特許第6359375号(P6359375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6359375トンネル掘削機及びトンネル施工時のシール径切り替え方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359375
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】トンネル掘削機及びトンネル施工時のシール径切り替え方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20180709BHJP
【FI】
   E21D9/06 301Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-160154(P2014-160154)
(22)【出願日】2014年8月6日
(65)【公開番号】特開2016-37719(P2016-37719A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】516308364
【氏名又は名称】JIMテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】保苅 実
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】田家 学
(72)【発明者】
【氏名】白井 孝典
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−042293(JP,A)
【文献】 特開平06−288190(JP,A)
【文献】 特開平06−050093(JP,A)
【文献】 特開平09−041892(JP,A)
【文献】 特開平06−185295(JP,A)
【文献】 米国特許第04139989(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00−9/14
E21D 11/00−19/06
E21D 23/00−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をなす掘削機本体と、
前記掘削機本体の内周面における周方向全域に亘って設けられ、前記掘削機本体の内周面と既設の大径用セグメントとの間の隙間を密閉する大径用止水シールと、
前記大径用止水シールのトンネル径方向内側に配置され、外周面が前記大径用止水シールに密着される円環状をなすテールプレートと、
前記テールプレートの内周面における周方向全域に亘って設けられ、前記テールプレートの内周面と前記既設の大径用セグメントよりも小径となる既設の小径用セグメントとの間の隙間を密閉する小径用止水シールと、
前記テールプレートを前記掘削機本体の内周面に着脱可能に支持し、前記大径用止水シール及び前記小径用止水シールがトンネル小径断面終了位置に組み立てられた前記既設の小径用セグメントに到達したときに、前記掘削機本体及び前記テールプレートから取り外される取付部材とを備えたトンネル掘削機において、
前記テールプレート及び前記小径用止水シールは、1セグメントリング当たりの前記小径用セグメントの数量と同じ数量によって分割される複数のプレート片及びシール片から構成され、
1つの前記プレート片及び前記シール片を、トンネル小径断面開始位置に組み立てられる1つの前記小径用セグメントの外周面に着脱可能に取り付ける固定手段を備える
ことを特徴とするトンネル掘削機。
【請求項2】
請求項1に記載のトンネル掘削機において、
トンネル小径断面開始位置に組み立てられる前記小径用セグメントは、当該小径用セグメントをトンネル径方向に貫通するボルト孔を有し、
前記固定手段は、トンネル径方向内側から前記ボルト孔に挿通されて前記プレート片に螺着されるボルトを有する
ことを特徴とするトンネル掘削機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のトンネル掘削機において、
前記プレート片の弧長方向一端面に形成される嵌合凸部と、
前記プレート片の弧長方向他端面に形成され、前記嵌合凸部と嵌合する嵌合凹部とを備える
ことを特徴とするトンネル掘削機。
【請求項4】
掘進する掘削機本体の内周面に設けられる大径用止水シールと、前記大径用止水シールのトンネル径方向内側に配置される小径用止水シールとによって、前記掘削機本体の内周面と既設の小径用セグメントとの間の隙間を密閉し、
前記大径用止水シール及び前記小径用止水シールがトンネル小径断面終了位置に組み立てられた前記既設の小径用セグメントに到達すると、前記小径用止水シールを、前記掘削機本体の内周面から取り外して、トンネル大径断面開始位置に組み立てられた大径用セグメントの後端面に当接させ、
前記大径用止水シールによって、前記掘削機本体の内周面と既設の大径用セグメントとの間の隙間を密閉するトンネル施工時のシール径切り替え方法において、
トンネル小径断面開始位置に組み立てられる前記小径用セグメントの外周面に、前記小径用止水シールを1セグメントリング当たりの前記小径用セグメントの数量と同じ数量によって分割したシール片を取り付け、
前記大径用止水シールが前記トンネル小径断面開始位置に到達すると、前記シール片を、前記トンネル小径断面開始位置に組み立てたられた前記小径用セグメントから取り外して、前記掘削機本体の内周面に取り付け、
前記掘削機本体の内周面に取り付けられた複数の前記シール片を円環状に組み立てて、前記小径用止水シールを構成する
ことを特徴とするトンネル施工時のシール径切り替え方法。
【請求項5】
請求項4に記載のトンネル施工時のシール径切り替え方法において、
前記大径用止水シールと前記小径用止水シールとの間に、1セグメントリング当たりの前記小径用セグメントの数量と同じ数量によって分割した複数のプレート片から構成される円環状のテールプレートを設け、
前記プレート片および前記シール片を、トンネル小径断面開始位置に組み立てられる前記小径用セグメントの内周面側から外周面側に向けてボルトを挿通し、当該小径用セグメントの外周面に固定する
ことを特徴とするトンネル施工時のシール径切り替え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの外径寸法を変更しても、止水性能を維持することができるトンネル掘削機及びトンネル施工時のシール径切り替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル施工時においては、例えば、併設トンネル間の距離や、トンネルと地下構造物との間の距離に応じて、トンネルの断面形状を変更する場合がある。即ち、併設トンネル間の距離や、トンネルと地下構造物との間の距離が短くなると、トンネル施工時の安全性や、トンネルの強度等の観点から、トンネルの断面形状を小さくする場合がある。
【0003】
そこで、従来から、トンネル施工途中においてトンネル断面形状を変更可能としたトンネル掘削機が、種々提供されている。そして、このような従来のトンネル掘削機としては、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−247211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のトンネル掘削機においては、通常のトンネル断面形状を形成するための既存の構成に加えて、それとは別に新たなトンネル断面形状を形成するための隔壁リングやこれを反力受けとする推進ジャッキ等を、増設しなければならなかった。これにより、従来のトンネル掘削機では、装置構成が複雑になると共に、施工手順が煩雑になるおそれがあった。
【0006】
特に、新たなトンネル断面形状を形成するときには、掘削機本体と通常のセグメントとの間、隔壁リングと新たなセグメントとの間、及び、掘削機本体と隔壁リングとの間において、止水性能を十分に考慮する必要があった。
【0007】
従って、本発明は上記課題を解決するものであって、トンネルの外径寸法を変更しても、止水性能を容易に維持することができるトンネル掘削機及びトンネル施工時のシール径切り替え方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する第1の発明に係るトンネル掘削機は、
円筒状をなす掘削機本体と、
前記掘削機本体の内周面における周方向全域に亘って設けられ、前記掘削機本体の内周面と既設の大径用セグメントとの間の隙間を密閉する大径用止水シールと、
前記大径用止水シールのトンネル径方向内側に配置され、外周面が前記大径用止水シールに密着される円環状をなすテールプレートと、
前記テールプレートの内周面における周方向全域に亘って設けられ、前記テールプレートの内周面と前記既設の大径用セグメントよりも小径となる既設の小径用セグメントとの間の隙間を密閉する小径用止水シールと、
前記テールプレートを前記掘削機本体の内周面に着脱可能に支持し、前記大径用止水シール及び前記小径用止水シールがトンネル小径断面終了位置に組み立てられた前記既設の小径用セグメントに到達したときに、前記掘削機本体及び前記テールプレートから取り外される取付部材とを備えたトンネル掘削機において、
前記テールプレート及び前記小径用止水シールは、1セグメントリング当たりの前記小径用セグメントの数量と同じ数量によって分割される複数のプレート片及びシール片から構成され、
1つの前記プレート片及び前記シール片を、トンネル小径断面開始位置に組み立てられる1つの前記小径用セグメントの外周面に着脱可能に取り付ける固定手段を備える
ことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第2の発明に係るトンネル掘削機は、
トンネル小径断面開始位置に組み立てられる前記小径用セグメントは、当該小径用セグメントをトンネル径方向に貫通するボルト孔を有し、
前記固定手段は、トンネル径方向内側から前記ボルト孔に挿通されて前記プレート片に螺着されるボルトを有する
ことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第3の発明に係るトンネル掘削機は、
前記プレート片の弧長方向一端面に形成される嵌合凸部と、
前記プレート片の弧長方向他端面に形成され、前記嵌合凸部と嵌合する嵌合凹部とを備える
ことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第4の発明に係るトンネル施工時のシール径切り替え方法は、
掘進する掘削機本体の内周面に設けられる大径用止水シールと、前記大径用止水シールのトンネル径方向内側に配置される小径用止水シールとによって、前記掘削機本体の内周面と既設の小径用セグメントとの間の隙間を密閉し、
前記大径用止水シール及び前記小径用止水シールがトンネル小径断面終了位置に組み立てられた前記既設の小径用セグメントに到達すると、前記小径用止水シールを、前記掘削機本体の内周面から取り外して、トンネル大径断面開始位置に組み立てられた大径用セグメントの後端面に当接させ、
前記大径用止水シールによって、前記掘削機本体の内周面と既設の大径用セグメントとの間の隙間を密閉するトンネル施工時のシール径切り替え方法において、
トンネル小径断面開始位置に組み立てられる前記小径用セグメントの外周面に、前記小径用止水シールを1セグメントリング当たりの前記小径用セグメントの数量と同じ数量によって分割したシール片を取り付け、
前記大径用止水シールが前記トンネル小径断面開始位置に到達すると、前記シール片を、前記トンネル小径断面開始位置に組み立てたられた前記小径用セグメントから取り外して、前記掘削機本体の内周面に取り付け、
前記掘削機本体の内周面に取り付けられた複数の前記シール片を円環状に組み立てて、前記小径用止水シールを構成する
ことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第5の発明に係るトンネル施工時のシール径切り替え方法は、
前記大径用止水シールと前記小径用止水シールとの間に、1セグメントリング当たりの前記小径用セグメントの数量と同じ数量によって分割した複数のプレート片から構成される円環状のテールプレートを設け、
前記プレート片および前記シール片を、トンネル小径断面開始位置に組み立てられる前記小径用セグメントの内周面側から外周面側に向けてボルトを挿通し、当該小径用セグメントの外周面に固定する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
従って、本発明に係るトンネル掘削機及びトンネル施工時のシール径切り替え方法によれば、既設の大径用セグメントに密着可能な大径用止水シールのトンネル径方向内側に、既設の小径用セグメントに密着可能な小径用止水シールを配置し、小径用止水シールを掘削機本体の内周面に着脱可能に支持することにより、トンネルの外径寸法を変更しても、止水性能を容易に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例に係るトンネル掘削機の概略構成図である。
図2】トンネル掘削機におけるシール構造を示した図であって、(a)はトンネル断面拡径時におけるシール構造の縦断面図、(b)はトンネル断面縮径時におけるシール構造の縦断面図である。
図3】テールシール及びテールプレートの分割状態を示した斜視図である。
図4】テールプレートの嵌合構造を示した横断面図である。
図5】(a)〜(f)はトンネル施工時のシール径切り替え動作を順に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るトンネル掘削機及びトンネル施工時のシール径切り替え方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
図1に示すように、トンネル掘削機1には、円筒状をなす掘削機本体11が設けられており、この掘削機本体11の前端部には、円盤状をなすカッタヘッド12が回転可能に支持されている。そして、カッタヘッド12の前面部には、多数のカッタ13が装着されている。従って、カッタヘッド12を回転させることにより、地盤に切羽を掘削することができる。
【0017】
また、掘削機本体11の後端部内には、エレクタ装置14が、トンネル軸方向、トンネル径方向、及び、トンネル周方向に移動可能に支持されている。このエレクタ装置14は、覆工部材としてのセグメントS1,S2を把持して、円形断面となるトンネル坑の周方向に沿って組み立てる装置となっており、そのセグメントS1,S2は、トンネル坑壁に沿うような環片となっている。従って、エレクタ装置14を駆動させることにより、複数のセグメントS1,S2を、トンネル坑の周方向に沿って、リング状に組み立てることができる。
【0018】
なお、セグメントS1は、円形断面となるトンネルの外径を拡径する際に使用する、トンネル拡径用(大径用)のセグメントとなっている。一方、セグメントS2は、円形断面となるトンネルの外径を縮径する際に使用する、トンネル縮径用(小径用)のセグメントとなっている。
【0019】
これにより、セグメントS1をリング状に組み立てたセグメントリングの外径は、セグメントS2をリング状に組み立てたセグメントリングの外径よりも大径となっている。更に、上述した各セグメントリングの内径は、同じ径寸法となっており、セグメントS1の厚さは、セグメントS2の厚さよりも厚く形成されている。
【0020】
よって、トンネル掘削機1が掘進する場合には、カッタヘッド12によって掘削されたトンネル坑の径方向内側において、セグメントS1の組み立てによって構築された大径トンネルと、セグメントS1の組み立てによって構築された小径トンネルとを、選択的で、且つ、連続的に施工することが可能となる。
【0021】
更に、掘削機本体11の内周面には、複数のシールドジャッキ(推進ジャッキ)15が、その内周面の周方向に沿って配置されている。そして、各シールドジャッキ15のロッド先端には、スプレッダ15aが装着されており、このスプレッダ15aは、トンネル軸方向において、既設のセグメントS1,S2の前端面と対向している。
【0022】
即ち、シールドジャッキ15は、トンネル軸方向後方に向けて伸長して、スプレッダ15aを既設のセグメントS1,S2の前端面に押圧させることにより、掘削機本体11に掘削反力(推進力)を与えることができる。これにより、掘削機本体11は、シールドジャッキ15がセグメントS1,S2を押圧したときに発生する掘削反力によって、地盤内を前進可能となっている。
【0023】
ここで、図1及び図2(a),(b)に示すように、トンネル掘削機1においては、トンネル拡径時におけるシール構造と、トンネル縮径時におけるシール構造とが、異なった構造をなしており、セグメントS1の組み立てとセグメントS2の組み立てとの間の切り替えに応じて(トンネル外径の拡縮に応じて)、シール構造を切り替え可能となっている。なお、図1に示したトンネル掘削機1においては、トンネル拡径時におけるシール構造を上部に図示する一方、トンネル縮径時におけるシール構造を下部に図示することにより、それらを対比し易いように図示している。
【0024】
先ず、トンネル拡径時におけるシール構造について、図1及び図2(a)を用いて説明する。
【0025】
図1及び図2(a)に示すように、掘削機本体11の後端部における内周面には、テールシール(大径用止水シール)21が、トンネル軸方向において、複数段設けられている。これらのテールシール21は、掘削機本体11の内周面における周方向全域に亘って設けられており、既設のセグメントS1の外周面に対して、摺接可能に密着している。つまり、環状をなすテールシール21は、掘削機本体11の内周面と既設のセグメントS1の外周面との間の隙間を密閉しており、土や水がその隙間から掘削機本体11内へ流入することを防止している。
【0026】
次に、トンネル縮径時におけるシール構造について、図1及び図2(b)を用いて説明する。
【0027】
図1及び図2(b)に示すように、トンネル縮径時におけるシール構造においては、テールシール(小径用止水シール)31、テールプレート32、及び、取付金具(取付部材)33を、テールシール21のトンネル径方向内側に設けるようにしている。即ち、トンネル縮径時におけるシール構造においては、2つのテールシール21,31をトンネル径方向において重ねるように配置した、2重シール構造を採用している。
【0028】
具体的に、テールシール21のトンネル径方向内側には、円環状をなすテールプレート32が配置されている。このとき、テールシール21は、テールプレート32の外周面に対して、摺接可能に密着している。つまり、トンネル縮径時におけるテールシール21は、掘削機本体11の内周面と既設のテールプレート32の外周面との間の隙間を密閉しており、土や水がその隙間から掘削機本体11内へ流入することを防止している。
【0029】
また、テールプレート32の後端部には、複数の取付金具33が着脱可能に取り付けられている。これらの取付金具33は、テールプレート32の周方向に等間隔で配置されると共に、掘削機本体11の内周面におけるテールシール21のトンネル軸方向前方側において、着脱可能に取り付けられている。
【0030】
更に、テールプレート32の内周面には、テールシール31が、トンネル軸方向において、複数段設けられている。これらのテールシール31は、テールプレート32の内周面における周方向全域に亘って設けられており、既設のセグメントS2の外周面に対して、摺接可能に密着している。つまり、環状をなすテールシール31は、テールプレート32の内周面と既設のセグメントS2の外周面との間の隙間を密閉しており、土や水がその隙間から掘削機本体11内へ流入することを防止している。
【0031】
そして、図3に示すように、テールシール31及びテールプレート32は、それぞれ、複数のシール片31a及びプレート片32aから構成される、トンネル周方向分割構造となっている。
【0032】
このとき、テールシール31及びテールプレート32の分割数は、トンネル縮径時におけるセグメントリングの分割数、即ち、1セグメントリング当たりのセグメントS2の数量と同じ数量となっており、1つのセグメントS2に対して、1つのシール片31a及びプレート片32aが、トンネル径方向において対向配置されている。つまり、シール片31a及びプレート片32aは、セグメントS2の外周面に沿うような環片となっており、そのセグメントS2の外周面に着脱可能に取り付けられている。
【0033】
また、上述したような、シール片31a及びプレート片32aをセグメントS2に取り付けたシール一体型セグメントの厚さは、セグメントS1の厚さ以下の厚さとなっている。言い換えれば、シール片31a及びプレート片32aをセグメントS2に取り付けたときにおける、プレート片32aの外周面とセグメントS2の外周面との間のトンネル径方向厚さ(シール片31aの先端とプレート32aの外周面との間のトンネル径方向厚さ)は、セグメントS1の厚さからセグメントS2の厚さを差し引いた厚さ以下の厚さとなっている。
【0034】
更に、セグメントS2に取り付けられたシール片31aは、当該セグメントS2の外周面からその周囲にはみ出すことなく、収納されており、プレート片32aの幅(トンネル軸方向長さ)は、セグメントS2の幅以下の長さに形成されている。
【0035】
そして、図3及び図4に示すように、プレート片32aの弧長方向一端面には、嵌合凸部32bが形成される一方、プレート片32aの弧長方向他端面には、嵌合凹部32cが形成されている。これにより、複数のプレート片32aを円環状に組み立てる際には、隣接したプレート片32a間において、一方のプレート片32aにおける嵌合凸部32bと、他方のプレート片32aにおける嵌合凹部32cとが、嵌合するようになっている。
【0036】
よって、複数のシール片31a及びプレート片32aのテールシール31及びテールプレート32への組み立ては、シール片31a及びプレート片32aを取り付けたセグメントS2を、エレクタ装置14によって組み立てることにより、このセグメントS2の組み立てと並行して行われることになる。
【0037】
このとき、取り付けられたシール片31a及びプレート片32aは、セグメントS2の外周面からその周囲にはみ出すことはなく、セグメントS1の厚さ以上に突出することがない。即ち、シール片31a及びプレート片32aを取り付けたセグメントS2を組み立てる場合には、それらのシール片31a及びプレート片32aは、掘削機本体11の内周面、既設のセグメントS1、及び、既設のシール一体型セグメント等に干渉することはない。
【0038】
従って、トンネル掘削機1によってトンネルを施工する場合には、カッタヘッド12を回転させると共に、シールドジャッキ15を伸長させることにより、既設のセグメントS1またはセグメントS2から掘削反力を得て、掘削機本体11を前進させる。これにより、回転するカッタ12に装着された多数のカッタ13が、地盤に切羽を掘削する。また、これと同時に、短縮したシールドジャッキ15のトンネル軸方向後方においては、エレクタ装置14の駆動によって、新設のセグメントS1またはセグメントS2がトンネル周方向に沿って順次組み立てられる。
【0039】
次に、掘削途中において、トンネル外径を拡縮する際のシール構造の切り替え動作について、図5(a)〜(b)を用いて詳細に説明する。
【0040】
先ず、図5(a)に示すように、大径断面となるトンネルを施工する際には、セグメントS1を組み立てることになり、テールシール21のみによって止水する。
【0041】
このとき、セグメントS1の組み立てによってトンネルを施工しているときに、例えば、その大径断面となるトンネルと、既設の先行トンネルや地下構造物との間の距離が、所定の距離以下となると、トンネル施工に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0042】
そこで、上述した問題を回避するため、施工途中の大径トンネルと、既設の先行トンネルや地下構造物との間の距離が、所定の距離以下となると、セグメントS1の組み立てを、セグメントS2の組み立てに切り替えると共に、トンネル外径が小径になる分、シール装置も切り替える。
【0043】
そして、図5(b)に示すように、シール片31a及びプレート片32aが取り付けられたセグメントS2の組み立てを、トンネル小径断面開始位置において開始する。
【0044】
このとき、セグメントS2には、複数のボルト孔S2aが、セグメント厚さ方向に貫通して形成されており、これらのボルト孔S2aには、固定用ボルト(固定手段)41が、それぞれ挿入されている。固定用ボルト41は、ボルト孔S2aを、内周面側から外周面側に向けて貫通しており、そのボルト先端は、プレート片32aの内周面に嵌入されている。このように、シール片31aを有するプレート片32aを、ボルト孔S2aを介して、固定用ボルト41によって固定することにより、当該シール片31a及びプレート片32aは、セグメントS2に取り付けられることになる。
【0045】
次いで、セグメントS2の1リング分の組み立てが完了すると、シールドジャッキ15を、セグメントS2の1リング分伸長させて、そのスプレッダ15aを、テールシール31及びテールプレート32が取り付けられたセグメントS2(セグメントリング)の前端面に押圧させる。
【0046】
これにより、図5(c)に示すように、掘削機本体11は、セグメントS2の1リング分、前進することになり、テールシール21は、トンネル小径断面開始位置に到達する。即ち、テールシール21は、セグメント2Sに取り付けられたテールプレート32の外周面に密着する。
【0047】
その後、テールプレート32を、複数の取付金具33を介して、掘削機本体11の内周面に取り付けると共に、固定用ボルト41を引き抜く。よって、テールシール31及びテールプレート32においては、セグメントS2への固定が解除されると共に、掘削機本体11に固定される。即ち、テールシール31及びテールプレート32の固定を、セグメントS2側から掘削機本体11側に切り替えることにより、シール構造を、テールシール21による1重シール構造から、テールシール21,31による2重シール構造に切り替える。
【0048】
また、固定用ボルト41が引き抜かれたボルト孔S2a内には、プラグ42が嵌め込まれる。これにより、土や水がそのボルト孔S2aから掘削機本体11内へ流入することを防止することができる。
【0049】
そして、図5(d)に示すように、セグメントS2を組み立てながら、テールシール21,32による止水を行うことにより、小径断面となるトンネルが施工される。
【0050】
更に、その小径トンネルと、既設の先行トンネルや地下構造物との間の距離が、所定の距離を超えると、セグメントS2の組み立てを、セグメントS1の組み立てに切り替えると共に、トンネル外径が大径となる分、シール装置も切り替える。
【0051】
つまり、図5(e)に示すように、セグメントS1の組み立てを、トンネル大径断面開始位置において開始する。
【0052】
その後、テールシール21,31が、トンネル大径断面開始位置の直前に位置するトンネル小径断面終了位置に組み立てられたセグメントS2に到達すると、取付金具33を、掘削機11及びテールプレート32から取り外す。よって、テールシール31及びテールプレート32においては、掘削機本体11への固定が解除される。即ち、テールシール31及びテールプレート32の固定を、掘削機本体11側及びセグメントS2側にも行わないことにより、シール構造を、テールシール21,31による2重シール構造から、テールシール21による1重シール構造に切り替える。
【0053】
そして、図5(f)に示すように、セグメントS1をシールドジャッキ15の反力受けとして使用することにより、掘削機本体11は前進する。このとき、テールシール31及びテールプレート32は、掘削機本体11に固定されていないため、トンネル大径断面開始位置に組み立てられたセグメントS1の後端面に当接して、そのトンネル軸方向前方側への移動が規制される。即ち、テールシール31及びテールプレート32は、トンネル小径断面終了位置において置き去りにされる。
【0054】
従って、本発明に係るトンネル掘削機及びトンネル施工時のシール径切り替え方法によれば、テールシール21のトンネル径方向内側に、テールシール31を配置し、このテールシール31を掘削機本体11の内周面に着脱可能に支持することにより、トンネルの外径寸法を変更しても、止水性能を容易に維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係るトンネル掘削機は、掘削途中において、トンネルの外径寸法を変更しても、止水性能を維持することができるため、トンネル施工技術分野において、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 トンネル掘削機
11 掘削機本体
12 カッタヘッド
13 カッタ
14 エレクタ装置
15 シールドジャッキ
15a スプレッダ
21,31 テールシール
31a シール片
32 テールプレート
32a プレート片
32b 嵌合凸部
32c 嵌合凹部
33 取付金具
41 固定用ボルト
42 プラグ
S1,S2 セグメント
S2a ボルト孔
図1
図2
図3
図4
図5