(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態の要約)
実施の形態に係る振動呈示装置は、操作面になされたなぞり操作を検出する検出部と、操作面に振動を付加する振動付加部と、操作面の変位に伴う加速度を検出する加速度検出部と、振動付加部を制御して操作面に振動を付加する振動付加期間の間、加速度検出部が検出した加速度の値を破棄する制御部と、を備えて概略構成されている。
【0011】
この振動呈示装置は、振動付加期間の間に検出された加速度の値を破棄するので、この構成を備えない場合と比べて、操作面に付加された振動を操作による振動とする誤判定を抑制することができる。
【0012】
[実施の形態]
(タッチパッド1の概要)
図1(a)は、実施の形態に係るタッチパッドが配置された車両内部の一例を示す概略図であり、
図1(b)は、タッチパッドのブロック図の一例を示している。
図2(a)は、実施の形態に係るタッチパッドの構成の一例を示す側面図であり、
図2(b)は、表示装置に表示されたアイコンとカーソルの一例を示す概略図であり、
図2(c)は、振動指示信号、駆動信号、変位量及び加速度の一例を示すグラフである。
図2(c)は、横軸が時間tである。また
図2(c)の振動指示信号S
5の縦軸は、HiとLoであり、駆動信号S
2の縦軸は、駆動電圧Vであり、変位量の縦軸は、基準位置からの変位量Lであり、加速度の縦軸は、検出された加速度Gである。なお、以下に記載する実施の形態に係る各図において、図形間の比率は、実際の比率とは異なる場合がある。また
図1(b)では、主な信号や情報の流れを矢印で示している。
【0013】
振動呈示装置としてのタッチパッド1は、例えば、
図1(a)に示すように、車両9の運転席と助手席の間に伸びるフロアコンソール90に配置されている。このタッチパッド1は、車両9に搭載される電子機器を操作する遠隔操作部として機能する。タッチパッド1の操作面100は、フロアコンソール90に露出している。
【0014】
この電子機器は、一例として、ナビゲーション装置、空調装置、音楽再生装置及び映像再生装置などである。センターコンソール91に配置される表示装置95は、これらの電子機器の表示部として機能する。
【0015】
タッチパッド1は、
図1(b)及び
図2(a)に示すように、操作面100になされたなぞり操作を検出する検出部としてのタッチセンサ10と、操作面100に振動を付加する振動付加部12と、操作面100の変位に伴う加速度を検出する加速度検出部14と、振動付加部12を制御して操作面100に振動を付加する振動付加期間の間、加速度検出部14が検出した加速度の値を破棄する制御部16と、を備えて概略構成されている。
【0016】
タッチセンサ10は、なぞり操作、タッチ操作、タップ操作、ダブルタップ操作、フリック操作、ドラッグ操作、ピンチイン、ピンチアウト操作などを検出する。また以下では、加速度の値を加速度値と記載する。
【0017】
このタッチパッド1は、一例として、
図2(b)に示すように、カーソル952が、表示装置95の表示画面950に表示されたアイコン951の境界951aに到達した際に、操作面100を振動させて操作に対するフィードバックを呈示するように構成されている。操作者は、この振動を、操作指を介して感じることで、アイコン951を選択可能な状態になったことを、表示画面950を見なくても認識することができる。
【0018】
(タッチセンサ10の構成)
タッチセンサ10は、例えば、導電性を有するペンや操作指による操作により、表示装置95に表示されたカーソルの移動や表示されたアイコンの選択、決定、ドラッグ、ドロップなどの指示を行うことができるように構成されている。以下では、タッチセンサ10の検出対象は、操作指であるものとする。
【0019】
タッチセンサ10としては、例えば、少なくともタップ操作を検出することができる抵抗膜方式、赤外線方式、SAW(Surface Acoustic Wave)方式、静電容量方式などのタッチセンサを用いることが可能である。
【0020】
本実施の形態に係るタッチセンサ10は、例えば、操作面100に操作指が近づくことによる、検出電極と操作指との間に形成される静電容量を検出する静電容量方式のタッチセンサである。この検出電極は、一例として、操作面100の下方に、第1の方向、及び第1の方向に交差する第2の方向に互いに絶縁されて並んで配置されている。
【0021】
タッチセンサ10は、一例として、検出した静電容量から操作指が検出された操作面100における検出点を算出し、この検出点の座標の情報を含む検出情報S
1を生成して制御部16に出力する。
【0022】
なおタッチセンサ10は、一例として、静電容量がしきい値以上となった場合、操作指が検出されたとして検出点を算出するが、操作指が操作面100に接触しているか否かは判定しない。この接触の判定は、加速度検出部14が検出した加速度値に基づいて制御部16によって行われる。制御部16は、操作指の検出結果と、加速度値に基づく操作面100の接触の判定と、によって操作がなされたと判定する。
【0023】
タッチセンサ10は、例えば、
図2(a)に示すように、板形状を有するパネル11を備え、このパネル11の表面が操作面100となり、パネル11の裏面101側に上述の検出電極などが配置されている。
【0024】
(振動付加部12の構成)
振動付加部12は、例えば、金属板と、圧電素子と、を備えたモノモルフ型の圧電アクチュエータである。このモノモルフ型圧電アクチュエータとは、1枚の圧電素子だけで屈曲する構造のアクチュエータである。なお振動付加部12は、圧電アクチュエータに限定されず、偏心したおもりを回転させることにより振動を生成する偏心モータやボイスコイルモータなどであっても良い。また振動付加部12は、圧電アクチュエータなどを複数備える構成であっても良い。
【0025】
上述の圧電素子は、例えば、制御部16から出力される駆動信号S
2に基づいて伸縮を行う。なお駆動信号S
2は、一例として、
図2(c)に示すように、サイン波であるがこれに限定されない。
【0026】
振動付加部12は、この圧電素子の伸縮により、金属板が屈曲し、この屈曲によって振動を発生する構造となっている。この振動は、
図2(a)に示す基準位置から操作面100を上下に変位させる。
図2(c)に示すグラフは、操作面100の基準位置からの変位量Lの一例を示す概略図となっている。なお基準位置は、一例として、操作面100を基準としている。
【0027】
圧電素子の材料としては、例えば、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが用いられる。圧電素子は、例えば、これらの材料を用いて形成された膜を積層して形成された積層型の圧電素子である。
【0028】
振動付加部12は、一例として、
図2(a)に示すように、パネル11の裏面101の中央に配置されている。この振動付加部12が振動を付加する期間である振動付加期間T(時間t
1〜時間t
2)は、一例として、120msである。
【0029】
(加速度検出部14の構成)
加速度検出部14は、例えば、光学方式、半導体方式などの加速度センサである。この加速度検出部14は、例えば、
図2(a)に示すように、パネル11の裏面101に配置される。
【0030】
この加速度検出部14は、
図2(a)に示すように、操作面100の基準位置からの変位に伴う加速度を検出するように構成されている。加速度検出部14は、検出した加速度値の情報を含む加速度情報S
3を生成して制御部16に出力する。
【0031】
(制御部16の構成)
制御部16は、操作面100に対する操作指の接触を判定するための接触しきい値160を有し、通常の判定に加えて、上述の振動付加期間Tが経過した後、加速度検出部14が検出した加速度値と接触しきい値160とを比較して操作指が操作面100を複数回タップする操作を判定するように構成されている。この複数回タップする操作とは、一例として、ダブルタップ操作である。
【0032】
具体的には、制御部16は、例えば、記憶されたプログラムに従って、取得したデータに演算、加工などを行うCPU(Central Processing Unit)、半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などから構成されるマイクロコンピュータである。このROMには、例えば、制御部16が動作するためのプログラムと、上述の接触しきい値160と、が格納されている。RAMは、例えば、一時的に演算結果などを格納する記憶領域として用いられる。
【0033】
制御部16は、接続された電子機器から入力する振動指示信号S
5に基づいて振動付加部12を制御して操作面100に振動を付加する。制御部16は、一例として、
図2(c)に示すように、振動指示信号S
5がLoからHiになると、駆動信号S
2を生成して振動付加部12に出力し、操作面100に振動を付加させる。この振動を付加する期間は、上述の振動付加期間Tであり、振動指示信号S
5がLoからHiになった時間t
1から時間t
2までの期間となる。
【0034】
接触しきい値160は、操作指が操作面100に接触しているか否かを判定するためのしきい値であり、加速度検出部14が検出した加速度値と比較される。操作指が操作面100に接触している際、操作面100に対して荷重が付加される。この荷重により操作面100が変位するので、加速度検出部14は、この変位に伴って加速度Gを検出する。
図2(c)では、接触しきい値160の一例を図示している。
【0035】
制御部16は、検出された加速度値が接触しきい値160以上である場合、操作面100に操作指が接触していると判定する。また制御部16は、例えば、タッチセンサ10が操作指を検出すると共に、接触しきい値160以上となる加速度値が検出された場合、操作面100に接触した操作が行われたとして検出点の情報を含む操作情報S
4を生成して接続された電子機器に出力する。
【0036】
制御部16は、例えば、タッチセンサ10が操作指を検出すると共に、接触しきい値160以上となるパルス的な加速度値が一回検出された場合、タップ操作が行われたと判定し、連続して二回検出された場合、ダブルタップ操作が行われたと判定する。
【0037】
ここで操作面100が基準位置から上下に振動している場合、加速度検出部14は、
図2(c)に示すように、この振動に応じた加速度Gを検出する。振動が大きい場合、操作指が操作面100に接触していないにも関わらず、検出された加速度Gが大きくなって接触しきい値160以上となる可能性がある。
【0038】
そこで制御部16は、上述のように、振動付加期間Tにおいて検出された加速度値を破棄するように構成されている。
【0039】
以下に本実施の形態のタッチパッド1の動作の一例について
図3のフローチャートに従って説明する。ここでは、タップ操作及びダブルタップ操作の判定に移行するか否かを判定するまでの動作の一例について説明する。その他の操作の判定は、一例として、タップ操作及びダブルタップ操作の判定の後に行われる。
【0040】
(動作)
タッチパッド1の制御部16は、車両9の電源が投入されると、タッチセンサ10から検出情報S
1を取得すると共に加速度検出部14から加速度情報S
3を取得する。
【0041】
制御部16は、ステップ1の「Yes」が成立する、つまり加速度情報S
3に基づいた加速度Gが接触しきい値160以上である場合(Step1:Yes)、振動指示信号S
5が入力しているか、つまり振動指示信号S
5がHiであるか確認する。
【0042】
制御部16は、振動指示信号S
5が入力していない、つまり振動指示信号S
5がLoである場合(Step2:Yes)、操作指が操作面100に接触しているとして、タップ操作及びダブルタップ操作の判定に移行し(Step3)、当該判定までの処理を終了する。
【0043】
ここでステップ2において制御部16は、振動指示信号S
5が入力していた、つまり振動指示信号S
5がHiである場合(Step2:No)、振動付加期間Tであるとして検出された加速度値を破棄する(Step4)と共に、ステップ3の処理を進める。
【0044】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係るタッチパッド1は、操作の誤判定を抑制することができる。具体的には、タッチパッド1は、振動が付加されている振動付加期間Tの間、加速度検出部14が検出した加速度値が接触しきい値160以上であっても破棄するので、この構成を備えない場合と比べて、操作面100に付加された振動を操作による振動とする誤判定を抑制することができる。そしてタッチパッド1は、タップ操作及びダブルタップ操作の判定精度を向上させることができる。
【0045】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。また、これら実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態は、発明の範囲及び要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。