特許第6359438号(P6359438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359438
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】塗工装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/08 20060101AFI20180709BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   B05C1/08
   B05C5/02
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-249933(P2014-249933)
(22)【出願日】2014年12月10日
(65)【公開番号】特開2016-107243(P2016-107243A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】江川 裕也
(72)【発明者】
【氏名】山根 孝明
【審査官】 高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−107661(JP,A)
【文献】 特開2008−221085(JP,A)
【文献】 特開2013−000727(JP,A)
【文献】 特開2001−121052(JP,A)
【文献】 特開2016−174989(JP,A)
【文献】 特開平11−276958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C1/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に走行するウエブへ塗工液を塗工する塗工手段と、
前記塗工手段の前方に配され、前記ウエブを前記塗工手段へ塗工可能なように押圧する第1押圧ロールと、
前記塗工手段の後方に配され、前記ウエブを前記塗工手段へ塗工可能なように押圧する第2押圧ロールと、
前記第1押圧ロールの左側部を回転自在に支持しつつ、前記塗工手段へ前記ウエブを塗工可能なように押圧する押圧状態から退避状態へ移動させる第1左移動手段と、
前記第1押圧ロールの右側部を回転自在に支持しつつ、前記塗工手段へ前記ウエブを塗工可能なように押圧する押圧状態から退避状態へ移動させる第1右移動手段と、
前記第2押圧ロールの左右両側部を回転自在に支持する第2支持手段と、
前記第1左移動手段、前記第1右移動手段を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記塗工手段へ前記ウエブを塗工可能なように押圧しているときに、
(1)前記第1押圧ロールの左側部を前記第1左移動手段によって退避させ、その次に前記第1押圧ロールの右側部を前記第1右移動手段によって退避させるか、
又は、
(2)前記第1押圧ロールの右側部を前記第1右移動手段によって退避させ、その次に前記第1押圧ロールの左側部を前記第1左移動手段によって退避させる、
ことにより退避制御を行う、
塗工装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ウエブを前記塗工手段へ塗工可能なように押圧するために、
(1)前記第1押圧ロールの左側部を前記第1左移動手段によって前記退避状態から前記押圧状態に移動させ、その次に前記第1押圧ロールの右側部を前記第1右移動手段によって前記退避状態から前記押圧状態に移動させるか、
又は、
(2)前記第1押圧ロールの右側部を前記第1右移動手段によって前記退避状態から前記押圧状態に移動させ、その次に前記第1押圧ロールの左側部を前記第1左移動手段によって前記退避状態から前記押圧状態に移動させる、
請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記第1押圧ロール、前記第1左移動手段、前記第1右移動手段、前記第2押圧ロール、及び、前記第2支持手段を一体に前記塗工手段から退避させる主移動手段をさらに有する、
請求項1に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記第2支持手段は、
前記第2押圧ロールの左側部を回転自在に支持しつつ、前記塗工手段へ前記ウエブを塗工可能なように押圧する押圧状態から退避状態へ移動させる第2左移動手段と、
前記第2押圧ロールの右側部を回転自在に支持しつつ、前記塗工手段へ前記ウエブを塗工可能なように押圧する押圧状態から退避状態へ移動させる第2右移動手段と、
を有する請求項1に記載の塗工装置。
【請求項5】
前後方向に走行するウエブへ塗工液を塗工する塗工手段と、
前記塗工手段の前方に配され、前記ウエブを前記塗工手段へ塗工可能なように押圧する第1押圧ロールと、
前記塗工手段の後方に配され、前記ウエブを前記塗工手段へ塗工可能なように押圧する第2押圧ロールと、
前記第1押圧ロールの左右両側部を回転自在に支持する第1支持手段と、
前記第2押圧ロールの左側部を回転自在に支持しつつ、前記塗工手段へ前記ウエブを塗工可能なように押圧する押圧状態から退避状態へ移動させる第2左移動手段と、
前記第2押圧ロールの右側部を回転自在に支持しつつ、前記塗工手段へ前記ウエブを塗工可能なように押圧する押圧状態から退避状態へ移動させる第2右移動手段と、
前記第2左移動手段、前記第2右移動手段を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記塗工手段へ前記ウエブを塗工可能なように押圧しているときに、
(1)前記第2押圧ロールの左側部を前記第2左移動手段によって退避させ、その次に前記第2押圧ロールの右側部を前記第2右移動手段によって退避させるか、
又は、
(2)前記第2押圧ロールの右側部を前記第2右移動手段によって退避させ、その次に前記第2押圧ロールの左側部を前記第2左移動手段によって退避させる、
ことにより退避制御を行う、
塗工装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ウエブを前記塗工手段へ塗工可能なように押圧するために、
(3)前記第2押圧ロールの左側部を前記第2左移動手段によって前記退避状態から前記押圧状態に移動させ、その次に前記第2押圧ロールの右側部を前記第2右移動手段によって前記退避状態から前記押圧状態に移動させるか、
又は、
(4)前記第2押圧ロールの右側部を前記第1右移動手段によって前記退避状態から前記押圧状態に移動させ、その次に前記第2押圧ロールの左側部を前記第2左移動手段によって前記退避状態から前記押圧状態に移動させる、
請求項5に記載の塗工装置。
【請求項7】
前記第1押圧ロール、前記第1支持手段、前記第2押圧ロール、前記第2左移動手段、及び、前記第2右移動手段を一体に前記塗工手段から退避させる主移動手段をさらに有する、
請求項5に記載の塗工装置。
【請求項8】
前記第1支持手段は、
前記第1押圧ロールの左側部を回転自在に支持しつつ、前記塗工手段へ前記ウエブを塗工可能なように押圧する押圧状態から退避状態へ移動させる第1左移動手段と、
前記第1押圧ロールの右側部を回転自在に支持しつつ、前記塗工手段へ前記ウエブを塗工可能なように押圧する押圧状態から退避状態へ移動させる第1右移動手段と、
を有する請求項5に記載の塗工装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記退避制御を前記ウエブの継目が前記塗工手段の位置を通過するときに行う、
請求項1又は5に記載の塗工装置。
【請求項10】
前記塗工手段が、塗工ロール、又は、塗工ヘッドである、
請求項1又は5に記載の塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、グラビアロールを用いたキスタッチ方式の塗工装置が提案されている。この塗工装置は、グラビアロールの前方と後方に押圧ロールが回転自在に設けられ、この2本の押圧ローラで走行する長尺状のウエブをグラビアロールに押圧して塗工液をグラビア塗工している(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
この塗工装置において、ウエブの継目がグラビアロールに接近した場合には、この継目を回避するために2本の押圧ローラを同時に後退させ、ウエブをグラビアロールから退避させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−124559号公報
【特許文献2】特開2013−173144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の塗工装置では、2本の押圧ローラを同時に退避させる必要があったため、継目が通過する時間は僅かであっても、2本の押圧ローラが退避し再び押圧するまでにかなりの時間がかかり、ウエブへの塗工に無駄な時間が発生するという問題点があった。また、2本の押圧ローラを同時に退避させるときに、グラビアロールからウエブへの塗工状態が変化し、ウエブに塗工ムラが発生するという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、ウエブの継目が接近した場合に、ウエブが塗工手段から迅速に退避でき、かつ、塗工ムラが発生しない塗工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前後方向に走行するウエブへ塗工液を塗工する塗工手段と、
前記塗工手段の前方に配され、前記ウエブを前記塗工手段へ塗工可能なように押圧する第1押圧ロールと、
前記塗工手段の後方に配され、前記ウエブを前記塗工手段へ塗工可能なように押圧する第2押圧ロールと、
前記第1押圧ロールの左側部を回転自在に支持しつつ、前記塗工手段へ前記ウエブを塗工可能なように押圧する接近状態から退避状態へ移動させる第1左移動手段と、
前記第1押圧ロールの右側部を回転自在に支持しつつ、前記塗工手段へ前記ウエブを塗工可能なように押圧する接近状態から退避状態へ移動させる第1右移動手段と、
前記第2押圧ロールの左右両側部を回転自在に支持する第2支持手段と、
前記第1左移動手段、前記第1右移動手段を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記塗工手段へ前記ウエブを塗工可能なように押圧しているときに、
(1)前記第1押圧ロールの左側部を前記第1左移動手段によって退避させ、その次に前記第1押圧ロールの右側部を前記第1右移動手段によって退避させるか、
又は、
(2)前記第1押圧ロールの右側部を前記第1右移動手段によって退避させ、その次に前記第1押圧ロールの左側部を前記第1左移動手段によって退避させる、
ことにより退避制御を行う塗工装置である。
【0008】
また、本発明は、前後方向に走行するウエブへ塗工液を塗工する塗工手段と、
前記塗工手段の前方に配され、前記ウエブを前記塗工手段へ塗工可能なように押圧する第1押圧ロールと、
前記塗工手段の後方に配され、前記ウエブを前記塗工手段へ塗工可能なように押圧する第2押圧ロールと、
前記第1押圧ロールの左右両側部を回転自在に支持する第1支持手段と、
前記第2押圧ロールの左側部を回転自在に支持しつつ、前記塗工手段へ前記ウエブを塗工可能なように押圧する接近状態から退避状態へ移動させる第2左移動手段と、
前記第2押圧ロールの右側部を回転自在に支持しつつ、前記塗工手段へ前記ウエブを塗工可能なように押圧する接近状態から退避状態へ移動させる第2右移動手段と、
前記第2左移動手段、前記第2右移動手段を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記塗工手段へ前記ウエブを塗工可能なように押圧しているときに、
(1)前記第2押圧ロールの左側部を前記第2左移動手段によって退避させ、その次に前記第2押圧ロールの右側部を前記第2右移動手段によって退避させるか、
又は、
(2)前記第2押圧ロールの右側部を前記第2右移動手段によって退避させ、その次に前記第2押圧ロールの左側部を前記第2左移動手段によって退避させる、
ことにより退避制御を行う塗工装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、押圧ローラを左側又は右側から順番に離していくため、押圧ローラがウエブから一度に離れることがなく、塗工ムラが発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の塗工装置の塗工時の側面図である。
図2】塗工装置の塗工時の平面図である。
図3】継目から退避した状態の塗工装置の側面図である。
図4】継目から退避している途中の塗工装置の平面図である。
図5】継目から退避した状態の塗工装置の平面図である。
図6】移動台を退避状態に移動させたときの塗工装置の側面図である。
図7】塗工装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態の塗工装置10について図1図7に基づいて説明する。本実施形態の塗工装置10は、キスタッチ式のグラビア塗工装置であって、長尺状のウエブ1としては、合成樹脂フィルム、紙、金属箔、金属網、布帛などであり、ウエブ1の所定長さ毎に、ウエブ1同士の継目2が存在する。この継目2の部分は、他の部分よりも厚くなっている。
【0012】
(1)塗工装置10の構造
次に、塗工装置10の構造について図1図2に基づいて説明する。
【0013】
グラビアロール12は、表面に所定の彫刻が施され、図1において時計回りの方向に駆動回転している。
【0014】
ノズル14は縦方向に配され、ノズル14内には液溜め部16が設けられ、この液溜め部16にグラビアロール12の半分が侵入している。液溜め部16の下部と上部からそれぞれグラビアロール12に向かって塗工液のドクターブレード18が突出している。ノズル14の両側部には、不図示のサイドシールが設けられている。液溜め部16と2つのドクターブレード18,18と左右一対のサイドシールによって密閉された液溜め空間が形成されている。液溜め部16の底部の下部には塗工液の給液開口部20が開口し、図4で示したポンプ44から塗工液が供給される。液溜め部16の底面の上部には排液開口部22が開口し、前記液溜め空間内から塗工液が溢れ出さないように塗工液がこの排液開口部22から排出される。この排出された塗工液は不図示の塗工タンクに循環する。
【0015】
グラビアロール12の右側における上方と下方には、それぞれ上押圧ロール(第1押圧ロール)24と、下押圧ロール(第2押圧ロール)26が回転自在に配されている。所定の走行速度Vで走行するウエブ1は、下押圧ロール26、グラビアロール12、上押圧ロール24の順番に縦方向に走行する。
【0016】
(2)上押圧ロール24と下押圧ロール26の支持構造
次に、上押圧ロール24と下押圧ロール26を回転自在に支持する構造について図1図2に基づいて説明する。
【0017】
固定台30が、床や装置のフレームなどに固定されている。固定台30には、移動台28が主移動部32によって水平方向に移動自在に設けられている。主移動部32は主エアシリンダ33と主レール34よりなる。主エアシリンダ33が、固定台30に水平方向に設けられた主レール34に沿って移動台28を水平方向に移動させる。図1に示すように、グラビアロール12は、移動台28の側方に配されている。
【0018】
図2に示すように、移動台28の上部に設けられた上押圧ロール24の左側は、左上支持腕241によって回転自在に支持されている。左上支持腕241の先端部には自動調芯ベアリング46が配され、上押圧ロール24の左側の軸243を偏心自在に軸受けしている。上押圧ロール24の右側は、右上支持腕242によって回転自在に支持されている。右上支持腕242の先端部にも自動調芯ベアリング46が配され、上押圧ロール24の右側の軸243を偏心自在に軸受けしている。
【0019】
左上支持腕241は左上移動部244によって水平方向に移動し、右上支持腕242は右上移動部245によって水平方向に移動する。
【0020】
左上移動部244は、移動台28の左上部に設けられている。左上移動部244は、左上エアシリンダ246と水平な直線状の左上レール247を有し、左上エアシリンダ246が伸縮することにより、左上支持腕241が左上レール247に沿って水平方向に移動して、上押圧ロール24の左側をグラビアロール12から退避又は接近させる。
【0021】
右上移動部245は、移動台28の右上部に設けられている。右上移動部245は、右上エアシリンダ248と水平な直線状の右上レール249を有し、右上エアシリンダ248が伸縮することにより、右上支持腕242が右上レール249に沿って水平方向に移動して、上押圧ロール24の右側をグラビアロール12から退避又は接近させる。なお、上押圧ロール24の右側と左側とは、独立してグラビアロール12から退避又は接近できる。
【0022】
移動台28の下部に設けられた下押圧ロール26の左側は、左下支持腕261によって回転自在に支持されている。左下支持腕261の先端部には自動調芯ベアリング46が配され、下押圧ロール26の左側の軸263を偏心自在に軸受けしている。下押圧ロール26の右側は、右下支持腕262によって回転自在に支持されている。右下支持腕262の先端部にも自動調芯ベアリング46が配され、下押圧ロール26の右側の軸263を偏心自在に軸受けしている。
【0023】
左下支持腕261は左下移動部264によって水平方向に移動し、右下支持腕262は右下移動部265によって水平方向に移動する。
【0024】
左下移動部264は、移動台28の左下部に設けられている。左下移動部264は、左下エアシリンダ266と水平な直線状の左下レール267を有し、左下エアシリンダ266が伸縮することにより、左下支持腕261が左下レール267に沿って水平方向に移動して、下押圧ロール26の左側をグラビアロール12から退避又は接近させる。
【0025】
右下移動部265は、移動台28の右下部に設けられている。右下移動部265は、右下エアシリンダ268と水平な直線状の右下レール269を有し、右下エアシリンダ268が伸縮することにより、右下支持腕262が右下レール269に沿って水平方向に移動して、下押圧ロール26の右側をグラビアロール12から退避又は接近させる。なお、下押圧ロール26の右側と左側とは、独立してグラビアロール12から退避又は接近できる。
【0026】
下押圧ロール26の下方には、ウエブ1の継目を検出するための継目センサ36が設けられている。この継目センサ36は、例えば光センサなどである。
【0027】
(3)塗工装置10の電気的構成
塗工装置10の電気的構成について図7のブロック図に基づいて説明する。
【0028】
まず、走行モータ38が、ウエブ1を所定の走行速度Vで走行させる。塗工モータ40が、グラビアロール12をウエブ1の走行方向とは反対方向に所定の回転速度で回転させる。
【0029】
コンピュータよりなる制御部42には、走行モータ38、継目センサ36、ノズル14に塗工液を供給するポンプ44、塗工モータ40が接続され、さらに、左上移動部244、右上移動部245、左下移動部264、右下移動部265、主移動部32が接続されている。
【0030】
(4)塗工装置10の動作状態
次に、塗工装置10の塗工時の動作状態について図1図6に基づいて説明する。
【0031】
第1工程において、ウエブ1を下押圧ロール26、グラビアロール12、上押圧ロール24の間を通るように配し、ウエブ1が縦方向(前後方向)に走行モータ38によって走行速度Vで走行する。
【0032】
第2工程において、ポンプ44によって塗工液をノズル14の液溜め部16に給液すると共に、塗工モータ40によってグラビアロール12を回転させ、グラビアロール12の表面に塗工液を塗工する。なお、不要な塗工液はドクターブレード18,18によって掻き落とされる。
【0033】
第3工程において、固定台30に対し移動台28を退避状態から接近状態に移動させる。また、上押圧ロール24と下押圧ロール26も左上移動部244、右上移動部245、左下移動部264、右下移動部265によって接近状態に移動させる。なお、「接近状態」とは、上押圧ロール24と下押圧ロール26とによってウエブ1が押圧されてグラビアロール12に接触する状態をいう。
【0034】
第4工程において、上押圧ロール24と下押圧ロール26が接近状態になることにより、走行するウエブ1がグラビアロール12の表面に押圧され、グラビア塗工が開始される。
【0035】
第5工程において、ウエブ1が走行してグラビア塗工が行われている状態で、継目センサ36がウエブ1の継目2を検出すると、検出信号を制御部42に出力する。
【0036】
第6工程において、制御部42は、継目センサ36からの検出信号が入力すると、継目センサ36の位置からグラビアロール12の押圧位置までの走行距離と走行速度Vに基づいて継目2がその押圧位置を通過するまでの時間を求め、継目2が押圧位置を通過するまでの間に第7工程から第10工程を行う。
【0037】
第7工程において、制御部42は、図4に示すように、上押圧ロール24の左側を支持している左上支持腕241のみを左上移動部244によって接近状態から退避状態に移動させる。
【0038】
第8工程において、制御部42は、図5に示すように、右上支持腕242を右上移動部245によって接近状態から退避状態に移動させる。これによって、図3図5に示すようにウエブ1がグラビアロール12から離れて、継目2が通過できる。このとき、従来のように上押圧ロール24がグラビアロール12に対し平行にいきなり離れるのでなく、左側から右側に向かって順番に離れていくため、ウエブ1の塗工表面が乱れたり塗工ムラができたりしない。なお、上押圧ロール24の退避距離は、例えば5mm〜30mmである。
【0039】
第9工程において、制御部42は、継目2が通過すると、左上移動部244によって上押圧ロール24の左側を退避状態から接近状態に移動させて、ウエブ1の左側をグラビアロール12の表面に接触させる。
【0040】
第10工程において、制御部42は、右上移動部245によって上押圧ロール24の右側を退避状態から接近状態に移動させて、ウエブ1の右側をグラビアロール12に接触させる。このとき、ウエブ1はグラビアロール12に対し平行にいきなり接触するのでなく、左側から右側に向かって順番に接触するため、ウエブ1の塗工表面が乱れたり塗工ムラができたりしない。
【0041】
第11工程において、走行するウエブ1がグラビアロール12の表面に押圧されたのので、グラビア塗工が再開される。
【0042】
第12工程において、ウエブ1へのグラビア塗工が終了すると、制御部42は、図6に示すように主移動部32によって移動台28を接近状態から退避状態に移動させることにより上押圧ロール24と下押圧ロール26を一体にグラビアロール12から退避させる。
【0043】
(5)効果
本実施形態によれば、ウエブ1の継目2がグラビアロール12を通過するときに、上押圧ロール24の左側から右側に向かって順番に離れていくため塗工ムラや塗工状態が乱れたりしない。
【0044】
また、継目2の通過後には、上押圧ロール24によってウエブ1を左側から右側に向かって順番に接触させるため、塗工ムラや塗工が乱れたりしない。
【0045】
また、上押圧ロール24を僅かに移動させるだけでよいため、従来よりも移動時間が短くなり、ウエブ1の塗工部分に無駄ができず、また、パス長さ変化を押さえることができる。
【0046】
また、左上支持腕241と右上支持腕242の先端には自動偏心ベアリング46が設けられ、上押圧ロール24の両側の軸243を軸受けしているため、図4に示すように、上押圧ロール24の軸243が偏心しても、上押圧ロール24を回転しながら移動させることができる。
【0047】
(6)変更例
上記実施形態では、上押圧ロール24を退避させる場合に左側の次に右側を退避させたが、これに代えて右側の次に左側を退避させてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、上押圧ロール24を接近状態にするときに、左側の次に右側を接近させたが、これに代えて右側の次に左側を接近させてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、継目2の通過時に上押圧ロール24を接近状態から退避状態に移動させたが、これに代えて下押圧ロール26を接近状態から退避状態に移動させてもよい。この場合にも、左下移動部264と右下移動部265によって、左側から右側に向かって退避させるか、右側から左側に向かって退避させる。また、接近させるときには左側から右側に向かって接近させるか、右側から左側に向かって接近させる。
【0050】
また、上記実施形態では、上押圧ロール24のみを接近状態から退避状態に移動させたが、これに代えて上押圧ロール24と下押圧ロール26の両方とも退避状態から接近状態に移動させてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、ウエブ1に塗工液を塗工する手段としてグラビア塗工装置を用いたが、これに代えてダイなどの塗工ヘッドであってもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、ウエブ1を縦方向に走行させたが、これに代えてウエブ1を水平方向に走行させ、塗工手段であるグラビアロール12をウエブ1の下方に配置してもよい。
【0053】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・ウエブ、2・・・継目、10・・・塗工装置、12・・・グラビアロール、24・・・上押圧ロール、26・・・下押圧ロール、28・・・移動台、30・・・固定台、32・・・主移動部、36・・・継目センサ、42・・・制御部、244・・・左上移動部、245・・・右上移動部、264・・・左下移動部、265・・・右下移動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7