(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359303
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】ガイドベーン偏芯量測定装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
F03B 3/18 20060101AFI20180709BHJP
G01B 21/24 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
F03B3/18 Z
G01B21/24
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-55148(P2014-55148)
(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公開番号】特開2015-175365(P2015-175365A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2017年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594087001
【氏名又は名称】イームル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】福島 一弘
【審査官】
冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−086377(JP,U)
【文献】
実開昭59−27405(JP,U)
【文献】
実開昭60−100605(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 3/18
G01B 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水車のガイドベーンのベーン軸の両端部を支持する軸受穴の偏芯量を測定するガイドベーン偏芯量測定装置であって、
一方の軸受穴に対して同心上に、着脱自在に配設可能で、前記軸受穴の上部に装着される板状の第1の測定基体及び下部に装着される第2の測定基体と、
前記第1の測定基体と前記第2の測定基体とに同心上に配設され、他方の軸受穴側に延びて軸心周りに回転自在な測定棒と、
前記測定棒の前記他方の軸受穴側に配設され、前記他方の軸受穴の内周面までの距離を測定する測定手段と、
を備えることを特徴とするガイドベーン偏芯量測定装置。
【請求項2】
前記第1の測定基体及び前記第2の測定基体は、前記軸受穴の内径と同径で、前記軸受穴の上部及び下部に挿入される挿入板が着脱自在に取り付けられており、前記挿入板は前記軸受穴の内径に応じて交換可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載のガイドベーン偏芯量測定装置。
【請求項3】
前記測定棒は、前記第1の測定基体及び前記第2の測定基体に支持される第1の測定棒と、前記第1の測定棒に連結される第2の測定棒とからなる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のガイドベーン偏芯量測定装置。
【請求項4】
前記測定棒は、前記第1の測定基体及び前記第2の測定基体に設けられたボールベアリングによって支持されている、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のガイドベーン偏芯量測定装置。
【請求項5】
水車のガイドベーンのベーン軸の両端部を支持する軸受穴の偏芯量を測定するガイドベーン偏芯量測定方法であって、
一方の軸受穴に対して同心上に、前記軸受穴の上部に板状の第1の測定基体を装着し、下部に板状の第2の測定基体を装着する測定基体配設ステップと、
前記第1の測定基体と前記第2の測定基体との同心上に、他方の軸受穴側に延びる測定棒を軸心周りに回転自在に配設する測定棒配設ステップと、
前記測定棒の前記他方の軸受穴側に測定手段を配設する測定手段配設ステップと、
前記測定基体配設ステップと前記測定棒配設ステップと前記測定手段配設ステップの後に、前記測定棒を回転させて、前記測定手段によって前記他方の軸受穴の内周面までの距離を複数測定する測定ステップと、
を備えることを特徴とするガイドベーン偏芯量測定方法。
【請求項6】
前記測定基体配設ステップは、前記第1の測定基体及び前記第2の測定基体に設けられた前記軸受穴に挿入される挿入板を、前記軸受穴の内径に応じて交換するステップを含む、
ことを特徴とする請求項5に記載のガイドベーン偏芯量測定方法。
【請求項7】
前記測定棒配設ステップは、前記第1の測定基体及び前記第2の測定基体に支持される第1の測定棒に、前記軸受穴間の距離に応じて第2の測定棒を連結するステップを含む、
ことを特徴とする請求項6または7に記載のガイドベーン偏芯量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水力発電所などの水車のガイドベーンの偏芯量を測定する、ガイドベーン偏芯量測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電所などの水車には、水を案内するためのガイドベーン(案内羽根)が設けられ、このガイドベーンは、羽根状のベーン本体とベーン軸とを備えている。このベーン軸は、上端部と下端部とが軸受で支持されているが、長時間使用されるのに伴って、上端部と下端部とが偏芯する。このため、上端部の軸受が挿入されている上部軸受穴の中心と、下端部の軸受が挿入されている下部軸受穴の中心との偏芯量・ズレを、定期的に測定し、必要に応じて軸受穴などを修繕する必要がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このようなガイドベーンの偏芯量を測定する場合、従来、例えば、
図5、6に示すような測定装置201を使用して、次のようにして行っていた。まず、水車上カバー101の上部軸受穴102の上部102aに、測定装置201を設置する。
【0004】
この測定装置201は、上部軸受穴102の上部102aに挿入・装着される装着体202の上方に、円筒状の第1の筒体203が配設されている。さらに、第1の筒体203内に円筒状の第2の筒体204が配設され、この第2の筒体204内に第1の測定棒205が、ベアリング206を介して軸心周りに回転自在に配設されている。また、第1の筒体203には、先端が第2の筒体204に達する調整ボルト207が複数配設され、調整ボルト207のねじ込み量を調整することで、第2の筒体204および第1の測定棒205の軸心位置・傾きを調整(首振り)できるようになっている。
【0005】
次に、第1の測定棒205に第1のダイヤルゲージ208を取り付ける。このとき、第1のダイヤルゲージ208の測定子209が、上部軸受穴102の内周面に接して測定が行えるように取り付ける。続いて、第1の測定棒205を回転させて、第1のダイヤルゲージ208の目盛を読み取る。このとき、例えば、90°毎に回転させながら、4箇所の数値を読み取る。そして、読み取った数値のバラツキ・誤差が、所定の範囲内になるように、調整ボルト207で第1の測定棒205の軸心位置・傾きを調整する。
【0006】
その後、第1の測定棒205の下端部に接続されている第2の測定棒210に、第2のダイヤルゲージ211を取り付ける。このとき、第2のダイヤルゲージ211の測定子212が、水車下カバー103の下部軸受穴104の内周面に接して測定が行えるように取り付ける。そして、第1の測定棒205を回転させて、第2のダイヤルゲージ211の目盛を読み取る。このとき、例えば、90°毎に回転させながら、4箇所の数値を読み取る。このようにして、上部軸受穴102(第1の測定棒205)の軸心Cに対する、下部軸受穴104の軸心のズレ量を測定することで、ガイドベーンの偏芯量を測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−086377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記のような測定装置201を設置する場合、第1のダイヤルゲージ208の目盛を読み取りながら複数の調整ボルト207を微調整して、読み取った数値のバラツキ・誤差が所定の範囲内になるように、第1の測定棒205の軸心位置・傾きを調整しなければならず、多大な時間と労力とを要する。
【0009】
しかも、所定の範囲内に設置したとしても誤差・ズレが存在し、この誤差・ズレを第2のダイヤルゲージ211で読み取った数値に反映させる必要がある。つまり、第1の測定棒205自体が上端部で上部軸受穴102の軸心Cからずれている(傾いている)場合、第1の測定棒205の下端部(第2の測定棒210)側ではそのズレ量が大きくなる。このため、このズレ量を第2のダイヤルゲージ211で読み取った数値に反映させて(補正して)、下部軸受穴104のズレ量つまりガイドベーンの偏芯量を算出、測定する必要があり、多大な時間と労力とを要するばかりでなく、算出、測定ミスを起こすおそれがある。
【0010】
そこでこの発明は、正確かつ容易にガイドベーンの偏芯量を測定することを可能にする、ガイドベーン偏芯量測定装置および測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、水車のガイドベーンのベーン軸の両端部を支持する軸受穴の偏芯量を測定するガイドベーン偏芯量測定装置であって、一方の軸受穴に対して同心上に、着脱自在に配設可能
で、前記軸受穴の上部に装着される板状の第1の測定基体及び下部に装着される第2の測定基体と、前記
第1の測定基体と前記第2の測定基体とに同心上に配設され、他方の軸受穴側に延びて軸心周りに回転自在な測定棒と、前記測定棒の前記他方の軸受穴側に配設され、前記他方の軸受穴の内周面までの距離を測定する測定手段と、を備えることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載のガイドベーン偏芯量測定装置であって、前記第1の測定基体及び前記第2の測定基体は、前記軸受穴の内径と同径で、前記軸受穴の上部及び下部に挿入される挿入板が着脱自在に取り付けられており、前記挿入板は前記軸受穴の内径に応じて交換可能である、ことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のガイドベーン偏芯量測定装置であって、前記測定棒は、前記第1の測定基体及び前記第2の測定基体に支持される第1の測定棒と、前記第1の測定棒に連結される第2の測定棒とからなる、ことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のガイドベーン偏芯量測定装置であって、前記測定棒は、前記第1の測定基体及び前記第2の測定基体に設けられたボールベアリングによって支持されている、ことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、測定棒を回転させて、測定手段によって他方の軸受穴の内周面までの距離を複数箇所測定することで、測定棒の回転中心つまり一方の軸受穴の軸心から、他方の軸受穴の内周面までの距離の分布が測定され、2つの軸受穴のズレ量・偏芯量が測定される。
【0013】
請求項
5の発明は、水車のガイドベーンのベーン軸の両端部を支持する軸受穴の偏芯量を測定するガイドベーン偏芯量測定方法であって、一方の軸受穴に対して同心上に、
前記軸受穴の上部に板状の第1の測定基体を装着し、下部に板状の第2の測定基体を装着する測定基体配設ステップと、前記
第1の測定基体と前記第2の測定基体との同心上に、他方の軸受穴側に延びる測定棒を軸心周りに回転自在に配設する測定棒配設ステップと、前記測定棒の前記他方の軸受穴側に測定手段を配設する測定手段配設ステップと、前記測定基体配設ステップと前記測定棒配設ステップと前記測定手段配設ステップの後に、前記測定棒を回転させて、前記測定手段によって前記他方の軸受穴の内周面までの距離を複数測定する測定ステップと、を備えることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項5に記載のガイドベーン偏芯量測定方法であって、前記測定基体配設ステップは、前記第1の測定基体及び前記第2の測定基体に設けられた前記軸受穴に挿入される挿入板を、前記軸受穴の内径に応じて交換するステップを含む、ことを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項5または6に記載のガイドベーン偏芯量測定方法であって、前記測定棒配設ステップは、前記第1の測定基体及び前記第2の測定基体に支持される第1の測定棒に、前記軸受穴間の距離に応じて第2の測定棒を連結するステップを含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、
5の発明によれば、一方の軸受穴に対して
板状の第1の測定基体及び第2の測定基体を同心上に配設するだけで、この測定基体内に同心上に配設された測定棒が、一方の軸受穴と同心上に配設される。このため、測定棒の軸心位置・傾きを調整する必要がなく、しかも、測定棒と一方の軸受穴とが同心上に位置するため(ズレがないため)、測定手段による測定結果を補正する必要がない。この結果、測定棒を回転させて、測定手段によって他方の軸受穴の内周面までの距離を複数箇所測定するだけで、正確かつ容易に2つの軸受穴の偏芯量、つまりガイドベーンの偏芯量を測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の実施の形態に係るガイドベーン偏芯量測定装置を示す正面図(一部断面図)である。
【
図5】従来の測定装置を示す正面図(一部断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
図1は、この発明の実施の形態に係るガイドベーン偏芯量測定装置1を示す正面図であり、
図2は、
図1のA1部拡大図、
図3は、
図1のA2部拡大図である。このガイドベーン偏芯量測定装置1は、水車のガイドベーンのベーン軸の両端部を支持する軸受穴102、104の相対的な偏芯量・ズレ量を測定することで、ガイドベーンの偏芯量を測定する装置であり、主として、測定基体2と、測定棒3と、ダイヤルゲージ(測定手段)4とを備えている。ここで、水車上カバー101の上部軸受穴102に上部軸受が装着されて、ベーン軸の上端部が回転自在に支持され、水車下カバー103の下部軸受穴104に下部軸受が装着されて、ベーン軸の下端部が回転自在に支持されるものとする。
【0018】
測定基体2は、上部軸受穴(一方の軸受穴)102に対して同心上に、着脱自在に配設可能な筒状体である。すなわち、この実施の形態では、
図2に示すように、上部軸受穴102の上部102aに装着される第1の測定基体5と、上部軸受穴102の下部102bに装着される第2の測定基体6とから構成されている。ここで、第1の測定基体5と第2の測定基体6とは同等の構成であるため、主として第1の測定基体5について、次に説明する。
【0019】
第1の測定基体5は、平たい円環状の挿入板51と、第1のボルト54で挿入板51の上面(反挿入側の面)に取り付けた平板状の取付板52とを備えている。挿入板51の外径は、上部軸受穴102(上部102a)の内径と同径に設定されている。取付板52は、
図4に示すように、平面形状が略菱形で、長手方向の両端部に切り欠き状のボルト挿入穴52bが形成されている。また、
図2に示すように、取付板52の中心部に、挿入板51と同心のベアリング穴52aが形成され、このベアリング穴52aにベアリング53が装着されている。そして、挿入板51を上部軸受穴102の上部102aに挿入すると、ベアリング53(第1の測定基体5)の軸心が上部軸受穴102の軸心Cに一致するようになっている。
【0020】
一方、上部軸受穴102と垂直な水車上カバー101の上面部101aには、ネジ穴101bが形成されている。そして、ボルト挿入穴52bに第2のボルト55を挿入してネジ穴101bに締め込むことで、第1の測定基体5が取り付けられ、第2のボルト55を緩め取ることで、第1の測定基体5を取り外せるようになっている。このようにして第1の測定基体5が、上部軸受穴102に対して同心上に配設可能で、かつ着脱自在となっている。
【0021】
また、取付板52の上面(反挿入板51側の面)には、ベアリング53が抜けるのを防止するための押え板56が、第3のボルト57を介して着脱自在に取り付けられている。
【0022】
第2の測定基体6も同様に、挿入板61と取付板62とベアリング63等を備え、挿入板61を上部軸受穴102の下部102bに挿入すると、ベアリング63(第2の測定基体6)の軸心が上部軸受穴102の軸心Cに一致するようになっている。このようにして、上部軸受穴102の上部102aに取り付けられた第1の測定基体5と、上部軸受穴102の下部102bに取り付けられた第2の測定基体6とからなる、測定基体2の軸心が上部軸受穴102の軸心Cに一致するようになっている。
【0023】
測定棒3は、測定基体2の筒内に同心上に配設され、下部軸受穴(他方の軸受穴)104側に延びて軸心周りに回転自在な丸棒である。すなわち、1つの第1の測定棒31と複数の第2の測定棒32とから構成されている。
【0024】
第1の測定棒31は、
図2に示すように、一端側(上端側)が第1の測定基体5のベアリング53で回転自在に支持され、他端側(下端側)が第2の測定基体6のベアリング63で回転自在に支持されている。ここで、第1の測定棒31の上端側の外径は、下端側の外径よりも大きく設定されている。
【0025】
また、第1の測定棒31の上端側のベアリング53の上部には、ネジ目31aが形成され、このネジ目31aに螺合された筒状の第1のストッパ33が、ベアリング53に当接している。さらに、第1の測定棒31の上端部には、横穴31bが形成され、この横穴31bにピンなどを挿入することで、測定棒3を容易に回転させられるようになっている。
【0026】
一方、第1の測定棒31の下端側には、筒状の第2のストッパ34が、下端側のベアリング63に当接するように装着されている。また、第1の測定棒31の下端面には、第1の測定棒31と同軸のネジ穴31cが形成されている。
【0027】
第2の測定棒32の一端面には、第2の測定棒32と同軸の連結ネジ32aが形成され、第2の測定棒32の他端面には、第2の測定棒32と同軸のネジ穴(図示せず)が形成されている。そして、連結ネジ32aを第1の測定棒31のネジ穴31cに締め付けることで、第1の測定棒31と第2の測定棒32とが同心上に連結され、第2の測定棒32のネジ穴に隣接する第2の測定棒32の連結ネジ32aを締め付けることで、第2の測定棒32同士が同心上に連結される。このようにして、第1の測定棒31と複数の第2の測定棒32とを連結することで、軸心が一直線状に延びる測定棒3が構成されている。
【0028】
このような測定棒3は、第1の測定棒31がベアリング53、63で回転自在に支持されて、下部軸受穴104側に真っ直ぐ延びるため、測定棒3の軸心が、測定基体2の軸心つまり上部軸受穴102の軸心Cと一致し、かつ、軸心周りに回転自在となっている。また、第1の測定棒31が2つのベアリング53、63内(筒内)を貫通することで、測定棒3が測定基体2の筒内に配設されている。ここで、測定棒3の長さは、後述するようにしてダイヤルゲージ4によって下部軸受穴104の測定が行えるように、設定されている。
【0029】
ダイヤルゲージ4は、測定棒3の下部軸受穴104側に配設され、下部軸受穴104の内周面までの距離を測定する測定器である。すなわち、
図1に示すように、最下端(下部軸受穴104側)の第2の測定棒32に、下部軸受穴104側に真っ直ぐ延びるゲージ用棒41が連結され、このゲージ用棒41の下部軸受穴104側に、
図3に示すように、ダイヤルゲージ4が配設されている。
【0030】
ダイヤルゲージ4は、通常のダイヤルゲージと同等の構成で測定子42を備え、この測定子42の先端を下部軸受穴104の内周面に接触させることで、接触点までの距離を測定する。ここで、ダイヤルゲージ4は、短い距離しか測定できないため、測定棒3の軸心から接触点までの絶対距離を測定するものではなく、後述するようにして距離の変化・バラツキを測定する。また、ダイヤルゲージ4は、測定値を表示する表示部を備えるとともに、測定値をパーソナルコンピュータなどに出力可能な出力ポートを備えている。さらに、測定値をゼロ値にセット可能なリセットボタンを備えている。
【0031】
次に、このような構成のガイドベーン偏芯量測定装置1の作用および、ガイドベーン偏芯量測定装置1によるガイドベーン偏芯量測定方法について説明する。
【0032】
まず、ガイドベーン偏芯量測定装置1を設置する。すなわち、測定基体配設ステップとして、上部軸受穴102に対して同心上に測定基体2を配設する。具体的には、上記のように、挿入板51を上部軸受穴102の上部102aに挿入して、第2のボルト55を締め込んで第1の測定基体5を配設し、挿入板61を上部軸受穴102の下部102bに挿入して、ボルト(第2のボルト55と同等のボルト)を締め込んで第2の測定基体6を配設する。
【0033】
また、測定棒配設ステップとして、測定基体2の筒内に同心上に測定棒3を軸心周りに回転自在に配設する。具体的には、上記のように、第1の測定棒31をベアリング53、63で回転自在に支持し、第1の測定棒31に複数の第2の測定棒32を連結する。
【0034】
さらに、測定手段配設ステップとして、測定棒3の下部軸受穴104側にダイヤルゲージ4を配設する。具体的には、上記のように、最下端の第2の測定棒32にゲージ用棒41を連結するとともに、ゲージ用棒41の下部軸受穴104側にダイヤルゲージ4を取り付ける。そして、ダイヤルゲージ4の測定子42の先端を下部軸受穴104の内周面に接触させる。
【0035】
このような測定基体配設ステップ、測定棒配設ステップおよび測定手段配設ステップの順序は変わってもよい。例えば、測定基体2の筒内に第1の測定棒31を配設した後、つまり、第1の測定棒31をベアリング53、63で支持した後に、測定基体2を上部軸受穴102に配設してもよい。また、第2の測定棒32にダイヤルゲージ4を配設した後に、第2の測定棒32を第1の測定棒31に連結してもよい。
【0036】
次に、測定ステップとして、測定者Mが測定棒3を回転させて、ダイヤルゲージ4によって下部軸受穴104の内周面までの距離を複数測定する。すなわち、最初に測定子42を下部軸受穴104の内周面に接触させた接触点を基準点とし、ダイヤルゲージ4の測定値をゼロ値にセットする。次に、測定棒3を90°回転させてダイヤルゲージ4の測定値を読み取る。このとき、下部軸受穴104の内周面の形状、位置に応じて、測定子42が動いて(首振りや進退動して)ダイヤルゲージ4の測定値が変化したり、測定値が同値となったりする。そして、このような測定を、この実施の形態では、90°毎に4箇所行うものである。
【0037】
以上のように、本ガイドベーン偏芯量測定装置1および本ガイドベーン偏芯量測定方法によれば、上部軸受穴102に対して測定基体2を同心上に配設するだけで、この測定基体2内に同心上に配設された測定棒3が、上部軸受穴102と同心上に配設される。このため、測定棒3の軸心位置・傾きを調整する必要がなく、しかも、測定棒3と上部軸受穴102とが同心上に位置するため、ダイヤルゲージ4による測定値を補正する必要がない。すなわち、ダイヤルゲージ4の回転中心である測定棒3の軸心が、上部軸受穴102の軸心Cと一致しており、ダイヤルゲージ4による測定値が、上部軸受穴102の軸心Cから下部軸受穴104の内周面までの正しい距離となるめ、補正する必要がない。
【0038】
さらには、挿入板51、61を上部軸受穴102に挿入するだけで、測定基体2を上部軸受穴102に容易かつ正確に同心上に配設することができる。そして、これらの結果、測定者Mは、測定棒3を回転させて、ダイヤルゲージ4の測定値を読み取るだけで、正確かつ容易に2つの軸受穴102、104の偏芯量、つまりガイドベーンの偏芯量を測定することが可能となる。
【0039】
また、上部軸受穴102の上部102aに装着される第1の測定基体5と、上部軸受穴102の下部102bに装着される第2の測定基体6とで測定基体2を構成して、測定棒3を上部軸受穴102の上下部で支持しているため、測定棒3の軸心を上部軸受穴102の軸心Cにより安定して(真っ直ぐに)一致させることが可能となる。さらに、測定棒3を1つの第1の測定棒31と複数の第2の測定棒32とで構成しているため、それぞれの連結を解除することで、保管や運搬などを容易に行うことができる。
【0040】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、上部軸受穴102に測定基体2を配設して、ダイヤルゲージ4で下部軸受穴104の内周面の位置、形状を測定しているが、下部軸受穴104に測定基体2を配設して、ダイヤルゲージ4で上部軸受穴102の内周面の位置、形状を測定するようにしてもよい。
【0041】
また、測定手段をダイヤルゲージ4で構成しているが、その他の測定器(レーザ距離計など)で構成してもよく、また、下部軸受穴104の内周面までの絶対距離を測定してもよい。さらに、ダイヤルゲージ4で4箇所の測定点を測定しているが、下部軸受穴104の内周面全周を連続的に測定してもよい。
【0042】
一方、測定棒3を第1の測定棒31と第2の測定棒32とで構成しているが、一体で構成してもよい。同様に、測定基体2を第1の測定基体5と第2の測定基体6の2体で構成しているが、一体で構成してもよい。
【0043】
また、外径が異なる挿入板51、61を複数備え、上部軸受穴102の内径に応じて挿入板51、61を変えるだけで、1つのガイドベーン偏芯量測定装置1で軸径が異なる複数のガイドベーンに対応できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 ガイドベーン偏芯量測定装置
2 測定基体
3 測定棒
4 ダイヤルゲージ(測定手段)
5 第1の測定基体
6 第2の測定基体
102 上部軸受穴(一方の軸受穴)
104 下部軸受穴(他方の軸受穴)