【実施例1】
【0009】
以下、
図1を参照して本実施例のコネクタの金属板の形状について説明する。
図1は、本実施例のコネクタ10が備える金属板13を示す斜視図である。金属板13は、後述するコンタクト間のクロストーク低減のために設けられている。
図1に示すように金属板13の所定の領域に、差動信号の4分の1波長の直径を有する円よりも小さいサイズの孔13bが複数形成されている。孔13bは、円形であってもよいし、方形であってもよいし、別の形状であってもよい。
【0010】
また、金属板13の一端側(コネクタ差し込み方向端側)には、長穴13cが設けられている。長穴13cは、後述する第1絶縁体基板11と、第2絶縁体基板12とを接続するため、あるいはそれぞれの絶縁体基板上にそれぞれのコンタクトを固定するために使用される。
【0011】
金属板13には、後述するコンタクトピン配列方向の両端に外向きに一対の凸部13eが形成されている。凸部13eの端面の一部は、傾斜面13fとなっている。傾斜面13fは、コネクタ引き抜き方向に進むにしたがって金属板13が幅広になるように形成されている。別の表現では、傾斜面13fは、コネクタ差し込み方向に進むにしたがって金属板13が幅狭になるように形成されている。また金属板13には、凸部13eのコネクタ差し込み方向に隣接して一対の突起部13gが外向きに形成されている。突起部13gは、
図1に示すように金属板13の端面の一部を外向きに凸な曲面とすることで形成してもよい。これに限らず、突起部13gの端面が複数の平面で形成されてもよい。例えば、突起部13gを、その頂辺で交わる二つの端面を有する三角形の板形状としてもよい。
【0012】
以下、
図2を参照して本発明の実施例1のコネクタ10の中間アセンブリであるコンタクト組立体について説明する。
図2は、本実施例のコネクタ10の中間アセンブリであるコンタクト組立体100を示す斜視図である。コンタクト組立体100とは、後述する第1、第2絶縁体基板、金属板、第1、第2コンタクト、ハウジングを組み立ててなる中間部品を指すものとする。
図2に示すように、コンタクト組立体100は、第1絶縁体基板11と、第1絶縁体基板11の上面に、差動信号用のコンタクトピンを含む複数のコンタクトピンをアレイ配置してなる第1コンタクト14と、第2絶縁体基板12と、第2絶縁体基板12の下面に、差動信号用のコンタクトピンを含む複数のコンタクトピンを第1コンタクト14の配列方向と同じ方向にアレイ配置してなる第2コンタクト(図示略)と、第1絶縁体基板11の下面と第2絶縁体基板12の上面に挟持された金属板13を含む。別の表現では、コンタクト組立体100は、上から順に第1コンタクト14、第1絶縁体基板11、金属板13、第2絶縁体基板12、第2コンタクト(図示略)が層状に配置されてなるサンドイッチ構造を含む。第1絶縁体基板11、第2絶縁体基板12、金属板13、第1コンタクト14、第2コンタクトは、これらの一端側が断面略長円の筒形状のハウジング16内に収容され、他端側はハウジング16から露出している。ハウジング16の上面には、着脱可能な上面カバー16a、内部カバー16bが装着されている。例えばハウジング16、内部カバー16bを樹脂製とし、上面カバー16aを金属製とすることができる。
【0013】
図2に示すように、第1コンタクト14は左端のコンタクトピンから順に、グラウンド用のコンタクトピンである第1グラウンドピン14a、差動信号用のコンタクトピンである第1差動信号ピン14b(2本)、電源用のコンタクトピンである第1電源ピン14c、続いて低速信号用のコンタクトピンである第1低速信号ピン14d(4本)、第1電源ピン14c、2本の第1差動信号ピン14b、そして右端のコンタクトピンである第1グラウンドピン14aを備える。このように第1コンタクト14は左右対称な構成となっている。第2コンタクトも同様の構造となっている。具体的には、第2コンタクトは右端のコンタクトピンから順に、グラウンド用のコンタクトピンである第2グラウンドピン、差動信号用のコンタクトピンである第2差動信号ピン(2本)、電源用のコンタクトピンである第2電源ピン、続いて低速信号用のコンタクトピンである第2低速信号ピン(4本)、第2電源ピン、2本の第2差動信号ピン、そして左端のコンタクトピンである第2グラウンドピンを備える。このように第2コンタクトは第1コンタクト14同様左右対称な構成となっている。第1コンタクト14の各コンタクトピンは、第2コンタクトの各コンタクトピンと互いに向き合うように順序を合わせて配列されている。
【0014】
ハウジング16のコンタクト配列方向の両端には、一対のスリット16eが設けられている。スリット16eは、上述の凸部13e、突起部13gを挿通するために設けた孔である。上述の凸部13e、突起部13gは、スリット16eを介してハウジング16の外部に露出している。
【0015】
なお、本実施例のコネクタ10は、第1コンタクトと第2コンタクトの計2列のコンタクトを備えるが、これに限らずコンタクトを1列としてもよい。
【0016】
次に、
図3を参照して、コンタクト組立体100を金属シェル19に取り付けた状態について説明する。
図3は、本実施例のコンタクト組立体100を金属シェル19に取り付けた状態を示す斜視図である。
【0017】
金属シェル19のコンタクト配列方向の両端には、一対の窓19aが設けられている。
図3に示すように窓19aは長円形状であるが、窓19aの形状はこれに限らず、例えば、長方形形状としてもよい。一対の窓19aと上述の一対の凸部13eとが嵌合することで、コンタクト組立体100と、金属シェル19とが位置決め固定される。コンタクト組立体100は、金属シェル19の後端(コネクタ引き抜き方向端)から、コネクタ差し込み方向に向かって挿通される。このとき、上述した金属板13の幅方向(コンタクト配列方向)の最大長は、金属シェル19の幅方向(コンタクト配列方向)の内径よりもわずかに大きく形成されている。より詳細には、金属板13の幅方向最大長は、金属シェル19の幅方向内径よりも、一対の凸部13eの外向きの突出長さ分だけ大きく形成されている。このように金属板13に一対の凸部13eを形成したことにより、コンタクト組立体100を金属シェル19に挿通する際、金属板13には上述の傾斜面13fに沿って徐々に内向きの応力が加わる。これにより、コンタクト組立体100の挿通過程では、金属板13はわずかに弾性変形して、幅方向最大長が縮小する。一対の凸部13eの全長が、一対の窓19a内に位置したとき、凸部13eは窓19a内に挿通されて、金属板13にかかる応力が解除され、金属板13は元の形状に戻る。これにより一対の凸部13eは、窓19aに嵌め込まれて、固定される。以上により、コンタクト組立体100は、金属シェル19内の所定の位置に位置決めされて固定される。
【0018】
突起部13gの頂点を含む金属板13の幅方向長さは、金属シェル19の幅方向内径よりもわずかに大きく形成されている。これにより、コンタクト組立体100を金属シェル19内に挿通した際、突起部13gの頂点が、金属シェル19の内側面に接触する。突起部13gの頂点と金属シェル19内側面は電気的に接続(導通)する程度に、所定の圧力で接触する。なお本実施例では、突起部13gの頂点における突出長さは、凸部13eの頂点における突出長さよりも小さい。
【0019】
このように本実施例のコネクタによれば、金属シェル19と掛り合う部分である凸部13eを金属で形成したことにより、凸部13eを樹脂で形成した場合と比較して、凸部13eの機械的強度を増すことができ、金属シェル19内でコンタクト組立体100が所定の位置に安定して固定される構造を実現した。また、コンタクト間のクロストーク低減のために必要な金属板13の一部を流用して凸部13eを形成したことにより、本実施例における効果を得るために新たな部品を用意する必要がなく、材料コスト、組立コストが増大しない。また、クロストーク低減のための金属板はコネクタを実装する基板に直接半田付けして電気的接続を図るのが通常であるが、基板に半田付けスペースがない場合には、金属板が電気的に宙に浮いた状態となってしまう問題があった。本実施例のコネクタ10では、金属板13に形成された突起部13gが金属シェル19と所定の圧力で接触することにより、金属板13と金属シェル19が電気的に接続される。よって金属シェル19をコネクタ実装基板に半田付けすることにより、基板上に金属板13を直接半田付けするスペースがない場合であっても、金属シェル19を介して、金属板13とコネクタ実装基板とを電気的に接続することができる。