(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359344
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】二酸化塩素を含む水溶液製造方法及び水蒸気発生装置
(51)【国際特許分類】
C25B 1/26 20060101AFI20180709BHJP
C01B 11/02 20060101ALI20180709BHJP
C25B 15/02 20060101ALI20180709BHJP
A61L 9/14 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
C25B1/26 B
C01B11/02 F
C25B15/02 302
A61L9/14
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-113404(P2014-113404)
(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公開番号】特開2015-218393(P2015-218393A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2016年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】509195010
【氏名又は名称】医療環境テクノ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593001901
【氏名又は名称】ミカサ商事株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野村 雄二
(72)【発明者】
【氏名】澤尻 昌彦
【審査官】
関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−531647(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0305494(US,A1)
【文献】
特開2000−054177(JP,A)
【文献】
特表平05−509281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00− 1/26
C01B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100ないし230Vの交流電流を電極に供給する二酸化塩素含有水溶液を製造する方法によって製造された二酸化塩素含有水溶液を、水蒸気として流出させる水蒸気発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜塩素酸ナトリウムを含有する水溶液中に、交流電流を流すことにより二酸化塩素を含む水溶液製造方法及び水蒸気発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二酸化塩素は、産業用、家庭用、およびサービスへの使用、また商品及び消費者製品用に最も有効な消臭、殺菌、漂白剤の1つである。この分子の強力な潜在的酸化能力は、消毒、殺菌及び漂白を含む多種多様な用途に理想的である。百万分の一(1ppm)以下の、低濃度の水溶液中の二酸化塩素は、バクテリア類、ウイルス類、カビ類、菌類、及び胞子類を含む多種多様な微生物を死滅させることができる。数百ppmまでのより高濃度の二酸化塩素は、紙及びパルプ産業、廃水処理、産業用水処理、果物・野菜類の消毒、亜硫酸塩の製油業、繊維業、及び医療廃棄物処理を含む様々な用途で、多数の化合物をさらに強力に消毒、漂白及び消臭する。
【0003】
二酸化塩素は、次亜塩素酸塩及び塩素のような一般的に使用される他の薬剤と比較して、低濃度で消臭、殺菌および漂白効果を発揮できる。さらに、トリハロメタン等の発ガン性物質を発生せず、安全性に優れたものである。
【0004】
二酸化塩素を製造する一般的な方法は、亜塩素酸塩を二酸化塩素に変換するものである。この主な方法には、亜塩素酸塩に酸を添加して二酸化塩素を発生させる方法と、直流電流による電気分解により二酸化塩素を発生させ方法がある。亜塩素酸ナトリウムから二酸化塩素を発生させるための代表的なプロセスは、酸の添加、好ましくは塩酸の添加によるものである(化学式1)(特許文献1および2)。5NaClO
2+4HCl→4ClO
2+5NaCl+2H
2O (1)
【0005】
直流電流による電気分解では、電解により水溶液中にH
3O
+(H
+)イオンを発生させ、陽極電極側の溶液中のペーハーを酸性側に変化させる(非特許文献1)。亜塩素酸ナトリウム水溶液のペーハーを酸性側に変化させ、亜塩素酸ナトリウム水溶液中に二酸化塩素を発生させるものである(非特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−249274
【特許文献2】特開2011−173758
【特許文献3】特表2004−531647
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】功刀彰:健康と水−交流電解水素水の特性と機能の解明−,TMS研究,2010巻1号,2010年
【非特許文献2】添加物評価書 亜塩素酸水、厚生労働省食品安全委員会、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2の二酸化塩素発生方法は、二酸化ハロゲン塩、特に亜塩素酸ナトリウムにハロゲン酸、特に塩酸を混合し、二酸化塩素を生成する。しかしながら、目的の濃度の二酸化塩素溶液を得るためには、二酸化ハロゲン塩とハロゲン酸との反応が遅いために一定時間を要する。一方、電流による二酸化塩素の発生技術は、特許文献3に示すように直流によるものがある。しかし、直流電流では、亜塩素酸ナトリウム水溶液のペーハーを酸性側に移行させることによって二酸化塩素を発生させるものであり、その結果、二酸化塩素の発生が遅く、しかも発生量が陽極に偏ってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明においては、交流電流による二酸化塩素を含む水溶液製造方法および水蒸気発生装置を考案した。交流電流による電気分解によれば、水溶液中に活性の強いHラジカルを発生させ、これが亜塩素酸ナトリウムに作用して、二酸化塩素を溶液中に、均一で、一定濃度の二酸化塩素を早急に生成することができる。
【0010】
特許文献3の直流電流では、水溶液中の分子運動が弱く生成した二酸化塩素水溶液を水蒸気として経路内のノズルから噴射するためには、大きな出力のポンプが必要であるが、交流電流では水溶液中の分子運動が激しく、熱運動により、より大きな圧を経路内に生じさせることができ、経路内から二酸化塩素含有溶液をポンプ無しで水蒸気として排出することができる。
【0011】
二酸化塩素を含む水溶液製造方法としては、亜塩素酸塩、好ましくは亜塩素酸ナトリウムを含む供給水溶液を提供する工程と、供給水溶液を電極を備える容器に流入させる工程と、電極間に交流電流を流すことにより、前記供給水溶液を二酸化塩素に変換する工程と、二酸化塩素を含む水溶液を前記容器から水蒸気として排出させる工程を含む。前記供給水溶液が亜塩素酸ナトリウムを、少なくとも1ppmの濃度で含み、製造された水溶液が二酸化塩素を、0.5ppm〜5,000ppm、好ましくは1ppm〜500ppmの濃度で含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二酸化塩素を含む水溶液製造方法により、二酸化塩素を簡便に、しかも均一で一定濃度の二酸化塩素水溶液を早急に生成することができ、抗菌剤、抗ウイルス剤、防カビ剤、漂白剤、及び消臭剤として簡便に、かつ効果的に適用することができる。
【0013】
本発明の水蒸気発生装置により、排出用のポンプなしで霧状の二酸化塩素水を得ることができ、空気中や多孔質の物品、壁等の消毒、消臭および水に濡れてははらない物品等の消毒、消臭および漂白に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】二酸化塩素を含む水溶液製造および水蒸気発生装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明を実施するための形態について説明する。亜塩素酸塩を含む供給水溶液を提供する工程においては、好ましいのは亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液である。
【0016】
供給水溶液中に含まれる亜塩素酸ナトリウムの濃度は、亜塩素酸ナトリウムを二酸化塩素に変換する二酸化塩素発生容器の変換効率、および二酸化塩素による必要な漂白、消臭および消毒に基づいて選択することができる。供給水溶液に含まれる亜塩素酸ナトリウムの濃度は、一般に1ppm〜10,000ppmであり、好ましくは、1ppm〜5,000ppmである。
【0017】
供給水溶液の形成には、井戸水、水道水、軟水、産業処理水、及び廃水を含むいかなる水源を使用することもできる。しかし、本発明の多くの用途に関して、本質的に活性の二酸化塩素だけを含む流出溶液を形成するために、蒸留水又は脱イオン水が最も好ましい。蒸留水及び脱イオン水は、塩化ナトリウムなどの種々の他のいかなる塩も含まないので、相当量の他の混合酸化体は形成されない。
【0018】
亜塩素酸塩の一つである亜塩素酸ナトリウムは水溶液中では次の式(2)に示すように解離している。
NaClO2→Na
++ClO2− (2)
【0019】
亜塩素酸ナトリウムを含む供給水溶液を、電極を備える二酸化塩素発生容器に流入させる工程においては、100ないし230Vの電源のポンプを用いる。
【0020】
電極間に交流電流を流すことにより、前記経路内の前記供給水溶液を二酸化塩素に変換する工程においては、前記2式のように解離している亜塩素酸ナトリウムに、溶液中に発生した水素ラジカルが作用して二酸化塩素が得られる。得られる二酸化塩素の水溶液中の濃度は、0.5ppm〜5,000ppm、好ましくは1ppm〜500ppmである。
【0021】
二酸化塩素を含む水溶液を前記二酸化塩素発生容器から流出させる工程においては、前記ポンプの圧力と、交流電流により発生した二酸化塩素発生容器内の分子運動により、水蒸気発生ノズルより排出用のポンプなし水蒸気を排出させることができる。
【0022】
本発明の水蒸気発生装置の一実施例として、亜塩素酸塩水溶液貯蔵タンク1に含まれる亜塩素酸ナトリウム水溶液を、ポンプ2で二酸化塩素発生容器3に200ml/分で流入させた。亜塩素酸ナトリウム水溶液は1000ppmとし、交流電圧装置4の電圧は、100Vとした。二酸化塩素発生容器3は、経路間隙が約10mmの一対の対向電極を有していた。電極5・6は、ステンレス製電極、平面状電極の寸法は、長さ75mm、幅25mmとした。水蒸気発生ノズル7から発生した水蒸気には5ppmの二酸化塩素を含んでいた。
【0023】
電極5・6は、2ないし3つの電極を備えて良い。一般に、それ自体と他の電極との間の供給水溶液を通る電気を効果的に導くことができるいずれの形状にもすることができ、平面状電極、棒状電極、及び多孔質電極を挙げることができるが、これらに限定されない。電極5・6は、電極間にほぼ均一な間隙を与えるように、形状設定し配置することができる。一方、電極5・6を、異なる形状、異なる寸法にすることもでき、互いに不均等な間隔をあけて配置することもできる。
【0024】
電極5・6は、通常は金属の導電性材料であるが、炭素のような非金属の導電性材料も使用することができる。電極5・6の材料は、同一でも異なっても良い。腐食を最小限に抑えるために、好ましくは耐薬品性金属が使用される。好ましい電極用金属は、ステンレス鋼、白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウムと同様に、鉄、ニッケル、クロム、並びにこれらの合金及び酸化物である。より好ましいのは、チタン、タンタル、アルミニウム、ジルコニウム、タングステン、又はこれらの合金のようなバルブ金属(valvemetal)製の電極であり、これらは、好ましくは白金、イリジウム、及びルテニウムから選択されるVIII族金属、並びにこれらの酸化物及び合金でコーティング又は積層される。
【0025】
好ましい電流供給は、一般的な100〜230ボルトの交流電流を有する家庭用又は産業用の単相または三相の電源である。
【0026】
二酸化塩素を含有する流出液を水蒸気発生ノズル7より二酸化塩素発生容器3から取り出し、消臭、消毒および漂白水溶液として使用する。二酸化塩素を含有する流出液は、液体または霧状として、物品又は対象物(例えば台所又は浴室、トイレ等)であることもでき、また、人の居室や動物舎等にも適応できる。
【符号の説明】
【0027】
1 二酸化ハロゲン塩水溶液貯蔵タンク
2 ポンプ
3 二酸化ハロゲン発生容器
4 交流電源装置
5 電極
6 電極
7 水蒸気発生ノズル