(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359530
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車でエネルギーを管理する方法
(51)【国際特許分類】
B60W 20/13 20160101AFI20180709BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20180709BHJP
B60K 6/20 20071001ALI20180709BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20180709BHJP
B60L 11/14 20060101ALI20180709BHJP
B60L 11/18 20060101ALI20180709BHJP
B60L 7/12 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
B60W20/13
B60W10/26 900
B60K6/20ZHV
B60W20/00 900
B60L11/14
B60L11/18 A
B60L7/12 Q
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-519292(P2015-519292)
(86)(22)【出願日】2013年6月25日
(65)【公表番号】特表2015-524363(P2015-524363A)
(43)【公表日】2015年8月24日
(86)【国際出願番号】FR2013051478
(87)【国際公開番号】WO2014001707
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年5月11日
(31)【優先権主張番号】1256087
(32)【優先日】2012年6月27日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ドゥベール, マクシム
(72)【発明者】
【氏名】ブライユ−マルタン, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ル−ロワ, ロイク
【審査官】
田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−239511(JP,A)
【文献】
特開2004−056867(JP,A)
【文献】
特開2010−058579(JP,A)
【文献】
特開平10−150701(JP,A)
【文献】
特表2011−512282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
B60W 10/00 − 20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から及び電気モータからのエネルギー供給をリアルタイムで分配する管理法に従って、減速中にエネルギーを回復することができ、前記内燃機関とバッテリによって電力供給される少なくとも1つの電気モータとを備えるハイブリッド車の運転者によるトルク要求に応答して、推進ユニットからのエネルギーを管理する方法であって、前記エネルギー管理法が、
‐ 熱出力と電気出力の間でエネルギー等価を移動させる等価係数であって、前記バッテリの瞬間的なエネルギー状況(soek)、エネルギー目標(soetarget)、及び、車両の運転条件の関数であり、等価係数に対する調整ループ内で決定され、かつ、前記推進ユニットの動作ポイントにおいて前記車両の全体的なエネルギー消費を最小限にすることができる、等価係数(s)、及び
‐ 減速中に回復可能な潜在的エネルギー(p)と前記バッテリの吸収能力との比較結果に応じて設定される放電フィードフォワード係数、
に依存することを特徴とする、方法。
【請求項2】
減速中に前記回復可能な潜在的エネルギー(p)が前記バッテリの吸収能力を超過するとすぐに、放電が強制されるような値に前記放電フィードフォワード係数が設定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記放電フィードフォワード係数がコンパレータ(C4)内の等価係数(s)に加算されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記調整ループからの出力において前記放電フィードフォワード係数が前記等価係数(s)に加算されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記回復可能な潜在的エネルギー(p)が、停止に至るまで種々の勾配上での減速中に前記バッテリ内で回復されたエネルギーの量を測定することによって、経験的に定義されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記回復可能な潜在的エネルギー(p)が、道路の勾配(P)の推定の関数として定義されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記回復可能な潜在的エネルギー(p)が、車両の質量(m)の関数であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記回復可能な潜在的エネルギー(p)が、前記車両の速度(V)の関数であることを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記バッテリの充電状態(soek)が、前記回復可能な潜在的エネルギー(p)に関連して十分に低いとき、放電が行われないような値に前記放電フィードフォワード係数が設定されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者のトルク要求に応答して、自動車両のハイブリッド推進ユニット内のエネルギーフローの分配の管理に関する。
【0002】
より正確には、本発明の目的は、内燃機関から及び電気モータからのエネルギー供給をリアルタイムで分配する管理法に従って、減速中にエネルギーを回復することができる、内燃機関とバッテリによって電力供給される少なくとも1つの電気モータとを備えるハイブリッド車の推進ユニットからのエネルギーを管理する方法である。
【0003】
前輪駆動又は後輪駆動のハイブリッド自動車両の推進ユニットは、内燃機関と、車両に搭載された少なくも1つのバッテリによって電力供給される一又は複数の電気機械とを備える。
【0004】
ハイブリッド推進ユニット用の制御システムは、燃料消費を制限し且つ汚染物質の排出を最小限にするために、運転条件に応じて、種々のモータの動作及び同期を管理するように設計されている。これは、熱及び電気のエネルギーフローの管理と呼ばれ、特に、内燃機関からのエネルギー供給と電気モータからのエネルギー供給の間の電力の分配を最適化するために、制御システム内に適用される制御戦略のことを指す。最善な動作ポイントを選択するのに使用される原則は、内燃機関からのエネルギー及び電気モータからのエネルギーをリアルタイムで分配する管理法に従って、熱エネルギー消費と電気消費の和を最小限にすることからなる。
【0005】
ハイブリッド車用のエネルギー管理法は、特に高速において必然的にバッテリに含まれるエネルギーを使用する傾向がある。さらに、バッテリは減速中にエネルギーを回復することができる。しかしながら、例えば、山道などの特定の重要な及び/又は広範囲な下降において、バッテリ内のエネルギーレベルは、回復可能なエネルギーレベルを超過することがある。したがって、減速及び/又は制動の間、バッテリにおいて車両のすべての運動エネルギー及び潜在的エネルギーを回復することはできない。エネルギーに関する懸念事項に加えて、この状況によって、減速段階中の車両の挙動が修正され、運転のしやすさが低下する。
【0006】
特許文献FR2926048は、ハイブリッド車の加速を制御する方法を開示するが、その目的は、バッテリの充電状態のみではなく減速中に回復可能な電気エネルギーの量も考慮し、電気エネルギーの供給によって運転者があらゆる状況下において力強い加速を有することを確実にし、それにより運転のしやすさをさらに改善することにある。
【0007】
したがって、この方法には、加速における車両のレスポンスを改善するために、制動の潜在的な電気エネルギーを利用するという利点がある。しかしながら、この方法は、実際の制動又は減速の状況において車両の挙動及びエネルギーの管理に対して何の効果ももたない。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、減速段階中の燃料消費の減少及び車両の均質的挙動を促進しながら、ハイブリッド車の制動及び減速の間にエネルギーを回復する潜在力を最適化することである。
【0009】
このため、この方法は、エネルギー管理法が、
‐ バッテリの瞬間的なエネルギー状況、エネルギー目標、及び車両の運転条件の関数である等価係数(equivalence factor)、及び
‐ 減速中に回復可能な潜在的エネルギーの関数である放電係数(discharge factor)
に依存することを提案する。
【0010】
好適には、エネルギー管理法では、減速中の回復可能な潜在的エネルギーがバッテリの吸収能力を超過するとすぐに放電係数が考慮される。
【0011】
本発明の非限定的な実施形態によると、等価係数は、調整ループ内で決定され、推進ユニットの動作ポイントにおいて車両の全体的なエネルギー消費を最小限にすることができる。
【0012】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の非限定的実施形態の以下の説明を読むことによって及び当該原則を説明する単一の添付の図面を参照することによって、明白に理解される。
【0013】
ハイブリッド車のエネルギー管理法は、全体的な燃料消費を最小限にするために、リアルタイムで、運転手からのトルク要求を一又は複数の電気機械の間で分割する。これは、係数sによってエネルギー管理法において電気モータからのエネルギーを均衡にさせるために、以下のタイプの関数の最小化に基づく:
H_eq=熱消費+s*電力消費
‐ 熱消費は、内燃機関のトルク及び速度の関数であり、
‐ 電気消費は、電気機械のトルク及び速度の関数であり、及び
‐ sは、熱出力と電気出力の間でエネルギー等価を移動させる等価係数である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、等価係数(s)に対する調整ループの非限定的な実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面によって示される等価係数(s)のための調整ループの非限定的な実施例では、第1コンパレータC1は、インスタントkにおけるバッテリのエネルギー状態(soe
k)を入力値として及びエネルギー状態(soe
target)を目標値として受信する。差異(soe
target−soe
k)を補正係数(K
p)に乗算する。第2コンパレータは、結果の和[Kp(soe
target−soe
k)]及び積分補正項を生成し、遭遇した運転条件に従って等価係数の補正を確実にする。この和は、サチュレータ(S)によって飽和状態にされ、制御された限度内で等価係数が残存することを確実にする。最小(sat
min−1/ηc)及び最大(sat
max−1/ηc)の飽和限度は、強制された再充電モード及び放電モードの制御を確実にする。
【0016】
最大飽和(sat
max)は、バッテリエネルギーを最大限に再充電する推進ユニットを制御する最大等価値である。飽和(sat
min)は、バッテリを最大限放電する推進ユニットを制御する最小等価値である。インテグレータIは、サチュレータSからの出力及びそれ自体の積算の差分を積算し、それにコンパレータC3を使用して補正係数(k
i)を乗じる。この差分を積算することによって、システムが飽和状態のときは、インテグレータは高速で動くことができない。この方法は、「アンチワインドアップ」(anti−windup)として知られている。フィードフォワード型のターム1/ηcは、コンパレータC4を使用してサチュレータ出力に加算される。このフィードフォワード型タームは、認識された運転状況及び/又は予測された運転状況に従って等価係数を直接適用することを可能にする。
【0017】
このループは、バッテリエネルギーの瞬間的状況とアンチワインドアップデバイスに関連するバッテリの目標エネルギー状況の間の差分を表すタームのループインテグレータを含む。これは、さらに比例補償ターム(proportional compensation term)を含む。
【0018】
ループは、さらにフィードフォワード型タームを有する。等価係数は、以下の方程式に個別に従うことによって、制御される:
S
k+1=1/ηc+K
p(soe
target−soe
k+1)+K
pK
I(soe
target−soe
k)。
【0019】
この方程式では、soe
targetは達成されるべき目標エネルギー状態であり、soe
kはインスタントkにおけるバッテリのエネルギー状態である。K
pとK
Iは、それぞれ比例補正ゲインと積分補正ゲインであり、ηcは、電気エネルギーから熱エネルギーへの変換の平均効率である。したがって、変換の平均効率(ηc)は、予測可能な運転条件の先行知識から又は先行する運転条件の分析から、状況に恒常的に適合するように計算することができる。積分補正は、エネルギー等価仮説の事後補正を適用する。
【0020】
例えば、「輻輳」型の運転条件が特定された場合、変換効率(ηc)に対して輻輳に適合された値を付与して、自動車専用道路での運転に対する等価係数とは実質的に異なる等価係数を取得することが可能である。
【0021】
最後に、等価が飽和されるとき、すなわち、等価係数(s)が限界値に達して何があってもバッテリの再充電又は放電が強いられるとき、アンチワインドアップ機能が積分タームの任意の突然の高速動作を防ぐため、等価係数(s)は許容範囲の上限及び下限を超過しない。
【0022】
このループからの出力において、等価係数(s)は、フィードフォワード型タームを加算することによってコンパレータC4内で補正され、これにより、エネルギー回復ポテンシャル(p)が、バッテリが吸収することができる合計エネルギーEから関係するインスタントにおいてバッテリ内で測定されるエネルギーレベル(soe
k)を差し引いた値よりも大きいときに放電が強制される。
【0023】
回復可能な潜在的エネルギー(p)は、好適には、停止に至るまで種々の勾配上で様々な減速がなされた後にバッテリ内で回復されたエネルギーの量を測定することによって、経験的に定義される。これは、さらに車両の速度(V)の推定、道路の勾配(P)の推定、及び車両の質量(m)の推定の関数である。種々の車両の質量(m)に対して速度(V)及び道路の勾配(P)の関数として、回復可能なエネルギー(p)を付与する地図を生成することができる。
【0024】
回復可能な潜在的エネルギー(p)は、コンパレータC5内で、バッテリの最大エネルギーレベルとその瞬間的エネルギー状態(soe
k)の間の差分(Eーsoe
k)と比較される。
【0025】
減速中に回復可能な潜在的エネルギー(p)がバッテリの吸収能力Eーsoe
kを超過するとすぐに、フィードフォワード型タームは放電を強制する値に設定され、これは、エネルギー管理法を決定する最終的な等価係数e
finを付与する、コンパレータC4内の等価係数(s)に対する加算によって、エネルギー管理法で考慮される。バッテリの充電状態(soe
k)が、回復可能な潜在的エネルギー(p)に関連して十分に低いとき、放電係数がキャンセルされる。
【0026】
結論として、エネルギー管理法に放電フィードフォワード係数を導入することにより、ハイブリッド車の制動中の回復可能な潜在的エネルギーを最適化させることが可能になる。これは、電気エネルギーをこうした状況においてさらに利用することによって、減速中に回復されたエネルギーがバッテリ吸収能力を超過することを防止する。したがって、本発明は、車両の燃料消費における減少を保障し、機械ブレーキへのエネルギーの消散を最小限にする。これらの構成は、変化率のないトランスミッションを備える車及び/又は機械ブレーキと電気機械の間の制動分配に対して特に有利である。