【文献】
T.TAUBNER,R.HILLENBRAND&F.KEILMAN,Performance of visible and mid-infrared scattering-type near-field optical microscope,Journal of Microscopy,2003年 6月,Vol.210 Pt 3,P311〜314
【文献】
Thomas Taubner,Fritz Keimann,Rainer Hillenbrand,Effect of Tip Modulation on Image Contrast in Scattering-Type near-Field Optical Microscopy,Journal of the Korean Phytsical Society,2005年 8月,Vol.47,P8213〜8216
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
無開口走査型近接場光学顕微鏡(apertureless near-field scanning optical microscopy:ANSOM)は、光の回折限界を超える空間分解能を提供する。しかしながら、ANSOMは、幾つかの分光用途において、解決すべき主要な課題があり、これは、直接検出可能な近接場散乱信号が、吸収プロファイル(absorptive profiles)ではなく、分散プロファイル(dispersive profiles)を有するという点である。吸収プロファイルは、通常、赤外光(IR)吸収分光法から得られるスペクトルのピークの集合である。化学的識別のために作成されている遠方場スペクトルバンク(far field spectral banks)は、混合物の吸収プロファイル特徴を含む。したがって、分散プロファイルが検出される既存のANSOMは、赤外光ナノ分光法(nanospectroscopy)にとって不便なツールであり、物質の巨視的試料を特徴付ける既存のスペクトルバンクを利用してナノスケールの化学識別を達成することができない。
【0004】
現在、ANSOMの具体例において所望の吸収プロファイルを取得するための幾つかの手法がある。擬似ヘテロダイン検波(pseudo-heterodyne detection)と呼ばれる近年の技術の1つは、ANSOM先端発振(ANSOM tip oscillation)及び基準位相変調(reference phase modulation)の組合せ基準周波数におけるロックイン検波(lock-in detection)に基づいている(「Ocelic, N., A. Huber, and R. Hillenbrand, "Pseudoheterodyne detection for background-free near-field spectroscopy" Applied Physics Letters, 2006.89(10)」参照)。これによって、近接場散乱光の位相が得られるが、擬似ヘテロダイン技術には、2つの課題がある。第1に、ロックイン検波において、主帯域に代えて、弱い側帯波を検出するため、信号レベルが低いという課題がある。第2の潜在的課題は、近接場の虚数部ではなく、近接場散乱信号の位相を測定するという点である。近接場散乱信号の位相の値と虚数部とは、近接場散乱の実数部が強いという条件下では、良好に近似するが、この近似は、常に正しいわけではない。
【0005】
吸収プロファイルを取得する第2の技術では、コヒーレント広帯域光源を使用して、非対称フーリエ変換赤外光分光法(asymmetric Fourier transform infrared spectroscopy)を実現する。これについては、「Huth, F., et al., "Nano-FTIR Absorption Spectroscopy of Molecular Fingerprints at 20 nm Spatial Resolution", Nano Letters, 2012.12(8): p. 3973-3978;」及び「Xu, X.G., et al., "Pushing the Sample-Size Limit of Infrared Vibrational Nanospectroscopy: From Monolayer toward Single Molecule Sensitivity" The Journal of Physical Chemistry Letters, 2012.3(13): p. 1836-1841.」の2つの記事に開示されている。このタイプの技術は、多重化技術の能力を提供するが、コヒーレント広帯域光源が必要であり、これは、高価であり(2012年の時点で約30万米ドル)、レーザエネルギが低く、したがって、信号品質が低く、実用性に制約がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に基づいて改良された無開口走査型近接場光学顕微鏡(ANSOM)の構成を示す図である。
【
図2】先端/試料の画像双極子モデルを示す図である。
【
図3】先端が試料に接触する場合(太線)と先端が半径×1だけ表面から離れる場合(細線)の2つの条件についての先端/サンプル分極率の数値シミュレーション、及び参照のために試料の吸光係数(吸収プロファイル)(破線)を示す図である。
【
図4】(a)は、先端振動周期の関数として検出可能な光信号波形を示す図である。(b)は、先端振動周波数において複数の高調波を導出する
図4(a)の波形に対応するフーリエ解析を示す図である。
【
図5】(a)〜(e)は、それぞれプロファイルの右上に示す0〜πまでの異なる参照位相値(referece phase values)の下での第2高調波ロックイン読出プロファイルを示す図である。
【
図6】(a)は、ロックイン読出に対する参照振幅の影響を示す図である。(b)は、ロックイン読出に対する位相雑音の影響を示す図である。
【
図7】(a)は、ANSOM走査の間、タッピングモードAFMで取得された窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT:boron nitride nanotube)のトポグラフィを示す図である。(b)は、試料と非共鳴に調整した中赤外光源を用い、π/2ホモダイン条件下で取得されたANSOM画像を示す図である(窒化ホウ素ナノチューブ(1353cm
−1))。(c)は、窒化ホウ素ナノチューブ(1371cm
−1)と共鳴するように調整したレーザ光源を用いるANSOM画像を示す図である。(d)は、窒化ホウ素ナノチューブ(1401cm
−1)の弱い共鳴帯に調整したレーザ光源を用いる場合のANSOM画像を示す図である。(e)は、
図7(a)に点1として示す特定の箇所における正規化された拡散強度(ANSOM電圧をレーザパワーで除算した値)から再構築されたスペクトルを示す図である。(f)は、
図7(a)の点2として示す特定の箇所における正規化された拡散強度(ANSOM電圧をレーザパワーで除算した値)から再構築されたスペクトルを示す図である。
【
図8】(a)は、安定位相フィードバックロックの具体例によるπ/2ホモダイン位相における窒化ホウ素ナノチューブの振動感応画像を示す図である。(b)は、安定位相フィードバックロックの具体例によるゼロホモダイン位相における窒化ホウ素ナノチューブの振動感応画像を示す図である。
【
図9】補助的な位相安定化デバイスを含む装置の実施形態のスキームを示す図である。
【
図9a】
図9の装置の一部を構成する干渉計の参照アーム内のリフレクタを位置決めする位置決め機構の側面図である。
【
図10】(a)は、
図9内の位相安定化デバイスをオフにしたときの位相ジッタリングを示す図である。(b)は、
図9内の位相安定化デバイスをオンにしたときの位相ジッタリングを示す図である。(c)は、
図9に示す位相安定化デバイスによって検出及び補償された1000秒間に亘る干渉計のドリフトを示す図である。
【
図11】
図9に示すこの実施形態の器具を用いる場合の、2つの交差する窒化ホウ素ナノチューブの近接場画像を示す図である。
【
図12】(a)は、
図9に示す器具の位相安定化機能を用いて、2つの交差する窒化ホウ素ナノチューブを1390cm
−1の赤外周波数で撮影した近接場画像を示す図である。(b)は、位相安定化機能をオフにした状態で、
図12(a)と同じ条件で撮影した近接場画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで説明する実施形態は、包括的に言えば、ホモダイン検波を用いて、近接場赤外光散乱から吸収スペクトルを取得する方法に関連する。必要に応じて、本発明の実施形態をここに開示する。但し、ここに開示する実施形態は、例示的なものに過ぎず、多くの様々な代替の形式によって本発明を具現化できることは明らかである。
【0013】
図は、実際の縮尺を反映しておらず、特定の要素の詳細を示すために幾つかの特徴を誇張又は矮小化していることがあり、また、新規な側面を不明瞭にしないために、関連する要素を省略していることもある。したがって、ここに開示した特定の方法的、構造的及び機能的な詳細は、限定的なものとは解釈されるべきでなく、特許請求の範囲の基礎及び当業者が本発明を様々に実施するための代表的な基礎としてのみ解釈される。以下では、説明を目的とし、限定を意図することなく、ホモダイン検波を用いて、近接場赤外光散乱から吸収スペクトルを取得する方法を開示する。
【0014】
ここで用いる「約」、「おおよそ」等の用語は、濃度、温度又は他の物理的若しくは化学的な特性若しくは特徴に関連して用いられる場合、特性/特徴の範囲の上限及び下限に存在する僅かな差異を含むことを意味する。
【0015】
ここで使用する「ホモダイン検波」とは、同じ光源からの基準放射を混合して、混合場の強度変化を検出することによって、振幅及び位相が変化する放射場を検出する方式を意味する。ANSOMにおいては、ホモダイン検波は、先端−試料界面(tip-sample interface)で散乱した光を、参照光場(reference light field)に混合して、2乗光検出器によって検出を行うことを意味する。参照光場の振幅及び位相は、減衰及び光路遅延によって制御できる。また、ホモダイン検波は、光信号を増幅し、信号対雑音比を向上させる。
【0016】
ここで用いる「無開口走査型近接場光学顕微鏡(apertureless near-field scanning optical microscopy:ANSOM)」という用語は、鋭い走査プローブ先端(scanning probe tip)によって、試料の近接場でエバネセント波を散乱させることによって遠方場回折限界を克服してナノ構造を調べるための顕微鏡方式を指す。多くの文献では、この方式を散乱型走査近接場顕微鏡(scattering type scanning near-field microscopy:s−SNOM)とも呼んでいる。
【0017】
ここで用いる「赤外光ナノ分光法(nanospectroscopy)」とは、数十ナノメータより細かい空間分解能で、ナノメータサイズの試料から、赤外吸収プロファイルを反映する赤外光スペクトルを取得する方式を意味する。
【0018】
ここで用いる「ナノスケールの物体」という用語は、1μmより小さい関心寸法を有し、したがって、遠方場分光法では、電磁波スペクトルの近赤外光及び中赤外光部分の回折限界のために、空間的に解像できない物体(object)を意味する。
【0019】
図1は、ANSOM装置を用いて本方法を実現するシステム10を示している。システム10は、2つの部分を含み、第1の部分は、典型的な干渉計ANSOM装置(interferometric ANSOM apparatus)であり、第2の部分は、改良精密位相制御部(precise phase control modification)である。典型的なANSOM装置は、試料走査原子間力顕微鏡(sample scanning atomic force microscope)12と、周波数同調中赤外光(IR)レーザ光源14と、テルル化カドミウム水銀(mercury cadmium telluride:MCT)IR検出器16と、ロックイン増幅器(lock-in amplifier)18と、補助コンピュータ20と、ホモダイン検波を行うための参照アーム24を有するマイケルソン干渉計22とを備える。
【0020】
改良精密位相制御部を提供するシステム10の干渉計22は、ビームスプリッタ40、42、44と、反射ミラー50(反射ミラー50は、1つのスポット又は位置、この場合、AFM先端にレーザ光をフォーカス又は集光する限りレンズ等の何らかの集光要素と置換してもよい。)と、He−Neレーザ30と、He−Ne検出器32と、圧電素子及びコントローラ34と、圧電ステージの位置を調整するためのコントローラ36を含むフィードバック要素とを備える。圧電ステージ及びコントローラ36は、ホモダイン位相調整のために参照アーム24内のミラー38の変位を正確に制御する。また、システムは、この典型的なANSOMの具体例に加えて、ホモダイン位相のドリフトを防止するために、He−Neレーザ反射の光干渉に基づく光路安定化フィードバック機構を含んでいてもよい。なお、後述するフィードバック回路のためのHe−Neレーザは、他の波長のレーザに置換してもよいが、He−Neレーザは、入手しやすく、安価であるという利点がある。He−Ne検出器も、同様の理由で好ましい。また、コントローラ36は、独立したコントローラ(コンピュータ又はマイクロプロセッサベースのコントローラ)として示されているが、命令/アルゴリズムによってコンピュータ20をプログラミングして、必要なフィードバックを圧電ステージ34に提供してもよい。すなわち、フィードバックコントローラ36は、コンピュータ20から独立したコンピュータコントローラである必要はない。
【0021】
なお、ミラー38は、完全なリフレクタではなく、部分的なリフレクタであってもよく、IR光場のための可変減衰器を使用することなく、参照光ビームを適切な強度範囲に減衰させることができる。
【0022】
原子間力顕微鏡12は、走査プローブ先端の真下にある試料を、ナノメータ精度でラスタ走査し、先端−試料距離を近距離に維持しながら、先端を機械的に振動させる機能を提供する。中赤外光レーザ光源14は、試料の赤外吸収帯域をカバーする同調放射を提供する。なお、光源14は、コヒーレント光の連続ビームを出射できる周波数同調コヒーレント光源であってもよく、パルス型コヒーレント光源であってもよい。
【0023】
図1に示すように、MCT IR検出器16は、赤外光放射を電圧信号に変換し、この電圧信号をロックイン増幅器18に供給する。ロックイン増幅器18は、先端の機械的な発振周波数での電圧変動と高調波周波数を復調する。これは、
図1に示すように、ロックイン増幅器18に接続されているAFM12によって実現される。ロックイン増幅器18は、AFM12及びMCT検出器16からの入力に基づいて、MCT電圧信号を、AFM先端8の発振周波数の高調波(第1、第2及び第3高調波等)に復調する。
【0024】
ロックイン増幅器18に接続されたコンピュータ20は、試料がAFM先端8の真下で走査されている間、ロックイン復調信号を記録し、π/2ホモダイン条件下の試料の吸収に基づくANSOM画像を生成し、コンピュータ画像ディスプレイ上に分光マッピング(spectroscopic mapping)を視覚的に表示する。吸収スペクトルは、π/2ホモダイン条件での複数のANSOM画像走査から、IR周波数を高めながら同じ位置で得られるロックイン信号を抽出することによって構築され、これを画像ディスプレイ上に表示できる。
【0025】
コンピュータ20は、原子間力顕微鏡12の一部であってもよく、又は独立したコンピュータであってもよく、何れの場合も、ロックイン増幅器18からの第2高調波以上の高調波成分からナノスケールの物体の近接場走査光学顕微鏡画像を形成して、この画像を画像ディスプレイに表示する命令によってプログラミングされる。
【0026】
図1に示すように、AFM12の出力は、ロックイン増幅器18に供給され、ロックイン増幅器18からの出力(第2高調波以上の高調波)は、コンピュータコントローラ20に供給される。これに代えてロックイン増幅器18の出力(第2高調波以上の高調波)をAFM12に供給し、AFM12がコンピュータ20に情報を提供するようにプログラミングしてもよい。何れのオプションも同じ機能を実行する。
【0027】
物理的なロックイン増幅器を用いることに代えて、この機能をコンピュータ上の「ソフトウェア」を用いるロックイン増幅器によって置換してもよい。この場合、ソフトウェアベースのロックイン増幅器は、高速A/D(アナログ/デジタル変換器)による波形デジタル化及びフーリエ変換解析を用いて、物理的なロックイン増幅器18と同様に機能する。ロックイン機能は、ロックイン又はこれに代わる解析を実行して近接場吸収信号を抽出する、A/D変換器及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array:FPGA)プロセッサの組によって置換できる。
【0028】
参照アーム24と試料/先端アーム27とを含むマイケルソン干渉計22を用いて、先端散乱光と参照光ビームとの間の振幅及び位相の変化を検出する。参照アーム24は、コンピュータ制御の圧電ステージ34を有し、参照アームの光路を正確に変更して、後述するπ/2ホモダイン条件を実現する。
一実施形態では、フィードバックデバイスは、光学ベースのフィードバックデバイスであってもよい。この実施形態では、フィードバックシステムの光学的部分は、IR光源14より波長が短いコヒーレント光源30を含む。これによって、参照アームを用いて感度及び検出性が向上する。一実施形態は、He−Neレーザ30、He−Ne検出器32及び様々なビームスプリッタ40、42、44を含む。632.8nmの小さいビーム直径のHe−Neレーザビームは、中赤外ビーム(mid-IR beam)と同じ方向に伝播して、プローブ先端領域に入り、走査プローブ先端8のカンチレバ部分(図示せず)に衝突して、反射する。また、He−Neレーザビームの一部は、ビームスプリッタ40を通過し、参照ミラー38で反射し、ビームスプリッタ40によって再結合され、中赤外光ビームから分離され、He−Ne検出器32によって検出される。カンチレバ散乱場と、参照アーム24内で反射したHe−Ne光場との間の干渉によって、2つの干渉計アーム24、27の間の光路ドリフトが明らかになる。コンピュータ制御のフィードバックユニット36は、適切な時間間隔で圧電ステージ34の位置をシフトして、He−Ne光の干渉コントラストを回復させることによって強度を維持するために使用される。
【0029】
上述したフィードバック制御システムは、光位相差を維持する光学ベースのフィードバックシステムであるが、他のフィードバックシステムを用いてもよい。
【0030】
例示的な実施形態では、コンピュータ制御のフィードバックユニット36は、コンピュータと、A/Dカードと、コンピュータプログラムとを含み、IR光についてπ/2条件でHe−Ne検出器32から信号値を読み出し、圧電ステージ34の電圧を調整することによって試料走査の間、同じ信号値を維持する。当業者にとって明らかなように、一般的に、フィードバックは、干渉計22の光位相差φを安定させることを目的として、多くの手法で行うことができる。
【0031】
なお、コヒーレント光源は、広帯域赤外光源であってもよく、周波数選択デバイスを含み、周波数選択デバイスは、広帯域赤外光源の出力に設け、干渉計に到達すべき特定の周波数の光を選択するように構成してもよく、又は検出器の入力に設け、検出器に到達すべき特定の周波数の光を選択するように構成してもよい。周波数選択デバイスは、単にフィルタであってもよく、フーリエ変換干渉計であってもよい。
【0032】
コヒーレント光源は、周波数同調狭帯域コヒーレント光源(frequency tunable narrow band coherent light source)であってもよい。
【0033】
実際の動作では、周波数同調レーザ光源14によって生成されたレーザビームは、一部が50:50IRビームスプリッタ40を通過し、一部が50:50IRビームスプリッタ40から反射する。IR光ビームの反射した半分は、無色の集光要素、例えば、軸外放物面鏡50によって試料に反射し、表面と弱く相互作用する原子間力顕微鏡先端8の発振する頂点に集光される。散乱されたIR光は、同じ集光要素50によって集光され、MCT IR検出器16に方向付けられる。ビームスプリッタ40を通過するIR光ビームの他方の片半分は、ホモダイン位相調整のために圧電ステージ34に搭載されているミラー38によって再帰反射する。再帰反射光及び散乱IR光は、同じIRビームスプリッタ40によって再結合され、適切な前置増幅器を有するMCT IR検出器16によって検出される。MCT検出器16からの電圧信号は、ロックイン増幅器18にカップリングされ、先端発振周波数の第2高調波以上の高調波で復調される。ナノスケールの物体上を先端8の位置が走査すると、ANSOM画像が記録される。適切なφ=π/2ホモダイン条件は、金被覆基板等の試料の既知の非共鳴領域に亘って第2高調波以上の高調波でロックイン復調信号を最小化することによって達成される。
【0034】
また、適切なφ=π/2ホモダイン条件は、干渉計22の2つの干渉計アーム24、27の光路長を手動で正確に一致させ、IR光源14のレーザ波長の1/8の距離で干渉計アーム24の長さを相殺することによっても達成できる。
【0035】
換言すれば、相対位相差は、参照アームと試料アームとの間の光路長差によって測定された参照アームの光ビームと試料アームの光ビームとの間の絶対光位相差を、コヒーレント光源の波長で除算し、2πを乗算した値を含む。
【0036】
φ=π/2(又は−0.5π)ホモダイン条件は、機械的剛性を有する器具と、He−Ne光路フィードバックとによって維持される。なお、補助フィードバックレーザ30は、原則として如何なる可視光レーザであってもよく、He−Neレーザに限定されない。
【0037】
図2に示すように、ANSOMは、鋭い金属走査プローブ先端8を用いる。光場の照射の下で、鋭い先端は、光の周波数における分極率に従って電荷分極(charge polarization)を発生させる。このような電荷分極は、測定される試料における電荷再分布を含み、総合的な先端−試料分極率がもたらされる。この具体例では、画像双極子近似(image dipole approximation)を用いて、このような相互作用を記述したが、他の近似を用いてもよい。
【0038】
双極子としての金属先端22の分極率は、以下のように表すことができる。
ここで、ε
tは、金属先端22の誘電関数である。先端及び試料の総分極率は、以下のように表される。
ここで、rは、先端半径であり、dは、試料への距離である。βは、試料の誘電関数であるεを用いて、β=(ε−1)/(ε+1)として定義される。式(1)によって、先端−試料距離、光周波数、並びに試料及び先端材料の誘電関数の関数として、近接場の拡散の数値的シミュレーションを行うことができる。
【0039】
図3は、先端が試料に接触している場合(太線)及び先端半径×1だけ離間している場合(細線)の有効分極率の振幅のシミュレーションのプロットを示している。有効分極率のスペクトルによって、細い破線として示す分子吸収プロファイルに対する分散プロファイルが推定される。このシミュレーションは、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)の遠方場測定から取得された分光器データに基づいている。
【0040】
先端8及び試料から散乱した光の検出は、干渉計的に(interferometrically)行う。位相が適切に制御された参照光場を散乱光に混合し、ホモダイン増幅を行う。このようなホモダイン処理を表す数式は、以下の通りである。
Aは、参照アーム24から由来し、ミラー38で反射し、MCT IR検出器16に方向付けられる光の振幅である。Eは、損失がないと仮定した場合のIR光源14からの入射光の振幅である。角度φは、干渉計22の2つのアーム24、27内の光ビーム間の光位相差である。
【0041】
なお、アーム24の振幅Aと、参照ビーム及び先端8から散乱した試料ビームの間の位相差φは、光学減衰及び圧電ステージ34を用いる可変経路遅延によって制御される。ここに開示する手法では、φの値をπ/2に選択又は設定することによって、有効分極率の虚数部からの貢献が最大化され{sin(π/2)=1}、同時に、有効分極率の実数部からの貢献が最小化される{cos(π/2)=0}。また、これにより、基板等の試料の非共鳴位置からの拡散を最小にすることによって、π/2の実験的な条件を設定できるようになる。
【0042】
なお、φをπ/2に設定することによって、有効分極率の実数部の貢献が最小化され、有効分極率の虚数部の貢献が最大化されるという最良の結果が得られるが、この方法は、π/2前後の位相差であれば、π/2程の最良の結果が得られないまでも、有効である。本発明者らは、φの値を0.4π〜0.6π(又は−0.4π〜−0.6π)に設定してもよいと考えているが、これらの値は、式(2)に示すように、有効分極率の虚数部からの貢献を最大化し、同時に、有効分極率の実数部を最小化することについて最大限の利益が得られるφの値を0.5π(又は−0.4π)に設定した場合に対しては劣る。
【0043】
ホモダイン検波された波形は、インターミッテントコンタクト動作(intermittent contact operation)における走査プローブ先端の垂直位置の周期的な発振を仮定することによって、I
total対時間でシミュレートできる。先端−試料の有効分極率対先端発振の例示的なプロットを
図4(a)に示す。対応するロックイン復調を
図4(b)に示す。先端−試料分極率からの非高調波成分は、非基本高調波(n>=第2)から抽出され、測定において、遠方場と近接場の信号が区別される。抽出された第2高調波は、後のシミュレーション図で使用される。
【0044】
この数値シミュレーションは、参照位相を制御して行ってもよい。
図5(a)〜(e)は、参照場振幅Aを先端−試料散乱光の10倍とし、増分をπ/4として、0からπの間のφ値によってホモダイン検波されたロックイン第2の高調波復調を比較して示している。参照位相をφ=0.5πに設定した場合、ロックイン検波された信号は、吸収プロファイル(
図5(c))を示し、他の位相値では、分散プロファイル、又はロックイン機能と分散プロファイルの組合せが示されることが明らかである。
【0045】
検出された信号のロックイン復調から直接的に吸収プロファイルを得るための条件は、φ=0.5πのみではなく、参照振幅Aも近接場散乱光場の振幅より十分大きい必要がある。数値シミュレーションによって、位相をφ=0.5πに固定した状態での、近接場拡散の振幅の20%、100%及び500%といった3つの異なる値を有するAの効果を調べることができる。この結果を
図6(a)に示す。これによって、Aの閾値は、近接場拡散の振幅の約5倍であると推定することができる。この閾値より下では、位相を正しく設定していても、ロックイン読出は、分散プロファイルを有する。
【0046】
ここに提案するANSOMにおけるπ/2移相ホモダインの処理のロバスト性を確かめるために、雑音への応答を評価する必要がある。値が制御された雑音を数値モデルに加えることによって、この処理の位相安定性のための閾値を発見することができる。この結果を
図6(b)に示す。位相雑音の閾値は、0.3πであると推定され、これは、6μmの波長における約0.9μmの光路に対応する。光学参照アーム24内での光の二重通過を考慮すれば、アームの安定経路長は、約450nmのみであり、これは、剛性を有する安定した干渉計22の機械設計で達成できる。
【0047】
図1に示すような短波長He−Neレーザを採用することによる干渉コントラストの維持に基づくフィードバック機構36によって、このホモダイン位相の安定性要件を満たし、ナノスケールのサンプリング領域から高品質の吸収スペクトルを提供することができる。
【0048】
本発明者らは、実験的に、金基板上の窒化ホウ素ナノチューブにおける1μm×1μmの面積より小さい領域に対して、ANSOMのためのπ/2移相ホモダイン方法を実施した。振動感応画像(vibrationally sensitive images)及び近接場吸収スペクトルを得た。
図7(a)は、ANSOM走査の間にインターミッテントコンタクト(intermittent contact)モードAFMで得られたトポグラフィ(topofraphy)を示している。
図7(b)は、中赤外光源をこのチューブの共鳴外(off resonance)に調整したπ/2ホモダイン条件下で取得されたANSOM画像を示している(1353cm
−1)。
図7(c)は、レーザ光源を窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)に共鳴するように調整したANSOM画像を示している(1371cm
−1)。π/2位相ホモダイン条件でレーザを試料に共鳴させると、金基板からの拡散が小さいまま、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)からの散乱光が著しく増加する。
図7(d)は、レーザ光源を窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)の共鳴帯に調整したANSOM画像を示しており(1401cm
−1)、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)の右下側及び上側のチューブの端部で共鳴が強くなっている。
【0049】
π/2ホモダイン条件下での拡散強度の周波数依存性によって、複数の化学感応イメージング走査から吸収スペクトルを再構築することができる。
図7(e)及び
図7(f)は、(
図7(a)でマーキングしている)窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)上の箇所1及び2における正規化された拡散強度(ANSOM電圧をレーザパワーで除算した値)から再構築されたスペクトルを示している。(
図7(e)及び
図7(f)に示す)ローレンツフィッティングを行うことによって、2つの箇所から振動共鳴の位置及び幅が明らかになり、これによって、1つのナノチューブ内の成分変化をも知ることができる。π/2ホモダイン条件下で収集されたANSOMの実験結果は、ナノメータ寸法の個々の物体の振動感応イメージング及び赤外光ナノ分光法を示している。
【0050】
位相フィードバックの一実施形態では、走査プローブ先端のカンチレバ領域及び参照アームの光に対するその散乱光の位相に関するフィードバックによって、遠方場散乱光を用いる。周波数F(通常500Hz)における小振幅D(40nm未満)の変調を、その中央の位置を上述した処理で説明したπ/2位相位置の近くに設定して、参照ミラーに適用する。2チャンネル高速データカード取得カード(two-channel fast data card acquisition card)を用いて、検出器からの検出信号及び電圧の変調波形を取得する。コンピュータを用いて、ロックイン検波の基準周波数における変調周波数で、信号に対するロックイン検波を行う。ロックイン検波からの第1及び第2の高調波復調出力の振幅及び位相の両方を記録することによって、第1高調波及び第2高調波の振幅A
1、A
2及び第1及び第2のロックイン位相φ
1、φ
2が得られる。拡大率は、R
21=J
1(4πD/λ)/J
2(4πD/λ))を用いて算出される。J
1及びJ
2は、第1種のベッセル関数である。波形W(t)は、式W(t)=A
1sin(Ft+φ
1)+R
21A
2sin(Ft+φ
2)によって振幅に統合される。そして、コンピュータプロセッサによって、高速フーリエ変換ルーチンを用いて波形を処理し、周波数Fにおける位相値φ
Fを得る。値φ
Fは、参照光と、走査プローブのカンチレバ部分から散乱する光との間の相対位相差に対応している。フィードバックループは、生じる可能性があるドリフト又は長期変動に対して、圧電ステージをオフセットすることによってφ
Fの値をロックするために使用される。この具体例によって、振動感応イメージングの品質が向上する。
【0051】
この位相フィードバックメカニズムによって、より高品質の振動感応近接場画像が得られた。
図8(a)は、π/2位相による500nm領域の1390cm
−1における窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)の振動感応近接場画像(vibrational sensitive near-field image)を示している。
図8(b)は、位相以外を同じ構成として得られた同位相画像を示している。この場合、
図7(b)〜(d)と比べて、画像品質が大幅に向上している。
【0052】
位相フィードバックの他の実施形態では、近接場顕微鏡内の赤外光レーザの同じ干渉計において、補助レーザを使用し、干渉計の光路をフィードバックする。2つの干渉計アーム間の補助レーザの光干渉を検出し、干渉計アームの補助レーザの位相面間の差分を算出し、これを用いてフィードバックを行う。フィードバックデバイスは、補助レーザについて一定の波面位相差を維持する。
【0053】
図9は、この実施形態のスキームを示している。平面ミラー60は、赤外光レーザ14の集光放物面鏡50に装着されている。補助レーザ62が出射するレーザビーム64は、レーザ14からの赤外光レーザと同じビームスプリッタ40によって2つのビームに分割される。補助レーザビーム64の一部は、放物面鏡50に装着された追加的ミラー60から反射される。他の部分は、圧電ロッド70に装着されたミラー66から反射される。圧電ロッド70は、より大きい圧電ステージ34に固定されており、圧電ステージ34には赤外光のための参照ミラー38が装着されている。関数発生器72は、正弦波電圧波形を生成して、約100nmの発振振幅Dによって周波数f(数百Hz)で圧電ロッド70を駆動する。レーザ62(例えば、HeNe又はダイオードレーザ)からの波長λの補助レーザは、干渉計22に誘導されて、圧電ロッド70上のミラー66で反射され、マイケルソン干渉計を構成する。
図9aは、干渉計の参照アーム内のリフレクタを位置決めする位置決め機構の側面図である。圧電ロッド70の一端は、圧電ステージ34の可動部品に連結されている。圧電ロッド70の他端には、ミラー66が装着される。関数発生器72からの正弦波電圧波形によって、圧電ロッド70は伸縮し、したがって、正弦波的動きでミラー66の位置を前後に駆動する。ミラー38は、圧電ステージ34の可動部品に装着されている。圧電ステージ34の固定部分は、器具の他の部分に対して固定されている。圧電ステージ34の可動部品の位置は、コンピュータ20の多機能カードからの外部印加電圧又はユーザが操作可能なノブによって調整できる。
【0054】
フォトダイオード76は、マイケルソン干渉計から補助レーザ62の光信号を読み出すために使用される。フォトダイオード76からの電圧信号は、多機能カードを備えるコンピュータ20に供給される。多機能カードは、関数発生器72の正弦波周波数に設定された基準周波数の入力によって、補助レーザ信号に対するロックイン検波を実行するアルゴリズム/命令によってプログラミングされている。フォトダイオード76からの信号に対する多機能カードによるロックイン検波の第1高調波(f)及び第2高調波(2f)の振幅は、A
1及びA
2として読み出される。
【0055】
多機能カードによるロックイン検波の第1高調波及び第2高調波の位相は、φ
1及びφ
2として読み出される。ロックインから読み出される位相は、−πからπまでの範囲である。アルゴリズムを用いて、A
1、A
2及びφ
1、φ
2を、干渉計22内の補助レーザビームの位相差に変換する。この実施形態で用いるアルゴリズムは、以下の通りである。拡大率R
21は、R
21=J
1(4πD/λ)/J
2(4πD/λ)として算出される。J
1及びJ
2は、第1種のベッセル関数である。第1のロックイン高調波及び第2のロックイン高調波からの位相角の符合(sign)は、S
1=sign(φ
1)及びS
2=sign(φ
2)として算出され、すなわち、位相角が正のとき、S=1であり、位相角が負のとき、S=−1である。
【0056】
干渉計22内の補助レーザビームの位相差は、S
2=1の場合、Δφ=atan(S
1R
21A
1/A
2)+0.5πと算出され、S
2=−1の場合、Δφ=atan(−S
1R
21A
2/A
1)+1.5πと算出される。干渉計22内の補助レーザビームにおける位相差の読出値は、0〜2πの範囲である。赤外光レーザ光源14からの赤外光レーザのπ/2ホモダイン条件は、圧電ステージ34の位置を調整することによって、上述した手順で設定される。このような条件によって、位相フィードバックのための目標値として用いられる補助レーザビームの位相差Δφ
0が得られる。コンピュータ20によるソフトウェアPIDループを用いて、読出位相差Δφを最小化し、コンピュータ20の多機能のカードによって提供される赤外光レーザの圧電ステージ34に印加される電圧を調整することによって点Δφ
0を設定する。
【0057】
干渉計22内の補助レーザ62の波面位相差は、Δφ
0に安定化され、これは、2つの干渉計アーム間の光路差が赤外光のπ/2ホモダイン条件を満たす光路差に維持されることを意味する。
図10(a)は、位相フィードバックデバイスを用いた場合及び用いなかった場合に検出された位相を示している。1rad未満のrmsへの位相の安定化が確認された。赤外光レーザでは、この安定化は、位相設定点からの偏りが0.1rad未満であることに対応している。位相フィードバック機構は、長期のドリフトを相殺できる。
図10(b)は、1000秒間に亘るドリフト補償を示している。200nmのドリフトが検出され、同時に、補償されている。
【0058】
干渉計位相のこのような安定化によって、機械的な変動、気流の乱れ又は器具及び器具を支持するプラットフォームの熱膨張に対するロバスト性を高めることができる。これによって、赤外周波数における位相ジッタリングが0.1rad未満になる。フィードバックミラーと赤外光参照ミラーとの間の分離によって、参照ミラーを前後に移動させることなく、赤外光ホモダイン光場の位相を安定した値で保持でき、したがって、先の実施形態から更に位相ホモダイン検波の正確度を高めることができる。
図11は、この実施形態の器具を用いて、π/2ホモダイン条件で、周波数1390cm
−1において撮影された2つの交差する窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)の近接場画像を示している。
【0059】
この位相安定化機構を用いて、干渉計位相差を、固定間隔の特定の複数の値、例えば、0、0.5π又はπに維持することによって、正規化又は計算による赤外光の吸収プロファイルの抽出が容易になる。上述したコヒーレント同調光源14の複数の周波数のためのルックアップテーブルを作成してもよい。このようなルックアップテーブルは、圧電ステージ34の適切な位置をレーザの多重波長に関連付け、これによって、異なる赤外周波数によるANSOMイメージングの間、レーザ波長間の反復可能なスイッチングが可能になる。
【0060】
広帯域赤外光源と共に位相制御ホモダイン方式を用いて、モノクロメータ又は赤外光帯域経路フィルタ等の周波数選択器を介して、物理的フィルタによって、又は後のフーリエ変換によって、各周波数の近接場の応答を得ることができる。
【0061】
このように、
図9の実施形態に関しては、方法は、干渉計22に空間的に隣接して配置された補助干渉計68を使用するものであり、補助干渉計68は、コヒーレント光源14に並列に配置された補助レーザ62と、検出器76と、集光要素50に対して固定された位置のリフレクタ60と、リフレクタ38のための位置決め機構34に対して順に連結された位置決め機構70に固定された追加的なリフレクタ66とを備える。この補助干渉計68及び関連する検出電子回路は、補助レーザの位相差を検出し、コヒーレント光源14のための干渉計22内の光路差を維持する。この構成によって、外部の機械振動又は温度ドリフトに影響されることなく、干渉計22内の光路差が固定値に維持される。これによって、近接場顕微鏡のホモダイン検波の信号品質が向上する。例えば、
図12(a)は、位相安定化を用いて、2つの交差する窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を1390cm
−1の赤外周波数で撮影した近接場画像を示している。これに対し、
図12(b)は、
図9の位相安定化スキームなしで同じ赤外周波数で同じ領域を撮影した画像を示している。位相安定化をオンにした場合の方が、位相安定化をオフにした場合に比べて、イメージングアーチファクト(縞)が少なくなっている。
【0062】
なお、赤外光源14を用いて、赤外光内の吸収スペクトルを測定するこの方法を説明及び例示したが、この方法は、近紫外線(UV)可視光の吸収スペクトルの測定にも適用できる。但し、赤外光は、波長が長いために、この方法は、赤外光に最も適している。一方、より周波数が高い可視光及びUVの領域では、波長が短いために、ナノ粒子へのビームのより狭いフォーカシングがより容易になる。
【0063】
ここで用いた「備える」、「有する」、「含む」、「包含する」等の表現は、排他的ではなく、包括的で非限定的な表現として解釈される。具体的には、本明細書及び特許請求の範囲において用いられる「備える」、「有する」、「含む」、「包含する」等及びこれらの活用形は、特定の特徴、工程、プロセス又は要素が含まれることを意味する。これらの表現は、他の特徴、工程又は要素の存在を除外するようには解釈されない。
【0064】
本発明の好ましい実施形態に関するこれまでの説明は、本発明の原理を例示的に示すものであり、本発明をここに示した特定の実施形態に限定するものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲内に含まれる実施形態及びその等価物の全てによって定義される。