【実施例1】
【0015】
以下、
図1乃至
図3に基づいて、本発明の一実施形態である親綱フック着脱装置Sについて説明する。この親綱フック着脱装置Sは、
図5に示す親綱フック(「安全フック」と同義)40の鉤口を開閉する装置である。この親綱フック40(以下「フック」ともいう)は工事現場などで一般的に普及している独立別体の保安装置であり、親綱フック着脱装置(以下、単に「着脱装置」ともいう)Sはこのフック40をそのまま有効利用して高所建築物の安全レール70に着脱する装置である。先ず、フック40について、簡単に説明する。
【0016】
(親綱フック40に関する構成)
図5に示すように、親綱フック40は、鉤状に成形されるフック本体43と、略L字状の開閉レバー44と、略I字状の安全レバー45を備える。このフック40は、その平面形状が略楕円状となっており、開閉レバー44がフック本体43内へと回転することでフック本体43の先端と開閉レバー44の先端とが離間してフック40の鉤口は開放される(
図7参照)。
【0017】
フック本体43には、その基端に親綱ロープ(以下、単に「親綱」ともいう)60を結着する孔部41が形成されている。フック本体43には、その基端に開閉レバー44が回転可能に配置されている。即ち、開閉レバー44は、フック本体43の基端に配置された回転中心ピン(以下、単に「ピン」ともいう)42を中心に回転し、フック本体43の鉤口を開閉する(
図7参照)。
【0018】
図5に示すように、安全レバー45は、フック本体43の基部に沿って回転可能に配置されている。即ち、安全レバー45は、その基端に回転中心ピン(以下、単に「ピン」ともいう)48を介してフック本体43に連結されている。また、安全レバー45にはその他端に略逆L字状のガイド溝46が形成されており、このガイド溝46に開閉レバー44に配置されるガイドピン47が挿入されている。このガイドピン47をガイド溝46の上端縁に形成される係止部(図示省略)から離脱させるために、先ず安全レバー45をピン48を支点として
図6に示す矢印A方向へ回転させる必要がある。
【0019】
そして、ガイドピン47がガイド溝46の係止部から離脱した状態で、開閉レバー44をピン42を支点として
図7に示す矢印B方向へ回転させると、フック本体43の鉤口は開放する。なお、
図5に示すように、開閉レバー44及び安全レバー45には、フック本体43に対して閉止方向(矢印A方向及び矢印B方向とはそれぞれ逆方向)へ付勢させるスプリング49及び50が弾装されている。
【0020】
なお、フック本体43の孔部41に結着される親綱60(
図5参照)には、
図1に示すように、その先端に孔62およびロープ長さを調節する伸縮調節器64が配置されている。この周知である伸縮調節器64及び孔62は、作業者(「ユーザ」と同義)の腰に巻き付けて着用する安全帯(図示省略)にそれぞれ連結される。
【0021】
(親綱フック着脱装置Sに関する構成)
図1に示すように、着脱装置Sは、上述したフック40を所望の高さに吊上げ又は吊下げ(「昇降」と同義)可能な伸縮棒30と、この伸縮棒30(「把持手段」と同義)の先端30Aに配置固定されフック40が進入し保持可能な筒本体10と、この筒本体10の外周に回転可能に配置される外筒体20を備える。筒本体10は、
図2に示すように、円板状の基板12と、この基板12上に配置(「固定」と同義)される円筒状の筒体14と、基板12下に配置される連結部16とを備える。そして、円筒状の外筒体20は、筒体14に挿入された状態で、且つ回転可能に配置されている。なお、筒体14には、外筒体20の抜け止め片18が配置されている。
【0022】
図2に示すように、筒体14には、その軸心方向(「縦方向」と同義)に沿う切欠溝(以下、単に「溝」ともいう)14Aが形成すなわち切欠されている。この溝14Aは、
図5の2点鎖線に示すように、その切幅が上述したフック40の親綱60よりも若干だけ幅広くなるように予め設定されている。また、
図2に示すように、外筒体20にも、その軸心方向に沿う切欠溝(以下、単に「溝」ともいう)20Aが形成されている。
【0023】
なお、外筒体20の溝20Aは、筒体14の溝14Aよりも若干だけ幅広くなっている。そして、親綱フック着脱装置Sは、
図5の想像線に示すように、フック40の親綱(「ロープ」と同義)60が溝20A及び14Aを挿通する。即ち、これらの溝20A及び14Aが対応する状態は、親綱フック着脱装置Sの開放モードである。
【0024】
更に、基板12には、
図3に示すように、直径方向に沿う溝12Aが、その軸心よりも深い(後述する連結部16側の)位置まで切欠されている。そのため、上述したように親綱60が着脱装置S内に挿通された場合には、
図3の想像線に示すように、親綱50が基板12に対して出来る限り干渉しないよう予め設定されている。
【0025】
そして、着脱装置Sは、
図2に示す外筒体20を周方向へ回転させると
図4に示すように、外筒体20が筒体14の溝14Aを閉止させて
図1に示すフック40の親綱60を逃げ止めする閉止モードとなる。更に外筒体20を回転させてその溝20Aと筒体14の溝14Aとを対応させると、着脱装置Sは
図5に示す親綱60を挿脱し得る開放モードとなる(
図2参照)。
【0026】
また、
図2及び
図4に示すように、筒体14の端部14Bは、外方へ向かってテーパ状に折り曲げられている。この端部(以下、「テーパ端部」ともいう)14Bは、フック40の各レバー44及び45に対応させて入り易くしたものである。なお、テーパ端部14Bは
図2及び
図4にのみ示し、他の図面(例えば
図1など)では図示していない。
【0027】
図5に示すように、筒本体10の筒体14は、親綱フック40の安全レバー45及び開閉レバー44が同時に筒体14内へ進入する際に安全レバー45及び開閉レバー44それぞれの進入端部すなわち安全レバー45の先端部(以下、「進入端部」ともいう)45Aおよび開閉レバー44の基部44A(以下、「進入端部」ともいう)間よりも若干だけ幅広になるように設定されている。
【0028】
また、筒体14の端部14B幅(「直径」と同義)は、親綱フック40の進入時に各レバー44及び45の進入端部44A及び45Aに当接して安全レバー45または開閉レバー44を開放方向(
図7に示す矢印A方向またはB方向)へと回転可能とする幅L1(
図5参照)になっている。なお、この幅L1は、フック本体43及び開閉レバー44の各先端が当接する際のフック本体43の幅よりも短く(例えば略半分程度に)なっている。
【0029】
そして、安全レバー45及び開閉レバー44が筒体14内へ進入して安全レバー45の先端部45Aに当接すると共に開閉レバー44の基部44Aに当接する際、安全レバー45がピン48を中心に矢印A方向(
図6参照)へ回転してガイド溝46の係止部(図示省略)より開閉レバー44のガイドピン47が離脱する。この離脱状態で更に安全レバー45及び開閉レバー44を筒体14内へ進入すると、開閉レバー44がピン42を中心に矢印B方向(
図7参照)へと回転してフック40の鉤口が開放される。
【0030】
また、
図1に示すように、筒体14の軸方向長さL2は、筒体14内へのフック40の進入完了後において、安全レバー45及び開閉レバー44が回転し開放する長さ(「深さ」と同義)となっている。即ち、筒本体10の深さL2は、
図1及び
図7に示すように、フック40の進入完了後にフック本体43の鉤口が筒体14から突出(「露出」と同義)し、フック40の鉤口が開放するよう予め設定されている。
【0031】
そのため、着脱装置Sを用いることにより、開放されるフック40の鉤口には、例えば安全レール70などを挿脱(すなわち掛止またはその解除)し得る。なお、筒本体10は、筒体14内へのフック40の進入完了状態(
図1及び
図7参照)において、開閉レバー44の先端が筒体14から突出するように予め設定されている。
【0032】
更に、連結部16は、
図3に示すように、基板12の径方向端縁すなわち溝12Aに正対向する位置に配置されている。連結部16は、
図1に示すような伸縮棒30の先端30Aが、挿入すなわち連結固定される(
図2参照)。なお、連結部16及び先端30Aは、図示しないボルト・ナットなどの締結手段(両者が強固に固定されれば例えばワンタッチなどのタイプとしても良い)で固定されている。
【0033】
即ち、本発明の把持手段は、市販されている伸縮棒である。例えば、
図1に示すような伸縮棒30は、その基端に配置される把持部32と、この把持部32を固定する外パイプ34と、この外パイプ34内を摺動して出入(「伸縮」と同義)する内パイプ36(
図3の2点鎖線参照)とを備える。
【0034】
そして、外パイプ34に対して内パイプ36は、
図1に示すような位置決めストッパ38で位置決めされる。即ち伸縮棒30は、ストッパ38に連動するピン(図示省略)が、内パイプ36に形成された図示しない孔に挿入することで所定長さ位置で位置決めされる。なお、伸縮棒30の先端30Aは、内パイプ36の先端である。また、伸縮棒としては市販されている種々のタイプが適用され、これらの伸縮棒は筒本体10を装着(固定)する。
【0035】
(本実施形態の作用)
先ず、フック40を例えば高所建築物などの安全レール(
図5及び
図7の2点鎖線参照)70へ引掛ける掛止作業について、説明する。この掛止作業は、
図5の2点鎖線に示す着脱装置Sを、開放モード(
図2参照)とする状態で、親綱60を溝14A及び20A(
図2参照)へと挿通させる。そして、この挿通状態で外筒体20を回転させて閉止モード(
図4参照)とする。次に、例えば親綱60を引張ってフック40を着脱装置Sの筒本体10内へと引込む(「押込む」と同義)。
【0036】
この引込み操作によってフック40の開閉レバー44および安全レバー45の進入端部44A及び45Aが筒本体10における筒体14のテーパ端部14Bに引掛かる。そして、
図6に示すように、安全レバー45は
図5に示すスプリング50の付勢力に抗しピン48を支点に開放方向(すなわち
図6の矢印A方向)へと回転し、ガイドピン47はガイド溝46の係止部(図示省略)から離脱する。
【0037】
フック40を更に筒本体10内へ引込むと、
図5に示すスプリング49の付勢力に抗して開閉レバー44は、ピン42を支点に開放方向(すなわち
図7の矢印B方向)へと回転する。即ち、この際には、ガイドピン47がガイド溝46に沿って移動するので、フック40の鉤口が開放される。
【0038】
そして、
図1及び
図7に示すように、フック40の鉤口が開放(「露出」の概念をも含む)された状態で、着脱装置Sを例えば高所建築物などの安全レール(
図5及び
図7の2点鎖線参照)70へ向けて吊上げる。そのため、作業者は、安全レール70に対してフック40を引掛ける(「着脱する」と同義)ことができる。
【0039】
フック40が安全レール70に引掛った状態において、
図1に示す伸縮棒30に連結固定された着脱装置Sをフック40から引下げる。この引下げ(「吊下げ」と同義)動作によって着脱装置Sがフック40から離脱すると、フック40の開閉レバー44及び安全レバー45はスプリング49及び50(
図5参照)の付勢力によってフック40の鉤口が閉止される。
【0040】
そして、着脱装置Sを安全レール70に掛止されるフック40の親綱60に沿って手元まで引寄せた後は、着脱装置Sを
図2に示す開放モードとしてフック40の親綱60を親綱フック着脱装置Sより引離す。即ち、本実施例によれば、作業者は
図5に示すようにフック40を安全レール70へ容易かつ安全に装着できるので、一般的に普及している独立別体の親綱フック40をそのまま有効利用し得る。
【0041】
(掛止されるフック40の取外し作業)
安全レール70に掛止されるフック40を取り外す取外し作業は、
図2に示す開放モードの着脱装置Sに安全レール70から垂下る親綱60(
図5参照)を装着した後に、着脱装置Sを
図4に示す閉止モードとする。そして、作業者は、この親綱60に沿って伸縮棒(
図1参照)を安全レール70側に吊上げ、且つ親綱60を引張った状態で筒本体10内へ掛止するフック40の各レバー45及び44を進入させる。即ち、各レバー45及び44は、それぞれ開放方向に回転しフック40の鉤口が開放される。
【0042】
そして、この開放(「露出」の概念をも含む)状態で、安全レール70からフック40を取り外す。従って、本実施例によれば、着脱装置Sを使用することによってフック40を安全レール70(
図1参照)に対し容易かつ安全に着脱できるので、一般的に普及している独立別体の親綱フックをそのまま有効利用し得る。
【0043】
なお、上述した親綱フック40は一般的に普及している保安器具であるが、安全基準に適合する市販の親綱フックは種々存在している。そして、このような親綱フックの開閉レバーなどを上述するような着脱装置で開放(「露出」の概念をも含む)回転し得れば、本発明の親綱フック着脱装置は適宜適用することが出来る。
【0044】
本発明の把持手段は、伸縮棒30に限定されず、伸縮しない長竿状の単なる把持棒などとしても良い。本実施形態では筒本体10(筒体14)及び外筒体20を円筒状としているが、本発明は親綱フックのレバー(例えば安全レバーなど)が開放方向へと回転し得れば筒本体(筒体)及び外筒体を多角形状の角筒体としても良い。
【0045】
本実施形態の筒本体10及び外筒体20は鉄で成型(錆防止用の「塗装」をも含む)しているが、筒本体及び外筒体は上記レバー(開放レバーなど)の回転時負荷で変形しなければアルミなどの軽金属で所望の肉厚などを考慮し成型しても良い。例えばアルミなどで筒本体を成型する場合は、軽量化および塗装などが不要となる。