特許第6359573号(P6359573)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359573
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20180709BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20180709BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   H01L25/04 C
   H01L23/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-8331(P2016-8331)
(22)【出願日】2016年1月19日
(65)【公開番号】特開2017-130531(P2017-130531A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2017年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100088487
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 允之
(72)【発明者】
【氏名】桑原 芳光
【審査官】 柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−084926(JP,A)
【文献】 特開平11−345935(JP,A)
【文献】 特開2003−309133(JP,A)
【文献】 特開2004−214524(JP,A)
【文献】 特開平06−177272(JP,A)
【文献】 特開2001−298152(JP,A)
【文献】 特開平04−352457(JP,A)
【文献】 実開昭52−156449(JP,U)
【文献】 特開平07−037914(JP,A)
【文献】 実開昭50−019362(JP,U)
【文献】 特表2006−521685(JP,A)
【文献】 特開2001−036002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 23/00
H01L 23/48
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の第1のフレームと、
複数の半導体素子と、
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1のフレームの内側に設けられ、少なくとも一部が前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられ、樹脂を含み、前記複数の半導体素子を保持する第2のフレームと、
前記第1の電極の周囲に設けられ、前記第1のフレームと前記第1の電極を接続し、金属を含み、環状の第1の部材と、
前記第2の電極の周囲に設けられ、前記第1のフレームと前記第2の電極を接続し、金属を含み、環状の第2の部材と、
前記第1の電極の周囲に設けられ、少なくとも一部が前記第1の部材と前記第2のフレームとの間に設けられ、外周部の少なくとも一部の領域が前記第1のフレームに接するか又は重なり、前記第1の部材よりも弾性限界に至るまでの変位量が大きい、環状の第1の弾性体と、
前記第2の電極の周囲に設けられ、少なくとも一部が前記第2の部材と前記第2のフレームとの間に設けられ、前記第2の部材よりも弾性限界に至るまでの変位量が大きい、環状の第2の弾性体と、
を備え
前記領域が複数設けられ、前記領域が前記第1の部材の外周部に設けられた凸領域であり、
前記第2のフレームが、第1のサブフレーム、前記第1のサブフレームとの間に前記半導体素子を挟む第2のサブフレームを有し、前記第1のサブフレームと前記第2のサブフレームの一方に複数の凹部が設けられ、前記第1のサブフレームと前記第2のサブフレームの他方に前記複数の凹部にはめ込まれた凸部が設けられ、前記凹部と前記第1の部材との間に挟まれた前記第1の弾性体の外周部に前記領域が設けられた半導体装置。
【請求項2】
前記第1のフレーム、前記第1の電極、前記第2の電極、前記第1の部材、及び、前記第2の部材で囲まれる領域内に存在する空洞部の体積を第1の体積とし、前記第1の弾性体及び前記第2の弾性体の占める体積を第2の体積とした場合に、前記第1の体積と前記第2の体積の和に対して前記第2の体積が占める割合が45%以下である請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
環状の第1のフレームと、
複数の半導体素子と、
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1のフレームの内側に設けられ、少なくとも一部が前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられ、樹脂を含み、前記複数の半導体素子を保持する第2のフレームと、
前記第1の電極の周囲に設けられ、前記第1のフレームと前記第1の電極を接続し、金属を含み、環状の第1の部材と、
前記第2の電極の周囲に設けられ、前記第1のフレームと前記第2の電極を接続し、金属を含み、環状の第2の部材と、
前記第1の電極の周囲に設けられ、少なくとも一部が前記第1の部材と前記第2のフレームとの間に設けられ、外周部の少なくとも一部の領域が前記第1のフレームに接するか又は重なり、前記第1の部材よりも弾性限界に至るまでの変位量が大きい、環状の第1の弾性体と、
前記第2の電極の周囲に設けられ、少なくとも一部が前記第2の部材と前記第2のフレームとの間に設けられ、前記第2の部材よりも弾性限界に至るまでの変位量が大きい、環状の第2の弾性体と、
を備え、
前記第1のフレーム、前記第1の電極、前記第2の電極、前記第1の部材、及び、前記第2の部材で囲まれる領域内に存在する空洞部の体積を第1の体積とし、前記第1の弾性体及び前記第2の弾性体の占める体積を第2の体積とした場合に、前記第1の体積と前記第2の体積の和に対して前記第2の体積が占める割合が45%以下である半導体装置
【請求項4】
前記領域が複数設けられ、前記領域が前記第1の部材の外周部に設けられた凸領域である請求項記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の弾性体及び前記第2の弾性体は、シリコーン、PTFE、又は、ポリイミドである請求項1乃至請求項4いずれか一項記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧接型半導体装置は、両面放熱によるパワー密度向上と、高電圧・大電流下での高信頼性を実現する。圧接型半導体装置は、絶縁性のフレーム内部に設けられた複数の半導体素子が、上下の電極ブロックによって挟まれ、気密封止された構造を備える。上下の電極ブロックに外部から押圧力が加えられることにより、内部の電気的接触が保たれる。
【0003】
圧接型半導体装置は、内部の半導体素子の一部が故障破壊しても、半導体装置自体が破損することなく短絡する。このため、圧接型半導体装置を直列に接続して使用することで、半導体素子の破壊後も、即時にシステムを停止させることなく稼働が可能になるという利点がある。
【0004】
しかし、故障破壊した半導体素子に過剰な負荷がかかり過電流が流れると、著しい温度上昇により半導体素子が溶融して蒸発する場合がある。半導体素子が蒸発することで、内部圧力が上昇して半導体装置が爆発し破損に至るおそれがある。半導体装置の破損が生じると装置の個片が周囲に飛散し、半導体装置周辺の回路や冷却装置を損傷し、システムの稼働が不能となるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−91455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、破損の抑制を可能にする圧接型の半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の半導体装置は、環状の第1のフレームと、複数の半導体素子と、第1の電極と、第2の電極と、前記第1のフレームの内側に設けられ、少なくとも一部が前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられ、樹脂を含み、前記複数の半導体素子を保持する第2のフレームと、前記第1の電極の周囲に設けられ、前記第1のフレームと前記第1の電極を接続し、金属を含み、環状の第1の部材と、前記第2の電極の周囲に設けられ、前記第1のフレームと前記第2の電極を接続し、金属を含み、環状の第2の部材と、前記第1の電極の周囲に設けられ、少なくとも一部が前記第1の部材と前記第2のフレームとの間に設けられ、外周部の少なくとも一部の領域が前記第1のフレームに接するか又は重なり、前記第1の部材よりも弾性限界に至るまでの変位量が大きい、環状の第1の弾性体と、前記第2の電極の周囲に設けられ、少なくとも一部が前記第2の部材と前記第2のフレームとの間に設けられ、前記第2の部材よりも弾性限界に至るまでの変位量が大きい、環状の第2の弾性体と、を備え、前記領域が複数設けられ、前記領域が前記第1の部材の外周部に設けられた凸領域であり、前記第2のフレームが、第1のサブフレーム、前記第1のサブフレームとの間に前記半導体素子を挟む第2のサブフレームを有し、前記第1のサブフレームと前記第2のサブフレームの一方に複数の凹部が設けられ、前記第1のサブフレームと前記第2のサブフレームの他方に前記複数の凹部にはめ込まれた凸部が設けられ、前記凹部と前記第1の部材との間に挟まれた前記第1の弾性体の外周部に前記領域が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態の半導体装置の模式図。
図2】第1の実施形態の半導体装置の模式上面図。
図3】比較形態の半導体装置の模式図。
図4】第1の実施形態の半導体装置の作用・効果の説明図
図5】第2の実施形態の半導体装置の模式上面図。
図6】第3の実施形態の半導体装置の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書中、「セラミック」とは、無機物を焼き固めた焼結体を意味するものとする。
【0010】
本明細書中、「弾性限界に至るまでの変位量」とは、部材に力を加えて変形させる場合に、弾性を失うまでに部材が変位可能な量を意味するものとする。2つの部材の「弾性限界に至るまでの変位量」を比較する場合、2つの部材に同じ向きの応力を加え、それぞれの部材が弾性を失うまでに変位する量を比較するものとする。
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一及び類似の部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
実施形態の半導体装置は、セラミックを含み、環状の第1のフレームと、複数の半導体素子と、第1の電極と、第2の電極と、第1のフレームの内側に設けられ、少なくとも一部が第1の電極と第2の電極との間に設けられ、樹脂を含み、複数の半導体素子を保持する第2のフレームと、第1の電極の周囲に設けられ、第1のフレームと第1の電極を接続し、金属を含み、環状の第1の部材と、第2の電極の周囲に設けられ、第1のフレームと第2の電極を接続し、金属を含み、環状の第2の部材と、第1の電極の周囲に設けられ、少なくとも一部が第1の部材と第2のフレームとの間に設けられ、外周部の少なくとも一部の領域の端部が第1のフレームに接するか又は重なり、第1の部材よりも弾性限界に至るまでの変位量が大きい、環状の第1の弾性体と、第2の電極の周囲に設けられ、少なくとも一部が第2の部材と第2のフレームとの間に設けられ、第2の部材よりも弾性限界に至るまでの変位量が大きい、環状の第2の弾性体と、を備える。
【0013】
図1は、本実施形態の半導体装置の模式図である。図1(a)が模式断面図、図1(b)が半導体素子の模式断面図、図1(c)は、半導体装置の一部の拡大模式断面図である。本実施形態の半導体装置は、圧接型半導体装置である。本実施形態の半導体装置は、例えば、PPI(プレスパックIEGT)である。
【0014】
本実施形態のIEGTは、複数の半導体素子10、ハウジング(第1のフレーム)12、樹脂フレーム(第2のフレーム)14、第1の熱補償板16a、第2の熱補償板16b、第1の電極ブロック(第1の電極)18、第2の電極(第2の電極)ブロック20、第1のフランジ(第1の部材)22、第2のフランジ(第2の部材)24、第1の保護材(第1の弾性体)26、第2の保護材(第2の弾性体)28、第1の金属板30、第2の金属板32、第3の金属板34、空洞部40を備える。
【0015】
実施形態の半導体装置は、複数の半導体素子10を内部に配置する。図1(b)に示すように、半導体素子10は、第1の面に第1のパッド電極10a、第1の面と反対側の第2の面に第2のパッド電極10bを備える。第1のパッド電極10aと第2のパッド電極10bの間が、半導体チップ領域10cである。
【0016】
半導体素子10は、例えば、シリコン(Si)を用いたIEGT(Injection Enhanced Gate Transistor)である。IEGTは、電子注入促進効果を備えるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。第1のパッド電極10aは、例えば、コレクタ電極である。第2のパッド電極10bは、例えば、エミッタ電極である。半導体素子10は、図示しないゲートパッド電極を備える。
【0017】
なお、半導体素子10は、上下に電極を備えるデバイスであれば、特に限定されるものではなく、例えば、FRD(Fast Recovery Diode)等のダイオードであってもかまわない。また、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であってもかまわない。また、例えば、IEGTとFRDが混載されてもかまわない。また、ダイオードとIEGTがワンチップ化されたRC−IEGT(Reverse Coducting−IEGT)であってもかまわない。さらに、シリコンに限らず、炭化珪素(SiC)を用いたデバイスであってもかまわない。
【0018】
半導体素子10は、ハウジング(第1のフレーム)12の内側に配置される。ハウジング12は環状であり、セラミックで形成される。ハウジング12は、例えば、円筒形状である。
【0019】
ハウジング12の内径は、例えば、80mm以上である。ハウジング12の径方向の厚さは、例えば、4mm以上20mm以下である。
【0020】
ハウジング12は、例えば、アルミナである。アルミナ以外にも、例えば、窒化珪素、ジルコニア、窒化アルミニウム等を用いることも可能である。
【0021】
ハウジング12は、例えば、第1の電極ブロック18と第2の電極ブロック20の絶縁性(沿面距離)を保つための突起部12aを備える。
【0022】
樹脂フレーム14は、ハウジング12の内側に設けられる。樹脂フレーム14の少なくとも一部が第1の電極ブロック18と第2の電極ブロック20との間に設けられる。樹脂フレーム14は、樹脂で形成される。
【0023】
樹脂フレーム14は、複数の半導体素子10を保持する。樹脂フレーム14は、半導体素子10間の絶縁距離を確保し、複数の半導体素子10をアライメントする機能を備える。
【0024】
樹脂フレーム14は、第1のサブフレーム14aと第2のサブフレーム14bとを有する。第1のサブフレーム14aと第2のサブフレーム14bとの間に半導体素子10が挟まれる。
【0025】
第1のサブフレーム14aには、複数の凹部Xが設けられる。また、第2のサブフレーム14bには、複数の凸部Yが設けられる。凹部Xに凸部Yがはめ込まれることにより、第1のサブフレーム14aと第2のサブフレーム14bとが固定されて一体化する。
【0026】
第1のサブフレーム14aと第2のサブフレーム14bは、材料の弾性を利用した固定方法、いわゆるスナップフィットにより固定される。なお、複数の凹部Xが第2のサブフレーム14bに、複数の凸部Yが第1のサブフレーム14aに設けられる構成でもかまわない。
【0027】
第1の熱補償板16aは、半導体素子10の第1の面側に設けられる。第2の熱補償板16bは、半導体素子10の第2の面側に設けられる。第1の熱補償板16a、第2の熱補償板16bには、半導体素子10と熱膨張係数の近い材料が適用される。例えば、半導体素子10がシリコンの場合には、シリコンと熱膨張係数の近いモリブデンが材料として適用される。
【0028】
第1の電極ブロック18は、半導体素子10の第1の面側に設けられる。また、第2の電極ブロック20は、半導体素子10の第2の面側に設けられる。第1の電極ブロック18及び第2の電極ブロック20は、例えば、円柱形状である。
【0029】
第1の電極ブロック18は、熱補償板16aに接して設けられ、第2の電極ブロック20は熱補償板16bに接して設けられる。第1の電極ブロック18及び第2の電極ブロック20は、金属、例えば、銅で形成される。
【0030】
第1のフランジ22は、第1の電極ブロック18の周囲に設けられる。第1のフランジ22は環状である。第1のフランジ22は、金属、例えば、銅、ステンレスで形成される。
【0031】
第1のフランジ22は、第1の電極ブロック18とハウジング12を接続する。第1の電極ブロック18と第1のフランジ22は、例えば、銀ロウ付けで接続される。
【0032】
第1のフランジ22は、第1の金属板30及び第2の金属板32を介してハウジング12に接続される。第1の金属板30及び第2の金属板32は、例えば、第1のフランジ22よりも高融点、且つ、セラミックと接着性の高い金属で形成される。第1の金属板30及び第2の金属板32は、例えば、鉄ニッケル合金で形成される。第1の金属板30及び第2の金属板32は、環状である。
【0033】
第2の金属板32と第1のフランジ22は、例えば、銀ロウ付けで接続される。第1の金属板30はメタライジングされたハウジング12の表面に接着される。第1の金属板30及び第2の金属板32は、例えば、レーザを用いた溶接により接合される。
【0034】
第2のフランジ24は、第2の電極ブロック20の周囲に設けられる。第2のフランジ24は環状である。第2のフランジ24は、金属、例えば、銅、ステンレスで形成される。
【0035】
第2のフランジ24は、第2の電極ブロック20とハウジング12を接続する。第2の電極ブロック20と第2のフランジ24は、例えば、銀ロウ付けで接続される。
【0036】
第2のフランジ24は、第3の金属板34を介してハウジング12に接続される。第3の金属板34は、例えば、第2のフランジ24よりも高融点、且つ、セラミックと接着性の高い金属で形成される。第3の金属板34は、例えば、鉄ニッケル合金で形成される。第3の金属板34は、環状である。
【0037】
第3の金属板34と第2のフランジ24は、例えば、銀ロウ付けで接続される。第3の金属板34はメタライジングされたハウジング12の表面に接着される。
【0038】
半導体素子10と第1のフランジ22との間の距離は、半導体素子10と第2のフランジ24との間の距離よりも小さい。
【0039】
半導体素子10が収容される半導体装置の内部は、ハウジング12、第1の電極ブロック18、第2の電極ブロック20、第1のフランジ22、第2のフランジ24、第1の金属板30、第2の金属板32、及び、第3の金属板34によって気密封止される。半導体装置の内部には、不活性ガス、例えば、窒素ガスが充填される。不活性ガスを充填することによって、内部の半導体素子10、第1の熱補償板16a、第2の熱補償板16b等が酸化されることを防止している。
【0040】
第1のフランジ22、第2のフランジ24は、例えば、板状の金属で、適度な強さのばね特性を備える。このため、半導体装置の外部から、第1の電極ブロック18と第2の電極ブロック20に押圧力が加えられると、半導体素子10、第1の熱補償板16a、第2の熱補償板16b、第1の電極ブロック18、第2の電極ブロック20が互いに密着し、良好な電気的接触が保持される。よって、第1の電極ブロック18が第1のパッド電極10aと、第2の電極ブロック20が第2のパッド電極10bと電気的に導通する。
【0041】
図2は、本実施形態の半導体装置の模式上面図である。第1の電極ブロック18等を除き、第1の保護材26の上面から見た形状を示している。なお、図1(a)は、図2のAA’断面に相当する断面である。
【0042】
第1の保護材26は、第1の電極ブロック18の周囲に設けられる。第1の保護材26は、環状である。第1の保護材26の少なくとも一部が、第1のフランジ22と樹脂フレーム14との間に設けられる。第1の保護材26は第1のフランジ22に接して設けられる。
【0043】
第1の保護材26は、外周部の6箇所に凸領域(領域)26aを備える。凸領域26aは、ハウジング12に重なっている。言い換えれば、凸領域26aの端部(図1(c)、図2中のP)は、ハウジング12の内縁(図1(c)、図2中のQ)よりもハウジング12の外周側(外側)にある。凸領域26a以外の第1の保護材26の外周部は、ハウジング12の内縁よりも内側にある。なお、凸領域26aの数は、6個に限定されるものではない。
【0044】
第1の保護材26は、第1のフランジ22よりも弾性限界に至るまでの変位量が大きい。第1の保護材26は、例えば、シリコーン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、又は、ポリイミドである。第1の保護材26は、例えば、シリコーンゴム等のゴムである。
【0045】
第1の保護材26は、例えば、半導体素子10が故障破壊し過電流が流れ、温度上昇により半導体素子が溶融するような場合、飛散する部材の個片等から第1のフランジ22やハウジング12を保護する機能を備える。
【0046】
本実施形態において、凸領域26aは、第1のサブフレーム14aに設けられた凹部Xと第1のフランジ22に挟まれた第1の保護材26の外周部に設けられる。なお、本実施形態において凹部Xは、第1のサブフレーム14aの6箇所に設けられている。
【0047】
第2の保護材28は、第2の電極ブロック20の周囲に設けられる。第2の保護材28は、環状である。第2の保護材28の少なくとも一部が、第2のフランジ24と樹脂フレーム14との間に設けられる。第2の保護材28は第2のフランジ24に接して設けられる。
【0048】
本実施形態では、第2の保護材28の外周部は、ハウジング12の内縁よりも内側にある。言い換えれば、第2の保護材28はハウジング12と離間している。
【0049】
第2の保護材28は、第2のフランジ24よりも弾性限界に至るまでの変位量が大きい。第2の保護材28は、例えば、シリコーン、PTFE、又は、ポリイミドである。第2の保護材28は、例えば、シリコーンゴム等のゴムである。
【0050】
第2の保護材28は、第1の保護材26同様、第1のフランジ22やハウジング12を保護する機能を備える。
【0051】
次に、本実施形態の半導体装置の作用・効果について説明する。
【0052】
例えば、故障破壊した半導体素子10に過剰な負荷がかかり過電流が流れると、著しい温度上昇により半導体素子10が溶融して蒸発する場合がある。半導体素子10が蒸発することで、内部圧力が上昇して半導体装置が爆発し破損に至るおそれがある。半導体装置の破損が生じると装置の個片が飛散し、半導体装置周辺の回路や冷却装置を損傷し、システムの稼働が不能となるおそれがある。
【0053】
図3は、比較形態の半導体装置の模式図である。図3(a)が模式断面図、図3(b)は、半導体装置の一部の拡大模式断面図である。比較形態の半導体装置は、本実施形態の半導体装置同様、圧接型半導体装置である。比較形態の半導体装置は、第1の弾性体が、第1のフレームと離間している点で、本実施形態の半導体装置と異なっている。
【0054】
図3の示すように、比較形態の半導体装置では、第1の保護材(第1の弾性体)26が、ハウジング(第1のフレーム)12の内縁(図3(b)中のQ)よりもハウジング12の内側にある。
【0055】
図4は、本実施形態の半導体装置の作用・効果の説明図である。図4(a)は比較形態の場合の説明図、図4(b)は本実施形態の場合の説明図である。
【0056】
シリコンの半導体素子10が溶融して一部が蒸発するような場合、半導体装置の内部圧力が上昇する。溶融した高温のシリコンが第1のフランジ22に付着すると、第1のフランジ22が熱により溶融して半導体装置が破損する。第1のフランジ22が溶融した箇所から、半導体装置の内容物が吹き出して周囲に飛散し、半導体装置周辺の回路や冷却装置を損傷するおそれがある。図4(a)に示すように、比較形態では、第1のフランジ22の内表面が露出しているため、溶融した高温のシリコンが第1のフランジ22に直接付着する。
【0057】
一方、図4(b)に示すように、本実施形態では、凸領域26aが設けられることにより、第1のフランジ22の内表面は、第1の保護材26で覆われている。したがって、溶融した高温のシリコンが第1のフランジ22に直接付着しない。したがって、第1のフランジ22の溶融による半導体装置の破損が抑制される。
【0058】
第1のサブフレーム14aと第2のサブフレーム14bとを固定するために設けられた凹部Xや凸部Yが存在する領域では、樹脂フレーム14の機械的強度が他の領域に比較して弱くなる。このため、特に、凹部Xや凸部Yが存在する領域でシリコンが第1のフランジ22に向けて飛びやすくなり、第1のフランジ22の溶融が生じやすい。
【0059】
本実施形態の半導体装置では、特に、凹部Xと第1のフランジ22に挟まれた第1の保護材26の外周部に凸領域26aを選択的に設けることにより、半導体装置の破損を抑制する。
【0060】
また、例えば、半導体素子10と第1のフランジ22との距離が近い箇所で、第1のフランジ22の溶融が生じやすい。したがって、複数の半導体素子10の内、少なくとも、第1のフランジ22との距離が最短の半導体素子10に対応する箇所に選択的に、ハウジング12に重なる第1の保護材26の領域26aを設けることにより、半導体装置の破損を抑制することが可能となる。半導体素子10に対応する箇所とは、当該半導体素子10の外周側の領域である。
【0061】
本実施形態において、ハウジング12、第1の電極ブロック18、第2の電極ブロック20、第1のフランジ22、及び、第2のフランジ24で囲まれる領域内に存在する空洞部40の体積を第1の体積とし、第1の保護材26及び第2の保護材28の占める体積を第2の体積とした場合に、第1の体積と第2の体積の和に対して第2の体積が占める割合が45%以下であることが望ましい。
【0062】
第1の体積と第2の体積の和に対して第2の体積が占める割合を、以後、保護材占有率と称する。保護材占有率=(第2の体積)÷(第1の体積+第2の体積)である。
【0063】
なお、上記空洞部40の体積とは、ハウジング12、第1の電極ブロック18、第2の電極ブロック20、第1のフランジ22、及び、第2のフランジ24で囲まれる領域から、半導体素子10、樹脂フレーム14、第1の熱補償板16a、第2の熱補償板16b、第1の保護材(第1の弾性体)26、第2の保護材(第2の弾性体)28等、ハウジング12内部に設けられる部材の占める体積を除いた体積に相当する。
【0064】
発明者の検討により、例えば、第1のフランジ22の保護を強化するために第1の保護材26のサイズを拡大し、保護材占有率を高くすると、ハウジング12を形成するセラミックにクラックが入ることで半導体装置が破損しやすくなることが明らかになった。
【0065】
表1は、保護材占有率とハウジング12のクラック発生有無の関係を示す。半導体素子10を意図的に絶縁破壊して故障させた場合のハウジング12のクラック発生有無を示している。
【0066】
【表1】
【0067】
表1から明らかなように、保護材占有率を45%以下とすることにより、ハウジング12のクラック発生を抑制することが可能となる。保護材占有率が高い場合にクラック発生が生じやすくなるのは、空洞部40の割合が減少することにより、半導体素子10が蒸発した場合に内圧が上昇しやすくなることに起因すると考えられる。
【0068】
本実施形態では、第1の保護材26に、選択的に凸領域26aを設けることにより、保護材占有率の上昇を抑制している。また、半導体素子10との距離が第2のフランジ24よりも小さく破損が生じやすい第1のフランジ22側の第1の保護材26にのみ、凸領域26aを設けることにより、保護材占有率の上昇を抑制している。
【0069】
本実施形態の半導体装置によれば、第1の保護材26に第1のフランジ22を保護する領域26aを設けることにより、フランジの溶融に起因する半導体装置の破損を抑制することが可能となる。また、保護材占有率の上昇を抑制することにより、ハウジング12の破損に起因する半導体装置の破損を抑制することが可能となる。
【0070】
(第2の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1の弾性体の外周部の全部の領域が第1のフレームに重なる点で、第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態と重複する内容については、記述を省略する。
【0071】
図5は、半導体装置の模式上面図である。第1の電極ブロック18等を除き、第1の保護材26の上面から見た形状を示している。
【0072】
図5に示すように、本実施形態の半導体装置は、第1の保護材(第1の弾性体)26の外周部の全部の領域26aが、ハウジング12に重なっている。言い換えれば、領域26aの端部(図5中のP)は、すべてハウジング12の内縁(図5中のQ)よりもハウジング12の外周側(外側)にある。
【0073】
本実施形態の半導体装置によれば、第1の実施形態同様、第1の保護材26に第1のフランジ22を保護する領域26aを設けることにより、フランジの溶融に起因する半導体装置の破損を抑制することが可能となる。
【0074】
(第3の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1の弾性体の外周部の少なくとも一部の領域が第1のフレームに接する点で、第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態と重複する内容については、記述を省略する。
【0075】
図6は、本実施形態の半導体装置の模式図である。図6(a)が模式断面図、図6(b)は、半導体装置の一部の拡大模式断面図である。
【0076】
第1の保護材26は、第1の実施形態同様、外周部の6箇所に凸領域(領域)26aを備える。凸領域26aは、ハウジング12に接している。言い換えれば、凸領域26aの端部(図6(b)中のP)は、ハウジング12の内縁(図6(b)中のQ)に一致している。
【0077】
また、本実施形態においては、第2の保護材28も、外周部の6箇所に凸領域(領域)28aを備える。凸領域28aは、ハウジング12に接している。言い換えれば、凸領域28aの端部は、ハウジング12の内縁に一致している。
【0078】
本実施形態の半導体装置によれば、第1の実施形態同様、第1の保護材26に第1のフランジ22を保護する領域26aを設けることにより、フランジの溶融に起因する半導体装置の破損を抑制することが可能となる。また、第2の保護材28に第2のフランジ22を保護する領域28aを設けることにより、更に、フランジの溶融に起因する半導体装置の破損を更に抑制することが可能となる。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
10 半導体素子
12 ハウジング(第1のフレーム)
14 樹脂フレーム(第2のフレーム)
14a 第1のサブフレーム
14b 第2のサブフレーム
18 第1の電極ブロック(第1の電極)
20 第2の電極ブロック(第2の電極)
22 第1のフランジ(第1の部材)
24 第2のフランジ(第2の部材)
26 第1の保護材(第1の弾性体)
26a 凸領域(領域)
28 第2の保護材(第2の弾性体)
28a 凸領域(領域)
図1
図2
図3
図4
図5
図6