特許第6359519号(P6359519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小林 光の特許一覧

特許6359519シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法
<>
  • 特許6359519-シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法 図000002
  • 特許6359519-シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法 図000003
  • 特許6359519-シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法 図000004
  • 特許6359519-シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法 図000005
  • 特許6359519-シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法 図000006
  • 特許6359519-シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法 図000007
  • 特許6359519-シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法 図000008
  • 特許6359519-シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法 図000009
  • 特許6359519-シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法 図000010
  • 特許6359519-シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法 図000011
  • 特許6359519-シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法 図000012
  • 特許6359519-シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法 図000013
  • 特許6359519-シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法 図000014
  • 特許6359519-シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法 図000015
  • 特許6359519-シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法 図000016
  • 特許6359519-シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法 図000017
  • 特許6359519-シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359519
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20180709BHJP
   H01L 31/068 20120101ALI20180709BHJP
   H01L 31/0216 20140101ALI20180709BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   H01L21/306 B
   H01L31/06 300
   H01L31/04 240
   H01L31/04 420
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-505598(P2015-505598)
(86)(22)【出願日】2014年3月14日
(86)【国際出願番号】JP2014056888
(87)【国際公開番号】WO2014142304
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年3月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-52641(P2013-52641)
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-150280(P2013-150280)
(32)【優先日】2013年7月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-188124(P2013-188124)
(32)【優先日】2013年9月11日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (刊行物1)公益社団法人 応用物理学会が平成25年8月31日に発行した、2013年〈第74回〉応用物理学会秋季学術講演会[講演予稿集]17a−A4−2 16−054ページ
(73)【特許権者】
【識別番号】594056384
【氏名又は名称】小林 光
(74)【代理人】
【識別番号】100125450
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 広明
(72)【発明者】
【氏名】小林 光
(72)【発明者】
【氏名】今村 健太郎
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/024746(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/099594(WO,A1)
【文献】 特開2005−183505(JP,A)
【文献】 特開2013−41864(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0294255(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0238275(US,A1)
【文献】 入鹿 大地 Daichi Irishika 他,化学的転写法を用いた極低反射Si表面の創製 Ultra-low Reflectivity Si Surfaces Fabricated by Surface,<第60回>応用物理学関係連合講演会講演予稿集,日本,公益社団法人応用物理学会,2013年 3月11日,30p-A4-5,p.16-120
【文献】 Francisco Franco Jr et al.,Ultra-low reflectivity poly-crystalline Si surfaces fabricated by surface structure chemical transfe,<第60回>応用物理学関係連合講演会講演予稿集,日本,公益社団法人応用物理学会,2013年 3月11日,30p-A4-6,p.16-121
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 31/0216
H01L 31/068
H01L 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒機能を有する第1の金属の母体に、触媒機能を有する第2の金属を担持させた、
ナノクリスタル構造層形成用転写用部材。
【請求項2】
前記第1の金属が、白金、白金と銀との合金、又はニッケル(Ni)と白金と銀との合金、であり、
前記第2の金属が、銀である、
請求項1に記載の転写用部材。
【請求項3】
触媒機能を有する第1の金属の母体を、触媒機能を有する第2の金属を溶解させた溶液に浸漬して引揚げることにより、転写用部材の母体に前記第2の金属を担持させる工程を含む
ナノクリスタル構造層形成用転写用部材の製造方法。
【請求項4】
前記第1の金属が、白金、白金と銀との合金、又はニッケル(Ni)と白金と銀との合金、であり、
前記第2の金属が、銀である、
請求項3に記載の転写用部材の製造方法。
【請求項5】
触媒機能を有する第1の金属の母体に、触媒機能を有する第2の金属を担持させた転写用部材を用いて、シリコンを酸化しかつ溶解し得る処理溶液中で前記シリコンの表面に接触又は近接させることにより、前記シリコンの表面部にナノクリスタル構造層を形成する工程を含む、
半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の金属が、白金、白金と銀との合金、又はニッケル(Ni)と白金と銀との合金、であり、
前記第2の金属が、銀である、
請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記ナノクリスタル構造層が2nm〜8nmのサイズの結晶粒子を含む
請求項5又は請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
触媒機能を有する第1の金属の母体に、触媒機能を有する第2の金属を担持させた転写用部材を用いて、シリコンを酸化しかつ溶解し得る処理溶液中で、前記シリコンの表面に接触又は近接させることにより、前記シリコンの表面部にナノクリスタル構造層を形成する工程を含む、
太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記ナノクリスタル構造層が2nm〜8nmのサイズの結晶粒子を含む、
請求項8に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記ナノクリスタル構造層の厚さが30nm〜500nmである、
請求項8又は請求項9に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項11】
シリコンを酸化しかつ溶解し得る処理溶液を収める容器と、
触媒機能を有する第1の金属の母体の表面に触媒機能を有する第2の金属を担持させた転写用部材と、
前記容器内の前記シリコンの表面に前記転写用部材を接触又は接近させて前記シリコンの表面部にナノクリスタル構造層を形成する接触又は接近機構と、を備える、
半導体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板の表面に微細なナノクリスタル構造層を形成することに係る、シリコン基板の表面処理方法、半導体装置の製造方法、半導体の製造装置、転写用部材およびその製造方法、太陽電池および太陽電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン基板(Siウェハ)に対して、白金等の触媒金属の微細粒子が共存するフッ化水素酸・過酸化水素水(HF・H)混合溶液に作用させると、Siウェハの表面に、上記触媒金属の存在によって、開孔及びその開孔周辺での微細な多孔質層が形成されること、そして、この技術を太陽電池の受光面に適用することにより、光反射率を低減させて、太陽電池の変換効率を向上させることの可能なことが知られている(特許文献1)。
【0003】
しかし、一方で、上述の従来技術では、その処理後に、上記溶液中の白金等の触媒金属がSiウェハの表面に付着・残存したままで、これが、例えば半導体表面のキャリア特性を低下させる要因となることが懸念され、太陽電池の性能向上には、かかる要因の影響を除くことを含め、解決すべき課題がある。
【0004】
本願の発明者は、先に、白金メッシュ等をローラーに装着して用いて、シリコン基板を酸化しかつ溶解し得る、例えば上述のフッ化水素酸・過酸化水素水(HF・H)混合溶液等の処理溶液中で、上記白金メッシュ等を処理対象のシリコン基板に対向配置して接触又は近接させたとき、同白金メッシュ等が、その表面形状を処理対象のシリコン基板表面の広い面積において、酸化と溶解との反応における触媒作用をなして、短時間に、そのシリコン基板表面を微細なナノクリスタル構造層に作り替える、転写用部材となること、すなわち、同白金メッシュ等を転写用部材として利用する技術(以下、この種の技術を化学的構造転写法と称する)を提示し、それにより、シリコン基板を低反射光特性の表面になして、高い光電変換性能の太陽電池を製造することを提案している(特許文献2)。
また、本願の発明者は、転写用部材の形状として、メッシュに限らず、貫通孔及び/又は非貫通孔が形成された触媒材、アイランド状の触媒材あるいは平板状の触媒材を用い得ること、さらに、上述の処理溶液中に1%以下の銀イオンなど少量の金属イオンが含まれていてもよいことを提示した(特許文献3)。
【0005】
かかる化学的構造転写法を用いる場合においても、極低反射率を持ったシリコン基板表面を、迅速、確実に形成すること、並びにそのシリコン基板表面部におけるキャリア特性を安定に維持すること、また、それらを実現するための方策、手法として、上述の転写用部材の形状、構造、製作手法等には、更なる創意工夫が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−183505号公報
【特許文献2】国際特許公開:WO2011/099594
【特許文献3】国際特許公開:WO2013/024746
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の従来例のような転写用部材の機能を一層高めることで、迅速に、シリコン表面を極薄、微細なナノクリスタル構造層に形成するための、シリコン基板の表面処理方法及び半導体装置の製造方法、並びに太陽電池およびその製造方法を提供すること、さらには、その微細なナノクリスタル構造層形成に利用する転写用部材並びにナノクリスタル構造層を有するシリコン基板自体を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は、化学的構造転写法において利用する触媒機能を有する第1の金属による転写用部材の表面に、微量の触媒機能を有する第2の金属を担持させて用いること、または上記転写用部材を、微量の第2の金属を含む混合水溶液中でシリコン基板に接触させて用いることにある。
【0009】
詳細には、化学的構造転写法において、例えば、第1の金属による転写用部材に微量の第2の金属を担持させて、シリコンを酸化しかつ溶解し得る処理溶液中で、シリコン基板の表面に接触乃至接近させることにより、または、上記第1の金属による転写用部材の表面を、シリコンを酸化しかつ溶解し得る処理溶液中に微量の第2の金属を含ませて、シリコン基板の表面に接触乃至接近させることにより、同シリコン基板の最表部に極薄、微細なナノクリスタル構造層を形成する、シリコン基板の表面処理方法及び半導体装置の製造方法である。
【0010】
本発明では、触媒機能を有する第1の金属による転写用部材の表面に微量の触媒機能を有する第2の金属を担持して存在させるか、あるいは、シリコンを酸化しかつ溶解し得る処理溶液中に第2の金属を溶解して存在させることにより、上記触媒機能を有する第1の金属による転写用部材を、上記シリコンを酸化しかつ溶解し得る処理溶液中で、シリコン基板の表面に接触ないし接近させて、上記シリコン基板の表面に極薄、微細なナノクリスタル構造層をシリコン基板全面に一様に形成することに特徴がある。
【0011】
本発明で、上記第1の金属は、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、ロジウム(Rh)およびこれらを含む他の金属との合金の群から選ばれる。また上記第2の金属は、銀(Ag)のほか、Ni、Fe、Cu、Pdの群から選ばれる。
【0012】
本発明では、第1例として、上記第1の金属でなる転写用部材に、上記第2の金属を溶解させて調製した溶液に浸漬して引揚げて、同転写用部材の面に微量の上記第2の金属を担持させて、この転写用部材を所定のローラーに装着して用いて、シリコンを酸化しかつ溶解し得る、所定の処理溶液中で、シリコン基板に接触乃至近接させながらローラーごと回転移動させることにより、上記シリコン基板の表面に微細なナノクリスタル構造層を形成する過程を備える。
【0013】
また、本発明では、第2例として、上述のシリコンを酸化しかつ溶解し得る所定の処理溶液に上記第2の金属を微量溶解させて用い、その溶液中に、上記の転写用部材を、所定のシリコン基板に接触乃至接近させることにより、上記シリコン基板の表面に極薄、微細なナノクリスタル構造層を形成する過程を備えることを含む。
【0014】
なお、上述のシリコンを酸化しかつ溶解し得る処理溶液は、例えば、50wt%濃度のフッ化水素酸(HF)水と30wt%濃度の過酸化水素水(H)とを適宜な体積比で混合したフッ化水素酸・過酸化水素水の混合溶液が用いられる。
【0015】
本発明では、上記第1例の実施事例として、例えば、50wt%濃度のフッ化水素酸(HF)水と30wt%濃度の過酸化水素水(H)とを体積比1:1で混合したフッ化水素酸・過酸化水素水の混合溶液に銀(Ag)を100ppm程度溶解させて調製し、これに短時間浸漬して引揚げ、さらに所定の熱処理を行うことで、少量の銀を担持した転写用部材を形成する過程も含まれ、さらに、この転写用部材を所定のローラーに装着して所定のシリコン基板に接触乃至接近させながら、ローラーを回転して移動させることにより、上記シリコン基板の表面に微細なナノクリスタル構造層を形成する過程を備えることも含まれる。
【0016】
転写用部材への微量の第2の金属を担持させるに際しては、上述の銀(Ag)を溶解させた、フッ化水素酸・過酸化水素水の混合溶液を用いる場合に限らず、それとは別の溶液に所定適量の第2の金属が溶解されているものに、前記第1の金属でなる転写用部材を浸漬して引揚げることで、この転写用部材に第2の金属を微量担持して利用することも可能である。
【0017】
本発明は、シリコン基板として、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非結晶性シリコン、疑似単結晶シリコンおよびシリコン化合物半導体(シリコンカーバイト、シリコンゲルマニウム等を含む)から選ばれるシリコン基材を選択的に使用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上述第1の実施亊例によると、化学的構造転写法において、微量の触媒機能を有する第2の金属類の担持された転写用部材を実現して、これを用いて、シリコンを酸化しかつ溶解し得る処理溶液内で所定のシリコン基板に接触乃至接近させることにより、そのシリコン基板表面には、シリコンナノクリスタル構造層が、その形成速度をいっそう高めて、形成されて、極低反射率のシリコン表面を形成し得る。形成された一様な極薄、微細なナノクリスタル構造層の光学反射特性は平均値で5%以下の低反射率特性が得られ、これを用いて製造した太陽電池では、変換効率を一段と向上させることできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態による単結晶シリコン基板表面のSEM(写真)図である。
図2】本発明の実施例による単結晶シリコン基板断面のSEM(写真)図である。
図3】本発明の実施例による単結晶シリコン基板表面のSEM(写真)図である。
図4】本発明の実施例による単結晶シリコン基板表面のSEM(写真)図である。
図5】本発明の実施例による単結晶シリコン基板表面のSEM(写真)図である。
図6】本発明の実施例による単結晶シリコン基板断面のTEM(写真)図である。
図7】本発明の実施例による単結晶シリコン基板断面のTEM(写真)図である。
図8】本発明の実施例による単結晶シリコン基板断面の拡大TEM(写真)図である。
図9】本発明の実施例によるナノクリスタル構造層を有するシリコン基板表面の反射率特性図である。
図10】本発明の実施例による多結晶シリコン基板の表面のSEM(写真)図である。
図11】本発明の実施例による多結晶シリコン基板の断面TEM(写真)図である。
図12】本発明の実施例による多結晶シリコン基板表面の反射率特性図である。
図13】本発明の他の実施例による多結晶シリコン基板の表面のSEM(写真)図である。
図14】本発明の他の実施例による多結晶シリコン基板の断面TEM(写真)図である。
図15】本発明の実施例3によるナノクリスタル構造層を有するシリコン基板表面の反射率特性図である。
図16】本発明の実施例4によるナノクリスタル構造層を有するシリコン基板表面の反射率特性図である。
図17】本実施例により得られたpn接合型単結晶シリコン太陽電池の特性図である。
【符号の説明】
【0020】
1 P型シリコン基板
2 ナノクリスタル構造層
3 アルミニウム蒸着層
11 多結晶シリコン基板
12 ナノクリスタル構造層
13 アルミニウム蒸着層
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施例1]
つぎに、本発明を、実施の形態である各実施例により、図面を参照して詳細に述べる。
【0022】
フッ素樹脂のトレーに50wt%濃度のフッ化水素酸(HF)と30wt%濃度の過酸化水素水(H)とを体積比1:1で混合したフッ化水素酸と過酸化水素水との混合溶液200mlを用いて、銀の粒子を100ppm溶解させて調製した。その溶液に200メッシュの白金メッシュを室温で10秒間浸漬した後、このメッシュを取り出し、流水で2分間洗浄し、同白金メッシュ体に微量の銀を担持させる。
【0023】
化学的構造転写法において、微量の銀を担持した上記白金メッシュを用いて、50wt%濃度のフッ化水素酸(HF)と30wt%濃度の過酸化水素水(H)とを体積比でフッ化水素酸(HF)水:過酸化水素水(H)=1:3,1:1,3:1,5:1,10:1のそれぞれに混合したフッ化水素酸水と過酸化水素水との混合溶液500mlのフッ素樹脂容器内において、p型で面方位(100)の片面ミラー面、比抵抗:1〜20Ωcmの5cm角に切断した単結晶シリコン基板を、その銀担持白金メッシュを、所定のローラー面に装着して、室温で約30秒間のローラーによる数度の回転処理で接触させ、流水洗浄し、窒素ブロー処理後、図1図5の各SEM(写真)図に見られるように、いずれの場合にも上記シリコン基板面にシリコンナノクリスタル層の形成されていることが確認できた。
【0024】
図6及び図7は、本実施例により得られた事例2つ(体積比でフッ化水素酸:過酸化水素水=3:1、及び同10:1のそれぞれに混合したフッ化水素酸と過酸化水素水との混合溶液を使用した場合)の単結晶シリコン基板の表面近傍の断面TEM(透過電子顕微鏡)の各写真図であり、図6及び図7で見ると、シリコン基板1の表面には約100nmのシリコンナノクリスタル構造層2が形成されていることが分かる。
【0025】
なお、図6及び図7でアルミニウム蒸着層3は、TEM(透過電子顕微鏡)観察に際して、上記シリコンナノクリスタル構造層2の表面界域を明示するために設けたものであり、完成の装置にそのまま存在させるものではない。
【0026】
図8は、シリコンナノクリスタル構造層2の領域の断面を主体的に示す部分拡大のTEM(写真)図であり、これによって、シリコンナノクリスタル構造層2の内部には、同図中の矢印先端にみられる通りの、約2〜8nmの粒径で、単結晶シリコン基板1の領域にみられるものと同様に結晶構造が揃って観察される。すなわち、単結晶シリコン基板1に対して、上記フッ化水素酸と過酸化水素水との混合溶液を使用して化学的構造転写法を適用した場合、シリコンナノクリスタル構造層2内に微細な粒径の結晶構造が揃って存在する態様が明らかであり、これにより、このシリコンナノクリスタル構造層2のなかの、まさしくナノクリスタル構造の微細な粒径結晶が存在することを確認できる。
【0027】
上記ナノクリスタル構造層を形成して、株式会社コベルコ科研製のライフタイム測定装置LTA―1510を用いて、少数キャリアの1/eライフタイムを測定したところ、その値が、上記ナノクリスタル構造層形成直後には10μsであり、引続き900℃,10分の熱酸化を行ったところ、15μsへ、さらに、450℃,5%水素/95%窒素中のアニール処理45分で174μs以上へと、大きく改善されることが分かった。また、同様の試料で、上記熱酸化に代えて、濃度70wt%の硝酸中で、70℃,10分の硝酸処理を行うと、ライフタイムは、硝酸処理前の9μsから、処理後に10μsへ、さらに、450℃,5%水素/95%窒素中のアニール処理で17μsへと、ほぼ2倍の改善が見られた。
【0028】
これらの透過電子顕微鏡(TEM)の写真図からは、シリコンナノクリスタル構造層の表面及び層内に微細な細孔や金属微粒子の存在は認められない。シリコンナノクリスタル構造層の厚みは約100nmであるが、かかる厚みは処理時間を制御することにより、30nmから500nm程度が可能である。
【0029】
加えて、本実施例で得られたシリコンナノクリスタル構造層は、365nmの紫外光照射で概ね600nm〜800nm波長のオレンジ色発光が観察されることから、バンドギャップが、通常のシリコンの場合の1.1eVより大きい、約2eVから約1.5eVに拡大していることを確認することができた。上記オレンジ色の発光は、TEMで見られた数nm程度の粒径の微細結晶構造からの発光と考えられる。
【0030】
また、銀を担持させて、流水洗浄したが、流水洗浄後に数百度の加熱処理を行い、
銀粒子と白金メッシュの付着強度を上げることも有効である。
【0031】
なお、上記白金メッシュには、白金と銀との合金あるいはニッケル(Ni)−白金−銀の合金のメッシュを用いることによっても、シリコン表面に所望のナノクリスタル構造層を形成することができる。
【0032】
さらに、転写用部材の母体には、白金と白金以外の触媒機能を有する他金属との合金、同触媒機能を有する金属と溶液に不溶の別金属との合金、同触媒機能を有する金属を含む不織布等の合成体を用いることができる。いずれの場合も、母体の転写用部材の表面部には微量かつ適度の銀を担持し得るものが利用可能である。
【0033】
図9は、本実施例による光波長域300〜800nmでの表面反射率特性を示し、反射特性では表面反射率が5%以下の低反射率特性である。これは、表面のナノクリスタル構造層の存在により、通常のシリコン基板にくらべて、表面反射率が顕著に低減されていることを示している。
[実施例2]
【0034】
つぎに、本発明を、実施の形態である多結晶シリコン基板の表面処理過程により、図面を参照して詳細に述べる。
【0035】
400メッシュの白金の構造体を転写用部材として、この転写用部材を過酸化水素(H)水とフッ化水素(HF)酸との混合水溶液中で多結晶シリコン基板に接触させて、その多結晶シリコン基板表面にシリコンナノクリスタル構造層を形成した。詳細には、上記多結晶シリコン基板として、p型のアズスライス,比抵抗1〜20Ωcm,基板の大きさ5cm×5cm(5cm角),厚さ約200μmを、予め、表面のアルカリエッチ(KOH:21wt%水溶液の500ml中,フッ素樹脂容器内で実施)で80℃10分間の処理後、水洗2分を2回、窒素(N)ブロー乾燥した。次に、50wt%濃度のフッ化水素(HF)酸と30wt%濃度の過酸化水素(H)水とを体積比3:1で混合して銀イオンを1ppm程度含ませた、フッ化水素(HF)酸と過酸化水素(H)水との混合水溶液内(フッ素樹脂のトレー内の200mlを使用)で、上記転写用部材を所定のローラーに装着して、上記多結晶シリコン基板の主表面に約10秒間接触させる。その後、流水洗浄及び窒素(N)ブロー乾燥を行った。
【0036】
上述の処理の結果、図10のSEM写真図から、その多結晶シリコン基板の表面は数十nm以下の微細な粒子状結晶構造群からなっていることが観察された。
【0037】
図11は断面の透過電子顕微鏡写真(TEM像)であり、多結晶シリコン基板11上の形成されたシリコンナノクリスタル構造層12と、これにアルミニウム蒸着層13を設けた断面を表している。図11の透過電子顕微鏡(TEM)写真で示されるように、シリコンナノクリスタル構造層12の厚さは約100nm以上であることが分かる。また、シリコンナノクリスタル構造層12内には、単結晶と同様に、数nm程度の微細な結晶構造が見られた。
【0038】
本実施例で得られたシリコンナノクリスタル構造層は、紫外光照射(例えば、UVブラックライトによる照射)で単結晶シリコンの場合と同様に、概ね600nm〜800nm波長のオレンジ色発光が観察された。
【0039】
図12では、シリコン基板表面の反射率を比較して表しており、図中の特性曲線(a)は本実施例の化学的構造転写法を実施する以前の多結晶シリコン基板の反射率特性、図中の特性曲線(b)は本実施例後の化学的構造転写法による多結晶シリコン基板の反射率、さらに図中の特性曲線(c)は、比較例として、面方位(100)単結晶シリコンに異方性アルカリエッチングを行って得たマットテキスチャー面の反射率を示した。
【0040】
本実施例によると、図12中の特性(b)に示される通り、フッ化水素酸と過酸化水素水との混合水溶液に微量の銀が含まれた溶液内で所定の白金ローラーに装着した上記転写用部材を多結晶シリコン基板に接触させて、その多結晶シリコン基板表面にシリコンナノクリスタル構造層を形成した場合には、同多結晶シリコン基板の反射率特性が、波長300−800nmの光波長域において、平均値で3%以下と、顕著な低レベルになっており、シリコンナノクリスタル構造層の生成により、この光波長領域における光吸収率を向上させて、太陽電池の変換効率向上に寄与できる。
【0041】
加えて、少数キャリアのライフタイム測定で、そのライフタイムは、シリコンナノクリスタル構造層の形成後には約5μs(10−6秒)であることがわかり、形成前の約1μsであったことと比較して、約5倍に増大していることが認められた。
【0042】
更に、転写用部材には、前記実施例1で述べたような、銀を担持させた白金メッシュを用いても良い。
[実施例3]
【0043】
つぎに、本発明の他の実施の形態を実施例により、詳細に述べる。
【0044】
まず、50wt%濃度のフッ化水素酸(HF)と30wt%濃度の過酸化水素水(H)とを体積比でフッ化水素酸(HF)水 : 過酸化水素水(H)=1:1に混合したフッ化水素酸水と過酸化水素水との混合溶液内に、銀の粒子を1ppm溶解させて処理用溶液を調製した。
【0045】
つぎに、厚さ約20ミクロン(μm)の白金箔を所定のローラーに卷きつけてなる白金の構造体を化学的構造転写法における転写用部材として用い、この転写用部材を、フッ素樹脂容器(容量約500mlのトレー)内の、上記銀の粒子を1ppm溶解させた処理用溶液200ml中おいて、p型で面方位(100)の片面ミラー面、比抵抗:1〜20Ωcmの5cm角に切断した単結晶シリコン基板面に対して、室温で、ローラーを回しながらの移動処理を6回反復して接触させた。その間の所要時間は約30秒であった。
【0046】
その後、上記単結晶シリコン基板面を流水洗浄し、次いで窒素ブロー処理した後に上記単結晶シリコン基板面を観察したSEM図(写真)を図13に示す。これは、上述の実施例2で得られた結果、すなわち、図5のSEM(写真)図とほとんど同様である。
【0047】
また、図14は断面の透過電子顕微鏡写真(TEM像)であり、本実施例の場合も、実施例2で述べた図7の透過電子顕微鏡写真(TEM図)と同様に、シリコンナノクリスタル構造層の厚さは約100nm以上であることが分かる。
【0048】
本実施例では、単結晶シリコン基板を用いたが、多結晶シリコン基板を用いた場合にも、そのシリコン基板の表面にナノクリスタル層を形成することが可能である。
【0049】
なお、本実施例でのローラーへの印加圧力は、ローラーの自重のみで付加圧を与えていないが、経験的に適宜設定したものであり、同ローラーの移動速度並びに移動処理反復回数等と兼ね合わせて、対象のシリコン基板や対応装置の大きさ、温度等の環境に応じて、最適条件に設定し得ることは当然である。
【0050】
処理用溶液の調製にあたり、本実施例の50wt%濃度のフッ化水素(HF)酸と30wt%濃度の過酸化水素(H)水とを体積比でフッ化水素酸(HF)水 : 過酸化水素水(H)=1:1に混合したフッ化水素酸と過酸化水素水との混合溶液以外に、前述の実施例1の場合のように、50wt%濃度のフッ化水素(HF)酸と30wt%濃度の過酸化水素(H)水とを体積比でフッ化水素酸(HF)水 : 過酸化水素(H)水=1:3,3:1,5:1,10:1のそれぞれに混合したフッ化水素酸と過酸化水素水との混合溶液のいずれかを用いること、或いはフッ化水素酸と過酸化水素水との混合比を適宜変えて利用することも可能である。
【0051】
図15は、本実施例によるナノクリスタル層を有するシリコン基板の光波長域300〜800nmでの表面反射率特性を示し、反射特性では表面反射率が概ね3%以下の低反射率特性である。これは、前述の実施例1の場合と対比しても、一層安定な低反射特性であり、転写用部材が白金箔であること、及び銀を1ppm溶解させた処理用溶液を用いたことによる作用で、表面の全域にナノクリスタル構造層が形成されたことによるものである。
【0052】
なお、上記白金箔には、白金と銀との合金あるいはニッケル(Ni)−白金−銀の合金箔、あるいは白金と金属等との混合乃至積層構造体からなるものを用いることによっても、シリコン表面に所望のナノクリスタル構造層を形成することができる。
【0053】
さらに、転写用部材の母体には、触媒機能を有する白金以外の金属との合金、同触媒機能を有する金属と溶液に不溶の金属との合金、耐薬品性を有する薄膜の樹脂や不織布等の合成体を用いることもできる。そして、上記転写用部材は、ローラーに巻きつけての加圧や薬液中での移動による耐薬品性などの耐用性の面から、白金部分が少なくとも1μm以上であり、白金以外の構造も含めて、全体の厚みが10〜50μmであれば十分に利用可能である。
[実施例4]
【0054】
つぎに、本発明の他の実施例として、太陽電池及びその製造方法について詳細を述べる。
まず、p型単結晶シリコン基板(pSi(100)、厚さ725μm、比抵抗7〜11Ωcm、面積5×5cmを5枚単位で処理)を用い、フッ素樹脂製の容器内で、同基板を100mlの濃度5wt%のフッ化水素(HF)酸中、室温で、2分間の洗浄処理を行った。
【0055】
つづいて、塩化ビニール製の容器内で、濃度50wt%のフッ化水素(HF)水100mlと濃度30wt%の過酸化水素(H)水溶液100mlとの混合液を1容器中に準備し、これに銀(Ag)の溶解した薬液(上記同様のフッ化水素(HF)水と過酸化水素(H)水との1:1混合比の溶液)を、銀(Ag)量が1ppmとなるように注入して処理液を調製し、この処理液中で、ローラーに厚さ約20μmの白金箔を巻きつけた状態で、その白金箔を上記シリコン基板表面に接触させる。上記ローラー及び白金箔の接触操作は、ローラーの自重のほかには外部加重はなしで、上記シリコン基板の表面を、白金箔面の移動速度1cm/sで、約30秒間に6回(往復3度)程度接触させるように反復移動させた。なお、上記薬液中のフッ酸(HF)の代りに、フッ化アンモニウム溶液あるいはその混合物を用いてもよい。また、銀(Ag)添加に際しては、銀粒子のほか、塩化銀或いは硝酸銀等、或いはその他の化合物乃至は銀の錯体又は銀錯体イオンでもよく、銀添加量も0.1〜50ppmの範囲で選択できる。
【0056】
この操作過程によって、上記処理液中では白金及び銀による触媒作用で、シリコン基板表面の結晶層が微細構造化する、いわゆる化学的構造転写(Surface Structure Chemical Transfer、以下、SSCTと略記)呼ばれる化学的反応が生じ、同シリコン基板の表面領域では約200nmの深さでシリコンナノクリスタル構造層が形成されることが見出された。
【0057】
次に、上記シリコン基板のナノクリスタル構造層表面を、フッ素樹脂容器内で、100mlの濃度70wt%の硝酸(HNO)水溶液中、室温で10分間処理して、上記ナノクリスタル構造層内に残留した銀を溶解し、さらに濃度5wt%のフッ化水素(HF)酸で2分間処理後、水洗処理を行った。
【0058】
その後は、上記面積5×5cm(5cm角)のp型単結晶シリコン基板を、その各端をダイヤモンドペンカッターで更に切断して、中央部の面積2.5×2、5cmの領域を取り出し、そのp型単結晶シリコン基板を、フッ素樹脂容器内で100mlの濃度70wt%の硝酸(HNO)溶液中、室温で10分間処理して引揚げ、さらに上記ナノクリスタル構造層表面にP含有の有機ケイ酸からなる被膜形成用コート剤(溶液)を滴下、スピンコート(3000rpm,30分)後、空気中150℃の乾燥処理で、リンケイ酸被膜を形成した。
【0059】
他方、同p型単結晶シリコン基板の裏面側には、別の同形の単結晶シリコン基板表面にB含有の有機ケイ酸からなる被膜形成用コート剤(溶液)を滴下、スピンコート(3000rpm,30分)後、空気中150℃の乾燥処理でホウ素ケイ酸被膜を形成して、そのホウ素ケイ酸被膜面を重ねて接触(貼り合せ)して配置した。
【0060】
そして、上述の2枚のシリコン基板を横置きに重ねて接触(貼り合せ)して配置した状態で、一旦、両者の単結晶シリコン基板を酸素中、600℃、30分間の積層処理でそれぞれの被膜のガラス化(PSG,BSG)処理を行った後、さらに、(窒素(N)中、970℃で15分間の同時拡散処理を行って、表面側にn型領域及び裏面側にp領域を形成した。
なお、この一連の処理過程では、上述の2枚のシリコン基板が互いに付着することはなく、簡単に剥がして外すことができる。
【0061】
次に、表面側にn型領域及び裏面側にp領域の形成された、上記p型単結晶シリコン基板は、その各端面にp及びn層が回り込んで拡散されているので、その部分をダイヤモンドやすりで削り取った。
【0062】
最後に、フッ素樹脂製の容器内で、同基板を100mlの濃度5wt%のフッ化水素(HF)酸中、室温で、2分間の洗浄処理を行った後に、表面側のn型領域に厚さ1μmの銀(Ag)層の標準的ストライプ型表面電極をパターン蒸着により設け、他方の裏面側のp型領域には厚さ1μmのアルミニウム(Al)層の裏面(全域)電極を蒸着により設けた後、窒素中200℃で45分間のアニール処理を行って、pn接合型太陽電池を作製した。
【0063】
図16は本実施例によるナノクリスタル構造層を有するシリコン基板の上記表面側のn型領域前の光波長域300〜800nmで約2%以下の表面反射率特性図であり、先述の実施例3で述べた図15の場合と比べると、シリコン基板の比抵抗の違いによる多少の差異がみられるものの、極低反射率特性が安定して得られていることが分かった。
【0064】
図17は、本実施例により得られたpn接合型太陽電池のAM1.5の光照射で得られた電流密度(mA/cm)―電圧特性図であり、図中、実線の特性が本実施例のシリコンナノクリスタル層表面構造を有するもの、図中、点線の特性が同表面構造の形成を行わなかったものである。図17の特性図から、本実施例の太陽電池では、光電流密度は40.3mA/cm、Vocは589mV、変換効率は17.6%と、それぞれ高性能が得られた。因みに、図17の特性図中の点線の特性に示したように、表面構造の形成を行わなかったものでは、光電流密度が28.0mA/cm、Vocが582mV、変換効率が12.5%であり、これに比較して、本実施例により得られたpn接合型太陽電池の場合は、実線の特性に見られるように、光電流密度大きく増加しており、変換効率の増大も顕著であることが明白であった。
【0065】
この特性は、表面に反射防止膜をそなえていないこと、表面のパッシベーション処理や、バックサーフェースフィールド(BSF)の形成及び最適化も行っていないときの事例であり、それらを適切に施すことで、最終製品化においては、太陽電池の変換効率をさらに高め得ることが十分に期待できる。
【0066】
本実施例では、p型シリコン基板を用いたが、n型基板を用いて同様に太陽電池を作製することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、シリコン基板の表面に対して、シリコンを酸化しかつ溶解し得る処理溶液、例えばフッ酸および過酸化水素水の混合の処理溶液中で転写用部材の表面で触媒金属を作用させて、または触媒機能を有する第1の金属による転写用部材を、シリコンを酸化しかつ溶解し得る処理溶液中に微量の触媒機能を有する第2の金属を含ませた、処理溶液中でシリコン基板上に接触ないし接近させることにより、上記シリコン基板の表面にナノクリスタル構造層を形成する過程を持つ、すべての半導体装置の製造方法に利用することができるシリコン基板の表面処理溶液剤を利用すること、並びに、少なくともpn接合を有する太陽電池、光電変換作用を利用する半導体デバイスで、表面反射率の低減を図り、併せて、そのデバイスの高性能化を得るように、広範囲の半導体機能デバイスおよびその製造方法への利用、応用が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17