特許第6359544号(P6359544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6359544促進輸送膜と水蒸気スイープを利用して内燃機関排ガスからCO2を除去する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359544
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】促進輸送膜と水蒸気スイープを利用して内燃機関排ガスからCO2を除去する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/00 20060101AFI20180709BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20180709BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   B01D69/00 500
   B01D53/22
   B01D53/62
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-537729(P2015-537729)
(86)(22)【出願日】2013年10月8日
(65)【公表番号】特表2015-536814(P2015-536814A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】US2013063877
(87)【国際公開番号】WO2014062422
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2016年10月5日
(31)【優先権主張番号】61/714,933
(32)【優先日】2012年10月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513185700
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】SAUDI ARABIAN OIL COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】ハマド,エサム,ザキ
(72)【発明者】
【氏名】バハムダン,アメド,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ハマド,フェラス
(72)【発明者】
【氏名】ヤハヤ,ガルバ,オロリエベ
(72)【発明者】
【氏名】アル−サダ,ワディ,イッサム
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/100182(WO,A1)
【文献】 特開2000−229219(JP,A)
【文献】 特開平07−112122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
B01D 53/34−53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車、トラック、バス、オートバイ、列車、航空機及び船舶からなる群より選ばれる移動式装置の内燃機関(ICE)から発生した排ガスから二酸化炭素(CO2)を選択的に除去するための方法であって、前記内燃機関は冷却液を備え、
(i)前記内燃機関(ICE)から発生した排ガス、供給物圧1.5atmで、促進輸送(FT)膜の第一面と接触させる段階と、ここで前記促進輸送(FT)膜は、排ガスから促進輸送(FT)膜へCO2を錯化するためにポリマーに組み込まれたCO2に対する親和性を有する錯化剤又はキャリアを有するポリマーを含み、促進輸送(FT)膜の厚みは1.0μmまたは10.0μmであり、
(ii)供給物/透過物の圧力の比が4以上で、前記FT膜の第二面からガスを透過させて、前記促進輸送(FT)膜に錯化したCO2を除去する段階とを含む方法。
【請求項2】
前記促進輸送(FT)膜のCO2/N2選択性が400である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膜が高密度且つ均質な形態を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(ii)において除去したCO2を貯留する段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記促進輸送(FT)膜の第二面において任意のガスから水を凝縮する段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記促進輸送(FT)膜の厚さは1.0μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記促進輸送(FT)膜の厚さは10.0μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記促進輸送(FT)膜のCO2の透過率が少なくとも1000バーラーである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2012年10月17日出願の米国特許仮出願第61/714,933号の優先権を主張するものであり、当該出願を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0002】
本発明は、種々の移動式輸送装置に搭載されている内燃機関(「ICE」)から発生する排ガス等のガス混合物からCOを除去するための方法に関する。本発明は、CO除去用促進輸送膜と、その膜が吸収したCOの除去を促進する水蒸気スイープ技術とを利用している。
【背景技術】
【0003】
CO排出量の抑制は、炭化水素や化石燃料の製造業者、更にこれら燃料を使用する装置の製造業者や利用者を含むあらゆる人々の大きな関心事である。特に、自動車、トラック、バス、オートバイ、列車、航空機、船舶等の移動式発生源によるCOの発生及びそのCOの環境への放出には高い関心が寄せられている。発展途上国におけるこの種の装置の入手量は増加しており、所謂先進国に至ってはそれ以上であるため、CO、CH及び他の「温室効果ガス」によって及ぼされる影響への懸念は深まる一方である。
【0004】
COを捕捉して環境中に放出させないように貯留するための現在の試みは、アミン溶液を用いた化学的吸収に基づくものである。しかしながら、この試みは環境に優しいものとは言えず、コストが高く、その上「フットプリント」が比較的高いため、まだまだ許容できるものではない。高分子膜を使用してCOの分離・貯留を行う試みは、アミン溶液の使用に伴う問題がなく、上述の課題に対処できる可能性がある。しかしながら、次に述べるように、このような試みによる課題解決例は少ない。
【0005】
高温環境は高分子膜材料に大きな負荷を与える。高分子膜を用いたガス分離はよく知られているが、高温では膜の劣化や不活性化が起こるため、その使用はより低い温度条件下に限られていた。ガス混合物からCOを分離するために有用な膜材料(例えば、ポリエチレンオキシド「PEO」)は、フィード流中に酸素及び/又は水が存在するか否かに拘わらず高温で分解する(例えば、移動式装置に利用されているICEの運転に伴う高温下でCO又はHOと接触すると膜の分解が加速する傾向にある)。
【0006】
要求されている環境条件に耐え得る膜材料が知られているが、これらはCO又は他のガスの分離には不十分である。
【0007】
現在利用されているCO選択性膜は、溶解拡散機構又は促進輸送機構に基づいている。前者の方が一般的であるが、多くの場合、ガス選択性が高くなるにつれて透過性が低下する(又はその逆)という難点がある。
【0008】
促進輸送型ポリマーは興味深いガス分離特性を示し、通常のポリマーよりも過酷な条件下で高い性能を示す。本明細書に定義するように、本明細書に記載する本発明に使用されるCO分離用として考えられている促進輸送(「FT」)ポリマーは、ガラス様であり、親水性であり、熱安定性が高く、且つ圧縮強度が高く機械的に強固なものである。この構造の重要な点は、CO又は他のガスに対し強力な親和性を示す錯化剤又はキャリアが、従来のポリマー分子の骨格又は膜マトリクスに導入されていることである。これら錯化剤/キャリアは、ガス混合物中に存在する例えばCOと選択的且つ特異的に相互作用するため、膜によるCO分離を大幅に向上させる。FTポリマーに改質することができるこの種のポリマーとしては、例えば、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、キトサン(CS)、ポリ(アクリル酸アミド)(PAAm)、ポリ(ビニル)アミン(PVAm)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、更にはこれらのブレンド物及びコポリマーが挙げられる。上述のポリマーの骨格に組み込むことができ、COに対し強力な親和性を有する錯化剤又はキャリアとしては、塩化物、炭酸塩/炭酸水素塩、水酸化物、エチレンジアミン、ジエタノールアミン、ポリ(アミドアミン)デンドリマー、ジシアナミド、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアミノピリジン及びこれらの組合せ等の移動キャリア、更にはポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、各種アミンで変性されたコポリイミド並びにこれらのブレンド物及び共重合体等の固定キャリアが挙げられる。
【0009】
これらのFTポリマーをベースとする膜は、高密度(非多孔質)形態又は薄層コンポジット(多孔質膜内でFTポリマーを析出させた高密度の薄層)形態を有することができる。これらは、例えば、渦巻き状に巻回した形状又はプレート及び枠からなる形状で使用することもできるし、管状体の束及び/又は中空繊維の束で構成される形態の膜にすることもできる。このように得られた膜は、ガス混合物からCOを除去する方法に使用される。
【0010】
特許文献1、2及び3には共通の内容を開示している。これらの特許はガス混合物からのCOの分離に関する。スイープガスとしては、水蒸気ではなく「空気、酸素富化空気又は酸素」と定義されるガスが使用される。COの一部は膜の未透過側を通過する際に分離され、別の一部は捕捉工程で除去される。
【0011】
これら特許に使用されている膜は促進輸送ではなく溶解拡散機構を採用した膜である。
【0012】
エイセン(Asen)らに付与された米国特許(特許文献4)は、膜を通過するOを除去するためのスイープガスとして高温水蒸気、又は水蒸気とCOの混合物を使用することを開示している。本発明とは異なり、CO含有ガスからOが除去されるので、CO濃度の高い生成物が残留する。
【0013】
モーガン(Morgan)らに付与された米国特許(特許文献5)は、ガスから水分を除去するために中空糸膜技術をスイープガスと併用することを開示している。この場合も同様に、溶解拡散機構で機能する膜が使用されている。蒸発した水(水蒸気)を除去するためのスイープガスとして蒸発した水を使用することはないであろう。
【0014】
ペッツ(Pez)らに付与された米国特許(特許文献6)は、溶融材料を担持した膜を教示している。この材料はNからCOを除去するための可逆反応を起こすことができる。水蒸気によるスイープに関してもICEに関しても開示されていない。
【0015】
米国特許公開公報(特許文献7)は、輸送膜を通過させる前にCO含有混合物を冷却することを開示している。スイープガスとして水蒸気及び蒸発した水を用いることもICEに関することも記載されていない。
【0016】
上述の参考文献の全てを本明細書の一部を構成するものとしてここに援用するが、これら参考文献は、本願において特許請求する本発明を開示も示唆もするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第8,177,885号
【特許文献2】米国特許第8,025,715号
【特許文献3】米国特許第7,694,020号
【特許文献4】米国特許第6,767,527号
【特許文献5】米国特許第5,525,143号
【特許文献6】米国特許第4,761,164号
【特許文献7】米国特許出願公開第2011/0239700号
【特許文献8】米国特許出願公開第2008/0011161号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、化石燃料を利用する移動式発生源の内燃機関から発生する排ガス等のガス混合物からCOを分離するための方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この排ガスは、適切な温度、圧力及び流量条件下で膜の片面(「供給」側又は「未透過」側と称する)を通過し、COが選択的に膜を通過するようにすることができる。これを促進する条件(化学ポテンシャルの差)は、種々の手段で創出することができ、この手段としては、供給側、即ち未透過側の排ガスの圧力を高くすることによって、或いは透過物を水蒸気等のガスでスイープすることによって、膜の対向面(透過側)に真空を生じさせることが挙げられる。水蒸気スイープに関する技術は、例えば、フィンケンラス(Finkenrath)らの米国特許出願公開(特許文献8)を参照されたい。当該明細書を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。水蒸気スイープは本発明に好ましいが、この技法は単独の方法又は組合わせの方法のいずれでも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本明細書に記載した水蒸気スイープ及びポリマーを利用した本発明の実施形態。
図2】供給物圧(1.5atm)を固定し透過物圧を変化させて(本明細書においてPf/Pp比で表す)行った、本発明を利用した湿潤状態でのシミュレーションの結果。
図3】透過物流から水分を排除し、供給物圧(1.5atm)を固定し圧力比を変化させて行ったシミュレーションの結果。
図4】所望の量の分離を確実に行うために必要となる適切な膜面積を求めるシミュレーションの結果。
図5】乾燥状態、即ち水分排除後に供給物圧(1.5atm)及び透過物圧(1.0atm)を固定し乾燥生成物に対する水蒸気スイープ流量の比率を変化させて行ったシミュレーションの結果。
図6】水蒸気スイープ条件下において所望の分離を確実に行うために必要となる適切な膜面積を求めるシミュレーションの結果。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に本発明の一実施形態を示す。
内燃機関「10」等のエンジンに酸素含有空気流「11」及び炭化水素燃料であるフィード流「12」が共に供給される。エンジン運転時には排ガス「13」が発生する(これは、膜モジュールを適切に運転するのに適した温度に冷却される)。このような実施方式は当該技術分野において標準的なものであり、水蒸気「14」の生成にも利用される。水蒸気の生成は、高温排ガス用熱交換器から取り出すことができる熱を利用すること及び/又はエンジンの高温冷却液から取り出すことができる熱を利用することによって行うことができる。いずれの場合も熱交換器を利用して行われる。この排ガスは、排ガスからCOを選択的に抜き出すFT膜「15」の一方の面に送られ、これと同時に、生成した水蒸気は膜の他方の面に送られ、透過したガスが除去される。膜から離れた水蒸気流及び透過ガス流は排除段階(16)に送られる。排除段階(16)において、水蒸気、即ち気体状態の水は熱交換により凝縮して水となり、この水は水蒸気を生成させるためにエンジン(10)に戻される。一方、結果として生成したCO富化流は、濃縮及び貯留を行うため次の段階に送られる。次いでCOが低減された排ガスは大気「17」中に放出される。CO又は他の対象のガスは、適切な温度、圧力及び流量条件下で排ガスが膜の一方の面(所謂「供給」側、即ち未透過側)を通過する際に分離される。CO又は他のガスは膜内を透過して他方の面(所謂「透過側」)に移動する。これを促進するために推進力が必要な場合は、透過側に真空を生じさせるか、供給側、即ち未透過側のガスの圧力を高めるか、及び/又は、好ましくは、透過物を一定の圧力の水蒸気等のガスでスイープすることによって生じさせることができる。
【0022】
運転時には、排ガス及び水蒸気は互いに反対方向に移動するが、CO富化された水蒸気は続いて、更にCOを除去或いは他の処理を施すのに適切な位置へと移動することに留意されたい。
【0023】
特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、任意の二種のガス、例えばCO及びNを分離する性能は、(i)透過係数、即ち「P」と、選択性又は分離係数、即ちαA/Bとに支配される。前者は、ガス流束及び膜厚の積を膜の透過側と未透過側との分圧差で除した値である。後者は、ガス透過率の比(「P/P」)(Pは透過率が高い方のガスの透過率であり、Pは透過率が低い方のガスの透過率である)から得られる値である。透過率が高い方が、所与の量のガスを処理するために必要な膜のサイズが小さくなり、また、選択性が高い方がより純度の高い生成物が得られるため、透過率も選択性も高いことが望ましい。
【0024】
次の実施例に本発明の操作例を示す。
【実施例】
【0025】
次に示す実施例においては、供給物である混合排気ガスからCOを除去するための促進輸送膜と水蒸気スイープとを併用に関するシミュレーションについて詳述する。
【0026】
排ガスの組成をCO(約13%)、N(約74%)及びHO(約13%)とした。これは炭化水素燃料を使用する燃焼機関から発生する排ガスの代表的な組成である。
【0027】
シミュレーションは、上述した組成の混合ガスからCOを30%回収するように設定し、排ガス流量を28.9gmol/分とした。供給物及び透過物の圧力をそれぞれ1.5atm及び1.0atmとし、スイープ工程に水蒸気を使用した。結果を図5に示す。図2〜4は、図5とは異なり、スイープを行わない条件下で、供給物の圧力を固定(1.5atm)し透過物の圧力を変化させた場合の結果を示している。
【0028】
シミュレーションに用いる理論上の膜は、CO透過率を4000バーラー(1バーラー=10〜10cm・(STP)・cm・cm−2−1cmHg−1)、CO/N選択性を約400、水の透過率を15000バーラーとした。2種類の厚みのコーティング(即ち10.0μm及び1.0μm)について試験を行った。
【0029】
供給物/透過物の圧力の比(Pf/Pp)の効果及び上述したコーティングの厚みを含む条件について評価を行った。
【0030】
図3から、Pf/Pp比が4以上であった場合に高純度(90%超)のCOが得られることが分かる。但しこの実験では透過側での水蒸気スイープを行わなかった。
【0031】
図2及び3から、水及びCOの透過率が非常に高ければ、透過側でスイープ用水蒸気を使用する効果と類似の効果が得られることが分かる。
【0032】
図4は、上述した2種類の厚みのコーティングに関する、排ガスからCOの30%を回収するのに必要な面積(m)を示している。この図から、必要とされる膜の面積は、比率の増加及び膜厚の減少に伴い急激に低下したことが分かる。
【0033】
追加実験として、上述した混合ガスからのCOの分離における水蒸気スイープ流量/透過ガス流量の比に関するシミュレーションを行った。結果を図5及び6に示す。X軸を比率(Qw/Qd)とした。排ガスの流量並びに供給物(1.5atm)及び透過物(1.0atm)の圧力を固定した。
【0034】
総括すると、シミュレーションの結果から、透過率の高い理論上の促進輸送膜を、本明細書において検討した水蒸気スイープを行う手法に用いると、乾燥透過物流量に対するスイープ水蒸気流量の比を4.5以上に設定した場合に高いCO濃度(CO純度が97%までの範囲)が得られることが分かる(図5)。
【0035】
図6は、検討した2種類の厚みのコーティングに関する、排ガスからCOの30%を回収するために必要な面積(m)を示すものである。この図から、スイープ用水蒸気の比率が増加し、膜厚が減少するにつれて、必要な膜の面積が急激に低下したことが分かる。
【0036】
図4及び6から、膜厚が薄く膜の透過率が高いほど必要な膜の面積が小さかったことから、本手法には透過率の高い膜が必要であることが分かる。
【0037】
上述の実験は、本発明の様相、特に、促進輸送膜を圧力推進技術及び水蒸気スイープ技術と併用することによって、ガス、特にCOを混合ガス流から除去するための方法を説明するものである。実際には、内燃機関からの排ガス等の混合ガス流を促進輸送膜の第一面に沿った流路を通過させることにより、膜は特定のガス(CO等)を特異的に透過させる。COの場合、「FT」膜は、好ましくは、COの透過率が少なくとも1000バーラーである。
【0038】
スイープ流体(好ましくは水蒸気)は、例えば、混合ガス発生源(内燃機関等)の冷却系の作用を介して生成する。水蒸気(この構成又は他の構成に由来する)は、混合ガス流が通過する面に対向する面に沿って、混合ガス流と反対方向に流れる。CO又は他のガスはスイープ液中に移動し、系外、例えば、更なる処理に付す前の一時的な貯留装置へと運ばれる。
【0039】
図示のように、本発明が実施可能である限り、圧力、膜圧、ガス流量及び他の因子に関して他の条件を用いることができる。
【0040】
本発明の他の特徴は当業者にとって明らかであり、更なる説明は必要ないであろう。
【0041】
本明細書で用いる用語及び表現は説明の目的で使用され、限定の目的では使用されない。このような用語及び表現の使用には、本明細書に記載又は示される特徴又はその一部の均等物を除外する意図はなく、本発明の範囲内で種々の変形例が可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0042】
10 内燃機関
11 空気
12 HC燃料
13 排ガス
14 冷却液から生成した水蒸気
15 膜モジュール
16 排除段階
17 COが低減された排ガス(大気中へ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6