【文献】
JACOBSEN E JON,JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,米国,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,1992年 1月 1日,V35 N23,P4464-4472
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
虚血性脳卒中、脳性発作、血栓症、塞栓症、出血、循環器疾患、関節炎、糖尿病、癌、アテローム性動脈硬化症、心不全、心筋梗塞、統合失調症、双極性障害、脆弱性X症候群、鎌状赤血球病および慢性疲労症候群、慢性気管支炎(COPD)、神経変性疾患、パーキンソン病、ルー・ゲーリッグ病、ハンチントン病、低体温/再灌流、出血性ショック、または血小板の攻撃または血小板の破壊増加に関与する感染の治療または予防のための、ラセミ体またはエナンチオマー形態にある(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−イル)(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)メタノンを含む、薬剤。
動脈血栓症、動脈細動、肺塞栓症(PE)、深部静脈血栓症(DVT)または静脈血栓塞栓症(VTE)、うっ血性心不全、脳卒中、心筋梗塞、先天的または後天的な凝固亢進、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、脳血管疾患、脳血管障害、末梢動脈閉塞症(PAOD)の治療または予防において、血小板の凝集を予防するための、ラセミ体またはエナンチオマー形態にある(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−イル)(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)メタノンを含む、薬剤。
【実施例】
【0044】
実施例1:HEK細胞の保存
材料および方法:
ヒト胎児腎細胞(HEK)293を、子ウシ血清、ペニシリンおよびストレプトマイシンを加えたDMEM細胞の培養培地(Life Technologies, 41965−052)中で培養した。細胞を、25 cm
2のポリスチレンフラスコ内で0.8〜1.2E6 mL
−1の密度で播種して、37℃にてCO
2で調整された加湿インキュベーター内において、24時間増殖させた後に実験を開始した。
【0045】
化合物類 SUL−090 (N,6−ジヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボキサミド)、SUL−091 (N−ブチル−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボキサミド)、SUL−092 (6−ヒドロキシ−N−イソプロピル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボキサミド)、SUL−093 ((E)−N−(3,7−ジメチルオクタ−2,6−ジエン−1−イル)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボキサミド)、SUL−095 ((6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−イル)(モルホリノ)メタノン)、SUL−097 (N−(4−フルオロベンジル)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボキサミド)、SUL−098 (6−ヒドロキシ−N−((S)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル)−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボキサミド)、SUL−100 (6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−N−(2−(メチルアミノ)エチル)クロマン−2−カルボキサミド)、SUL−101 (6−ヒドロキシ−N,2,5,7,8−ペンタメチル−N−(2−(メチルアミノ)エチル)クロマン−2−カルボキサミド)、SUL−102 (6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−N−(3−(ピペリジン−1−イル)プロピル)クロマン−2−カルボキサミド)、SUL−104 (6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−N−(3−ニトロフェニル)クロマン−2−カルボキサミド)、SUL−106 (N−(4−フルオロフェニル)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボキサミド)、SUL−107 (メチル 4−(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボキサミド)ベンゾエート)、SUL−108 ((4−ブチルピペラジン−1−イル)(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−イル)メタノン)、SUL−109 ((6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−イル)(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)メタノン)、SUL−111 (N−((R)−2−アミノ−2−オキソ−1−フェニルエチル)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボキサミド)、SUL−112 ((6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−イル)((S)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−イル)メタノン)、SUL−114 (N−(2−ブロモエチル)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボキサミド)、SUL−117 (2−((ブチルアミノ)メチル)−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール)、SUL−118 (6−ヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−カルボン酸)、SUL−120 (6−ヒドロキシ−N−((R)−1−ヒドロキシプロパン−2−イル)−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボキサミド)、SUL−121 ((6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−イル)(ピペラジン−1−イル)メタノン)、SUL−122 ((6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−イル)(4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ピペラジン−1−イル)メタノン)、SUL−123 (N−(2−シアノエチル)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボキサミド)、SUL−124 (6−ヒドロキシ−N−(2−((2−ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)エチル)−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボキサミド)、SUL−125 ((R)−N,6−ジヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボキサミド)、SUL−126 ((S)−N,6−ジヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボキサミド、SUL−128 (2−(((S)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−イル)メチル)−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール)、SUL−129 (2−((((S)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル)アミノ)メチル)−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール)、SUL−130 (2,5,7,8−テトラメチル−2−(ピペリジン−1−イルメチル)クロマン−6−オール)、SUL−131 (N,6−ジヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−カルボキサミド)、SUL−132 ((6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−イル)(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)メタノン)、SUL−134 (2−(((S)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−イル)メチル)−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール)、SUL−135 (2−(((S)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−イル)メチル)−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール)、SUL−136 (2−(4−(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボニル)ピペラジン−1−イル)酢酸)、SUL−137 ((6−ヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−イル)(ピペラジン−1−イル)メタノン)、SUL 138 ((6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−イル)(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)メタノン)、SUL−139 (2−(4−(6−ヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−カルボニル)ピペラジン−1−イル)酢酸)、SUL−140 (エチル 2−(4−(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボニル)ピペラジン−1−イル)アセテート)、SUL−141 ((S)−2−(4−(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボニル)ピペラジン−1−イル)酢酸)、SUL−142 ((R)−2−(4−(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボニル)ピペラジン−1−イル)酢酸)、SUL−143 ((2S)−1−(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボニル)ピロリジン−2−カルボン酸)、SUL−144 ((2S)−1−(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボニル)ピロリジン−2−カルボン酸)、SUL−145 ((2S)−1−(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボニル)ピロリジン−2−カルボン酸を試験した。
【0046】
化合物を、幾つかの濃度でジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。実験開始前に、このストック溶液を、予め温めたDMEMに溶解して、さらに希釈して、10nM〜1 mMの濃度範囲を得た。低体温症の復温障害プロトコールは、下記のとおりに用いて、そして
図1に要約される。次いで、細胞培養培地を、この希釈物に置き換えて、細胞を化合物の存在下にて1時間インキュベートした。インキュベーション後に、蓋をしっかりと閉めて、フラスコを4℃の部屋におき、24時間冷却した。この冷却期間の後に、細胞を、37℃のインキュベーター内に戻し置き、更に24時間復温させた。
【0047】
生存性評価
この復温期間後に、細胞形態を評価するために顕微鏡画像を撮影した(Nikon D5100, Nikon Diaphot−TMD)。細胞培養培地を収集して、遠心分離を行なった(4分, 2000 rpm)。上清を収集して、pHを直ちに測定して、炭酸塩緩衝液によりこの培地中のpHの平衡を維持して、一方で沈殿した細胞をPBS(5 mL)に再懸濁した。フラスコ内に残っている細胞を、リン酸生理緩衝食塩水(PBS)で二回洗浄して、洗液を廃棄した。続いて、この細胞を、トリプシン(0.5 mL)を加えてトリプシン処理し、再懸濁したペレットをプールした。次いで、この細胞懸濁液を、0,2%の最終濃度のトリパンブルーで染色して(Sigma, T8154)、その後生存性および細胞数をBuerker−Tuerk 血球計上でマニュアルにて評価した。アッセイを完了するために、代謝活性の指標として細胞培養培地のグルコースレベルを測定した(Roche Accutrend Plus)。これらの工程全てを、冷却後の細胞の生存性に影響を与えるか、または生存性を変えないように注意を払いながら行なった。
【0048】
結果
表2は、様々な濃度の本発明の化合物を加えて、冷却と復温の過程を生き抜いた細胞の量を示す。この量は、生存した細胞%を示す。化合物の番号は、表1に述べたような化合物に対応する。コントロールにおいて、同じ方法を、HEK細胞の2つのバッグに適用した。この培地は本発明の化合物を含まなかった。生存した細胞量は、使用濃度および化合物のタイプに依存する。
【0049】
【表2-1】
【表2-2】
【0050】
実施例2:SMAC細胞の保存
ラット平滑筋大動脈細胞(SMAC細胞)を、子ウシ血清、ペニシリンおよびストレプトマイシンを加えたDMEM細胞培養培地(Life Technologies, 41965−052)中で培養した。細胞を、37℃でCO
2制御された加湿インキュベーター内に置いて、実験開始前に24時間増殖させた。化合物Sul 84、Sul 85、Sul 89、Sul 112、Sul 121、Sul 127およびSul 136を、100mMの終濃度までDMSOに溶解した。次いで、この溶液を、DMEM細胞培養培地に溶解させて、これを、種々の濃度で細胞に加え、37℃で1時間プレインキュベートして、4℃に冷却して、4℃で24時間維持した。この細胞を、1時間の37℃まで復温させて、試験した。トリパンブルー試験を、HEK細胞について上記のとおり実施した。このトリパンブルー色素排除アッセイに加えて、吸収アッセイを実施した。トリパンブルーの吸収の程度を、非生存細胞数の指標として使用した。トリパンブルーを、0,05%の終濃度まで6ウェルプレートに加えて、細胞を37℃で5分間インキュベートした。次に、ウェルをPBSで注意深く3回洗浄して、過剰な染料を除去した。洗浄後に、1% SDS(150 μL)をウェルに加えて、細胞を溶解させて、トリパンブルーをあらゆる非生存細胞から取り除いた。細胞溶解物を、遠心分離して、次いで上清を96ウェルプレートに移した。1% SDSを、ブランクとして使用して、吸光度を595 nmで測定した。細胞死を、4℃での非処理コントロールの%(100%)として表した。
【0051】
図2は、低温と復温の過程を生き抜いた細胞の量を評価するためのトリパンブルー吸収アッセイの結果を示す。SMAC細胞の生存性は90%までであった。
【0052】
Sul 136は、ラセミ混合物である。Sul 141およびSul 142は、各々RおよびSアイソマーである。Sエナンチオマーは、低濃度であっても、Rエナンチオマーまたはラセミ混合物よりも良好な結果を有する。
【0053】
実施例3:血液血小板の保存
PRPによる収集
PRP血小板を収集して、この2.1 mlを、ポリプロピレンチューブ内(5 ml)で懸濁して、蓋を閉めた。
いくつかの本願化合物を、PRP血漿を調製した後に直接血液血小板に加えて、10分間37℃または30分間室温でインキュベートした。その後、化合物と共に血液血小板を、4℃で保存した。
【0054】
コントロールを、振とう条件下において室温で保存した。別のコントロールを、化合物を加えずに4℃で保存した。加えた化合物を表3に列挙した。
【0055】
化合物添加264時間後の各チューブから試料を採取して、以下のとおり試験した:
・色調および血液凝固特性を視覚的に分析した。
・生存した血小板細胞を計測して、血小板が凝集したかどうかを評価した。
・96ウェルプレート内においてADPの添加またはコラーゲンの影響下による刺激の後に、血小板が、依然として機能できたかどうかを評価した。
・付着を評価した。付着は、コラーゲンと共にプレインキュベートされた96ウェルプレートにおけるコラーゲンへの血小板の結合能を意味する。
・ELISAアッセイにより、スロンボキサンが血小板から分泌したかどうかを評価した。スロンボキサンは、凝集を促進するもので、活性化した血液血小板により産生される。
【0056】
表3は、血液血小板への化合物の添加の結果の概説を提供するもので、本発明の化合物の添加後の血小板の凝集および4℃までの冷却を評価する。
【表3】
【0057】
アフェレーシス法およびPRPによる収集
血小板を、Haemonetics(ドナー2611811およびドナー2611855)またはCobe機器(ドナー2611770)のいずれかの標準血小板フェレーシス法により得た。プロトコールに従って、全ての単位は、Cobe機器を用いた血小板フェレーシス法により得たが、3つの検体からの2つは、血液バンクの品質対照基準を通過しなかった。しかし、全ての血小板検体は、類似した濃度および類似した血小板品質を有する。血小板のいずれの濃度においても、凝血塊は見られなかった。
【0058】
新たに収集した血小板を、天秤で秤量して、血小板濃縮物のサンプル採取のための小さなPVCバッグを、メインの血小板濃縮バッグとシールドックした(seal−docked)。血小板濃縮物の標準的な均質化は、サンプル採取前にローラーにより行なわれるべきである。
【0059】
Sul 136の懸濁液(300 μM)は、バッグ内容物が滅菌に保たれている手法にて加えられる:Sul 136は、頻繁に回転させることにより浮遊状態で維持されており、このSul 136の懸濁液は、それが新たに収集した血小板に加えられるまで37℃で保存されている。Sul 136懸濁液を、バッグから3つの血小板バッグに直接加える。添加後に、血小板バッグの内容物を、穏やかに混合した。2時間後に、最初の試料を、シールドックした試料バッグに導入した。この試料バッグは、溶着により切り離され、この試料バッグから血液学分析、血小板凝集計試験およびフローサイトメーター試験のために試料を採取した。バッグ内のスワーリングは、標準形式にて研究者の経験により報告される。フラットベットシェーカー上に置き、室温で保存したSul 136を含まない血小板を、コントロールとして使用した。別のコントロールを、4℃で保存した。Sul 136を加えた血小板試料を、4℃で振とうせずに冷蔵庫内で保存した。
【0060】
試料を、2、24、48、96、168、216、264時間の後に採取し、7週間保存した。
【0061】
試料を、以下のとおりに測定した:
アネキシンV試験:
Beckman Coulter FC 500 フローサイトメーターにて(Roche Annexin−V FLUOS染色キットを用いて)
方法:
インキュベーション緩衝液(1 ml)中のRoche kitのAnnexin−Vフルオレセイン(20 μl)の混合物を作り、ヨウ化プロピジウム溶液(20 μl)を加えた。血小板濃縮物(2 ml)を、標準的なエッペンドルフ遠心分離機で遠心分離して、上清を廃棄した。
【0062】
PBS緩衝液(1 ml)を加えて、細胞濃度が約1.000.000であるかどうかを確認した。これを、調製済Annexin−V フルオレセインとヨウ化プロピジウム混合液により100倍希釈して、15分間インキュベートした。キット由来のインキュベーション緩衝液(500 μl)を加えて、細胞分析をフローサイトメーターで行なった。
【0063】
ADPおよびTRAPによる血小板活性化
血小板活性化を、Beckman Coulter kitの、CD 41 PE、CD 62p FITC、IgG1 FITC/IgG1 PE 抗体を用いて、Beckman Coulter FC 500 フローサイトメーターにて行なった。
【0064】
試験チューブ1:
希釈緩衝液(40 μl)を、約15分間37℃にした;10 μl IgG FITC/IgG PE + 10 μl CD41 PEを加えて、Vortexで混合して、5分間室温にてインキュベートした;冷HBSS緩衝液(1000 μl)を加えた;フローサイトメーターでの測定を行なった。
【0065】
試験チューブ2:
40 μl 希釈緩衝液を、約15分間37℃にした;10 μl CD41 PE+5 μl CD62 FITCを加えて、Vortexで混合して、5分間室温にてインキュベートした;冷HBSS 緩衝液(1000 μl)を加えた;フローサイトメーターで測定を行なった。
【0066】
試験チューブ3:
36 μl 希釈緩衝液+4 μl ADPを、15分間37℃にした;CD41 PE+5 μl CD62 FITC(10 μl)を加えて、Vortexで混合して、5分間室温にてインキュベートした;冷HBSS 緩衝液(1000 μl)を加えた;フローサイトメーターでの測定を行なった。
【0067】
試験チューブ4:
36 μl 希釈緩衝液+4 μl TRAPを、約15分間37℃にした;10 μl CD41 PE+5 μl CD62 FITC を加えて、Vortexで混合した;5分間室温にてインキュベートした;冷HBSS緩衝液(1000 μl)を加えた;フローサイトメーター内の測定を行なった。
【0068】
血小板凝集を、全ての試薬をMoelabから用いて、Platelet Aggregation Profiler PAP 8 (Moelab)に従って測定した。
【0069】
試料調製:
血小板濃縮物(3 ml)を、3000 RPMで遠心分離を行い、PPPを得た。PPP(1800 μl)およびPRP(600 μl)を混合した。
【0070】
試験:
PRP(225 μl)を、マグネチックスターラーと共に試験チューブに入れた。PPP(225 μl)+アクアデスト(aquadest)(25 μl)を、マグネチックスターラーを入れずに試験チューブに入れた。PPPを基準として用いた。PRPを、2分間37℃でローラー上に置いた。血小板凝集計において、PRPによる測定を、誘導物質(25 μl)を用いて30秒後に開始した。測定を、6分間行なった。
【0071】
スワーリングの外観検査の決定を、Bertolini, F. and Murphy, S.(1994)(A multicenter evaluation of reproducibility of swirling in platelet concentrates., Transfusion 34, 796−801.)に従って行なった。
【0072】
PRP収集血小板による試験の結果
PRP血小板に、Sul 136を添加して試験した。
表4は、4℃で保存した24、48、72、および216時間後に生存した細胞数の結果を示す。細胞の数は、0時点の細胞数と比較した%として示す。室温で保存した血小板の66%は、216時間後に生存していた。4℃で保存した細胞のわずか42.3%しか、216時間後に生存していなかった。Sul 136の添加により、実質的により多くの血小板が、4℃で72および216時間の保存後に生存していたという結果となった。
【0073】
【表4】
【0074】
表5は、PRPにより収集され、かつADPによる刺激後にSul 136を加えた場合の血小板が凝集する可能性を示す。10 mM Sul 136を加えた場合、血小板は、ADPによる刺激後に依然として活性を示した(+は、細胞が凝集を示し、刺激により活性化され得ることを意味する;−は刺激により凝集しないことを意味する)。
【0075】
【表5】
【0076】
表6は、コラーゲンによる刺激の後に、Sul 136を含むPRP血小板が凝集する可能性を示す。10 mM Sul 136を加えた場合に、血小板は、コラーゲンによる刺激の後に依然として活性を示した(+は、細胞は凝集を示すことを意味し、++は強力な凝集を意味する、即ちこれらの血小板は刺激により活性化され得る、−は刺激により凝集しないことを意味する)。
【0077】
【表6】
【0078】
アフェレーシスにより回収した血小板による結果
表7は、フラットベット振とう器上で、Sul 136を含めずに室温で保存されたドナー1(2611770)の保存アフェレーシス血液血小板の試験結果を示す。12日にpHは6.3であった。19日のpHは5.7であった。
【0079】
表8は、Sul 136を加えて4℃で保存されたドナー1の保存アフェレーシス血液血小板の試験結果を示す。12日のpHは6.2であり、19日のpHは5.9であった。
【表7】
【0080】
【表8】
【0081】
室温で保存した血小板と、Sul 136と共に4℃で保存した血小板とについてのフローサイトメトリー試験は類似していた。さらに、コラーゲンおよびADPを用いた刺激による血小板凝集は、化合物Sul 136と共に保存した血小板については12日および19日目に戻った。
この結果は、1〜3日間室温で保存された血小板と同じ程度である。
【0082】
表9および10は、血小板形態のドナー2を用いて行なった試験の結果を示す。表9の血小板を、4℃でSul 136を含まずに保存した。表10の血小板を、Sul 136と共に4℃で保存した。
【0083】
【表9】
【0084】
【表10】
【0085】
表11および12は、ドナー3由来の血小板を用いて行なった試験結果を示す。表9の血小板を、Sul 136を含まずに室温で保存した。表10の血小板を、Sul 136と共に4℃で保存した。
【表11】
【表12】
【0086】
スワーリング試験
7週間後であっても依然として、スワーリングが、4℃で化合物と共に保存した血小板において観察された。
スワーリングは、24時間後に測定すると、4℃で化合物を添加せずに保存した血小板においては観察されなかった。
【0087】
実施例4:化合物の合成
本発明の化合物を、当業者には周知の標準的な合成方法に従って合成した。
SUL−0083、SUL−0084およびSUL−0085は購入し得る。
【0088】
SUL 089−112、114−117、120−126、128−130、132、134−135、138、および140の合成
トロロックスのアミド化を、アミド形成のための標準的なカップリング試薬(例えば、HATUおよびCDI)の存在下で、適切なアミンとの反応により達成した。対応するアミンを、BH
3を用いて形成したアミドを還元して製造した。
【0089】
ヒドロキサム酸誘導体を、ヒドロキシルアミン/CDIとの反応により製造した。トロロックスのカルボヒドラジドアナログの合成を、(置換)ヒドラジンとの反応により達成した。エナンチオマー/ジアステレオマー化合物を、エナンチオマー純粋な(R)−または(S)−トロロックスから開始するか、またはキラルクロマトグラフィーにより製造した。
【化6】
【0090】
SUL−118、SUL−119およびSUL−146の合成
サルコミンによる市販プロポフォールの酸化、サランリガンドとコバルトとの配位錯体、その後のNaBH
4による還元により、2,6−ジイソプロピルベンゼン−1,4−ジオールを得た。その後のHCO/SnCl
2/HClによるメチル化、そしてメタクリル酸メチルとの反応により、SUL−146(メチル 6−ヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−カルボキシレート)を得た。LiOHを用いる加水分解により、カルボン酸 SUL−118 (6−ヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−カルボン酸)を得た。アルコールのSUL−119(2−(ヒドロキシメチル)−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−6−オール)を、LiAlH
4を用いるSUL−146の還元により得た。
【化7】
【0091】
SUL−131、SUL−133、SUL−137およびSUL−146の合成
カルボン酸SUL−118(6−ヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−カルボン酸)から開始して、ヒドロキシルアミンを、カップリング試薬としてCDIを用いるヒドロキシルアミンとの反応により得た。化合物SUL 133 ((6−ヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−イル)(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)メタノン)およびSUL 137((6−ヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−イル)(ピペラジン−1−イル)メタノン)を、SUL−118と適切なピペラジン誘導体との反応により製造した。カップリング試薬HATUおよびCDIの双方を、満足のいく収量で得た。SUL 139 (2−(4−(6−ヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−カルボニル)ピペラジン−1−イル)酢酸)を、SUL 137((6−ヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−イル)(ピペラジン−1−イル)メタノン)と、グリオキサル酸との還元的アミン化により製造した。
【化8】
【0092】
SUL−136、SUL−141およびSUL−142の合成
N
2 雰囲気下において、SUL−140(エチル 2−(4−(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボニル)ピペラジン−1−イル)アセテート)の加水分解により、SUL−136(2−(4−(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボニル)ピペラジン−1−イル)酢酸)を高収率にて得た。このエナンチオマーSUL−141およびSUL−142を、上記条件に従って製造した。
【化9】
【0093】
SUL 143、144および145の合成
トロロックスの(S)−メチル ピロリジン−2−カルボキシレート(L−プロリン メチルエステル)によるアミド化、その後のカラムクロマトグラフィーにより、2つのジアステレオアイソマーを得た。その後の個々のジアステレオアイソマーの加水分解により、SUL−144 ((2S)−1−(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボニル)ピロリジン−2−カルボン酸、ジアステレオマー1)およびSUL−145((2S)−1−(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボニル)ピロリジン−2−カルボン酸、ジアステレオマー2)を得た。ラセミアナログのSUL−143((2S)−1−(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボニル)ピロリジン−2−カルボン酸)を、LiOHを用いて個々のジアステレオマーのエステルを混合し、その後このエステル部分の加水分解を行うことにより得た。
【化10】
【0094】
トロロックス(一般的な実施例)のアミド化
SUL−108 ((4−ブチルピペラジン−1−イル)(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−イル)メタノン). HCl.
トロロックス(11 g, 0.044 mol, 1 eq.)を、アセトニトリル(100〜150 ml)に懸濁した。CDI(8.6 g, 0.053 mol, 1.2 eq.)を分割して加えた。反応混合物を、0.5〜1時間、室温で攪拌した。1−ブチルピペラジン(6.9 g, 0.048 mol, 1.1 eq.)の添加後に、反応混合物を、週末にかけて25〜30℃で攪拌した。反応混合物を濃縮して、H
2O(200 ml)を加えて、水層をEtOAc(4X)で抽出した。有機層を合わせて、乾燥し、濾過し、濃縮した。得られる粗生成物を、カラムクロマトグラフィー(DCM/10% MeOH)により精製して、目的の化合物を得た(9 g 生成物, 82% 純度)。EtOAc/ヘプタンからの結晶化により、SUL−108(6 g, 0.016 mol, 36 %収率, 90% 純度)を、白色固体として得た。得られた物質を、DCM(50〜100 ml)に溶解した。HCl(ジオキサン中で4M, 8.8 ml, 0.0035 mol, 2.2 eq.)を加えて、反応混合物を室温で週末にかけて攪拌した。混合物を濾過して、DCMですすぎ、乾燥させて、SUL−108(6.3 g, 97〜98%純度)のHCl塩を白色固体として得た。
1H−NMR (CDCl
3, in ppm): 0.93 (t, 3H), 1.38 (m, 2H), 1.58 (s, 3H), 1.67 (m, 2H), 2.09 (s, 3H), 2.12 (s, 3H), 2.15 (s, 3H), 2.50−3.20 (m, 14H). M
+ = 375.3
【0095】
トロロックスアミド(一般的な実施例)の還元
SUL−128. (2−(((S)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−イル)メチル)−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール).HCl.
THF(16 ml, 0.0156 mol, 2 eq.)中のBH
3・THFを、T=0℃に冷却した。THF(50 ml)中のSUL−112 ((6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−イル)((S)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−イル)メタノン;2.6 g, 0.0078 mol, 1 eq.)の溶液を、滴加して、反応混合物を1時間還流し、終夜室温まで冷却した。反応混合物を、氷上で冷却して、HCl(6 M, 25 ml)を滴加した。DCM(100 ml)を加えて、層を分離した。水層を、DCM(3X)で抽出した。有機層を合わせて、ガスの形成がそれ以上見られなくなるまでK
2CO
3上で乾燥させた。有機相を濾過して、濃縮した。粗生成物を、氷浴上で冷却して、NaOH(6M, 50 ml)を滴加した。添加後、反応混合物を、1時間攪拌して、DCM(4X)で抽出した。DCM層を合わせて、乾燥させて、濾過して、濃縮して、粗生成物(20〜40%純度)(1.6 g)を得た。物質を、カラムクロマトグラフィーにより精製して、SUL−128(300 mg, 0.94 mmol, 12 %収率, 90% 純度)を得た。これを、DCM(10 ml)に溶解して、T=0℃(氷浴)に冷却した。HCl(ジオキサン中で4M, 0.3 ml, 0.94 mmol, 1.2 eq.)を加えて、反応混合物を、室温で終夜攪拌した。形成した固体を、濾過して、Et
2Oで洗浄して、乾燥して、SUL−128(300 mg, 90 % 純度)のHCl塩を、白色の固体としてを得た(ジアステレオマー混合物)。
1H−NMR (CDCl
3, in ppm): 1.20−1.90 (m, 7H), 2.12 (s, 6H), 2.17 (s, 3H), 2.20−2.90 (m, 9H), 3.4−3.65 (m, 2H). M
+ = 320.1
【0096】
SUL−118(6−ヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−カルボン酸)の合成
2,6−ジイソプロピルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオンの合成
【化11】
プロポフォール(100 g, 561 mmol)を、DMF(250 mL)に溶解した。該溶液を、攪拌しながら0℃に冷却した。サルコミン(16.6 g, 51 mmol;9 mol%)を加えて、得られる反応混合物を、室温へ昇温させながら、112時間、終夜攪拌した。該反応混合物を、水(7 L)に注ぎ入れた。該得られるスラリーを、ヘプタン(5 x 1 L)で抽出した。有機抽出物を合わせて、Na
2SO
4で乾燥させた。溶液の真空下での濃縮により、粗2,6−ジイソプロピルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン(62.5 g; 325 mmol;58%収率)を油状物として得た。該生成物を、さらなる精製せずに次の工程で使用した。
【0097】
2,6−ジイソプロピルベンゼン−1,4−ジオールの合成
【化12】
粗2,6−ジイソプロピルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン(62.5 g, 325 mmol)を、ジクロロメタン(300 mL)およびメタノール(100 mL)に溶解した。該溶液を、0℃で氷浴にて冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(4.5 g, 182 mmol)を、一度に加えた。添加が完了した後に、反応混合物を、室温にて終夜攪拌した。アセトン(150 mL)を加えて、水素化ホウ素ナトリウムの過剰量をクエンチさせた。30分間攪拌した後に、2N HCl水溶液(200 mL)を加えた。45分間攪拌した後に、混合物を、酢酸エチル(4 x 400 mL)で抽出した。有機層を合わせて、Na
2SO
4で乾燥させた。溶液の真空濃縮により、粗2,6−ジイソプロピルベンゼン−1,4−ジオール(64 g, 330 mmol)を赤色の油状物として定量的収量にて得た。生成物を、さらなる精製せずに次の工程で使用した。
【0098】
3,5−ジイソプロピル−2−メチルベンゼン−1,4−ジオールの合成
【化13】
2,6−ジイソプロピルベンゼン−1,4−ジオール(64 g, 0.33 mol)、パラホルムアルデヒド(9.8 g, 0.327 mol)、SnCl
2(217.9 g, 1.15 mol)、37%濃HCl水溶液(0.6 L)およびジイソプロピルエーテル(2.5 L)の混合液を、4時間還流加熱した。終夜室温まで冷却した後に、2相系混合物を分離した。水層を、TBME(2000 mL)で抽出した。有機画分を合わせて、1N HCl水溶液(1000 mL)、水(1000 mL)およ塩水(1000 mL)で洗浄した。この有機分画物を、Na
2SO
4で乾燥させて、真空下で濃縮して、GCMS分析により、50:35の3,5−ジイソプロピル−2−メチルベンゼン−1,4−ジオールおよび2,6−ジイソプロピル−3,5−ジメチルベンゼン−1,4−ジオール(61 g 油状物)の混合物を得た。酢酸エチル/ヘプタン=97.5:2.5(4000 mL)、95:5(4000 mL)を用いるシリカゲルでのクロマトグラフィー(1200 mL)による精製により、3,5−ジイソプロピル−2−メチルベンゼン−1,4−ジオール6(16.6 g, 79.8 mmol;24%:83% 純度)を油状物として得た。
【0099】
メチル 6−ヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−カルボキシレートの合成
【化14】
3,5−ジイソプロピル−2−メチルベンゼン−1,4−ジオール(10.6 g, 50.9 mmol;83% 純度)を、メタクリル酸メチル(20 mL, 186 mmol)に溶解した。この溶液を、Berghof反応器内でTeflonチューブに移した。ホルムアルデヒド水溶液(10 mL;37重量%溶液, 10〜15%のMeOHで安定化した)を加えて、反応混合物を、攪拌しながら5時間閉鎖反応器内で180℃(内部温度)に加熱した。約40℃に冷却した後に、反応混合物を、MeOH(200 mL)に注いで、この混合物を真空下にて濃縮して、酢酸エチル/ヘプタン=95:5(5000 mL;TLC:Rf〜0.2;ヨウ素蒸気による染色スポット)を用いて溶出するシリカゲル(600 mL)でのクロマトグラフィーにより精製して、純粋な目的の生成物であるメチル 6−ヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−カルボキシレート(10.0 g, 31.3 mmol, 61%)を得た。
【0100】
6−ヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−カルボン酸(SUL−118)の合成
【化15】
MeOH(100 mL)、THF(100 mL)および水(25 mL)中でメチル 6−ヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−カルボキシレート(8.3 g, 25.9 mmol)および水酸化リチウム一水和物(4.3 g, 102.5 mmol;4 eq.)の精製混合物を、60℃で温水浴中にてロータリーエバポレーターにより回しながら、30分間大気圧で加熱した。有機溶媒を、真空下でエバポレートした。残留物に、水(150 mL)、その後酢酸(10 mL)を加えた。淡橙色混合物を得た。酢酸エチル(3 x 100 mL)で抽出して、合わせた有機画分をNa
2SO
4で乾燥させて、真空濃縮してオレンジ色の固体として粗生成物を得た。固体を、tBME(150 mL)と共に攪拌した。肌色の固体は沈殿し、オレンジ色の溶液を得た。ヘプタン(250 mL)を加えて、この混合物を15分間攪拌した。混合物を、ガラスフィルター上で濾過した。残留固体を、吸引濾過にてヘプタン(2 x 50 mL)で洗浄した。真空下にて60℃で固体の乾燥を、純粋な6−ヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−カルボン酸(SUL−118)をオフホワイトの固体として得た(3.1 g, 10.13 mmol; 39%, 100% 純度).
1H−NMR (CDCl
3, in ppm): 1.38 (t, 12 H), 1.52 (s, 3H), 1.87 (m, 1H), 2.20 (s, 3H), 2.30 (m, 1H), 3.20 (m, 1H), 3.38 (m, 1H). M+ = 307.10
【0101】
実施例5.SUL119 (2−(ヒドロキシメチル)−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−6−オール)の合成
THF(12 mL)中のメチル 6−ヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−カルボキシレート(500 mg, 1.56 mmol)の溶液を、不活性窒素雰囲気下において、室温で攪拌しながら、ラバーセプタムからシリンジにより5分かけて、乾燥3首丸底フラスコ(100 mL)中に予め秤量したLiAlH
4(238 mg, 6.26 mmol;4 eq.)に加えた。エステルの添加により発熱が、ガスの発生と共に起こった。添加が完了した後に、得られる灰色の懸濁液を還流加熱した。3時間後、加熱を停止させて、反応をEtOAc(6 mL;発熱)の滴加によりクエンチした。水(5 mL)を、少量加えて、その後2N HCl(2 mL)、続いてEtOAc(25 mL)を加えた。この混合物を、Na
2SO
4(約50 g)に注ぎ入れて、淡黄色有機層を、2相混合物から分けた。水相を、EtOAc(50 mL)で洗浄して、有機画分を合わせて、真空濃縮して、粗アルコール(530 mg)を透明な油状物として得た。ヘプタン(100 mL)を加えて、真空濃縮した後に、2−(ヒドロキシメチル)−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−6−オール(248 mg, 0.85 mmol, 54%, LCMS:95.5% 純度)を得た。
M+ = 293.2
【0102】
実施例6. SUL 139(2−(4−(6−ヒドロキシ−5,7−ジイソプロピル−2,8−ジメチルクロマン−2−カルボニル)ピペラジン−1−イル)酢酸)の合成
SUL−137(440 mg, 1.17 mmol, 1 eq.,)を、MeOH(50 ml)に溶解して、グリオキサル酸(216 mg, 2.35 mmol, 2 eq.)を加えた。得られる混合物を、1時間室温で攪拌して、次にNaBH
3CN(183 mg, 2.94 mmol, 2.5 eq.)を加えた。反応混合物を、室温にて終夜攪拌した。酢酸(数ml)を加えて、室温で0.5〜1時間攪拌した後に、この反応混合液を濃縮した。得られる残留物を、EtOAcに溶解して、H
2O(2X)で洗浄して、乾燥させて、濾過して、濃縮して、SUL−139(500 mg, 1.16 mmol, 98%, 91〜92%純度)を淡黄色固体として得た。
1H−NMR (CD
3OD, in ppm): 1.33 (dd, 12H), 1.59 (s, 3H), 1.62 (m, 1H), 2.09 (s, 3H), 2−5−3.0 (m, 7H), 3.1−3.6 (m, 4H), 3.81 (bs, 2H), 4.28 (bs, 2H). M
+ = 433.2.
【0103】
実施例7. SUL 136 (2−(4−(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボニル)ピペラジン−1−イル)酢酸)の合成
2つのセプタム(左および右)とストップコックを取り付けた3首フラスコ(250 ml)に、SUL−136(15.5 g, 38.4 mmol)およびTHF/水(240 ml THF+80 ml 水)を入れた。透明な溶液を、攪拌して、左側のセプタムから長いシリンジニードルを付けたインレットチューブを用いてアルゴン泡沸により少なくとも30分間脱気した;右側のセプタムは、短い針が付けられており、アウトレットとして機能する。脱ガス溶液(アルゴン下で維持した)を、氷浴内で0℃に冷却して、固体無水LiOH(2.3 g, 96 mmol, 2.5 eq.)を一度に加えた。得られる反応混合物を、2時間0℃で攪拌した後に、それをDowex−50WX8−200イオン交換樹脂のMeOH/水(3/1, v/v)スラリーを加えて中和した;最終のpHは約6であった。Dowex樹脂を、吸引濾過して、3分割してMeOH/水(3/1, v/v)を用いて濯いだ。この濾液を、真空下において減らして、この湿性生成物に水(約100 ml)に加えた。得られる白色の懸濁水溶液を、終夜凍結乾燥して、SUL−136(13.48 g, 93%. LCMS: 99.6%)を白色固体として得た。
1H−NMR (CD3OD, in ppm)): 1.60 (s, 3H), 1.65 (m, 1H), 2.05 (s, 3H), 2.10 (s, 6H), 2.55 (m, 2H), 2.62 (m, 1H), 3.0, (bs, 4H), 3.40 (bs, 2H), 3.65 (bs, 2H), 4.25 (bs, 2H). M+ = 377.1
【0104】
実施例8. SUL 144 ((2S)−1−(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボニル)ピロリジン−2−カルボン酸)の合成
(2S)−メチル 1−(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボニル)ピロリジン−2−カルボキシレート(ジアステレオマー1, 3.5 g, 9.7 mmol)を、THF/H
2O(60/20 mL)に溶解した。N
2を1時間液体に通した。この混合物を、氷浴中で冷却して、LiOH.H
2O(1.01 g, 24.2 mmol, 2.5 eq.)を加えた。反応混合物を、N
2下においてRTで終夜攪拌した。Dowex−50WX8−200(3:1でMeOH/H
2Oで4x洗浄した)を、pH=6となるまで、MeOH/H
2O(3:1)中のスラリーとして加えた。この混合物を、濾過して、MeOH/H
2O(3:1)で洗浄して、真空濃縮した。半量のH
2O(50 mL)を、濃縮物に加えて、この溶液を凍結乾燥して、SUL−144(3.4 g, 9.7 mmol, quant, 99.7% 純度)をオフホワイトの泡沫状物として得た。
1H−NMR (CDCl3):1.60 (s, 3H), 1.65−2.30 (m, 14H), 2.60 (m, 2H), 2.81 (m, 1H), 3.49 (m, 1H), 4.01 (t, 1H), 4.50 (d, 1H). M+ = 348.1
【0105】
実施例9:ブタの心臓に関する低温虚血耐性のためのSUL109
この実施例は、標準的心臓移植プロトコールに対する添加剤としてSUL 109が、ブタの心臓の最大低温虚血性保護を引き伸ばすのに役立つかどうかを試験したものである。長時間の心停止に対して、例えば移植の場合に、一般的に使用される溶液はCUSTODIOL(登録商標)である。CUSTODIOL(登録商標)溶液を用いると、温かい酸素血液による再灌流が必要となる6時間前までの間、低温虚血性状態にて心臓を保持することができる。
【0106】
材料および方法
2つのブタの心臓を食肉処理場から得て、次の通りに処置した。頭部への電気ショックによりブタを気絶させて、上大静脈切除により失血させた。失血後に、胸骨を迅速に切開し、心臓および肺を全摘出した。この心臓を、直ぐに氷冷浴に浸漬して、大動脈を、腕頭動脈枝脇近位で切除した。19 mm カニューレを、動脈に挿管して縛った。注意深く脱気カニューレを使用して、冷心停止溶液を投与した。第一の心臓において、ヘパリン(5000IU/l)を含む2リットルの標準的なCUSTODIOL(登録商標)を投与した。第二の心臓を、ヘパリン(5000IU/l)および75μMのSUL 109(10ml/l)/0,9% NaClを含むCUSTODIOL(登録商標)(2リットル)を投与した。両方の心臓を、同じ溶液で充たしたプラスチックバッグに保存して、おおよそ4℃の氷上にて研究室に移送した。準備前に、心臓を4℃で24時間保存した。次の日に、両方の心臓を準備して、DeHart et al 2011に記述されたようにPhysioHeart platformに埋めた。心臓脱気後に、動脈の逆行性再灌流を、38℃で温かい酸素血液を用いて開始した。大動脈基部にて血流および血圧の双方を、実験中に記録した。
【0107】
結果および知見
最初に、SUL109非処理心臓を血液で再灌流した。この心臓は、一定の大動脈圧(80mmHg)で0,5l/分の全冠動脈血流量となる再灌流時の高い血管抵抗性を示した。心筋の収縮活動は、細動に似た組織の僅かな動きしかなく、5分後には殆ど目視できなかった。電気ショックによる除細動およびペースメーカーによる心臓補助の後に、左心室の側部および前部の不確実な収縮が目視できた。
【0108】
SUL109で処理した第二の心臓も血液で再灌流した。再灌流開始直後に、非処理心臓との有意な相違が生じた。処理済み心臓の筋肉組織は、最初、非処理心臓のように硬く硬直したが、再灌流時かつ温まると、徐々に心臓の硬さや硬直が低減して、6時間以内にはほぼ正常な心臓のような感覚となった。これにより、80 mmHgの灌流圧で1 lpmの冠状動脈血流により観察されたような血管抵抗性が低下した。処理済心臓は、非処理心臓と比べて、直ぐに高い収縮活動を示し、幾つかの除細動ショックの後に、弱い収縮の不規則(unpaced)パターンが観察された。
【0109】
議論
生体心臓実験の通常の収集方法において、心臓は冷たい心筋保護液と接して停止しており、次なる準備および外科的介入のためにLifeTec Group laboratoriesに移送される。
準備は4時間までかけてもよく、この後に心臓は酸素を含む温かい血液を用いた再灌流により再度活性化される。準備時間を長くするために、または再灌流前の移動時間をより長くするために、低温虚血時間中に心筋組織を保護できるということは非常に有用である。実施例により、SUL109処理済みの心臓が心筋組織の規則正しい収縮活性の改善を示したとおり、SUL109処理済みの心臓と非処理心臓との明確な相違が示された。従って、標準的な心臓移植プロトコールに対する添加剤としてSUL 109を使用することにより、低温虚血保護が長くなる。