特許第6359312号(P6359312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359312
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】X線診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20180709BHJP
   A61B 6/12 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   A61B6/00 350P
   A61B6/12
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-66768(P2014-66768)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-188532(P2015-188532A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今川 和夫
(72)【発明者】
【氏名】坂口 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】材木 隆二
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−505766(JP,A)
【文献】 特表2008−516722(JP,A)
【文献】 特表2008−514265(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0177277(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対してX線を発生するX線発生部と、
前記X線発生部と対向配置され、前記X線を検出するX線検出部と、
前記X線に基づいて、複数フレームの透視画像を順次生成する透視画像生成部と、
予め得られている前記被検体の造影ボリュームデータに基づいて部分領域ボリューム内の石灰化領域に関する石灰化領域画像を生成する石灰化領域画像生成手段と、
前記複数フレームの透視画像上の石灰化領域を順次検出する検出部と、
前記複数フレームの透視画像の前記石灰化領域の位置に、生成された石灰化領域画像を順次重畳して表示部に順次表示させる表示制御部と、
を有するX線診断装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記複数フレームの透視画像の各透視画像上の複数の部分領域について前記石灰化領域を検出する、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記各透視画像上の血管の屈曲率が閾値よりも大きい前記複数の部分領域について前記石灰化領域を検出する、
請求項2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記被検体に挿入された医療器具の位置と、前記石灰化領域の位置とに基づいて、ユーザに対して報知を行う報知部を更に有する、
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記報知部は、前記医療器具の位置と前記石灰化領域の位置とが所定の距離未満になったときに前記報知を行う、
請求項4に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記医療器具の位置は、前記医療器具に備わる位置センサに基づいて検出される、
請求項5に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記報知部は、音または前記表示部による表示によって前記報知を行う、
請求項4乃至6のうちいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記石灰化領域画像における石灰化の範囲又は厚みを示す情報を前記複数フレームの透視画像上に順次重畳して前記表示部に順次表示させる、
請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記石灰化領域画像を、前記複数フレームの透視画像上の前記石灰化領域を含む部分領域に順次位置合せする位置合せ部を更に有し、
前記表示制御部は、前記複数フレームの透視画像の前記石灰化領域の位置に、位置合せされた前記石灰化領域画像を順次重畳して前記表示部に順次表示させる、
請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載のX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様としての実施形態は、X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カテーテルを用いた大動脈弁置換(TAVI:trans−catheter aortic valve implantation、又はTAVR:trans−catheter aortic valve replacement)手技が注目されている。大動脈弁置換手技は、例えば、X線診断装置を備えた手技室で行なわれる。すなわち、大動脈弁置換手技は、X線診断装置によりリアルタイムに収集される透視画像を観察しながら被検体の心臓内に人工弁を留置する技術である。
【0003】
大動脈弁置換手技では、透視画像を参照しながら人工弁を正確な位置に留置することが重要である。具体的には、人工弁の下端が本来の弁の底よりも下側となり、人工弁の上端が本来の弁のLeaflet先端よりも上でかつ冠動脈(coronary)よりも下となるように人工弁を留置することが目標となる。
【0004】
被検体の造影画像及び透視画像に基づく合成画像を表示させる技術が開示される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−158372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大動脈弁置換手技において、大動脈壁に石灰化部位が存在する場合、カテーテル進行時に、カテーテル先端が石灰化部位と接触することがある。カテーテル先頭端が石灰化部位と接触すると、大動脈壁から石灰化部位が剥離して大動脈内を流れ、脳梗塞が合併症として起きてしまう。
【0007】
また、カテーテル先頭端の石灰化部位との接触を避けるには、術者側に適切なリアルタイム画像を表示する必要があるが、従来技術では、骨などをランドマークとして、リアルタイムの透視画像に造影画像の全体をフュージョン(合成)した画像を表示していた。この従来の合成画像によると、心臓の拍動によって動く、透視画像上の大動脈位置と、造影画像上の大動脈位置との間にずれが発生するので、合成画像を見ながらカテーテル先頭端の石灰化部位との接触を避けることは非常に困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係るX線診断装置は、上述した課題を解決するために、被検体に対してX線を発生するX線発生部と、前記X線発生部と対向配置され、前記X線を検出するX線検出部と、前記X線に基づいて、複数フレームの透視画像を順次生成する透視画像生成部と、予め得られている前記被検体の造影ボリュームデータに基づいて部分領域ボリューム内の石灰化領域に関する石灰化領域画像を生成する石灰化領域画像生成手段と、前記複数フレームの透視画像上の石灰化領域を順次検出する検出部と、前記複数フレームの透視画像の前記石灰化領域の位置に、生成された前記石灰化領域画像を順次重畳して表示部に順次表示させる表示制御部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るX線診断装置の構成を示す概略図。
図2】天井走行式Cアームを備える場合の、本実施形態に係るX線診断装置の外観構成を示す斜視図。
図3】本実施形態に係るX線診断装置の機能を示すブロック図。
図4】造影ボリュームの一例を示す図。
図5】心臓の拡張末期における透視画像の一例を示す図。
図6】心臓の収縮末期における透視画像の一例を示す図。
図7】石灰化領域画像の一例を示す図。
図8】従来技術によって拡張末期の透視画像に位置合わせされる胸部造影画像を示す図。
図9】従来技術によって収縮末期の透視画像に位置合わせされる胸部造影画像を示す図。
図10】本実施形態に係る位置合わせ手段によって拡張末期の透視画像の部分領域に位置合わせされる石灰化領域画像を示す図。
図11】本実施形態に係る位置合わせ手段によって収縮末期の透視画像の部分領域に位置合わせされる石灰化領域画像を示す図。
図12】本実施形態に係る表示制御手段によって表示される、拡張末期の透視画像に基づく合成画像の一例を示す図。
図13】本実施形態に係る表示制御手段によって表示される、収縮末期の透視画像に基づく合成画像の一例を示す図。
図14】本実施形態に係るX線診断装置の動作を示すフローチャート。
図15】本実施形態に係るX線診断装置の動作を示すフローチャート。
図16】特性情報が合成された合成画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係るX線診断装置について、添付図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るX線診断装置の構成を示す概略図である。図2は、天井走行式Cアームを備える場合の、本実施形態に係るX線診断装置の外観構成を示す斜視図である。
【0013】
図1及び図2は、カテーテルを用いた手技、例えば、大動脈弁置換(TAVI又はTAVR)手技を行なうための本実施形態のX線診断装置1を示す。X線診断装置1は、大動脈弁置換手技に限定されるものではなく、カテーテル先頭端と石灰化部位との接触を回避すべき手技、例えば、ステントグラフト留置術であってもよい。
【0014】
X線診断装置1は、大きくは、架台装置2、寝台装置3、コントローラ4、画像処理装置(DF:digital fluorography装置)5から構成される。架台装置2、寝台装置3、及びコントローラ4は、一般的には、手技室(検査・治療室)に設置される一方、画像処理装置5は、手技室に隣接する制御室に設置される。
【0015】
架台装置2は、X線照射装置21、X線検出装置22、高電圧発生装置23、及びCアーム24を設ける。
【0016】
X線照射装置21は、Cアーム24の一端に設けられる。X線照射装置21は、コントローラ4による制御によって、前後動が可能なように設けられる。X線照射装置21は、図2に示すように、X線管(X線源)211及び可動絞り装置212を設ける。
【0017】
X線管211は、高電圧発生装置23から高電圧電力の供給を受けて、高電圧電力の条件に応じてX線を発生する。
【0018】
可動絞り装置212は、X線管211のX線照射口で、X線を遮蔽する物質から構成された絞り羽根を移動可能に支持する。なお、X線管211の前面に、X線管211によって発生されたX線の線質を調整する線質調整フィルタ(図示しない)を備えてもよい。
【0019】
X線検出装置22は、Cアーム24の他端であってX線照射装置21に対向するように設けられる。X線検出装置22は、コントローラ4による制御によって、前後動が可能なように設けられる。X線検出装置22は、FPD(平面検出器:flat panel detector)221及びA/D(analog to degital)変換回路222を備える。
【0020】
FPD221は、二次元に配列された複数の検出素子を有する。FPD221の各検出素子間は、走査線と信号線とが直交するように配設される。なお、FPD221の前面に、グリッド(図示しない)が備えられてもよい。グリッドは、FPD221に入射する散乱線を吸収してX線画像のコントラストを改善するために、X線吸収の大きい鉛等によって形成されるグリッド板と透過しやすいアルミニウムや木材等とが交互に配置される。
【0021】
A/D変換回路222は、FPD221から出力される時系列的なアナログ信号(ビデオ信号)の投影データをデジタル信号に変換し、画像処理装置5に出力する。
【0022】
なお、X線検出装置22は、I.I.(image intensifier)−TV系であってもよい。I.I.−TV系では、被検体Sを透過したX線及び直接入射されるX線を可視光に変換し、さらに、光−電子−光変換の過程で輝度の倍増を行なって感度のよい投影データを形成させ、CCD(charge coupled device)撮像素子を用いて光学的な投影データを電気信号に変換する。
【0023】
高電圧発生装置23は、コントローラ4の制御に従って、X線照射装置21のX線管211に高電圧電力を供給可能である。
【0024】
Cアーム24は、X線照射装置21とX線検出装置22とを、被検体Sを中心に対向配置させる。Cアーム24は、コントローラ4による制御によって、X線照射装置21及びX線検出装置22を一体としてCアーム24の円弧方向に円弧動させる。なお、X線診断装置1がCアーム24を備え、Cアーム24がX線照射装置21及びX線検出装置22を一体として動作させる構成を例にとって説明するが、その場合に限定されるものではない。例えば、X線診断装置1がCアーム24を備えずに、X線照射装置21及びX線検出装置22をそれぞれ独立して動作させる構成であってもよい。
【0025】
寝台装置3は、床面に支持され、天板(カテーテルテーブル)31を支持する。寝台装置3は、コントローラ4による制御によって、天板31をスライド(X、Z軸方向)動、上下(Y軸方向)動及びローリングさせる。天板31は、被検体Sを載置可能である。なお、架台装置2は、X線照射装置21が天板31の下方に位置するアンダーチューブタイプである場合を説明するが、X線照射装置21が天板31の上方に位置するオーバーチューブタイプである場合であってもよい。
【0026】
コントローラ4は、図示しないCPU(central processing unit)及びメモリを含んでいる。コントローラ4は、画像処理装置5の制御に従って、位置合わせのために、架台装置2のX線照射装置21、及びX線検出装置22、及びCアーム24の駆動と、寝台装置3の駆動とを制御する。また、コントローラ4は、画像処理装置5の制御に従って、手術用のX線撮影(透視)のために、X線照射装置21、X線検出装置22、及び高電圧発生装置23の動作を制御する。
【0027】
画像処理装置5は、コンピュータをベースとして構成されており、X線診断装置1全体の動作制御や、架台装置2によって取得された複数のX線画像(X線画像データ)に関する画像処理等を行なう装置である。画像処理装置5は、システム制御部51、X線画像生成部52、X線画像処理部53、X線画像記憶部54、表示部55、入力部56、IF(interface)57、及び部分領域ボリューム記憶部58を有する。
【0028】
システム制御部51は、図示しないCPU及びメモリを含んでいる。システム制御部51は、コントローラ4や、各部52乃至58を制御する。
【0029】
X線画像生成部52は、システム制御部51の制御によって、架台装置2のA/D変換回路222から出力された投影データに対して対数変換処理(LOG処理)を行なって必要に応じて加算処理して、X線画像を生成する。
【0030】
X線画像処理部53は、システム制御部51の制御によって、X線画像生成部52によって生成されたX線画像に対して画像処理を施す。画像処理としては、データに対する拡大/階調/空間フィルタ処理や、時系列に蓄積されたデータの最小値/最大値トレース処理、及びノイズを除去するための加算処理等が挙げられる。なお、X線画像処理部53による画像処理後のデータは、X線画像記憶部54に記憶される。
【0031】
表示部55は、液晶ディスプレイやCRT(cathode ray tube)等によって構成される。表示部55は、システム制御部51による制御の下、ビデオ信号に基づいて、後述する各種画像データを種々のパラメータの文字情報や目盛等とともに表示する。
【0032】
入力部56は、術者等の操作者によって操作が可能なキーボード及びマウス等であり、操作に従った入力信号がシステム制御部51に送られる。
【0033】
IF57は、パラレル接続仕様やシリアル接続仕様に合わせたコネクタによって構成される。IF57は、各規格に応じた通信制御を行ない、電話回線を通じてネットワークNに接続することができる機能を有しており、これにより、画像処理装置5をネットワークN網に接続させる。
【0034】
部分領域ボリューム記憶部58は、MR血管造影法(MRA)や、CT血管造影法(CTA)によって生成される、後述する石灰化領域を記憶する。
【0035】
図3は、本実施形態に係るX線診断装置1の機能を示すブロック図である。
【0036】
図1に示すシステム制御部51がプログラムを実行することによって、図3に示すようにX線診断装置1は、造影ボリューム取得手段61、部分領域ボリューム抽出手段62、X線透視実行手段71、部分領域画像生成手段72、石灰化領域画像生成手段73、対応付け手段74、位置合わせ手段75、及び表示制御手段76として機能する。なお、X線診断装置1を構成する手段61及び62,71乃至76は、プログラムを実行することによって機能するものとして説明したが、その場合に限定されるものではない。X線診断装置1を構成する手段61及び62,71乃至76の全部又は一部は、X線診断装置1にハードウェアとして備えられるものであってもよい。
【0037】
なお、X線撮影装置1を構成する手段61及び62は、手術用のX線透視前に予め機能するものであるのに対し、X線撮影装置1を構成する手段71乃至76は、手術用のX線透視中に機能するものである。
【0038】
造影ボリューム取得手段61は、IF57を介してネットワークNから、被検体S(図1に図示)の大動脈(下行大動脈、大動脈弓、及び上行大動脈などを含む)を含む胸部の造影ボリューム(造影ボリュームデータ)を取得する機能を有する。例えば、造影ボリューム取得手段61は、MR血管造影法(MRA)や、CT血管造影法(CTA)によって生成される造影ボリュームを取得する。
【0039】
図4は、造影ボリュームの一例を示す図である。
【0040】
図4は、造影ボリュームを2次元的に示す図である。図4に示すように、造影ボリュームは、心臓領域Hと、心臓領域H上部の大動脈の大動脈弓領域Bと、大動脈弓領域Bから分岐する分岐動脈領域としてのBCA領域Pと、同じく分岐動脈としてのLCA領域Qと、同じく分岐動脈としてのLSCA領域Rとを含む。
【0041】
図3の説明に戻って、部分領域ボリューム抽出手段62は、造影ボリューム取得手段61によって取得された造影ボリュームに基づいて、部分領域に関する部分領域ボリューム(部分領域ボリュームデータ)を抽出する機能を有する。また、部分領域ボリューム抽出手段62は、部分領域ボリュームを部分領域ボリューム記憶部58に登録する機能を有する。
【0042】
部分領域ボリューム抽出手段62は、公知技術や、表示部55に表示された、造影ボリュームに基づく画像上で、入力部56(図1に図示)によって入力された領域に基づいて部分領域ボリュームを抽出する。部分領域ボリューム抽出手段62は、造影ボリュームに基づいて、大動脈弓領域B(図4に図示)の屈曲率が閾値より高く石灰化し易い高屈曲率領域を部分領域F1,F2(図4に図示)とすることが好適である。
【0043】
X線透視実行手段71は、架台装置2の天板31に被検体S(ともに図1に図示)を載置させた後、入力部56(図1に図示)から入力された指示に従って、コントローラ4を介して架台装置2及び寝台装置3(ともに図1に図示)を駆動させて位置合わせする機能を有する。また、X線透視実行手段71は、X線照射装置21、X線検出装置22、及び高電圧発生装置23(ともに図1に図示)を動作させることで、被検体Sの大動脈を含む胸部に対して、手術用のX線透視を実行させてX線画像処理部53を介して複数フレーム(各第t(t=1,2,…,T)フレーム)の透視画像を収集する機能を有する。X線画像処理部53によって生成された複数フレームの透視画像は、X線画像記憶部54に記憶される。
【0044】
図5は、心臓の拡張末期における透視画像の一例を示す図である。図6は、心臓の収縮末期における透視画像の一例を示す図である。
【0045】
図5は、第1〜第Tフレームのうち、心臓の拡張末期に相当する第mフレームの心臓領域H[m]と、心臓領域H[m]上部の大動脈の大動脈弓領域B[m]と、大動脈弓領域B[m]から分岐する分岐動脈領域としてのBCA領域P[m]と、同じく分岐動脈としてのLCA領域Q[m]と、同じく分岐動脈としてのLSCA領域R[m]とを含む。また、大動脈弓領域B[m]の内壁面には、高輝度の石灰化領域C1[m]〜C4[m]が発生している。
【0046】
図6は、第1〜第Tフレームのうち、心臓の収縮末期に相当する第nフレームの心臓領域H[n]と、心臓領域H[n]上部の大動脈の大動脈弓領域B[n]と、大動脈弓領域B[n]から分岐する分岐動脈領域としてのBCA領域P[n]と、同じく分岐動脈としてのLCA領域Q[n]と、同じく分岐動脈としてのLSCA領域R[n]とを含む。また、大動脈弓領域B[n]の内壁面には、高輝度の石灰化領域C1[n]〜C4[n]が発生している。
【0047】
なお、図5及び図6に示す透視画像は、図4に示す造影ボリュームに基づく画像と比較して、透視画像の石灰化領域C1[m]〜C4[m],C1[n]〜C4[n]は視認されにくい。
【0048】
図3の説明に戻って、部分領域画像生成手段72は、部分領域ボリューム記憶部58に登録された部分領域ボリュームに基づいて、画像(部分領域画像)を生成する機能を有する。なお、部分領域画像は、部分領域ボリュームに基づいて、部分領域画像を2次元画像又は3次元画像として生成する。2次元画像は、部分領域ボリュームに基づく、X線透視実行手段71によるX線透視の投影平面に平行な面における画像である断面画像(MPR(multi−planar reconstruction)を含む)画像である。3次元画像は、部分領域ボリュームに基づく、X線透視実行手段71によるX線透視の透視方向で透視投影した画像や、X線透視の投影平面に平行投影した画像である。
【0049】
石灰化領域画像生成手段73は、部分領域画像生成手段72によって生成された部分領域画像から石灰化領域が抽出された画像である石灰化領域画像を生成する機能を有する。
【0050】
図7は、石灰化領域画像の一例を示す図である。
【0051】
図7は、図4に示す造影ボリューム内の部分領域(高屈曲率領域)F1,F2における2個の石灰化領域画像を示す。部分領域F1の石灰化領域画像は、高輝度の2個の石灰化領域C1,C2を含む。部分領域F2の石灰化領域画像は、高輝度の2個の石灰化領域C3,C4を含む。
【0052】
図3の説明に戻って、対応付け手段74は、X線透視実行手段71によって収集された各フレームの透視画像上の石灰化領域を、閾値処理などを用いて抽出する機能を有する。また、対応付け手段74は、各フレームの透視画像の部分領域(高屈曲率領域)内の石灰化領域に、石灰化領域画像生成手段73によって抽出された石灰化領域画像上の石灰化領域を対応付ける(リンクさせる)機能を有する。対応付け手段74は、各フレームの透視画像の部分領域内の石灰化領域に、石灰化領域画像上の石灰化領域を、大きさ、形状、及び相対位置関係などに基づいて対応付ける。例えば、第mフレームの透視画像の部分領域内の石灰化領域C1[m](図5に図示)や第nフレームの透視画像の部分領域内の石灰化領域C1[n](図6に図示)に、石灰化領域画像上の石灰化領域C1(図7に図示)が対応付けられる。
【0053】
位置合わせ手段75は、X線透視実行手段71によって収集された各フレームの透視画像の部分領域内の石灰化領域の位置と、それに対応付けられた、石灰化領域画像上の石灰化領域の位置とに基づいて、透視画像の部分領域(高屈曲率領域)に、石灰化領域画像を位置合わせする機能を有する。位置合わせ手段75は、各部分領域について、石灰化領域画像上の石灰化領域が透視画像の部分領域内の石灰化領域に重なるように、石灰化領域画像を透視画像の部分領域に対して位置合わせする。
【0054】
ここで、従来技術によれば、両画像上の骨などのランドマークを基準として両画像の全体が位置合わせされていた。
【0055】
図8は、従来技術によって拡張末期の透視画像に位置合わせされる胸部造影画像を示す図である。図9は、従来技術によって収縮末期の透視画像に位置合わせされる胸部造影画像を示す図である。
【0056】
図8は、図5に示す第mフレームの透視画像に、胸部造影画像の全体を、骨をランドマークとして位置合わせした後の画像を示す。図9は、図6に示す第nフレームの透視画像に、胸部造影画像の全体を、骨をランドマークとして位置合わせした後の画像を示す。
【0057】
図8に示すように、胸部造影画像の位相が拡張末期のものではない場合、石灰化領域C1[m],C1の位置、石灰化領域C2[m],C2の位置、石灰化領域C3[m],C3の位置、石灰化領域C4[m],C4の位置はそれぞれ一致しない。
【0058】
また、図9に示すように、胸部造影画像の位相が収縮末期のものではない場合、石灰化領域C1[n],C1の位置、石灰化領域C2[n],C2の位置、石灰化領域C3[n],C3の位置、石灰化領域C4[n],C4の位置はそれぞれ一致しない。
【0059】
図10は、本実施形態に係る位置合わせ手段75によって拡張末期の透視画像の部分領域に位置合わせされる石灰化領域画像を示す図である。図11は、本実施形態に係る位置合わせ手段75によって収縮末期の透視画像の部分領域に位置合わせされる石灰化領域画像を示す図である。
【0060】
図10は、図5に示す拡張末期の透視画像の部分領域F1内の石灰化領域C1[m],C2[m]と、石灰化領域画像上の石灰化領域C1,C2とに基づいて、透視画像の部分領域F1に対して石灰化領域画像が位置合わせされ、また、拡張末期の透視画像の部分領域内の石灰化領域C3[m],C4[m]と、石灰化領域画像上の石灰化領域C3,C4とに基づいて、透視画像の部分領域F2に対して石灰化領域画像が位置合わせされた後の画像を示す。
【0061】
図11は、図6に示す収縮末期における透視画像の部分領域F1内の石灰化領域C1[n],C2[n]と、石灰化領域画像上の石灰化領域C1,C2とに基づいて、透視画像の部分領域F1に対して石灰化領域画像が位置合わせされ、また、収縮末期における透視画像の部分領域F2内の石灰化領域C3[n],C4[n]と、石灰化領域画像上の石灰化領域C3,C4とに基づいて、透視画像の部分領域F2に対して石灰化領域画像が位置合わせされた後の画像を示す。
【0062】
図10に示すように、石灰化領域画像(図7に図示)の位相が拡張末期のものではない場合でも、対応する石灰化領域同士を基準として透視画像の部分領域に石灰化領域画像が位置合わせされるので、石灰化領域C1[m],C1の位置、石灰化領域C2[m],C2の位置、石灰化領域C3[m],C3の位置、石灰化領域C4[m],C4の位置はそれぞれ略一致するものとなる。
【0063】
また、図11に示すように、石灰化領域画像(図7に図示)の位相が収縮末期のものではない場合でも、対応する石灰化領域同士を基準として透視画像の部分領域に石灰化領域画像が位置合わせされるので、石灰化領域C1[n],C1の位置、石灰化領域C2[n],C2の位置、石灰化領域C3[n],C3の位置、石灰化領域C4[n],C4の位置はそれぞれ略一致するものとなる。
【0064】
図3の説明に戻って、表示制御手段76は、X線透視実行手段71によって収集された各フレームの透視画像の部分領域に、位置合わせ手段75によって位置合わせされた石灰化領域画像を合成した(重ね合わせた)合成画像を表示部55に表示させる機能を有する。合成画像は、透視画像に、リアルタイム同期で位置合わせされた石灰化領域画像を合成したものである。表示制御手段76は、合成画像を種々のパラメータの文字情報や目盛等と共に合成して、ビデオ信号として表示部55に出力する。
【0065】
従来技術を用いた表示によると、心臓の拍動に従って周期的に動く石灰化領域C1[t]を含む透視画像(動画像)上に、固定の石灰化領域C1が配置された表示形態となる。一方で、本実施形態に係る表示制御手段76による表示によると、透視画像における、心臓の拍動に従って周期的に動く石灰化領域(部分領域)に、その動きに応じて配置された石灰化領域(石灰化領域画像)が配置された表示形態となる。
【0066】
図12は、本実施形態に係る表示制御手段76によって表示される、拡張末期の透視画像に基づく合成画像の一例を示す図である。図13は、本実施形態に係る表示制御手段76によって表示される、収縮末期の透視画像に基づく合成画像の一例を示す図である。
【0067】
大動脈弁置換手技において図12に示す合成画像が表示されることで、術者は、リアルタイムのカテーテルKの先頭端と、リアルタイム同期で位置合わせされた石灰化領域C3,C4との位置関係を把握しながらカテーテルKを進行させることができる。また、カテーテルKの進行が進むと、図13に示す合成画像が表示されることで、術者は、リアルタイムのカテーテルKの先頭端と、リアルタイム同期で位置合わせされた石灰化領域C1,C2との位置関係を把握しながらカテーテルKを進行させることができる。すなわち、大動脈弁置換手技において図12及び図13に示す合成画像が表示されることで、カテーテルKの先頭端が石灰化部位(石灰化領域C1,C2,C3,C4)と接触するリスクを抑えることができる。
【0068】
また、図3に示す表示制御手段76は、位置センサを備えたカテーテルの位置を検知し、リアルタイムで血管内を進行するカテーテルの位置と、石灰化領域画像上の各石灰化領域との距離が閾値以下又は未満となる場合に、術者に、警告を視覚的に又は聴覚的に報知する機能を有してもよい。
【0069】
続いて、本実施形態のX線診断装置1の動作について、図1図14、及び図15を用いて説明する。
【0070】
図14及び図15は、本実施形態に係るX線診断装置1の動作を示すフローチャートである。なお、図14に示すステップST1乃至ST3は、手術用のX線透視前のステップであるのに対し、図15に示すステップST11乃至ST17は、手術用のX線透視中のステップである。
【0071】
まず、図1に示すX線診断装置1は、図14に示すように、IF57を介してネットワークNから、被検体Sの大動脈を含む胸部の造影ボリューム(図4に図示)を取得する(ステップST1)。例えば、X線診断装置1は、MR血管造影法や、CT血管造影法によって生成される造影ボリュームを取得する。
【0072】
X線診断装置1は、ステップST1によって取得された造影ボリュームに基づいて、部分領域ボリューム(図7に図示)を抽出する(ステップST2)。また、X線診断装置1は、ステップST2によって抽出された部分領域ボリュームを部分領域ボリューム記憶部58に登録する(ステップST3)。
【0073】
図15に進んで、架台装置2の天板31に被検体Sを載置させた後、入力部56から入力された指示に従って、コントローラ4を介して架台装置2及び寝台装置3(ともに図1に図示)を駆動させて位置合わせされる。そして、X線診断装置1は、ステップST3(図14に図示)によって登録された部分領域ボリュームを取得し、部分領域ボリュームの部分領域内の石灰化領域に関する石灰化領域画像を生成する(ステップST11)。
【0074】
X線診断装置1は、透視画像の収集の開始指示があると、X線照射装置21、X線検出装置22、及び高電圧発生装置23を動作させることで、被検体Sの大動脈を含む胸部に対して、手術用のX線透視を開始して(ステップST12)、第tフレームの透視画像(図5及び図6に図示)を収集する(ステップST13)。そして、術者が被検体Sに対してカテーテルを挿入する手技、例えば、大動脈弁置換手技が開始される。
【0075】
X線診断装置1は、ステップST13によって収集された第tフレームの透視画像の部分領域内の石灰化領域に、ステップST11によって生成された石灰化領域画像上の石灰化領域を対応付ける(ステップST14)。そして、X線診断装置1は、ステップST13によって収集された第tフレームの透視画像の部分領域内の石灰化領域の位置と、ステップST14によって対応付けられた、石灰化領域画像上の石灰化領域の位置とに基づいて、第tフレームの透視画像の部分領域に、石灰化領域画像を位置合わせする(ステップST15)。
【0076】
X線診断装置1は、ステップST13によって収集された第tフレームの透視画像の部分領域に、ステップST15によって位置合わせされた石灰化領域画像を合成した(重ね合わせた)合成画像(図12及び図13に図示)を表示部55に表示させる(ステップST16)。
【0077】
X線診断装置1は、ステップST13による透視画像の収集の終了指示があるか否かを判断する(ステップST17)。ステップST17の判断にてYES、すなわち、透視画像の収集の終了指示があると判断される場合、X線診断装置1は、動作を終了させる。
【0078】
一方、ステップST17の判断にてNO、すなわち、透視画像の収集の終了指示がないと判断される場合、X線診断装置1は、次の第(t+1)フレームについて、透視画像を収集する(ステップST13)。
【0079】
本実施形態に係るX線診断装置1によると、各フレームの透視画像の部分領域に、フレームに応じた位置の石灰化領域を含む石灰化領域画像を合成するので、透視画像に心臓の拍動による位置変動が発生する場合に、位置変動に合わせた適切な石灰化領域画像を合成した画像を表示することができる。よって、本実施形態に係るX線診断装置1によると、石灰化部位との接触を避けるべきカテーテル進行手技を支援することができる。
【0080】
(変形例)
図3に示す部分領域ボリューム記憶部58によって登録されたデータは3次元データであるので、石灰化領域画像生成手段73は、石灰化領域画像上の各石灰化領域の3次元情報を算出することができる。石灰化領域画像生成手段73は、石灰化領域画像上の各石灰化領域の体積及び厚み(血管壁からの高さの最大)のうち少なくとも一方を示す特性情報を算出する。その場合、表示制御手段76は、合成画像にさらに特性情報を合成して表示部55に表示させる。その場合、表示制御手段76は、合成される特性情報を、矢印、文字表示、及び数値のうち少なくとも1とすればよい。
【0081】
また、表示制御手段76は、入力部55を介して切替操作があると、透視画像に合成される石灰化領域C1〜C4の情報を、特性情報に切り替えるように構成してもよい。
【0082】
図16は、特性情報が合成された合成画像の一例を示す図である。
【0083】
図16は、図12に示す合成画像に、さらに特性情報が合成された合成画像を示す。図16に示す合成画像の各石灰化領域の部分には、体積及び厚みを示す特性情報が合成されている。特性情報としての体積は、「2.1mm」及び「5.3mm」という数値で示される。特性情報としての厚みは、「1.2mm」及び「2.1mm」という数値で示される。
【0084】
また、特性情報としての厚みが矢印の長さで示される。さらに、各石灰化領域は3次元情報をもっているので、特性情報として奥行方向とその長さが示されてもよい。図16では、特性情報としての奥行方向とその長さを矢印の向き長さで示す。
【0085】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 X線診断装置
2 架台装置
21 X線照射装置
22 X線検出装置
4 コントローラ
5 画像処理装置
51 システム制御部
55 表示部
56 入力部
58 部分領域ボリューム記憶部
61 造影ボリューム取得手段
62 部分領域ボリューム抽出手段
71 X線透視実行手段
72 部分領域画像生成手段
73 石灰化領域画像生成手段
74 対応付け手段
75 位置合わせ処理手段
76 表示制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16