特許第6359245号(P6359245)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359245
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】X線コンピュータ断層撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20180709BHJP
【FI】
   A61B6/03 330Z
   A61B6/03 323E
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-120714(P2013-120714)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-236847(P2014-236847A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】小松 英史
【審査官】 山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−006027(JP,A)
【文献】 特開2006−110110(JP,A)
【文献】 特開2009−268799(JP,A)
【文献】 特開平06−054838(JP,A)
【文献】 特開平07−231887(JP,A)
【文献】 特開2003−024324(JP,A)
【文献】 特開2003−199738(JP,A)
【文献】 特開2011−030585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の撮影対象部位に対してX線によるスキャンを実行し、前記スキャンの実行により収集された投影データに基づいて画像データを再構成するX線コンピュータ断層撮影装置において、
前記被検体を載置するための天板を含む寝台装置と、
前記天板を移動させる複数の第1の指令速度を含む複数の第1の動作条件を取得する第1の動作条件取得手段と、
前記第1の指令速度各々について前記天板を移動させる第1の制御手段と、
前記第1の制御手段によって移動されている前記天板の速度を、前記第1の指令速度各々について取得する速度取得手段と、
前記第1の指令速度と前記天板の速度との速度誤差に基づくフィードバック値、前記第1の指令速度各々について算出する算出手段と、
前記天板を移動させる第2の指令速度を含む第2の動作条件を取得する第2の動作条件取得手段と、
記第2の指令速度と前記算出手段により算出された前記複数の第1の指令速度に関する複数のフィードバック値とに基づいて補正後の第2の指令速度を算出し、前記補正後の第2の指令速度に基づいて前記天板を移動させる第2の制御手段と
を具備するX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
検出手段を更に具備し、
前記第1の動作条件は、前記天板の移動を停止させる第1の目標停止位置を更に含み、
前記第1の制御手段は、前記第1の指令速度に基づいて移動されている前記天板を、前記第1の目標停止位置に基づいて停止させ、
前記検出手段は、前記第1の制御手段によって停止された前記天板の実停止位置を検出し、
前記算出手段は、前記第1の目標停止位置と前記実停止位置との停止位置誤差を更に算出し、
前記第2の動作条件は、前記天板に移動を停止させる第2の目標停止位置を更に含み、
前記第2の制御手段は、前記第2の指令速度に基づいて移動されている前記天板を、前記第2の動作条件に含まれる第2の目標停止位置記停止位置誤差に基づいて停止させる、
求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記第1の制御手段によって移動されている前記天板の位置を予め定められた間隔で検出し、
前記速度取得手段は、前記予め定められた間隔で検出された前記天板の位置に基づいて前記天板の速度を算出することによって前記天板の速度を取得する請求項2記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
記速度誤差または前記停止位置誤差が予め定められている値を超える場合、操作者に警告を通知する通知手段を更に具備する請求項2記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記第1の動作条件取得手段、前記第1の制御手段、前記速度取得手段及び前記算出手段の処理は、前記スキャンが実行される前に行われるウォームアップ期間中に実行される請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記第2の制御手段は、前記第2の指令速度が前記複数の第1の指令速度に含まれない場合、前記複数のフィードバック値に基づいて前記第2の指令速度に対応するフィードバック値を補間により求め、前記求められたフィードバック値と前記第2の指令速度とに基づいて前記補正後の第2の指令速度を算出する、請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、X線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT装置と表記)には、被検体が載置される天板を含む寝台装置が備えられている。このようなX線CT装置おいて、例えばスキャノやヘリカルスキャン等のスキャンを行う場合には、天板を操作者によって指定(指示)された速度で水平動させる。
【0003】
しかしながら、X線CT装置においては、経年劣化等の種々の要因により天板の水平動の精度が低下する場合がある。
【0004】
このような天板の水平動の精度の低下は、X線CT装置において得られる画像の画質劣化の原因となる。ここで、例えば同一領域の撮影を複数回行い、その画像を時系列に沿って重ね合わせて画像差分を行うことにより、急性期脳梗塞の血流導体診断などに利用できる頭部CTパフュージョン(perfusion)が知られている。この頭部CTパフュージョンにおいて、天板の水平動の精度が低く、撮影領域がずれてしまうと、画像差分の結果においてCT値の差分がエッジとして表れてしまい、画質が劣化する。
【0005】
また、近年のX線CT装置には、このように水平動する天板の速度と操作者によって指定された速度との誤差(天板速度誤差)が規定値を超えた場合にスキャンを異常終了するような仕組みが組み込まれている。
【0006】
また、操作者によって指定された撮影範囲を確保するため、タイミング制約のあるスキャンシーケンス中の天板の停止位置をチェックし、当該スキャンシーケンス中に当該停止位置の誤差が規定値を越えた場合にもスキャンを異常終了している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した天板の水移動の精度の低下は、画質劣化やスキャンの異常終了の原因となるため、被検体をスキャンする前(つまり、スキャンシーケンスの前)に事前に検知しておく必要がある。
【0008】
また、上記したように天板の水平動の精度の低下は経年劣化等によって発生する可能性があるため、当該精度の低下によって生じる影響を軽減するような仕組みが望まれている。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、寝台装置に含まれる天板の水平動の精度の低下によって生じる影響を軽減することが可能なX線コンピュータ断層撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、被検体の撮影対象部位に対してX線によるスキャンを実行し、前記スキャンの実行により収集された投影データに基づいて画像データを再構成するX線コンピュータ断層撮影装置が提供される。
【0011】
実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、被検体の撮影対象部位に対してX線によるスキャンを実行し、前記スキャンの実行により収集された投影データに基づいて画像データを再構成するX線コンピュータ断層撮影装置において、前記被検体を載置するための天板を含む寝台装置と、前記天板を移動させる複数の第1の指令速度を含む複数の第1の動作条件を取得する第1の動作条件取得手段と、前記第1の指令速度各々について前記天板を移動させる第1の制御手段と、前記第1の制御手段によって移動されている前記天板の実速度を、前記第1の指令速度各々について取得する速度取得手段と、前記第1の指令速度と前記天板の実速度との速度誤差に基づくフィードバック値を、前記第1の指令速度各々について算出する算出手段と、前記天板を移動させる第2の指令速度を含む第2の動作条件を取得する第2の動作条件取得手段と、前記第2の指令速度と前記算出手段により算出された前記複数の第1の指令速度に関する複数のフィードバック値とに基づいて補正後の第2の指令速度を算出し、前記補正後の第2の指令速度に基づいて前記天板を移動させる第2の制御手段と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係るX線CT装置の構成を示す図。
図2】本実施形態に係るX線CT装置において実行されるフィードバック値算出処理の処理手順を示すフローチャート。
図3】本実施形態に係るX線CT装置におけるスキャンシーケンス時の処理手順を示すフローチャート。
図4】指令速度フィードバック値を補間によって求める場合について説明するための図。
図5】指令速度フィードバック値を補間によって求める場合について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
【0021】
まず、図1を参照して、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT装置と表記)の構成について説明する。本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT装置と表記)は、例えばヘリカルスキャン等のために被検体を移動させながら当該被検体の撮影対象部位に対してX線によるスキャンを実行し、当該スキャンの実行により収集された投影データに基づいて画像データを再構成する機能を有する。
【0022】
図1に示すように、X線CT装置は、架台10とコンソール20とを備える。架台10は、X線発生装置11、回転フレーム12、天板位置検出部13、架台寝台制御部(架台寝台制御コントローラ)14、X線検出器15、データ収集部15及び伝送部17を含む。
【0023】
X線発生装置11は、被検体Pに放射されるX線を発生する。X線発生装置11は、X線管111、高電圧発生部112及びX線制御部113を備える。
【0024】
X線管111は、例えば陰極及び陽極を有し、当該X線管111の陰極−陽極間には管電圧が印加され、またX線管111の陰極のフィラメントにはフィラメント電流が供給される。このような管電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、X線管111の陽極からX線が発生する。具体的には、フィラメント電流の供給を受けた陰極のフィラメントは加熱され、熱電子を発生する。発生された熱電子は、陰極のフィラメントと陽極との間に印加された管電圧によって、陽極のターゲットに衝突する。このように熱電子が陽極のターゲットに衝突することによりX線が発生される。なお、X線管111では、陽極のターゲットに衝突する熱電子によって管電流が流れる。管電流はフィラメント電流により調整される。X線CT装置によるスキャン(撮影)時におけるX線線量の調節は、管電流とX線継続時間との積である管電流時間積を調節することによって行われる。
【0025】
高電圧発生部112は、X線管111からX線を発生させるために、当該X線管111に印加される管電圧を発生する。
【0026】
X線制御部113は、高電圧発生部112を制御することによって、X線管111からのX線の発生を制御する。
【0027】
回転フレーム12は、被検体Pを中心にして、高速かつ連続的に回転する円環または円板状のフレームである。この回転フレーム12は、X線管111とX線検出器15とを回転フレーム12の中心軸(回転軸)周りに回転可能に支持している。回転フレーム12の開口の内部には、FOV(field of view)が設定される。
【0028】
なお、回転フレーム12には、図示しない回転フレーム駆動部が接続されている。回転フレーム駆動部は、回転フレーム12を一定の角速度で回転させることによって、X線管111とX線検出器15とを回転軸周りに回転させる。回転フレーム駆動部は、図1に示すZ軸を回転軸として回転フレームを回転させる。
【0029】
また、回転フレーム12の近傍には、寝台装置が設置されている。この寝台装置は、天板駆動部121及び天板122を含む。天板駆動部121は、天板122をZ軸に沿って移動可能に支持する。天板駆動部121は、天板122の長軸がZ軸に平行するように天板122を支持する。天板122には被検体Pが載置される。天板駆動部121は、図示しないモータから発生される動力により、天板122をZ軸方向に沿って移動する。
【0030】
天板位置検出部13は、天板駆動部121による天板122の移動に応じた当該天板122の位置を予め定められた間隔で検出する。なお、天板位置検出部13としては、例えばエンコーダが用いられる。
【0031】
架台寝台制御部14は、X線CT装置によるスキャンを実行するために、各種スキャン条件に従ってX線制御部113、回転フレーム駆動部、天板駆動部121及びデータ収集部16等を制御する。なお、スキャン条件には、例えばスキャンの種類を区別するスキャンモード、管電圧、管電流、撮影範囲、X線管111が1回転するのに要する時間を表すスキャン速度及び天板122の動作条件等が含まれる。スキャンモードには、例えばスキャノ撮影及びヘリカルスキャン等が含まれる。天板122の動作条件には、例えば当該天板122を移動させる速度及び当該天板122を停止させる位置(停止位置)等が含まれる。
【0032】
また、架台寝台制御部14は、上記したスキャンが実行される前に、天板122の動作条件を取得する。ここで架台寝台制御部14によって取得される天板122の動作条件には、上記したスキャン条件に含まれる天板122の動作条件と同様に、天板122を移動させる速度及び当該天板122を停止させる位置等が含まれている。以下の説明では、スキャンが実行される前に取得された天板122の動作条件を単に動作条件と称する。
【0033】
架台寝台制御部14は、動作条件(に含まれる天板122を移動させる速度)に基づいて天板駆動部121を制御することによって、当該天板122を移動(水平動)させる。
【0034】
架台寝台制御部14は、動作条件に基づいて天板122が移動されている間、天板位置検出部13によって予め定められた間隔で検出された天板122の位置に基づいて当該天板122の速度を取得する。
【0035】
架台寝台制御部14は、動作条件に含まれる速度と取得された天板122の速度との誤差(以下、速度誤差と表記)を算出する。
【0036】
また、架台寝台制御部14は、動作条件(に含まれる天板122を停止させる位置)に基づいて天板駆動部121を制御することによって、天板122を停止させる。
【0037】
架台寝台制御部14は、動作条件に含まれる位置と天板位置検出部13によって検出された天板122の位置(架台寝台制御部14によって停止された際の天板122の位置)との誤差(以下、停止位置誤差と表記)を算出する。
【0038】
架台寝台制御部14は、算出された速度誤差及び停止位置誤差を、当該架台寝台制御部14の内部(架台寝台制御部14内の不揮発性メモリ)に格納する。
【0039】
また、架台寝台制御部14は、上記したスキャンが実行される場合、スキャン条件に含まれる天板122の動作条件と架台寝台制御部14の内部に格納された速度誤差及び停止位置誤差とに基づいて天板122を移動させるように天板駆動部121を制御する。具体的には、架台寝台制御部14は、スキャン条件に含まれる天板122の動作条件(に含まれる天板122を移動させる速度)及び速度誤差に基づいて天板122を移動させ、当該スキャン条件に含まれる天板122の動作条件(に含まれる天板122を停止させる位置)及び停止位置誤差に基づいて天板122を停止させる。
【0040】
X線検出器15は、X線管111から発生されたX線(被検体Pを透過したX線)を検出する。X線検出器15は、2次元状に配列された複数の検出素子を搭載する。例えば、複数の検出素子は、回転フレーム12の回転軸Zを中心とした円弧に沿って配列される。この円弧に沿う検出素子の配列方向はチャンネル方向と呼ばれる。複数の検出素子列は、回転軸Zに沿う列方向に沿って配列される。各検出素子は、X線管111から発生されたX線を検出し、当該検出されたX線の強度に応じた電気信号を生成する。この生成された電気信号は、データ収集部(DAS:Data Acquisition System)16に供給される。
【0041】
データ収集部16は、X線検出器15を介して電気信号をビュー(view)毎に収集する。ビューは、回転軸Z周りの回転フレーム12の回転角度に対応する。また、信号処理的には、ビューは、回転フレーム12の回転時におけるデータのサンプリング点に対応する。データ収集部16は、収集されたアナログの電気信号をデジタルデータに変換する。なお、このデジタルデータは、生データと呼ばれる。生データは、非接触型の伝送部17により、所定ビュー毎にコンソール20に供給される。
【0042】
コンソール20は、前処理部21、再構成部22、表示部23、操作部24、記憶部25及びシステム制御部26を含む。
【0043】
前処理部21は、伝送部17を介してデータ収集部16から供給された生データに対して、例えば対数変換や感度補正等の前処理を実行する。前処理が実行されたデータは、投影データと呼ばれる。
【0044】
再構成部22は、前処理部21によって前処理が実行されたデータ(投影データ)に基づいて被検体Pに関する画像データを再構成する。
【0045】
表示部23は、再構成部22によって再構成された画像データを例えば表示機器に表示する。表示機器としては、例えばCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイ等が適宜利用可能である。
【0046】
操作部24は、入力機器を介して操作者からの各種指令や情報入力を受け付ける。具体的には、操作者は、入力機器を用いることにより上記したスキャンが実行される際にスキャン条件を入力したり、当該スキャンが実行される前に天板122の動作条件等を入力することができる。入力機器としては、例えばキーボード、マウス及びスイッチ等が利用可能である。
【0047】
記憶部25は、上記した生データ、投影データ及び画像データ等を記憶する。また、記憶部25には、本実施形態に係るX線CT装置の制御プログラムが記憶されている。
【0048】
システム制御部26は、X線CT装置の中枢として機能する。具体的には、システム制御部26は、記憶部25に記憶されている制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従ってX線CT装置内の各部を制御する。
【0049】
以下、本実施形態に係るX線CT装置の動作について説明する。本実施形態に係るX線CT装置においては、X線CT装置によるスキャンを実行する際(つまり、スキャンシーケンス時)に寝台装置の動作(天板122の水平動の速度及び停止位置)をフィードバック制御するためのフィードバック値(補正パラメータ)を算出する処理(以下、フィードバック値算出処理と表記)が実行される。
【0050】
ここで、図2のフローチャートを参照して、本実施形態に係るX線CT装置において実行されるフィードバック値算出処理の処理手順について説明する。なお、フィードバック値算出処理は、例えばシステム制御部26による制御の下で架台寝台制御部14によって実行される。
【0051】
また、フィードバック値算出処理は、例えばX線CT装置の起動後であってスキャンが実行される前に行われるX線CT装置のウォームアップ期間(ウォームアップシーケンス)中に実行される。なお、このウォームアップシーケンスでは、例えば回転フレーム12やX線CT装置の光学系の動作チェックが行われる。X線CT装置の光学系には、例えばX線管111から発生したX線の軟線カットや当該X線の強度分布を調整するウェッジフィルタ及びスキャン時のスライス厚に合わせて開閉動作するスリット等が含まれる。
【0052】
上記したようなウォームアップシーケンスが開始されると、架台寝台制御部14は、寝台装置(に含まれる天板122)の動作条件(第1の動作条件)を取得する(ステップS1)。この動作条件は、例えばコンソール20上のGUI(Graphical User Interface)等において操作者によって指定された天板122を移動させる速度(第1の速度)及び当該天板122を停止させる位置(第1の位置)を含む。ここで架台寝台制御部14によって取得された動作条件に含まれる速度を指令速度と称し、当該動作条件に含まれる位置を目標停止位置と称する。
【0053】
このように動作条件が取得された場合、架台寝台制御部14は、指令速度に基づいて天板駆動部121を制御することによって、天板122を移動(水平動)させる。
【0054】
架台寝台制御部14は、天板122が移動している間、天板位置検出部13によって定期的に検出された天板122の位置(を示す位置情報)を取得する(ステップS2)。
【0055】
架台寝台制御部14は、取得された天板122の位置に基づいて、当該天板122の速度を算出する(ステップS3)。具体的には、天板122の速度は、天板位置検出部13によって定期的に検出された天板122の位置の差分(つまり、天板122の移動距離)を当該位置の検出間隔(つまり、サンプリング時間)で除算することによって算出される。なお、天板122の速度は、当該天板122の位置が天板位置検出部13によって検出される(つまり、天板122の位置が架台寝台制御部14によって取得される)度に算出される。これにより、架台寝台制御部14は、天板122の速度(を示す速度情報)を取得する。
【0056】
なお、天板122の速度は例えば他のセンサ等を用いて取得されるような構成であっても構わない。
【0057】
架台寝台制御部14は、取得された天板122の速度と上記した指令速度との差分をとることによって当該速度の誤差(速度誤差)を算出する。この場合、架台寝台制御部14は、取得された天板122の速度から指令速度を減算することによって速度誤差を算出する。なお、速度誤差は、天板122の速度が取得される度に算出される。
【0058】
次に、架台寝台制御部14は、算出された速度誤差(の時系列データ)の平均値(以下、平均速度誤差と表記)を算出する(ステップS4)。この場合、架台寝台制御部14は、算出された平均速度誤差の正負反転値を指令速度フィードバック値として例えば当該架台寝台制御部14内の不揮発性メモリ(以下、ワーキングメモリと表記)に格納する。具体的には、平均速度誤差が「−3mm/s」である場合には、「3mm/s」が指令速度フィードバック値としてワーキングメモリに格納される。
【0059】
なお、ここでは平均速度誤差の正負反転値を指令速度フィードバック値とするものとして説明したが、平均速度誤差に所定のゲインを掛けた値(の正負反転値)をフィードバック値とするような構成とすることも可能である。
【0060】
また、架台寝台制御部14は、算出された速度誤差の最小値及び最大値を取得する(ステップS5)。なお、架台寝台制御部14によって取得された速度誤差の最小値及び最大値は、上記した指令速度フィードバック値とともにワーキングメモリに格納される。
【0061】
なお、上記したステップS2〜S5の処理は、天板122が移動している間は継続的に実行される。つまり、天板122の移動に応じた当該天板122の位置が天板位置検出部13によって検出される度に速度誤差が算出され、当該算出された速度誤差及びワーキングメモリに格納されている指令速度フィードバック値(平均速度誤差)を用いて当該指令速度フィードバック値がワーキングメモリ上で更新される(上書きされる)。また、速度誤差の最小値及び最大値についても同様に、天板122の位置が検出される度に算出された速度誤差がワーキングメモリに格納されている最小値または最大値を更新する場合に、当該速度誤差が最小値または最大値としてワーキングメモリに格納される(上書きされる)。
【0062】
ここで、架台寝台制御部14は、上記した目標停止位置に基づいて天板駆動部121を制御することによって、天板122(の水平動)を停止させる。この場合、架台寝台制御部14は、天板位置検出部13によって検出された天板122の停止位置(を示す位置情報)を取得する(ステップS6)。
【0063】
次に、架台寝台制御部14は、取得された停止位置と上記した目標停止位置との誤差(停止位置誤差)を算出する(ステップS7)。この場合、架台寝台制御部14は、取得された停止位置(つまり、実際の移動距離)から目標停止位置(つまり、指示された移動距離)を減算することによって停止位置誤差を算出する。
【0064】
架台寝台制御部14によって算出された停止位置誤差の正負反転値は、目標停止位置フィードバック値として例えば上記したワーキングメモリに格納される。
【0065】
ここで、架台寝台制御部14は、警告が必要であるか否かを判定する(ステップS8)。この場合、架台寝台制御部14は、ワーキングメモリに格納された速度誤差の最小値及び最大値の絶対値のいずれかが予め定められている値(速度の規定精度)を超える場合、または当該ワーキングメモリに格納された目標停止位置フィードバック値(つまり、停止位置誤差)の絶対値が予め定められている値(停止位置の規定精度)を超える場合、警告が必要であると判定する。
【0066】
警告が必要でないと判定された場合(ステップS8のNO)、架台寝台制御部14は、例えばコンソール20に含まれる表示部23を介して、指令速度フィードバック値及び目標停止位置フィードバック値の算出(及び格納)が完了した旨を操作者に通知する(ステップS9)。
【0067】
一方、警告が必要であると判定された場合(ステップS8のYES)、架台寝台制御部14は、例えばコンソール20に含まれる表示部23を介して、操作者に対して警告(ワーニング)を通知する(ステップS10)。
【0068】
本実施形態においては、上記したようなフィードバック値算出処理が実行されることによってフィードバック値を算出しておくことにより、スキャンシーケンス時に天板122の速度及び停止位置をフィードバック制御することが可能となる。
【0069】
なお、ここでは天板122の1度の動作でフィードバック値を算出するものとして説明したが、上記したウォームアップ期間中に例えば天板122を複数回動作させることによって複数のフィードバック値を算出し、これらの平均値をフィードバック値とする方が好ましい。
【0070】
次に、図3のフローチャートを参照して、本実施形態に係るX線CT装置におけるスキャンシーケンス時の処理手順について説明する。
【0071】
まず、架台寝台制御部14は、スキャン条件を取得する(ステップS11)。このスキャン条件には、天板122の動作条件(第2の動作条件)が含まれている。この天板122の動作条件には、例えばコンソール20において操作者によって指定された天板122を移動させる速度(第2の速度)及び当該天板122を停止させる位置(第2の位置)が含まれる。以下、架台寝台制御部14によって取得されたスキャン条件に含まれる天板122の動作条件に含まれる速度をスキャン条件の指令速度と称し、当該天板122の動作条件に含まれる位置をスキャン条件の目標停止位置と称する。
【0072】
次に、架台寝台制御部14は、ワーキングメモリに格納されている指令速度フィードバック値及び目標停止位置フィードバック値を取得する(ステップS12)。
【0073】
架台寝台制御部14は、取得された指令速度フィードバック値をスキャン条件の指令速度に加算することによって当該スキャン条件の指令速度を補正する(ステップS13)。例えば指令速度フィードバック値が上記した「3mm/s」であり、スキャン条件の指令速度が「100mm/s」である場合には、当該スキャン条件の指令速度は「103mm/s」に補正される。
【0074】
また、架台寝台制御部14は、取得された目標停止位置フィードバック値をスキャン条件の目標停止位置に加算することによって当該スキャン条件の目標停止位置を補正する(ステップS14)。
【0075】
この場合、上記したスキャン条件と、ステップS13において補正されたスキャン条件の指令速度及びステップS14において補正されたスキャン条件の目標停止位置とに基づいてスキャンシーケンスが開始される(ステップS15)。
【0076】
つまり、本実施形態に係るX線CT装置におけるスキャンシーケンス時においては、スキャン条件の指令速度及び指令速度フィードバック値(つまり、補正されたスキャン条件の指令速度)に基づいて天板122が移動され、スキャン条件の目標停止位置及び目標停止位置フィードバック値(つまり、補正されたスキャン条件の目標停止位置)に基づいて天板122が停止される。
【0077】
なお、スキャンシーケンスが開始されると、ヘリカルスキャン等の天板122の水平動を伴うX線によるスキャンが実行され、当該スキャンの実行により収集された投影データに基づいて画像データが再構成される。
【0078】
上記したように本実施形態においては、スキャンが実行される前に天板122を移動させる速度を含む動作条件(第1の動作条件)を取得し、当該速度に基づいて天板122を移動させ、当該天板の速度を取得し、当該動作条件に含まれる速度と取得された天板122の速度との速度誤差を算出し、スキャンが実行される際に天板122を移動させる速度を含むスキャン条件(第2の動作条件)を取得し、当該スキャン条件に含まれる速度及び算出された速度誤差に基づいて天板122を移動させる構成により、例えば経年劣化等による天板122の速度に関する動作精度のばらつきを相殺し、天板122の水平動の精度の低下によって生じる影響を軽減することが可能となる。
【0079】
また、本実施形態においては、動作条件に含まれる速度に基づいて移動されている天板122を当該動作条件に含まれる位置に基づいて停止させ、当該停止された天板122の位置を検出し、当該動作条件に含まれる位置と当該検出された天板122の位置との停止位置誤差を算出し、スキャン条件に含まれる速度に基づいて移動されている天板122を、当該スキャン条件に含まれる位置及び算出された停止位置誤差に基づいて停止させる構成により、例えば経年劣化等による天板122の停止位置に関する動作精度のばらつきを相殺し、天板122の水平動の精度の低下によって生じる影響を軽減することが可能となるため、例えばパフュージョン(Perfusion)やサブトラクションにおいて画質を向上させることができる。
【0080】
また、本実施形態においては、算出された速度誤差または停止位置誤差が予め定められている値を超える場合に操作者に警告を通知する構成により、スキャンを開始する前に事前に天板122の動作の精度悪化を認識することができるため、当該天板122の動作異常によるスキャン失敗のリスクを低減することが可能となる。
【0081】
なお、本実施形態においてはフィードバック値算出処理がX線CT装置のウォームアップ期間中に実行されるものとして説明したが、当該フィードバック値算出処理は当該ウォームアップ期間以外に実行されても構わない(つまり、ウォームアップシーケンスと同期しなくてもよい)。しかしながら、フィードバック値算出処理において必要な天板122の動作は安全面の観点から確実に架台10及び寝台装置が設置されている検査室が無人の状態で行うことが好ましいため、当該フィードバック値算出処理はウォームアップ期間中に行われることが好ましい。
【0082】
また、本実施形態においてはフィードバック値算出処理における動作条件がコンソール20上のGUI等から指定されるものとして説明したが、当該動作条件は予め架台寝台制御部14側で設定されていても構わない。また、コンソール20以外の他のサービス端末等から設定されるような構成であっても構わない。
【0083】
また、本実施形態においてはX線CT装置のウォームアップ期間中に指令速度フィードバック値及び目標停止位置フィードバック値をワーキングメモリに格納することによってフィードバック値算出処理が終了されるものとして説明したが、当該フィードバック値の妥当性を検証する処理が更に実行されても構わない。これによれば、スキャンが実行される前に、指令速度フィードバック値及び目標停止位置フィードバック値を用いて指令速度及び目標停止位置を補正した上で天板122を再度動作させることによって、平均速度誤差及び停止位置誤差が軽減されていることを確認することが可能となる。更に、例えば平均速度誤差及び停止位置誤差が上述した規定精度を超えていた場合であっても、フィードバック値を用いて指令速度及び目標停止位置を補正することによって平均速度誤差及び停止位置誤差が上述した規定精度を超えないことが確認できた場合には、操作者への警告を省略し、通常運用させても構わない。この場合、警告情報(平均速度誤差または停止位置誤差が規定精度を超えていた旨の情報)は架台寝台制御部14の内部でログ(Log)情報として保持しておくことが好ましい。これにより、操作者等は、警告情報を後で確認することができる。一方、例えば平均速度誤差及び停止位置誤差が規定精度を超えていた場合には、警告を通知するとともにエラー状態に遷移させ、天板122の水平動を伴うスキャンの実行を不能にするような構成とすることも可能である。
【0084】
また、本実施形態においては単に平均速度誤差の正負反転値を指令速度フィードバック値としてワーキングメモリに格納するものとして説明したが、速度誤差に関しては指令速度への依存性がある場合がある。換言すれば、速度誤差は一定ではなく、指令速度に応じて変化する可能性がある。この場合、例えば複数の動作条件(指令速度)に応じて指令速度フィードバック値を算出しておくような構成とすることができる。このような構成においては、指令速度フィードバック値が算出された指令速度以外の速度がスキャン条件において指定された場合に、当該指令速度フィードバック値を補間によって求めることができる。例えば図4及び図5に示すように、指令速度が「10mm/s」、「50mm/s」、「100mm/s」及び「150mm/s」である場合における指令速度フィードバック値を算出しておくことで、例えばスキャン条件の指令速度が「75mm/s」である場合の指令速度フィードバック値として「3mm/s」を求めることができる。なお、図4及び図5は一例であり、他の手法で補間されても構わない。
【0085】
また、本実施形態においてはスキャンが実行される際(つまり、スキャンシーケンス時)の天板122の動作をフィードバック制御するものとして説明したが、当該フィードバック制御は例えば通常のコンソール20からのリモート動作時等のスキャンシーケンス時以外に実行されても構わない。
【0086】
更に、本実施形態においてはフィードバック算出処理において指令速度フィードバック値及び目標停止位置フィードバック値が算出され、天板122の速度及び停止位置がフィードバック制御されるものとして説明したが、例えば指令速度フィードバック値及び目標停止位置フィードバック値のいずれか一方のみが算出され、天板122の速度及び停止位置の一方がフィードバック制御される構成であっても構わない。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
10…架台、11…X線発生装置、12…回転フレーム、13…天板位置検出部、14…架台寝台制御部、15…X線検出器、16…データ収集部、17…伝送部、20…コンソール、21…前処理部、22…再構成部、23…表示部、24…操作部、25…記憶部、26…システム制御部、111…X線管、112…高電圧発生部、113…X線制御部、121…天板駆動部、122…天板。
図1
図2
図3
図4
図5