特許第6359255号(P6359255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6359255バックブースト・パワー・コンバータシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359255
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】バックブースト・パワー・コンバータシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20180709BHJP
【FI】
   H02M3/155 U
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-195576(P2013-195576)
(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-75967(P2014-75967A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年8月21日
(31)【優先権主張番号】61/704,195
(32)【優先日】2012年9月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/772,038
(32)【優先日】2013年3月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515280067
【氏名又は名称】アナログ・デヴァイシズ・グローバル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】田辺 裕久
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0187336(US,A1)
【文献】 特開2006−109689(JP,A)
【文献】 特開平11−299229(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0044843(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタを備えるHブリッジ構成にて一次側及び二次側スイッチング素子が配置され、前記一次側及び二次側スイッチング素子の少なくとも一つが入力ノードに対応し、前記一次側及び二次側スイッチング素子の少なくとも一つが出力ノードに対応するバックブースト・パワー・コンバータシステムであって、
前記一次側及び二次側スイッチング素子の一つ以上と前記インダクタとから受信した情報と、特定の傾斜補償信号とに基づきランプ信号を生成するように構成されたランプ信号生成回路と、
前記ランプ信号と前記出力ノードにおける電圧に比例する電圧と特定の基準電圧との間の差異に応じて変化する誤差信号との関係に基づいて、バック・コンバータ・モードとブースト・コンバータ・モードとのうちの選択された一つにおいて前記一次側及び二次側スイッチング素子を選択的に動作させるように構成されたレギュレーション回路であって、前記出力ノードにおける前記電圧を分圧して得られる電圧前記特定の基準電圧との比較に基づいて前記誤差信号を供給する誤差増幅器を含むレギュレーション回路と、を備え、
前記ランプ信号生成回路は、前記バック・コンバータ・モードと前記ブースト・コンバータ・モードとの切り替えにおいて、前記ランプ信号の振幅を、そのランプ信号の振幅よりも大きなオフセット量で変化させ、
前記バック・コンバータ・モードにおいて、前記特定の傾斜補償信号は、時間的に変化する鋸歯波形信号であり、
前記ブースト・コンバータ・モードにおいて、前記特定の傾斜補償信号は、前記時間的に変化する鋸歯波形信号のピーク間振幅に相当する大きさを有するDC信号である、バックブースト・パワー・コンバータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のバックブースト・パワー・コンバータシステムにおいて、
前記ランプ信号生成回路は、
前記インダクタのインダクタ電流に応じて変化する出力を供給する電流検知回路と、
時間的に変化する鋸波状信号又はDC信号を供給する傾斜補償/ブースト・オフセット回路と、
前記時間的に変化する鋸波状信号と前記DC信号とのうちの少なくとも一つと、前記電流検知回路からの前記出力とを受信する加算ノードと、
前記加算ノードからの信号の受信に応答して、前記傾斜補償/ブースト・オフセット回路からの前記時間的に変化する鋸波状信号と前記DC信号とのうちの少なくとも一つと、前記電流検知回路からの前記出力とに基づいて、前記ランプ信号を供給するモード変更回路と、
を含む、バックブースト・パワー・コンバータシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のバックブースト・パワー・コンバータシステムにおいて、
前記ランプ信号生成回路は、スイッチング回路を含み、
前記スイッチング回路は、前記バック・コンバータ・モードであるか前記ブースト・コンバータ・モードであるかの指示に基づいて異なる2つのランプ信号のうちの一つを選択的に供給し、前記異なる2つのランプ信号は、特定の電圧信号振幅で互いにオフセットされている、バックブースト・パワー・コンバータシステム。
【請求項4】
請求項2に記載のバックブースト・パワー・コンバータシステムにおいて、
前記電流検知回路は、前記一次側及び二次側スイッチング素子のうちの一つに接続される入力を有し、該一次側及び二次側スイッチング素子のうちの一つの電流に関する情報を検知する電圧−電流コンバータ回路を含む、バックブースト・パワー・コンバータシステム。
【請求項5】
請求項2に記載のバックブースト・パワー・コンバータシステムにおいて、
前記傾斜補償/ブースト・オフセット回路は、
定電流源と、
前記定電流源に直列に接続されたエネルギー蓄積素子と、
セット信号に応じて前記エネルギー蓄積素子を選択的に放電するように構成されたスイッチと、を含み、
前記セット信号は、前記バック・コンバータ・モードで使用するための略鋸歯状の補償信号を前記加算ノードに供給するように選択される、バックブースト・パワー・コンバータシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のバックブースト・パワー・コンバータシステムにおいて、
前記傾斜補償/ブースト・オフセット回路は、前記エネルギー蓄積素子に接続されて前記略鋸歯状の補償信号に関するピーク情報を蓄積するように構成されたサンプルホールド回路を含む、バックブースト・パワー・コンバータシステム。
【請求項7】
請求項5に記載のバックブースト・パワー・コンバータシステムはさらに、
前記加算ノードに接続された出力を有し、前記ブースト・コンバータ・モードで使用するブースト補償回路を備え、
前記ブースト補償回路は、
第2定電流源と、
前記第2定電流源に直列に接続された第2エネルギー蓄積素子と、
前記ブースト・コンバータ・モードでのオフ時間中に前記第2エネルギー蓄積素子を選択的に放電するように構成されたスイッチと、を含む、バックブースト・パワー・コンバータシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のバックブースト・パワー・コンバータシステムにおいて、
前記ランプ信号生成回路は、当該バックブースト・パワー・コンバータシステムが前記バック・コンバータ・モードで動作するのか前記ブースト・コンバータ・モードで動作するのかを示すモード制御信号を生成し、前記モード制御信号は、前記一次側及び二次側スイッチング素子の一つ以上から受信した情報と特定の傾斜補償信号とに基づくものである、バックブースト・パワー・コンバータシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のバックブースト・パワー・コンバータシステムにおいて、
前記レギュレーション回路は、
第1入力及び第2入力を有する論理回路であって、前記第1入力において前記ランプ信号生成回路からの前記モード制御信号を受信する論理回路と、
前記ランプ信号と前記誤差信号との比較に基づくリセット信号を前記論理回路の前記第2入力に供給する比較回路と、を含み、
前記論理回路は、前記モード制御信号と前記リセット信号とに基づいて前記一次側及び二次側スイッチング素子に対する制御信号を生成する、バックブースト・パワー・コンバータシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のバックブースト・パワー・コンバータシステムにおいて、
前記一次側スイッチング素子は、第1ノードにおいて直列に接続された一次ハイおよびロー側スイッチング素子を含み、
前記二次側スイッチング素子は、第2ノードにおいて直列に接続された二次ハイおよびロー側スイッチング素子を含み、
前記インダクタが、前記第1ノードと前記第2ノードとの間に接続されている、バックブースト・パワー・コンバータシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のバックブースト・パワー・コンバータシステムはさらに、
前記ランプ信号と前記誤差信号とを比較するPWM比較回路と、
SRラッチと論理ゲート群とを含む論理回路と、を備え、
前記論理ゲート群は、前記SRラッチからの出力信号に従って前記一次側及び二次側スイッチング素子を選択的にスイッチングするように構成されており、
前記SRラッチは、クロック入力とデータ入力とを含み、前記データ入力は、前記PWM比較回路からの前記ランプ信号と前記誤差信号との比較結果を受信するように構成されている、バックブースト・パワー・コンバータシステム。
【請求項12】
バック・モードとブースト・モードとを提供するようにハイ及びロー側スイッチング素子のペア群を有するスイッチング・コンバータを動作させるための方法であって、
前記スイッチング・コンバータのスイッチング素子の電流に応じて変化する電流検知信号と、特定の傾斜補償信号とに基づいた傾斜を有するランプ信号を供給すること、
特定の基準信号振幅と、前記スイッチング・コンバータからの出力信号振幅との差に基づく誤差信号を供給すること、
前記誤差信号が前記ランプ信号と特定の電圧値との合計よりも大きくなるように推移するとき、少なくとも前記特定の電圧値と前記ランプ信号のピーク間振幅との合計であって、前記バック・モードから前記ブースト・モードへ前記スイッチング・コンバータを移行させるのに十分なオフセット量で前記ランプ信号を増加させること、
前記誤差信号が前記ランプ信号と特定の電圧値との差未満となるように推移するとき、少なくとも前記特定の電圧値と前記ランプ信号のピーク間振幅との合計であって、前記ブースト・モードから前記バック・モードへ前記スイッチング・コンバータを移行させるのに十分なオフセット量で前記ランプ信号を減少させること、
を備え、
前記方法はさらに、
前記バック・モードにおいて、前記特定の傾斜補償信号を時間的に変化する鋸歯波形信号として供給すること、
前記ブースト・モードにおいて、前記特定の傾斜補償信号を前記時間的に変化する鋸歯波形信号のピーク間振幅に相当する大きさを有するDC信号として供給すること、
を備える、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法はさらに、
前記電流検知信号と前記特定の傾斜補償信号とに基づいてモード制御信号を供給すること、
論理回路を用いて、前記スイッチング・コンバータの前記ハイ及びロー側スイッチング素子のペア群のオンオフ状態を更新すること、を備え、
前記論理回路は、前記ランプ信号と前記誤差信号との比較結果を受信するように構成された第1入力と、前記モード制御信号を受信するように構成された第2入力と、クロック信号を受信するように構成された第3入力と、前記ハイ及びロー側スイッチング素子に接続された出力とを含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法はさらに、
エネルギー蓄積素子の第1端子に前記特定の傾斜補償信号を生成することを備え、当該エネルギー蓄積素子の第1端子に前記特定の傾斜補償信号を生成することは、
前記エネルギー蓄積素子に直列に接続された定電流源を用いて前記エネルギー蓄積素子に充電すること、
前記エネルギー蓄積素子を選択的に放電して略鋸歯状の信号波形を供給すること、を含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法はさらに、
前記ハイ側スイッチング素子の少なくとも一つと前記ロー側スイッチング素子の少なくとも一つのオンオフ状態を更新することにより、デューティサイクル信号と周期的クロック信号とに従って、バック・モード又はブースト・モードで前記スイッチング・コンバータを動作させることを備え、
前記エネルギー蓄積素子を選択的に放電することは、前記周期的クロック信号によりトリガされるスイッチを用いることを含む、方法。
【請求項16】
請求項12に記載の方法はさらに、
バック・モードからブースト・モードへ移行させることを備え、当該バック・モードからブースト・モードへ移行させることは、当該移行の直前において第1デューティサイクルに従って前記スイッチング素子を動作させることを含み、前記第1デューティサイクルは、0%及び100%のうちの一方であり、当該バック・モードからブースト・モードへ移行させることはさらに、当該移行の直後において第2デューティサイクルに従って前記スイッチング素子を動作させることを含み、前記第2デューティサイクルは、0%及び100%のうちの他方である、方法。
【請求項17】
請求項12に記載の方法はさらに、
前記ハイ側スイッチング素子の一つのソース端子及びドレイン端子に接続された検知用増幅回路を用いて前記電流検知信号を検知することを備える、方法。
【請求項18】
請求項12に記載の方法において、
前記ランプ信号を供給することは、前記電流検知信号と前記特定の傾斜補償信号とブースト補償信号とを加算した信号を供給することを含み、前記ブースト補償信号は、前記ブースト・モードのサイクルのオフ部分で供給される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、概してスイッチング・パワー・コンバータに関し、特にバックブースト・スイッチング・コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング・コンバータは、入力電圧VINを受け取り、出力電圧VOUTを生成する。「バックブースト」コンバータと呼ばれる種類のスイッチング・コンバータは、生成される出力電圧が入力電圧より低い(VOUT<VIN)バック・モード、VOUT>VINのブースト・モード、またはVOUTがVINにほぼ等しいバックブースト・モードで動作することができる。
【0003】
バックブースト・コンバータの1つの適した応用は、入力電圧VINが径時的に低減する電池稼働システムである。このシステムを図1Aに示す。入力電圧VINは、例えば、リチウムイオン電池から供給されるが、その電圧は時間とともに4.2Vから2.5Vに下がる。スイッチング・コンバータにより給電される回路が、例えば3.3Vの動作電圧を必要とする場合、バックブースト・コンバータの使用が有益である。電池電圧が3.3Vよりも最小値だけ高い場合、コンバータはバック・モードで動作する。また、電池電圧が3.3Vよりも最小値だけ低い場合、コンバータはブースト・モードで動作する。しかし、電池電圧が3.3Vよりもわずかに高い場合、通常、コンバータはバック・モードで動作し続けることができず、バックブースト・モード動作に切り替えなければならない。同様に、電池電圧が3.3Vよりもわずかに低い場合は、通常、ブースト・モードを維持することができず、コンバータはバックブースト・モード動作への切り替えを要する。
【0004】
図1Bは、一般的にバックブースト・パワー・コンバータの最終段として使用される「Hブリッジ」回路を示している。2つのスイッチング素子10、12はともにノード14に接続され、また、VINと回路共通点との間に接続されている。2つのスイッチング素子16、18はともにノード20に接続され、また、VOUTと回路共通点との間に接続されている。インダクタLは、ノード14とノード20との間に接続され、フィルタ容量Cは、一般的にVOUTと回路共通点との間に接続される。バック・モードでは、スイッチング素子16は閉じられ、スイッチング素子10、12は一般的に、パルス幅変調(PWM)信号により相補的に開閉されて所望のVOUTを生成する。ブースト・モードでは、スイッチング素子10は閉じられ、スイッチング素子16、18は、相補的に開閉されて所望のVOUTを生成する。しかし、バックブースト・モードでは、所望のVOUTを得るには、4つのスイッチング素子すべてが開閉されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、バックブースト・モードは、バック・モードとブースト・モードとの間の直接的な移行が出力電圧の不連続性を引き起こすことがあるとの理由のために使用されている。しかし、このバックブースト・モードの動作方法には、すべての4つのスイッチング素子を開閉する必要があるため、動作効率が低いという欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に対処する「ウィンドウレス」Hブリッジ・バックブースト・スイッチング・コンバータを提供する。
スイッチング・コンバータは、Hブリッジとして構成される、一次ならびに二次ハイ側およびロー側スイッチング素子とインダクタとを使用する。一次ハイ側スイッチング素子の上端はコンバータの入力ノードであり、二次ハイ側スイッチング素子の上端はコンバータの出力ノードである。コンバータは、出力ノードに所望の出力電圧を得るために、必要に応じて一次ハイ側およびロー側スイッチング素子または二次ハイ側およびロー側スイッチング素子を動作させるように構成されたレギュレーション回路を含む。レギュレーション回路は、出力電圧に比例した電圧と基準電圧との間の差に応じて変化するcomp信号を生成するように構成された誤差増幅器と、comp信号をramp信号と比較して、ramp信号がcomp信号よりも大きくなるかまたは小さくなったときに出力を切り替える第1比較回路とを含む。レギュレーション回路は更に、第1比較回路の出力、およびコンバータがバック・モードとブースト・モードのうち何れで動作するのかを指示するモード制御信号を受け取る論理回路を含む。バック・モード動作が指示されている場合、論理回路は、一次ハイ側およびロー側スイッチング素子を開閉して所望の出力電圧を生成し、ブースト・モード動作が指示されている場合、二次ハイ側およびロー側スイッチング素子を開閉して所望の出力電圧を生成する。
【0007】
コンバータは更にランプ信号生成回路を含む。このランプ信号生成回路は、一方のハイ側スイッチング素子によって流される電流に応じて変化する出力を与える電流検知回路、電流検知回路の出力と加算されて電圧ramplを生成する出力を与える傾斜補償および/またはオフセット回路、電圧ramplの基準として使用され、rampl+Vhysにより与えられる電圧ramphを生成する定電圧源(Vhys)、およびバック・モード動作中に電圧ramplをramp信号として第1比較回路に与え、ブースト・モード動作中に電圧ramphをramp信号として第1比較回路に与えるように構成されたスイッチング回路を含む。
【0008】
傾斜補償および/またはオフセット回路の出力は、バック・モードではVslp(p−p)の振幅を有する三角形傾斜補償信号であり、また、ブースト・モードではピークDC電圧の傾斜補償信号である。
【0009】
第2比較回路は、comp信号をramp#信号と比較し、ramp#信号がcomp信号よりも大きくなるかまたは小さくなるときに、出力を切り替える。上記スイッチング回路は更に、モード制御信号がブースト・モード動作を指示している場合に電圧ramplをramp#信号として第2比較回路に与え、モード制御信号がバック・モード動作を指示している場合に電圧ramphをramp#信号として第2比較回路に与えるように構成されている。第2論理回路は、第2比較回路の出力を受け取り、それに応じてモード制御信号を与えるように構成されている。
【0010】
この構成は、バック・モードからブースト・モードに移行したときramp信号をVhys+Vslp(p−p)だけ増加(シフト・アップ)させ、ブースト・モードからバック・モードに移行したときramp信号をVhys+Vslp(p−p)だけ減少(シフト・ダウン)させて元に戻すように動作する。これは、コンバータが2つのモードのみ、すなわち、バック・モードとブースト・モードのみで動作することを可能にして、中間のバックブースト領域を不要にする。したがって、モード移行回数が減少し、3個以上のスイッチング素子が作動されることはなく、それにより動作効率が改善される。2つのみの動作モードによる出力電圧の不連続性も最小化される。
【0011】
本発明の上記およびその他の特徴、態様、および長所は、以下の説明および特許請求の範囲を参照することにより、更に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】従来のバックブースト・スイッチング・コンバータにおけるスイッチング・コンバータ動作モードと入力電圧との関係を示す図。
図1B】バックブースト・スイッチング・コンバータにおいて一般的に使用される周知のHブリッジ構成の概略図。
図2A】本発明のウィンドウレス・バックブースト・スイッチング・コンバータにおけるスイッチング・コンバータ動作モードと入力電圧との関係を示す図。
図2B】本発明のウィンドウレス・バックブースト・スイッチング・コンバータにおいて使用され得るHブリッジ構成の概略図。
図3】本発明のウィンドウレス・バックブースト・スイッチング・コンバータの1つの可能な実施形態を示す概略ブロック図。
図4】本発明のウィンドウレス・バックブースト・スイッチング・コンバータにおけるバック・モードからブースト・モードへの移行を示すタイミング図。
図5】本発明のウィンドウレス・バックブースト・スイッチング・コンバータにおけるブースト・モードからバック・モードへの移行を示すタイミング図。
図6】本発明のウィンドウレス・バックブースト・スイッチング・コンバータにおいて使用され得る電流検知回路、傾斜補償オフセット回路、およびモード変更回路の概略ブロック図。
図7】本発明のウィンドウレス・バックブースト・スイッチング・コンバータに関するramp信号およびramp#信号の動作を示す図。
図8】本発明のウィンドウレス・バックブースト・スイッチング・コンバータのためのモード制御信号を生成する論理回路の1つの可能な実施形態の概略図。
図9】本発明のウィンドウレス・バックブースト・スイッチング・コンバータの別の可能な実施形態を示す概略ブロック図。
図10図9のウィンドウレス・バックブースト・スイッチング・コンバータにおいて使用され得る電流検知回路、傾斜補償オフセット回路、およびモード変更回路の概略ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図2Aは、本発明のウィンドウレス・バックブースト・スイッチング・コンバータにおけるスイッチング・コンバータ動作モードと入力電圧との関係を示す図である。本発明のコンバータ構造は、2つの動作モード、すなわち、バック・モードとブースト・モードのみを有しており、これは、従来のバックブースト・コンバータに見られる効率問題の解決に役立つ一方、出力の不連続性も最小化する。このコンバータは、図2Bに示すHブリッジ構成を使用する。この構成では、2つのスイッチング素子30、32はともにノード34に接続され、かつ、VINと回路共通点との間に接続されており、また、2つのスイッチング素子36、38はともにノード40に接続され、かつ、VOUTと回路共通点との間に接続されている。インダクタL1はノード34とノード40との間に接続され、フィルタ容量C1はVOUTと回路共通点との間に接続されている。このコンバータの場合、バック・モードでは、スイッチング素子36が閉じられ、スイッチング素子30、32が一般的にはパルス幅変調(PWM)された信号により相補的に開閉されることで、所望のVOUTが生成される。ブースト・モードでは、スイッチング素子30が閉じられ、スイッチング素子36、38が相補的に開閉されることで、所望のVOUTが生成される。どのタイミングにおいても3個以上のスイッチング素子が開閉されないため、コンバータの効率が改善される。このコンバータは、好ましくは、実ピーク・カレント・モード・バック・レギュレータ、実ピークまたはエミュレーテッド・カレント・モード・ブースト・レギュレータ、およびバック・モードとブースト・モードとの間を切り替える新しい方法により実現される。
【0014】
図3は、ウィンドウレス・バックブースト・コンバータの典型的な実施形態の概略ブロック図を示す。このコンバータは、ともにノード34に接続された一次ハイ側スイッチング素子30および一次ロー側スイッチング素子32、ともにノード40に接続された二次ハイ側スイッチング素子36および二次ロー側スイッチング素子38、およびインダクタL1を含み、これらスイッチング素子およびインダクタはHブリッジ構成に配置されている。ここで、スイッチング素子30、32、36、38は、PMOSのFETおよびNMOSのFETにより実現される。ただし、他のスイッチング素子も使用できる。一次ハイ側スイッチング素子30の上端はコンバータの入力ノードであり、入力電圧VINを受け取る。二次ハイ側スイッチング素子36の上端はコンバータの出力ノードであり、この出力ノードに出力電圧VOUTが供給される。フィルタ容量C1は一般的にVOUTと回路共通点との間に接続される。VOUTは、適切に負荷42に接続される。
【0015】
このコンバータは、一次または二次ハイ側およびロー側スイッチング素子を動作させることにより所望の出力電圧VOUTを生成するように構成されたレギュレーション回路も含む。このレギュレーション回路は、VOUTに比例する電圧VFBと基準電圧Vrefとの間の差異に応じて変化するcomp信号を生成するように構成された誤差増幅器50(補償回路52を含み得る)と、comp信号をramp信号と比較してramp信号がcomp信号より大きくなるかまたは小さくなったときに出力56を切り替える第1比較回路54とを含む。論理回路58は、比較回路の出力56と、コンバータがバック・モードとブースト・モードとのうちどちらで動作するべきかを指示するモード制御信号60とを受け取る。この論理回路58は、モード制御信号60がバック・モード動作を指示しているときには一次ハイ側およびロー側スイッチング素子30、32を動作させて所望のVOUT電圧を生成し、モード制御信号60がブースト・モード動作を指示しているときには二次ハイ側およびロー側スイッチング素子36、38を動作させて所望のVOUT電圧を生成するように構成されている。各スイッチング素子は、関連するスイッチング・サイクル中に開閉され、関連するオン時間およびオフ時間を有している。本明細書において、1対のスイッチング素子がVOUTを調整するために(一般的にPWM信号を使用して)相補に開閉されているとき、これらの素子は「動作している」ものとして使用される。バック・モードでは、スイッチング素子36は連続的にオン状態にあって、インダクタL1から出力ノード(VOUT)への導電路を与えている。同様に、ブースト・モードでは、スイッチング素子30は連続的にオン状態にあって、インダクタL1から入力ノード(VIN)への導電路を与えている。
【0016】
論理回路58は、一般的に、周期的クロック信号64のset入力の立ち上がりエッジでセットされるSRラッチ62を含み得る。ラッチ62のQ出力は、それぞれモード制御信号60を受け取る論理ゲート66、68に与えられる。この例では、論理ゲート66はNORゲートであり、論理ゲート68はANDゲートである。モード制御信号60がバック・モード動作を指示するローである場合、ラッチ62がセットされ、かつ、Qがハイになったとき、NORゲート出力70がローとなり、一次ハイ側スイッチング素子30が閉じるとともに、一次ロー側スイッチング素子32が開く。ramp信号がcomp信号を超えると、比較回路54の出力56がハイとなり、ラッチ62をリセットして、一次ハイ側スイッチング素子30を開き、一次ロー側スイッチング素子32を閉じる。スイッチング素子30、32は、VOUTを調整するために必要なときに、この方法により開閉される。
【0017】
バック・モードにおける二次側に関して、ANDゲート68の出力72は、モード制御信号60がローである限り、ローのままであり、これにより二次ハイ側スイッチング素子36は常にオンであり(それによりL1からVOUTへの導電路を与える)、また、ロー側スイッチング素子38は常にオフである。
【0018】
モード制御信号60がブースト・モード動作を指示するハイである場合、ラッチ62がセットされ、かつ、Qがハイになったとき、ANDゲート出力70がハイとなり、二次ハイ側スイッチング素子36が開くとともに、二次ロー側スイッチング素子38が閉じる。ramp信号がcomp信号を超えると、比較回路54の出力56がハイとなり、ラッチ62をリセットして、二次ハイ側スイッチング素子36を閉じ、二次ロー側スイッチング素子38を開く。スイッチング素子36、38は、VOUTを調整するために必要なときに、この方法により開閉される。
【0019】
ブースト・モードにおける一次側に関し、NORゲート66の出力70は、モード制御信号60がハイである限り、ローのままであり、これにより一次ハイ側スイッチング素子30は常にオンであり(それによりL1からVINへの導電路を与える)、また、ロー側スイッチング素子32は常にオフである。
【0020】
コンバータは更に、ランプ信号発生回路80を含む。ランプ信号発生回路80は、一方のハイ側スイッチング素子(ここでは、一次ハイ側スイッチング素子30)によって流される電流に応じて変化する出力84を与える電流検知回路82と、加算ノード90において電流検知回路出力と加算される出力88を生成する傾斜補償および/またはブースト・オフセット回路86と、ramp信号の生成とともにモード制御信号60および相補的モード制御信号166を生成するモード変更回路92とを含む。本明細書で説明する例において、コンバータは、モード制御信号60がハイのときバック・モードで動作し、モード制御信号166がハイのときブースト・モードで動作する。なお、このコンバータは、別の極性でモード制御信号を使用する場合にも容易に適合できる。
【0021】
ランプ信号生成回路80は、バック・モードからブースト・モードへ移行するときramp信号を増加(シフト・アップ)させ、ブースト・モードからバック・モードへ移行するときramp信号を減少(シフト・ダウン)させて元に戻すように構成されており、これによりモード移行中にcomp電圧が比較的一定に保たれることを可能にしている。図4は、バック・モードからブースト・モードへの移行を示している。同図4は、ラッチ62に与えられる周期的なset信号、検知されたインダクタ電流IL、ノード34(SWA)の電圧、ノード40(SWB)の電圧、ramp信号、およびcomp信号を含んでいる。ramp信号は、インダクタ電流に比例する(ILに比例する)信号と傾斜補償信号(振幅Vslp(p−p)を有する)の和であり、傾斜補償信号と同じ傾斜を有している。
【0022】
このシステムがバック・モードにあると仮定する。まず、ramp信号が毎サイクル中にcomp信号に達し、それによってPWMパルス(SWA)が一次ハイ側およびロー側スイッチング素子に与えられる。しかし、入力電圧VINが減少し始めると、出力電圧VOUTも減少し、それによりcompが増大する。compの増大につれて、バック・モード・デューティ・サイクル(VOUT/VINにより与えられる)は最終的に100%近くまで増大し、検知されたインダクタ電流ILの傾斜(VIN−VOUTに比例する)はほぼ0に下がり、ramp信号はもはやcomp信号に到達できない。この時点(100)において、PWMパルスは一時停止される(102)。compが「ramp+ヒステリシス電圧Vhys」(104)より大きくなると(適宜に10〜100mV)、ブースト・モードへの移行が行われる。これは、ramp信号を「Vslp(p−p)+Vhys」により与えられる電圧Voff(ブースト)だけ増加(シフト・アップ)させることにより行われる。ブースト・モードへの移行の後、1−VIN/VOUTにより与えられるブースト・モード・デューティサイクルはほぼ0%であり、また、PWMパルス(SWB)が二次ハイ側およびロー側スイッチング素子に与えられる。
【0023】
このように移行点においてramp信号を増加させることにより、ramp信号の谷間がcomp信号の直下にくるために、デューティサイクルは移行後に大幅に変化しない。これにより、モード移行時における出力電圧のリップルを最小化することができる。
【0024】
図5は、ブースト・モードからバック・モードへの移行を示す。ここでは、出力電圧が増大し、かつ、comp信号が減少したときに移行が必要となる。ブースト・モードのデューティサイクルは最終的に0%近くに減少し、検知されたインダクタ電流ILの傾斜は0近くに落ち、かつ、ramp信号の谷間は、もはやcomp信号(106)に到達しない。compが「ramp−ヒステリシス電圧Vhys」(108)より小さくなると、バック・モードへの移行が行われる。これは、ramp信号を「電圧Voff(ブースト)=Vslp(p−p)+Vhys」だけ減少(シフト・ダウン)させることにより行われる。バック・モードへの移行の後、バック・モード・デューティサイクルはほぼ100%である。
【0025】
ウィンドウレス・バックブースト・コンバータを実現する1つの方法は、2つのランプ電圧ramph、rampl(ramphは「rampl+Vhys」に等しい)を生成し、バック・モードのときに、comp信号と比較されるramp信号としてramplを使用し、ブースト・モードのときに、ramp信号としてramphを使用することである。図6は、この方法を実現する電流検知回路82、傾斜補償およびブースト・オフセット回路86、およびモード変更回路92の典型的な実施形態を示す。
【0026】
電流検知回路82は、増幅器110(一般的には電圧−電流(V−I)コンバータ)により実現することができる。増幅器110の入力は、一方のハイ側スイッチング素子(ここでは、一次ハイ側スイッチング素子30)に接続されている。電流検知回路82は、一次ハイ側スイッチング素子30によって流される電流に応じて変化する出力112を生成する。電流検知出力112は、加算ノード90に接続されている。
【0027】
図6に示した傾斜補償およびブースト・オフセット回路86の典型的な実施例の場合、定電流源120が容量122に直列に接続され、また、set信号がアサートされたときに閉じられるスイッチ124が容量122の両端に接続されている。この構成の動作は、傾斜補償信号128として働く鋸歯状波形をノード126に与える。
【0028】
この回路は、set入力で動作するスイッチ132を介してノード126に接続される容量130も含むことが好ましい。この構成は、ノード126における傾斜補償信号のピークを容量130に蓄える傾斜振幅サンプルホールドとして動作する。コンバータがバック・モードで動作しているとき、スイッチ134の動作は傾斜補償信号を加算ノード90に結合し、コンバータがブースト・モードで動作しているとき、スイッチ134の動作はサンプルホールド出力を加算ノード90に結合する。V−Iコンバータ136の入力をスイッチ134に接続することで、その入力における電圧を加算ノード90に供給される電流137に変換することができる。
【0029】
ブースト傾斜補償を行う必要が生じる場合がある。この目的のために使用できる1つの構成は、回路140である。この回路140は、ノード146において容量144に直列に接続される定電流源142を含む。この容量144は、コンバータの「オフ」時間中、スイッチ148により短絡される。ノード146は、ブースト・モード中に閉じられるスイッチ150を介して加算ノード90に接続される。V−Iコンバータ152は、ノード146の電圧を加算ノード90への給電に適する電流に変換するために使用することができる。
【0030】
抵抗器160は、加算ノード90と回路共通点との間に適切に接続されており、加算された電流を電圧に変換する。バッファ162によってバッファすることが可能なこの電圧は、電圧ramplである。一定電圧Vhysを電圧ramplに対する基準として使用して「rampl+Vhys」で与えられる電圧「ramph」を生成する。スイッチング回路164は、rampl信号およびramph信号とともに制御信号60,166を受け取るように構成されている。スイッチング回路164は、モード制御信号がバック・モード動作を指示しているとき、電圧ramplをramp信号として比較回路54(pwm_comp)に与え、モード制御信号がブースト・モード動作を指示しているとき、電圧ramphをramp信号として比較回路54に与える。
【0031】
コンバータの動作モードを決定するために、好ましくは、第2比較回路170(mode_comp)が使用される。第2比較回路170は、comp信号をramp#信号と比較し、ramp#信号がcomp信号より大きくなるかまたは小さくなった場合に出力172を切り替える。スイッチング回路164は更に、モード制御信号がブースト・モード動作を指示しているときに、電圧ramplをramp#信号として第2比較回路170に与え、モード制御信号がバック・モード動作を指示しているときに、電圧ramphをramp#信号として第2比較回路170に与えるように構成することが好ましい。論理回路174は、第2比較回路の出力170を受け取り、それに応じてモード制御信号166,60を与えるように構成される。
【0032】
図7は、ramp信号およびramp#信号の動作の様子を示す。最初に、コンバータは、バック・モードで動作している。したがって、ramplが、pwm_comp比較回路にramp信号として与えられ、ramphが、mode_comp比較回路にramp#信号として与えられる。各サイクル中、ramp#信号がcomp信号を超えている限り、コンバータは、バック・モードに留まる。しかし、mode_comp比較回路の出力172がramp#信号のピークにおいてロー(176)になると、これは、ramp#信号がcomp信号に達しなかったことを示し、したがって、コンバータはブースト・モードに移行しなければならない。
【0033】
コンバータがブースト・モードで動作しているとき、ramplが、mode_comp比較回路にramp#信号として与えられ、ramphが、pwm_comp比較回路にramp信号として与えられる。各サイクル中、ramp#信号の谷間がcomp信号を下回っている限り、コンバータは、ブースト・モードに留まる。しかし、mode_comp比較回路の出力172がramp#信号の谷間においてハイ(178)になると、これは、ramp#信号がcomp信号を下回らなかったことを示し、したがって、コンバータはバック・モードに移行しなければならない。要するに、バック・モード中には、ramp=ramplかつramp#=ramphであり、ブースト・モード中には、ramp=ramphかつramp#=ramplである。
【0034】
図8は、論理回路174の一つの可能な実現例を示す。Dフリップフロップ180、182はそれぞれ、データ入力においてmode_comp比較回路の出力172を受け取り、クロック入力においてset信号を受け取る。フリップフロップ182のQ出力は、モード制御信号60(ブースト)によりゲートされ(184)、そのゲート回路の出力186がSRラッチ188のset入力に与えられる。また、フリップフロップ180のQバー出力は、モード制御信号166(バック)によりゲートされ(190)、そのゲート回路の出力192がSRラッチのreset入力に与えられる。動作中、バック・モードにおいて、mode_comp比較回路の出力172がsetパルスのときにローである場合、フリップフロップ180のQバー出力はハイとなり、それによりSRラッチ188がリセットされる。したがって、モード制御信号166(バック)がローに、また、モード制御信号60(ブースト)がハイになって、コンバータに対してブースト・モードへの移行が伝えられる。また、ブースト・モードにおいて、mode_comp比較回路の出力172がsetパルスのときにハイである場合、フリップフロップ182のQ出力はハイとなり、それによりSRラッチ188がセットされる。したがって、モード制御信号166(バック)がハイに、また、モード制御信号60(ブースト)がローになって、コンバータに対してバック・モードへの移行が伝えられる。
【0035】
上述した例では、一次ハイ側スイッチング素子において検知される電流について説明したが、これに代えて、ウィンドウレス・バックブースト・コンバータは、二次ハイ側スイッチング素子による電流が検知されるように構成することもできる。バック・モードとブースト・モードとの間の移行方法は上述した例と同じであるが、ブースト・モードにおいてコンバータはエミュレーテッド・ピーク・カレント・モード制御方式を使用する。図9は、かかるコンバータの典型的な実現例を示す。この回路ブロックは、以下の点を除いて図3と同じである。すなわち、モード変更ブロック200が新たにブースト・モードにおいてエミュレーテッド・カレント信号を発生する回路を含み(以下において説明する)、また、電流検知回路82は、一次ハイ側スイッチング素子30の代わりに二次ハイ側スイッチング素子36の電流を検知するように構成される。
【0036】
図10は、図9において説明した方法を実現する電流検知回路82、傾斜補償およびブースト・オフセット回路86、およびモード変更回路200の典型的な実施形態を示す。上記と同様に、電流検知回路82は、一次ハイ側スイッチング素子30または二次ハイ側スイッチング素子36に接続され、検知電流に応じて変化する電流112を生成する増幅器110を含む。傾斜補償およびオフセット回路86も上記と同様に、コンバータがバック・モードで動作しているときノード126の傾斜補償信号を加算ノード90に、また、コンバータがブースト・モードで動作しているときサンプルホールド容量130の出力を加算ノード90に、好ましくは電流137として与える。
【0037】
モード変更回路200も、ブースト・モードにおいてエミュレーテッド・カレント信号を生成する電流が追加されることを除いて、モード変更回路92と同様である。この例において、追加回路は、加算ノード90(または好ましくは、バッファ204の出力)とノード206との間に接続されるスイッチ202、ノード206と回路共通点との間に接続される容量208、定電流源210、および電源210の出力とノード206との間に接続されるスイッチ212を含む。動作中、バック・モードでは、スイッチ202は常に閉じ、スイッチ212は常に開いているので、このコンバータは前述同様に動作する。ブースト・モードにおいて、スイッチ202はコンバータの「オフ」時間中に閉じ、コンバータの「オン」時間中に開き、また、スイッチ212はコンバータの「オン」時間中に閉じ、コンバータの「オフ」時間中に開いているので、エミュレーテッド・カレントはブースト・モード中、加算ノード90の信号と加算される。
【0038】
このコンバータは、バック・モードにおいて、一次または二次ハイ側スイッチング素子中の電流を検知し、実ピーク・カレント・モード制御方式によりレギュレートするように構成することができる。ブースト・モードでは、一次ハイ側スイッチング素子中の電流が検知される場合、レギュレートは、実ピークまたはエミュレーテッド・ピーク・カレント信号方式により実現することができる。二次ハイ側スイッチング素子中の電流が検知される場合、ブースト・モード・レギュレートは、エミュレーテッド・ピーク・カレント方式により実現される。
【0039】
上述した本発明の実施形態は例示であり、多数の変更、変形、および再構成を構想して実質的に等価の結果を容易に実現することができる。これらのすべてを添付の請求項において定義される本発明の思想および範囲内に含めることを意図している。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10