【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「低炭素社会を実現する超低電圧デバイスプロジェクト」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0017】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0018】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことはいうまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0019】
以下、代表的な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0020】
さらに、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見やすくするためにハッチングを省略する場合もある。
【0021】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造>
初めに、本実施の形態1の半導体装置について、図面を参照して説明する。
図1は、実施の形態1の半導体装置の要部断面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態1の半導体装置は、半導体基板としてのSOI基板SB1と、SOI基板SB1に形成された電界効果トランジスタとしてのMISFETQ1を備える。
【0023】
本実施の形態1の半導体装置では、MISFETQ1は、SOTB技術を用いたものであり、FD−SOI技術を用いたものである。すなわち、本実施の形態1の半導体装置では、MISFETQ1のゲート電極下に位置する部分のSOI層は、不純物濃度が十分に低いチャネル、あるいは、不純物が導入されていないチャネル、いわゆるドーパントレスチャネルである。
【0024】
まず、SOI基板SB1の具体的な構成について説明する。SOI基板SB1は、基体SS1と、グランドプレーン領域GPと、絶縁層、すなわち埋め込み酸化膜としてのBOX層3と、半導体層としてのSOI層4と、を有する。基体SS1上に、グランドプレーン領域GPが形成され、グランドプレーン領域GP上に、BOX層3が形成され、BOX層3上に、SOI層4が形成されている。また、SOI層4には、半導体素子としてのMISFETQ1が形成されている。
【0025】
なお、本願明細書では、説明の便宜上、SOI基板SB1の主面PSを、SOI層4の上面と定義する。
【0026】
基体SS1は、例えばシリコン(Si)基板からなり、好適には、シリコン単結晶基板からなる。BOX層3は、例えば酸化シリコン膜からなる。BOX層3の厚さは、例えば30nm程度である。SOI層4は、例えばシリコン単結晶層からなる。SOI層4の厚さは、例えば20nm程度である。
【0027】
グランドプレーン領域GPは、半導体領域1を含む。半導体領域1は、例えばシリコンカーバイド(SiC)膜などからなり、シリコン(Si)基板からなる基体SS1が有する不純物の拡散係数よりも小さい不純物の拡散係数を有する。また、MISFETQ1がnチャネル型のMISFETである場合には、半導体領域1には、例えばボロン(B)などからなるp型の不純物が導入されており、半導体領域1は、p型の半導体領域である。
【0028】
これにより、後述する
図29を用いて説明するように、半導体領域1が例えばシリコン(Si)基板からなる基体SS1の一部からなる場合など、シリコンからなる場合に比べ、半導体領域1における不純物の拡散係数を低くすることができる。そのため、活性化アニール後においても、半導体領域1における不純物の濃度を高くすることができ、SOI層4に対する半導体領域1の電位、すなわち内部電位Vbiの絶対値を大きくすることができる。したがって、MISFETQ1の閾値電圧の可変範囲を広げることができる。半導体領域1の厚さTH1は、グランドプレーン領域へのイオン注入のピーク値の半値幅で例えば70nm程度である。
【0029】
好適には、SiCからなる半導体領域1は、Siからなる基体SS1上にエピタキシャル成長している。これにより、Siからなる基体SS1の上層部にカーボン(C)をイオン注入してSiCからなる半導体領域1が形成される場合に比べ、半導体領域1の厚さTH1を厚くすることができる。また、半導体領域1がエピタキシャル成長している場合、半導体領域1がイオン注入により形成される場合に比べ、半導体領域1中に導入されるカーボンの量を容易に増加させることができる。
【0030】
なお、半導体領域1が基体SS1上にエピタキシャル成長するとは、基体SS1上に半導体領域1が成長する際に、成長する半導体領域1の結晶が下地の基体SS1の結晶面にそろって配列するように、半導体領域1が成長することを意味する。
【0031】
好適には、シリコンカーバイド(SiC)の組成式をSi
1−xC
xと表記したときのx、すなわちシリコン(Si)とカーボン(C)との和に対するカーボンの組成比は、0.01以上である。xが0.01以上の場合、半導体領域1がSiからなる場合に比べ、半導体領域1における不純物の拡散係数を確実に低くすることができる。
【0032】
より好適には、xは、0.01〜0.10である。xが0.10以下の場合、基体SS1の上層部にカーボンをイオン注入してSiCからなる半導体領域1を容易に形成することができる。
【0033】
さらに好適には、xは、0.01〜0.014である。xが0.014以下の場合、基体SS1におけるSiの結晶格子と、半導体領域1におけるSiCの結晶格子との格子定数の差が小さくなるので、SiCからなる半導体領域1に歪が入ることを防止または抑制することができる。
【0034】
また、後述する
図29を用いて説明するように、好適には、半導体領域1の厚さ方向における不純物の濃度分布は、半導体領域1の上面と半導体領域1の下面との間にピークを有し、半導体領域1の厚さTH1は、ピークの半値幅ΔRpよりも厚い。あるいは、好適には、半導体領域1の厚さ方向における不純物の濃度分布は、半導体領域1の上面と半導体領域1の下面との間にピークを有し、半導体領域1の上面における不純物濃度、および、半導体領域1の下面における不純物濃度のいずれも、ピークにおける不純物濃度の半分よりも小さい。
【0035】
これにより、少なくともピークにおける不純物濃度すなわちピーク値の1/2以上の不純物濃度を有する部分が、半導体領域1の内部に包含されることになるので、半導体領域1における不純物の濃度を確実に高くすることができる。そして、活性化アニールを行った後においても、グランドプレーン領域GP全体における不純物濃度の平均値が低くなることを防止または抑制することができる。
【0036】
また、SOI基板SB1は、素子分離領域AR0と、活性領域としてのMISFET形成領域AR1と、を有する。素子分離領域AR0と、MISFET形成領域AR1とは、SOI基板SB1の主面PS側に規定されている。素子分離領域AR0では、素子分離溝5の内部に、絶縁膜からなる素子分離膜6が形成されている。MISFET形成領域AR1は、素子分離領域AR0により区画された領域であり、MISFET形成領域AR1には、MISFETQ1が形成されている。
【0037】
本実施の形態1では、MISFET形成領域AR1で、nチャネル型のMISFETQ1が形成される場合について説明する。しかし、MISFET形成領域AR1とは別のMISFET形成領域で、導電型を逆の導電型にしたpチャネル型のMISFETが形成されてもよく、また、CMISFET(Complementary MISFET)などが形成されてもよい。
【0038】
MISFET形成領域AR1とは別のMISFET形成領域で、pチャネル型のMISFETが形成される場合には、その別のMISFET形成領域で、MISFET形成領域AR1における半導体領域1と同層に形成される半導体領域には、n型の不純物が導入され、その半導体領域は、n型の半導体領域である。
【0039】
MISFET形成領域AR1で、基体SS1の上層部には、ウェル領域7が形成されている。ウェル領域7は、例えばボロン(B)などのp型の不純物が導入されたp型の半導体領域である。ウェル領域7における不純物濃度は、例えば5×10
17〜5×10
18cm
−3程度である。
【0040】
ウェル領域7は、MISFET形成領域AR1から、平面視において、MISFET形成領域AR1の外部の領域AR2にかけて、形成されている。MISFET形成領域AR1と領域AR2との間には、素子分離領域AR0が設けられている。領域AR2に形成された部分のウェル領域7の上層部には、コンタクト領域CRが形成されている。コンタクト領域CR上には、BOX層3およびSOI層4を貫通してウェル領域7に達する開口部OPが形成されており、開口部OPの底部ではコンタクト領域CRが露出している。このコンタクト領域CRが露出した領域AR2は、タップと称され、コンタクト領域CRと電気的に接続されたプラグPGが形成される領域である。すなわち、領域AR2では、コンタクト領域CR上に、プラグPGが形成され、領域AR2に位置する部分のウェル領域7は、コンタクト領域CRを介して、プラグPGと電気的に接続されている。
【0041】
領域AR2に位置する部分のウェル領域7は、コンタクト領域CRおよびプラグPGを介して、基板バイアスを印加する電圧発生回路と、電気的に接続されてもよい。これにより、グランドプレーン領域GPに基板バイアスを印加することができ、グランドプレーン領域GPに基板バイアスを印加しない場合に比べ、MISFETQ1の閾値電圧の可変範囲をさらに広げることができる。
【0042】
なお、MISFET形成領域AR1とは別のMISFET形成領域で、pチャネル型のMISFETが形成される場合には、その別のMISFET形成領域で、基体SS1の上層部には、n型のウェル領域が形成される。
【0043】
また、領域AR3には、MISFETQ2が形成されている。このMISFETQ2は主に入出力回路等に利用される高耐圧のトランジスタである。MISFETQ2はMISFETQ1と異なり、SOI層4およびBOX層3が除去された基体SS1の表面に形成されている。なお、以下の図面では説明簡略化のため、必要なときを除き、領域AR3とMISFETQ2の説明は省略する。
【0044】
次に、MISFET形成領域AR1に形成されたnチャネル型のMISFETQ1の具体的な構成について説明する。
【0045】
MISFETQ1は、SOI層4からなるチャネル領域CHと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極GEと、絶縁膜IF1およびIF2と、SOI層4からなるエクステンション領域EX1およびEX2と、サイドウォールスペーサSW1およびSW2と、半導体領域としてのソース・ドレイン領域SD1およびSD2と、を有する。
【0046】
なお、本願明細書では、説明の便宜上、MISFETQ1を、チャネル領域CHおよびエクステンション領域EX1およびEX2など、BOX層3よりも上方に形成された部分からなるものとして説明する。しかし、MISFETQ1の閾値電圧Vthは、ゲート電極GEに含まれる導電膜の仕事関数により調整されるのに加え、バックゲートに相当するグランドプレーン領域GPの内部電位Vbiにより調整される。
【0047】
MISFET形成領域AR1では、ゲート電極GEは、SOI層4からなるチャネル領域CH上に、ゲート絶縁膜GIを介して形成されている。
【0048】
ゲート絶縁膜GIは、例えば酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜である。あるいは、ゲート絶縁膜GIとして、例えば、酸化ハフニウム(HfO
2)膜、酸化ジルコニウム(ZrO
2)膜、酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜、酸化タンタル(Ta
2O
5)膜または酸化ランタン(La
2O
3)膜などの金属酸化物膜であるHigh−k膜を用いることもできる。さらに、ゲート絶縁膜GIとして、酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜とHigh−k膜との積層膜を用いることもできる。
【0049】
なお、本願明細書では、High−k膜とは、窒化シリコン膜の誘電率よりも高い誘電率を有する膜、すなわち高誘電率膜を意味する。
【0050】
ゲート電極GEは、例えば不純物が導入されて低抵抗率とされている多結晶シリコン膜、すなわちドープトポリシリコン膜からなる。あるいは、ゲート電極GEとして、例えば、窒化チタン(TiN)膜、窒化タンタル(TaN)膜、窒化タングステン(WN)膜、炭化チタン(TiC)膜、炭化タンタル(TaC)膜、炭化タングステン(WC)膜または窒化炭化タンタル(TaCN)膜などの金属膜を用いることもできる。
【0051】
なお、ゲート電極GEとして、これらの金属膜と多結晶シリコン膜との積層構造であるMIPS(Metal Inserted Poly-silicon Stack)構造を有するものを用いることもできる。
【0052】
MISFET形成領域AR1では、平面視において、ゲート電極GEの両側のうち、一方の側に位置する部分のSOI層4には、エクステンション領域EX1が形成され、他方の側に位置する部分のSOI層4には、エクステンション領域EX2が形成されている。エクステンション領域EX1およびEX2の各々は、例えばリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物が導入されたn型の半導体領域である。エクステンション領域EX1およびEX2の各々における不純物濃度は、例えば2×10
19cm
−3程度以上であり、好ましくは1×10
20cm
−3程度以上である。
【0053】
なお、MISFET形成領域AR1とは別のMISFET形成領域で、pチャネル型のMISFETが形成される場合には、その別のMISFET形成領域で、MISFET形成領域AR1におけるSOI層4と同層に形成されるSOI層には、p型の不純物がイオン注入され、p型のエクステンション領域が形成される。
【0054】
平面視において、ゲート電極GEの一方の側の側面には、オフセットスペーサとしての絶縁膜IF1を介して、側壁絶縁膜としてのサイドウォールスペーサSW1が形成されている。また、平面視において、ゲート電極GEの他方の側の側面には、オフセットスペーサとしての絶縁膜IF2を介して、側壁絶縁膜としてのサイドウォールスペーサSW2が形成されている。サイドウォールスペーサSW1およびSW2の各々は、例えば酸化シリコン膜からなる。
【0055】
MISFET形成領域AR1では、平面視において、サイドウォールスペーサSW1を挟んでゲート電極GEと反対側に位置する部分のSOI層4上、すなわちエクステンション領域EX1上に、選択エピタキシャル成長により成長したエピタキシャルシリコン膜からなるソース・ドレイン領域SD1が形成されている。また、MISFET形成領域AR1では、平面視において、サイドウォールスペーサSW2を挟んでゲート電極GEと反対側に位置する部分のSOI層4上、すなわちエクステンション領域EX2上に、選択エピタキシャル成長により成長したエピタキシャルシリコン膜からなるソース・ドレイン領域SD2が形成されている。
【0056】
ソース・ドレイン領域SD1およびSD2の各々は、例えばリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物が導入されたn型の半導体領域である。ソース・ドレイン領域SD1およびSD2の各々における不純物濃度は、エクステンション領域EX1およびEX2のいずれにおける不純物濃度よりも高く、例えば5×10
20cm
−3程度以上である。
【0057】
ソース・ドレイン領域SD1は、エクステンション領域EX1に接触し、ソース・ドレイン領域SD1におけるn型の不純物濃度は、エクステンション領域EX1におけるn型の不純物濃度よりも高い。また、ソース・ドレイン領域SD2は、エクステンション領域EX2に接触し、ソース・ドレイン領域SD2におけるn型の不純物濃度は、エクステンション領域EX2におけるn型の不純物濃度よりも高い。
【0058】
これにより、エクステンション領域EX1とそれよりも高不純物濃度のソース・ドレイン領域SD1とからなり、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有するソース・ドレイン領域を形成することができる。また、エクステンション領域EX2とそれよりも高不純物濃度のソース・ドレイン領域SD2とからなり、LDD構造を有するソース・ドレイン領域を形成することができる。
【0059】
あるいは、ソース・ドレイン領域SD1およびSD2の各々として、平面視において、サイドウォールスペーサSW1を挟んでゲート電極GEと反対側、または、サイドウォールスペーサSW2を挟んでゲート電極GEと反対側に位置する部分のSOI層4にn型の不純物を導入して形成されたソース・ドレイン領域を用いることもできる。
【0060】
MISFET形成領域AR1では、ソース・ドレイン領域SD1およびSD2、ならびに、ゲート電極GEの各々の表面に、コバルトシリサイド層またはニッケルシリサイド層などの金属シリサイド層SLが、例えばサリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)技術により、形成されている。なお、領域AR2では、コンタクト領域CRの上面に、金属シリサイド層SLが形成されている。
【0061】
SOI基板SB1の主面PS上には、nチャネル型のMISFETQ1を覆うように、層間絶縁膜IL1が形成されている。層間絶縁膜IL1は、例えば、酸化シリコン膜の単体膜、あるいは、窒化シリコン膜とそれよりも厚い酸化シリコン膜との積層膜などからなり、層間絶縁膜IL1の上面は、平坦化されている。
【0062】
層間絶縁膜IL1にはコンタクトホールCNが形成されており、コンタクトホールCN内には、導電性のプラグPGが形成されている。MISFET形成領域AR1では、コンタクトホールCNおよびプラグPGは、ソース・ドレイン領域SD1およびSD2の各々の上、ならびに、ゲート電極GE上(図示せず)、などに形成され、領域AR2では、コンタクトホールCNおよびプラグPGは、コンタクト領域CR上に形成されている。MISFET形成領域AR1では、プラグPGの底部は、ソース・ドレイン領域SD1およびSD2の各々、ならびに、ゲート電極GE(図示せず)、などと電気的に接続され、領域AR2では、プラグPGの底部は、コンタクト領域CRと電気的に接続されている。
【0063】
プラグPGが埋め込まれた層間絶縁膜IL1上には、例えば酸化シリコン膜などからなる絶縁膜IL2が形成されており、絶縁膜IL2に形成された配線溝、すなわち開口部の内部に、第1層配線としての配線ML1が形成されている。MISFET形成領域AR1では、配線ML1は、プラグPGを介して、ソース・ドレイン領域SD1およびSD2の各々、ならびに、ゲート電極GE(図示せず)、などと電気的に接続され、領域AR2では、配線ML1は、プラグPGを介して、コンタクト領域CRと電気的に接続される。
【0064】
配線ML1として、例えばダマシン技術により形成された銅(Cu)を主導体膜とする導体膜を用いることができるが、他の形態として、パターニングされた例えばタングステン(W)膜またはアルミニウム(Al)膜などの導体膜を用いることもできる。
【0065】
<半導体装置の製造方法>
次に、本実施の形態1の半導体装置の製造方法について説明する。
図2および
図3は、実施の形態1の半導体装置の製造工程の一部を示すプロセスフロー図である。
図4〜
図21は、実施の形態1の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0066】
本実施の形態1においては、MISFET形成領域AR1で、nチャネル型のMISFETQ1(
図19参照)を形成する場合について説明する。しかし、MISFET形成領域AR1とは別のMISFET形成領域で、導電型を逆にしたpチャネル型のMISFETを形成してもよく、また、CMISFET(Complementary MISFET)などを形成してもよい。
【0067】
初めに、
図4〜
図7を用いて、SOI基板SB1を用意する工程を説明する。
【0068】
まず、
図4に示すように、基体SS1を用意する(
図2のステップS11)。このステップS11では、例えばシリコン(Si)基板からなる基体SS1を用意する。好適には、基体SS1は、例えば面方位が(100)、抵抗率が5Ωcm程度のp型のシリコン単結晶基板からなる。基体SS1がシリコン単結晶基板からなることにより、後述するステップS12において、基体SS1上に、半導体領域1aを容易にエピタキシャル成長させることができる。
【0069】
次に、
図4に示すように、基体SS1上に、半導体領域1aをエピタキシャル成長させる(
図2のステップS12)。このステップS12では、基体SS1上に、例えばシリコンカーバイド(SiC)膜からなるグランドプレーン領域用の半導体領域1aを、例えば化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法によりエピタキシャル成長させる。これにより、基体SS1と半導体領域1aとからなる半導体基板SB2を用意することになる。
【0070】
好適には、シリコンカーバイド(SiC)の組成式をSi
1−xC
xと表記したときのx、すなわちシリコン(Si)とカーボン(C)との和に対するカーボンの組成比は、0.01以上である。xが0.01以上の場合、半導体領域1aがSiからなる場合に比べ、半導体領域1aにおける不純物の拡散係数を確実に低くすることができる。
【0071】
本実施の形態1では、半導体領域1aをエピタキシャル成長させる場合、後述する実施の形態1の変形例で半導体領域1aをイオン注入により形成する場合に比べ、半導体領域1中に導入されるカーボンの量を容易に増加させることができる。例えばxが0.10を超える場合でも、SiCからなる半導体領域1aを容易に形成することができる。
【0072】
さらに好適には、xは、0.01〜0.014である。xが0.014以下の場合、基体SS1におけるSiの結晶格子と、半導体領域1aにおけるSiCの結晶格子との格子定数の差が小さくなるので、SiCからなる半導体領域1aに歪が入ることを防止または抑制することができる。すなわち、後述のイオン注入では、必要な組成比を得るために高濃度のカーボンを注入する必要がある。このとき、注入量が多すぎると結晶に歪が発生してしまうおそれがある。これに対して、エピタキシャル成長させる場合では歪が入らないように、所望の組成比を構成しやすいという優位性がある。
【0073】
次に、
図5に示すように、基体SS2を用意する(
図2のステップS13)。このステップS13では、例えばシリコン(Si)基板など半導体からなる基体SS2を用意する。好適には、基体SS2は、例えば面方位が(100)、抵抗率が5Ωcm程度のp型のシリコン単結晶基板からなる。基体SS2がシリコン単結晶基板からなることにより、基体SS2のうち表層部SS21からなるSOI層4(
図7参照)を、例えば面方位が(100)であり、オリエンテーションフラットまたはノッチと平行な方向の結晶方位が<110>であるシリコン単結晶からなるものとすることができる。
【0074】
次に、
図5に示すように、絶縁層3aを形成する(
図2のステップS14)。このステップS14では、基体SS2の表面に、例えば酸化シリコン膜からなる絶縁層3aを例えば熱酸化法により形成する。絶縁層3aの厚さは、例えば30nmである。これにより、基体SS2と、基体SS2上に形成された絶縁層3aと、からなる半導体基板SB3を用意する。
【0075】
次に、
図6に示すように、半導体基板SB3を半導体基板SB2上に貼り合わせる(
図2のステップS15)。このステップS15では、絶縁層3aが半導体領域1aと対向した状態で、絶縁層3aが半導体領域1aと接触するように、半導体基板SB3と半導体基板SB2とを圧着させ、例えば1000℃の高温に保持し、熱処理を施すことにより、半導体基板SB3を半導体基板SB2上に貼り合わせる。このとき、絶縁層3aと半導体領域1aとが接合される。
【0076】
次に、
図7に示すように、半導体基板SB2上に貼り合わせた半導体基板SB3の基体SS2のうち半導体基板SB2側の表層部SS21以外の部分を除去する(
図2のステップS16)。
【0077】
このステップS16では、例えば半導体基板SB2上に貼り合わせた半導体基板SB3の基体SS2の厚さが例えば15nm程度になるように研磨して薄化する。これにより、基体SS2のうち半導体基板SB2側の表層部SS21以外の部分を半導体基板SB2上から除去し、絶縁層3aと表層部SS21とを半導体基板SB2上に残す。
【0078】
あるいは、このステップS16では、例えばスマートカット(Smart Cut)技術などの他の手法を用いることもできる。例えばスマートカット技術を用いる場合には、ステップS14において、絶縁層3aを形成した後、表層部SS21を表層部SS21以外の部分の基体SS2と区画するように、基体SS2の上面から一定の深さ位置に、水素イオンを注入し、この水素イオン注入により欠陥が形成された欠陥形成面を形成する。そして、ステップS15において、半導体基板SB3を半導体基板SB2上に室温で貼り合わせた後、ステップS16において、例えば400〜600℃で熱処理することにより、欠陥形成面で、表層部SS21以外の部分の基体SS2を分離して除去する。
【0079】
このような方法により、絶縁層3aからなるBOX層3と、絶縁層3a上に配置された表層部SS21からなる半導体層としてのSOI層4と、からなる積層体LBを、半導体領域1上、すなわち半導体基板SB2上に、転写する。そして、基体SS1と、基体SS1上に形成された半導体領域1aと、半導体領域1a上に形成されたBOX層3と、BOX層3上に形成されたSOI層4と、を有するSOI基板SB1を用意する。
【0080】
次に、
図8〜
図19を用いて、SOI基板SB1にMISFETQ1を製造する工程を説明する。
【0081】
まず、
図8に示すように、素子分離膜6を形成する(
図2のステップS17)。このステップS17では、まず、SOI基板SB1の主面PS上に酸化シリコン膜(図示せず)および窒化シリコン膜(図示せず)を順次形成する。次いで、フォトリソグラフィ法により、MISFET形成領域AR1および領域AR2を区画する素子分離領域AR0を規定するレジスト膜(図示せず)を形成する。次いで、このレジスト膜をマスクとしたドライエッチング法で、素子分離領域AR0の窒化シリコン膜および酸化シリコン膜を除去し、続いて異方性ドライエッチング法で基体SS1の一部まで除去する。これにより、素子分離領域AR0に素子分離溝5を形成する。ここでは、エッチングガスを切り替えながらSOI層4、BOX層3、半導体領域1aおよび基体SS1をこの順にエッチングする。形成された素子分離溝5の深さは、例えば300nmである。
【0082】
次いで、高密度プラズマ(High Density Plasma:HDP)CVD法により、素子分離領域AR0、MISFET形成領域AR1および領域AR2で、SOI基板SB1上に、酸化シリコン膜を形成する。次いで、素子分離領域AR0、MISFET形成領域AR1および領域AR2で、酸化シリコン膜を化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)法で研磨し、さらに、MISFET形成領域AR1および領域AR2で、ウェットエッチング法により窒化シリコン膜(図示せず)を除去する。これにより、素子分離領域AR0で、SOI基板SB1の主面PSに形成された素子分離溝5の内部に素子分離膜6が形成される。
【0083】
次に、
図9に示すように、p型のウェル領域7を形成する(
図2のステップS18)。このステップS18では、MISFET形成領域AR1から領域AR2にかけて開口部が形成されたレジスト膜(図示せず)をマスクとして用いてp型の不純物をイオン注入することにより、MISFET形成領域AR1から領域AR2にかけて、例えばシリコン基板からなる基体SS1の上層部に、p型のウェル領域7を形成する。ウェル領域7におけるp型の不純物の濃度が、例えば5×10
17〜5×10
18cm
−3程度になるように、イオン注入の際の注入条件が調整される。
【0084】
なお、図示しない別のMISFET形成領域で、pチャネル型のMISFETを形成する場合には、別のレジスト膜をマスクとして用いてn型の不純物をイオン注入することにより、その別のMISFET形成領域で、基体SS1に、n型のウェル領域を形成することができる。
【0085】
また、ステップS18の後、例えば1000℃程度の温度で熱処理を行うことにより、ウェル領域7にイオン注入された不純物を活性化させることができる(半導体領域1aにイオン注入された不純物を除き、以下、各半導体領域にイオン注入された不純物についても同様)。
【0086】
本実施の形態1では、SOI層4の厚さは例えば15nm程度であり、BOX層3の厚さは例えば30nm程度であり、半導体領域1aの厚さは例えば70nm程度であり、SOI層4、BOX層3および半導体領域1aのいずれの厚さも極薄である。したがって、SOI層4の上面から基体SS1に不純物をイオン注入する際、イオン注入の際の注入エネルギーを調整することにより、不純物のほとんどを基体SS1に導入することができる。
【0087】
なお、基体SS1の厚さ方向における不純物の濃度分布を調整するために、加速エネルギーおよび注入量の異なる複数回のイオン注入工程を組み合わせてもよい。この不純物の注入量や、その後にSOI基板に施される熱処理の温度と時間とによって、nチャネル型のMISFETQ1の閾値電圧、および、図示しないpチャネル型のMISFETの閾値電圧を、適度に調整することができる。
【0088】
次に、
図10に示すように、開口部OPを形成する(
図2のステップS19)。このステップS19では、領域AR2で、レジスト膜をマスクとした異方性ドライエッチング法により、SOI層4の一部を除去し、続いてウェットエッチング法によりBOX層3を除去することにより、SOI層4およびBOX層3を貫通して半導体領域1aに達する開口部OPを形成する。開口部OPは、基体SS1との電気的接触を確保するために形成する。なお、図示はしないが、領域AR2だけではなく、領域AR3(
図1参照)についても同様にSOI層4及びBOX層3が除去される。
【0089】
また、本実施の形態では領域AR2のようにSOI層4及びBOX層3が除去される領域について、半導体領域1aを残しているが、代案として半導体領域1aも除去することも可能である。領域AR2や領域AR3ではカーボンが導入されている半導体領域1aが無い方がよい場合もある。すなわち、領域AR2及び領域AR3では基体SS1の表面にカーボンによる歪が結晶欠陥となり、特に領域AR3ではMISFETのチャネルにリーク経路が形成されてしまうおそれがあるからである。
【0090】
次に、
図11に示すように、半導体領域1を形成する(
図2のステップS20)。このステップS20では、MISFET形成領域AR1に形成された開口部を有するレジスト膜をマスクとして用いて、半導体領域1aにp型の不純物をイオン注入法により導入し、p型の不純物が導入された半導体領域1aからなる半導体領域1を形成する。これにより、半導体領域1からなるグランドプレーン領域GPが形成される。
【0091】
半導体領域1aに導入される不純物の導電型は、半導体領域1aの下に位置するウェル領域7の導電型と同じである。また、p型の不純物が導入された半導体領域1aからなる半導体領域1におけるp型の不純物の濃度は、ウェル領域7におけるp型の不純物の濃度よりも高い。半導体領域1におけるp型の不純物の濃度が、例えば1×10
18〜2×10
19cm
−3程度になるように、イオン注入の際の注入条件が調整される。
【0092】
なお、MISFET形成領域AR1とは別のMISFET形成領域で、pチャネル型のMISFETを形成する場合には、別のレジスト膜をマスクとして用いてn型の不純物をイオン注入する。これにより、その別のMISFET形成領域で、MISFET形成領域AR1における半導体領域1と同層に形成され、n型の不純物が導入された半導体領域からなるグランドプレーン領域を形成することができる。
【0093】
また、ステップS20では、半導体領域1aに不純物をイオン注入した後、例えば1000℃程度の熱処理温度で、SOI基板SB1の熱処理、すなわち活性化アニールを行うことができる。これにより、半導体領域1で、イオン注入された不純物を活性化することができる。
【0094】
好適には、熱処理温度は、800〜1100℃である。熱処理温度が、800℃以上である場合、熱処理温度が800℃未満の場合に比べ、半導体領域1にイオン注入された不純物を十分に活性化させることができる。また、熱処理温度が1100℃以下の場合、熱処理温度が1100℃を超える場合に比べ、SOI基板SB1の各部分の変性などを防止または抑制することができる。
【0095】
後述する
図29を用いて説明するように、好適には、イオン注入を行った後、活性化アニールを行う前に、半導体領域1に導入された不純物の、半導体領域1の厚さ方向における濃度分布は、半導体領域1の上面と半導体領域1の下面との間にピークを有し、半導体領域1の厚さTH1は、ピークの半値幅よりも大きい。このような場合、後述する
図29を用いて説明するように、イオン注入を行い、さらに活性化アニールを行った後も、半導体領域1の厚さ方向における不純物の濃度分布は、半導体領域1の上面と半導体領域1の下面との間にピークを有し、半導体領域1の厚さTH1は、ピークの半値幅ΔRpよりも大きい。あるいは、好適には、半導体領域1の厚さ方向における不純物の濃度分布は、半導体領域1の上面と半導体領域1の下面との間にピークを有し、半導体領域1の上面における不純物濃度、および、半導体領域1の下面における不純物濃度のいずれも、ピークにおける不純物濃度の半分よりも小さい。
【0096】
これにより、少なくともピークにおける不純物濃度すなわちピーク値の1/2以上の不純物濃度を有する部分が、半導体領域1の内部に包含されることになるので、半導体領域1における不純物の濃度を確実に高くすることができる。そして、活性化アニールを行った後においても、グランドプレーン領域GP全体における不純物濃度の平均値が低くなることを防止または抑制することができる。
【0097】
なお、不純物をイオン注入する工程に代え、例えば半導体領域1を不純物を含んだ原料ガスを用いたCVD法で形成することにより、半導体領域1に不純物を導入することもできる。
【0098】
次に、
図12に示すように、チャネル領域CHを形成する(
図3のステップS21)。このステップS21では、必要に応じて、MISFET形成領域AR1で開口部が形成されたレジスト膜(図示せず)をマスクとして用いて、例えばp型の半導体領域としてのSOI層4にn型の不純物を注入して正味の不純物濃度を減少させ、ドーパントレスの半導体領域としてのチャネル領域CHを形成する。チャネル領域CHの不純物濃度は、2.5×10
18cm
−3程度以下であり、より好ましくは1×10
18cm
−3程度以下である。
【0099】
次に、
図13に示すように、絶縁膜11、導電膜12および絶縁膜13を形成する(
図3のステップS22)。このステップS22では、MISFET形成領域AR1で、SOI層4上に、ゲート絶縁膜用の絶縁膜11を形成した後、絶縁膜11上にゲート電極用の導電膜12を形成し、さらに、導電膜12上にキャップ膜用の絶縁膜13を形成する。なお、この際、領域AR2では、半導体領域1a上に、導電膜12および絶縁膜13が形成され、素子分離領域AR0では、素子分離膜6上に、導電膜12および絶縁膜13が形成される。
【0100】
絶縁膜11は、例えばHfSiON系の高誘電率膜からなる。導電膜12は、例えば厚さ15nm程度の窒化チタン(TiN)膜を形成し、その窒化チタン膜上に例えば厚さ85nm程度の多結晶シリコン膜を順次堆積した積層膜からなる。この多結晶シリコン膜には、ゲート電極の導電率を十分に高くするために、高濃度の不純物を添加する。絶縁膜13は、例えば厚さ50nm程度の窒化シリコン膜からなる。
【0101】
次に、
図14に示すように、ゲート絶縁膜GI、ゲート電極GEおよびキャップ膜CPを形成する(
図3のステップS23)。このステップS23では、MISFET形成領域AR1で、絶縁膜13、導電膜12および絶縁膜11を、レジスト膜をマスクとして用いたドライエッチング法により加工する。これにより、チャネル領域CH上に残された部分の絶縁膜11からなるゲート絶縁膜GI、ゲート絶縁膜GI上に残された部分の導電膜12からなるゲート電極GE、および、ゲート電極GE上に残された部分の絶縁膜13からなるキャップ膜CPを形成する。すなわち、MISFET形成領域AR1で、SOI層4からなるチャネル領域CH上に、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEを形成する。ゲート電極GEのゲート幅は、例えば100nm程度以下、ゲート長は、例えば50nm程度以下である。ゲート電極GEのゲート長を50nm程度以下とするために、ここでは、ArFステッパを用いたフォトリソグラフィ法を使用する。
【0102】
次に、
図15に示すように、絶縁膜IF1およびIF2を形成する(
図3のステップS24)。このステップS24では、SOI基板SB1の主面PS上に、例えば厚さ10nm程度の酸化シリコン膜を形成した後、この酸化シリコン膜を異方性ドライエッチング法で加工する。これにより、ゲート電極GEの一方の側面にオフセットスペーサとしての絶縁膜IF1を形成し、ゲート電極GEの他方の側面にオフセットスペーサとしての絶縁膜IF2を形成する。
【0103】
次に、
図16に示すように、エクステンション領域EX1およびEX2を形成する(
図3のステップS25)。このステップS25では、MISFET形成領域AR1で、ゲート電極GEをマスクとして用いて、SOI層4に、例えばリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入する。
【0104】
図16に示す例では、MISFET形成領域AR1で、上面にキャップ膜CPが形成され、両側面に絶縁膜IF1およびIF2が形成されたゲート電極GEをマスクとして用いて、SOI層4に、例えばリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入する。これにより、平面視において、絶縁膜IF1を挟んでゲート電極GEと反対側に位置する部分のSOI層4に、n型の半導体領域としてのエクステンション領域EX1を形成する。また、平面視において、絶縁膜IF2を挟んでゲート電極GEと反対側に位置する部分のSOI層4に、n型の半導体領域としてのエクステンション領域EX2を形成する。エクステンション領域EX1およびEX2の各々におけるn型の不純物濃度は、例えば2×10
19cm
−3程度以上であり、好ましくは1×10
20cm
−3程度以上である。
【0105】
なお、ゲート電極GEの両側面に絶縁膜IF1およびIF2を形成しないようにすることもできる。また、絶縁膜IF1の形成の有無に関わらず、平面視において、ゲート電極GEの一方の側に位置する部分のSOI層4に、ウェル領域7の導電型とは反対の導電型であるn型のエクステンション領域EX1を形成することになる。そして、絶縁膜IF2の形成の有無に関わらず、平面視において、ゲート電極GEの他方の側に位置する部分のSOI層4に、ウェル領域7の導電型とは反対の導電型であるn型のエクステンション領域EX2を形成することになる。
【0106】
ただし、絶縁膜IF1を形成する場合、絶縁膜IF1の厚さを調整することにより、平面視において、エクステンション領域EX1のゲート電極GE側の端部位置の、ゲート電極GEの側面からのオフセット距離を、調整することができる。また、絶縁膜IF2を形成する場合、絶縁膜IF2の厚さを調整することにより、平面視において、エクステンション領域EX2のゲート電極GE側の端部位置の、ゲート電極GEの側面からのオフセット距離を、調整することができる。
【0107】
なお、MISFET形成領域AR1とは別のMISFET形成領域で、pチャネル型のMISFETを形成する場合には、同様にゲート電極をマスクとして用いてp型の不純物をイオン注入する。これにより、その別のMISFET形成領域で、MISFET形成領域AR1におけるSOI層4と同層に形成されたSOI層に、p型の半導体領域としてのエクステンション領域を形成することができる。
【0108】
次に、
図17に示すように、サイドウォールスペーサSW1およびSW2を形成する(
図3のステップS26)。このステップS26では、SOI基板SB1の主面上に、例えば厚さ30nm程度の窒化シリコン膜を形成した後、この窒化シリコン膜を異方性ドライエッチングで加工する。これにより、絶縁膜IF1のゲート電極GE側と反対側の側面に、サイドウォールスペーサSW1を形成し、絶縁膜IF2のゲート電極GE側と反対側の側面に、サイドウォールスペーサSW2を形成する。
【0109】
次に、
図18に示すように、半導体膜14aおよび14bを形成する(
図3のステップS27)。このステップS27では、MISFET形成領域AR1で、ゲート電極GE、絶縁膜IF1およびサイドウォールスペーサSW1から露出した部分のエクステンション領域EX1すなわちSOI層4上に、例えば厚さ20nm程度のエピタキシャルシリコン膜からなる半導体膜14aを、選択的に形成する。また、MISFET形成領域AR1で、ゲート電極GE、絶縁膜IF2およびサイドウォールスペーサSW2から露出した部分のエクステンション領域EX2すなわちSOI層4上に、例えば厚さ20nm程度のエピタキシャルシリコン膜からなる半導体膜14bを、選択的に形成する。
【0110】
この半導体膜14aおよび14bは、SOI層4の表面を清浄にし、自然酸化膜を除去した状態で、例えばモノシランガスを原料とするCVD法により形成する。このとき、開口部OPの底部に露出した半導体領域1a上、すなわち開口部OPの内部にも、半導体膜14cが形成される。
【0111】
なお、半導体膜14aおよび14bの選択成長は必須ではなく、素子特性の要求によっては省略することもできる。
【0112】
次に、
図19に示すように、ソース・ドレイン領域SD1およびSD2を形成する(
図3のステップS28)。このステップS28では、MISFET形成領域AR1で、半導体膜14aおよび14bにn型の不純物をイオン注入法により導入し、n型の不純物が導入された半導体膜14aからなるn型のソース・ドレイン領域SD1を形成し、n型の不純物が導入された半導体膜14bからなるn型のソース・ドレイン領域SD2を形成する。
【0113】
ソース・ドレイン領域SD1におけるn型の不純物濃度は、エクステンション領域EX1におけるn型の不純物濃度よりも高く設定されており、例えば5×10
20cm
-3程度以上である。また、ソース・ドレイン領域SD2におけるn型の不純物濃度は、エクステンション領域EX2におけるn型の不純物濃度よりも高く設定されており、例えば5×10
20cm
-3程度以上である。また、ソース・ドレイン領域SD1は、半導体膜14aだけでなく、SOI層4の内部に亘って形成されてもよく、ソース・ドレイン領域SD2は、半導体膜14bだけでなく、SOI層4の内部に亘って形成されてもよい。
【0114】
これにより、チャネル領域CHと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極GEと、絶縁膜IF1およびIF2と、エクステンション領域EX1およびEX2と、サイドウォールスペーサSW1およびSW2と、ソース・ドレイン領域SD1およびSD2と、を有する、nチャネル型のMISFETQ1が、SOI基板SB1に、形成される。
【0115】
なお、MISFET形成領域AR1とは別のMISFET形成領域で、pチャネル型のMISFETを形成する場合には、別のレジスト膜をマスクとして用いてp型の不純物をイオン注入することにより、その別のMISFET形成領域で、p型のソース・ドレイン領域を形成することができる。
【0116】
次に、
図20に示すように、コンタクト領域CRを形成する(
図3のステップS29)。このステップS29では、領域AR2で開口部が形成されたレジスト膜をマスクとして用いて、開口部OPの底部に露出した半導体膜14cおよびその下に位置する半導体領域1aにp型の不純物をイオン注入法により導入し、p型の不純物が導入されたp型のコンタクト領域CRを形成する。コンタクト領域CRの導電型は、コンタクト領域CRの下に位置する部分のウェル領域7の導電型と同じにすることができる。なお、
図20では図示を省略するが、その後、キャップ膜CPをウェットエッチング等により除去し、ゲート電極GEの上面を露出する。
【0117】
次に、
図21に示すように、金属シリサイド層SLを形成する(
図3のステップS30)。このステップS30では、MISFET形成領域AR1で、ソース・ドレイン領域SD1およびSD2およびゲート電極GEの各々の表面に、金属シリサイド層SLを、例えばサリサイド技術により形成する。また、領域AR2では、コンタクト領域CRの上面に、金属シリサイド層SLが形成される。
【0118】
次に、
図1に示すように、MISFET形成領域AR1では、SOI基板SB1の主面PS上に、nチャネル型のMISFETQ1を覆うように、層間絶縁膜IL1を形成する。そして、レジスト膜をマスクにしたドライエッチング法で層間絶縁膜IL1にコンタクトホールCNを形成した後、コンタクトホールCN内に、導電性のプラグPGを形成する。MISFET形成領域AR1では、コンタクトホールCNおよびプラグPGは、ソース・ドレイン領域SD1およびSD2の各々の上、ならびに、ゲート電極GE上(図示せず)、などに形成され、領域AR2では、コンタクトホールCNおよびプラグPGは、コンタクト領域CR上に形成される。
【0119】
その後、
図1に示すように、プラグPGが埋め込まれた層間絶縁膜IL1上に、例えば酸化シリコン膜などからなる絶縁膜IL2を形成し、絶縁膜IL2に配線溝、すなわち開口部を形成した後、配線溝の内部に、第1層配線としての配線ML1を形成する。MISFET形成領域AR1では、配線ML1は、プラグPGを介して、ソース・ドレイン領域SD1およびSD2、ならびに、ゲート電極GE(図示せず)、などと電気的に接続され、領域AR2では、配線ML1は、プラグPGを介して、コンタクト領域CRと電気的に接続される。
【0120】
配線ML1として、例えばダマシン技術により形成された銅(Cu)を主導体膜とする導体膜からなる配線ML1を形成することができるが、他の形態として、パターニングされた例えばタングステン(W)膜またはアルミニウム(Al)膜などの導体膜からなる配線ML1を形成することもできる。
【0121】
その後、配線ML1が埋め込まれた絶縁膜IL2上に、さらに上層の配線を形成するが、その図示は省略する。以上の工程により、SOI基板SB1と、MISFETQ1と、を備える本実施の形態1の半導体装置が製造される。
【0122】
<半導体装置の製造方法の変形例>
次に、本実施の形態1の半導体装置の製造方法の変形例について説明する。本変形例では、グランドプレーン領域用のSiCからなる半導体領域を、エピタキシャル成長させるのではなく、イオン注入法により形成する。
【0123】
図22は、実施の形態1の変形例における半導体装置の製造工程の一部を示すプロセスフロー図である。
図23〜
図27は、実施の形態1の変形例における半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0124】
なお、以下では、実施の形態1の半導体装置の製造工程と異なる工程を中心に説明する。
【0125】
初めに、
図23〜
図25を用いて、SOI基板SB1を用意する工程を説明する。
【0126】
まず、
図23に示すように、
図2のステップS11と同様の工程(
図22のステップS31)を行って、基体SS1を用意する。ただし、本変形例では、実施の形態1と異なり、ステップS31の後、
図2のステップS12と同様の工程を行わず、基体SS1上に、例えばSiC膜からなる半導体領域1をエピタキシャル成長させない。したがって、本変形例では、実施の形態1と異なり、基体SS1のみからなる半導体基板SB2を用意することになる。
【0127】
次に、
図2のステップS13およびステップS14と同様の工程(
図22のステップS32およびステップS33)を行って、
図5に示したように、基体SS2と絶縁層3aとからなる半導体基板SB3を用意する。次いで、
図2のステップS15と同様の工程(
図22のステップS34)を行って、
図24に示すように、半導体基板SB3を半導体基板SB2上に貼り合わせる。このステップS34では、絶縁層3aが基体SS1と対向した状態で、絶縁層3aが基体SS1と接触するように、半導体基板SB3と半導体基板SB2とを圧着させ、例えば1000℃の高温に保持し、熱処理を施すことにより、半導体基板SB3を半導体基板SB2上に貼り合わせる。このとき、絶縁層3aと基体SS1とが接合される。
【0128】
次に、
図2のステップS16と同様の工程(
図22のステップS35)を行って、
図25に示すように、半導体基板SB2上に貼り合わせた半導体基板SB3の基体SS2のうち半導体基板SB2側の表層部SS21以外の部分を除去する。
【0129】
これにより、絶縁層3aからなるBOX層3と、絶縁層3a上に配置された表層部SS21からなる半導体層としてのSOI層4と、からなる積層体LBを、基体SS1上、すなわち半導体基板SB2上に、転写する。そして、基体SS1と、基体SS1上に形成されたBOX層3と、BOX層3上に形成されたSOI層4と、を有するSOI基板SB1を用意する。
【0130】
次に、
図26および
図27を用いて、MISFETQ1の製造工程を説明する。
【0131】
まず、
図2のステップS17〜ステップS19と同様の工程(
図22のステップS36〜ステップS38)を行って、
図26に示すように、素子分離膜6を形成し、p型のウェル領域7を形成し、開口部OPを形成する。
【0132】
次に、
図27に示すように、半導体領域1aを形成する(
図22のステップS39)。このステップS39では、MISFET形成領域AR1および領域AR2に形成された開口部を有するレジスト膜をマスクとして用いて、p型のウェル領域7すなわち基体SS1に例えばカーボン(C)をイオン注入法により導入する。これにより、p型のウェル領域7すなわち基体SS1の上層部に、例えばシリコンカーバイド(SiC)からなるグランドプレーン領域用半導体領域1aを形成する。
【0133】
好適には、シリコンカーバイド(SiC)の組成式をSi
1−xC
xと表記したときのx、すなわちシリコン(Si)とカーボン(C)との和に対するカーボンの組成比は、0.01以上である。xが0.01以上の場合、半導体領域1aがSiからなる場合に比べ、半導体領域1aにおける不純物の拡散係数を確実に低くすることができる。
【0134】
より好適には、xは、0.01〜0.10である。xが0.10以下の場合、ウェル領域7すなわち基体SS1の上層部にカーボンをイオン注入してSiCからなる半導体領域1aを容易に形成することができる。
【0135】
さらに好適には、xは、0.01〜0.014である。xが0.014以下の場合、ウェル領域7すなわち基体SS1におけるSiの結晶格子と、半導体領域1aにおけるSiCの結晶格子との格子定数の差が小さくなるので、SiCからなる半導体領域1aに歪が入ることを防止または抑制することができる。
【0136】
なお、半導体領域1aを形成する工程については、ステップS31を行って基体SS1を用意した後であって、後述するステップS40で半導体領域1を形成する前のいずれの時点で行うこともできる。
【0137】
また、半導体領域1aを形成するためのマスクは、p型のウェル領域7を形成するためのマスクと同様のものを使用することができる。これにより、マスクの枚数が増えることがないので、製造コストを抑制することができる。
【0138】
また、選択的にカーボンをイオン注入できるので、前述のエピタキシャル成長させた場合と比べて設計の自由度が高い。カーボンをイオン注入すると結晶歪が大きくなる場合が考えられ、不必要な歪を発生させてしまう場合がある。そこで、MISFET形成領域AR1のように必要な領域のみにカーボンを注入させたい場合も想定される。すなわち、この変形例では、MISFET形成領域AR1のみにカーボンをイオン注入し、領域AR2および領域AR3(
図1参照)にはカーボンをイオン注入しないようにすることもできる。
【0139】
次に、
図2のステップS20と同様の工程(
図22のステップS40)を行って、
図11に示したのと同様に、半導体領域1を形成する。
【0140】
その後、
図3のステップS21〜
図3のステップS30と同様の工程を行って、
図1に示すように、本実施の形態1の半導体装置が製造される。
【0141】
<MISFETの閾値電圧の制御について>
次に、本実施の形態1の半導体装置におけるMISFETの閾値電圧の制御について、比較例1の半導体装置におけるMISFETの閾値電圧の制御と対比しながら説明する。
【0142】
図28は、比較例1の半導体装置の要部断面図である。
図28に示すように、比較例1の半導体装置は、半導体基板としてのSOI基板SB101と、SOI基板SB101に形成された電界効果トランジスタとしてのMISFETQ1を備える。
【0143】
比較例1におけるSOI基板SB101は、実施の形態1におけるSOI基板SB1と同様に、基体SS1と、グランドプレーン領域GPとしての半導体領域101と、BOX層3と、SOI層4と、を有する。しかし、比較例1のSOI基板SB101におけるグランドプレーン領域GPとしての半導体領域101は、実施の形態1のSOI基板SB1におけるグランドプレーン領域GPとしての半導体領域1と異なり、シリコンからなる。
【0144】
一方、比較例1におけるMISFETQ1は、実施の形態1におけるMISFETQ1と同様にすることができる。
【0145】
実施の形態1のMISFETQ1および比較例1のMISFETQ1のいずれも、同様にSOTB技術を用いたものであり、FD−SOI技術を用いたものである。すなわち、実施の形態1でも、比較例1でも、同様に、MISFETQ1のゲート電極GE下に位置する部分のSOI層4、すなわちチャネル領域CHには、不純物が導入されていないか、チャネル領域CHにおける不純物濃度が極めて低くなっており、いわゆるドーパントレスチャネルになっている。MISFETQ1が、このようなドーパントレスチャネルとしてのチャネル領域CHを有する場合、閾値電圧Vthの絶対値が小さくなるおそれがあるので、閾値電圧Vthの絶対値が大きくなるように、調整する必要がある。
【0146】
このような実施の形態1のMISFETQ1および比較例のMISFETQ1のいずれにおいても、閾値電圧Vthは、ゲート電極GEに含まれる導電膜の仕事関数により調整されるか、または、バックゲートに相当するグランドプレーン領域としての半導体領域101または半導体領域1の内部電位Vbiにより調整される。ところが、ゲート電極GEに含まれる導電膜としてポリシリコン膜を用いる場合、導電膜の仕事関数は、ソース・ドレイン領域を形成する際のイオン注入の注入条件の影響を受けるので、導電膜の仕事関数を調整することは困難である。したがって、実施の形態1のMISFETQ1および比較例1のMISFETQ1のいずれにおいても、閾値電圧Vthの調整は、グランドプレーン領域GPとしての半導体領域101または半導体領域1の内部電位Vbiにより調整することが望ましい。
【0147】
ここで、グランドプレーン領域GPとしての半導体領域101または半導体領域1の内部電位Vbiは、下記式(1)により与えられる。
【0148】
Vbi=(kT/q)ln(Na・Nd/ni
2) 式(1)
式(1)において、kはボルツマン定数であり、Tは温度であり、qは単位電荷であり、Naはアクセプター濃度であり、Ndは、ドナー濃度であり、niは真性キャリア密度である。また、アクセプタ―濃度Naは、グランドプレーン領域GPにおけるp型の不純物濃度に等しく、ドナー濃度Ndは、グランドプレーン領域GPにおけるn型の不純物濃度に等しい。
【0149】
式(1)に示すように、グランドプレーン領域GPとしての半導体領域101または半導体領域1における不純物濃度が低い場合、内部電位Vbiの絶対値も小さくなる。
【0150】
図29は、SOI基板の厚さ方向における不純物の濃度分布を示すグラフである。
図29は、比較例1、および、実施の形態1の実施例としての実施例1について、BOX層3、グランドプレーン領域GPとしての半導体領域101または半導体領域1、および、基体SS1すなわちウェル領域7の各々の内部におけるp型の不純物としてのボロンからなる不純物の濃度分布を、計算によって求めたものである。BOX層3は、酸化シリコン(SiO
2)からなり、半導体領域1はシリコンカーバイド(SiC)からなり、半導体領域101および基体SS1はシリコン(Si)からなるものとした。
【0151】
図29の横軸は、BOX層3の上面における深さ位置を0としたときの深さ位置を示し、
図29の縦軸は、p型の不純物としてのボロンからなる不純物の不純物濃度を示す。
図29では、比較例1において、イオン注入を行った後、活性化アニールを行う前の濃度分布を「比較例1(アニール前)」と表記し、比較例1において、イオン注入を行い、さらに活性化アニールを行った後の濃度分布を「比較例1(アニール後)」と表記する。また、実施例1において、イオン注入を行い、さらに活性化アニールを行った後の濃度分布を「実施例1(アニール後)」と表記する。また、実施例1において、イオン注入を行った後、活性化アニールを行う前の濃度分布は、比較例1において、イオン注入を行った後、活性化アニールを行う前の濃度分布と同一であるものとした。
【0152】
なお、
図29の不純物の濃度分布の計算において、活性化アニールの熱処理温度を1000℃とし、その熱処理温度におけるシリコン中のボロンの拡散係数を、2×10
−14cm
2sec
−1とした。また、シリコンカーバイドの組成比をSi
0.99C
0.01とし、その組成比を有するシリコンカーバイド中の、上記した活性化アニールの熱処理温度におけるボロンの拡散係数を、2×10
−16cm
2sec
−1とした。
【0153】
比較例1において、イオン注入の際に、活性化アニールを行う前は、深さ方向、すなわち半導体領域101の厚さ方向における不純物の濃度分布は、半導体領域101の上面と半導体領域101の下面との間にピークを有する。そして、半導体領域101の厚さが、ピークの半値幅よりも大きくなるように、不純物がイオン注入されている。また、前述したように、実施例1においても、活性化アニールを行う前は、深さ方向、すなわち半導体領域101の厚さ方向における不純物の濃度分布は、比較例1と同様である。
【0154】
比較例1において、半導体領域101はSiからなるので、イオン注入を行った後、活性化アニールを行う際に、イオン注入された不純物は拡散しやすい。そのため、比較例1において、活性化アニールを行った後は、深さ方向、すなわち半導体領域101の厚さ方向における不純物の濃度分布は、半導体領域101の上面と半導体領域101の下面との間になおピークを有するものの、不純物の濃度分布におけるピーク高さは低くなり、ピークの半値幅は広くなる。その結果、比較例1において、活性化アニールを行った後は、グランドプレーン領域GP全体における不純物濃度の平均値が低くなる。これにより、前述した式(1)を用いて説明したように、グランドプレーン領域GPの内部電位Vbiの絶対値が小さくなるので、閾値電圧Vthを調整できる範囲が狭くなり、半導体装置の性能が低下する。
【0155】
また、半導体領域101における不純物濃度が低い場合、半導体領域101の抵抗も高くなる。そのため、プラグPGおよびコンタクト領域CRを介してウェル領域7に基板電位Vbを印加した場合に、例えば半導体領域101のうちBOX層3と接触する部分の電位が基板電位Vbと等しくならないことなどにより、半導体領域101からなるグランドプレーン領域GPの電位を精度よく調整することができない。
【0156】
さらに、比較例1では、活性化アニールを行う際に、半導体領域101にイオン注入された不純物がBOX層3側に拡散することにより、半導体領域101のうちBOX層3と接触する部分における不純物濃度が上昇する。その結果、半導体領域101にイオン注入された不純物がBOX層3まで拡散し、BOX層3の絶縁性が低下し、半導体領域101からなるグランドプレーン領域GPをバックゲートとし、BOX層3をバックゲート用のゲート絶縁膜としたときの、BOX層3のゲート絶縁膜としての信頼性が低下する。
【0157】
一方、実施例1では、半導体領域1は、1000℃程度の温度でSiにおける不純物の拡散係数よりも小さい不純物の拡散係数を有するSiCからなるので、イオン注入を行った後、活性化アニールを行う際に、イオン注入された不純物は拡散しにくい。そのため、実施例1において、活性化アニールを行った後は、深さ方向、すなわち半導体領域1の厚さ方向における不純物の濃度分布は、活性化アニールを行う前の不純物の濃度分布からほとんど変化しない。言い換えれば、実施例1では、活性化アニールを行う際に、不純物が拡散しにくいので、活性化アニールを行った後も、イオン注入を行った直後の不純物の濃度分布が維持される。
【0158】
すなわち、実施例1では、活性化アニールを行った後でも、なお、深さ方向、すなわち半導体領域1の厚さ方向における不純物の濃度分布は、半導体領域1の上面と半導体領域1の下面との間にピークを有し、半導体領域1の厚さTH1は、ピークの半値幅ΔRpよりも大きい。あるいは、好適には、半導体領域1の厚さ方向における不純物の濃度分布は、半導体領域1の上面と半導体領域1の下面との間にピークを有し、半導体領域1の上面における不純物濃度、および、半導体領域1の下面における不純物濃度のいずれも、ピークにおける不純物濃度の半分よりも小さい。
【0159】
これにより、少なくともピークにおける不純物濃度すなわちピーク値の1/2以上の不純物濃度を有する部分が、半導体領域1の内部に包含されることになるので、半導体領域1における不純物の濃度を確実に高くすることができる。そのため、活性化アニールを行った後、グランドプレーン領域GP全体における不純物濃度の平均値が低くなることを防止または抑制することができる。したがって、前述した式(1)を用いて説明したように、内部電位Vbiの絶対値が小さくなることを防止または抑制することができ、閾値電圧Vthを調整できる範囲を広げ、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0160】
好適には、不純物の濃度分布のうち、少なくともピーク値の1/2以上の不純物濃度を有する部分が、半導体領域1の内部に包含される。あるいは、好適には、半導体領域1の厚さTH1は、ピークの半値幅ΔRpの2倍よりも大きい。これにより、活性化アニールを行った後、グランドプレーン領域GP全体における不純物濃度の平均値が低くなることを、さらに確実に防止または抑制することができる。
【0161】
また、半導体領域1における不純物濃度が高い場合、半導体領域1の抵抗も低くなる。そのため、プラグPGおよびコンタクト領域CRを介してウェル領域7に基板電位Vbを印加した場合に、例えば半導体領域1のうちBOX層3と接触する部分の電位が基板電位Vbと等しくなり、半導体領域1からなるグランドプレーン領域GPの電位を精度よく調整することができる。
【0162】
さらに、実施例1では、活性化アニールを行う際に、半導体領域1にイオン注入された不純物がBOX層3側に拡散しにくくなり、半導体領域1のうちBOX層3と接触する部分における不純物濃度が上昇しにくくなる。その結果、半導体領域1にイオン注入された不純物がBOX層3まで拡散しないので、BOX層3の絶縁性が向上し、BOX層3をバックゲート用のゲート絶縁膜としたときの、BOX層3のゲート絶縁膜としての信頼性が向上する。
【0163】
<本実施の形態の主要な特徴と効果>
本実施の形態1では、半導体装置は、SOI基板SB1と、SOI基板SB1に形成されたMISFETQ1と、を備える。SOI基板SB1は、基体SS1、基体SS1上に形成されたグランドプレーン領域GP、グランドプレーン領域GP上に形成されたBOX層3、および、BOX層3上に形成されたSOI層4、を有する。基体SS1は、Siからなり、グランドプレーン領域GPは、SiCからなるp型の半導体領域1を含む。
【0164】
例えばボロンなどのp型の不純物のSiC中における拡散係数は、Si中におけるp型の不純物の拡散係数よりも小さい。そのため、半導体領域1に導入された不純物が、例えば熱処理などにより拡散し、半導体領域1における不純物濃度が低下することを防止または抑制することができる。したがって、半導体領域1を含むグランドプレーン領域GPにおける内部電位Vbiの絶対値が小さくなることを防止または抑制することができ、閾値電圧Vthを調整できる範囲が広くなり、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0165】
また、半導体領域1の電気抵抗が高くなることを防止または抑制することができ、基板電位Vbを印加する際に、半導体領域1を含むグランドプレーン領域GPにおける電位を、印加された基板電位Vbと略等しい電位にすることができる。さらに、半導体領域1に導入された不純物がBOX層3にも拡散することを防止または抑制することができ、BOX層3のゲート絶縁膜としての信頼性を向上させることができる。よって、SOI基板SB1と、SOI基板SB1に形成されたMISFETQ1とを備える半導体装置の性能を向上させることができる。
【0166】
また、MISFETの微細化に伴って、短チャネル効果が発現するか、または、閾値電圧の均一性が低下することなどにより、半導体装置の性能が低下しやすくなる。しかし、このような場合でも、本実施の形態1によれば、半導体領域1における不純物の拡散係数を小さくすることができ、半導体領域1における不純物濃度が低下することを防止または抑制することができる。したがって、本実施の形態1によれば、MISFETを微細化した場合でも、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0167】
なお、前述したように、本実施の形態1の半導体装置は、ウェル領域7、グランドプレーン領域GP、チャネル領域CH、エクステンション領域EX1およびEX2、ならびに、ソース・ドレイン領域SD1およびSD2の各半導体領域の導電型をp型とn型との間で互いに入れ替えた場合にも、適用可能である。すなわち、本実施の形態1の半導体装置は、MISFETとしてpチャネル型のMISFETを備える半導体装置にも、適用可能である。また、本実施の形態1の半導体装置をpチャネル型のMISFETを備える半導体装置に適用した場合も、nチャネル型のMISFETを備える半導体装置に適用した場合と同様の効果を有する。
【0168】
(実施の形態2)
実施の形態1の半導体装置では、SOI基板の基体とBOX層との間に、グランドプレーン領域が設けられており、当該グランドプレーン領域はSiCからなる半導体領域を含んでいた。それに対して、実施の形態2の半導体装置では、SOI基板の基体とBOX層との間に、グランドプレーン領域が設けられているが、当該グランドプレーン領域は、SiCからなる半導体領域と、そのSiCからなる半導体領域上に形成され、Siからなる半導体領域と、を含む。
【0169】
<半導体装置の構造>
図30は、実施の形態2の半導体装置の要部断面図である。
図30に示すように、本実施の形態2の半導体装置は、半導体基板としてのSOI基板SB1と、SOI基板SB1に形成された電界効果トランジスタとしてのMISFETQ1と、を備える。
【0170】
本実施の形態2におけるSOI基板SB1は、実施の形態1におけるSOI基板SB1と同様に、基体SS1と、グランドプレーン領域GPと、BOX層3と、SOI層4と、を有する。しかし、本実施の形態2のSOI基板SB1におけるグランドプレーン領域GPは、実施の形態1のSOI基板SB1におけるグランドプレーン領域GPと異なり、基体SS1上に形成され、シリコンカーバイド(SiC)からなる半導体領域1と、半導体領域1上に形成され、シリコン(Si)からなる半導体領域2と、を有する。すなわち、本実施の形態2の半導体装置は、グランドプレーン領域GPを除き、
図1に示した実施の形態1の半導体装置と同様の構造を有する。
【0171】
本実施の形態2では、グランドプレーン領域GPは、半導体領域1と、半導体領域1上に形成された半導体領域2と、を含む。したがって、BOX層3は、半導体領域1上に半導体領域2を介して形成されている。
【0172】
半導体領域1は、実施の形態1における半導体領域1と同様に、例えばシリコンカーバイド(SiC)膜などからなり、シリコン(Si)基板からなる基体SS1が有する不純物の拡散係数よりも小さい不純物の拡散係数を有する。また、MISFETQ1がnチャネル型のMISFETである場合には、半導体領域1には、実施の形態1における半導体領域1と同様に、例えばホウ素(B)などからなるp型の不純物が導入されており、半導体領域1は、p型の半導体領域である。これにより、半導体領域1にイオン注入を行った後、活性化アニールを行う際に、SiCからなる半導体領域1では、不純物が拡散しにくいので、活性化アニールを行った後も、イオン注入を行った直後の不純物の濃度分布が維持される。半導体領域1の厚さTH1は、例えば70nm程度である。
【0173】
好適には、SiCからなる半導体領域1は、Siからなる基体SS1上にエピタキシャル成長している。これにより、Siからなる基体SS1の上層部にカーボン(C)をイオン注入してSiCからなる半導体領域1が形成される場合に比べ、半導体領域1の厚さTH1を厚くすることができる。また、半導体領域1がエピタキシャル成長している場合、半導体領域1がイオン注入により形成される場合に比べ、半導体領域1中に導入されるカーボンの量を容易に増加させることができる。
【0174】
なお、実施の形態1と同様に、シリコンカーバイド(SiC)の組成式をSi
1−xC
xと表記したときのx、すなわちシリコン(Si)とカーボン(C)との和に対するカーボンの組成比は、0.01以上である。また、実施の形態1と同様に、より好適には、xは、0.01〜0.10であり、さらに好適には、0.01〜0.014である。また、実施の形態1と同様に、好適には、半導体領域1の厚さ方向におけるn型の不純物の濃度分布は、半導体領域1の上面と半導体領域1の下面との間にピークを有し、半導体領域1の厚さTH1は、ピークの半値幅ΔRpよりも厚い。あるいは、好適には、半導体領域1の厚さ方向における不純物の濃度分布は、半導体領域1の上面と半導体領域1の下面との間にピークを有し、半導体領域1の上面における不純物濃度、および、半導体領域1の下面における不純物濃度のいずれも、ピークにおける不純物濃度の半分よりも小さい。
【0175】
一方、半導体領域2は、例えばシリコン(Si)膜などからなり、例えばSiC膜からなる半導体領域1が有する不純物の拡散係数よりも大きい不純物の拡散係数を有する。これにより、Siからなる半導体領域2では、SiCからなる半導体領域1から不純物が拡散してくるので、活性化アニールを行った後も、SiCからなる半導体領域1における不純物の濃度分布を維持しつつ、グランドプレーン領域GPのうちBOX層3側の部分における不純物濃度を高くすることができる。半導体領域2の厚さTH2は、例えば10nm程度である。
【0176】
好適には、半導体領域2の厚さTH2は、半導体領域1の厚さTH1よりも小さい。これにより、活性化アニールを行った後、SiCからなる半導体領域1における不純物の濃度分布を維持する効果を十分確保しつつ、半導体領域2における不純物濃度を高くすることができる。
【0177】
また、半導体領域2は、例えばシリコン(Si)膜などからなり、例えばシリコン酸化膜からなるBOX層3との親和性が高い。これにより、グランドプレーン領域GPとBOX層3との界面付近において界面準位が発生することを、抑制することができる。
【0178】
<半導体装置の製造方法>
次に、本実施の形態2の半導体装置の製造方法について説明する。
図31は、実施の形態2の半導体装置の製造工程の一部を示すプロセスフロー図である。
図32〜
図36は、実施の形態2の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0179】
なお、以下では、実施の形態1の半導体装置の製造工程と異なる工程を中心に説明する。
【0180】
初めに、
図32〜
図34を用いて、SOI基板SB1を用意する工程を説明する。
【0181】
まず、
図32に示すように、
図2のステップS11およびステップS12と同様の工程(
図31のステップS41およびステップS42)を行って、半導体基板SB2を用意する。ただし、本実施の形態2では、実施の形態1と異なり、ステップS42を行った後、半導体領域1a上に、例えばSi膜からなるグランドプレーン領域用の半導体領域2aを、例えばCVD法によりエピタキシャル成長させる(
図31のステップS43)。これにより、本実施の形態2では、基体SS1と半導体領域1aと半導体領域2aとからなる半導体基板SB2を用意することになる。
【0182】
次に、
図2のステップS13およびステップS14と同様の工程(
図31のステップS44およびステップS45)を行って、基体SS2と絶縁層3aとからなる半導体基板SB3を用意する。次いで、
図2のステップS15と同様の工程(
図31のステップS46)を行って、
図33に示すように、半導体基板SB3を半導体基板SB2上に貼り合わせる。このステップS46では、絶縁層3aが半導体領域2aと対向した状態で、絶縁層3aが半導体領域2aと接触するように、半導体基板SB3と半導体基板SB2とを圧着させ、例えば1000℃の高温に保持し、熱処理を施すことにより、半導体基板SB3を半導体基板SB2上に貼り合わせる。このとき、絶縁層3aと半導体領域2aとが接合される。
【0183】
次に、
図2のステップS16と同様の工程(
図31のステップS47)を行って、
図34に示すように、半導体基板SB2上に貼り合わせた半導体基板SB3の基体SS2のうち半導体基板SB2側の表層部SS21以外の部分を除去する。あるいは、このステップS47では、実施の形態1で説明したのと同様に、例えばスマートカット技術などの他の手法を用いることもできる。
【0184】
これにより、絶縁層3aからなるBOX層3と、BOX層3上に配置された表層部SS21からなる半導体層としてのSOI層4と、からなる積層体LBを、半導体領域2a上、すなわち半導体基板SB2上に、転写する。そして、基体SS1と、基体SS1上に形成された半導体領域1aと、半導体領域1a上に形成された半導体領域2aと、半導体領域1a上に半導体領域2aを介して形成されたBOX層3と、BOX層3上に形成されたSOI層4と、を有するSOI基板SB1を用意する。
【0185】
次に、
図35および
図36を用いて、SOI基板SB1にMISFETQ1を製造する工程を説明する。
【0186】
まず、
図2のステップS17〜ステップS19と同様の工程(
図31のステップS48〜ステップS50)を行って、
図35に示すように、素子分離膜6を形成し、ウェル領域7を形成し、開口部OPを形成する。
【0187】
なお、前述の実施の形態1と同様に、開口部OPを形成する際に、領域AR2および領域AR3(
図1参照)の半導体領域1aおよび半導体領域2aを除去してもよい。
【0188】
次に、
図2のステップS20と同様の工程(
図31のステップS51)を行って、
図36に示すように、半導体領域1および半導体領域2を形成する。このステップS51では、MISFET形成領域AR1に形成された開口部を有するレジスト膜をマスクとして用いて、半導体領域1aおよび半導体領域2aにp型の不純物をイオン注入法により導入する。そして、p型の不純物が導入された半導体領域1aからなる半導体領域1を形成し、p型の不純物が導入された半導体領域2aからなる半導体領域2を形成する。これにより、半導体領域1および半導体領域2からなるグランドプレーン領域GPが形成される。
【0189】
半導体領域1aおよび半導体領域2aに導入される不純物の導電型は、半導体領域1aの下に位置するウェル領域7の導電型と同じである。また、p型の不純物が導入された半導体領域1aからなる半導体領域1におけるp型の不純物の濃度は、ウェル領域7におけるp型の不純物の濃度より高い。半導体領域1におけるp型の不純物の濃度が、例えば1×10
18〜2×10
19cm
−3程度になるように、イオン注入の際の注入条件が調整される。
【0190】
また、ステップS51では、半導体領域1aおよび半導体領域2aに不純物をイオン注入した後、例えば1000℃程度の温度で、SOI基板SB1の熱処理、すなわち活性化アニールを行うことができる。これにより、半導体領域1および半導体領域2で、イオン注入された不純物を活性化させることができる。
【0191】
その後、
図3のステップS21〜
図3のステップS30と同様の工程を行って、
図30に示すように、本実施の形態2の半導体装置が製造される。
【0192】
<MISFETの閾値電圧の制御について>
次に、本実施の形態2の半導体装置におけるMISFETの閾値電圧の制御について、実施の形態1で説明した比較例1と同様の構造を有する比較例2の半導体装置におけるMISFETの閾値電圧の制御と対比しながら説明する。
【0193】
図37は、SOI基板の厚さ方向における不純物の濃度分布を示すグラフである。
図37は、比較例2、および、実施の形態2の実施例としての実施例2について、グランドプレーン領域GPとしての半導体領域101または半導体領域1および半導体領域2、ならびに、基体SS1すなわちウェル領域7の各々の内部におけるp型の不純物としてのボロンからなる不純物の濃度分布を、計算によって求めたものである。半導体領域1はシリコンカーバイド(SiC)からなり、半導体領域101、半導体領域2および基体SS1はシリコン(Si)からなるものとした。
【0194】
図37の横軸は、グランドプレーン領域GPの上面における深さ位置を0としたときの深さ位置を示し、
図37の縦軸は、p型の不純物としてのボロンからなる不純物の不純物濃度を示す。
図37では、比較例2において、イオン注入を行った後、活性化アニールを行う前の濃度分布を「比較例2(アニール前)」と表記し、比較例2において、イオン注入を行い、さらに活性化アニールを行った後の濃度分布を「比較例2(アニール後)」と表記する。また、実施例2において、イオン注入を行い、さらに活性化アニールを行った後の濃度分布を「実施例2(アニール後)」と表記する。また、実施例2において、イオン注入を行った後、活性化アニールを行う前の濃度分布は、比較例2において、イオン注入を行った後、活性化アニールを行う前の濃度分布と同一であるものとした。
【0195】
なお、
図37の不純物の濃度分布の計算において、活性化アニールの熱処理温度、シリコン中のボロンの拡散係数、シリコンカーバイドの組成比、シリコンカーバイド中のボロンの拡散係数を、
図29の不純物の濃度分布の計算における値と同一とした。
【0196】
比較例2において、イオン注入の際に、活性化アニールを行う前は、深さ方向、すなわち半導体領域101の厚さ方向における不純物の濃度分布は、半導体領域101の上面と半導体領域101の下面との間にピークを有する。そして、半導体領域101の厚さが、ピークの半値幅よりも大きくなるように、不純物がイオン注入されている。また、前述したように、実施例2においても、活性化アニールを行う前は、深さ方向、すなわち半導体領域1および半導体領域2の厚さ方向における不純物の濃度分布は、比較例2と同様である。
【0197】
比較例2において、半導体領域101はSiからなるので、イオン注入を行った後、活性化アニールを行う際に、イオン注入された不純物は拡散しやすい。そのため、比較例2において、活性化アニールを行った後は、深さ方向、すなわち半導体領域101の厚さ方向における不純物の濃度分布は、半導体領域101の上面と半導体領域101の下面との間になおピークを有するものの、不純物の濃度分布におけるピーク高さは低くなり、ピークの半値幅は広くなる。その結果、比較例2において、活性化アニールを行った後は、グランドプレーン領域GP全体における不純物濃度の平均値が低くなる。これにより、前述した式(1)を用いて説明したように、グランドプレーン領域GPの内部電位Vbiの絶対値が小さくなるので、閾値電圧Vthを調整できる範囲が狭くなり、半導体装置の性能が低下する。
【0198】
一方、実施例2では、半導体領域1は、1000℃程度の温度でSiにおける不純物の拡散係数よりも小さい不純物の拡散係数を有するSiCからなるので、イオン注入を行った後、活性化アニールを行う際に、イオン注入された不純物は拡散しにくい。そのため、実施例2において、活性化アニールを行った後は、深さ方向、すなわち半導体領域1の厚さ方向における不純物の濃度分布は、活性化アニールを行う前の、不純物の濃度分布からほとんど変化しない。言い換えれば、実施例2では、活性化アニールを行う際に、不純物が拡散しにくいので、活性化アニールを行った後も、イオン注入を行った直後の不純物の濃度分布が維持される。
【0199】
すなわち、実施例2では、活性化アニールを行った後でも、なお、深さ方向、すなわち半導体領域1の厚さ方向における不純物の濃度分布は、半導体領域1の上面と半導体領域1の下面との間にピークを有し、半導体領域1の厚さTH1は、ピークの半値幅ΔRpよりも大きい。あるいは、好適には、半導体領域1の厚さ方向における不純物の濃度分布は、半導体領域1の上面と半導体領域1の下面との間にピークを有し、半導体領域1の上面における不純物濃度、および、半導体領域1の下面における不純物濃度のいずれも、ピークにおける不純物濃度の半分よりも小さい。
【0200】
これにより、少なくともピークにおける不純物濃度すなわちピーク値の1/2以上の不純物濃度を有する部分が、半導体領域1の内部に包含されることになるので、半導体領域1における不純物の濃度を確実に高くすることができる。そのため、活性化アニールを行った後、グランドプレーン領域GP全体における不純物濃度の平均値が低くなることを防止または抑制することができる。したがって、前述した式(1)を用いて説明したように、内部電位Vbiの絶対値が小さくなることを防止または抑制することができ、閾値電圧Vthを調整できる範囲を広げ、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0201】
また、実施例2では、半導体領域1とBOX層3との間に、Si膜からなる半導体領域2が設けられている。これにより、Siからなる半導体領域2では、SiCからなる半導体領域1から不純物が拡散してくるので、活性化アニールを行った後も、SiCからなる半導体領域1における不純物の濃度分布を維持しつつ、グランドプレーン領域のうちBOX層3側の部分である半導体領域2における不純物濃度を高くすることができる。
【0202】
好適には、半導体領域2の厚さTH2は、半導体領域1の厚さTH1よりも小さい。これにより、活性化アニールを行った後、SiCからなる半導体領域1における不純物の濃度分布を維持する効果を十分確保しつつ、半導体領域2における不純物濃度を高くすることができる。
【0203】
なお、実施例2でも、実施例1と同様に、半導体領域1における不純物濃度が高い場合、半導体領域1の抵抗も低くなる。また、
図37では図示しないが、実施例2でも、実施例1と同様に、活性化アニールを行う際に、半導体領域1および半導体領域2にイオン注入された不純物がBOX層3側に拡散しにくくなり、グランドプレーン領域GPのうちBOX層3と接触する部分における不純物濃度が上昇しにくくなる。
【0204】
<本実施の形態の主要な特徴と効果>
本実施の形態2では、実施の形態1と同様に、半導体装置は、SOI基板SB1と、SOI基板SB1に形成されたMISFETQ1と、を備える。SOI基板SB1は、基体SS1、基体SS1上に形成されたグランドプレーン領域GP、グランドプレーン領域GP上に形成されたBOX層3、および、BOX層3上に形成されたSOI層4、を有する。基体SS1は、Siからなり、グランドプレーン領域GPは、SiCからなるp型の半導体領域1を含む。これにより、実施の形態2の半導体装置は、実施の形態1の半導体装置が有する効果と同様の効果を有する。
【0205】
一方、本実施の形態2では、実施の形態1と異なり、グランドプレーン領域GPは、SiCからなるp型の半導体領域1に加え、SiCからなるp型の半導体領域1上に形成された、Siからなるp型の半導体領域2を含む。
【0206】
これにより、Siからなる半導体領域2では、SiCからなる半導体領域1から不純物が拡散してくるので、活性化アニールを行った後も、SiCからなる半導体領域1における不純物の濃度分布を維持しつつ、グランドプレーン領域GPのうちBOX層3側の部分である半導体領域2における不純物濃度を高くすることができる。
【0207】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。