特許第6359640号(P6359640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359640
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】選択的レーザー溶融システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/268 20170101AFI20180709BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20180709BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20180709BHJP
   B23K 26/34 20140101ALI20180709BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20180709BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20180709BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20180709BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20180709BHJP
【FI】
   B29C64/268
   B22F3/105
   B22F3/16
   B23K26/34
   B23K26/21 Z
   B23K26/064 G
   B23K26/082
   B33Y30/00
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-510808(P2016-510808)
(86)(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公表番号】特表2016-522761(P2016-522761A)
(43)【公表日】2016年8月4日
(86)【国際出願番号】US2014035514
(87)【国際公開番号】WO2014176536
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2017年1月24日
(31)【優先権主張番号】61/816,483
(32)【優先日】2013年4月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005449
【氏名又は名称】ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ミロネッツ,セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】クルチャ,アグネス
(72)【発明者】
【氏名】トウェルヴズ ジュニアー,ウェンデル,ヴィー.
【審査官】 中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−301045(JP,A)
【文献】 特開2008−255488(JP,A)
【文献】 特開2003−117675(JP,A)
【文献】 特開2012−017231(JP,A)
【文献】 特開2014−161904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C64/00−64/40
B22F3/105
B22F3/16
B23K26/00−26/70
B33Y10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザービーム生成器と、
X−Y平面に沿って配置されかつレーザービーム生成器から離れている積層位置を含む作業面と、
レーザービーム生成器と積層位置との間のビーム通過経路に沿って配置され、ビームステアリング軸周りに回転可能な第1の光学要素と、
第1の光学要素に隣接し、ビーム通過経路に沿って配置され、第1の光学要素から独立してビームステアリング軸周りに回転可能な第2の光学要素と、
第1の光学要素を第1の回転速度で回転させ、第2の光学要素を第2の回転速度で回転させ、第1の光学要素と第2の光学要素との間の位相オフセットを管理してビームステアリング角を制御するように適合されたビームステアリング制御装置と、
を備え
ビームステアリング軸は、第1の光学要素の回転軸でありかつ第2の光学要素の回転軸であり、
第1の光学要素が、それぞれがビームステアリング軸と交差する第1のビーム入力面と第1のビーム出力面とを備え、
第2の光学要素が、それぞれがビームステアリング軸と交差する第2のビーム入力面と第2のビーム出力面とを備え、
第1のビーム出力面が、第2のビーム入力面とX−Y平面とに平行であり、
第1の回転速度が、第2の回転速度とは異なることを特徴とする付加製造装置。
【請求項2】
第1のビーム入力面が、X−Y平面に対する第1のビーム入力角を画定する第1のビーム入力平面を占め、第1のビーム出力面が、X−Y平面に対する第1のビーム出力角を画定する第1のビーム出力平面を占めることを特徴とする請求項に記載の付加製造装置。
【請求項3】
第1のビーム入力角と第1のビーム出力角との差が、ビームステアリング軸に対する第1のビーム偏向角度を画定することを特徴とする請求項2に記載の付加製造装置。
【請求項4】
第2のビーム入力面が、X−Y平面に対する第2のビーム入力角を画定する第2のビーム入力平面を占め、第2のビーム出力面が、X−Y平面に対する第2のビーム出力角を画定する第2のビーム出力平面を占め、第2のビーム入力角と第2のビーム出力角との差が、ビームステアリング軸に対する、連続的に可変の第2のビーム偏向角度を画定することを特徴とする請求項に記載の付加製造装置。
【請求項5】
第1のビーム入力角が、第2のビーム出力角を補完することを特徴とする請求項に記載の付加製造装置。
【請求項6】
第1の光学要素が、第1のくさび状プリズムから成り、第1の光学要素の入力面が、レーザービーム装置からの到来レーザービームを受け取るように適合され、
第2の光学要素が、第2のくさび状プリズムから成り、第2の光学要素の入力面が、第1のくさび状プリズムの出力面に隣接し、第2の光学要素の出力面が、積層位置に対向することを特徴とする請求項に記載の付加製造装置。
【請求項7】
ビームステアリング軸が、X−Y平面に垂直に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項8】
レーザービーム生成器の出力の方向が、ビームステアリング軸に揃っていることを特徴とする請求項に記載の付加製造装置。
【請求項9】
相対的な第1および第2の回転速度、ならびに位相オフセットが、制御装置によって定期的に調整されて、非直線ビームステアリング経路を画定することを特徴とする請求項1記載の付加製造装置。
【請求項10】
原材料を、X−Y平面に沿って配置された、作業面上の積層位置に供給し、
レーザービームを、積層位置から離れているビーム発射位置で生成し、
レーザービームを、ビーム発射位置と積層位置との間のビーム通過経路に沿って配置され、ビームステアリング軸周りに回転可能な第1の光学要素を通して方向付け、
レーザービームを、ビーム通過経路に沿って配置され、第1の光学要素から独立してビームステアリング軸周りに回転可能な第2の光学要素を通して方向付け
レーザービームを、積層位置の少なくとも一部の上で選択的に操作する、
ことを含み、
操作するステップが、
第1の回転速度を第1の光学要素に、および第2の回転速度を第2の光学要素に、のうちの少なくとも1つを与え、
与えるステップ中に、第1の光学要素と第2の光学要素との間の位相オフセットを制御して、ビームステアリング軸に対する、積層位置上の非直線ビームステアリング経路を画定する、
ことを含み、
ビームステアリング軸は、第1の光学要素の回転軸でありかつ第2の光学要素の回転軸であり、
第1の光学要素が、それぞれがビームステアリング軸と交差する第1のビーム入力面と第1のビーム出力面とを備え、
第2の光学要素が、それぞれがビームステアリング軸と交差する第2のビーム入力面と第2のビーム出力面とを備え、
第1のビーム出力面が、第2のビーム入力面とX−Y平面とに平行であり、
第1の回転速度が、第2の回転速度とは異なることを特徴とする、付加製造装置を動作させる方法。
【請求項11】
第1のビーム入力面が、X−Y平面に対する第1のビーム入力角を画定する第1のビーム入力平面を占め、第1のビーム出力面が、X−Y平面に対する第1のビーム出力角を画定する第1のビーム出力平面を占め、
第1のビーム入力角と第1のビーム出力角との差が、ビームステアリング軸に対する第1のビーム偏向角度を画定し、
操作するステップが、
第1の光学要素をビームステアリング軸の周りに位置付けして、第1のビーム偏向角度を変更する、
ことを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
第2のビーム入力面が、X−Y平面に対する第2のビーム入力角を画定する第2のビーム入力平面を占め、第2のビーム出力面が、X−Y平面に対する第2のビーム出力角を画定する第2のビーム出力平面を占め、第2のビーム入力角と第2のビーム出力角との差が、ビームステアリング軸に対する、連続的に可変の第2のビーム偏向角度を画定し、
操作するステップが、
第2の光学要素をビームステアリング軸の周りに位置付けして、第2のビーム偏向角度を変更する、
ことを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
第1の光学要素が、第1のくさび状プリズムから成り、第2の光学要素が、第1のくさび状プリズムより大きい第2のくさび状プリズムから成ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明される主題は、一般に、付加製造の分野に関する。具体的には、主題は、付加製造の環境におけるレーザービームのステアリング制御に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造は、複数の薄いシートの材料を層毎に構成することで完成部品が作られるという事実によって特徴付けられる、製造方法の範疇を指す。付加製造は、作業台に液体または粉末の材料を適用し、その後、焼結、硬化、溶融、および/または切断のうちの何らかの組み合わせを行って層を作ることを伴う。所望の完成部品または完成物品を作るために、このプロセスを最高数千回繰り返す。
【0003】
さまざまな種類の付加製造が知られている。例には、ステレオリソグラフィー(硬化した感光性液体の層から物体を付加製造すること)と、電子ビーム溶融(粉末を供給原料として使用して、電子ビームを使用して粉末を選択的に溶融すること)と、レーザー付加製造(粉末を供給原料として使用して、レーザーを使用して粉末を選択的に溶融すること)と、レーザー物体製造(作業台の上に薄い固体シート材料を乗せ、レーザーを使用して不要な部分を切り取ること)とが含まれる。
【0004】
付加製造では、従来装置は、検流計型の走査装置を活用して、粉末層をX−Y直線方向に溶融する。この直線経路は、ラスターと呼ばれる小片に分割される。これは走査経路の不連続性を引き起こし、それらの間に未溶融粉末の小さいが重大な領域ができることになり、その領域は完成部品の応力を上昇させるものとして動作する。連続的なパラメトリック走査経路が試みられたが、これは、通常、レーザーの実質的で高精度な多軸動作を必要とし、従来の付加製造装置では、経路は、未だにデカルト座標を用いて制御されなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
付加製造装置は、レーザービーム生成器と、レーザービーム生成器から離れている積層面と、レーザービーム生成器と積層面との間のビーム通過経路に沿って配置された第1および第2の隣接する光学要素と、を備える。第1の光学要素は、ビームステアリング軸周りに回転可能であり、第2の光学要素は、第1の光学要素から独立してビームステアリング軸周りに回転可能である。
【0006】
付加製造装置を動作させる方法は、原材料を、X−Y平面に沿って配置された積層面に供給することを含む。レーザービームは、積層位置から離れているビーム発射位置において生成される。レーザービームは、ビーム発射位置と積層位置との間のビーム通過経路に沿って配置された、第1の光学要素と隣接する第2の光学要素とを通して方向付けられる。第1の光学要素は、ビームステアリング軸周りに回転可能であり、第2の光学要素は、第1の光学要素から独立してビームステアリング軸周りに回転可能である。レーザービームは、第2の光学要素から積層面に向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】付加製造装置の概略図。
図2】実施例のレーザー粉末堆積装置のビームステアリングアセンブリの図。
図3A】第1の構成における、ビームステアリングアセンブリの断面図。
図3B】第2の構成における、ビームステアリングアセンブリの断面図。
図3C】第3の構成における、ビームステアリングアセンブリの断面図。
図4】ビームステアリング軸に対する実施例の走査経路の図。
図5】付加製造装置を動作させる方法のステップの図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
粉末床堆積装置は、X−Y平面に垂直な1つの面とX−Y平面に対して傾いている別の1つの面とを有する、少なくとも1つの光学要素を含むビームステアリングアセンブリを備えることができる。いくつかの実施例では、ビームステアリングアセンブリは、それぞれがビームステアリング軸周りに回転可能な第1のくさび状プリズムと第2のくさび状プリズムとを有する、リズレープリズムを含むことができる。ビームステアリング軸は、作業面または積層面に垂直であることができる。
【0009】
図1は、付加製造プロセスの概略図である。プロセス10は、付加製造によって固体自由形状物体を生成する装置を含む製造室12を含む。実施例は、直接レーザー焼結(DLS)製造と、直接レーザー溶融(DLM)製造と、選択的レーザー焼結(SLS)製造と、選択的レーザー溶融(SLM)製造と、レーザー加工ネットシェイピング(LENS)製造と、電子ビーム溶融(EBM)製造と、直接金属堆積(DMD)製造と、当業技術内で知られている他のものとによって物体を製造する装置を含む。
【0010】
製造は、製造制御システム14とビームステアリング制御装置16とによって制御される。制御装置14、16は、分離または一体化されてよく、互いにおよび装置20と通信することができる。制御システム14、16は、製造室12における付加製造プロセスの、全自動制御、半自動制御、または手動制御を可能にすることができる。製造室12は、構造的完全性と寸法精度と要求表面仕上げとを有する、欠陥のない固体自由形状物体を生成するために必要な環境を与えられてよい。いくつかの実施例では、保護的な分圧雰囲気または真空雰囲気が必要であり得る。これは、製造制御システム14または(図示しない)別の環境制御装置の制御下にあることができる。
【0011】
装置10の非限定的な例示的実施例を図1に示し、そこでは、選択的レーザー焼結(SLS)装置20が製造室12の中に収容されて示されている。SLS装置20は、粉末貯蔵室22と、積層プラットフォーム24と、エネルギービーム生成器26と、ミラー28と、ビームステアリング装置30とを備える。SLS装置20の動作中、粉末32がビストン34によって上向きに供給され、ローラーまたはリコーターブレード38によって積層面36上に広げられる。粉末32が積層面36の上に広げられた後、エネルギービーム生成器26が始動されて、レーザービームまたは電子ビーム39をビーム経路40に沿って方向付ける。ここで、ビーム39は、生成器26からミラー28に向かい、そして、ビームステアリング装置30の中に入るように経路40に沿って方向付けられる。以下により詳細に説明する通り、ビームステアリング装置30は、到来ビーム39を受け取り、それを積層面36上で操作するように適合された、少なくとも1つの連続的に回転可能な光学要素を含む。ビーム39の操作は、STLメモリファイルの中に記憶された物体44のコンピュータモデルに従って、粉末32の選択領域を焼結して、固体物体44の1つの積層された層42を形成し、焼結領域を下層のプラットフォーム(または前の積層された層)に接着させる。ローラーまたはリコーター38は開始位置に戻され、ピストン34は粉末の別の層を露出させるために上昇し、積層プラットフォーム24は一層の厚み分下降し、プロセスは、固体自由形状物体44が完成するまで、各連続する積層面36について繰り返す。SLS装置20は、固体自由形状製造装置の単なる一実施例であり、本発明を当業技術内で知られている任意の1つの装置に限定することを意味しない。
【0012】
いくつかの実施例では、ミラー28を省略することができる。いくつかの他の実施例では、ビーム生成器26と1つまたは複数の任意のミラー28とをビームステアリング装置30に組み込むことができる。図1の実施例では、各積層される層42は、レーザービーム生成器26から離れているX−Y平面に沿って配置された積層位置において形成され、接着される。ビームステアリングアセンブリ30の中心軸および/またはビームステアリング軸は、ビーム通過経路40に沿って配置されて、ビーム39が経路40に沿い、ビームステアリングアセンブリ30を通るようにする。(図2に示す)ビームステアリングアセンブリ30の1つまたは複数の連続的に回転可能な光学要素は、各連続的な積層面36上の、連続的なパラメトリック走査経路または他の非直線走査経路でビーム39を選択的に操作するように制御され得る。ビームステアリングアセンブリ30の一実施例を、後に続く図に示す。
【0013】
図2は、第1の光学要素46とそれに隣接して配置された第2の光学要素48とを有する、ビームステアリングアセンブリ30を示している。各々は、ビームステアリング軸50周りに連続的に回転可能であり、ハウジングまたはケース52の中に保持されている。光学要素46、光学要素48の相対回転速度および絶対回転速度は、(図1に示す)粉末32の選択的な溶融のための、連続的なパラメトリック走査経路または他の非直線走査経路を形成するために制御される。
【0014】
従来の付加製造装置は、粉末層を直線方向またはX−Y方向に溶融する検流計型の走査装置を活用する。この直線経路は、ラスターと呼ばれる小片に分割される。これは走査経路の不連続性を引き起こし、それらの間に未溶融粉末の小さいが重大な領域ができることになり、その領域は、完成部品の、特に表面のすぐ下で応力を上昇させるものとして動作する。連続的なパラメトリックな走査経路が、従来のラスタリング動作を使用して試みられてきたが、これも、非直線経路を、ラスター装置、レンズ、および/またはミラーの非常に小さなX−Y方向の動きに分割する必要がある。これは、従来の付加製造装置が、ビームを非直線な方法で操作しようとする時でさえもデカルト座標を用いてステアリング装置を制御することを必要とするためである。
【0015】
ここで、光学要素46、48は、ハウジング52に対して支えられて、たとえば、それぞれのロータ54、56とステータ58とを含む、専用の、ブラシ付またはブラシのない電気モータによって駆動され得る。正確な構成によって、ロータ54、56は、(図示しない)任意の適切な種類のベアリングによって支えられ得る。
【0016】
いくつかの実施例では、光学要素46、48は、リズレープリズムを形成する。これらの実施例のうちのいくつかでは、第2のくさび状プリズムは、第1のくさび状プリズムよりも大きいことがある。これは、ビーム全体が、さまざまな偏向角度で光学要素46と光学要素48の両方を通り抜けることを確実にするために行われ得る。米国マサチューセッツ州トップスフィールドのOptra,Inc.は、レーザー誘導システムと障害物回避と光通信とレーザー加工とで使用するための、いくつかの小型のリズレープリズムベースの装置を作成している。そのような装置が以前の付加製造装置または付加製造プロセスに上手く適合または実装されていることは知られていない。
【0017】
図3A図3Cは、それぞれ、第1の光学要素46と第2の光学要素48との瞬時位置調整に基づいた、ビームステアリング角を示している。第1の光学要素46および第2の光学要素48は、入射ビーム62を出力ビームまたは操作ビーム64に変換するために、互いに位相オフセットであることができる。
【0018】
本実施例では、第1の光学要素46は、それぞれがビームステアリング軸50と交差する、第1のビーム入力面66と第1のビーム出力面68とを備えるくさび状プリズムである。第1のビーム入力面66は、X−Y平面に垂直に配置され得る第1のビーム出力面68に対して傾いている。同様に、第2の光学要素48は、これもまたそれぞれがビームステアリング軸50と交差する、第2のビーム入力面72と第2のビーム出力面74とを備える。第1のビーム入力面66は、(たとえば、図1に示すビーム経路40に沿ったレーザービーム生成器26および/またはミラー28からの到来レーザービームに対向することによって入射ビーム62を受け取るように適合され得る。同時に、第2のビーム出力面74は、これも図1に示した積層位置24に対向することができる。
【0019】
第1のビーム入力面66および第1のビーム出力面68は、それぞれの第1のビーム入力平面と第1のビーム出力平面とを占め、第1のビーム入力平面と第1のビーム出力平面との各々は、第1の光学要素46の、ビームステアリング軸50周りの瞬間回転位置に依存する。これは、第1のビーム入力面66の平面と第1のビーム出力面68の平面との間の角度の差に実質的に等しい、X−Y平面に対する第1のビーム偏向角度を画定する。第1のビーム出力平面がX−Y平面に実質的に平行である時、第1のビーム偏向角度は、X−Y平面に対する第1のビーム入力平面の角度に実質的に同じであり、中間ビーム70が、ビームステアリング軸50から一定の半径方向距離で、第1のビーム出力面68から出力する。
【0020】
第2のビーム入力面72は、第1のビーム出力面68とX−Y平面との両方に実質的に平行であり得る、第2のビーム入力平面を占める。同様に、第2のビーム入力平面および第2のビーム出力平面は、第2の光学要素48の、ビームステアリング軸50周りの瞬間回転位置に依存する。これは、第2のビーム入力面72の平面と第2のビーム出力面74の平面との間の角度の差に実質的に等しい、X−Y平面に対する第2のビーム偏向角度となる。第1のビーム出力平面がX−Y平面に実質的に平行である時、第1のビーム偏向角度は、X−Y平面に対する第1のビーム入力平面の角度に実質的に等しい。
【0021】
いくつかの実施例では、第2のビーム出力面74は第1のビーム入力面66と補完的であることができ、第1のビーム出力面68および第2のビーム入力面72は、両方とも、X−Y平面に平行であることができる。これらの実施例では、第1の光学要素46および第2の光学要素48が、図3Aで示すように約180°位相オフセットである時、各それぞれの光学要素46、48によってもたらされる第1の偏向角度および第2の偏向角度は、一般に、互いに相殺する。この組み合わせは、出力ビームまたは操作ビーム64の純偏向が入射ビーム62に対してほとんどまたはまったくない平行面として、効果的に動作する。これは、出力ビームまたは操作ビーム64がビームステアリング軸50に略平行となり、または一致さえもして、約0°の効果的なビームステアリング角となる。
【0022】
図3Bでは、第1の光学要素46および第2の光学要素48は、180°よりも小さく位相オフセットであり、入射ビーム62とビームステアリング軸50とに対して小さい偏向ビームステアリング角になる。第1の光学要素46と第2の光学要素48とを同じ速度で回転させた時、比較的小さな円形の走査経路が、出力ビームまたは操作ビーム64によってビームステアリング軸50の周りに形成される。
【0023】
図3Cでは、第1の光学要素46および第2の光学要素48は位相オフセットではなく、したがって、両方が光を同じ方向に屈折させる。第1の光学要素46および第2の光学要素48は、個々の要素の2倍の偏向角度を持つ、1つのプリズムとして動作する。これは、入射ビーム62とビームステアリング軸50とに対して、最大の偏向角度またはビームステアリング角76となる。第1の光学要素46と第2の光学要素48とを同じ速度で回転させた時、大きな円形の走査経路が、出力ビームまたは操作ビーム64によってビームステアリング軸50の周りに形成される。
【0024】
操作ビーム64の所望の偏向角度またはビームステアリング角76を得るために、第1の光学要素46と第2の光学要素48との間の相対位相オフセットを調整することによって、図3A図3Cの位置の間の位置を達成することができる。円形の走査経路の半径は、第1の光学要素46と第2の光学要素48とを同じ速度で回転させた時の、位相オフセットとビームステアリング角76とに基づいて決定され得る。
【0025】
図4は、ビームステアリング軸50に対する、加工対象物の積層される層80のための連続的非直線走査経路82を示している。連続的非直線走査経路82を形成するために、1つまたは両方の光学要素46、48の回転速度は、(図3A図3Cで示す)操作ビーム64が加工対象物の積層される層80上を移動するにつれて、定期的かつ瞬間的に調整され得る。1つまたは両方の光学要素46、48の回転をわずかに遅くまたは速くすることによって、位相オフセット角が変更され、(図3A図3Cでも示す)ビームステアリング軸50に対する結果的なビームステアリング角76も変更される。
【0026】
図4の実施例では、出力ビーム64は、非直線走査経路で操作され得る。相対速度と位相オフセット角とに加えて、絶対回転速度もまた、異なる溶融凝固要求に対する異なる走査速度を提供するために調整され得る。外周82の周りの輪郭露出パラメータは、通常、各加工対象物の積層される層80のコア84で使用される出力と走査速度とに比較して、より低いビーム出力とより速い走査速度とを活用する。より低い出力およびより早い速度は、外周82の表面仕上げを改善する。
【0027】
走査経路86は、最初、加工対象物の積層される層80の外周82の周りから始まり、その後、移行領域88を通ってコア84に入る。外周82の周りの1回または複数回の走査の後、非直線走査経路を途切れさせることなく、移行領域88、次いで、コア84が走査される。コア84の部分を、たとえば、図4で示されているように、つながっている実質的に同心の円90の中で走査することができる。
【0028】
伝統的なX−Yラスタリングでは、時々、未焼結の粉末が外周とコアとの間の移行領域の辺りに残る。これは、輪郭または外周の走査が、主により良い表面仕上げと寸法精度とのために使用される、コアの走査とは別に行われるためである。未焼結の粉末の問題は後処理ステップ(たとえば、圧密)を使用して対応され得るため、追加的な処理費用にも拘わらず、過剰焼結材料の代わりに未焼結粉末を有することが伝統的には好まれてきた。
【0029】
しかしながら、ビームステアリングアセンブリ30は、各加工対象物の積層される層80上に非直線のビームステアリング経路86を提供し、それによって、外周の走査とコアの走査とを1つに融合することを可能にし、未焼結粉末の問題が実質的に除去される。これは、光学要素46と光学要素48との回転速度を正確に制御し、一方でそれと同時に、絶対回転速度と(図2図3Cに示す)光学要素46と光学要素48との間の任意の位相オフセットとを管理する能力に起因する。
【0030】
図1図4は、1つのビームが、1つのビームステアリング装置によって操作されて、1つの積層プラットフォームに向けられる実施例を示している。いくつかの実施例では、(ビームスプリッタまたはマルチビーム生成器を介した)複数のビームが、同時走査のための、対応する複数のリズレープリズムを通り抜ける。複数の積層プラットフォームを実装することもできる。
【0031】
図5は、付加製造装置を動作させる方法100のステップを示している。ステップ102は、粉末供給原料などの原材料を積層位置(たとえば、作業プラットフォームまたは積層プラットフォーム)に供給することを含む。積層位置は、X−Y平面に沿って配置することができる。ステップ104の一部として、1つまたは複数のレーザービームを、積層位置から離れたビーム発射位置で生成することができる。ステップ106で、レーザービームは、ビーム発射位置と積層位置との間のビーム通過経路に沿って配置された第1の光学要素を通して方向付けられる。ステップ108は、レーザービームを、ビーム通過経路に沿って配置された第2の光学要素を通して方向付けることを含む。次いで、ステップ110で、レーザービームは、第2の光学要素から出て積層位置に向かう。
【0032】
図2に示した通り、第1の光学要素および第2の光学要素は、ビームステアリング軸周りに連続的に回転可能であることができる。いくつかの実施例では、第1の光学要素は第1のくさび状プリズムであり、レーザービームを、第1のビーム入力平面を占める第1のビーム入力面を通して方向付けることが、X−Y平面に対する第1のビーム入力角を画定する。レーザービームを、第1のビーム出力平面を占める第1のビーム出力面を通して方向付けることが、X−Y平面に対する第1のビーム出力角を画定する。いくつかの実施例では、第2の光学要素は第2のくさび状プリズムであり、レーザービームを、第2のビーム入力平面を占める第2のビーム入力面を通して方向付けることが、X−Y平面に対する第2のビーム入力角を画定する。レーザービームを、第2のビーム出力平面を占める第2のビーム出力面を通して方向付けることが、X−Y平面に対する第2のビーム出力角を画定する。これらの実施例では、第2のビーム入力角と第2のビーム出力角との差が、ビームステアリング軸に対する第2のビーム偏向角度を画定する。第1のビーム偏向角度と第2のビーム偏向角度との差は、ビームステアリング軸に対する全体的なビーム偏向を決定することができる。
【0033】
第1の回転速度を第1の光学要素に、および第2の回転速度を第2の光学要素に、のうちの少なくとも1つを与えることによって要素を回転させると、積層位置の少なくとも一部の上でレーザービームを選択的に操作することになる。第1の回転速度の大きさおよび方向が、第2の回転速度のそれらと等しい時、走査経路の結果として生じる部分は、実質的に円形である。走査経路の円形部分の半径は、光学要素間の位相オフセットに基づいて決定される。
【0034】
第1および/または第2の光学要素(たとえば、くさび状プリズム)を回転させることによって、これは、全体的なビーム偏向角度を連続する方法で効果的に変更する。光学要素(たとえば、図3A図3Cを参照)を回転させてもいる間に、それらの間の位相オフセットを瞬時に調整することは、走査経路の結果として生じる部分を非円形かつ非直線にする原因となる。制御装置は、各層の連続的なステアリング経路を画定するために、各光学要素の(相対および絶対)回転速度と位相オフセットとを管理する。上記で述べた通り、ビーム幅全体が、必ず、すべての偏向角度で両方の要素の中を完全に通り抜けることができるように、第2の光学要素/くさび状プリズムは、第1の光学要素/くさび状プリズムよりも大きくてよい。
【0035】
付加製造によって品物を作るためにステップを繰り返すことができる。本プロセスでは、表面の下での未焼結粉末の発生は、完成ニアネットシェイプ部品において結果的に生じる応力を上昇させるものと共に除去され、それらすべては表面仕上げを犠牲にすることはない。
【0036】
可能な実施例の考察
以下は、本発明の可能な実施例の非排他的な説明である。
【0037】
付加製造装置は、レーザービーム生成器と、レーザービーム生成器から離れている積層面と、レーザービーム生成器と積層面との間のビーム通過経路に沿って配置された第1および第2の隣接する光学要素と、を備える。第1の光学要素は、ビームステアリング軸周りに回転可能であり、第2の光学要素は、第1の光学要素から独立してビームステアリング軸周りに回転可能である。
【0038】
前の段落の装置は、追加的および/または代替的に、以下の特徴、構成、および/または追加構成要素のうちのいずれか1つまたは複数を任意で含むことができる。
【0039】
第1の光学要素が、それぞれがビームステアリング軸と交差する第1のビーム入力面と第1のビーム出力面とを備える、前述の付加製造装置のさらなる実施例。
【0040】
第1のビーム入力面が、X−Y平面に対する第1のビーム入力角を画定する第1のビーム入力平面を占め、第1のビーム出力面が、X−Y平面に対する第1のビーム出力角を画定する第1のビーム出力平面を占める、前述の付加製造装置のうちのいずれかのさらなる実施例。
【0041】
第1のビーム入力角と第1のビーム出力角との差が、ビームステアリング軸に対する第1のビーム偏向角度を画定する、前述の付加製造装置のうちのいずれかのさらなる実施例。
【0042】
第2の光学要素が、それぞれがビームステアリング軸と交差する第2のビーム入力面と第2のビーム出力面とを備える、前述の付加製造装置のうちのいずれかのさらなる実施例。
【0043】
第2のビーム入力面が、X−Y平面に対する第2のビーム入力角を画定する第2のビーム入力平面を占め、第2のビーム出力面が、X−Y平面に対する第2のビーム出力角を画定する第2のビーム出力平面を占め、第2のビーム入力角と第2のビーム出力角との差が、ビームステアリング軸に対する、連続的に可変の第2のビーム偏向角度を画定する、前述の付加製造装置のうちのいずれかのさらなる実施例。
【0044】
第1のビーム出力面が、第2のビーム入力面とX−Y平面とに平行である、前述の付加製造装置のうちのいずれかのさらなる実施例。
【0045】
第1のビーム入力角が、第2のビーム出力角を補完する、前述の付加製造装置のうちのいずれかのさらなる実施例。
【0046】
第1の光学要素が、第1のくさび状プリズムから成り、第1の光学要素の入力面が、レーザービーム装置からの到来レーザービームを受け取るように適合され、第2の光学要素が、第2のくさび状プリズムから成り、第2の光学要素の入力面が、第1のくさび状プリズムの出力面に隣接し、第2の光学要素の出力面が、積層位置に対向する、前述の付加製造装置のうちのいずれかのさらなる実施例。
【0047】
ビームステアリング軸が、X−Y平面に垂直に配置されている、前述の付加製造装置のうちのいずれかのさらなる実施例。
【0048】
レーザービーム生成器の出力が、ビームステアリング軸に揃っている、前述の付加製造装置のうちのいずれかのさらなる実施例。
【0049】
第1の光学要素を第1の回転速度で回転させ、第2の光学要素を第2の回転速度で回転させ、第1の光学要素と第2の光学要素との間の位相オフセットを管理してビームステアリング角を制御するように適合されたビームステアリング制御装置をさらに備える、前述の付加製造装置のうちのいずれかのさらなる実施例。
【0050】
相対的な第1および第2の回転速度、ならびに位相オフセットが、制御装置によって定期的に調整されて、非直線ビームステアリング経路を画定する、前述の付加製造装置のうちのいずれかのさらなる実施例。
【0051】
付加製造装置を動作させる方法は、原材料を、X−Y平面に沿って配置された積層面に供給することを含む。レーザービームは、積層位置から離れているビーム発射位置で生成される。レーザービームは、ビーム発射位置と積層位置との間のビーム通過経路に沿って配置された、第1の光学要素と隣接する第2の光学要素とを通して方向付けられる。第1の光学要素は、ビームステアリング軸周りに回転可能であり、第2の光学要素は、第1の光学要素から独立してビームステアリング軸周りに回転可能である。レーザービームは、第2の光学要素から積層面に向けられる。
【0052】
前の段落の方法は、追加的および/または代替的に、以下の特徴、ステップ、構成、および/または追加構成要素のうちの1つまたは複数を任意で含むことができる。
【0053】
レーザービームを、積層位置の少なくとも一部の上で選択的に操作することをさらに含む、前述の方法のさらなる実施例。
【0054】
操作するステップが、第1の光学要素をビームステアリング軸の周りに位置付けして、第1のビーム偏向角度を変更することを含む、前述の方法のうちのいずれかのさらなる実施例。
【0055】
操作するステップが、第2の光学要素をビームステアリング軸の周りに位置付けして、第2のビーム偏向角度を変更することを含む、前述の方法のうちのいずれかのさらなる実施例。
【0056】
操作するステップが、第1の回転速度を第1の光学要素に、および第2の回転速度を第2の光学要素に、のうちの少なくとも1つを与え、与えるステップ中に、第1の光学要素と第2の光学要素との間の位相オフセットを制御して、ビームステアリング軸に対する、積層位置上の非直線ビームステアリング経路を画定することを含む、前述の方法のうちのいずれかのさらなる実施例。
【0057】
第1の回転速度が、第2の回転速度と異なる、前述の方法のうちのいずれかのさらなる実施例。
【0058】
第1の光学要素が、第1のくさび状プリズムから成り、第2の光学要素が、第1のくさび状プリズムよりも大きい第2のくさび状プリズムから成る、前述の方法のうちのいずれかのさらなる実施例。
【0059】
好適な実施例を参照して本発明を説明したが、本発明の精神と範囲とから逸脱することなく、形状的また詳細な変更を行うことができるということを、当業者は認識する。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5