特許第6359320号(P6359320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジタの特許一覧

特許6359320マイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの連結構造
<>
  • 特許6359320-マイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの連結構造 図000002
  • 特許6359320-マイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの連結構造 図000003
  • 特許6359320-マイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの連結構造 図000004
  • 特許6359320-マイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの連結構造 図000005
  • 特許6359320-マイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの連結構造 図000006
  • 特許6359320-マイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの連結構造 図000007
  • 特許6359320-マイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの連結構造 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359320
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】マイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの連結構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/38 20060101AFI20180709BHJP
   E02D 5/24 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   E02D5/38
   E02D5/24 103
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-84269(P2014-84269)
(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公開番号】特開2015-203266(P2015-203266A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年3月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 輝勝
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 晃
(72)【発明者】
【氏名】茶山 和博
(72)【発明者】
【氏名】神谷 栄
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 哲也
(72)【発明者】
【氏名】稲冨 芳寿
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−071752(JP,A)
【文献】 特開平04−070414(JP,A)
【文献】 特開平08−326051(JP,A)
【文献】 特開平02−203095(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/041051(WO,A1)
【文献】 特開2010−037864(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01719841(EP,A1)
【文献】 三木健男 外3名,マイクロパイルによる橋梁基礎の補強に関する検討,「第3回耐震補強・補修技術、耐震診断技術に関するシンポジウム」講演論文集,土木学会,1999年 7月,頁87−94
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22〜 5/80
F16L 13/00〜 15/08
F16L 17/00〜 19/14
F16L 21/00〜 21/08
F16L 23/00〜 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの連結構造であって、
ケーシングセグメントの長手方向の端部の内周面に雌ねじが形成され、
外径がケーシングセグメントの外径以下の中空円筒形のケーシング継手が設けられ、
前記ケーシング継手に、ケーシングセグメントの内部に挿入されるロッドの先端の削孔ドリルの直径よりも大きい寸法の内径のドリル挿通孔が貫通形成され、
前記ケーシング継手の外周面に前記雌ねじに螺合可能な雄ねじが形成され、
隣り合うケーシングセグメントの長手方向の端部は、前記雌ねじに前記雄ねじが螺合されることで前記ケーシング継手により着脱可能に連結され、
前記ケーシング継手は、前記雄ねじが形成された雄ねじ部と、前記雄ねじ部の長手方向の両端に形成された鍔部とを有し、
隣り合うケーシングセグメントの長手方向の端部が、前記雌ねじに前記雄ねじが螺合されることで前記ケーシング継手により連結された状態で、前記鍔部は、前記ケーシングセグメントの内部に露出する前記雌ねじを覆う、
ことを特徴とするマイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの連結構造。
【請求項2】
マイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの連結構造であって、
ケーシングセグメントの長手方向の端部の内周面に雌ねじが形成され、
外径がケーシングセグメントの外径以下の中空円筒形のケーシング継手が設けられ、
前記ケーシング継手に、ケーシングセグメントの内部に挿入されるロッドの先端の削孔ドリルの直径よりも大きい寸法の内径のドリル挿通孔が貫通形成され、
前記ケーシング継手の外周面に前記雌ねじに螺合可能な雄ねじが形成され、
隣り合うケーシングセグメントの長手方向の端部は、前記雌ねじに前記雄ねじが螺合されることで前記ケーシング継手により着脱可能に連結され、
ケーシングセグメントの長手方向の端部の内周面に、隣り合うケーシングセグメントの長手方向の端部が前記雌ねじに前記雄ねじが螺合されることで前記ケーシング継手により連結された状態で、前記ケーシング継手の長手方向の端部に当接して前記ケーシングセグメントの内部に露出する前記雌ねじを覆い前記ドリル挿通孔の内径以上の寸法の内径の孔が貫通形成された筒状のストッパ部材が取着されている、
ことを特徴とするマイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの連結構造。
【請求項3】
前記雄ねじは、前記ケーシング継手の外周面で長手方向の両端にそれぞれ形成され、
前記ケーシング継手の外周面で長手方向の両端の前記雄ねじの間に、外径が前記雄ねじの外径以上でかつケーシングセグメントの外径以下のフランジが形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載のマイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロパイル工法は、直径300mm以下の小径の場所打ち杭の総称であり、コンパクトな施工設備で備足りること、狭い空間で施工できること、既設構造物の機能を停止することなく施工できることなどの理由から、既設構造物の耐震補強や地盤補強、斜面の安定化などをはじめとする様々な用途に用いられている。
マイクロパイル工法では、まず、先端外周部が外側削孔用カッターとされた1番目のケーシングセグメントの内部に、先端に削孔ドリルが取着された1番目のロッドを挿通させ、それら1番目のケーシングセグメントとロッドとを回転させつつ、また、水を注入しつつ削孔していく工程が行なわれる。
そして、所定の深さ毎に、ケーシングセグメントの端部に次のケーシングセグメントを着脱可能に連結して継ぎ足すと共に、ロッドの端部に次のロッドを着脱可能に連結して継ぎ足し、ケーシングセグメントとロッドとを回転させ、また、水を注入しつつ削孔していく工程が行なわれる。
【0003】
次に、削孔された孔が所定の深さに到達したならば、削孔ドリルをロッドと共にケーシングセグメントの内部から引き抜く工程が行なわれる。
次に、必要に応じて、補強材をケーシングの内部にケーシングの全長にわたって配設する。
次に、グラウト材を充填しつつケーシングセグメントを所定長さ引き抜く工程が行なわれる。
このようなマイクロパイル工法において、従来、ケーシングセグメントの連結は、ケーシングセグメントの外径よりも大きい外径の中空円筒形のケーシング継手を用いて行われている。
すなわち、隣り合うケーシングセグメントの外周面の雄ねじに、ケーシング継手の長手方向の両端の内周面の雌ねじを螺合することでケーシングセグメントの連結が行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4010383号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、従来のマイクロパイル工法では、削孔時に、ケーシングセグメントの連結部においてケーシングセグメントの外周面から突出するケーシング継手が抵抗となり、削孔効率を高める上で不利があった。
また、削孔後にケーシングセグメントを引き抜く際に、ケーシングセグメントの連結部においてケーシングセグメントの外周面から突出するケーシング継手が削孔壁面に干渉し、削孔壁面を崩していくため所望の削孔を得る上で不利があり、また、ケーシング継手が削孔壁面に干渉するため、ケーシングセグメントの引き抜き効率を高める上で不利があった。
【0006】
具体的には、ケーシングセグメントの長さは1.5から3mである。そのため、例えば、54mの深さを削孔するには、長さが3mのケーシングセグメントを用いても、18本のケーシングセグメントが必要となり、17個のケーシング継手が必要となる。
したがって、削孔するにしたがってケーシング継手の数が増えていくことから、削孔時にケーシング継手の抵抗が最大で17カ所で生じ、また、ケーシングセグメントを引き抜く場合も、ケーシング継手が削孔壁面に干渉する箇所が最大で17箇所で生じると共にケーシング継手の抵抗が最大で17箇所で生じ、何らかの改善が望まれていた。
【0007】
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、マイクロパイル工法において、ケーシングセグメントによる削孔効率を高める上で、また、ケーシングセグメントの引き抜き効率を高める上で有利なマイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの連結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、マイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの連結構造であって、ケーシングセグメントの長手方向の端部の内周面に雌ねじが形成され、外径がケーシングセグメントの外径以下の中空円筒形のケーシング継手が設けられ、前記ケーシング継手に、ケーシングセグメントの内部に挿入されるロッドの先端の削孔ドリルの直径よりも大きい寸法の内径のドリル挿通孔が貫通形成され、前記ケーシング継手の外周面に前記雌ねじに螺合可能な雄ねじが形成され、隣り合うケーシングセグメントの長手方向の端部は、前記雌ねじに前記雄ねじが螺合されることで前記ケーシング継手により着脱可能に連結され、前記ケーシング継手は、前記雄ねじが形成された雄ねじ部と、前記雄ねじ部の長手方向の両端に形成された鍔部とを有し、隣り合うケーシングセグメントの長手方向の端部が、前記雌ねじに前記雄ねじが螺合されることで前記ケーシング継手により連結された状態で、前記鍔部は、前記ケーシングセグメントの内部に露出する前記雌ねじを覆うことを特徴とする。
また、請求項2記載の発明は、マイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの連結構造であって、ケーシングセグメントの長手方向の端部の内周面に雌ねじが形成され、外径がケーシングセグメントの外径以下の中空円筒形のケーシング継手が設けられ、前記ケーシング継手に、ケーシングセグメントの内部に挿入されるロッドの先端の削孔ドリルの直径よりも大きい寸法の内径のドリル挿通孔が貫通形成され、前記ケーシング継手の外周面に前記雌ねじに螺合可能な雄ねじが形成され、隣り合うケーシングセグメントの長手方向の端部は、前記雌ねじに前記雄ねじが螺合されることで前記ケーシング継手により着脱可能に連結され、ケーシングセグメントの長手方向の端部の内周面に、隣り合うケーシングセグメントの長手方向の端部が前記雌ねじに前記雄ねじが螺合されることで前記ケーシング継手により連結された状態で、前記ケーシング継手の長手方向の端部に当接して前記ケーシングセグメントの内部に露出する前記雌ねじを覆い前記ドリル挿通孔の内径以上の寸法の内径の孔が貫通形成された筒状のストッパ部材が取着されていることを特徴とする。
また、請求項3記載の発明は、前記雄ねじは、前記ケーシング継手の外周面で長手方向の両端にそれぞれ形成され、前記ケーシング継手の外周面で長手方向の両端の前記雄ねじの間に、外径が前記雄ねじの外径以上でかつケーシングセグメントの外径以下のフランジが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
発明によれば、ケーシングセグメントの端部の内周面どうしをケーシングセグメントの内部に挿入したケーシング継手で連結するようにしたので、従来のようにケーシングセグメントの外周面から突出するケーシング継手がなくなり、削孔効率やケーシングセグメントの引き抜き効率を高める上で有利となる。
また、本発明によれば、ケーシングセグメントの端部の内周面の雌ねじに、ケーシング継手の雄ねじを螺合させる構成であるため、簡単な構成によりケーシングセグメントの端部どうしを確実に連結できる。
また、本発明によれば、簡単な構成によりケーシングセグメントの端部どうしを確実に連結でき、マイクロパイル工法において、削孔効率やケーシングセグメントの引き抜き効率を高める上で有利となる。
また、本発明の発明によれば、工具でフランジを把持できるため、ケーシングセグメントの継ぎ足し作業や取り外し作業の効率を高める上で有利となる。
また、本発明によれば、グラウトがケーシングセグメントの端部の雌ねじに入り込むことを阻止でき、ケーシングセグメントの継ぎ足し作業や取り外し作業の効率を高める上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(A)〜(G)はマイクロパイル工法の説明図である。
図2】一番目のケーシングセグメント先端の外側削孔用カッターと、1番目のロッドの先端の削孔ドリルの説明図である。
図3】第1の実施の形態のケーシングセグメントの連結構造の説明図で(A)は、隣り合うケーシングセグメントの端部とケーシング継手の説明図、(B)は隣り合うケーシングセグメントの端部どうしがケーシング継手で連結された説明図である。
図4】第2の実施の形態のケーシングセグメントの連結構造の説明図で(A)は、隣り合うケーシングセグメントの端部とケーシング継手の説明図、(B)は隣り合うケーシングセグメントの端部どうしがケーシング継手で連結された説明図である。
図5】第3の実施の形態のケーシングセグメントの連結構造の説明図で(A)は、隣り合うケーシングセグメントの端部とケーシング継手の説明図、(B)は隣り合うケーシングセグメントの端部どうしがケーシング継手で連結された説明図である。
図6】第4の実施の形態のケーシングセグメントの連結構造の説明図で(A)は、隣り合うケーシングセグメントの端部とケーシング継手の説明図、(B)は隣り合うケーシングセグメントの端部どうしがケーシング継手で連結された説明図である。
図7】第5の実施の形態のケーシングセグメントの連結構造の説明図で(A)は、隣り合うケーシングセグメントの端部とケーシング継手の説明図、(B)は隣り合うケーシングセグメントの端部どうしがケーシング継手で連結された説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかるマイクロパイル工法におけるケーシングセグメントの継ぎ足し方法の実施の形態をケーシングセグメントの連結構造の第1の実施の形態と共に説明する。
【0012】
図1(A)、図2に示すように、マイクロパイル工法を施工するにあたり、先端外周部が外側削孔用カッター12とされた1番目の細長い中空円筒形の鋼製のケーシングセグメント14の内部に、先端に削孔ドリル16が取着された1番目のロッド18を挿通させ、それらケーシングセグメント14とロッド18とを回転させつつ、また、水を注入しつつ外側削孔用カッター12と削孔ドリル16とで孔20を削孔していく工程が行なわれる。
そして、図1(B)、(C)に示すように、孔20が所定の深さとなる毎に、ケーシングセグメント14の端部に次の細長い中空円筒形の鋼製のケーシングセグメント14を着脱可能に連結して継ぎ足すと共に、ロッド18の端部に次のロッド18を着脱可能に連結して継ぎ足し、ケーシングセグメント14とロッド18とを回転させ、また、水を注入しつつ外側削孔用カッター12と削孔ドリル16とで孔20を削孔していく工程が行なわれる。
【0013】
本実施の形態では、図3(A)、(B)に示すように、ケーシングセグメント14の連結が、ケーシングセグメント14の内部に挿入され削孔ドリル16の移動を許容する大きさのドリル挿通孔22Aが貫通形成された中空円筒形のケーシング継手22を用い、ケーシングセグメント14の端部の内周面どうしを着脱可能に結合することで行なう。
複数のケーシングセグメント14が連結されることでケーシングCが構成される。
図1(C)に示すように、削孔された孔20が軟弱層24を通過し荷重支持層26の所定の深さに到達したならば、ロッド18と共に削孔ドリル16をケーシングCの内部から引き抜く工程が行なわれる。
次に、必要に応じて、鉄筋などの補強材をケーシングCの内部にケーシングCの全長にわたって配設する。
【0014】
次に、図1(D)に示すように、不図示のトレミー管を用いてケーシングCの内部にグラウト材Gを充填する。
グラウト材Gとして、セメントミルク、モルタル材、小径の骨材を混入したコンクリート材が使用可能である。
次に、図1(E)に示すように、ケーシングCの内部にグラウト材Gを加圧注入しつつ、ケーシングCを引き抜く工程が行なわれる。
グラウト材Gの加圧は、グラウト材Gが、削孔された孔20の壁面に密着し、グラウト材Gと地盤との間の接合状態が強固となるような圧力で行なわれることが望ましい。
ケーシングCの引き抜きは、上下に隣り合うケーシングセグメント14のうち、下方に位置するケーシングセグメント14の上端が地盤上に位置したところで、下方のケーシングセグメント14を回転不能に把持し、上方のケーシングセグメント14を回転操作し、下方のケーシングセグメント14に対して上方のケーシングセグメント14を取り外すことで行なう。なお、上方のケーシングセグメント14を取り外す際に、ケーシング継手22も取り外される。
上方に位置する複数本のケーシングセグメント14がケーシング継手22と共に取り外され、図1(E)に示すように、最下位に位置する一番目のケーシングセグメント14の下端が、荷重支持層26の最上部に近づいたところで、ケーシングCの引き抜きは終了する。
【0015】
次に、図1(F)に示すように、ケーシングCを、グラウト材Gが加圧充填されたグラウト材Gの中に所定量押し戻す工程が行なわれ、ケーシングCで囲繞された部分と、ケーシングCで囲繞されていない部分との間に、中間的な構造を有する部分を作り出す。
そして、グラウト材Gが硬化されることで、グラウト材Gによる地盤接合部30Aを有する杭体30が得られる。
次に、図1(G)に示すように、ケーシングCの上端部に鋼製の支圧板32が溶接により接合され、杭体30の杭頭部を構造物に連結するための連結構造が形成される。
【0016】
ケーシングセグメント14の連結構造をより詳細に説明すると、図3(A)、(B)に示すように、ケーシングセグメント14の長手方向の端部の内周面に雌ねじ1402が形成されている。
すなわち、長手方向の先端外周部が外側削孔用カッター12とされた1番目のケーシングセグメント14には、外側削孔用カッター12と反対に位置するケーシングセグメント14の端部の内周面に雌ねじ1402が形成されている。また、2番目以降のケーシングセグメント14には、ケーシングセグメント14の長手方向の両端の内周面にそれぞれ雌ねじ1402が形成されている。
【0017】
また、ケーシングセグメント14どうしを連結するケーシング継手22は中空円筒形を呈し、外径がケーシングセグメント14の外径以下で、内部に削孔ドリル16の移動を許容する大きさのドリル挿通孔22Aが貫通形成されている。
ケーシング継手22の外周面には、ケーシングセグメント14の雌ねじ1402に螺合可能な雄ねじ2202が、ケーシング継手22の長手方向の全長にわたって形成されている。
そして、隣り合うケーシングセグメント14の長手方向の端部は、雌ねじ1402に雄ねじ2202が螺合されることで、ケーシング継手22により簡単に確実に連結されている。
【0018】
本実施の形態では、ケーシング継手22によりケーシングセグメント14の端部の内周面どうしを連結するため、ケーシングセグメント14が連結された状態でケーシング継手22はケーシングセグメント14の内部に挿入された状態となる。
そして、削孔後、削孔ドリル16をロッド18と共に引く抜く関係上、削孔ドリル16は、ケーシングセグメント14の内部に位置するケーシング継手22のドリル挿通孔22Aを通過できる寸法の外径のものが使用される。
すなわち従来では、ケーシングセグメント14の端部どうしを、ケーシングセグメント14の内部に位置せずケーシングセグメント14の外周面上に位置するケーシング継手22を用いて連結するため、削孔ドリル16は、ケーシングセグメント14の内部を移動できる外径のものが使用される。
これに対して、本実施の形態では、削孔ドリル16が、ケーシングセグメント14の内部に配置されたケーシング継手22のドリル挿通孔22Aを通過できる寸法でなければならないため、従来用いられる削孔ドリル16に比べ、外径の寸法の小さい削孔ドリル16を使用することになる。
【0019】
理論的には、従来のマイクロパイル工法では、外側削孔用カッター12により削孔される環状の凹部の内周面と、削孔ドリル16により削孔される円柱状の凹部の内周面との間には、ケーシングセグメント14の厚さに対応した環状の壁部が残存する。この環状壁部は、削孔時の振動により、あるいは外側削孔用カッター12の側部や削孔ドリル16の側部が接触することで崩壊されていくと考えられ、外側削孔用カッター12の外径に対応した内径の孔が円滑に削孔される。
これに対して本実施の形態のマイクロパイル工法では、外側削孔用カッター12により削孔される環状の凹部の内周面と、削孔ドリル16により削孔される円柱状の凹部の内周面との間には、ケーシングセグメント14の厚さとケーシング継手22の厚さを加えた寸法の厚さの環状の壁部が残存する。この環状壁部も従来と同様に、削孔時の振動により、あるいは外側削孔用カッター12の側部や削孔ドリル16の側部が接触することで崩壊されていくと考えられ、外側削孔用カッター12の外径に対応した内径の孔20が円滑に削孔される。
したがって、本実施の形態では、従来に比べ外径の寸法の小さい削孔ドリル16を使用するものの、従来と同様に、外側削孔用カッター12の外径に対応した内径の孔が円滑に削孔される。
【0020】
本実施の形態によれば、ケーシングセグメント14の端部の内周面どうしをケーシングセグメント14の内部に挿入したケーシング継手22で連結するようにしたので、従来のようにケーシングセグメント14の外周面から突出するケーシング継手がなくなる。そのため、削孔時に、ケーシングセグメント14の連結部においてケーシング継手が抵抗となる不具合が解消され、削孔効率を高める上で有利となる。
また、削孔後にケーシングセグメント14を引き抜く際も同様に、ケーシングセグメント14の外周面から突出するケーシング継手がなくなるため、ケーシング継手が削孔された孔20の壁面に干渉し壁面を崩していく不具合や、引き抜き時にケーシング継手が孔20の壁面に干渉して抵抗となる不具合も解消され、ケーシングセグメント14の引き抜き効率を高める上で有利となる。
また、ケーシングセグメント14の端部の内周面の雌ねじ1402に、ケーシング継手22の雄ねじ2202を螺合させる構成であるため、ケーシング継手22を用いた簡単な構成によりケーシングセグメント14の端部どうしを確実に連結できる。
【0021】
具体的には、例えば、54mの深さを削孔するには、長さが3mのケーシングセグメント14を用いても、18本のケーシングセグメント14が必要となり、17個のケーシング継手22が必要となる。
したがって、削孔するにしたがってケーシング継手22の数が増えていくことから、削孔時にケーシング継手22の抵抗が最大で17カ所で生じていた従来の不具合を解消でき、また、ケーシングセグメント14を引き抜く場合も、ケーシング継手22が削孔壁面に干渉する箇所が最大で17箇所で生じると共にケーシング継手22の抵抗が最大で17箇所で生じていた従来の不具合を解消できる。
すなわち、外側削孔用カッター12と削孔ドリル16による削孔効率を高める上で有利となり、ケーシングセグメント14の引き抜き効率を高める上で有利となり、マイクロパイル工法の工期を大幅に短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
【0022】
次に、図4を参照してケーシングセグメントの連結構造の第2の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態では、前記実施の形態と同様な箇所に同一の符号を付してその説明を省略し、前記実施の形態と異なった箇所を重点的に説明する。
第2の実施の形態では、第1の実施の形態のケーシング継手22にフランジ2204を設けたものである。
すなわち、雄ねじ2202は、ケーシング継手22の外周面で長手方向の両端にそれぞれ形成され、両端の雄ねじ2202の間にフランジ2204が膨出形成されている。
フランジ2204の外径は、ケーシングセグメント14の外径以下の寸法で形成され、かつ、雄ねじ2202の外径以上の寸法の外径で形成され、削孔時にフランジ2204が抵抗とならず、引く抜き時にフランジ2204が削孔された孔20の壁面に干渉せずまた抵抗とならないように図られている。
このようなフランジ2204を設けると工具でフランジ2204を把持でき、ケーシングセグメント14の連結や取り外しの際のケーシング継手22の回転操作をより簡単に行なえる。
したがって、削孔時におけるケーシングセグメント14の継ぎ足しや、引き抜き時におけるケーシングセグメント14の取り外しをより簡単に行なえ、削孔効率を高める上で有利となり、ケーシングセグメント14の引き抜き効率を高める上で有利となる。
【0023】
次に、図5を参照して第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態では、第1の実施の形態のケーシング継手22に面取り2206を設けたものである。
すなわち、ドリル挿通孔22Aの内周面の軸方向の両端に、面取り2206が形成されている。
第3の実施の形態によれば、削孔ドリル16を、ケーシング継手22内を円滑に通過させる上で有利となり、したがって、削孔された孔20が荷重支持層26の所定の深さに到達した後に行なう削孔ドリル16の引き抜き作業の効率を高める上で有利となる。
【0024】
次に、図6を参照して第4の実施の形態について説明する。
第4の実施の形態では、第1の実施の形態のケーシング継手22に雌ねじ1402を覆う鍔部22Cを設けたものである。
すなわち、ケーシング継手22は、雄ねじ2202が形成された雄ねじ部22Bと、雄ねじ部22Bの長手方向の両端に形成された鍔部22Cとを有している。
そして、鍔部22Cは、隣り合うケーシングセグメント14の長手方向の端部が雌ねじ1402に雄ねじ2202が螺合されることでケーシング継手22により連結された状態で、ケーシングセグメント14の内部に露出する雌ねじ1402を覆うように設けられている。
なお、鍔部22Cの内周面の端部に、第3の実施の形態と同様に面取り2206が形成され、削孔ドリル16の引き抜き作業の効率を高める上で有利となっている。
第4の実施の形態によれば、鍔部22Cによりグラウト材Gがケーシングセグメント14の端部の雌ねじ1402に入り込むことを阻止でき、ケーシングセグメント14の継ぎ足し作業や取り外し作業の効率を高める上で有利となる。
【0025】
次に、図7を参照して第5の実施の形態について説明する。
第5の実施の形態では、ケーシングセグメント14の長手方向の端部の内部にストッパ部材30を設けたものである。
ストッパ部材30は、ドリル挿通孔22Aの内径以上の寸法の孔3002が貫通形成された筒状を呈している。
ストッパ部材30は、雌ねじ1402に雄ねじ2202が螺合されることで隣り合うケーシングセグメント14がケーシング継手22により連結された状態で、ケーシング継手22の長手方向の端部に当接してケーシングセグメント14の内部に露出する雌ねじ1402を覆うものである。
ストッパ部材30は、接着剤、溶接、ねじ結合など従来公知の様々な手段によりケーシングセグメント14の内部に取着され、あるいは、ケーシングセグメント14と一体に設けられている。
ストッパ部材30の長手方向の一端は、ケーシング継手22の長手方向の端部に当接可能な当接部3004として形成され、長手方向の他端には、第3の実施の形態と同様に面取り3006が形成され、削孔ドリル16の引き抜き作業の効率を高める上で有利となっている。
第5の実施の形態によれば、第4の実施の形態と同様に、ストッパ部材30によりグラウト材Gがケーシングセグメント14の端部の雌ねじ1402に入り込むことを阻止でき、ケーシングセグメント14の継ぎ足し作業や取り外し作業の効率を高める上で有利となる。
【符号の説明】
【0026】
12……外側削孔用カッター
14……ケーシングセグメント
1402……雌ねじ
16……削孔ドリル
18……ロッド
20……削孔された孔
22……ケーシング継手
22A……ドリル挿通孔
22B……雄ねじ部
22C……鍔部
2202……雄ねじ
2204……フランジ
2206……面取り
2208……鍔部
24……軟弱層
26……荷重支持層
30……ストッパ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7