(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凍結点が互いに異なる複数種の凍結物のうち、含有量が多い2種の質量比が40:60〜60:40であり、該2種の合計の含有量が50〜100質量%である、請求項1に記載の冷菓。
請求項1または2に記載の冷菓を製造する方法であって、甘味料および水を含有し、凍結点が互いに異なる複数種の冷菓原料ミックスを、それぞれの凍結点よりも低い温度で凍結させて、複数種の部分凍結組成物を得る部分凍結工程と、
前記複数種の部分凍結組成物のうちの2種以上を混合する混合操作を含み前記複数種の部分凍結組成物を層状の部分凍結組成物が混入しあうように混在させる混在化工程と、該混在させた部分凍結組成物を一括的に凍結させる凍結工程を有する、冷菓の製造方法。
前記混在化工程に供される複数種の部分凍結組成物のうち、配合割合が多い2種の質量比が40:60〜60:40であり、該2種の合計の配合量が、前記混在化工程に供される部分凍結組成物の総量に対して50〜100質量%である、請求項3に記載の冷菓の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<凍結点の測定方法>
液状である冷菓原料ミックスを雰囲気温度−35℃で冷却しながら、冷菓原料ミックスの温度を経時的に測定する。ここで、液体が固体になる反応には発熱反応が生じることから、前記の温度下で液体を冷却していくと、ある温度において一旦温度が下降しないポイント(凝固点)に達する。本発明における凍結点は、冷却中に冷菓原料ミックスの温度が下降しないポイント(凝固点)における温度を、冷菓原料ミックスの凍結点として測定するものとする。
【0011】
本発明において、冷菓原料ミックスは液状であり、これを流動させながら凍結点より低い温度で凍結させると、流動性を有する部分凍結組成物となり、該部分凍結組成物を容器内または型内でさらに凍結させて固化させることにより凍結物となる。
本発明の冷菓は複数種の凍結物が一体化したものであり、各凍結物からなる領域が混在している。
冷菓原料ミックスを凍結させて得られる部分凍結組成物または凍結物の凍結点は、該冷菓原料ミックスの凍結点と同じであり、部分凍結組成物または凍結物を融解することによって冷菓原料ミックスと同じ状態に戻し、前記の方法で凍結点を測定すればよい。
【0012】
<部分凍結組成物の硬さ(ペネトロ値:12gコーン使用時)の測定方法>
ペネトロ値の測定は、ペネトロメーター(中村医科理化器械店製)を使用して行った(以下、同様)。
部分凍結組成物の硬さを表すペネトロ値は、深さ50mmのカップに部分凍結組成物を満たし、その上方から、先端角度12度、質量12gのコーンを、部分凍結組成物の表面に垂直に挿入し、5秒間に自重により沈んだ距離(単位:mm)の10倍の値(単位なし)によって定義されるものである。この値が大きいほど柔らかいことを示す。
【0013】
<冷菓のサジ通りの良さ(ペネトロ値:12gコーン+50g重り)の測定方法>
冷菓のサジ通り良さの目安となるペネトロ値は、−25℃に温度調整した冷菓を、20℃、相対湿度70%に保持された雰囲気中に静置し、3分間毎にペネトロ値を測定する。
測定方法は、冷菓の上方から、先端角度12度、質量12gのコーンに質量50gの重りを付加したものを、冷菓の表面に垂直に挿入し、5秒間に自重により沈んだ距離の10倍の値を冷菓のペネトロ値とする。この値が大きいほどサジ通りが良いことを示す。
【0014】
<冷菓>
本発明における冷菓とは、一般的な「冷菓」に分類されるものをいい、具体的には、アイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス)、氷菓を挙げることができる。
アイスクリーム類とは、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであって乳固形分3.0%以上を含むもの(はっ酵乳を除く)をいう。アイスクリーム類は、含まれる乳固形分と乳脂肪分の量によって、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスの3つに分類される。
一方、乳固形分3.0%未満のものは、前記アイスクリーム類ではなく、食品衛生法に基づく厚生省告示「食品、添加物等の規格基準」により、氷菓として規定されている。
本発明における冷菓は、氷菓、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスのいずれであってもよい。
【0015】
本発明の冷菓は、凍結点が互いに異なる複数種の凍結物からなる。本発明において、凍結点が同じである凍結物は、組成が異なっていても同種であるとみなす。例えば着色料の種類が異なるだけで凍結点が互いに同じである凍結物は、1種の凍結物であるみなす。
複数種の凍結物は混在した状態で一体化されている。すなわち、それぞれの種類の凍結物からなる領域が混在しており、該領域は互いに隙間なく密着して全体が1つの塊になっている。
【0016】
このように、凍結点が互いに異なる領域を混在させることにより、サジ通りを向上させることができる。
例えば、一般的な冷菓は凍結点が一様な凍結物からなり、食する際の温度において該凍結物が硬いとサジ通りが悪い。
本発明の冷菓は、全体は1つの塊であるが、凍結点が異なる複数種の凍結物が混在しており、食する際の温度において硬い領域と軟らかい領域が混在する。このため、冷菓にサジを挿入する際、サジの先端が硬い領域と軟らかい領域を順次通過するため、硬い凍結物のみからなる場合に比べてサジ通りが良くなる。
したがって、単独では硬くてサジ通りが悪い凍結物であっても、これよりも凍結点が低くて軟らかくなりやすい凍結物を用いて、サジの先端が硬い領域と軟らかい領域を交互に通過するように混在させることにより、サジ通りを向上させることができる。
【0017】
本発明の冷菓において、凍結点が異なる複数種の凍結物が混在しているとは、冷菓にサジを挿入する際に、サジの先端が、硬さが異なる複数種の領域を通過し得るように存在していることを意味する。
例えば、各凍結物からなる領域の一部または全部が、層状、小片状、または粒状であってもよい。
具体例としては、それぞれの凍結物からなる領域が層状に混ざり合った混在状態が挙げられる。層状に混ざり合った状態とは、複数種の層が不規則に混入しあっている状態を意味する。
または、それぞれの凍結物からなる領域が小片状または粒状に混ざり合った混在状態が挙げられる。
または、それぞれの凍結物からなる領域が海島状に混在していてもよい。すなわち、小片状または粒状の島部が海部中に規則的にまたは不規則に存在する海島状の混在状態が挙げられる。1つの島部は1種の凍結物からなっていることが好ましい。海部は1種の凍結物からなっていてもよく、2種以上の凍結物が層状に混ざり合っていてもよい。
各凍結物からなる領域の大きさは、冷菓に挿入されるサジの先端が複数種の領域を通過し得る大きさであればよい。例えば、容器に充填された冷菓において、容器の深さ方向に平行な切断面における、層の幅、もしくは小片状または粒状の領域の最大径が1〜5mmであることが好ましい。
【0018】
冷菓を構成する、凍結点が異なる凍結物は2種以上であればよい。種類が多いほど製造条件の制御等が複雑になる。好ましくは2〜4種であり、2または3種がより好ましい。2種でもサジ通りの向上効果は充分に得られ、製造容易性の点で特に好ましい。
各凍結物の硬さ(凍結点)、冷菓に対する各凍結物の含有量、および混在状態によってサジ通りの良さを調整することができる。
【0019】
本発明において、冷菓を構成する、凍結点が互いに異なる複数種の凍結物のうち、含有量が多い2種の質量比が40:60〜60:40であり、該2種の合計の含有量が50〜100質量%であることが好ましい。該質量比は45:55〜55:45がより好ましい。該2種の合計の含有量は60〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましく、80〜100質量%がさらに好ましく、90〜100質量%が特に好ましい。
凍結点が異なる凍結物が2種類の場合は、凍結点が互いに異なる第1の凍結物と第2の凍結物が混在した状態で一体化されており、[第1の凍結物]:[第2の凍結物]で表される質量比が40:60〜60:40である冷菓がより好ましい。該質量比は45:55〜55:45がさらに好ましい。該第1の凍結物と第2の凍結物の合計の含有量は100質量%である。
【0020】
凍結点が異なる凍結物が3種類以上の場合は、含有量が多い2種の質量比が40:60〜60:40であり、該2種の合計の含有量が50質量%以上、100質量%未満であることが好ましい。該質量比は45:55〜55:45がより好ましい。該2種の合計の含有量は60質量%以上、100質量%未満が好ましく、70質量%以上、100質量%未満がより好ましく、80質量%以上、100質量%未満がさらに好ましく、90質量%以上、100質量%未満が特に好ましい。
前記含有量が多い2種とは、凍結点が異なる3種類以上の凍結物のうち、冷菓に対する含有量が最も多い凍結物(1)と2番目に含有量が多い凍結物(2)を意味する。該凍結物(1)と凍結物(2)の含有量が同じであってもよい。2番目に含有量が多い凍結物が2種以上存在する場合、凍結物(1)と凍結物(2)との凍結点の差が最も大きくなるように凍結物(2)を決定する。含有量が最も多い凍結物が3種以上存在する場合、凍結物(1)と凍結物(2)との凍結点の差が最も大きくなるように凍結物(1)と凍結物(2)を決定する。
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態として、第1の凍結物と第2の凍結物が混在した状態で一体化されており、各凍結物が空気を含有している態様を例に挙げて説明する。
<原料>
本発明の冷菓原料ミックスの調製に用いられる原料を説明する。本発明では凍結点が互いに異なる複数種の冷菓原料ミックスが用いられる。本実施形態では該複数種の冷菓原料ミックスとして第1の凍結物と第2の凍結物に対応する第1の冷菓原料ミックスと第2の冷菓原料ミックスが用いられる。
[甘味料]
本発明における甘味料は、冷菓に甘味を付与する原料を意味し、糖類および糖類以外の甘味を付与する原料を含む概念である。
甘味料としては、冷菓の原料として公知のものを適宜使用することができる。
具体例としては、砂糖(上白糖、グラニュー糖、三温糖、黒砂糖)、水あめ、粉飴、砂糖混合異性化糖、異性化糖、乳糖、ぶどう糖、麦芽糖、果糖、転化糖、還元麦芽水あめ、蜂蜜、トレハロース、パラチノース、D−キシロース等の糖類;キシリトール、ソルビトール、マルチロール、エリスリトール等の糖アルコール類;サッカリンナトリウム、サイクラメート及びその塩、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、ステビア抽出物に含まれるステビオサイドなどの高甘味度甘味料;等が挙げられる。
【0022】
甘味料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
複数種の冷菓原料ミックスのそれぞれにおける甘味料の含有量は所望の甘味が得られるように設定される。例えば甘味料の合計が10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上がより好ましい。上限は、硬さの保持性の点から30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
【0023】
[乳成分]
冷菓原料ミックスに乳成分を適宜含有させてもよい。
乳成分の例としては生乳、牛乳、クリーム、バター、脱脂粉乳、脱脂濃縮乳、練乳、チーズ、ホエイ、ホエイ蛋白濃縮物等の乳製品が挙げられる。
乳成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
[卵成分]
冷菓原料ミックスに卵成分を含有させてもよい。卵黄は乳化作用を有するため、卵黄を含有させることにより、乳化剤の使用量を低減することができる。あるいは乳化剤を使用しなくても良好な乳化状態を得ることができる。
【0025】
[安定剤]
冷菓の原料として公知の安定剤を適宜使用することができる。
具体例としては、ゼラチン、ペクチン、繊維素グルコール酸ナトリウム(カルボキシメチルセルロース)、グアガム、ローカストビーンガム、カラギナン、微結晶セルロース、アラビアガム、カラヤガム、キサンタンガム、タラガム、ジェランガム、ネイティブジェランガム、マクロホモプシルガム、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、大豆多糖類等が挙げられる。
【0026】
安定剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
安定剤の使用量は少ないことが好ましい。例えば増粘多糖類を使用した場合には、冷菓の食感がねっとりとする傾向があり、これによりフレーバーリリースが低下する恐れがあるので、安定剤は少量を使用するか、又は使用しないことが好ましい。
複数種の冷菓原料ミックスの合計に対して、安定剤の合計の含有量は0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましい。
【0027】
前記安定剤のうち冷菓のフレーバーリリースが良くなる点、及び/又は冷菓の口溶けが良くなる点でゼラチン、寒天等が好ましい。
複数種の冷菓原料ミックスの1種以上にゼラチンを含有させる場合、ゼラチンを含有させる冷菓原料ミックスのそれぞれにおける含有量は0質量%超、0.5質量%以下が好ましく、0質量%超、0.3質量%以下がより好ましい。
【0028】
[植物油脂]
冷菓原料ミックスに植物油脂を含有させてもよい。
植物油脂としては、パーム油、パーム核油、やし油、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、ひまわり油、オリーブ油、サンフラワー油等が挙げられる。
植物油脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
複数種の冷菓原料ミックスの合計に対して、植物油脂の合計の含有量は20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0029】
[その他の添加剤]
複数種の冷菓原料ミックスに、前記以外の、冷菓において公知の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。例えば、乳化剤、果汁、食塩、酸味料、香料、着色料、酒類、その他の食品添加剤等が挙げられる。
複数種の冷菓原料ミックスの1種以上に酒類を1種以上含有させる場合、酒類を含有させる冷菓原料ミックスのそれぞれにおける酒類の合計の含有量は、0質量%超、5質量%以下が好ましく、0質量%超、1質量%以下がより好ましい。
なお、乳化剤を使用する場合、乳化剤自体の雑味が冷菓の風味に影響することを抑えるという点、およびより自然な風味を維持するという点で冷菓における乳化剤の含有量は少ないことが好ましい。例えば複数種の冷菓原料ミックスの合計に対して、乳化剤の含有量は0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、ゼロが最も好ましい。
【0030】
<冷菓の製造方法>
本発明の冷菓の製造方法は、甘味料および水を含有し、凍結点が互いに異なる複数種の冷菓原料ミックスを、それぞれの凍結点よりも低い温度で凍結させて、複数種の部分凍結組成物を得る部分凍結工程と、前記複数種の部分凍結組成物を混在させる混在化工程と、該混在させた部分凍結組成物を一括的に凍結させる凍結工程を有する。
本実施形態における部分凍結工程は、凍結点が互いに異なる第1の冷菓原料ミックスおよび第2の冷菓原料ミックスを、それぞれ空気を含有させつつ凍結点よりも低い温度で凍結させて、第1の部分凍結組成物および第2の部分凍結組成物を得る工程である。
本実施形態における混在化工程は、第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物とを混合し、両者が層状に混ざり合った状態の混合物を得る混合工程(混合操作ということもある)である。
本実施形態における凍結工程は、混合工程で得られた混合物を凍結させる工程である。
【0031】
[冷菓原料ミックス調製工程]
まず冷菓の製造に用いる複数種の冷菓原料ミックスをそれぞれ調製する。該複数種の冷菓原料ミックスはいずれも甘味料および水を必須成分として含有し、必要に応じてそれ以外の成分を含有させる。
任意の冷菓原料ミックスと、これに空気を含有させつつ凍結させた部分凍結組成物と、該部分凍結組成物を凍結させた凍結物の組成は互いに同じである。
【0032】
本実施形態では、まず、第1の冷菓原料ミックスと第2の冷菓原料ミックスをそれぞれ調製する。第1の冷菓原料ミックスおよび第2の冷菓原料ミックスはいずれも甘味料および水を必須成分として含有し、必要に応じてそれ以外の成分を含有させる。
第1の冷菓原料ミックスと、これに空気を含有させつつ凍結させた第1の部分凍結組成物と、該第1の部分凍結組成物を凍結させた凍結物(最終的な冷菓における第1の層)の組成は互いに同じである。
第2の冷菓原料ミックスと、これに空気を含有させつつ凍結させた第2の部分凍結組成物と、該第2の部分凍結組成物を凍結させた凍結物(最終的な冷菓における第2の層)の組成は互いに同じである。
【0033】
具体的には、甘味料、およびそれ以外の冷菓に含有させる成分を、水(または温水)に添加して混合し、各冷菓原料ミックスを調製する。冷菓原料ミックスを調製する際の、原料の添加順序等は特に限定されない。
冷菓原料ミックスの温度を、成分が変質しない範囲、例えば60〜80℃程度に高くしてもよい。冷菓原料ミックスを、必要に応じてろ過、均質化してもよい。
冷菓原料ミックスは常法により加熱殺菌を行うことが好ましい。殺菌には、プレート式殺菌機、チューブラー式殺菌機、インフュージョン式殺菌機、インジェクション式殺菌機、バッチ式殺菌機等を使用できる。
【0034】
複数種の冷菓原料ミックスのうち、冷菓に対する含有量が最も多い凍結物(1)に対応する冷菓原料ミックス(1)と、2番目に含有量が多い凍結物(2)に対応する冷菓原料ミックス(2)の凍結点の差は2〜6℃が好ましく、より好ましくは2〜4℃である。
冷菓原料ミックス(1)および冷菓原料ミックス(2)の凍結点は、それぞれが下記の好ましい範囲であり、かつ両者の差が前記の好ましい範囲内となるように設定されることが好ましい。
該冷菓原料ミックス(1)または冷菓原料ミックス(2)のうち、凍結点が高い方の凍結点は−1.5℃〜−4℃が好ましく、−2.5〜−3.5℃がより好ましい。凍結点が低い方の凍結点は−3℃〜−8℃が好ましく、−4.5〜−6.5℃がより好ましい。
このように複数種の冷菓原料ミックスを用いるとともに、冷菓に対する含有量が多い2種の凍結点を前記の範囲とすることにより、硬さの保持性およびサジ通りが良好な冷菓が得られる。また、冷凍庫から取り出した直後でも、適度な硬さを有し、サジ通りが良好であり、かつその後の硬さの低下が小さく、硬さの保持性が良好である冷菓が得られる。
【0035】
本実施形態では、第1の冷菓原料ミックスと第2の冷菓原料ミックスとは凍結点が互いに異なる。第1の冷菓原料ミックスの凍結点は、第2の冷菓原料ミックスの凍結点よりも高い。その差は2〜6℃が好ましく、より好ましくは2〜4℃である。
第1の冷菓原料ミックスおよび第2の冷菓原料ミックスの凍結点は、それぞれが下記の好ましい範囲であり、かつ両者の差が前記の好ましい範囲内となるように設定されることが好ましい。
第1の冷菓原料ミックスの凍結点は−1.5℃〜−4℃が好ましく、−2.5〜−3.5℃がより好ましい。第2の冷菓原料ミックスの凍結点は−3℃〜−8℃が好ましく、−4.5〜−6.5℃がより好ましい。
このように両者の凍結点に差を設けることにより、第1の冷菓原料ミックスから得られた凍結物(第1の層)よりも、第2の冷菓原料ミックスから得られた凍結物(第2の層)の方が柔らかくなる。後述する混合操作において、これらの層が混在するように混合することによって、硬さの保持性およびサジ通りが良好な冷菓が得られる。
また、冷凍庫から取り出した直後でも、適度な硬さを有し、サジ通りが良好であり、かつその後の硬さの低下が小さく、硬さの保持性が良好である冷菓が得られる。
【0036】
第2の冷菓原料ミックスの凍結点が−8℃以上であると、冷菓を喫食する際の温度における第2の層の流動性が高すぎず、第1の冷菓原料ミックスの凍結点が−1.5℃以下であると、冷菓を喫食する際の温度における第1の層の流動性が得られやすい。
第1の冷菓原料ミックスの凍結点と第2の冷菓原料ミックスの凍結点との差が2℃以上であると、冷菓において良好なサジ通りが得られやすい。該凍結点の差が6℃以下であると、冷菓を喫食する際の温度における第1の層と第2の層の流動性の差が小さくなり、冷菓全体における硬さの均一性を良好に維持できる。
【0037】
第1の冷菓原料ミックスと第2の冷菓原料ミックスの凍結点の差が前記の範囲となるように、第1の冷菓原料ミックスと第2の冷菓原料ミックスとで組成を変えることが好ましい。例えば、単糖類(ぶどう糖、果糖)や酒類(アルコール)を含有させると、凍結点を効果的に下げることができる。
例えば、冷菓に含有させる糖類の一部として砂糖および単糖類(ぶどう糖、果糖)を用い、単糖類(ぶどう糖、果糖)を、凍結点が低い第2の冷菓原料ミックスに含有させ、砂糖を第1の冷菓原料ミックスに含有させることが好ましい。
冷菓に酒類を含有させる場合は、これを第2の冷菓原料ミックスに含有させることが好ましい。
【0038】
複数種の冷菓原料ミックスの固形分濃度は、それぞれ20〜55質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましい。複数種の冷菓原料ミックスのうちの任意の2種以上の固形分濃度が同じであってもよく、全部の冷菓原料ミックスの固形分濃度が互いに異なっていてもよい。
複数種の冷菓原料ミックスのうち、固形分濃度が最も高い冷菓原料ミックスと、固形分濃度が最も低い冷菓原料ミックスとの、固形分濃度の差の絶対値が20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下がより好ましい。両者の固形分濃度の差の絶対値が小さいほど、複数種の冷菓原料ミックスに由来するそれぞれの領域間における氷結晶の割合の差が小さくなり、冷菓全体における食感の均一性が得られる。すなわち、冷菓全体における食感が均一でありながら、サジ通りの良い冷菓が得られる。
【0039】
本実施形態において、第1の冷菓原料ミックスの固形分濃度は20〜55質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましい。この範囲であると、第1の冷菓原料ミックスの好ましい凍結点が得られやすい。
第2の冷菓原料ミックスの固形分濃度は20〜55質量%が好ましく、30〜52質量%がより好ましい。この範囲であると、第2の冷菓原料ミックスの好ましい凍結点が得られやすい。
第1の冷菓原料ミックスと第2の冷菓原料ミックスとで、固形分濃度は同じであってもよく、異なっていてもよい。異なっている場合、その差の絶対値は20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。両者の固形分濃度の差の絶対値が小さいほど、冷菓の第1の層と第2の層との氷結晶の割合の差が小さくなり、冷菓全体における食感の均一性を良好に維持できる。すなわち、冷菓全体における食感が均一でありながら、サジ通りの良い冷菓が得られる。
【0040】
[部分凍結工程(フリージング工程ともいう)]
次に複数種の冷菓原料ミックスを、それぞれの凍結点よりも低い温度で凍結させて、複数種の部分凍結組成物を得る。このとき空気を含有させつつ凍結させてもよい。
冷菓原料ミックスを、フリーザーに供給させる際の温度(フリーザーの入り口直前における供給温度)は、凍結点よりも高い温度である。高すぎるとフリーザー内の温度が下がらないおそれがあり、低すぎると流量が安定しにくくなるおそれがある。したがってこれらの不都合が生じない温度に調整する。該供給温度は、例えば0〜10℃が好ましく、1〜9℃がより好ましい。
【0041】
次の混在化工程が、複数種の部分凍結組成物のうちの2種以上を混合する混合操作を含む場合、混合操作に供される任意の部分凍結組成物の温度(排出温度)は、これよりも凍結点が低い他の任意の部分凍結組成物の温度(排出温度)よりも高いことが好ましい。これにより、混合される複数種の部分凍結組成物の硬さの差を小さくできる。該硬さの差が小さいと、混合時の偏りが生じ難く、複数種の部分凍結組成物が均一に混ざり合った好ましい混合状態が得られやすい。
特に、冷菓に対する含有量が最も多い凍結物(1)に対応する部分凍結組成物(1)と、2番目に含有量が多い凍結物(2)に対応する部分凍結組成物(2)のうち、凍結点が高い方の部分凍結組成物の温度(排出温度)が、凍結点が低い方の部分凍結組成物の温度(排出温度)よりも高く、その差が1〜7℃であることが好ましく、1〜5.5℃がより好ましく、1.5〜5.5℃がさらに好ましく、2〜5℃が特に好ましい。
部分凍結組成物(1)と部分凍結組成物(2)の温度(排出温度)の差が前記の範囲であると、部分凍結組成物(1)と部分凍結組成物(2)の硬さの差が小さくなり、混合時にこれらの偏りが生じ難く、良好なサジ通りが得られやすい。
【0042】
本実施形態では、第1の冷菓原料ミックスを、空気を含有させつつ凍結点よりも低い温度で凍結させて第1の部分凍結組成物を得る。また、第2の冷菓原料ミックスを、空気を含有させつつ凍結点よりも低い温度で凍結させて第2の部分凍結組成物を得る。
これらの工程は、冷菓の製造において公知のフリーザーを用いて行うことができる。例えばSOREN社製、テトラパックホイヤー社製、グラム社製、WCB社製、大東食品機械社製、イズミフードマシナリー社製等のフリーザーを用いることができる。製造効率の点で連続フリーザーが好ましい。
【0043】
第1の冷菓原料ミックスまたは第2の冷菓原料ミックスを、フリーザーに供給させる際の温度(フリーザーの入り口直前における供給温度)は、凍結点よりも高い温度である。高すぎるとフリーザー内の温度が下がらないおそれがあり、低すぎると流量が安定しにくくなるおそれがある。したがってこれらの不都合が生じない温度に調整する。該供給温度は、例えば0〜10℃が好ましく、1〜9℃がより好ましい。
【0044】
フリーザーでは第1の冷菓原料ミックスまたは第2の冷菓原料ミックスが、それぞれ空気と混合され、気泡を含みながらフリージングされて第1の部分凍結組成物または第2の部分凍結組成物となる(フリージング工程)。
第1の部分凍結組成物の温度(排出温度)は、第2の部分凍結組成物の温度(排出温度)よりも高く、その差は1〜7℃であることが好ましく、1〜5.5℃がより好ましく、1.5〜5.5℃がさらに好ましく、2〜5℃が特に好ましい。
【0045】
第1の冷菓原料ミックスの凍結点は、第2の冷菓原料ミックスの凍結点よりも高いため、仮に、第1の部分凍結組成物の温度(排出温度)と、第2の部分凍結組成物の温度(排出温度)とが同じであると、第1の部分凍結組成物よりも、第2の部分凍結組成物の方が柔らかい。
本工程では、前記の範囲を満たすように、第1の部分凍結組成物の温度(排出温度)を、第2の部分凍結組成物の温度(排出温度)よりも高くすることによって、第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物の硬さの差を小さくできる。該硬さの差が小さいと、混合操作において両者が層状に混ざり合った好ましい混合状態が得られやすい。
【0046】
第1の部分凍結組成物および第2の部分凍結組成物の温度(排出温度)は、それぞれが下記の好ましい範囲であり、かつ両者の差が前記の好ましい範囲内となるように設定されることが好ましい。
例えば第1の冷菓原料ミックスの凍結点が−1.5℃〜−4℃であるとき、フリーザーから排出される第1の部分凍結組成物の温度(排出温度)、すなわち次の混合操作で混合される直前の第1の部分凍結組成物の温度は、−3〜−8℃が好ましく、−4〜−7℃がより好ましく、−4〜−6℃がさらに好ましく、−4〜−5℃が特に好ましい。前記の範囲内であると、混合操作において第1の部分凍結組成物が硬すぎず、柔からかすぎず、第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物との両者が層状に混ざり合った好ましい混合状態が得られやすい。
また、第2の冷菓原料ミックスの凍結点が−3℃〜−8℃であるとき、フリーザーから排出される第2の部分凍結組成物の温度(排出温度)、すなわち次の混合操作で混合される直前の第2の部分凍結組成物の温度は、−5〜−11℃が好ましく、−6〜−10℃がより好ましく、−7〜−9℃がさらに好ましい。前記の範囲内であると、混合操作において第2の部分凍結組成物が硬すぎず、柔からかすぎず、第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物との両者が層状に混ざり合った好ましい混合状態が得られやすい。
【0047】
複数種の冷菓原料ミックスを、空気を含有させつつ凍結させてそれぞれの部分凍結組成物とする場合、各部分凍結組成物に含まれる空気の量は、それぞれの冷菓原料ミックスの容量に対する含有空気容量の百分率であるオーバーラン値(容量基準:OR)で表される。例えばオーバーラン値が100%の場合は、冷菓原料ミックスと同容量の空気が含まれていることを意味する。
各部分凍結組成物のオーバーラン値(容量基準)は、それぞれ5〜80%程度が好ましく、15〜60%がより好ましく、20〜50%がさらに好ましい。該オーバーラン値が前記の範囲内であると、濃厚であり、かつ滑らかな食感が良好に得られやすい。
複数種の部分凍結組成物のオーバーラン値は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。複数種の部分凍結組成物の各オーバーラン値のうち、最も高い値と最も低い値との差の絶対値は、特に限定されないが、冷菓全体における柔らかさの均一性を高める点からは50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましい。
【0048】
本実施形態において、第1の部分凍結組成物または第2の部分凍結組成物に含まれる空気の量は、それぞれ第1の冷菓原料ミックスまたは第2の冷菓原料ミックスの容量に対する含有空気容量の百分率であるオーバーラン値(容量基準:OR)で表される。
第1の部分凍結組成物または第2の部分凍結組成物のオーバーラン値(容量基準)は、それぞれ5〜80%程度が好ましく、15〜60%がより好ましく、20〜50%がさらに好ましい。該オーバーラン値が前記の範囲内であると、濃厚であり、かつ滑らかな食感が良好に得られやすい。
第1の部分凍結組成物のオーバーラン値と第2の部分凍結組成物のオーバーラン値とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。両者の差の絶対値は、特に限定されないが、冷菓全体における柔らかさの均一性を高める点からは50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましい。
【0049】
複数種の冷菓原料ミックスから得られる各部分凍結組成物の硬さを表すペネトロ値は、それぞれ50〜300が好ましく、100〜270がより好ましく、130〜250がさらに好ましい。該ペネトロ値が前記の範囲内であると、各部分凍結組成物が硬すぎず、柔からかすぎず、混合操作において偏りが生じ難く、良好な混合状態が得られやすい。
複数種の部分凍結組成物のペネトロ値のうち、最も高い値と最も低い値との差の絶対値は、特に限定されないが、187未満が好ましく、180以下がより好ましく、150以下がさらに好ましく、140以下が特に好ましい。ゼロでもよい。この差が小さいほど、混合操作において好ましい混合状態が得られやすい。
部分凍結組成物の硬さを表すペネトロ値は、フリーザーからの排出温度、オーバーラン値、フリーザーにおけるダッシャー回転数等を変化させることによって調整できる。
【0050】
本実施形態において、第1の部分凍結組成物または第2の部分凍結組成物の硬さを表すペネトロ値は、それぞれ50〜300が好ましく、100〜270がより好ましく、130〜250がさらに好ましい。該ペネトロ値が前記の範囲内であると、第1の部分凍結組成物および第2の部分凍結組成物が硬すぎず、柔からかすぎず、混合操作において第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物との両者が層状に混ざり合った好ましい混合状態が得られやすい。
第1の部分凍結組成物のペネトロ値と第2の部分凍結組成物のペネトロ値とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。両者の差が小さいほど、第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物の硬さの差が小さく、混合操作において好ましい混合状態が得られやすい。
【0051】
具体的に、第1の部分凍結組成物のペネトロ値と第2の部分凍結組成物のペネトロ値との差の絶対値は187未満が好ましく、180以下がより好ましく、150以下がさらに好ましく、140以下が特に好ましい。
好ましい態様は、第1の部分凍結組成物および第2の部分凍結組成物のペネトロ値が、それぞれ50〜300、かつ両者のペネトロ値の差の絶対値が187未満である。より好ましい態様は、それぞれのペネトロ値が100〜270、かつ両者のペネトロ値の差の絶対値が150以下である。特に好ましい態様は、それぞれのペネトロ値が120〜260、かつ両者のペネトロ値の差の絶対値が140以下である。
第1の部分凍結組成物または第2の部分凍結組成物の硬さを表すペネトロ値は、フリーザーからの排出温度、オーバーラン値、フリーザーにおけるダッシャー回転数等を変化させることによって調整できる。
【0052】
[混在化工程・凍結工程]
複数種の部分凍結組成物を混在させた後、該混在させた部分凍結組成物を一括的に凍結させる。
混在化工程における複数種の部分凍結組成物の配合割合は、好ましい態様も含めて、上述した冷菓における複数種の凍結物の含有量と同じである。
すなわち、混在化工程に供される複数種の部分凍結組成物のうち、配合割合が多い2種の質量比が40:60〜60:40であり、該2種の合計の配合量が、混在化工程に供される部分凍結組成物の総量に対して50〜100質量%であることが好ましい。
また混在化工程が、複数種の部分凍結組成物のうちの2種以上を混合する混合操作を含むことが好ましい。複数種の部分凍結組成物の全部を混合してもよく、一部(2種以上)を混合した後、該混合物と残りの部分凍結組成物を、混合以外の方法(例えば複数のノズルから吐出する方法など)で混在させてもよい。
混合操作に供される2種以上の部分凍結組成物が、混在化工程に供される複数種の部分凍結組成物のうち、配合割合が多い2種を含むことが好ましい。
【0053】
本実施形態において、混在化工程では、第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物とを、両者が層状に混ざり合った状態に混合する(混合操作)。得られた混合物を容器に充填して凍結させることにより冷菓が得られる。
得られた冷菓は、第1の部分凍結組成物の凍結物の層(第1の層)と、第2の部分凍結組成物の凍結物の層(第2の層)が不規則に混入しあっている構造を有する。
冷菓の、容器の深さ方向に平行な切断面において、第1の層の幅および第2の層の幅がそれぞれ1〜5mmであることが好ましい。第1の層と第2の層の幅がそれぞれ前記の範囲内であると、良好なサジ通りが得られやすい。
【0054】
混合方法は、例えば、邪魔板状撹拌部材が設けられた配管に、第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物とを供給し、該配管から混合物を排出する混合方法が好ましい。かかる配管を備えた混合装置としては、スタティックミキサーなど既存の装置を適宜用いることができる。
邪魔板状撹拌部材は公知の部材を適宜選択して用いることができる。例えば、転換作用を有する部材、反転作用を有する部材、転換作用および反転作用を有する部材、分割作用を有する部材を組み合わせて用いることが好ましい。
第1の部分凍結組成物および第2の部分凍結組成物の硬さに応じて、好ましい混合状態が得られるように、邪魔板状撹拌部材の組み合わせを選択することが好ましい。
【0055】
第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物の質量比は、40:60〜60:40が好ましく、45:55〜55:45がより好ましい。
第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物の比率が前記の範囲内であると、サジ通りに優れた冷菓が得られやすい。
混合操作で得られる混合物の温度は、混合直前の第1の部分凍結組成物の温度と第2の部分凍結組成物の温度との間であることが好ましい。必要であれば配管の保冷を行ってもよい。混合物の温度は−3.6〜−10℃の範囲内であることが好ましい。
【0056】
このようにして、第1の部分凍結組成物が凍結してなる層(第1の層)と、第2の部分凍結組成物が凍結してなる層(第2の層)とが混ざり合った構造を有する冷菓が得られる。
かかる2層を有する冷菓は、後述の実施例に示されるように、冷凍庫から取り出した直後でも、適度な硬さでサジ通りが良好であり、かつその後の硬さの低下が小さくて硬さの保持性も良好である。
かかる効果が得られる理由として、以下のことが考えられる。すなわち、冷凍庫から取り出した直後の温度において、凍結点が高い第1の冷菓原料ミックスから得られる第1の層は比較的硬く、凍結点が低い第2の冷菓原料ミックスから得られる第2の層は比較的柔らかい。このように硬さが異なる層を混在させたことにより、第1の層が冷菓の骨格となって第2の層の流動性が抑えられるため、硬さの保持性を損なうことなく、サジ通りを向上できると考えられる。
【0057】
本発明によれば、既存の冷菓の設備を利用して、冷菓の硬さの保持性を損なうことなく、サジ通りを向上できる。
特に、後述のサジ通りの評価方法において、−25℃に温度調整した冷菓を20℃の雰囲気中に静置して、3分後から9分後までのペネトロ値(先端角度12度、12gコーン+50g重り)の上昇幅が10未満、好ましくは8以下、より好ましくは6以下の冷菓を得ることができる。この上昇幅の値が小さいほど硬さの保持性が良好であることを意味する。
特に、乳化剤を使用せずにオーバーランが低い高級冷菓(いわゆるプレミアムアイスクリーム等)はサジ通りが良くない傾向にあるが、本発明によれば、乳化剤を含有せずとも、冷菓の硬さの保持性およびサジ通りに優れた冷菓を得ることができる。
また、第1の層と第2の層との色調が同じになるように、原料を選択して配合することにより、見た目は単一の層からなる冷菓であって、硬さの保持性およびサジ通りに優れた冷菓を得ることができる。ここでの色調が同じであるとは、第1の層と第2の層とが目視で区別できない程度に両者の色調の差が小さいことを意味する。
【0058】
なお前記実施形態では、冷菓原料ミックスから部分凍結組成物を得る際に、空気を含有させつつ凍結点よりも低い温度で凍結させたが、空気を含有させることは必須ではなく、オーバーランがゼロであっても、同様の効果が得られる。
また前記実施形態は2種の凍結物を混在させた冷菓であるが、3種以上の凍結物を混在させてもよい。例えば、凍結点が互いに異なる3種以上の冷菓原料ミックスを用い、3種以上の部分凍結組成物を、前記実施形態と同様に層状に混ざり合った状態に混合して、3層以上の凍結物が不規則に混入しあっている構造を有する冷菓としてもよく、これにより同様の効果が期待できる。
【0059】
また前記実施形態では、混在化工程において、第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物とを、両者が層状に混ざり合った状態に混合する混合操作を行って、2種の部分凍結組成物を混在させたが、複数種の部分凍結組成物を混在させる方法はこれに限らない。
例えば、第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物とを、一方または両方が、小片状または粒状となるように混合する混合操作を行ってもよく、複数のノズルを用いて、複数種の部分凍結組成物を海島状となるように吐出する方法で混在化させてもよい。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<冷菓原料>
以下の表の配合で使用した原料は以下の通りである。
・48%クリーム:森永乳業株式会社製。乳脂肪分48.0質量%、無脂乳固形分4.5質量%。
・45%クリーム:森永乳業株式会社製。乳脂肪分45.0質量%、無脂乳固形分4.5質量%。
・35%脱脂濃縮乳:森永乳業株式会社にて、生乳を遠心分離して脱脂乳を調製し、これを減圧濃縮して製造した脱脂濃縮乳。乳脂肪分0.4質量%、無脂乳固形分34.6質量%。
・グラニュー糖:ビートグラニュー糖、北海道糖業社製。
・ぶどう糖:含水結晶ぶどう糖、昭和産業社製。
・果糖:無水結晶果糖、ライトアンドライルノースアメリカ社製。
・水あめ(1):固形分65質量%、日本コーンスターチ社製。
・水あめ(2):固形分95.5質量%、松谷化学社製。
・加糖凍結卵黄(1):20%加糖卵黄、キユーピー社製。
・加糖凍結卵黄(2):50%加糖卵黄、太陽化学社製。
・安定剤:ゼラチン、ニッピ社製。
【0061】
<例11〜14>
[第1の冷菓原料ミックスの調製]
表1に示す第1の冷菓原料ミックスの原料のうち、香料以外の原料を、70℃に加温した水(溶解水)に混合溶解した。液温70℃で30分間保持した後に、香料を添加し、プレート式殺菌機にて、90℃、30秒の加熱殺菌条件で殺菌した。さらに、二段均質機(三丸機械工業社製)を使用して、2次圧:4MPa、全圧:12MPaで均質化して、第1の冷菓原料ミックスを調製した。得られた第1の冷菓原料ミックスの凍結点を測定したところ−3℃であった。
【0062】
[第1の部分凍結組成物の調製]
装置は、連続式フリーザーCS−200(SOREN社製)、オープンダッシャーを用いた。
各例において、第1の冷菓原料ミックスを連続式フリーザーに連続的に供給し、モーター負荷(冷媒の温度)を変化させて、第1の部分凍結組成物を得た。
各例の、第1の冷菓原料ミックスの供給温度、連続式フリーザーから排出される第1の部分凍結組成物の温度(排出温度)、オーバーラン値を表2に示す。
連続式フリーザーから排出された第1の部分凍結組成物について、それぞれペネトロ値を測定した。測定は3回行い平均値を求めた。結果を表2に示す。
【0063】
<例21〜24>
[第2の冷菓原料ミックスの調製]
表1に示す第2の冷菓原料ミックスの原料のうち、香料および洋酒以外の原料を、70℃に加温した水(溶解水)に混合溶解した。液温70℃で30分間保持した後に、香料および洋酒を添加し、プレート式殺菌機にて、90℃、30秒の加熱殺菌条件で殺菌した。さらに、二段均質機(三丸機械工業社製)を使用して、2次圧:4MPa、全圧:12MPaで均質化して、第2の冷菓原料ミックスを調製した。得られた第2の冷菓原料ミックスの凍結点を測定したところ−5.6℃であった。
【0064】
[第2の部分凍結組成物の調製]
例11〜14と同様にして第2の部分凍結組成物を得た。
各例の、第2の冷菓原料ミックスの供給温度、連続式フリーザーから排出される第2の部分凍結組成物の温度(排出温度)、オーバーラン値を表3に示す。
連続式フリーザーから排出された第2の部分凍結組成物について、それぞれペネトロ値を測定した。測定は3回行い平均値を求めた。結果を表3に示す。
【0065】
<混合性の評価方法>
混合装置は、邪魔板状撹拌部材を備えたスタティックミキサーを用いた。当該邪魔板状撹拌部材としては、転換および反転作用を有する部材と、分割作用を有する部材と、転換および反転作用を有する部材とが、この順で直列に設けられているものである。
連続式フリーザーから排出される部分凍結組成物は、配管を通って直ちにスタティックミキサーに連続的に供給されるようになっており、部分凍結組成物の混合直前の温度は、前記排出温度である。
【0066】
例11〜14で得られた第1の部分凍結組成物と、例21〜24で得られた第2の部分凍結組成物を、質量比50:50となるようにスタティックミキサーに連続的に供給して混合した。スタティックミキサーから排出される混合物の温度は、第1の部分凍結組成物の排出温度と第2の部分凍結組成物の排出温度の平均程度になる。得られた混合物をアイスカップに充填し、−35℃で24時間凍結して冷菓を製造した。
なお本評価試験では、第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物とが目視で判別できる程度に設定するために、第1の冷菓原料ミックスにおいて、予めグラニュー糖の一部を黒糖に置換して(表には記載せず)着色した。
【0067】
得られた冷菓をカップの深さ方向に平行な断面で切断し、切断面を目視で観察し、第1の部分凍結組成物が凍結してなる層(第1の層)と、第2の部分凍結組成物が凍結してなる層(第2の層)との混合状態を、下記の基準で評価した。結果を表4、5に示す。
表4には、混合した第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物との温度(排出温度)の差が記載され、表5には、混合した第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物とのペネトロ値の差の絶対値が記載されている。
◎:第1の層と第2の層とがそれぞれ幅1〜5mmの層をなしており、これらが不規則に混入しあっている。
○:概ね、第1の層と第2の層とがそれぞれ幅1〜5mmの層をなしており、これらが不規則に混入しあっているが、一方または両方の層の幅が5mmを超えるような偏りが部分的にある。
△:第1の層と第2の層とが不規則に混入しあっているが、一方または両方の層の幅が5mmを超える部分の方が多い。
×:部分凍結組成物が柔らかすぎるか、または硬すぎることにより混合しにくい。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
第1の部分凍結組成物の温度が、前記第2の部分凍結組成物の温度よりも高く、その差が1〜7℃の範囲内である組み合わせにおいて、両者の良好な混合状態を得ることができる。
表4に示されるように、第1の部分凍結組成物の温度が、前記第2の部分凍結組成物の温度よりも高く、その差が1〜5.5℃である組み合わせにおいて、第1の層と第2の層との良好な混合状態が得られた。
また、第1の部分凍結組成物および第2の部分凍結組成物のペネトロ値の差の絶対値が187未満、特に180以下である組み合わせにおいて、両者の良好な混合状態を得ることができる。
表5に示されるように、第1の部分凍結組成物および第2の部分凍結組成物のペネトロ値の差の絶対値が130.3以下である組み合わせにおいて、第1の層と第2の層との良好な混合状態が得られた。
例13と例24との組み合わせ、および例14と例24との組み合わせでは、いずれも部分凍結組成物が硬かったが、混合装置の邪魔板状撹拌部材を、分割作用を有する部材と、転換および反転作用を有する部材が、この順で直列に、3回繰り返し設けられている構成に変更したところ、混合性の評価が○となった。
例13と例21との組み合わせ、および例14と例21との組み合わせでは、いずれも第1の部分凍結組成物および第2の部分凍結組成物のペネトロ値の差が大きいために混合性が良くなかったが、混合以外の方法で両者を混合させれば、所期の効果を得ることが可能である。
【0074】
<実施例1>
表1に示す配合で冷菓を製造した。
本例では、例13で得られた第1の部分凍結組成物(排出温度−6℃)と、例22で得られた第2の部分凍結組成物(排出温度−8℃)を、質量比50:50となるようにスタティックミキサーに連続的に供給して混合した。混合後の乳脂肪含量は16質量%であった。
スタティックミキサーは前記混合性の評価方法と同じものを用いた。
スタティックミキサーから排出される混合物をアイスカップ(容量130mL)に充填し、−35℃で24時間凍結して冷菓を製造した。
【0075】
<比較例1>
本例は第2の部分凍結組成物を混合しない比較例である。
すなわち、例13で得られた第1の部分凍結組成物(排出温度−6℃)をアイスカップに充填し、実施例1と同様にして冷菓を製造した。
【0076】
<比較例2>
本例は第1の部分凍結組成物を混合しない比較例である。
すなわち、例22で得られた第2の部分凍結組成物(排出温度−8℃)をアイスカップに充填し、実施例1と同様にして冷菓を製造した。
【0077】
<比較例3>
本例は第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物を均一に混合した比較例である。
すなわち、例13で得られた第1の部分凍結組成物(排出温度−6℃)と、例22で得られた第2の部分凍結組成物(排出温度−8℃)を、質量比50:50で、全体が均一(層を有しない)になるように混合した。
得られた混合物をアイスカップに充填し、実施例1と同様にして冷菓を製造した。
【0078】
<サジ通りの評価方法>
実施例および比較例で得られた冷菓を−25℃に温度調整し、20℃、相対湿度70%に保持された雰囲気中に静置してから3分間毎にペネトロ値を測定した。ペネトロ値は、50gの重りを付加したコーン(先端角度12度、質量12g)を用い、冷菓表面の中央に挿入して測定した。
その結果を表6に示す。
【0079】
【表6】
【0080】
表6に示されるように、20℃の雰囲気中に置かれて3分後において、実施例1は比較例1〜3に比べてペネトロ値が高いものであった。すなわち実施例1は比較例1〜3に比べてく、サジ通りが良いことが明かである。
また、比較例1〜3のペネトロ値の経時変化よりも、実施例1のペネトロ値の経時変化の方が小さいことから、実施例1は硬さの保持性に優れていることが明かである。
特に3分後から9分後にかけて、比較例1〜3はペネトロ値が大きく上昇したのに対して、実施例1のペネトロ値はほとんど上昇しておらず、サジ通りが良い状態が保たれていることが明らかとなった。
【0081】
<ヒートショック試験>
実施例1および比較例1、2で得られた冷菓について、下記の条件でヒートショック試験を行った。
a)−18℃の状態から6時間かけて−5℃まで温度上昇させる工程と、b)−5℃の状態から6時間かけて−18℃まで温度低下させる工程を、1日各2回ずつ連続的(a→b→a→b)に実施し、これを3週間継続させる条件でのヒートショック試験を実施した。3週間継続した後、光学顕微鏡で組織を観察した。その結果を
図1〜3に示す。
図1は実施例1、
図2は比較例1、
図3は比較例2の光学顕微鏡写真である。
【0082】
図1〜3の写真のうち、第2の部分凍結組成物のみを用いて製造した比較例2の冷菓(
図3)だけに、角張った砲弾状の特徴的な結晶が見られた。該結晶は乳糖の結晶であると考えられる。
これに対して、実施例1の冷菓では、比較例2で確認されたような特徴的な結晶は検出されなかった。すなわち、第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物を混合して用いることによって、第2の部分凍結組成物から生じると考えられる乳糖結晶の析出が、効果的に抑制されていることが明らかとなった。
このことから、実施例1の冷菓において、硬さの保持性が優れる理由としては、第1の部分凍結組成物の凍結物が冷菓の骨格となって、第2の部分凍結組成物の流動性を抑えているのではないかと考えられる。
【0083】
<比較例4、5>
表7に示す配合で冷菓を製造した。
比較例4の冷菓は乳化剤を含まず乳脂肪含有量が高い、いわゆる高級アイスクリーム(プレミアムアイスクリーム)の例である。本例の乳脂肪含有量は実施例1と同程度である。
比較例5の冷菓は乳化剤を含まず、比較例4よりも乳脂肪含有量が低いアイスクリームの例である。
【0084】
まず、表7に示す冷菓原料ミックスの原料のうち、香料以外の原料を70℃に加温した水(溶解水)に混合溶解した。液温70℃で30分間保持した後に、香料を添加し、プレート式殺菌機にて、90℃、30秒の加熱殺菌条件で殺菌した。さらに、二段均質機(三丸機械工業社製)を使用して、2次圧:4MPa、全圧:12MPaで均質化して、冷菓原料ミックスを調製した。得られた冷菓原料ミックスの凍結点の測定結果を表7に示す。
得られた冷菓原料ミックスを、比較例1と同じ条件で、連続式フリーザーに連続的に供して部分凍結組成物(排出温度−6℃、OR20%)を得た。得られた部分凍結組成物をアイスカップに充填し、実施例1と同様にして冷菓を製造した。
【0085】
【表7】
【0086】
<ペネトロ値の温度依存性の評価方法>
実施例1および比較例1〜5で得られた冷菓を−25℃に温度調整した。これをペネトロメーターとともに、−23℃、−19℃、−15℃、−11℃、−8℃に保持された雰囲気中にそれぞれ3時間静置した後、ペネトロ値を測定した。ペネトロ値は、50gの重りを付加したコーン(先端角度12度、質量12g)を用いて測定した。
その結果を
図4、5に示す。
【0087】
一般的に、サジ通りが良いと感じられる適度な硬さの冷菓のペネトロ値(12gコーン+50g重り)は65〜125の範囲内である。
例えば、一般的な家庭用冷凍庫の庫内温度は−18℃程度であり、通常の大きさのアイスクリームは、冷凍庫から室温(22℃)に出して15分程度で−10℃程度にまで温度が上昇する。
なお、前記のサジ通りの評価方法は、冷菓を冷凍庫から常温下に出した後の経時変化を測定する方法であり、冷菓の品温が均一とは限らないのに対して、本方法は冷菓の品温を均一にした状態で測定する方法である。
【0088】
図4、5の結果に示されるように、いずれの例の冷菓も、−19℃ではペネトロ値が50以下と低すぎてサジ通りが悪いものであった。また、冷菓の温度が上昇すればペネトロ値は増大するものの、特に比較例1、4、5は、温度が−9.5〜−9℃程度にまで上昇しないとペネトロ値が65以上に到達しなかった。
【0089】
一方、比較例2と実施例1は、比較例1、3〜5に比べてペネトロ値が65に到達する温度が低い結果となった。具体的に、比較例2は−15℃付近まで温度が上昇すればペネトロ値が65以上になり、実施例1は−13℃付近まで温度が上昇すればペネトロ値が65以上になった。しかしながら、比較例2は、温度上昇に伴うペネトロ値の上昇が大きく、−11℃付近まで温度が上昇するとペネトロ値が125を越えてしまった。これに対して、実施例1は温度が−9.5℃程度になるまで、サジ通りが良いと感じられる適度な硬さ(ペネトロ値が65〜125)が維持されるものであった。
【0090】
したがって、実施例1の冷菓は、冷凍庫から室温に出してから良好なサジ通りが得られるまでの時間が短くて済み、冷菓の温度が低い状態で食べ始めることができるものであった。また、食べ終わるまでサジ通りが良い適度な硬さが維持されやすいものであった。
一般に、冷菓の温度が上昇すると甘味が増す傾向にあり、冷菓の温度が低い状態で食べ始めることができると、冷菓に期待される冷感、および甘味が強すぎない良好な風味が充分に得られる。
なお、比較例4、5は、冷菓のペネトロ値の温度依存性がほぼ同等であり、乳脂肪含量を変更しただけでは、サジ通りの向上は期待できないものであった。
【0091】
<実施例2>
表8に示す配合で冷菓を製造した。本例は実施例1の配合において安定剤を使用しない配合を用いた他は、実施例1と同じである。
例11〜14と同様にして、第1の冷菓原料ミックスを調製した。得られた第1の冷菓原料ミックスの凍結点は−3℃であった。
例13と同様にして第1の部分凍結組成物を得て、ペネトロ値を測定した。すなわち第1の冷菓原料ミックスの供給温度は7℃、第1の部分凍結組成物の排出温度は−6℃、オーバーラン値は20%とした。第1の部分凍結組成物のペネトロ値は71であった。
例21〜24と同様にして、第2の冷菓原料ミックスを調製した。得られた第2の冷菓原料ミックスの凍結点は−5.6℃であった。
例22と同様にして第2の部分凍結組成物を得て、ペネトロ値を測定した。すなわち第2の冷菓原料ミックスの供給温度は7℃、第2の部分凍結組成物の排出温度は−8℃、オーバーラン値は20%とした。第2の部分凍結組成物のペネトロ値は190であった。
こうして得られた第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物を、質量比50:50となるようにスタティックミキサーに連続的に供給して混合した。混合物をアイスカップに充填し、−35℃で24時間凍結して冷菓を製造した。
【0092】
<比較例6>
本例は、実施例2において第2の部分凍結組成物を混合せずに、第1の部分凍結組成物の凍結物からなる冷菓を製造した比較例である。
<比較例7>
本例は、実施例2において第1の部分凍結組成物を混合せずに、第2の部分凍結組成物の凍結物からなる冷菓を製造した比較例である。
<比較例8>
本例は、実施例2において、第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物を全体が均一(層を有しない)になるように混合して冷菓を製造した例である。
【0093】
【表8】
【0094】
<サジ通りの評価方法>
実施例2および比較例6〜8について、実施例1および比較例1〜3と同様の方法でペネトロ値を測定した。その結果を表9に示す。
【0095】
【表9】
【0096】
表9に示されるように、20℃の雰囲気中に置かれて3分後において、実施例2は比較例6、8に比べてペネトロ値が高く、実施例2は比較例6、8に比べてサジ通りが向上した。
また、比較例6〜8のペネトロ値の経時変化よりも、実施例2のペネトロ値の経時変化の方が小さいことから、実施例2は硬さの保持性に優れていることが明かである。
特に3分後から9分後にかけて、比較例6〜8はペネトロ値が大きく上昇したのに対して、実施例2のペネトロ値はほとんど上昇しておらず、サジ通りが良い状態が保たれていることが明らかとなった。
【0097】
<ペネトロ値の温度依存性の評価方法>
実施例2および比較例6〜8で得られた冷菓について、実施例1および比較例1〜3と同様にして、品温を均一にした状態でのペネトロ値を測定した。
その結果を
図6に示す。
【0098】
図6の結果に示されるように、比較例6、7は、比較例1、2と同様の傾向が見られる。すなわち、比較例6は、ペネトロ値が65以上に到達する温度が比較的高い。比較例7は、ペネトロ値が65以上に到達する温度は比較的低いが、温度上昇に伴うペネトロ値の上昇が大きい。
実施例2および比較例8は、それぞれ実施例1および比較例3と同様の傾向が見られるが、実施例1と比較例3との差より、実施例2と比較例8との差の方が小さい。
【0099】
また、
図6の結果によれば、実施例2と比較例8とは、サジ通りが良いと感じられる適度な硬さ(ペネトロ値が65〜125)が維持される温度帯はほぼ同じであるが、表9の結果に示されるように、冷菓が20℃の雰囲気中に置かれた後の硬さの保持性は、実施例2の方が比較例8よりも優れている。
【0100】
<実施例3>
本例は、冷菓原料ミックスから部分凍結組成物を得る際に空気を含有させずに、すなわちオーバーランをゼロとして冷菓を製造した例である。製造装置は実施例1と同じものを用いた。
[第1の冷菓原料ミックスの調製]
表10に示す第1の冷菓原料ミックスの原料のうち、香料及び洋酒以外の原料を、70℃に加温した水(溶解水)に混合溶解した。液温70℃で30分間保持した後に、香料及び洋酒を添加し、プレート式殺菌機にて、90℃、30秒の加熱殺菌条件で殺菌した。さらに、二段均質機を使用して、2次圧:4MPa、全圧:12MPaで均質化して、第1の冷菓原料ミックスを調製した。得られた第1の冷菓原料ミックスの凍結点は−3.2℃であった。
【0101】
[第1の部分凍結組成物の調製]
次に、第1の冷菓原料ミックスを連続式フリーザーに連続的に供給し、第1の部分凍結組成物を得た。第1の冷菓原料ミックスの供給温度は7℃、第1の部分凍結組成物の排出温度は−6.5℃、オーバーラン値はゼロとした。連続式フリーザーから排出された第1の部分凍結組成物のペネトロ値は74であった。
【0102】
[第2の冷菓原料ミックスの調製]
表10に示す第2の冷菓原料ミックスの原料のうち、香料および洋酒以外の原料を、70℃に加温した水(溶解水)に混合溶解した。液温70℃で30分間保持した後に、香料および洋酒を添加し、プレート式殺菌機にて、90℃、30秒の加熱殺菌条件で殺菌した。さらに、二段均質機を使用して、2次圧:4MPa、全圧:12MPaで均質化して、第2の冷菓原料ミックスを調製した。得られた第2の冷菓原料ミックスの凍結点は−5.7℃であった。
【0103】
[第2の部分凍結組成物の調製]
次に、第2の冷菓原料ミックスを連続式フリーザーに連続的に供給し、第2の部分凍結組成物を得た。第2の冷菓原料ミックスの供給温度は7℃、第2の部分凍結組成物の排出温度は−9℃、オーバーラン値はゼロとした。連続式フリーザーから排出された第2の部分凍結組成物のペネトロ値は220であった。
【0104】
[冷菓の製造]
こうして得られた第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物を、質量比50:50となるようにスタティックミキサーに連続的に供給して混合した。混合物をアイスカップに充填し、−35℃で24時間凍結して冷菓を製造した。
【0105】
<比較例9>
本例は、実施例3において第2の部分凍結組成物を混合せずに、第1の部分凍結組成物の凍結物からなる冷菓を製造した比較例である。
<比較例10>
本例は、実施例3において第1の部分凍結組成物を混合せずに、第2の部分凍結組成物の凍結物からなる冷菓を製造した比較例である。
<比較例11>
本例は、実施例3において、第1の部分凍結組成物と第2の部分凍結組成物を全体が均一(層を有しない)になるように混合して冷菓を製造した例である。
【0106】
【表10】
【0107】
<サジ通りの評価方法>
実施例3および比較例9〜11について、実施例1および比較例1〜3と同様の方法でペネトロ値を測定した。その結果を表11に示す。
【0108】
【表11】
【0109】
表11に示されるように、20℃の雰囲気中に置かれて3分後において、実施例3は比較例9、11に比べてペネトロ値が高く、実施例3は比較例9、11に比べてサジ通りが向上した。
また、比較例9〜11のペネトロ値の経時変化よりも、実施例3のペネトロ値の経時変化の方が小さいことから、実施例3は硬さの保持性に優れていることが明かである。
特に3分後から9分後にかけて、比較例9〜11はペネトロ値が大きく上昇したのに対して、実施例3のペネトロ値はほとんど上昇しておらず、サジ通りが良い状態が保たれていることが明らかとなった。
【0110】
<ペネトロ値の温度依存性の評価方法>
実施例3および比較例9〜11で得られた冷菓について、実施例1および比較例1〜3と同様にして、品温を均一にした状態でのペネトロ値を測定した。
その結果を
図7に示す。
【0111】
図7の結果に示されるように、実施例3および比較例9〜11は、実施例1および比較例1〜3と同様の傾向を示した。
すなわち、いずれの例の冷菓も、−19℃ではペネトロ値が50以下と低すぎてサジ通りが悪いものであった。また、冷菓の温度が上昇すればペネトロ値は増大するものの、特に比較例9は、温度が−9.5〜−9℃程度にまで上昇しないとペネトロ値が65以上に到達しなかった。
一方、比較例10と実施例3は、比較例9、11に比べてペネトロ値が65に到達する温度が低い結果となった。具体的に、比較例10は−15℃付近まで温度が上昇すればペネトロ値が65以上になり、実施例3は−13℃付近まで温度が上昇すればペネトロ値が65以上になった。しかしながら、比較例10は、温度上昇に伴うペネトロ値の上昇が大きく、−13℃付近まで温度が上昇するとペネトロ値が125を越えてしまった。これに対して、実施例3は温度が−11℃程度になるまで、サジ通りが良いと感じられる適度な硬さ(ペネトロ値が65〜125)が維持されるものであった。