【実施例1】
【0017】
以下に、本発明を乗用車の後部座席の3人掛け用のシートに適用した例を説明する。
図1は、シート110,120,130を備えた乗用車の後部座席の3人掛け用のシート100の斜視図で、中央のシート130のシートバック132にアームレスト133を格納した状態を示している。シート110,120,130は、それぞれ、搭乗者が着座するシートクッション111,121,131と着座した搭乗者の背中を支えるシートバック112,122,132を備えている。
【0018】
アームレスト133には、前方に倒すときに手を引っ掛けるためのベルト134が取り付けられている。
【0019】
図2は、アームレスト133を前方に倒した状態を示している。この状態で、シート110と120に着座した搭乗者は、アームレスト133に肘をかけたり、アームレスト133上に小物や雑誌などを載せておくことができる。
【0020】
このように、前に倒したり、シートバック132に格納したりすることができるアームレスト133の外観を
図3に示す。アームレスト133には、回転の中心となるシャフト1331とアームレスト133の回動範囲を規制するためのストッパーピン1332が左右に1対ずつ設けられている。また、アームレスト133の下部1330は、後述する組立のために、幅寸法W3が上方の部分の幅寸法と比べて狭く形成されている。
【0021】
一方、アームレスト133を格納するシートバック132の外観を
図4に示す。シートバック132には、アームレスト133を格納するためのアームレスト格納部135が形成されている。アームレスト格納部135の対向する1対の側面1351には、それぞれ、アームレスト133のシャフト1331とストッパーピン1332を支持するための支持プレート(シートバックプレート)136が設置されている。この支持プレート136は、アームレスト格納部135の側面1351と対向する側の側面にも取り付けられており、アームレスト格納部135の左右の側面に1対設けられている。
【0022】
図5に、支持プレート136の正面図を示す。支持プレート136には、シャフト1331を挿入して支持すためのシャフト孔1361と、ストッパーピン1332の動作範囲を規定するガイド穴1362が形成されている。支持プレート136は、図示していないシートバック132のフレームに、溶接又はねじなどの締結部材で固定されている。
【0023】
アームレスト133は、フレームに固定された支持プレート136のシャフト孔1361に挿入されたシャフト1331を中心にして回動する。このアームレスト133が回動する範囲は、ストッパーピン1332をガイドするガイド穴1362によって制限される。
【0024】
図3に示したアームレスト133を
図4に示したようなシートバック132に形成されたアームレスト格納部135に組み込むことにより、
図1及び
図2に示したような状態になる。アームレスト133に固定されたストッパーピン1332の先端部分の間隔W1は、アームレスト格納部135の左右の側面1351に固定されている1対の支持プレート136の間隔W2よりも大きい。そのために、アームレスト133をアームレスト格納部135に組み込むときは、先ず、アームレスト133を斜めにした状態で一方の側の支持プレート136のシャフト孔1361にシャフト1331を挿入し、ガイド穴1362にストッパーピン1332を挿入して奥まで差し込んだ後、アームレスト133をアームレスト格納部135に対して平行にし、アームレスト133の他方の側のシャフト1331とストッパーピン1332を、他方の側の支持プレート136に形成したシャフト孔1361及びガイド穴1362に挿入する。
【0025】
このように、アームレスト133を斜めにしてシャフト1331とストッパーピン1332とを支持プレート136のシャフト孔1361とガイド穴1362に挿入するためには、アームレスト133の下部1330の幅寸法W3を、アームレスト格納部135の左右の側面1351に固定されている1対の支持プレート136の間隔W2よりもある程度小さく設定しなければならない。
【0026】
しかし、アームレスト格納部135の1対の支持プレート136にシャフト1331とストッパーピン1332を挿入後は、このW2とW3の差の分だけシャフト1331の軸方向に隙間が発生する。
【0027】
その結果、シャフト1331を軸方向に手軽に動かせて、アームレスト133が支持プレート136から容易に取り外せてしまう。また、このアームレスト格納部135とアームレスト133との隙間に異物が挟まれた状態でアームレスト133を回動させた場合、異物が支持プレート136のガイド穴1362に入っている状態では、ガイド穴1362とストッパーピン1332とに挟まれて、傷を負ってしまう恐れがある。
【0028】
このシャフト1331の軸方向の隙間の問題を解消するために、本実施例では、
図6Aに示すようなスペーサ140をアームレスト133と支持プレート136との隙間に挿入するようにした。このスペーサ140には、シャフト1331を挿入するシャフトガイド部1401と、ストッパーピン1332を挿入するストッパーピンガイド部1402が形成されている。スペーサ140は、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリプロピレンなどの樹脂で形成されている。
【0029】
図6Bに、スペーサ140の正面図を示す。スペーサ140には、右側突起部1405と中央突起部1406の間に開口部1411が形成され、この開口部1411の奥にシャフトガイド部1401が形成されている。シャフトガイド部1401の一部に微小突起部1412と1413が形成されている。このような構成とすることにより、一旦シャフトガイド部1401に入ったシャフト1331は、微小突起部1412と1413によりシャフトガイド部1401から容易に抜け出せなくなり、スペーサシャフトガイド部140をシャフト1331に確実に取り付けることができる。
【0030】
また、中央突起部1406と左側突起部1407の間にストッパーピンガイド部1402が形成されている。ストッパーピンガイド部1402にも微小突起1414と1415が形成されている。このような構成とすることにより、ストッパーピン1332をストッパーピンガイド部1402に一旦押し込むと、ストッパーピン1332は微小突起1414と1415によりストッパーピンガイド部1402から容易には抜け出せなくなり、ストッパーピン1332をストッパーピンガイド部1402で確実にガイドすることができる。また、ストッパーピン1332をストッパーピンガイド部1402に挿入するときに微小突起1414と1415の間隔が開きやすくするために、中央突起部1406と左側突起部1407の微小突起1414と1415の近くには、空洞部1416と1417が形成されている。
【0031】
スペーサ140のシャフトガイド部1401が形成されている側の近傍に凹部1403が形成されており、周辺の部分と比べて厚みが薄くなっている。
【0032】
このスペーサ140をシャフト1331及びストッパーピン1332に取り付ける場合、まず、中央突起部1406と左側突起部1407の間に形成されたストッパーピンガイド部1402にストッパーピン1332を挿入する。次に、この状態で右側突起部1405と中央突起部1406の間の開口部1411からシャフト1331をシャフトガイド部1401に押し込む。ここで、開口部1411の幅寸法はシャフト1331の直径よりも少し大きめに形成されているが、シャフトガイド部1401の入り口に設けた微小突起部1412と1413との隙間の寸法はシャフト1331の径よりも小さくなっている。シャフト1331を開口部1411からそのまま奥に押し込んでいくと、この微小突起部1412と1413がシャフト1331に突き当たる。
【0033】
この状態でシャフト1331を更に押し込むと、スペーサ140に形成した凹部1403の厚さが周囲と比べて薄く形成された部分が変形して右側突起部1405が外側に開き、微小突起部1412と1413との隙間が押し広げられ、シャフト1331がシャフトガイド部1401に入り込む。一旦シャフト1331がシャフトガイド部1401に入り込むと、右側突起部1405は元の位置に戻り、シャフト1331はシャフトガイド部1401に固定される。
【0034】
図7は、スペーサ140をシャフト1331及びストッパーピン1332に取り付けて、アームレスト133をシートバック132のアームレスト格納部135に格納した状態をアームレストの側から見た図である。これは、
図1に示したような状態に対応する。この状態で、支持プレート136に形成されたストッパーピン1332をガイドするガイド穴1362の大部分は、スペーサ140の右側突起部1405、中央突起部1406及び左側突起部1407で覆われている。
【0035】
図7においては、左側が搭乗者が着座する面である。図の左側から異物が入り込んでも、ガイド穴1362の上端部13621付近はスペーサ140で覆われているため、ガイド穴1362に異物が入り込むことができない。
【0036】
一方、
図8は、アームレスト133をアームレスト格納部135から引き出しシャフト1331の周りに回動させて前方のシートクッション131の側に倒し、肘掛として使用する状態をアームレストの側から見た図である。これは、
図2に示したような状態に対応する。この状態で、支持プレート136に形成されたストッパーピン1332をガイドするガイド穴1362の大部分は、スペーサ140の左側突起部1407で覆われている。
【0037】
図8においては、上側が搭乗者が肘をかける面である。図の上側から異物が入り込んでも、ガイド穴1362の上端部13621付近はスペーサ140の中央突起部1406で覆われているため、アームレスト133の上側からガイド穴1362に異物が入り込むことはできない。また、アームレスト133の下側から異物が入り込んだ場合、ガイド穴1362の下端部13622の付近はスペーサ140の左側突起部1407で覆われているため、ガイド穴1362に異物が挟み込まれることがない。
【0038】
このように、スペーサ140でガイド穴1362を覆うようにして異物がガイド穴1362に入り込むことができないような構造としたことにより、アームレスト133シャフト1331を中心に回動させたときに、ガイド穴1362とストッパーピン1332に異物が挟み込まれるという事態の発生を防止することができる。
【0039】
図9は、
図7におけるA−A断面を示す。スペーサ140はアームレスト133と支持プレート136の間に装着され、スペーサ140の両側に突き出したボス1404がアームレスト133と支持プレート136の間隔を規定している。すなわち、スペーサ140をアームレスト133と支持プレート136の間に装着することによりアームレスト133と支持プレート136の間のがたを抑えることができ、シャフト1331の軸方向にアームレスト133を動かせなくなるため、容易に取り外せなくなる。
【0040】
なお、
図9に示したようにアームレスト133の一方の側でアームレスト133と支持プレート136の間にスペーサ140を取り付けることにより、アームレスト133の他方の側では支持プレート136との間に隙間を無くすことができる。その結果、アームレスト133の他方の側でも支持プレート136との間に異物が混入したり異物が挟み込まれたりすることがなくなり、ガイド穴1362とストッパーピン1332の間に異物が挟まれるという状況は発生し得なくなる。
【0041】
本実施例によれば、スペーサ140にアームレスト133と支持プレート136の間の隙間を塞いでシャフト1331の軸方向にアームレスト133を動かせなくして容易に取り外せなくする機能と、支持プレート136のガイド穴1362とストッパーピン1332に異物が挟み込まれるのを防止する機能とを兼ねさせ、一つの部品に両方の機能を備えさせることができるようになった。
【0042】
本実施例によれば、アームレスト133のがたつきを防止するためのスペーサ140に、異物の挟み込み(混入)を防止するための突起部1405,1406,1407を一体にして設けたので、ガイド穴1401,1402に異物が挟み込まれるのを防止するための別部材を設ける必要がなくなり、組み付けが容易になり、コストを削減することができるようになった。
【0043】
なお、本実施例は、乗用車の後部座席の3人掛け用のシートに適用した例で説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、乗用車、航空機、列車、船舶、バスなどの乗物用シートに取り付けられる可動式のアームレストに適用することができる。
【実施例2】
【0044】
本実施例では、実施例1で説明したスペーサ140に替えて、
図10に示すような形状のスペーサ150を用いた例を示す。本実施例におけるスペーサ140以外の構成は、実施例1で説明した構成と同じであり、それらには実施例1と同じ番号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0045】
すなわち、実施例1においては、スペーサ140には、右側突起部1405と中央突起部1406の間に開口部1411を形成し、この開口部1411の奥にシャフトガイド部1401を形成し、また、中央突起部1406と左側突起部1407の間にストッパーピンガイド部1402を形成した形状を有していた。
【0046】
これに対して、実施例2においては。
図10に示すように、スペーサ150では、外部からシャフトガイド部1501に通じる開口部1504とストッパーピンガイド部1520に通じる開口部1504とを共通化する構成とした。
【0047】
すなわち、
図10に示すように、スペーサ150は、右側突起部1502と左側突起部1503との間にシャフト1331及びストッパーピン1332の径よりも幅が広い開口部1504を形成した。また、シャフトガイド部1501の入り口の部分に1対の微小突起部1507をその間隔がシャフト1331の径よりも小さくなるようにして形成し、一旦シャフトガイド部1501に装着されたシャフト1331が、シャフトガイド部1501から容易に抜け出せないようにした。
【0048】
また、シャフトガイド部1501の周囲にはボス1506を形成した。ボス1506の役割は、実施例1で説明したボス1404の場合と同じである。また、スペーサ150のシャフトガイド部1501が形成されている側の近傍に凹部1505が形成されており、周辺の部分と比べて厚みが薄くなっている。
【0049】
本実施例によるスペーサ150をシャフト1331及びストッパーピン1332に装着する方法は、まずシャフト1331を右側突起部1502と左側突起部1503との間に形成された開口部1504から挿入し、続いてストッパーピン1332を開口部1504に挿入する。先に挿入したシャフト1331が、1対の微小突起部1507に突き当たった段階でより強い力で挿入することにより、スペーサ150は厚みが薄く形成された凹部1505で折れ曲がり、右側突起部1502と左側突起部1503との間隔が開いて1対の微小突起部1507の間隔も広がる。この1対の微小突起部1507の間隔がシャフト1331の径と同じになったとき、シャフト1331は1対の微小突起部1507の間を通り抜けてシャフトガイド部1501に収まる。この時、ストッパーピン1332は、右側突起部1502と左側突起部1503との間のストッパーピンガイド部1520の位置に留まる。
【0050】
図11は、スペーサ150をシャフト1331及びストッパーピン1332に取り付けて、アームレスト133をシートバック132のアームレスト格納部135に格納した状態をアームレストの側から見た側面図である。これは、
図1に示したような状態に対応する。この状態で、支持プレート136に形成されたストッパーピン1332をガイドするガイド穴1362の大部分は、スペーサ150の右側突起部1502で覆われている。
【0051】
図11においては、左側が搭乗者が着座する面である。図の左側から異物が挟み込まれても、ガイド穴1362はスペーサ150の右側突起部1502で覆われているため、ガイド穴1362に異物が挟み込まれる(混入)ことがない。
【0052】
一方、
図12は、アームレスト133をシートバック132の格納部135から回動させてシートクッション131の側に倒して肘掛として使用する状態をアームレストの側から見た側面図である。これは、
図2に示したような状態に対応する。この状態で、支持プレート136に形成されたストッパーピン1332をガイドするガイド穴1362の大部分は、スペーサ150の左側突起部1503で覆われている。
【0053】
図12においては、上側が搭乗者が肘をかける面である。図の上側から異物が入り込んでも、ガイド穴1362の上側はスペーサ150の右側突起部1502で覆われているため、アームレスト133の上側からガイド穴1362に異物が挟み込まれる(混入)ことはできない。また、アームレスト133の下側から異物が混入した場合、ガイド穴1362はスペーサ150の左側突起部1503で覆われているため、ガイド穴1362に異物が挟み込まれる(混入)ことがない。
【0054】
このように、スペーサ150でガイド穴1362を覆うようにして異物をガイド穴1362に差し込むことができないような構造としたことにより、アームレスト133シャフト1331を中心に回動させたときに、ガイド穴1362とストッパーピン1332に異物が挟み込まれて(混入)アームレスト133の動きが悪くなるという事象の発生を防止することができる。
【0055】
本実施例によれば、スペーサ150にアームレスト133と支持プレート136の間の隙間を塞いでシャフト1331の軸方向にアームレスト133を動かせなくして容易に取り外せなくする機能と、支持プレート136のガイド穴1362とストッパーピン1332に異物が挟み込まれる(混入)のを防止する機能とを兼ねさせ、一つの部品に両方の機能を備えさせ、部品点数及び部品費の削減が可能になった。
【0056】
更に、スペーサ150のシャフト1331とストッパーピン1332への装着が容易に行えるようになった。
【0057】
なお、本実施例は、乗用車の後部座席の3人掛け用のシートに適用した例で説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、乗用車、航空機、列車、船舶、バスなどの乗物用シートに取り付けられる可動式のアームレストに適用することができる。