(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359246
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】プラセオジム化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 49/92 20060101AFI20180709BHJP
C07F 5/00 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
C07C49/92CSP
C07F5/00 D
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2013-122371(P2013-122371)
(22)【出願日】2013年6月11日
(65)【公開番号】特開2014-240358(P2014-240358A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2016年4月28日
【審判番号】不服2017-15685(P2017-15685/J1)
【審判請求日】2017年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】斯波 晃司
(72)【発明者】
【氏名】貝瀬 博子
【合議体】
【審判長】
瀬良 聡機
【審判官】
瀬下 浩一
【審判官】
守安 智
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−1508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07F
C08F
CAPLUS/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)プラセオジム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なプラセオジム化合物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラセオジムトリイソプロポキシドを用いて、2,6−ジメチルヘプタンジオン(dibm)と配位子交換することで、Pr(OiPr)
n (dibm)
3 - nを合成している。しかし、報告されている化合物は、nが1又は2の化合物のみである。
【0003】
特許文献2にはトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)プラセオジムを重合触媒として用い、エチルアルミニウムセスキクロライド及びジブチルマグネシウムを助触媒とするブタジエンの重合例が開示されているが、触媒を多量に使用する必要がある。
【0004】
非特許文献1にはトリス(2,4−ヘキサンジオナト)プラセオジムの合成法が開示されているが、トリス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)プラセオジムについては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−126333号公報
【特許文献2】特開昭59−1508号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of Inorganic and Nuclear Chemistry (1966), 28(11), 2719.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規なプラセオジム化合物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、新規なプラセオジム化合物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、新規なプラセオジム化合物およびその製造方法を提供する。なお、上記プラセオジム化合物は、オレフィン重合触媒や化学蒸着用化合物として用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のガドリニウム化合物は、トリス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)プラセオジムである。
【0011】
上記のトリス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)プラセオジムは、プラセオジム化合物と2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオンとを溶媒中で反応させることで得られる。
【0012】
上記のプラセオジム化合物としては、プラセオジムアルコキシドおよびハロゲン化プラセオジムなどが挙げられる。
【0013】
上記のプラセオジムアルコキシドとしては、例えば、プラセオジムエトキシド、プラセオジムn−プロポキシド、プラセオジムイソプロポキシド、プラセオジムブトキシドなどが挙げられる。
【0014】
上記のハロゲン化プラセオジムとしては、例えば、三フッ化プラセオジム、三塩化プラセオジム、三臭化プラセオジム、三ヨウ化プラセオジムなどが挙げられる。
【0015】
上記の溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどが挙げられる。
【0016】
これらの溶媒は、一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
反応温度は−30〜150℃の範囲が好ましく、0〜100℃の範囲が特に好ましい。
【0018】
反応時間は1分〜12時間の範囲が好ましく、5分〜5時間が特に好ましい。
【0019】
(合成例)
以下に本発明に基づく合成例について具体的に記載する。
プラセオジム含量の測定は、ICP発光分析法にて行った。測定には、バリアンジャパン社製ICP発光分光分析装置 Vista MPX型を用いた。
【0020】
(合成例1)
300mlのナシ形二つ口フラスコに高純度化学研究所製トリイソプロポキシプラセオジムを0.64g(2.01mmol)、2,6−ジメチルヘプタンジオンを0.95g(6.05mmol)および脱水トルエン10mlを加え、マグネティックスターラーにて攪拌した。トルエン還流下で20時間反応を行い、トルエンを留去し、減圧乾固した。得られた固体を110℃にて2時間減圧乾固し、トリス(2,6−ジメチルヘプタンジオナト)プラセオジムを得た。収量0.38g(0.63mmol)、収率31%。
生成物の核磁気共鳴スペクトル(NMR)の結果、
1H−NMR δ(ppm):−0.8(36H)、0.3、0.7(計6H)、13.7(3H) ただし、測定溶媒はC
6D
6を用いた。
【0021】
(ICP発光分析)
合成例1において合成されたトリス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)プラセオジムについて、ICP発光分析法にてプラセオジムの含量を算出した。分析測定を2回行い、測定値が理論値とほぼ同等の数値を示したことから、一個のプラセオジム原子あたり、三個の2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン配位子が結合していることが示唆された。その分析結果を表1に示した。
【0023】
(重合触媒用途)
合成例1において合成されたトリス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)プラセオジムは、例えば共役ジエン重合用触媒として用いることができる。
【0024】
(共役ジエン重合例)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、トルエン315ml及びブタジエン180mlからなる溶液を仕込んだ。次いで、トリエチルアルミニウム(TEA)のトルエン溶液(2mol/L)1.25mlを添加した。次に、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)プラセオジムのトルエン溶液(0.02mol/L)1.5mlを添加した後、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(0.43mol/L)0.14mlを添加した。40℃で25分間重合した後、老化防止剤を含むエタノール溶液3mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液にエタノールを投入し、ポリブタジエンを回収後、80℃で3時間真空乾燥した。得られたポリブタジエンは、収量9.50g、シス体比率98.2%であった。