(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359464
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】保守報告書用電子印鑑及び保守報告書作成システム
(51)【国際特許分類】
B41J 29/40 20060101AFI20180709BHJP
H04N 1/387 20060101ALI20180709BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20180709BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20180709BHJP
B41J 25/20 20060101ALN20180709BHJP
【FI】
B41J29/40 Z
H04N1/387
G06Q50/10
B41J29/00 Z
!B41J25/20
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-1029(P2015-1029)
(22)【出願日】2015年1月6日
(65)【公開番号】特開2016-124233(P2016-124233A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 英也
【審査官】
大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−048584(JP,A)
【文献】
特開2012−171265(JP,A)
【文献】
特開2010−213326(JP,A)
【文献】
特開2005−081832(JP,A)
【文献】
特開平10−202989(JP,A)
【文献】
特開2004−094613(JP,A)
【文献】
特開2008−033470(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0106447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/40
B41J 29/00
G06Q 50/10
H04N 1/387
B41J 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビル設備の保守点検作業に関する保守報告書に押印する電子印鑑であって、
保守作業データベースからネットワークを介して当該保守作業の内容を示す作業コードと作業日を作業データとして取得するデータベース交信部と、
外部の日付データ提供源からインターネットを介して現在の日付データを取得する日付データ交信部と、
保守作業者IDである印IDと電子印鑑フォーマットを記憶し、取得した作業コードと作業日と現在の日付と印IDに基づいて電子印鑑フォーマットの内容を編集し印影データを作成する印影データ作成部と、
ユーザの押印操作を検出したときに押印対象物に印影データを印刷する印刷機構と、
二次電池と、
を備えることを特徴とする保守報告書用電子印鑑。
【請求項2】
請求項1に記載の保守報告書用電子印鑑において、
電子印鑑を着脱する電子印鑑保持台から作業データと日付データと二次電池の充電用電力を取得することを特徴とする保守報告書用電子印鑑。
【請求項3】
請求項2に記載の保守報告書用電子印鑑において、
電子印鑑保持台が対応する電子印鑑の印IDを台IDとして保有するときに、台IDを電子印鑑保持台から取得し、
取得した台IDと印IDが一致しないときにその旨を表示する表示部を有し、
表示部が台IDと印IDが一致しない旨の表示をするときは、作業データと日付データの取得を行わないことを特徴とする保守報告書用電子印鑑。
【請求項4】
請求項1に記載の保守報告書用電子印鑑において、
二次電池は、
印刷機構が印影データを印刷してから予め定めた所定時間を経過以後に印刷機構に動作電力を給電しないことを特徴とする保守報告書用電子印鑑。
【請求項5】
請求項1に記載の保守報告書用電子印鑑において、
印刷機構はインクジェット印刷機構であることを特徴とする保守報告書用電子印鑑。
【請求項6】
ビル設備の保守点検作業に関する保守報告書に電子印鑑を押印する保守報告書作成システムであって、
保守作業者IDと作業コードに関連付けて保守点検作業の内容を記憶する保守作業データベースと、
インターネットを介して現在の日付データを送信する日付データ提供源と、
保守作業者IDである印IDと電子印鑑フォーマットを記憶する電子印鑑と、
電子印鑑が着脱される電子印鑑保持台と、
を備え、
電子印鑑保持台は、
保守作業データベースにネットワークを介して接続され保守作業者IDと作業コードを作業データとして取得して電子印鑑に送信する作業データ送信部と、
日付データ提供源にインターネットを介して接続され現在の日付データを取得して電子印鑑に送信する日付データ送信部と、
外部電源と電源コードを介して接続され電力を受け取り電子印鑑に送電する電力送信部と、
を含み、
電子印鑑は、
電子印鑑保持台から送信される作業データを取得する作業データ受信部と、
電子印鑑保持台から送信される日付データを取得する日付データ受信部と、
電子印鑑台から送電される電力を受け取る電力受信部と、
受け取った電力で充電される二次電池と、
取得された作業データと日付データと印IDに基づいて電子印鑑フォーマットの内容を編集し印影データを作成する印影データ作成部と、
ユーザの押印操作を検出したときに押印対象物に印影データを印刷する印刷機構と、
を含むことを特徴とする保守報告書作成システム。
【請求項7】
請求項6に記載の保守報告書作成システムにおいて、
電子印鑑保持台は、
対応する電子印鑑の印IDを台IDとして記憶し、台IDを電子印鑑に送信する台ID送信部を含み、
電子印鑑は、
電子印鑑保持台から送信される台IDを取得する台ID受信部と、
取得した台IDと印IDが一致しないときにその旨を表示し、電子印鑑保持台から送信される作業データと日付データの取得を行わないことを特徴とする保守報告書作成システム。
【請求項8】
請求項6に記載の保守報告書作成システムにおいて、
二次電池は、
印刷機構が印影データを印刷してから予め定めた所定時間を経過以後に印刷機構に動作電力を給電しないことを特徴とする保守報告書作成システム。
【請求項9】
請求項6に記載の保守報告書作成システムにおいて、
印刷機構はインクジェット印刷機構であることを特徴とする保守報告書作成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保守報告書用電子印鑑及び保守報告書作成システムに係り、特に、外部から客観的な日付データを取得しその日付を用いる保守報告書用電子印鑑及び保守報告書作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
社内文書や外部へ発行する文書には、日付と文書作成者あるいはその管理責任者の氏名と印鑑が押印される。この場合、日付は書込みあるいは文書作成装置等によって記入されることが多い。したがって、記載された日付の変更は容易で、場合によって改ざん等が行われやすい。そこで、文書の日付を保証するシステムが望まれる。
【0003】
例えば、特許文献1には、電子印鑑を用いて文書の日付証明を行うシステムが述べられている。ここで、電子印鑑は、従来の印鑑と同様に印影を押印するためのスタンプ部と、押印操作を検知する押印操作検知スイッチと、外部の日付データ提供源からの時刻データを受信する時刻データ受信部と、外部のタブレット装置等の時刻証明装置との間でデータ通信を行う赤外線通信部と、印影データや電子印鑑の所有者ID等を記憶し各種制御を行う制御ユニットと、ボタン電池とを有する構成が開示されている。この電子印鑑を通常の印鑑と同様に押印操作すると、スタンプ部によって所定の印影が押印対象に押印される。また、押印検出スイッチにより押印操作が検出されると、時刻データ受信部から押印時刻を算出し、算出された押印時刻と印影データと所有者ID等が赤外線通信部を介して時刻証明装置に送信され、時刻証明装置は、送信されてきたデータに基づいて押印対象に押印の時刻証明を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−94613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ビル設備の保守点検作業に関する保守報告書には、保守点検作業の内容と、保守点検作業を行った日付と、報告書作成日付と、報告者の氏名等が記載され、報告者またはその管理責任者の印鑑が押印される。保守報告書は、顧客等に対する公式報告書であるので、これらの内容の信頼性が求められる。日付や押印の管理性が不十分であると、保守報告書の信頼性が低下する。
【0006】
本発明の目的は、日付や押印の管理性を向上させて信頼性の高い保守報告書を作成するための電子印鑑、及びその電子印鑑を用いた保守報告書作成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る保守報告書用電子印鑑は、ビル設備の保守点検作業に関する保守報告書に押印する電子印鑑であって、保守作業データベースからネットワークを介して当該保守作業の内容を示す作業コードと作業日を作業データとして取得するデータベース交信部と、外部の日付データ提供源からインターネットを介して現在の日付データを取得する日付データ交信部と、保守作業者IDである印IDと電子印鑑フォーマットを記憶し、取得した作業コードと作業日と現在の日付と印IDに基づいて電子印鑑フォーマットの内容を編集し印影データを作成する印影データ作成部と、ユーザの押印操作を検出したときに押印対象物に印影データを印刷する印刷機構と、二次電池と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る保守報告書用電子印鑑において、電子印鑑を着脱する電子印鑑保持台から作業データと日付データと二次電池の充電用電力を取得することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る保守報告書用電子印鑑において、電子印鑑保持台が対応する電子印鑑の印IDを台IDとして保有するときに、台IDを電子印鑑保持台から取得し、取得した台IDと印IDが一致しないときにその旨を表示する表示部を有し、表示部が台IDと印IDが一致しない旨の表示をするときは、作業データと日付データの取得を行わないことが好ましい。
【0010】
本発明に係る保守報告書用電子印鑑において、二次電池は、印刷機構が印影データを印刷してから予め定めた所定時間を経過以後に印刷機構に動作電力を給電しないことがこのましい。
【0011】
本発明に係る保守報告書用電子印鑑において、印刷機構はインクジェット印刷機構であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る保守報告書作成システムは、ビル設備の保守点検作業に関する保守報告書に電子印鑑を押印する保守報告書作成システムであって、保守作業者IDと作業コードに関連付けて保守点検作業の内容を記憶する保守作業データベースと、インターネットを介して現在の日付データを送信する日付データ提供源と、保守作業者IDである印IDと電子印鑑フォーマットを記憶する電子印鑑と、電子印鑑が着脱される電子印鑑保持台と、を備え、電子印鑑保持台は、保守作業データベースにネットワークを介して接続され保守作業者IDと作業コードを作業データとして取得して電子印鑑に送信する作業データ送信部と、日付データ提供源にインターネットを介して接続され現在の日付データを取得して電子印鑑に送信する日付データ送信部と、外部電源と電源コードを介して接続され電力を受け取り電子印鑑に送電する電力送信部と、を含み、電子印鑑は、電子印鑑保持台から送信される作業データを取得する作業データ受信部と、電子印鑑保持台から送信される日付データを取得する日付データ受信部と、電子印鑑台から送電される電力を受け取る電力受信部と、受け取った電力で充電される二次電池と、取得された作業データと日付データと印IDに基づいて電子印鑑フォーマットの内容を編集し印影データを作成する印影データ作成部と、ユーザの押印操作を検出したときに押印対象物に印影データを印刷する印刷機構と、を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る保守報告書作成システムにおいて、電子印鑑保持台は、対応する電子印鑑の印IDを台IDとして記憶し、台IDを電子印鑑に送信する台ID送信部を含み、電子印鑑は、電子印鑑保持台から送信される台IDを取得する台ID受信部と、取得した台IDと印IDが一致しないときにその旨を表示し、電子印鑑保持台から送信される作業データと日付データの取得を行わないことが好ましい。
【0014】
本発明に係る保守報告書作成システムにおいて、二次電池は、印刷機構が印影データを印刷してから予め定めた所定時間を経過以後に印刷機構に動作電力を給電しないことが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る保守報告書作成システムにおいて、印刷機構はインクジェット印刷機構であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る保守報告書用電子印鑑は、保守作業データベースから作業コードと作業日を作業データとして取得し、外部の日付データ提供源からインターネットを介して現在の日付データを取得し、記憶されている保守作業者IDである印IDと電子印鑑フォーマットを用いて取得した作業コードと作業日と現在の日付と印IDに基づいて電子印鑑フォーマットの内容を編集し印影データを作成する。これにより、日付や押印の管理性が向上するので、信頼性の高い保守報告書を作成することができる。
【0017】
本発明に係る保守報告書用電子印鑑において、電子印鑑を着脱する電子印鑑保持台から作業データと日付データと二次電池の充電用電力を取得するので、電子印鑑を使わないときは電子印鑑保持台に保持させておき、必要なときにそこから取り外して押印できる。
【0018】
また、本発明に係る保守報告書用電子印鑑において、電子印鑑保持台の台IDと電子印鑑の印IDが一致しないときは、その旨を表示し、作業データと日付データの取得を行わないので、第三者による電子印鑑の流用等を防ぐことができる。
【0019】
本発明に係る保守報告書用電子印鑑において、二次電池は、印刷機構が印影データを印刷してから予め定めた所定時間を経過以後に印刷機構に動作電力を給電しないので、電子印鑑を使った後放置しても、所定時間経過以後は第三者もそれを使用することができなくなる。これによって、第三者による電子印鑑の流用等を防ぐことができる。
【0020】
本発明に係る保守報告書用電子印鑑において、印刷機構はインクジェット印刷機構であるので、ダイヤル式等の機構を用いずに、電子的に日付変更を管理できる。
【0021】
本発明に係る保守報告書作成システムは、保守作業データベースと、日付データ提供源と、外部電源に接続される電子印鑑保持台を備え、電子印鑑保持台と電子印鑑はこれらのデータと電力を送受信する。電子印鑑は、電子印鑑保持台経由で取得された作業データと日付データと印IDに基づいて電子印鑑フォーマットの内容を編集し印影データを作成し、印刷機構によって押印対象物に印影データを印刷する。これにより、日付や押印の管理性が向上するので、信頼性の高い保守報告書を作成することができる。
【0022】
本発明に係る保守報告書作成システムにおいて、電子印鑑保持台の台IDと電子印鑑の印IDが一致しないときは、その旨を表示し、作業データと日付データの取得を行わないので、第三者による電子印鑑の流用等を防ぐことができる。
【0023】
本発明に係る保守報告書作成システムにおいて、電子印鑑の電源である二次電池は、印刷機構が印影データを印刷してから予め定めた所定時間を経過以後に印刷機構に動作電力を給電しないので、電子印鑑を使った後放置しても、所定時間経過以後は第三者もそれを使用することができなくなる。これによって、第三者による電子印鑑の流用等を防ぐことができる。
【0024】
また、本発明に係る保守報告書作成システムにおいて、電子印鑑の印刷機構はインクジェット印刷機構であるので、ダイヤル式等の機構を用いずに、電子的に日付変更を管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る実施の形態における保守報告書作成システムの構成図である。
【
図2】本発明に係る実施の形態における保守報告書用電子印鑑の構成図である。
図2(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【
図3】本発明に係る実施の形態の保守報告書作成システムにおける電子印鑑保持台と電子印鑑の間のデータ交信と電力授受を示す図である。
【
図4】本発明に係る実施の形態の保守報告書作成システムにおける保守報告書作成手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下で述べる形状、寸法等は、説明のための例示であって、電子印鑑またはそれを用いる保守報告書作成システムの仕様等に合わせ、適宜変更が可能である。例えば、電子印鑑の本体部を角型としたが、角型以外の形状、例えば丸型としてもよい。また、電子印鑑保持部と電子印鑑との間の交信を無線パルス信号で行うものとしたが、光交信方式等を用いてもよい。場合によっては接触型の交信としてもよい。また、押しボタンは表示部を兼ねるものとしたが、押しボタンと表示部を別のものとして構成してもよい。また、表示部を赤色、黄色、緑色の3色ランプとしたが、これ以外の色の多色発光源としてもよく、場合によっては音声表示部としてもよい。また、現在の日付データのみを用いるものとしたが、これに加えて現在時刻データを用いるものとしてもよい。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
図1は、保守報告書作成システム10の構成図である。保守報告書作成システムは、ビル設備の保守点検作業に関する保守報告書2に電子印鑑50を用いて押印するシステムである。
図1(a)は構成全体図であり、(b)は、電子印鑑50によって押印された印影8である。
【0028】
保守報告書2は、保守作業者によって保守点検作業が完了したときに作成され、顧客等に報告する書類である。保守報告書2は、保守点検作業の内容を記載した文書欄4と説明図欄5と共に、保守作業者がこの記載内容通りに保守点検作業を行って完了したことを証明するために所定の印鑑を押印する押印欄6を有する。この押印欄6に電子印鑑50によって作成された印影データが印刷されて印影8となる。
【0029】
図1の例では、印影8は、保守点検作業の内容を示す作業コードと、作業日と、保守報告書作成日付と、保守作業者の氏名を含んで構成される。これは印影8を説明するための1つの例であって、保守報告書の種類によってこれ以外の内容を含むものであってもよい。
【0030】
保守報告書作成システム10は、保守作業データベース12と、日付データ提供源16と、電子印鑑保持台30と、電子印鑑50を含んで構成される。
【0031】
保守作業データベース12は、保守作業者IDと作業コードに関連付けて保守点検作業の内容を記憶する記憶装置である。保守作業データベース12は、大容量ハードディスク等の記憶部と、これを管理するコンピュータ部を含むサーバで構成される。
【0032】
端末装置14は、保守作業データベース12に接続され、保守作業者が必要なデータを保守作業データベース12に書込み、または保守作業データベース12から読み出すために用いられるコンピュータである。端末装置14としては、保守作業管理に適したパーソナルコンピュータ(PC)等を用いることができる。保守作業者は、保守点検作業が終了すると、その結果データ等を保守作業データベース12に書込み保存する。
【0033】
また、その結果データ等を用いて、保守報告書2を作成しプリントアウトする。
図1では、プリントアウトしたままの状態の保守報告書2が示されている。さらに、プリントアウトされた保守報告書2に電子印鑑50を用いて押印するために、当該保守作業の内容を示す作業コードと作業日を作業データとして読み出し、電子印鑑50に向けて送信する操作を行う。ここでは、ネットワークケーブル15を介して作業データを電子印鑑保持台30に送信する操作を行う。ネットワークケーブル15は、一方端が端末装置14に接続され、他方端がネットワークコネクタ32を介して電子印鑑保持台30に接続される。
【0034】
日付データ提供源16は、標準時間を知ることができる時刻データを広く発信提供するために第三者機関等によって運営されるもので、例えば、GPS衛星システムや標準電波送信所等である。時刻データには現在の日付データが含まれる。日付データ提供源16からの日付時刻データは、インターネット18やLAN(Local Area Network)等の通信回線を介して電子印鑑50に向けて送信される。ここでは、インターネット18を介して電子印鑑保持台30に日付データが送信される。
【0035】
LANケーブル19は、日付データ提供源16からの日付時刻データをインターネット18経由で電子印鑑保持台30に供給するための通信ケーブルである。LANケーブル19は、一方端が通信回線であるインターネット18に接続され、他方端がLANコネクタ34を介して電子印鑑保持台30に接続される。
【0036】
電源端子20は、商用外部電源に接続されるコネクタである。アダプタ22は、商用外部電源の交流電力を所定の電圧値を有する直流電力に変換するAC/DC変換器である。電源コード21は、電源端子20によって供給された交流電力がアダプタ22によって変換された所定の電圧値を有する直流電力を電子印鑑50に向けて送電する電力コードである。ここでは、直流電力を電子印鑑保持台30に送電する電力コードである。電源コード21は、一方端がアダプタ22を介して電源端子20に接続され、他方端が電源コネクタ36を介して電子印鑑保持台30に接続される。
【0037】
電子印鑑保持台30は、電子印鑑50の先端側が挿入される保持穴40を有し、対応する電子印鑑50と1組となる電子印鑑着脱具である。例えば、保守作業員がA,B,Cの3人であるときは、保守作業員Aは、A専用の電子印鑑50とA専用の電子印鑑保持台30を持つ。同様に、保守作業員Bは、B専用の電子印鑑50とB専用の電子印鑑保持台30を持ち、保守作業員Cは、C専用の電子印鑑50とC専用の電子印鑑保持台30を持つ。この区別をするために、A専用の電子印鑑50とA専用の電子印鑑保持台30は、保守作業員Aの保守作業員IDを記憶するメモリを有する。同様に、B専用の電子印鑑50とB専用の電子印鑑保持台30は、保守作業員Bの保守作業員IDを記憶するメモリを有し、C専用の電子印鑑50とC専用の電子印鑑保持台30は、保守作業員Cの保守作業員IDを記憶するメモリを有する。以下では、電子印鑑50が記憶する保守作業員のIDを印IDと呼び、電子印鑑保持台30が記憶する保守作業員のIDを台IDと呼ぶ。1人の保守作業員が持つ1組の電子印鑑50の印IDと電子印鑑保持台30の台IDは同じである。
【0038】
電子印鑑保持台30には、ネットワークコネクタ32、LANコネクタ34、電源コネクタ36が接続され、内部に台制御回路38を有する。台制御回路38は、その電子印鑑保持台30の印IDを記憶するメモリを含む。また、台制御回路38は、ネットワークケーブル15を介して保守作業データベース12から送信されてくる作業データを受け取り、これを電子印鑑50に向けて送信する機能と、LANケーブル19を介して日付データ提供源16から送信されてくる現在の日付データ等を受け取り、これを電子印鑑50に向けて送信する機能と、電源コード21を介して送電されてくる所定の電圧値を有する直流電力を電子印鑑50に向けて送電する機能を有する。これらの信号と電力は、
図1の保持穴40の内壁部に設けられる台インタフェース42を介して電子印鑑50に送られる。台インタフェース42は、互いに分離されてそれぞれが送信アンテナの機能を有する4つの金属パッドと無線送信回路を含んで構成されるが、その詳細は
図3を用いて後述する。
【0039】
電子印鑑50は、電気エネルギで動作する印鑑である。
図2に電子印鑑50の構成を示す。
図2(a)は正面図であり、(b)は側面図である。電子印鑑50は、押印者が把持しやすい形状に形成された把持部52と、把持部52の先端側で押印のための印刷機構70を有する本体部54と、把持部52と本体部54の間に設けられる接続部56で構成される。接続部56は、押印対象に本体部54の先端を置いて、把持部52を押印対象に向かって押すと把持部52が本体部54の内部に一部入り込み、押す力を外すと初期の自然状態に戻る可動部分である。
【0040】
押印検出部58は、接続部56に設けられ、本体部54に対して把持部52が移動することを検出し、これをユーザの押印操作検出信号として出力するセンサである。ユーザは、電子印鑑50を用いる人であり、必ずしもその電子印鑑50を持つ保守作業員でないこともある。
【0041】
押しボタン60は、把持部52の本体部54とは反対側の端部に設けられ、ユーザが電子印鑑50を使用するときに押す操作ボタンで、多色ランプを内蔵する。押しボタン60は、電子印鑑50の動作状態に応じて多色ランプの点灯状態を変化させて表示する表示部を兼ねる。押しボタン60は、押し操作が終わると、押される前の初期状態に復帰するが、多色ランプの表示は必ずしも初期状態に戻らない。
【0042】
押しボタン60に内蔵される多色ランプは、例えば、赤色と黄色と緑色のLEDである。消灯状態と、赤色点灯と黄色点灯と緑色点灯と緑色点滅の4つの点灯状態の合計5つの点灯状態を用いて、電子印鑑50の5つの動作状態を表示できる。その詳細は、
図4で後述する。
【0043】
本体部54の内部には、電子印鑑保持台30の台インタフェース42に向かい合う印インタフェース62と、回路基板64と、回路基板64上に搭載される二次電池66と、印制御回路68と、印刷機構70が配置される。これらの各要素は、押印検出部58と押しボタン60を含めて、信号線または電力線で、予め定めた接続方法で互いに接続される。
【0044】
印インタフェース62は、互いに分離されてそれぞれが送信アンテナの機能を有する4つの金属パッドと、これに接続される無線受信回路を含んで構成される。印インタフェース62の4つの金属パッドは、電子印鑑保持台30の保持穴40の内壁面に設けられる台インタフェース42に向かい合うように、電子印鑑50の本体部54の1つの外壁面に設けられる。
図2(b)には、印インタフェース62の4つの金属パッド62a,62b,62c,62dを示した。
【0045】
図3は、台制御回路38と、4つの台I/Fで構成される台インタフェース42と、これに向かい合い4つの印I/Fで構成される印インタフェース62と、印制御回路68の関係を示す図である。4つの印I/Fを区別するため、符号として、それぞれの印I/Fに含まれる金属パッド62a,62b,62c,62dを用いた。
【0046】
台制御回路38は、ネットワークコネクタ32に一方端が接続され他方端が対応する台I/Fに接続される作業データ送信部80と、LANコネクタ34に一方端が接続され他方端が対応する台I/Fに接続される日付データ送信部82と、台IDを記憶するメモリに一方端が接続され他方端が対応する台I/Fに接続される台ID送信部84と、電源コネクタ36に一方端が接続され他方端が対応する台I/Fに接続される電力送信部86を含んで構成される。
【0047】
作業データ送信部80は、ネットワークケーブル15を介して保守作業データベース12から送信されてくる作業データを受け取り、これを電子印鑑50に向けて送信する機能を有する。日付データ送信部82は、LANケーブル19を介して日付データ提供源16から送信されてくる現在の日付データ等を受け取り、これを電子印鑑50に向けて送信する機能を有する。台ID送信部84は、メモリから台IDを読み出し、これを電子印鑑50に向けて送信する機能を有する。電力送信部86は、電源コード21を介して送電されてくる所定の電圧値を有する直流電力を電子印鑑50に向けて送電する機能を有する。
【0048】
台インタフェース42と印インタフェース62の間は、互いに向かい合う金属パッドの間で無線パルス信号交信が行われる。台インタフェース42の4つの金属パッドはそれぞれが送信アンテナとして機能し、印インタフェース62の4つの金属パッド62a,62b,62c,62dはそれぞれが受信アンテナとして機能する。向かい合う金属パッドが互いに接触しないように、分離ストッパが設けられる。好ましくは、金属パッド上に絶縁膜を設けることがよい。
【0049】
印制御回路68には、台制御回路38の作業データ送信部80、日付データ送信部82、台ID送信部84、電力送信部86のそれぞれに対応し、作業データ受信部90、日付データ受信部92、台ID受信部94、電力受信部96が設けられる。印制御回路68はメモリを有し、印IDと電子印鑑フォーマット72を記憶する。電子印鑑フォーマット72は、
図1(b)の印影8のうち、データ部を除く枠フォーマットである。
【0050】
作業データ受信部90は、一方端が金属パッド62aに対応する台I/Fに接続されて、無線パルス信号交信によって電子印鑑保持台30側から受け取った作業データを印影データ作成部98に出力する。日付データ受信部92は、一方端が金属パッド62bに対応する台I/Fに接続されて、無線パルス信号交信によって電子印鑑保持台30側から受け取った日付データを印影データ作成部98に出力する。台ID受信部94は、一方端が金属パッド62cに対応する台I/Fに接続されて、無線パルス信号交信によって電子印鑑保持台30側から受け取った台IDをID比較部100に出力する。電力受信部96は、一方端が金属パッド62dに対応する台I/Fに接続されて、無線交信によって電子印鑑保持台30側から受け取った電力を二次電池66に出力する。
【0051】
ID比較部100は、電子印鑑保持台30側から受け取った台IDと、印制御回路68のメモリに記憶されている印IDとを比較し、一致しないときに異常信号を押しボタン60に出力し、多色ランプを用いてその旨をユーザに向けて表示する。例えば、赤色LEDを点灯させて、電子印鑑50がこれに対応する電子印鑑保持台30に取り付けられていないことをユーザに表示する。また、異常信号が出力されたときは、電子印鑑保持台30側から送信される作業データの取得と日付データの取得を行うことを禁止する信号を作業データ受信部90と日付データ受信部92に出力する。
【0052】
印影データ作成部98は、ID比較部100において異常信号が出力されない正常状態において取得された作業データと日付データと印IDとに基づいて、電子印鑑フォーマット72の内容を編集し、印影データを作成する。作成された印影データは、印刷機構70に出力される。
【0053】
印刷機構70は、インクジェット印刷機構である。インクジェット印刷機構は、赤色または青色のインクを収容するインクタンクと、インクタンクから供給されるインクを液滴として吐出する印刷ヘッドと、印刷ヘッドの動作を制御する印刷制御回路等を含んで構成される。印刷ヘッドは、ドットマトリクス状に配置された複数の吐出ノズルを含んで構成され、印刷制御回路は、印影データ作成部98から送られてくる印影データに基づいて、複数の吐出ノズルの吐出制御を行う。印刷ヘッドの液詰まり等を防止するため、電子印鑑保持台30に印刷ヘッドのクリーニング機構を設けることが好ましい。印刷制御回路は、押印検出部58から押印検出信号が送られてきたときに動作を開始し、1回の押印検出信号に対応して1回の印刷動作を行う。
【0054】
インクジェット印刷は、吐出ノズルと押印対象物との間の間隔を適切に設定する必要があるので、電子印鑑50の本体部54の周縁部の先端位置と印刷機構70の吐出ノズルの先端位置との間の間隔は、インクジェット印刷に適した値に設定される。
【0055】
印刷機構70に関連して、二次電池66にタイマー機構が設けられる。このタイマー機構は、予めリセット状態に設定され、印刷機構70が印影データの印刷を開始したときに計時を開始し、予め定めた所定時間を経過すると、それ以後は二次電池66から印刷機構70に動作電力を給電しない。予め定めた所定時間としては、例えば30分程度に設定される。これにより、電子印鑑50が保守報告書2の押印欄に印影8を印刷して押印した後、電子印鑑保持台30に戻されず放置された場合でも、30分を限度として、押印ができなくなるので、第三者による電子印鑑の流用等を防ぐことができる。
【0056】
上記構成の動作を
図4を用いてさらに詳細に説明する。
図4は、保守報告書作成システム10における保守報告書作成手順を示すフローチャートである。保守作業者が所定の保守作業を終了したときは、端末装置14を用いて保守点検作業の結果データ等を保守作業データベース12に書込み保存し、その結果データ等を用いて、端末装置14を用いて保守報告書2を作成しプリントアウトする。そして、電子印鑑保持台30にネットワークコネクタ32とLANコネクタ34と電源コネクタ36を接続し、電源端子20を商用外部電源に接続する。そして、端末装置14を用いて、保守作業データベース12から当該保守点検作業に関する作業データとして作業コードと作業日のデータを電子印鑑保持台30に送信する。ここまで進んだ後に
図4の手順が開始する。
【0057】
最初に、電子印鑑50が電子印鑑保持台30に取り付けられた取付状態か否かが判断される(S10)。例えば、
図1では図示しない印鑑検出スイッチを電子印鑑保持台30の保持穴40に設けて、印鑑検出スイッチのオンオフでS10の判断を行うことができる。S10の判断が否定されるときは以後の工程に進まない。
【0058】
S10の判断が肯定されると、次に、保守作業者は押しボタン60を押す(S12)。押しボタン60が押されると、押しボタン60において緑ランプが点滅する(S14)。緑ランプの点滅は、電子印鑑保持台30の側から送電される電力が二次電池66等に供給され、電子印鑑50の印制御回路68等の動作が開始したことを示す表示である。
【0059】
次に、台IDと印IDが一致しているか否かが判断される(S16)。この処理手順は、印制御回路68のID比較部100の機能によって実行される。S16の判断が否定され、印IDと台IDが一致しないときは、押しボタン60において緑色ランプの点滅が中止され、代わって赤色ランプが点灯する。これにより、保守作業者は、電子印鑑50がこれと1組となっている電子印鑑保持台30に取り付けられたのではないことに気づく。時間が経つと赤色ランプが消灯する(S32)ので、S10に戻って、正しい電子印鑑保持台30に正しい電子印鑑50を取り付け直して、S10以降の手順を行う。
【0060】
S16の判断が肯定されると、印制御回路68は、電子印鑑保持台30とのデータ受信が正常に終了したか否かを判断する(S20)。例えば、作業データである作業コードデータと日付データが受信されたか否かでS20の判断を行うことができる。
【0061】
S20の判断が否定されると、押しボタン60において緑色ランプの点滅が中止され、代わって黄色ランプが点灯する。これにより、保守作業者は、電子印鑑保持台30と電子印鑑50との間のデータ交信がうまく行かなかったことを知る。そこで、S12に戻り、再度押しボタン60を押して、S14以降の手順を行わせる。
【0062】
S20の判断が肯定されると、印制御回路68の印影データ作成部98によって印影データが作成され、押しボタン60において緑色ランプが点滅状態から継続的点灯状態に変わる(S24)。この状態は、押印準備が完了したことを示すので、ユーザは電子印鑑50を電子印鑑保持台30から取外し(S26)、保守報告書2の押印欄6の上に電子印鑑50を置いて、押印操作を行う。押印検出部58が把持部52の押し下げを検出すると、印刷機構70が動作し、押印欄6に印影8が印刷される。
【0063】
印刷機構70が印影データを印刷開始したときにタイマー機構が計時を開始する。そして、印制御回路68は、タイマー機構の計時が予め定めた所定時間を経過してタイマー切れ状態になったか否かを判断する(S30)。S30の判断が否定されている間は、電子印鑑50は何回でも押印することができる。S30の判断が肯定されると、二次電池66から印刷機構70に動作電力が給電されなくなる。そして押しボタン60において緑色ランプの点灯が消灯される(S32)。これで一連の保守報告書作成の手順が終了するので、S10に戻る。
【0064】
上記構成によれば、電子的に日付や押印の管理が可能となり、その管理性が向上するので、信頼性の高い保守報告書を作成することができる。
【符号の説明】
【0065】
2 保守報告書、4 文書欄、5 説明図欄、6 押印欄、8 印影、10 保守報告書作成システム、12 保守作業データベース、14 端末装置、15 ネットワークケーブル、16 日付データ提供源、18 インターネット、19 LANケーブル、20 電源端子、21 電源コード、22 アダプタ、30 電子印鑑保持台、32 ネットワークコネクタ、34 LANコネクタ、36 電源コネクタ、38 台制御回路、40 保持穴、42 台インタフェース、50 電子印鑑、52 把持部、54 本体部、56 接続部、58 押印検出部、60 押しボタン、62 印インタフェース、62a,62b,62c,62d 金属パッド、64 回路基板、66 二次電池、68 印制御回路、70 印刷機構、72 電子印鑑フォーマット、80 作業データ送信部、82 日付データ送信部、84 台ID送信部、86 電力送信部、90 作業データ受信部、92 日付データ受信部、94 台ID受信部、96 電力受信部、98 印影データ作成部、100 ID比較部。