A)
【文献】 特開2010−212632(JP,A)
【文献】 特開2004−259794(JP,A)
【文献】 特開2004−319618(JP,A)
【文献】 特開2004−193398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 27/24
H01F 27/255
H01F 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き中心の軌跡が円もしくは楕円となるトロイダル状に巻き回された1組のコイルと、
軟磁性粒子と結合材を主に含有する複合磁性体と、
有底円環状の溝である収容部を有する導電性のケースを備え、
前記コイルは、前記収容部の底部から上部まで配された前記複合磁性体に埋設され、
前記コイルにおける前記軌跡の中心軸に対面する内周面が前記収容部内面と近接していることを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記軟磁性粒子は鉄系の軟磁性金属粉であり、
前記複合磁性体の比透磁率は、15以上、60以下であることを特徴とする請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記コイルの前記内周面から前記端面までの範囲が前記収容部内面と近接することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記コイルの前記内周面から前記端面を介し、前記中心軸から最も離れた外周面までの範囲が前記収容部内面と近接することを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタンスを利用したリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
Fe−Si系の軟磁性粉とエポキシ樹脂等を混合した複合材料を、内部にコイルを支持したケースの中に注ぎ込み、硬化させることで作成する大電流向けリアクトルの検討がなされている。
【0003】
特許文献1では、型がヒートシンクとなっており、放熱性を向上させる提案がなされおり、スパイラル巻きコイルが開示されている。
【0004】
特許文献2(特に段落0089)には、コイルの外周面とケースの距離を短くすることで放熱性に優れる提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−235054号公報
【特許文献2】特開2012−238836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の技術では、スパイラル巻きコイル端部の金属製ヒートシンクが磁束経路の障害となり、十分なインダクタンスが得られず、さらに、コイルからの放熱も磁性体によって阻害されるという課題がある。
【0007】
特許文献2記載の技術では、コイル外周面からケースへの放熱は起こるものの、エッジワイズされた平角線コイルであるために、コイルへの熱の蓄積が懸念されるという課題がある。
【0008】
従って本発明は、インダクタンスを維持しつつも、放熱性を高めたリアクトルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を本発明は、巻き中心の軌跡が円もしくは楕円となるトロイダル状に巻き回されたコイルと、軟磁性粒子と結合材を主に含有する複合磁性体と、収容部を有する導電性のケースを備え、前記コイルは、前記収容部の底部に配された前記複合磁性体に埋設され、前記コイルにおける前記軌跡の中心軸に沿った端部の表面となる端面が前記収容部内面と近接しているリアクトルによって解決する。
【0010】
ここで「近接」とは、コイルからケースへの熱伝導により、コイルの発熱温度に有意の改善が起こるほど近接することを意味する。
【0011】
また、前記収容部は有底円環状の溝であり、前記コイルにおける前記中心軸に対面する内周面が前記収容部内面と近接していることが望ましい。
【0012】
また、前記軟磁性粒子は鉄系の軟磁性金属粉であり、前記複合磁性体の比透磁率は、15以上、60以下であることが望ましい。
【0013】
また、前記コイルの前記内周面から前記端面までの範囲が前記収容部内面と近接することが望ましい。
【0014】
また、前記コイルの前記内周面から前記端面を介し、前記中心軸から最も離れた外周面までの範囲が前記収容部内面と近接することが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、インダクタンスを維持しつつも、放熱性を高めたリアクトルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明における実施形態4のリアクトルの断面図である。
図2】本発明における実施形態1のリアクトルの断面図である。図2は、図6(a)におけるAA面に対応し、複合磁性体を注型、硬化した後の状態を示している。
図3】本発明における実施形態1のリアクトルの断面図である。図3は、図2におけるBB面に対応している。
図4】本発明における実施形態2のリアクトルの断面図である。
図5】本発明における実施形態3のリアクトルの断面図である。
図6】本発明における実施形態1のリアクトルの作成途中の構成を示す図である。図6(a)は、未硬化の複合磁性体を注型する前の状態であり、図6(b)は、ケースに入れる前のコイルを示している。
図7】本発明における実施形態4のリアクトルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
図6は、本発明における実施形態1のリアクトルの作成途中の構成を示す図である。図6(a)は、未硬化の複合磁性体を注型する前の状態であり、図6(b)は、ケースに入れる前のコイルを示している。
【0018】
本実施形態のリアクトルは、図6(a)に示すように、コイル1を、中芯部21、外周部22を有するケースに設けられたドーナツ状の溝である収容部に収容し、未硬化で液状の複合磁性体を収容部に注ぎ込み、硬化させて完成させる。
【0019】
ここで複合磁性体とは、軟磁性粒子と結合材を主に含有し、フィラー等の添加物があってもよい。
【0020】
軟磁性粒子としては、鉄系の金属軟磁性粒子、特にFe−Si系の軟磁性粒子が、放熱が必要となる大電流リアクトル用途に適しているため、望ましい。
【0021】
結合材としては、未硬化で液状であり、熱硬化が可能なエポキシ樹脂が例示される。
【0022】
ケースは、外部への磁束漏洩と、ケース内部へ磁束が入り込むことによる損失を抑えるため、熱伝導性が高いアルミ等の非磁性金属であることが望ましい。
【0023】
コイル1は、図6(b)に示すように、巻き中心の軌跡が円状となるトロイダル状に巻き回された空芯コイルであり、複合磁性体が注型されると、コイル1の内部及び外部が複合磁性体で充填される。
【0024】
図2は、本発明における実施形態1のリアクトルの断面図である。図2は、図6(a)におけるAA面に対応し、複合磁性体を注型、硬化した後の状態を示している。
【0025】
コイル1の内部には複合磁性体31が、コイル1の外部には複合磁性体32が充填されている。
【0026】
コイル1の断面は、便宜上巻き回し1周分が記載されているが、実際の断面に現れるのは巻き回し1周分のうちの一部となる。
【0027】
ケースは中芯部21、外周部22を有し、ケース全体として一体成形されている。
【0028】
ケースの収容部は、コイル1の内周面11から、端面12を介した、外周面13までの表面に沿った曲面となる底部を有しているため、コイル1の端面12側の巻き回し半周分がケースと近接する。
【0029】
これによりコイル1からケースへの放熱経路が確保され、高効率の放熱が可能となる。
【0030】
図3は、本発明における実施形態1のリアクトルの断面図である。図3は、図2におけるBB面に対応している。
【0031】
コイル1は巻き中心の軌跡が円もしくは楕円となるトロイダル状に巻き回されているため、コイルの巻き中心の軌跡に沿った内部磁束Bmの経路は、閉磁路となる。
【0032】
一方、コイル1の外周面は巻線間の隙間が広いため、漏れ磁束Boが生じ、コイル1の外部の複合磁性体3もインダクタンスに寄与することとなる。
【0033】
なお、コイル1の内周面は巻線間の隙間が狭く、漏れ磁束Biはほとんど発生しないため、ケースの中芯部21の内周面20との距離を詰めてもインダクタンスへの影響は少ない。
【0034】
従って、コイル1の外周面とケースとの距離よりもコイル1の内周面とケースの間の距離を狭くして、コイル1の内周面よりケースへの放熱が主になされるよう構成することが望ましい。
【0035】
すなわち本発明は、巻き中心の軌跡が円もしくは楕円となるトロイダル状に巻き回されたコイル1と、軟磁性粒子と結合材を主に含有する複合磁性体3と、収容部を有する導電性のケースを備え、コイル1は、収容部の底部に配された複合磁性体3に埋設され、コイル1の巻き中心軌跡の中心軸に沿った端部の表面となる端面12が収容部内面と近接しているリアクトルとする実施形態を取り得る。
【0036】
コイル端面に導電性ケースが近接したとしても、コイル内部にある閉磁路の磁路にはほとんど影響を与ないため、インダクタンスは維持され、コイルの隙間より漏れ出す磁束も、導電性ケース以外は周囲の複合磁性体によりインダクタンス向上に寄与する。
【0037】
従って、コイル端面からケースへの放熱性を向上させつつもインダクタンスを向上、もしくは維持することが可能となる。
【0038】
また、本発明は、収容部は有底円環状の溝であり、コイル1における上記中心軸に対面する内周面11が収容部内面と近接しているリアクトルの実施形態を取り得る。
【0039】
コイル内周面は導体線間の隙間が小さいため、放熱効率が高く、磁束のコイル内周側への漏出も少ない。
【0040】
従って、コイル内周面に、ケース中芯の表面でもある収容部内周面を近接させることで、インダクタンスを維持しつつ、さらに放熱性を高めることができる。
【0041】
また、本発明は、軟磁性粒子が鉄系の軟磁性金属粉であり、複合磁性体3の比透磁率は、15以上、60以下であるリアクトルの実施形態を取り得る。
【0042】
複合磁性体は、比透磁率が15以上、60以下、より望ましくは25以上、50以下であり、複合磁性体を構成する軟磁性粒子を鉄系の軟磁性金属粉とすることで、コイルへの大電流通電によってもインダクタンスを維持するリアクトルとなるため、放熱性を高める本発明の効果を、より好適に享受できる。
【0043】
また、本発明は、コイル1の内周面11から端面12までの範囲が収容部内面と近接するリアクトルの実施形態を取り得る。
【0044】
コイルにおける内周面と端面の間の表面もケースと近接させることで、インダクタンスを維持しつつ、さらに放熱性を高めることができる。
【0045】
また、本発明は、コイル1の内周面11から端面12を介し、上記中心軸から最も離れた外周面13までの範囲が前記収容部内面と近接するリアクトルの実施形態を取り得る。
【0046】
これにより、さらに放熱性を高めることができる。
【0047】
(実施形態2)
図4は、本発明における実施形態2のリアクトルの断面図である。
【0048】
実施形態1における図2とは、コイル1の端面12から外周面13にかけての表面がケースと近接していない点が相違している。
【0049】
実施形態1と比較すると、放熱性は若干低下するものの、インダクタンスが向上する利点がある。
【0050】
(実施形態3)
図5は、本発明における実施形態3のリアクトルの断面図である。
【0051】
実施形態2における図4とは、コイル1の内周面11と端面12の間の表面がケースと近接していない点が相違している。
【0052】
実施形態2と比較すると、放熱性はさらに低下するものの、インダクタンスがより向上する利点がある。
【0053】
(実施形態4)
図1は、本発明における実施形態4のリアクトルの断面図である。
【0054】
実施形態3における図5とは、中芯部を設けておらず、コイル1の端面12以外の表面がケースと近接していない点が相違している。
【0055】
実施形態3と比較すると、放熱性はさらに低下するものの、インダクタンスがより向上する利点がある。
【0056】
また、中芯部が不要であるため、コイル1をさらに小型化可能とする利点がある。
【0057】
(実施形態5)
図7は、本発明における実施形態4のリアクトルの断面図である。
【0058】
実施形態4における図1とは、コイル1の外周面13の表面がケースと近接している点が相違している。
【0059】
実施形態4と比較すると、インダクタンスが低下するものの、放熱性がより向上する利点がある。
【符号の説明】
【0060】
1 コイル
3、31、32 複合磁性体
11 内周面
12 端面
13 外周面
20 内周面
21 中芯部
22 外周部
Bi、Bm、Bo 磁束
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7