(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359399
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】スパイラル鋼管の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B21C 37/12 20060101AFI20180709BHJP
【FI】
B21C37/12 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-192617(P2014-192617)
(22)【出願日】2014年9月22日
(65)【公開番号】特開2016-59960(P2016-59960A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄住金テックスエンジ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000182982
【氏名又は名称】日鉄住金大径鋼管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】特許業務法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】大和田 誠
(72)【発明者】
【氏名】小関 大祐
【審査官】
池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第02087274(US,A)
【文献】
独国特許出願公開第10261134(DE,A1)
【文献】
特開昭56−105816(JP,A)
【文献】
特開昭55−109520(JP,A)
【文献】
米国特許第01774000(US,A)
【文献】
特開昭58−003722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に供給される素材である熱延鋼帯に曲げ加工を行って該熱延鋼帯の両縁部を衝合させてらせん状に丸めて成形する成形機と、
前記熱延鋼帯の供給方向に関して前記成形機の下流に配置されて、前記熱延鋼帯をらせん状に丸める途中で前記熱延鋼帯の両縁部が突き合わされた衝合部の内面を溶接する内面溶接機と、
前記熱延鋼帯の供給方向に関して該内面溶接機の下流に配置されて、前記衝合部の外面を溶接する外面溶接機と、
前記熱延鋼帯の供給方向に関して前記成形機の下流に配置されて、該成形機によりらせん状に丸められた前記熱延鋼帯の円周方向に沿って設けられて該熱延鋼帯の外面をガイドする複数の外面型ガイドロールとを備えるスパイラル鋼管の製造装置において、
前記複数の外面型ガイドロールは、いずれも、隣接する連続溶接部に接触しないように、前記らせん状に丸められて成形された前記熱延鋼帯の軸方向と平行な方向へ移動自在に配置されることを特徴とするスパイラル鋼管の製造装置。
【請求項2】
連続的に供給される素材である熱延鋼帯に曲げ加工を行って該熱延鋼帯の両縁部を衝合させてらせん状に丸めて成形する成形機と、
前記熱延鋼帯の供給方向に関して前記成形機の下流に配置されて、前記熱延鋼帯をらせん状に丸める途中で前記熱延鋼帯の両縁部が突き合わされた衝合部の内面を溶接する内面溶接機と、
前記熱延鋼帯の供給方向に関して該内面溶接機の下流に配置されて、前記衝合部の外面を溶接する外面溶接機と、
前記熱延鋼帯の供給方向に関して前記成形機の下流に配置されて、該成形機によりらせん状に丸められた前記熱延鋼帯の円周方向に沿って設けられて該熱延鋼帯の外面をガイドする複数の外面型ガイドロールとを備えるスパイラル鋼管の製造装置において、
前記複数の外面型ガイドロールは、いずれも、隣接する連続溶接部の間の中央部に当接することができるように、前記らせん状に丸められて成形された前記熱延鋼帯の軸方向と平行な方向へ移動自在に配置されることを特徴とするスパイラル鋼管の製造装置。
【請求項3】
前記複数の外面型ガイドロールを支持するフレームは、前記熱延鋼帯の軸方向と平行な方向へ移動自在に配置される請求項1または2に記載されたスパイラル鋼管の製造装置。
【請求項4】
前記複数の外面型ガイドロールは、前記フレームに、前記熱延鋼帯の軸方向と平行な方向に関して固定配置される請求項3に記載されたスパイラル鋼管の製造装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された製造装置を用い、前記熱延鋼帯を連続的に前記成形機に供給して、該成形機により、該熱延鋼帯に曲げ加工を行って該熱延鋼帯の両縁部を衝合させてらせん状に丸めて成形し、前記熱延鋼帯をらせん状に丸める途中で前記熱延鋼帯の両縁部が突き合わされた衝合部の内面を前記内面溶接機により溶接するとともに、前記衝合部の外面を前記外面溶接機により溶接し、該成形機によりらせん状に丸められた前記熱延鋼帯の円周方向に沿って設けられて該熱延鋼帯の外面を前記複数の外面型ガイドロールによりガイドすることによってスパイラル鋼管を製造する方法であって、
前記スパイラル鋼管の製造を開始する前に、前記熱延鋼帯の板厚および前記スパイラル鋼管の外径の一方または双方に応じて、前記らせん状に丸められて成形された前記熱延鋼帯の軸方向と平行な方向についての前記複数の外面型ガイドロール位置を変更することを特徴とするスパイラル鋼管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパイラル鋼管の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、主に、鋼管杭等の土木・建築用材として用いられるスパイラル鋼管の従来の製造装置1を簡略化して示す説明図である。
【0003】
同図に示すように、製造装置1では、素材である熱延鋼帯2を連続的に供給しながら、ピラミッド型に配置された3列の成形ロール3a〜3cにより熱延鋼帯2に曲げ加工を行ってらせん状(スパイラル)に丸めて成形する。
【0004】
らせん状に丸められた熱延鋼帯2は、らせん条に丸められる過程の途中で衝合部(突合せ部)の内面を内面溶接機4により内面溶接される。その後、その下流で衝合部の外面を外面溶接機5により外面溶接される。
【0005】
このようにして、衝合部の内面および外面を連続溶接されてスパイラル鋼管6とされる。製造されるスパイラル鋼管6の寸法は、製品のスペックに応じて、外径:400〜2700mm,肉厚:6.0〜25.4mm,長さ:最大61mであり、その重量は最大40トンである。
【0006】
3列の成形ロール3a,3bおよび3cにより曲げ加工された熱延鋼帯2’を所定の外径にガイドするため、複数列(
図2では3列示すが、実際には6〜7列)の外面型ガイドロール7a〜7iが熱延鋼帯2’の円周方向に沿って設けられる。
【0007】
成形ロール3aは、熱延鋼帯2が製造装置1へ挿入される位置でベッド(図示しない)に回転自在に配置される。成形ロール3bはベッドに取付けられたブラケット(図示しない)の垂直面に、成形ロール3cはベッドに、それぞれ熱延鋼帯2の板厚方向へ移動自在に、かつ回転自在に配置される。これら成形ロール3a,3b,3cの位置を、成形される熱延鋼帯2の板厚およびスパイラル鋼管6の径に応じて調整することにより、熱延鋼帯2を所定の径に曲げ加工する。
【0008】
また、外面型ガイドロール7a〜7iは、図示しない支持機構を介して、工場建屋の床面0に固定配置されたフレーム8により、それぞれ熱延鋼帯2’の径方向へ移動自在に、かつ回転自在に配置される。これら外面型ガイドロール7aないし7iの位置を、丸められた熱延鋼帯2’の径に応じて径方向について調整することにより、成形ロール3a〜3cにより曲げ加工された熱延鋼帯2’を所定の径にガイドする。なお、図面を見やすくするため、フレーム8は二点鎖線により透明に示す。
【0009】
図2に示す製造装置1により、板厚が異なる複数種の熱延鋼帯2を素材として外径が異なる複数種のスパイラル鋼管6を製造しようとすると、この板厚および外径の相違に起因して、丸められた熱延鋼帯2’における衝合部の内面および外面の連続溶接部6aの位置が熱延鋼帯2’(スパイラル鋼管6)の軸方向(
図2における両向き矢印方向)へ変動する。連続溶接部6aの位置がスパイラル鋼管6の軸方向へ変動すると、各列の外面型ガイドロール7a〜7c,7d〜7f、7g〜7iがスパイラル鋼管6に対する適正なガイド位置(隣接する連続溶接部6aの間の中央部)に当接することができなくなる。最悪の場合には、各列の外面型ガイドロール7a〜7c,7d〜7f、7g〜7iが連続溶接部6aに当接し、曲げ加工された熱延鋼帯2’を所定の径にガイドすることが難しくなるだけでなく、連続溶接部6aの溶接品質が低下する可能性も生じる。
【0010】
また、板厚および外径に応じて、スパイラル鋼管6における連続溶接部6aの位置が、スパイラル鋼管6の軸方向(
図2における両向き矢印方向)へ変動するため、この製造装置1により製造される全ての外径および肉厚のスパイラル鋼管6に対して外面型ガイドロール7a〜7c,7d〜7f、7g〜7iが適正な位置をガイドするためには、スパイラル鋼管6の軸方向に関して外面型ガイドロール7a〜7c,7d〜7f、7g〜7iを設置する範囲9を広く設定する必要(上記スペックのスパイラル鋼管6を製造するためには範囲9の長さを3m程度とする必要がある)や、製造されるスパイラル鋼管6の外径および肉厚に応じて外面型ガイドロール7a〜7c,7d〜7f、7g〜7iの設置位置をスパイラル鋼管6の軸方向へ変更する(外面型ガイドロール7a〜7c,7d〜7f、7g〜7iを付け替える)必要を生じる。
【0011】
このため、外面型ガイドロール7a〜7c,7d〜7f、7g〜7iの設置数を少なくできないとともに、多数の外面型ガイドロール7a〜7c,7d〜7f、7g〜7iを支持するフレーム8の剛性を高めるためにフレーム8を大型化せざるを得なかった。
【0012】
このため、製造装置1は、必然的に部品点数が増加してその構造が複雑となり、コストが嵩むとともに保守に手間を要し、また外面型ガイドロール7a〜7c,7d〜7f、7g〜7iの付け替え作業に多大な工数を要し、さらに成形されるスパイラル鋼管6の外面に傷が入る恐れが高まるという問題があった。
【0013】
特許文献1には、素材である熱延鋼帯をスパイラル状に連続的に曲げ成形しながら衝合部を溶接してスパイラル鋼管を製造する際に、熱延鋼帯を曲げ成形した後、所定の径にガイドしていく外面型ガイドロールを2列ないし3列配置し(但し、2列の場合は、3列の外面型ガイドロールの中央列の外面型ガイドロールを省略する)、3列の外面型ガイドロールの中央の列に対し左右両側の2列を、成形されるパイプの円周方向で、それぞれ40°ないし55°隔てて配置する(なお、中央の列の外面型ガイドロールは成形ロールの垂直方向で上方に設置する)ことによって、ガイドロール列の最少列化と最適配置を可能とする発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平7−265943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、特許文献1により開示された発明であっても、製造されるスパイラル鋼管の外径や肉厚の変動幅が大きい場合、例えば上記スペックのスパイラル鋼管6を製造する場合には、外面型ガイドロール7a〜7c,7d〜7f、7g〜7iを設置する範囲9を、例えば3mと広く設定する必要や、製造されるスパイラル鋼管6の外径および肉厚に応じて外面型ガイドロール7a〜7c,7d〜7f、7g〜7iをスパイラル鋼管6の軸方向へ付け替える必要を生じてしまい、上記課題を抜本的に解決することはできない。
【0016】
本発明は、従来の技術が有するこのような課題に鑑みてなされたものであり、製造されるスパイラル鋼管の外径や肉厚の変動幅が大きい場合であっても、製造される全ての外径および肉厚のスパイラル鋼管に対して、外面型ガイドロールの設置位置をスパイラル鋼管の軸方向へ簡単に変更でき、これにより、スパイラル鋼管の軸方向に関して外面型ガイドロールの設置範囲を狭くしても外面型ガイドロールにより適正な位置をガイドできるために、外面型ガイドロールの設置数の低減、および外面型ガイドロールを支持するフレームの小型化を図ることができるスパイラル鋼管の製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、
(A)外面型ガイドロールをスパイラル鋼管の軸方向へ移動自在に配置しておき、スパイラル鋼管の製造に先立って、製造されるスパイラル鋼管の外径や肉厚に応じて、外面型ガイドロールの設置位置をスパイラル鋼管の軸方向へ変更してスパイラル鋼管を製造することにより、少ない設置数の外面型ガイドロールであっても、製造される全てのスパイラル鋼管の外面を適正な位置でガイドでき、外面型ガイドロールの設置数の低減、および外面型ガイドロールを支持するフレームの小型化を図ることができること、および
(B)外面型ガイドロールをスパイラル鋼管の軸方向へ移動自在に配置するには、フレームをスパイラル鋼管の軸方向へ移動自在に配置することが簡単であるために、望ましく、さらに、フレームに外面型ガイドロールをスパイラル鋼管の軸方向へ関して固定配置することが、部品点数の上昇を抑制できるために、さらに望ましいこと
を知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0018】
本発明は、(a)連続的に供給される素材である熱延鋼帯に曲げ加工を行ってこの熱延鋼帯の両縁部を衝合させてらせん状に丸めて成形する成形機と、(b)熱延鋼帯の供給方向に関して成形機の下流に配置されて、熱延鋼帯をらせん状に丸める途中で熱延鋼帯の両縁部が突き合わされた衝合部の内面を溶接する内面溶接機と、(c)熱延鋼帯の供給方向に関して内面溶接機の下流に配置されて、衝合部の外面を溶接する外面溶接機と、(d)熱延鋼帯の供給方向に関して成形機の下流に配置されて、成形機によりらせん状に丸められた熱延鋼帯の円周方向に沿って設けられて熱延鋼帯の外面をガイドする複数の外面型ガイドロールとを備えるスパイラル鋼管の製造装置において、複数の外面型ガイドロールは、いずれも、らせん状に丸められて成形された熱延鋼帯の軸方向と略平行な方向へ移動自在に配置されることを特徴とするスパイラル鋼管の製造装置である。
【0019】
別の観点からは、本発明は、本発明に係る製造装置を用い、熱延鋼帯を連続的に成形機に供給して、この成形機により、熱延鋼帯に曲げ加工を行って熱延鋼帯の両縁部を衝合させてらせん状に丸めて成形し、熱延鋼帯をらせん状に丸める途中で熱延鋼帯の両縁部が突き合わされた衝合部の内面を内面溶接機により溶接するとともに、衝合部の外面を外面溶接機により溶接し、成形機によりらせん状に丸められた熱延鋼帯の円周方向に沿って設けられて熱延鋼帯の外面を複数の外面型ガイドロールによりガイドすることによって、スパイラル鋼管を製造する方法であって、スパイラル鋼管の製造を開始する前に、熱延鋼帯の板厚およびスパイラル鋼管の外径の一方または双方に応じて、らせん状に丸められて成形された熱延鋼帯の軸方向と略平行な方向についての複数の外面型ガイドロール位置を変更することを特徴とするスパイラル鋼管の製造方法である。
【0020】
これらの本発明では、複数の外面型ガイドロールを支持するフレームは、熱延鋼帯の軸方向と略平行な方向へ移動自在に配置されることが、望ましい。この場合に、複数の外面型ガイドロールは、フレームに、熱延鋼帯の軸方向と平行な方向に関して固定配置されることが、さらに望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、製造されるスパイラル鋼管の外径や肉厚の変動幅が大きい場合であっても、製造される全ての外径および肉厚のスパイラル鋼管に対して、外面型ガイドロールの設置位置をスパイラル鋼管の軸方向へ簡単に変更でき、これにより、スパイラル鋼管の軸方向に関して外面型ガイドロールの設置範囲を狭くしても外面型ガイドロールにより適正な位置をガイドできるために、外面型ガイドロールの設置数の低減、および外面型ガイドロールを支持するフレームの小型化を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、スパイラル鋼管の本発明に係る製造装置を簡略化して示す斜視図である。
【
図2】
図2は、スパイラル鋼管の従来の製造装置を簡略化して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図面を参照しながら本発明に係るスパイラル鋼管の製造装置および製造方法を説明する。
【0024】
1.製造装置10
図1は、スパイラル鋼管6の本発明に係る製造装置10を簡略化して示す説明図である。なお、
図1では、上述した
図2に示す製造装置1の構成要素と同じ構成要素には同一の図中符号を付することにより、重複する説明は適宜省略する。
【0025】
製造装置10は、成形機3と、内面溶接機4と、外面溶接機5と、複数の外面型ガイドロール11a〜11fとを備えるので、これらの構成要素を順次説明する。
【0026】
[成形機3]
図1に示すように、製造装置10では、素材である熱延鋼帯2を連続的に供給しながら、ピラミッド型に配置された3列の成形ロール3a〜3cを備える成形機3により、熱延鋼帯2に曲げ加工を行ってらせん状(スパイラル)に丸めて成形する。
【0027】
成形ロール3aは、熱延鋼帯2が製造装置1へ挿入される位置でベッド(図示しない)に配置される。成形ロール3bはベッドに取付けられたブラケット(図示しない)の垂直面に、成形ロール3cはベッドに、それぞれ熱延鋼帯2の板厚方向へ移動自在に、かつ回転自在に配置される。
【0028】
これら成形ロール3a,3b,3cの位置を、成形される熱延鋼帯2の板厚およびスパイラル鋼管6の径に応じて適宜調整することにより、熱延鋼帯2を所定の径に曲げ加工する。
【0029】
このように、成形機3は、連続的に供給される素材である熱延鋼帯2に曲げ加工を行って熱延鋼帯2の両縁部を衝合させてらせん状に丸めて成形する。
【0030】
成形機3は、この種の成形機として慣用されるものであればよく、そのような成形機は当業者には周知であるので、成形機3に関するこれ以上の説明は省略する。
[内面溶接機4]
らせん状に丸められた熱延鋼帯2は、らせん条に丸められる過程の途中で衝合部(突合せ部)の内面を内面溶接機4により内面溶接される。すなわち、内面溶接機4は、熱延鋼帯2の供給方向に関して成形機3の下流側に配置されて、熱延鋼帯2をらせん状に丸める途中で熱延鋼帯2の両縁部が突き合わされた衝合部の内面を溶接する。
【0031】
内面溶接機4は、この種の内面溶接機として慣用されるものであればよく、そのような内面溶接機は当業者には周知であるので、内面溶接機4に関するこれ以上の説明は省略する。
【0032】
[外面溶接機5]
内面溶接された後の熱延鋼帯2’は、その下流で衝合部の外面を外面溶接機5により外面溶接されることによって、衝合部の内面および外面を連続溶接されてスパイラル鋼管6とされる。
【0033】
製造されるスパイラル鋼管6の寸法は、製品のスペックに応じて、外径:400〜2700mm,肉厚:6.0〜25.4mm,長さ:最大61mであり、その重量は最大40トンである。
【0034】
このように、外面溶接機5は、熱延鋼帯2の供給方向に関して内面溶接機4の下流に配置されて、衝合部の外面を溶接する。
【0035】
[複数の外面型ガイドロール11a〜11f]
3列の成形ロール3a,3bおよび3cにより曲げ加工された熱延鋼帯2’を所定の外径にガイドするための複数列(
図2では2列示すが、実際には3〜4列)の外面型ガイドロール11a〜11c,11d〜11fが、熱延鋼帯2’の円周方向に沿って設けられる。
【0036】
また、外面型ガイドロール11a〜11fは、図示しない支持機構を介して、工場建屋の床面0に対して移動自在に配置されたフレーム12により、それぞれ熱延鋼帯2’の径方向へ移動自在に、かつ回転自在に支持される。これら外面型ガイドロール11aないし11fの位置を、丸められた熱延鋼帯2’の径に応じて径方向について調整することにより、成形ロール3a〜3cにより曲げ加工された熱延鋼帯2’を所定の径にガイドする。なお、図面を見やすくするため、フレーム12は二点鎖線により透明に示す。
【0037】
フレーム12は、その脚部にベース板13が固定されており、ベース板13には、工場建屋の床面0にコロ14,14が装着される。コロ14,14が回転することにより、フレーム12は、丸められた熱延鋼帯2’の軸方向と平行な方向(
図1における両向き矢印方向)へ移動自在に配置される。フレーム12を移動させる駆動源は特定の手段には限定されないが、例えば 油圧シリンダーやモーターを用いることが例示される。
【0038】
上記スペックのスパイラル鋼管6を製造するためには、フレーム12の移動距離を0.5〜1.0m程度とすればよい。
【0039】
本発明は、フレーム12を、コロ14,14を用いて移動させる態様には限定されず、例えばラック・ピニオンやガイドレール、さらにはLMガイドといった公知の移動手段を用いてフレーム12を移動させてもよいことは言うまでもない。
【0040】
製造装置10では、複数の外面型ガイドロール11a〜11fが、フレーム12に、熱延鋼帯2’の軸方向と略平行な方向に関して固定配置されるが、これに限定されるものではない。
【0041】
複数の外面型ガイドロールガイドロール11a〜11fは、適宜支持機構を介して、フレーム12に対して、熱延鋼帯2’の軸方向と略平行な方向に関して移動自在に配置されるように構成してもよく、この場合には、フレーム12を工場建屋の床面0に対して固定配置してもよい。
【0042】
いずれにしても、複数の外面型ガイドロール11a〜11fが、いずれも、らせん状に丸められて成形された熱延鋼帯2’の軸方向と略平行な方向へ移動自在に配置されればよい。
【0043】
このように、複数の外面型ガイドロール11a〜11fは、らせん状に丸められて成形された熱延鋼帯2’の軸方向と略平行な方向へ移動自在に配置され、熱延鋼帯2の供給方向に関して成形機3の下流に配置されて、成形機3によりらせん状に丸められた熱延鋼帯2’の円周方向に沿って設けられて熱延鋼帯2’の外面をガイドする。
製造装置10は以上のように構成される。
【0044】
2.製造方法
次に、製造装置10を用いるスパイラル鋼管6の製造方法を説明する。
【0045】
図1に示すように、製造装置10を用いて、まず、熱延鋼帯2を連続的に成形機3に供給する。成形機3により、熱延鋼帯2に曲げ加工を行って熱延鋼帯2の両縁部を衝合させてらせん状に丸めて成形する。
【0046】
熱延鋼帯2をらせん状に丸める途中で熱延鋼帯2の両縁部が突き合わされた衝合部の内面を内面溶接機4により溶接するとともに、衝合部の外面を外面溶接機5により溶接する。
【0047】
この際、成形機3によりらせん状に丸められた熱延鋼帯2’の円周方向に沿って設けられて熱延鋼帯2の外面を複数の外面型ガイドロール11a〜11fによりガイドすることによって、スパイラル鋼管6を製造する。
【0048】
このようにしてスパイラル鋼管6を製造するのに先立って、各列の外面型ガイドロール11a〜11c,11d〜11fが製造しようとするスパイラル鋼管6に対する適正なガイド位置(隣接する連続溶接部6aの間の中央部)に当接することができるように、熱延鋼帯2の板厚および、製造されるスパイラル鋼管6の外径の一方または双方に応じて、らせん状に丸められて成形された熱延鋼帯2’の軸方向と略平行な方向についてのフレーム12の位置を変更することによって、らせん状に丸められて成形された熱延鋼帯2’の軸方向と平行な方向についての複数の外面型ガイドロール11a〜11fの位置を変更する。
【0049】
すなわち、板厚が異なる熱延鋼帯2を素材として外径が異なるスパイラル鋼管6を製造する場合に、各列の外面型ガイドロール11a〜11c,11d〜11fが製造しようとするスパイラル鋼管6に対する適正なガイド位置(隣接する連続溶接部6aの間の中央部)に当接することができるように、らせん状に丸められて成形された熱延鋼帯2’の軸方向と平行な方向についてのフレーム12の位置を変更する。
【0050】
このため、本発明によれば、製造されるスパイラル鋼管6の外径や肉厚の変動幅が大きい場合であっても、製造される全ての外径および肉厚のスパイラル鋼管6に対して、外面型ガイドロール11a〜11c,11d〜11fの設置位置をスパイラル鋼管6の軸方向へ簡単に変更でき、これにより、スパイラル鋼管6の軸方向に関して外面型ガイドロール11a〜11c,11d〜11fの設置範囲9を例えば1.5m程度に狭くしても外面型ガイドロール11a〜11c,11d〜11fによりスパイラル鋼管6の外面の適正な位置をガイドできる。
【0051】
したがって、本発明によれば、外面型ガイドロール11a〜11c,11d〜11fの設置数の低減、および外面型ガイドロール11a〜11c,11d〜11fを支持するフレーム12の小型化を図ることができるようになる。
【符号の説明】
【0052】
1 製造装置
2 熱延鋼帯
2’ 熱延鋼帯
3 成形機
4 内面溶接機
5 外面溶接機
6 スパイラル鋼管
11a〜11f 外面型ガイドロール