特許第6359561号(P6359561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6359561高い炭水化物抗原密度を有するワクチン及び新規サポニンアジュバント
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359561
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】高い炭水化物抗原密度を有するワクチン及び新規サポニンアジュバント
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20180709BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20180709BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180709BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20180709BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20180709BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20180709BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20180709BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20180709BHJP
   C07J 63/00 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   A61K39/00 G
   A61K39/00 H
   A61K39/39
   A61P35/00
   A61P15/00
   A61P11/00
   A61P1/00
   A61P1/18
   A61P13/08
   C07J63/00CSP
【請求項の数】12
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-551806(P2015-551806)
(86)(22)【出願日】2014年1月6日
(65)【公表番号】特表2016-504385(P2016-504385A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】US2014010310
(87)【国際公開番号】WO2014107652
(87)【国際公開日】20140710
【審査請求日】2016年3月15日
(31)【優先権主張番号】61/748,880
(32)【優先日】2013年1月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515183274
【氏名又は名称】オービーアイ ファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウェイ、ハン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ナン−シュアン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チュン、ハオ
(72)【発明者】
【氏名】シェイ、イー−ファン
(72)【発明者】
【氏名】トニー ユー、チェン、ダー
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チェン−チ
(72)【発明者】
【氏名】リン、ユ−シン
(72)【発明者】
【氏名】リン、ユ−チェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、イ−ジュ
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第99/042130(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0317411(US,A1)
【文献】 Expert Rev. Vaccines,2010年,9(11),1257-74
【文献】 Cancer Immunol. Immunother.,2000年,49,296-304
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61K 39/39
A61P 1/00
A61P 1/18
A61P 11/00
A61P 13/08
A61P 15/00
A61P 35/00
C07J 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)Globo−Hと、
(b)ジフテリア毒素(DT)と、
を含み、
前記Globo−Hと前記ジフテリア毒素との比率が、5:1〜39:1の範囲内である、がんワクチン。
【請求項2】
前記ジフテリア毒素が、ジフテリア毒素交差反応物質又はジフテリアトキソイドである、請求項1に記載のがんワクチン。
【請求項3】
前記ジフテリア毒素交差反応物質が、CRM30、CRM45、CRM176、CRM197又はCRM228から選択される、請求項2に記載のがんワクチン。
【請求項4】
サポニンアジュバントをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のがんワクチン。
【請求項5】
前記サポニンアジュバントが、OBI−821サポニンである、請求項4に記載のがんワクチン。
【請求項6】
α−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)アジュバントをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のがんワクチン。
【請求項7】
前記α−ガラクトシルセラミドアジュバントは、下記構造式で表される、請求項6に記載のがんワクチン。
【化1】
【請求項8】
(a)請求項1〜7のいずれか1項に記載のがんワクチンと、
(b)薬学的に許容される担体と、
を含む、医薬組成物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のがんワクチンの有効量を含む、がん細胞を抑制する治療剤。
【請求項10】
前記がんが、Globo−Hを発現するがんである、請求項9に記載の治療剤。
【請求項11】
前記がんが、乳癌、肺癌、食道癌、直腸癌、胆管癌、肝癌、頬癌、胃癌、結腸癌、鼻咽頭癌、腎臓癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頚部癌、子宮内膜癌、膵臓癌、睾丸癌、膀胱癌、頭頚部癌、口腔癌、神経内分泌癌、副腎癌、甲状腺癌、骨癌、皮膚癌、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫、または脳腫瘍である、請求項9または10に記載の治療剤。
【請求項12】
がんの治療のための医薬品製造における請求項1〜7のいずれか1項に記載のがんワクチンの使用であって、前記がんが、乳癌、肺癌、食道癌、直腸癌、胆管癌、肝癌、頬癌、胃癌、結腸癌、鼻咽頭癌、腎臓癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頚部癌、子宮内膜癌、膵臓癌、睾丸癌、膀胱癌、頭頚部癌、口腔癌、神経内分泌癌、副腎癌、甲状腺癌、骨癌、皮膚癌、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫、または脳腫瘍である、使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年1月4日出願の米国特許出願第61/748,880号の優先権を主張し、その全開示を参照により本明細書に組み入れることとする。
【0002】
がんワクチンは、身体を守るための自然な能力を強化することでがんを治療するように設計されている。特に、がんの治療方法である従来の外科手術、放射線治療及び化学療法に多くの欠点が存在しているので、がんワクチンは常に魅力的な治療方法である。しかし、がん関連炭水化物抗原の低免疫原性及び多くの合成ワクチンは主にIgMと少ない程度のIgG抗体しか誘導されないを誘導するので、がんワクチンの有効性は依然として低いままである。免疫の認識及び活性化を促すように様々な方法、例えば、アジュバントの使用が発見されている。
【0003】
現在では免疫応答、特にIgGの免疫応答を向上させるためのがんワクチン及び有効なアジュバントを開発するという満たされていない需要が存在する。よって、本発明は、上記及び他の需要を満たすように炭水化物抗原に対するワクチン及びアジュバントを提供する。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許第8540964号明細書
(特許文献2) 国際公開第2013/142245号明細書
(特許文献3) 米国特許出願公開第2012/0328646号明細書
(特許文献4) 国際公開第2011/156774号明細書
(特許文献5) 国際公開第1996/040242号明細書
(特許文献6) 国際公開第2009/126737号明細書
(非特許文献)
(非特許文献1) Yen−Lin Huang et al.Carbohydrate−based vaccines with a glycolipid adjuvant for breast cancer PNAS February 12,2013 vol.110 no.7 2517-2522
【発明の概要】
【0004】
一実施例において、本発明は、炭水化物抗原又はその免疫原性断片を含むトキソイドタンパク質のワクチンを提供するものであり、炭水化物抗原とトキソイドタンパク質との比率が5:1〜39:1の範囲内である。その比率は炭水化物抗原及びトキソイドタンパク質の分子数の比率を表す。炭水化物抗原とトキソイドタンパク質との比率が5:1〜39:1の範囲内にあるワクチンのIgGの産生は、炭水化物抗原とトキソイドタンパク質との比率が4:1以下にあるワクチンと比較してより高いことが発見された。
【0005】
本発明の一実施例では、単離された式(I)の化合物、
【化1】
又はその薬学的に許容される塩を提供し、
なお、Rは、β―D―アピオース(β−D−Apiose)又はβ−D−キシロース(β−D−Xylose)から選択され、
及びRは、H基、アルキル基(alkyl)又は
から選択される。
【0006】
本発明のもう一つの実施例では、医薬組成物を提供し、それは、式(I)の化合物、
又はその薬学的に許容される塩と、
薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供し、
なお、Rは、β―D―アピオース又はβ−D−キシロースから選択され、
及びRは、H基、アルキル基又は
から選択される。
【0007】
本発明の第3実施例では、1857化合物V1A、1857化合物V1B、1857化合物V2A及び1857化合物V2Bを含むOBI−821の新規サポニンアジュバントを提供する。
【0008】
本発明の第4実施例では、炭水化物抗原又はその免疫原性断片と、OBI−821サポニンアジュバントとを含むワクチンを提供する。一つの実施例において、ワクチンはさらに担体タンパク質を含む。OBI−821サポニンアジュバントを含むワクチンのIgGの産生、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)活性は、OBI−821サポニンアジュバントを含まないワクチンと比較してより高いことが発見された。
【0009】
本発明では、(i)がん細胞が抑制されるように本明細書に記載のワクチンの有効量を需要のある個体に投与するステップを含むがん細胞を抑制するための方法と、(ii)本明細書に記載のワクチンの有効量を需要のある個体に投与するステップを含む免疫応答を誘導するための方法とに向けられている。
【0010】
本発明はまた、本明細書に記載のワクチンと、薬学的に許容される賦形剤又は担体を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
先に理解しておきたいことは、これらの用語を含む記載は、本出願の主題又は後述する特許請求の範囲の解釈や範囲を限定するものではない。本出願における本発明の実施形態は、発明の概要に定義されるものではなく、後述する特許請求の範囲に定義されるものである。本発明の概要は、本発明の様々な態様の上位概念であり、さらに後述する発明を実施するための形態に係る概念の一部を導入するものである。発明の概要は、請求される主題の重要又は必要な特徴を特定すること、また請求される主題の範囲を単独で判断することを意図していない。本出願の主題は、明細書全体、いずれ又は全ての図面、及び特許請求の範囲の適切な部分を参照して理解されるべきである。
【0012】
本発明は、添付の図面を参照して、下記の詳細な説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の例示的な実施例は、以下添付の図面を参照して、詳細に説明する。
図1A図1Aは、24日目にGlobo H/KLH/OBI−821サポニン、Globo H/DT/OBI−821サポニン、Globo H/DT/C34及びGlobo H/KLH/C34の組成物の抗Globo H IgG力価の棒グラフである。
図1B図1Bは、24日間にわたる図1Aに記載された組成物の抗Globo H IgG力価の折れ線グラフである。
図2図2は、24日間にわたるマウスにおけるG2ワクチン(Globo H/DT(8:1))、G3ワクチン(Globo H/DT(8:1)/OBI−821)及びG4ワクチン(Globo H/DT(24:1)/OBI−821)のin vivo ADCC及びCDC活性を示す棒グラフの集合である。図2Aは、ADCDの生データであり、図2Bは、ADCDの正規化データであり、図2Cは、CDCの生データであり、図2Dは、CDCの正規化データである。
図3図3A及び図3Bは、24日間にわたる下記組成物の総合的なIgM及びIgG力価の折れ線グラフである:G1(Globo H/KLH/OBI−821)、G2(Globo H/DT(3:1)/OBI−821)、G3及びG4(Globo H/DT(8:1)/OBI−821)、G5(Globo H/DT(8:1)/C34)、G6(Globo H/KLH/C34)、G7(Globo H/DT(16:1)/OBI−821)及びG8(PBS)である。
図4図4は、10日目、17日目、24日目に図3における組成物のIgM及びIgG応答を示す棒グラフの集合である:図(A)〜(C)は、それぞれ10日目、17日目、24日目の図3に記載された組成物のIgM応答であり、図(D)〜(F)は、それぞれ10日目、17日目、24日目の図3に記載された組成物のIgG応答である。
図5図5A〜5Cは、OBI−821(1989及び1857化合物を含む)の質量スペクトル画像である。
図6図6は、OBI−821のLC−UVクロマトグラム画像である。
図7図7は、OBI−821のLC/MSクロマトグラム画像の集合である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明をより明確に理解するために、本明細書で特定の用語が定義される。特に明記しない限り、本明細書に用いられる全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。
【0015】
本明細書に使用される「有効量」という用語は、がんの症状及び徴候を改善するワクチン又は医薬組成物の投与量を指す。その症状及び徴候は、体重の減少、痛み及び臨床的に触知可能な塊又は放射線学的に様々な撮像手段を通して検出可能な腫瘍塊が含まれるが、これらに限定されない。
【0016】
「個体」という用語は、がんを患う脊椎動物又はがんの治療が必要とされる脊椎動物を指す。個体としては、温血動物、例えば、哺乳動物、例えば、霊長類動物、好ましくはヒトである。非ヒト霊長類も個体に含まれる。「個体」という用語は、飼育動物(例えば、猫、犬等)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等)及び実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、スナネズミ、モルモット等)が含まれる。よって、獣医学的使用及び医学的製剤は本明細書において意図される。
【0017】
本明細書に使用される「アルキル基」という用語は、特に説明しない限り、炭素数1〜20(例えば、C1〜C8或いはC1〜C4)の置換又は非置換の直鎖状又は分岐状の一価の炭水化物を指す(他の鎖長、例えば、21〜30個は、本発明に含まれる)。アルキル基の例は、メチル(methyl)、エチル(ethyl)、n−プロピル(n−propyl)、i―プロピル(i−propyl)、n―ブチル(n−butyl)、i―ブチル(i−butyl)及びt―ブチル(t−butyl)が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
「実質的に純粋な」という用語は、自然な状態のサポニンに結合され、且つ一定及び再現可能なクロマトグラム応答、溶出像及び生物活性を示す化合物が含まれないことを指す。「実質的に純粋な」という用語は、サポニンと他の化合物の人工的又は合成的な混合物を排除する意味ではない。
【0019】
本発明における全ての数字は、「約」という用語で修飾することができると理解される。
【0020】
炭水化物の比率の高いワクチン
腫瘍関連炭水化物抗原は、一般的に弱い免疫原性を示す。担体タンパク質と結合(コンジュゲート)させた炭水化物抗原を採用することによって、その炭水化物抗原の免疫原性を向上させる。例えば、約700個のGlobo H分子は1個の無毒性のキーホールリンペットヘモシニアン(KLH)タンパク質に結合され、平均約2〜4個のGlobo H分子はジフテリア毒素(DT)に結合され、約8個のGlobo H分子はウシ血清アルブミン(BSA)に結合され、且つ約6個のGlobo H分子は破傷風トキソイドに結合される(米国特許第8,268,969号の表1)。
【0021】
本発明は、炭水化物抗原又はその免疫原性断片と、トキソイドタンパク質とを含むワクチンを提供し、炭水化物抗原とトキソイドタンパク質との比率が5:1〜39:1の範囲内である。その比率は炭水化物抗原又はその免疫原性断片の分子数とトキソイドタンパク質の分子数との比率を反映する。そのワクチンは、炭水化物抗原の分子数とトキソイドタンパク質の分子数との比率が4:1以下にあるワクチンと比較して優れた免疫原性を有する。本発明も他の範囲、即ち、炭水化物抗原又はその免疫原性断片の分子数とトキソイドタンパク質の分子数との比率が4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、21:1、22:1、23:1、24:1、25:1、26:1、27:1、28:1、29:1、30:1、31:1、32:1、33:1、34:1、35:1、36:1、37:1、38:1又は39:1の範囲を含む。
【0022】
一実施例において、トキソイドタンパク質は破傷風トキソイド(TT)であり、炭水化物―TTのワクチン中の炭水化物抗原とTTとの比率が7:1〜24:1の範囲内である。
【0023】
本発明は、炭水化物抗原又はその免疫原性断片と、ジフテリア毒素(DT)とを含むワクチンを提供し、炭水化物抗原とDTとの比率が5:1〜39:1の範囲内である。その比率は炭水化物抗原又はその免疫原性断片の分子数とDTの分子数との比率を反映する。もう一つの実施例において、炭水化物―DTのワクチン中の炭水化物抗原とDTとの比率が8:1〜24:1の範囲内である。
【0024】
炭水化物抗原の例は、Globo H、胚発生段階特異抗原3(SSEA3)(Gb5とも呼ばれる)、胚発生段階特異抗原4(SSEA4)、Gb−4、Gb−3、ルイス抗原、(例えば、sLe、Le、sLe、Le、Le)、多糖体抗原(例えば、ポリシアル酸(PSA)、sTn(c)、Tn(c)、トムソン・フリーデンライヒ抗原(Thomsen−Friedenreich antigen,TF(c)))、ガングリオシド(ganglioside)(例えば、GD1、GD2、GD3、フコシル、GM1、GM1、GM2、GM3、GD1α及びGM2)が含まれるが、これらに限られない。他の炭水化物抗原は、α−ガラクトース(α−Galactose)、α−マンノース−6−りん酸(α−Man−6−phosphate)、α−L−ラムノース(α−L−Rhamnose)、α−GalNAc(Tn)、α−NeuAc−OCH−p−NHCOOCH、Fucα1−2Galβ1−4GalNAcβ(H types3)、NeuAcα2−8NeuAcα、(NeuAcα2−8)2ポリシアル酸、NeuAca2−6Galb、NeuAcb2−6Gala(STn)、Gala1−3Galb1−4GlaNAcb (NeuAca2−8)3、GalNAcαa−3(Fucα1−2)Galβ(血液型A)、Galα1−3(Fucα1−2)Galβ(血液型B)、6Gal−HSO−SiaLex、6GluNAc−HSO−SiaLex及びα2−66−シアリル化二分岐N−グリカン(α2−6 sialylated diantennary N−glycans)が含まれるが、これらに限られない。一実施例において、炭水化物抗原はGlobo Hである。「Globo H」は、ヒト乳癌細胞系のMCF―7(Menard S、Tagliabue E、Canevari S、Fossati G、Colnaghi MI (1983) Generation of monoclonal antibodies reacting with normal and cancer cells of human breast. CancerRes, 43, 1295−300;及Bremer EG、Levery SB、Sonnino S、Ghidoni R、Canevari S、Kannagi R、Hakomori S. (1984) Characterization of a glycosphingolipid antigen defined by the monoclonal antibody MBr1 expressed in normal and neoplastic epithelial cells of human mammary gland. J BiolChem, 259, 14773−7)から単離された6糖類(Fucα1→2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1)である。Globo Hは、様々な上皮細胞腫瘍、例えば、結腸癌、卵巣癌、胃癌、膵臓癌、子宮内膜癌、肺癌、前立腺癌及び乳癌(Menard S et al. supra; Bremer EG et al., supra; Canevari S, Fossati G, Balsari A, Sonnino S, Colnaghi MI. (1983))に発現される。GloboHは、市販(例えば、Carbosynth, UK)又は当該技術分野において公知の方法によってグリコシドをセラミドに結合するように合成することができる。
【0025】
炭水化物抗原とトキソイドタンパク質との比率が5:1以上にあるワクチンは、塩基性の条件下、即ち、8を超える又はそれに等しいpH値、9を超える又はそれに等しいpH値、10を超える又はそれに等しいpH値、11を超える又はそれに等しいpH値、又は12を超える又はそれに等しいpH値において製造される。炭水化物抗原とトキソイドタンパク質との比率は、当該技術分野において公知の方法、例えば、MALDI−TOF質量分析法によって測定されることができる。米国特許第8,268,969号、及びMorelle W, Faid V, Chirat F, Michalski JC. Methods Mol Biol. 2009; 534: 5−21. doi: 10.1007/978−1−59745−022−5_1. Analysis of N− and O−linked glycans from glycoproteins using MALDI−TOF mass spectrometryも参照されたい。
【0026】
当該ワクチンは、アジュバントをさらに含むことができ、そのアジュバントはサポニン、例えば、本明細書に記載されたOBI−821、又はαーガラクトシルセラミド(α−Galactosyl−ceramide)の合成アナログ(α−GalCer又はC1)である。
【0027】
「αーガラクトシルセラミド」及び「α−GalCer」という用語は、ナチュラルキラーT細胞を刺激してヘルパーT(TH)1およびTH2サイトカインの両者を産生する糖脂質を指し、例えば、米国特許第8,268,969号に開示され、その全開示を参照により本明細書に組み入れることとする。一実施例において、α−GalCerのアジュバントは、下記の構造を有する。
【化2】
なお、Rは、(CH24CH、(CHPhF、(CH10PhOPhF又は(CH)10PhFである。
【0028】
一実施例において、Rが(CH10PhOPhFであり、下記の構造を有するC34のアジュバントとして知られている。
【化3】
【0029】
新規サポニンアジュバント
本発明は、実質的に純粋なOBI−821サポニンを提供することができる。本発明は、実質的に純粋なOBI−821サポニンと、生物活性断片とを含むものである。本発明もまた、不純なOBI−821サポニンを含むことができる。精製したOBI−821サポニンは、本明細書に記載されたワクチンと共に投与する、或いはそれを他の実質的に純粋なサポニン又は非サポニンのジュバントと混合する場合、アジュバントの効果を高めることを示した。
【0030】
OBI−821サポニンは、天然に存在するグリコシドであり、例えば、米国特許第5,057,540号、及び米国特許第6,524,584号(その内容が本明細書にその全体を参照により援用される)に開示された高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、低圧液体シリカクロマトグラフィー及び親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)によってキラジャサポナリアモリナコルテックス樹(Quillaja Saponaria Molina tree)の皮から高純度で抽出される。高圧液体クロマトグラフィー分析では、OBI−821は構造に関連する異性化合物の混合物であることを示した。OBI−821サポニンの異なる精製異性化合物は確認されて本明細書に記載されている。
【0031】
OBI−821サポニンは、少なくとも一つの下記単離された式(I)の化合物を含む。
なお、Rは、β―D―アピオース又はβ−D−キシロースであり、
及びRは、それぞれH基、アルキル基、
(1989化合物の脂肪アシル基部分(Fatty acyl moiety))、又は
(1857化合物の脂肪アシル基部分)である。
【0032】
OBI−821サポニンは、下記単離された式(I)の化合物をさらに含んでもよい:(i)Rはβ―D―アピオースであり、Rは上記の1989化合物の脂肪アシル基部分であり、RはH基であり(1989化合物V1A)、(ii)Rはβ―D―アピオースであり、RはH基であり、Rは上記の1989化合物の脂肪アシル基部分であり(1989化合物V1B)、(iii)Rはβ−D−キシロースであり、Rは上記の1989化合物の脂肪アシル基部分であり、RはH基であり(1989化合物V2A)、又は(iv)Rはβ−D−キシロースであり、RはH基であり、Rは上記の1989化合物の脂肪アシル基部分であり(1989化合物V2B)である。総称として、1989化合物V1A、1989化合物V1B、1989化合物V2A及び1989化合物V2Bは、「1989化合物の混合物」と呼ばれる。
【0033】
表1は、1989化合物の混合物中に1989化合物の官能基及び各1989化合物のモル%をまとめたものである。
【表1】
【0034】
OBI−821サポニンは、下記単離された式(I)の化合物を含んでもよい:(i)Rはβ―D―アピオースであり、Rは上記の1857化合物の脂肪アシル基部分であり、RはH基であり(1857化合物V1A)、(ii)Rはβ―D―アピオースであり、RはH基であり、Rは上記の1857化合物の脂肪アシル基部分であり(1857化合物V1B)、(iii)Rはβ−D−キシロースであり、Rは上記の1857化合物の脂肪アシル基部分であり、RはH基であり(1857化合物V2A)、又は(iv)Rはβ−D−キシロースであり、RはH基であり、Rは上記の1857化合物の脂肪アシル基部分であり(1857化合物V2B)である。総称として、1857化合物V1A、1857化合物V1B、1857化合物V2A及び1857化合物V2Bは、「1857化合物の混合物」と呼ばれる。
【0035】
表2は、1857化合物の混合物中に1857化合物の官能基及び各1857化合物のモル%をまとめたものである。
【表2】
【0036】
OBI−821サポニンは、一つ又は複数の下記化合物を含む:(i)1857化合物V1A、(ii)1857化合物V1B、(iii)1857化合物V2A、(iii)1857化合物V2B、(iv)1989化合物V1A、(v)1989化合物V1B、(vi)1989化合物V2A、又は(vii)1989化合物V2Bである。OBI−821サポニンにおける1857化合物の混合物と1989化合物の混合物との百分率が下記範囲内にある:
(i)約1モル%〜約15モル%の1857化合物の混合物、及び
(ii)約85モル%〜約99モル%の1989化合物の混合物。
【0037】
すべてのモル%は、0.1%の増加量で変更することができる(例えば、約87%〜約90%、約90.5%〜約97%、約3.5%〜約11%、約10〜約14%)。
【0038】
1989化合物の混合物は、約60〜70モル%の1989化合物V1A、約1〜5モル%の1989化合物V1B、約30〜40モル%の1989化合物V2A及び約0.1〜3モル%の1989化合物V2Bを含んでもよい。すべてのモル%は、0.1%の増加量で変更することができる(例えば、65%、2.5%、35.6%)。
【0039】
1857化合物の混合物は、約60〜70モル%の1857化合物V1A、約1〜5モル%の1857化合物V1B、約30〜40モル%の1857化合物V2A及び約0.1〜3モル%の1857化合物V2Bを含んでもよい。すべてのモル%は、0.1%の増加量を変更することができる(例えば、67%、1.5%、33.9%)。
【0040】
もう一つの実施例において、実質的に純粋なOBI−821は、粗キラジャサポナリアモリナコルテックス樹抽出物から精製され、そのOBI−821は、逆相HPLCによって5μmの粒度、100オングストロームの孔サイズ、4.6mm ID × 25cmLを有する対称C18カラムに、流速1ml/minで移動相Aが0.1%トリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid)を含有する蒸留水であり、移動相Bが0.1%トリフルオロ酢酸を含有するアセトニトリル(acetonitrile)であり、且つA:Bが95%:5%〜75%:25%の移動相を含む溶出プログラムを用いて11分に分析する場合、溶媒ピークを除いて、クロマトグラムのすべてのピーク総面積の90%又は以上を占める単一主要なピークであることを特徴とする。
【0041】
一実施例において、医薬組成物は、式(I)の化合物と、薬学的に許容される担体と、
を含み、
なお、Rは、β―D―アピオース又はβ−D−キシロースであり、
及びRは、それぞれH基、アルキル基又は
(1857化合物の脂肪アシル基部分)である。
【0042】
当該ワクチンは、炭水化物抗原又はその免疫原性断片と、OBI−821サポニンとを含んでもよい。もう一つの実施例において、ワクチンは、Globo H、SSEA−3、SSEA−4、Gb−4又はその混合物から選択される炭水化物抗原と、DTと、OBI−821サポニンとを含む。また一つの実施例において、ワクチンは、炭水化物抗原又はその免疫原性断片と、担体タンパク質と、OBI−821サポニンとを含む。担体タンパク質の非限定的な例は、トキソイドタンパク質と、非トキソイドタンパク質(例えば、KLH)とを含む。
【0043】
トキソイドタンパク質
炭水化物抗原と結合されたトキソイドタンパク質は、ジフテリア毒素(DT)又は破傷風トキソイド(TT)であってもよい。
【0044】
毒素は、例えば、ホルムアルデヒド(formaldehyde)、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)、UDP−ジアルデヒド(UDP−dialdehyde)、過酸化物(peroxide)、酸素(oxygen)での処理又は変異(例えば、組換え法を用いる)により、不活化することができる。Relyveld et al., Methods in Enzymology, 93:24, 1983. Woodrow and Levine, eds., New Generation Vaccines, Marcel Dekker, Inc., New York, 1989. Genth et al., Inf. and Immun., 68(3):1094−1101, 2000.組換え法を用いて毒性の低減した変異ジフテリア毒素を生産する。米国特許第5,085,862号、米国特許第5,221,618号、米国特許第5,244,657号、米国特許第5,332,583号、米国特許第5,358,868号、米国特許第5,433,975号。
【0045】
DTはジフテリア毒素交差反応物質(DT−CRM)又はジフテリアトキソイドである。DT−CRMは、変異ジフテリア毒素であり、例えば、変異又は化学修飾によって十分なADP−リボシル基を有しないようにする。DT−CRMの非限定的な例は、DT−CRM 30、DT−CRM 45、DT−CRM 176、DT−CRM 197及びDT−CRM 228を含む。ジフテリアトキソイドは、ホルムアルデヒドで不活化されたジフテリア毒素である。DTは、市販又は当該技術分野において公知の方法によって調製することができ、例えば、米国特許第5,614,382号に記載の組換えDNA技術、その全開示を参照により本明細書に組み入れることとする。
【0046】
本明細書に記載されたワクチンの炭水化物抗原は、米国特許第5,614,382号に記載の合成方法によってp−ニトロフェニルリンカー(p−nitrtophenyl linker)を通じて担体タンパク質と共役されることができ、その全開示を参照により本明細書に組み入れることとする。
【0047】
本発明のワクチンは、一つ又は複数の下記活性を誘導することができる:IgM力価より高いIgG力価、より高い補体依存性細胞傷害(CDC)活性及び/又はより高い抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性である。もう一つの実施例において、ワクチンは、一つ又は複数の下記細胞を誘導することができる:ナチュラルキラー細胞、CD4+ Tリンパ球又はCD8+ Tリンパ球であり。他の測定可能な免疫学的パラメータは、Tヘルパー細胞の活性化を含むが、これらに限定されない。
【0048】
本発明もまた、本明細書に記載されたワクチンと、薬学的に許容される媒剤と、賦形剤又は担体とを含む医薬組成物を提供する。適切な媒剤は、例えば、水、生理食塩水、右旋糖(dextrose)、グリセロール(glycerol)、エタノール(ethanol)又はそれらの類似物、及びそれらの組み合わせである。また、媒剤は、他の賦形剤、例えば、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤又はアジュバントを含んでもよい。薬学的に許容される担体は、医薬組成物の吸収又はクリアランス率を向上又は低下させるための生理学的に許容される化合物を含んでもよい。生理学的に許容される化合物は、例えば、炭水化物(例えば、グルコース(glucose)、スクロース(sucrose)又はデキストラン(dextrans))、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸(ascorbic acid)又はグルタチオン(glutathione))、キレート剤、低分子量タンパク質、洗剤、リポソーム担体又は他の安定剤及び/又は緩衝剤を含んでもよい。賦形剤は、非イオン界面活性剤、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrollidone)、ヒト血清アルブミン、水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide)、麻酔作用を有する薬剤、様々な非修飾及び誘導体化されたシクロデキストリン(cyclodextrins)であってもよい。好ましくは、非イオン界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60及びポリソルベート80を含んでもよい。好ましくは、ポリビニルピロリドンは、Plasdone C15(医薬品グレードのポリビニルピロリドン)であってもよい。麻酔作用を有する薬剤は、ベンジルアルコール(benzyl alcohol)であることが好ましい。他の生理学的に許容される化合物は、湿潤剤、乳化剤、分散剤又は防腐剤である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第21版、Mack Publishing Co.、Easton, Pa.(「Remington’s」)を参照する。本発明の医薬組成物は、補助物質、例えば、薬剤、サイトカイン又は他の生物応答修飾剤をさらに含んでもよい。その賦形剤又は担体を含む医薬組成物は公知の方法によって調製される。
【0049】
当該ワクチンは、下記投与経路に適するように製剤化することができる:吸入投与又は皮下投与を介する筋肉内投与、皮内投与、経口投与、経皮投与、経鼻投与、経頬投与、経直腸投与、経膣投与である。好適な免疫原性を誘導すれば、他の投与経路を用いることもできる。
【0050】
本発明の医薬組成物は、液体溶液または懸濁液として、或いは注射前に液体媒剤中の溶液又は懸濁物に適するような固体形態として、注射可能物質を調製されることができる。医薬組成物もまた、固体形態、乳化、活性成分を封入されたリポソーム製剤又は持続送達するための微粒子担体で調製されることができる。例えば、医薬組成物は、ワクチンを持続的に放出させることのできるように、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー(ethylenevinyl acetate copolymers)およびHytrel(登録商標)コポリマーの非吸収性不浸透性ポリマー、例えば、ヒドロゲルの膨潤性ポリマー、または再吸収性縫合糸の作成に利用されるようなコラーゲンおよび特定のポリ酸またはポリエステルの再吸収性ポリマー、油乳剤、油中水型乳剤、水中油中水型乳剤、部位特定の乳剤、持続性(long−residence)乳剤、粘着性乳剤(stickyemulsion)、マイクロエマルション、ナノエマルション、リポソーム、微小粒子、ミクロスフェア、ナノスフェア、ナノ粒子、および様々な天然または合成ポリマーの形態とすることができる。
【0051】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩及びその生理学的機能性誘導体は、例えば、アルカリ金属(例えば、ナトリウム(sodium)、カリウム(potassium))、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム(calcium)、マグネシウム(magnesium))、アンモニウム(ammonium)及びNX(XはC−Cアルキル基)の適切な塩基から誘導される塩である。アミノ基の薬学的に許容される塩は、有機カルボン酸(carboxylic acids)の塩、例えば、酒石酸、脂肪族、脂環式、芳香族、複素環式、カルボン酸及びスルホン酸クラスの有機酸、例えば、ギ酸、グルクロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、サリチル酸、ヒドロキシ安息香酸(hydroxybenzoic)、フェニル酢酸(phenylacetic)、マンデル酸(mandelic)、エンボン酸(パモ酸)(embonic (pamoic))、メタンスルホン酸(methanesulfonic)、エタンスルホン酸(ethanesulfonic)、ベンゼンスルホン酸(benzenesulfonic)、パントテン酸(pantothenic)、トルエンスルホン酸(toluenesulfonic)、2‐ヒドロキシエタンスルホン酸(2−hydroxyethanesulfonic)、スルファニル酸(sulfanilic)、ステアリン酸(stearic)、アルギン酸(algenic)、ヒドロキシ酪酸(hydroxybutyric)、シクロヘキシルアミノスルホン酸(cyclochexylaminosulfonic)、ガラクタル酸(galactaric)及びガラクツロン酸(galacturonic acid)、及びそれらの類似物、ラクトビオン酸(lactobionic)、フマル酸、及びこはく酸、有機スルホン酸、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸(isothionic)、ベンゼニルスルホン酸(benzenylesulfonic)及びp−トルエンスルホン酸(p−toluenesulfonic acids)、及び無機酸、例えば、塩化水素酸(hydrochloric)、臭化水素酸(hydrobromic)、ヨウ化水素酸(hydroiodic)、硝酸、炭酸、硫酸、スルファミン酸及びりん酸、及びそれらの類似物が含まれる。ヒドロキシ基(hydroxy group)を含有する化合物の薬学的に許容される塩は、前記化合物のアニオンを、たとえば、Na、NH又はNX(式中、Xは、例えばC〜Cアルキル基である)、Ca++、Li、Mg++、又はK及び亜鉛という好適なカチオンと組み合わせるもの、或いは第一級、第二級及び第三級アミン、環状アミン、N,N’ジベンジルエチレンジアミン(N,N’−dibenzylethylenediamine)、クロロプロカイン(chloroprocaine)、コリン、ジエタノールアミン(diethanolamine)、エチレンジアミン(ethylenediamine)、メグルミン(N−メチルグルカミン)(meglumine (N−methylglucamine))、及びプロカイン(procaine)及びそれらの類似物から製造される有機塩である。これらすべての塩は、従来の方法に従って対応する化合物から調製され、例えば、適切な酸又は塩基を遊離形態の化合物と反応させて調製することができる。
【0052】
免疫応答を誘導する/がん細胞を抑制する方法
本発明のもう一つの態様は、免疫応答を誘導する方法に関するものであり、それは本明細書に記載のワクチンを需要のある個体に投与するステップを含む。免疫応答は、NK細胞応答、ADCC及びCDC活性、及びIgMとIgGの産生を含むが、これらに限定されない。
【0053】
もう一つの態様において、本発明は、がん細胞を抑制する方法を提供するものであり、それは本明細書に記載のワクチンを需要のある個体に投与するステップを含む。一実施例において、がんは、乳癌、肺癌、食道癌、直腸癌、胆管癌、肝癌、頬癌、胃癌、結腸癌、鼻咽頭癌、腎臓癌(kidney/renal cancer)、脳腫瘍、前立腺癌、卵巣癌、子宮頚部癌、子宮内膜癌、膵臓癌、睾丸癌、膀胱癌、頭頚部癌、口腔癌、神経内分泌癌、副腎癌、甲状腺癌、骨癌、皮膚癌(例えば、基底細胞癌、扁平上皮癌又は黒色腫)から選択される。もう一つの実施例において、がんは、Globo Hを発現するがんである。Globo Hを発現するがんの非限定的な例は、乳癌、肺癌、胃癌、結腸癌、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌及び子宮内膜癌が含まれる。ワクチンにより生成された抗体(例えば、Globo H抗体)は、本質的にGlobo Hを発現する癌を抑制する。
【0054】
特定の実施形態において、ワクチンの有効量は、所望の免疫効果を誘導するための量であり、例えば、個体における特定の炭水化物抗原(例えば、Globo H)に対するIgGの産生を刺激するための量である。ワクチン又は医薬組成物の有効量又は投与量は、炭水化物抗原量、用いられたアジュバントの種類、投与経路及び治療される個体の年齢、体格及び病状に応じて変更する。免疫原性を誘導するためのワクチン又は医薬組成物の精確な量は、医師により決定される。
【0055】
当該ワクチンは、数か月から数年の間の長期の免疫保護効果を達成するために、特定の時間間隔で単回又は複数回の追加抗原投与量を有する又は有しない開始用量(stat dose)として投与可能である。投与頻度は、様々な要因、例えば、症状の重症度、望ましい免疫保護の程度、前記組成物が予防または治療目的で使用するか否かなどによって変化することができる。例えば、一実施例において、本発明の前記組成物が月1回、月2回、月3回、隔週(qow)、週1回(qw)、週2回(biw)、週3回(tiw)、週4回、週5回、週6回、隔日(qod)、毎日(qd)、1日2回(qid)、または1日3回(tid)で投与される。当該ワクチンもまた、他の従来の治療、例えば、化学療法、標的治療又はがん治療のための腫瘍関連炭水化物抗原を標的とする抗体を同時又は順次に投与することができる。
【0056】
本発明は、更に下の例によって説明され、但し、それらは説明の目的で提供するものであり、本発明を限定することを企図するものではない。本発明に記載された特定の実施例に本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなくに様々な変更及び修正が可能であり、且つ同様又は類似の結果を得ることは、当業者によって理解されるものである。
【0057】
実施例1:炭水化物/トキソイドタンパク質の比率の高いワクチンの調製及びOBI−821の抽出
Globo Hは、当該技術分野において公知の方法を通してKLH又はDTと結合され、例えば、米国特許第6,544,952号又は第8,268,969号に記載の方法に従って、その全開示を参照により本明細書に組み入れることとする。得られたワクチンは、Globo H:DT(Globo HとDTとの分子の比率=2〜4:1)を含む。
【0058】
複合糖質を生産させる基本手順
複合糖質は以下のように調製する。
【化4】
【0059】
BSA、DT−CRM197、および破傷風トキソイド(Adimmune、台湾)をpH7.2の100mMリン酸緩衝液に溶解し(約5mg/ml)、30〜40当量のGlobo Hハーフエステル35を加える。混合物を室温で24時間穏やかに攪拌する。次に、前記混合物を脱イオン水で希釈し、脱イオン水を5回取り換ながら透析する。そしてその溶液を凍結乾燥して白色粉末にする。得られたGlobo H−タンパク質結合体をMALDI−TOF分析によって特徴づけられ、炭水化物組み込み率を測定することができる。41(GH−BSA)はMALDI−TOFで76029に観測され、42(GH−DT−CRM197)は62183に観測され、43(GH−TT)は162902に観測され、44(GH−BaMV)は測定されなかった。MALDI−TOF MSで複合糖質を分析する。複合糖質および一次担体タンパク質はddHO(約1μg/μl)で戻すことができる。マトリックスであるシナピン酸(sinapinic acid)をアセトニトリル(acetonitrile)および脱イオン水1:1で新たに調製し、最終マトリックスを0.1%のTFAを含む10mg/mLの濃度にする。マトリックスおよび複合糖質を穏やかにロードして混合した後、プレートを空気乾燥させた。測定前にウシ血清アルブミンを用いる校正が必要である。各複合糖質および一次タンパク質サンプルを線形ポジティブモードで検出した。平均分子量は、担体タンパク質上に組み込まれた炭水化物分子の平均値で計算することができる。
【0060】
炭水化物抗原分子:トキソイドタンパク質分子の比率が5:1以上のワクチンは、下記ステップに従って製造する。
(a)10ml〜25mlのGlobo H(OBI Pharmaから購入可能、台湾)及びp‐ニトロフェニルエステルリンカー(p−nitrophenyl ester linker)(OBI Pharmaから購入可能である、台湾)を25μlのDMF(Sigma−Aldrichから購入可能、米国)に溶解する。
(b)25mgのDTを2.5mlのリン酸緩衝液(即ち、pH>8の塩基性緩衝液)で溶解する。
(c)ステップ(a)の混合物をステップ(g)の混合物に加えて室温で一晩置く。得られた混合物のpHが8〜9.2である。
【0061】
結果:MALDI−TOF MS測定で、10mlのGlobo HはGlobo H:DT(8:1)を含むワクチンを得て、25mlのGlobo HはGlobo H:DT(24:1)を含むワクチンを得る。
【0062】
OBI−821サポニンの調製
OBI−821サポニンの調製は、下記ステップに従ってキラジャサポナリアモリナコルテックス樹抽出物から抽出する。
(a)大きい粒子径のC18の逆相クロマトグラフィーによってキラジャサポナリアモリナコルテックス樹抽出物を予め濾過し、そしてシリカ系の順相分取クロマトグラフィーによって精製する。上記によって、粗OBI−821を得る。
(b)続いて、大きい粒子径のC18の逆相クロマトグラフィーによってステップ(a)の粗OBI−821を予め濾過し、そして分取逆相HPLCを行う。OBI−821物質は脱塩及び凍結乾燥処理で順次に生成する。
【0063】
キラジャサポナリアモリナコルテックス樹の皮から抽出された精製OBI−821サポニンは、質量スペクトルによって分析する。図5Aにおける1989.01にある質量ピーク、図5Bにおける1989.12にある質量ピーク及び1989.13にある質量ピークは、約1989の分子量を有する化合物が存在することを示した。約1989の分子量を有する化合物のモル比は、図5Aにおける89.8%、図5Bにおける96.8%及び図5Cにおける87.0%である。同様に、図5Aにおける1856.97にある質量ピーク、図5Bにおける1856.02にある質量ピーク及び1857.09にある質量ピークは、約1857の分子量を有する化合物が存在することを示した。約1857の分子量を有する化合物のモル比は、図5Aにおける10.2%、図5Bにおける3.2%及び図5Cにおける13%である。
【0064】
精製OBI−821サポニンは、更にクロマトグラフィーによって分析する。図6は、LC−UVクロマトグラムの画像(カラム:PolyLCPolyHYDROXYETHYL A 200 * 4.6 mm 5μm, 300 A)である。第1ピークは、1989化合物V1(A及びB)及び1857化合物V1(A及びB)(約65.94%)が存在することを示し、第2ピークは、1989化合物V2(A及びB)及び1857 化合物V2(A及びB)(約34.06%)が存在することを示した。図7はLC/MSクロマトグラムの画像(カラム:Waters Symmetry ODS 150*2.1 mm)である。上部の図における第1ピークは、1989化合物V1B及びV2B(約2.2%)が存在することを示し、第4ピークは、1989化合物V1A及びV2A(約97.8%)が存在することを示した。下部の図における第2ピークは、1857化合物V1B及び1857化合物V2B(約1.9%)が存在することを示し、第3ピークは、1857化合物V1A及び1857化合物V2Aが存在することを示した。
【0065】
実施例2:炭水化物/トキソイドタンパク質の比率の高いワクチンの免疫原性及びOBI−821サポニンアジュバント効果
CL57B/6マウスを用いて例1におけるGlobo H/DT(8:1)のワクチンのin vivo免疫原性及びOBI−821サポニンアジュバント効果の評価を行う。
【0066】
約8週齢のCL57B/6マウスを下記試験群の4群に無作為に群分した。
【0067】
第1回注射前又は0日目及び各注射後の3日目(即ち、10日目、17日目及び24日目)に眼窩又は顔面静脈より抗凝固剤なしで血液サンプルを採取する。血液サンプルを遠心分離して血清及び血液細胞を分離する。ELISA分析を行うための血清を採取して−20℃で保存する。各マウスからの血清を抗Globo H IgGの分析に用いるために連続希釈する。Globo H−セラミドをアッセイプレートにコートして一晩置いて、次いで、1×ブロッキングバッファーで30分ブロッキングしてPBSTで洗淨する。希釈された血清サンプルをアッセイプレートに加えて、室温(RT)で1時間インキュベートして洗淨する。ヤギ抗マウスIgG−AP二次抗体(Southern Biotech)をサンプルに加えて、RTで45分インキュベートする。プレートを再び洗淨して、続いて色素原基質を加えて37℃で20分インキュベートする。停止液を加えることによって反応を中止する。405nmの波長でプレートリーダー(Molecular Device)によって吸光度(optical density)を定量する。統計分析のためにMann−Whitney t−testを使用する。図1A及び図1Bは、測定されたワクチンの抗GloboH IgG力価の定量を示した。
【0068】
結果:Globo H/DT(比率8:1)免疫マウスからIgG力価は、C34アジュバントを含有するGlobo H/KLHのIgG力価より有意に高い(P<0.01)である。Globo H/DT(比率8:1)免疫マウスからIgG力価は、OBI−821サポニンアジュバントを含有するGlobo H/KLHのIgG力価より有意に高い(図1(A)を参照)である。使用された担体タンパク質の種類に問わず、OBI−821サポニンは、C34アジュバントと比較して統計的に有意に高いIgG力価を誘導する(P<0.01、図1(A)及び図1(B)を参照)。
【0069】
実施例3:ADCC及びCDCのアッセイで炭水化物/トキソイドタンパク質の比率の高いワクチンの免疫原性及びOBI−821サポニンアジュバント効果の評価を行う
ルイスラット(Lewis rats)の4群が表3におけるワクチンで免疫される。
【表3】
【0070】
0日目、7日目、14日目及び21日目にラットを表3におけるワクチンで皮下投与によって免疫する。第1回注射前(即ち、0日目)、及び10日目、17及び24日目に末梢血単核細胞(PBMC)及び血漿を採取する。
【0071】
当該技術分野において公知のカルセイン−AM法(Calcein AM release method)によってADCC及びCDCのアッセイを行う。ステップは下記のように記載されている。
カルセイン−AMで標的細胞を標識する。
MCF−7乳癌細胞(標的細胞)を2mML−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム及び0.01mg/mLインシュリン、10%ウシ胎仔血清を含有する最小必須培地に培養する。標的細胞を96ウェルプレート(5×10cells/ウェル)に加えて、37℃で5%CO2の加湿で一晩培養する。培地を除去して、各ウェルをリン酸バッファー(PBS)で1回洗淨する。100Lの20Mカルセイン−A溶液を各ウェル(2nmol/ウェル)に加えて、37℃で5%CO2の加湿で2時間インキュベートする。上清を乾燥させて、各ウェルをPBSで3回洗淨する。
血漿サンプルで標的細胞を培養する。
「Total release」及び「Background」の対照群を除いて、血漿サンプルを熱非働化して、50Lの1/5X熱非働化血漿サンプルを各ウェルに加える。50LのPBMC又は血清を加えた後、最終希釈倍数が1/10Xにする。プレートを37℃(暗所)で30分インキュベートする。
PBMC又は補体で標的細胞を培養する。
インキュベートした後、「Total release」及び「Background」の対照群を除いて、ADCCアッセイにおいて50マイクロリットルのPBMC(2x10 cells/ml)(E:T比=20:1にする)を各ウェルに加え、且つCDCアッセイにおいて50マイクロリットルの1/10X希釈された血清を各ウェルに加える。混合物の反応を37℃で5%CO2の加湿で4時間インキュベートする。インキュベート時間の最後の15分に、2% Triton溶液を含有するフェノールレッドなしのMEM(50マイクロリットル)を「Total release」の対照群に加えて、且つフェノールレッドなしのMEM(50マイクロリットル)を「Background」の対照群に加える。各プレートを100gで5分遠心分離して、続いて80マイクロリットルの上清を黒色96ウェルプレートに移す。蛍光は485 nmの励起波長及び538 nmの発光波長で測定する。
【0072】
図2A図2Dは、G2、G3及びG4ワクチンのin vivo ADCC及びCDC活性を示す。
【0073】
結果:図2B及び図2Dに示すように、24日目にG3ワクチン(OBI−821サポニンアジュバントを有する)のADCC及びCDC活性は、G2ワクチン(OBI−821サポニンアジュバントを有しない)のADCC及びCDC活性と比較してより高いである。図2B及び図2Dに示すように、24日目にG4ワクチン(Golbo H/DT 比が24:1)のADCC及びCDC活性は、G3ワクチン(Golbo H/DT 比が8:1)のADCC及びCDC活性と比較してより高いである。この結果によって、OBI−821サポニンアジュバントと、炭水化物抗原/トキソイドタンパク質の比率が5:1以上のワクチンとがより長く持続するADCC及びCDC応答を誘導且つ強化することを示した。
【0074】
実施例4:炭水化物/トキソイドタンパク質の比率の高いワクチンの免疫原性及びOBI−821サポニンアジュバント効果の評価
CL57B/6マウス又はBalb/cマウスを用いて例1におけるGlobo H/DT(8:1)のワクチン及びGlobo H/DT(16:1)のワクチンと、OBI−821サポニンアジュバントとのin vivo評価を行う。
【0075】
約8週齢のCL57B/6マウスを下記試験群の8群に無作為に群分した。
【0076】
第1回注射前又は0日目、10日目、17日目及び24日目に眼窩又は顔面静脈より抗凝固剤なしで血液サンプルを採取する。血液サンプルを遠心分離して血清及び血液細胞を分離する。ELISA分析を行うための血清を採取して−20℃で保存する。各マウスからの血清を抗Globo H IgGの分析に用いるために連続希釈する。図3A図3B及び図4は、測定されたワクチンの抗GloboH IgM力価及び抗GloboH IgG力価の定量を示した。
【0077】
結果:OBI−821サポニンアジュバントを有するワクチンは、C34アジュバントを有するワクチンより統計的に有意に高い抗GloboH IgM及び抗GloboH IgGを誘導することを示した(図3A図3B及び図4を参照)。なお、下記統計的に有意な差が確認された。
●17日目にG3ワクチン(OBI−821サポニン)のIgM力価は、G5ワクチン(C34)のIgM力価より有意に高い(p=0.02)、
●17日目にG1ワクチン(OBI−821サポニン)のIgM力価は、G6ワクチン(C34)のIgM力価より有意に高い(p=0.03)、
●24日目にG3ワクチン(OBI−821サポニン)のIgM力価は、G5ワクチン(C34)のIgM力価より有意に高い(p=0.03)、
●17日目にG3ワクチン(OBI−821サポニン)のIgG力価は、G5ワクチン(C34)のIgG力価より有意に高い(p=0.001)、
●17日目にG1ワクチン(OBI−821サポニン)のIgG力価は、G6ワクチン(C34)のIgG力価より有意に高い(p=0.003)、
●24日目にG3ワクチン(OBI−821サポニン)のIgG力価は、G5ワクチン(C34)のIgG力価より有意に高い(p=0.003)、及び
●24日目にG1ワクチン(OBI−821サポニン)のIgG力価は、G6ワクチン(C34)のIgG力価より有意に高い(p=0.004)。
【0078】
この結果によって、OBI−821サポニンアジュバントは、C34アジュバントと比較してIgM及びIgG応答を有意に強化することを示した。
【0079】
17日目及び24日目にGlobo H/KLH/OBI−821サポニン(G1)は、Globo H/DT(3:1)/OBI−821サポニン(G2)と比較して有意に高いIgM及びIgG力価を誘導する。特定の理論に縛られるものではないが、G1は高い炭水化物の密度(KLH担体タンパク質当たり約700のGlob Hユニット)を有し、且つ強力な免疫応答を誘導するのに対し、G2は低い炭水化物の密度(DT担体タンパク質当たり3のGlobo Hユニット)を有し、且つ弱い免疫応答を誘導すると考えられる。なお、下記統計的に有意な差が確認された。
●17日目にG1ワクチン(KLH)のIgM力価は、G2ワクチン(DT)のIgM力価より有意に高い(p=0.003)、
●24日目にG1ワクチン(KLH)のIgM力価は、G2ワクチン(DT)のIgM力価より有意に高い(p=0.03)、
●24日目にG1ワクチン(KLH)のIgG力価は、G2ワクチン(DT)のIgG力価より有意に高い(p=0.004)。
【0080】
17日目及び24日目にGlobo H/DT(Globo HとDTとの分子の比率が8:1)/OBI−821サポニン(G3及びG4)と、Globo H/DT(Globo HとDTとの分子の比率が16:1)/OBI−821サポニン(G7)とのIgM及びIgG力価は、Globo H/KLH/OBI−821サポニン(GI)のIgM及びIgG力価に相当する(図4を参照)。GH−DT(Globo HとDTとの分子の比率が8:1)は、GH−KLM(Globo HとDTとの分子の比率が700:1)と比較して低い炭水化物の密度を有するが、GH−KLMの免疫原性に相当することを示した。
【0081】
Globo H/DTの比率(Globo HとDTとの分子の比率が8:1又は16:1)の高いワクチンは、Globo H/DTの比率(3:1)の低いワクチンと比較してより高い及び長く持続するIgM及びIgG力価を誘導する。なお、下記統計的に有意な差が確認された。
●17日目にG3ワクチン(Globo HとDTとの分子の比率が8:1)のIgM力価は、G2ワクチン(3:1の比率)のIgM力価より有意に高い(p=0.02)、
●17日目にG7ワクチン(Globo HとDTとの分子の比率が16:1)のIgM力価は、G2ワクチン(3:1の比率)のIgM力価より有意に高い(p=0.006)、
●17日目にG3ワクチン(Globo HとDTとの分子の比率が8:1)のIgG力価は、G2ワクチン(3:1の比率)のIgG力価より有意に高い(p=0.01)、
●17日目にG7ワクチン(Globo HとDTとの分子の比率が16:1)のIgG力価は、G2ワクチン(Globo HとDTとの分子の比率が3:1)のIgG力価より有意に高い(p=0.03)、
●24日目にG3ワクチン(Globo HとDTとの分子の比率が8:1)のIgG力価は、G2ワクチン(3:1の比率)のIgG力価より有意に高い(p=0.01)、
●24日目にG7ワクチン(Globo HとDTとの分子の比率が16:1)のIgG力価は、G2ワクチン(Globo HとDTとの分子の比率が3:1)のIgG力価より有意に高い(p=0.01)、
17日目及び25日目にGlobo H/DT(Globo HとDTとの分子の比率が8:1)/OBI−821サポニン(G3)及びGlobo H/DT(16:1)/OBI−821サポニン(G7)のIgM力価は、Globo H/DT(Globo HとDTとの分子の比率が3:1)/OBI−821サポニン(G2))のIgM力価より有意に高い(p<0.05)。
【0082】
本明細書中に引用されるすべての公報、特許および特許出願は、その全体が参照により本明細書中に援用されることが具体的かつ個別に示唆されるのと同程度に、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
本発明は、本明細書中に開示される実施形態の範囲によって限定されるべきではなく、それら実施形態は、本発明の個々の局面の単なる例示として意図される。本明細書中に記載されるものに加えて、本発明のモデルおよび方法に対する種々の改変は、前述の説明および教示によって当業者に明らかとなり、そして同様に本発明の範囲内に含まれることを意図される。このような改変または他の実施形態は、本発明の正確な範囲および趣旨から逸脱することなく実施され得る。
図1
図2
図3
図4A-D】
図4E-F】
図5A
図5B
図5C
図6
図7