特許第6359581号(P6359581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6359581アームレスト及びアームレストを備えたシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359581
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】アームレスト及びアームレストを備えたシート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/75 20180101AFI20180709BHJP
【FI】
   B60N2/75
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-50366(P2016-50366)
(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-165164(P2017-165164A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2017年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】清水 弘明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 季大
(72)【発明者】
【氏名】古田 容造
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−199240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/75
A47C 7/54
B64D 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
格納部とアームレスト使用位置との間で回動可能なアームレストであって、
前記アームレストは、アームレスト本体とシャフトとストッパーピンとスペーサを備え

前記スペーサは、
前記シャフトに装着する溝部と
前記ストッパーピンに装着する溝部と、
前記シャフトと前記ストッパーピンとを支持する支持プレートと前記アームレスト本体と
の間の隙間で前記シャフトと前記ストッパーピンとにそれぞれ前記シャフトに装着する溝部と前記ストッパーピンに装着する溝部とが装着された状態で前記アームレスト本体と前記支持プレートとの隙間を塞いで前記アームレストの前記シャフトの軸方向の位置を固定するボス部と、
前記支持プレートに設けられた前記ストッパーピンをガイドするガイド穴の上を覆う突起
部と
を備えたことを特徴とするアームレスト。
【請求項2】
請求項1記載のアームレストであって、前記スペーサは、樹脂で形成されていることを
特徴とするアームレスト。
【請求項3】
請求項1記載のアームレストであって、前記スペーサには前記シャフトに装着する溝部
の近傍に前記シャフトの軸方向に沿って凹部が形成されており、前記スペーサを前記シャフトに装着するときに前記凹部が変形して前記シャフトに装着する溝部の間隔が広がることを特徴とするアームレスト。
【請求項4】
請求項1記載のアームレストであって、前記スペーサには、前記シャフトに装着する溝部の前記シャフトを装着する部分の一部に1対の微小突起部が形成されており、前記シャフトに装着する溝部の前記1対の微小突起部の間隔が前記シャフトの径よりも狭く形成されていることを特徴とするアームレスト。
【請求項5】
請求項4記載のアームレストであって、前記スペーサには更に、前記ストッパーピンに装着する溝部の前記ストッパーピンを装着する部分の一部にも1対の微小突起部が形成されていることを特徴とするアームレスト。
【請求項6】
請求項1記載のアームレストであって、前記スペーサの前記シャフトに装着する溝部に通じる開口部と前記ストッパーピンに装着する溝部に通じる開口部兼用されていることを特徴とするアームレスト。
【請求項7】
格納部とアームレスト使用位置との間で回動可能なアームレストを備えたシートであっ
て、
前記アームレストは、アームレスト本体とシャフトとストッパーピンとスペーサを備え

前記シートは前記アームレストの前記シャフトと前記ストッパーピンとを支持する支持プ
レートを備え、
前記アームレストのスペーサは、
前記シャフトに装着する溝部と
前記ストッパーピンに装着する溝部と、
前記シャフトと前記ストッパーピンとを支持する前記支持プレートと前記アームレスト本体との間の隙間で前記シャフトと前記ストッパーピンとにそれぞれ前記シャフトに装着する溝部と前記ストッパーピンに装着する溝部とが装着された状態で前記アームレスト本体と前記支持プレートとの隙間を塞いで前記アームレストの前記シャフトの軸方向の位置を固定するボス部と、
前記支持プレートに設けられた前記ストッパーピンをガイドするガイド穴の上を覆う突起
部と
を備えたことを特徴とするアームレストを備えたシート。
【請求項8】
請求項7記載のアームレストを備えたシートであって、前記スペーサは、樹脂で形成さ
れていることを特徴とするアームレストを備えたシート。
【請求項9】
請求項7記載のアームレストを備えたシートであって、前記スペーサには前記シャフト
に装着する溝部の近傍に前記シャフトの軸方向に沿って凹部が形成されており、前記スペーサを前記シャフトに装着するときに前記凹部が変形して前記シャフトに装着する溝部の間隔が広がることを特徴とするアームレストを備えたシート。
【請求項10】
請求項7記載のアームレストを備えたシートであって、前記スペーサには、前記シャフトに装着する溝部の前記シャフトを装着する部分の一部に1対の微小突起部が形成されており、前シャフトに装着する溝部の前記1対の微小突起部の間隔が前記シャフトの径よりも狭く形成されていることを特徴とするアームレストを備えたシート。
【請求項11】
請求項10記載のアームレストを備えたシートであって、前記スペーサには更に、前記
ストッパーピンに装着する溝部の前記ストッパーピンを装着する部分の一部にも1対の微小突起部が形成されていることを特徴とするアームレストを備えたシート。
【請求項12】
請求項7記載のアームレストを備えたシートであって、前記スペーサの前記シャフトに
装着する溝部に通じる開口部と前記ストッパーピンに装着する溝部に通じる開口部兼用されていることを特徴とするアームレストを備えたシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートのアームレスト及びアームレストを備えた乗物用シートに関し、特に、乗用車、航空機、列車、船舶、バスなどの乗物用シートに取り付けられる可動な構成を有するアームレスト及びアームレストを備えたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車の後部座席に設置される可動式のシートの例として、特許文献1には、課題を解決するための手段の欄に、取付対象部に、通常使用位置と跳ね上げ位置との範囲で回動可能に設けられるアームレストであって、前記取付対象部に取り付けられるベース部材と、基端部が前記ベース部材に回動可能に軸支される所定長さの芯プレートと、前記芯プレートの基端部における前記ベース部材との対向面を除いて前記芯プレートを被覆するプレート被覆部と前記プレート被覆部の周縁から外方に張り出す突出片とを有する断面略I字状に成形されると共に、前記芯プレートと一体成形される合成樹脂製のカバー部材と、前記ベース部材において、前記芯プレートの回動中心を挟んで前記芯プレートの基端部の上端縁側と下端縁側にそれぞれ突設され、前記通常使用位置と跳ね上げ位置とのいずれにおいても前記芯プレートに共に当接し、前記芯プレートにかかる荷重を両方で分散負担する一対のストッパー部とを有することを特徴とするアームレストを提供すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−1292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、二つ並んだ座席の間と両側に可動式のアームレストを取り付けた構成が開示されている。これらのアームレストは、何れも、座席の側に固定した回転中心軸に取り付けて、アームレストを取り付けた状態で座席と反対の側に突き出ている中心軸をダミーカバーで覆う構成となっている。二つ並んだ座席の間に位置するアームレストも同じ構造となっている。
【0005】
乗用車の後部座席の3人掛け用のシートにおいて、中央シートに取り付けた可動式のアームレストを倒して二人掛け時の肘掛として使えるような構成を持つシートがある。この場合、この可動式アームレストは、使用しないときには中央シートのシートバック(背もたれ)に形成した凹部の中に格納される。そして、可動式アームレストの回転中心軸は両側で中央シートに支持される。
【0006】
このような、回転中心軸の両端が中央シートに支持されているような構成においては、回転中心軸の両端が中央シートの内部に組み込まれているために、特許文献1に記載されているようなダミーカバーを用いて回転中心軸を覆うような構成とすることはできない。
【0007】
一方、回転中心軸を取り付けた状態でアームレストを中央シートに組み込むためには、中央シートのシートバックに形成した凹部の幅を、内部に格納するアームレストの幅よりも大きくしなければならない。そのために、アームレストを中央シートに組み込んだ状態では、アームレストと中央シートとの間に隙間が生じる。この隙間に異物が混入したり挟み込まれたりすると、アームレストの回動がスムーズに行われなくなってしまう恐れがある。
【0008】
本発明は、上記した課題を解決して、アームレストとシートバックとの間の隙間に異物が混入したり挟み込まれたりするのを防止する構成を有するアームレストおよびアームレストを備えたシートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明では、格納部とアームレスト使用位置との間で
回動可能なアームレストにおいて、アームレストはアームレスト本体とシャフトとストッ
パーピンとスペーサを備え、スペーサは、シャフトに装着する溝部とストッパーピンに装着する溝部と、シャフトとストッパーピンとを支持する支持プレートとアームレスト本
体との間の隙間でシャフトとストッパーピンとにそれぞれシャフトに装着する溝部とストッパーピンに装着する溝部とが装着された状態でアームレスト本体と支持プレートとの隙間を塞いでアームレストのシャフトの軸方向の位置を固定するボス部と、支持プレートに設けられたストッパーピンをガイドするガイド穴の上を覆う突起部とを備えて形成した。
【0010】
また、上記した課題を解決するために、本発明では、格納部とアームレスト使用位置と
の間で回動可能なアームレストを備えたシートにおいて、アームレストは、アームレスト
本体とシャフトとストッパーピンとスペーサを備え、シートはアームレストのシャフトと
ストッパーピンとを支持する支持プレートを備え、アームレストのスペーサは、シャフト
に装着する溝部とストッパーピンに装着する溝部と、シャフトとストッパーピンとを支
持する支持プレートとアームレスト本体との間の隙間でシャフトとストッパーピンとにそれぞれシャフトに装着する溝部とストッパーピンに装着する溝部とが装着された状態でアームレスト本体と支持プレートとの隙間を塞いでアームレストのシャフトの軸方向の位置を固定するボス部と、支持プレートに設けられたストッパーピンをガイドするガイド穴の上を覆う突起部とを備えて形成した。

【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アームレストとシートバックとの間の隙間に異物の挟み込み(混入)が発生しないような構造としたことにより、アームレストのスムーズな回動を阻害することを防止することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1に係るアームレストを備えたシートであって、アームレストを格納部に格納した状態のシートの斜視図である。
図2】本発明の実施例1に係るアームレストを備えたシートであって、アームレストを格納部から引き出した状態のシートの斜視図である。
図3】本発明の実施例1に係るアームレストを備えたシートのアームレストの斜視図である。
図4】本発明の実施例1に係るアームレストを備えたシートのアームレスト格納部の斜視図である。
図5】本発明の実施例1に係るアームレストを備えたシートの支持プレートの平面図である。
図6A】本発明の実施例1に係るアームレストを備えたシートのスペーサの斜視図である。
図6B】本発明の実施例1に係るアームレストを備えたシートのスペーサの平面図である。
図7】本発明の実施例1に係るアームレストを備えたシートのアームレストを格納部に格納した状態をアームレストの側から見た側面図である。
図8】本発明の実施例1に係るアームレストを備えたシートのアームレストを格納部から回動させてシートクッション側に倒した状態をアームレストの側から見た側面図である。
図9】本発明の実施例1に係るアームレストを備えたシートでスペーサをシャフトとストッパーピンに装着した状態の図7におけるA−A断面図である。
図10】本発明の実施例1に係るアームレストを備えたシートのスペーサの斜視図である。
図11】本発明の実施例2に係るアームレストを備えたシートのアームレストを格納部に格納した状態をアームレストの側から見た側面図である。
図12】本発明の実施例2に係るアームレストを備えたシートのアームレストを格納部から回動させてシートクッション側に倒した状態をアームレストの側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、シートに組み込んだ可動式のアームレストの回転中心軸とストッパーとにカバーを設けて、アームレストと中央シートとの間に隙間がある状態でアームレストを回動させても異物の挟み込み(混入)の発生を防止できるような構造としたものである。
【0014】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0015】
以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略する。
【0016】
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明では、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【実施例1】
【0017】
以下に、本発明を乗用車の後部座席の3人掛け用のシートに適用した例を説明する。
図1は、シート110,120,130を備えた乗用車の後部座席の3人掛け用のシート100の斜視図で、中央のシート130のシートバック132にアームレスト133を格納した状態を示している。シート110,120,130は、それぞれ、搭乗者が着座するシートクッション111,121,131と着座した搭乗者の背中を支えるシートバック112,122,132を備えている。
【0018】
アームレスト133には、前方に倒すときに手を引っ掛けるためのベルト134が取り付けられている。
【0019】
図2は、アームレスト133を前方に倒した状態を示している。この状態で、シート110と120に着座した搭乗者は、アームレスト133に肘をかけたり、アームレスト133上に小物や雑誌などを載せておくことができる。
【0020】
このように、前に倒したり、シートバック132に格納したりすることができるアームレスト133の外観を図3に示す。アームレスト133には、回転の中心となるシャフト1331とアームレスト133の回動範囲を規制するためのストッパーピン1332が左右に1対ずつ設けられている。また、アームレスト133の下部1330は、後述する組立のために、幅寸法W3が上方の部分の幅寸法と比べて狭く形成されている。
【0021】
一方、アームレスト133を格納するシートバック132の外観を図4に示す。シートバック132には、アームレスト133を格納するためのアームレスト格納部135が形成されている。アームレスト格納部135の対向する1対の側面1351には、それぞれ、アームレスト133のシャフト1331とストッパーピン1332を支持するための支持プレート(シートバックプレート)136が設置されている。この支持プレート136は、アームレスト格納部135の側面1351と対向する側の側面にも取り付けられており、アームレスト格納部135の左右の側面に1対設けられている。
【0022】
図5に、支持プレート136の正面図を示す。支持プレート136には、シャフト1331を挿入して支持すためのシャフト孔1361と、ストッパーピン1332の動作範囲を規定するガイド穴1362が形成されている。支持プレート136は、図示していないシートバック132のフレームに、溶接又はねじなどの締結部材で固定されている。
【0023】
アームレスト133は、フレームに固定された支持プレート136のシャフト孔1361に挿入されたシャフト1331を中心にして回動する。このアームレスト133が回動する範囲は、ストッパーピン1332をガイドするガイド穴1362によって制限される。
【0024】
図3に示したアームレスト133を図4に示したようなシートバック132に形成されたアームレスト格納部135に組み込むことにより、図1及び図2に示したような状態になる。アームレスト133に固定されたストッパーピン1332の先端部分の間隔W1は、アームレスト格納部135の左右の側面1351に固定されている1対の支持プレート136の間隔W2よりも大きい。そのために、アームレスト133をアームレスト格納部135に組み込むときは、先ず、アームレスト133を斜めにした状態で一方の側の支持プレート136のシャフト孔1361にシャフト1331を挿入し、ガイド穴1362にストッパーピン1332を挿入して奥まで差し込んだ後、アームレスト133をアームレスト格納部135に対して平行にし、アームレスト133の他方の側のシャフト1331とストッパーピン1332を、他方の側の支持プレート136に形成したシャフト孔1361及びガイド穴1362に挿入する。
【0025】
このように、アームレスト133を斜めにしてシャフト1331とストッパーピン1332とを支持プレート136のシャフト孔1361とガイド穴1362に挿入するためには、アームレスト133の下部1330の幅寸法W3を、アームレスト格納部135の左右の側面1351に固定されている1対の支持プレート136の間隔W2よりもある程度小さく設定しなければならない。
【0026】
しかし、アームレスト格納部135の1対の支持プレート136にシャフト1331とストッパーピン1332を挿入後は、このW2とW3の差の分だけシャフト1331の軸方向に隙間が発生する。
【0027】
その結果、シャフト1331を軸方向に手軽に動かせて、アームレスト133が支持プレート136から容易に取り外せてしまう。また、このアームレスト格納部135とアームレスト133との隙間に異物が挟まれた状態でアームレスト133を回動させた場合、異物が支持プレート136のガイド穴1362に入っている状態では、ガイド穴1362とストッパーピン1332とに挟まれて、傷を負ってしまう恐れがある。
【0028】
このシャフト1331の軸方向の隙間の問題を解消するために、本実施例では、図6Aに示すようなスペーサ140をアームレスト133と支持プレート136との隙間に挿入するようにした。このスペーサ140には、シャフト1331を挿入するシャフトガイド部1401と、ストッパーピン1332を挿入するストッパーピンガイド部1402が形成されている。スペーサ140は、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリプロピレンなどの樹脂で形成されている。
【0029】
図6Bに、スペーサ140の正面図を示す。スペーサ140には、右側突起部1405と中央突起部1406の間に開口部1411が形成され、この開口部1411の奥にシャフトガイド部1401が形成されている。シャフトガイド部1401の一部に微小突起部1412と1413が形成されている。このような構成とすることにより、一旦シャフトガイド部1401に入ったシャフト1331は、微小突起部1412と1413によりシャフトガイド部1401から容易に抜け出せなくなり、スペーサシャフトガイド部140をシャフト1331に確実に取り付けることができる。
【0030】
また、中央突起部1406と左側突起部1407の間にストッパーピンガイド部1402が形成されている。ストッパーピンガイド部1402にも微小突起1414と1415が形成されている。このような構成とすることにより、ストッパーピン1332をストッパーピンガイド部1402に一旦押し込むと、ストッパーピン1332は微小突起1414と1415によりストッパーピンガイド部1402から容易には抜け出せなくなり、ストッパーピン1332をストッパーピンガイド部1402で確実にガイドすることができる。また、ストッパーピン1332をストッパーピンガイド部1402に挿入するときに微小突起1414と1415の間隔が開きやすくするために、中央突起部1406と左側突起部1407の微小突起1414と1415の近くには、空洞部1416と1417が形成されている。
【0031】
スペーサ140のシャフトガイド部1401が形成されている側の近傍に凹部1403が形成されており、周辺の部分と比べて厚みが薄くなっている。
【0032】
このスペーサ140をシャフト1331及びストッパーピン1332に取り付ける場合、まず、中央突起部1406と左側突起部1407の間に形成されたストッパーピンガイド部1402にストッパーピン1332を挿入する。次に、この状態で右側突起部1405と中央突起部1406の間の開口部1411からシャフト1331をシャフトガイド部1401に押し込む。ここで、開口部1411の幅寸法はシャフト1331の直径よりも少し大きめに形成されているが、シャフトガイド部1401の入り口に設けた微小突起部1412と1413との隙間の寸法はシャフト1331の径よりも小さくなっている。シャフト1331を開口部1411からそのまま奥に押し込んでいくと、この微小突起部1412と1413がシャフト1331に突き当たる。
【0033】
この状態でシャフト1331を更に押し込むと、スペーサ140に形成した凹部1403の厚さが周囲と比べて薄く形成された部分が変形して右側突起部1405が外側に開き、微小突起部1412と1413との隙間が押し広げられ、シャフト1331がシャフトガイド部1401に入り込む。一旦シャフト1331がシャフトガイド部1401に入り込むと、右側突起部1405は元の位置に戻り、シャフト1331はシャフトガイド部1401に固定される。
【0034】
図7は、スペーサ140をシャフト1331及びストッパーピン1332に取り付けて、アームレスト133をシートバック132のアームレスト格納部135に格納した状態をアームレストの側から見た図である。これは、図1に示したような状態に対応する。この状態で、支持プレート136に形成されたストッパーピン1332をガイドするガイド穴1362の大部分は、スペーサ140の右側突起部1405、中央突起部1406及び左側突起部1407で覆われている。
【0035】
図7においては、左側が搭乗者が着座する面である。図の左側から異物が入り込んでも、ガイド穴1362の上端部13621付近はスペーサ140で覆われているため、ガイド穴1362に異物が入り込むことができない。
【0036】
一方、図8は、アームレスト133をアームレスト格納部135から引き出しシャフト1331の周りに回動させて前方のシートクッション131の側に倒し、肘掛として使用する状態をアームレストの側から見た図である。これは、図2に示したような状態に対応する。この状態で、支持プレート136に形成されたストッパーピン1332をガイドするガイド穴1362の大部分は、スペーサ140の左側突起部1407で覆われている。
【0037】
図8においては、上側が搭乗者が肘をかける面である。図の上側から異物が入り込んでも、ガイド穴1362の上端部13621付近はスペーサ140の中央突起部1406で覆われているため、アームレスト133の上側からガイド穴1362に異物が入り込むことはできない。また、アームレスト133の下側から異物が入り込んだ場合、ガイド穴1362の下端部13622の付近はスペーサ140の左側突起部1407で覆われているため、ガイド穴1362に異物が挟み込まれることがない。
【0038】
このように、スペーサ140でガイド穴1362を覆うようにして異物がガイド穴1362に入り込むことができないような構造としたことにより、アームレスト133シャフト1331を中心に回動させたときに、ガイド穴1362とストッパーピン1332に異物が挟み込まれるという事態の発生を防止することができる。
【0039】
図9は、図7におけるA−A断面を示す。スペーサ140はアームレスト133と支持プレート136の間に装着され、スペーサ140の両側に突き出したボス1404がアームレスト133と支持プレート136の間隔を規定している。すなわち、スペーサ140をアームレスト133と支持プレート136の間に装着することによりアームレスト133と支持プレート136の間のがたを抑えることができ、シャフト1331の軸方向にアームレスト133を動かせなくなるため、容易に取り外せなくなる。
【0040】
なお、図9に示したようにアームレスト133の一方の側でアームレスト133と支持プレート136の間にスペーサ140を取り付けることにより、アームレスト133の他方の側では支持プレート136との間に隙間を無くすことができる。その結果、アームレスト133の他方の側でも支持プレート136との間に異物が混入したり異物が挟み込まれたりすることがなくなり、ガイド穴1362とストッパーピン1332の間に異物が挟まれるという状況は発生し得なくなる。
【0041】
本実施例によれば、スペーサ140にアームレスト133と支持プレート136の間の隙間を塞いでシャフト1331の軸方向にアームレスト133を動かせなくして容易に取り外せなくする機能と、支持プレート136のガイド穴1362とストッパーピン1332に異物が挟み込まれるのを防止する機能とを兼ねさせ、一つの部品に両方の機能を備えさせることができるようになった。
【0042】
本実施例によれば、アームレスト133のがたつきを防止するためのスペーサ140に、異物の挟み込み(混入)を防止するための突起部1405,1406,1407を一体にして設けたので、ガイド穴1401,1402に異物が挟み込まれるのを防止するための別部材を設ける必要がなくなり、組み付けが容易になり、コストを削減することができるようになった。
【0043】
なお、本実施例は、乗用車の後部座席の3人掛け用のシートに適用した例で説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、乗用車、航空機、列車、船舶、バスなどの乗物用シートに取り付けられる可動式のアームレストに適用することができる。
【実施例2】
【0044】
本実施例では、実施例1で説明したスペーサ140に替えて、図10に示すような形状のスペーサ150を用いた例を示す。本実施例におけるスペーサ140以外の構成は、実施例1で説明した構成と同じであり、それらには実施例1と同じ番号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0045】
すなわち、実施例1においては、スペーサ140には、右側突起部1405と中央突起部1406の間に開口部1411を形成し、この開口部1411の奥にシャフトガイド部1401を形成し、また、中央突起部1406と左側突起部1407の間にストッパーピンガイド部1402を形成した形状を有していた。
【0046】
これに対して、実施例2においては。図10に示すように、スペーサ150では、外部からシャフトガイド部1501に通じる開口部1504とストッパーピンガイド部1520に通じる開口部1504とを共通化する構成とした。
【0047】
すなわち、図10に示すように、スペーサ150は、右側突起部1502と左側突起部1503との間にシャフト1331及びストッパーピン1332の径よりも幅が広い開口部1504を形成した。また、シャフトガイド部1501の入り口の部分に1対の微小突起部1507をその間隔がシャフト1331の径よりも小さくなるようにして形成し、一旦シャフトガイド部1501に装着されたシャフト1331が、シャフトガイド部1501から容易に抜け出せないようにした。
【0048】
また、シャフトガイド部1501の周囲にはボス1506を形成した。ボス1506の役割は、実施例1で説明したボス1404の場合と同じである。また、スペーサ150のシャフトガイド部1501が形成されている側の近傍に凹部1505が形成されており、周辺の部分と比べて厚みが薄くなっている。
【0049】
本実施例によるスペーサ150をシャフト1331及びストッパーピン1332に装着する方法は、まずシャフト1331を右側突起部1502と左側突起部1503との間に形成された開口部1504から挿入し、続いてストッパーピン1332を開口部1504に挿入する。先に挿入したシャフト1331が、1対の微小突起部1507に突き当たった段階でより強い力で挿入することにより、スペーサ150は厚みが薄く形成された凹部1505で折れ曲がり、右側突起部1502と左側突起部1503との間隔が開いて1対の微小突起部1507の間隔も広がる。この1対の微小突起部1507の間隔がシャフト1331の径と同じになったとき、シャフト1331は1対の微小突起部1507の間を通り抜けてシャフトガイド部1501に収まる。この時、ストッパーピン1332は、右側突起部1502と左側突起部1503との間のストッパーピンガイド部1520の位置に留まる。
【0050】
図11は、スペーサ150をシャフト1331及びストッパーピン1332に取り付けて、アームレスト133をシートバック132のアームレスト格納部135に格納した状態をアームレストの側から見た側面図である。これは、図1に示したような状態に対応する。この状態で、支持プレート136に形成されたストッパーピン1332をガイドするガイド穴1362の大部分は、スペーサ150の右側突起部1502で覆われている。
【0051】
図11においては、左側が搭乗者が着座する面である。図の左側から異物が挟み込まれても、ガイド穴1362はスペーサ150の右側突起部1502で覆われているため、ガイド穴1362に異物が挟み込まれる(混入)ことがない。
【0052】
一方、図12は、アームレスト133をシートバック132の格納部135から回動させてシートクッション131の側に倒して肘掛として使用する状態をアームレストの側から見た側面図である。これは、図2に示したような状態に対応する。この状態で、支持プレート136に形成されたストッパーピン1332をガイドするガイド穴1362の大部分は、スペーサ150の左側突起部1503で覆われている。
【0053】
図12においては、上側が搭乗者が肘をかける面である。図の上側から異物が入り込んでも、ガイド穴1362の上側はスペーサ150の右側突起部1502で覆われているため、アームレスト133の上側からガイド穴1362に異物が挟み込まれる(混入)ことはできない。また、アームレスト133の下側から異物が混入した場合、ガイド穴1362はスペーサ150の左側突起部1503で覆われているため、ガイド穴1362に異物が挟み込まれる(混入)ことがない。
【0054】
このように、スペーサ150でガイド穴1362を覆うようにして異物をガイド穴1362に差し込むことができないような構造としたことにより、アームレスト133シャフト1331を中心に回動させたときに、ガイド穴1362とストッパーピン1332に異物が挟み込まれて(混入)アームレスト133の動きが悪くなるという事象の発生を防止することができる。
【0055】
本実施例によれば、スペーサ150にアームレスト133と支持プレート136の間の隙間を塞いでシャフト1331の軸方向にアームレスト133を動かせなくして容易に取り外せなくする機能と、支持プレート136のガイド穴1362とストッパーピン1332に異物が挟み込まれる(混入)のを防止する機能とを兼ねさせ、一つの部品に両方の機能を備えさせ、部品点数及び部品費の削減が可能になった。
【0056】
更に、スペーサ150のシャフト1331とストッパーピン1332への装着が容易に行えるようになった。
【0057】
なお、本実施例は、乗用車の後部座席の3人掛け用のシートに適用した例で説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、乗用車、航空機、列車、船舶、バスなどの乗物用シートに取り付けられる可動式のアームレストに適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
100・・・3人掛け用シート 110,120,130・・・シート 112,122,132・・・シートバック 133・・・アームレスト 1331・・・シャフト 1332・・・ストッパーピン 135・・・アームレスト格納部 136・・・支持プレート 1361・・・シャフト孔 1362・・・ガイド穴 140,150・・・スペーサ 1401,1501・・・シャフトガイド部 1362・・・ガイド穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12