特許第6359668号(P6359668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社マンダムの特許一覧

特許6359668酸化染毛剤、酸化染毛用混合剤の製造方法、及び酸化染毛方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359668
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】酸化染毛剤、酸化染毛用混合剤の製造方法、及び酸化染毛方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20180709BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20180709BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20180709BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180709BHJP
   A61K 8/22 20060101ALI20180709BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20180709BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   A61K8/19
   A61K8/41
   A61K8/55
   A61K8/34
   A61K8/22
   A61K8/86
   A61Q5/10
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-540154(P2016-540154)
(86)(22)【出願日】2015年7月24日
(86)【国際出願番号】JP2015071100
(87)【国際公開番号】WO2016021425
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2016年10月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-162907(P2014-162907)
(32)【優先日】2014年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-162908(P2014-162908)
(32)【優先日】2014年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 久美子
(72)【発明者】
【氏名】井口 顕策
(72)【発明者】
【氏名】原 真也
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−143828(JP,A)
【文献】 特開2005−255656(JP,A)
【文献】 特開2010−126497(JP,A)
【文献】 特開2002−255763(JP,A)
【文献】 特開2002−370949(JP,A)
【文献】 特開2008−290971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1剤と第2剤とを少なくとも備え、
前記第1剤と前記第2剤とは混合して用いられ、
前記第1剤が、下記成分A、下記成分Cと、下記成分Dと、下記成分Eとを含み、
前記第1剤が、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群より選ばれた化合物を含み、
前記第2剤が、下記成分Xと、下記成分Yとを含み、
前記第1剤において、前記成分Dの含有量が5.5質量%以下であり、
前記第1剤と前記第2剤との混合剤において、前記成分Xの含有量が1.5質量%以上、2.7質量%未満である、酸化染毛剤。
成分A’:モノエタノールアミ
分C:リン酸ジアルキル
成分D:高級アルコール
成分E:酸化染料
成分X:過酸化水素
成分Y:ノニオン性界面活性剤
【請求項2】
前記第1剤と前記第2剤との混合剤の25℃でのpHが8.8以上、10.0以下である、請求項1に記載の酸化染毛剤。
【請求項3】
前記第1剤と前記第2剤との混合剤において、アンモニア及びアンモニウムイオンの合計の含有量がアンモニア換算で0.45mmol/g以下である、請求項1又は2に記載の酸化染毛剤。
【請求項4】
前記第1剤がクリーム状であり、
前記第2剤がクリーム状である、請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化染毛剤。
【請求項5】
前記第1剤と前記第2剤とが、質量比で、1:1.5〜1.5:1である、請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化染毛剤。
【請求項6】
下記成分A、下記成分Cと、下記成分Dと、下記成分Eとを含み、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群より選ばれた化合物を含み、かつ前記成分Dを5.5質量%以下で含む第1剤、及び下記成分Xと、下記成分Yとを含む第2剤を少なくとも備える酸化染毛剤を用いて、前記第1剤と前記第2剤とを混合し、混合剤を得る混合工程を備え、
得られる混合剤において、前記成分Xの含有量を1.5質量%以上、2.7質量%未満にする、酸化染毛用混合剤の製造方法。
成分A’:モノエタノールアミ
分C:リン酸ジアルキル
成分D:高級アルコール
成分E:酸化染料
成分X:過酸化水素
成分Y:ノニオン性界面活性剤
【請求項7】
得られる混合剤において、25℃でのpHを8.8以上、10.0以下にする、請求項に記載の酸化染毛用混合剤の製造方法。
【請求項8】
得られる混合剤において、アンモニア及びアンモニウムイオンの合計の含有量をアンモニア換算で0.45mmol/g以下にする、請求項又はに記載の酸化染毛用混合剤の製造方法。
【請求項9】
得られる混合剤において、前記第1剤と前記第2剤とが、質量比で、1:1.5〜1.5:1になるように、前記第1剤と前記第2剤とを混合する、請求項のいずれか1項に記載の酸化染毛用混合剤の製造方法。
【請求項10】
下記成分A、下記成分Cと、下記成分Dと、下記成分Eとを含み、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群より選ばれた化合物を含み、かつ前記成分Dを5.5質量%以下で含む第1剤、及び下記成分Xと、下記成分Yとを含む第2剤を少なくとも備える酸化染毛剤を用いて、前記第1剤と前記第2剤とを混合し、混合剤を得る混合工程と、
前記混合剤を用いて、毛髪を染色する染毛工程とを備え、
得られる混合剤において、前記成分Xの含有量を1.5質量%以上、2.7質量%未満にする、酸化染毛方法。
成分A’:モノエタノールアミ
分C:リン酸ジアルキル
成分D:高級アルコール
成分E:酸化染料
成分X:過酸化水素
成分Y:ノニオン性界面活性剤
【請求項11】
得られる混合剤において、25℃でのpHを8.8以上、10.0以下にする、請求項10に記載の酸化染毛方法。
【請求項12】
得られる混合剤において、アンモニア及びアンモニウムイオンの合計の含有量をアンモニア換算で0.45mmol/g以下にする、請求項10又は11に記載の酸化染毛方法。
【請求項13】
得られる混合剤において、前記第1剤と前記第2剤とが、質量比で、1:1.5〜1.5:1になるように、前記第1剤と前記第2剤とを混合する、請求項1012のいずれか1項に記載の酸化染毛方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ剤及び酸化染料を含む第1剤と、過酸化水素を含む第2剤とを少なくとも備えており、上記第1剤と上記第2剤とが混合して用いられる酸化染毛剤に関する。また、本発明は、酸化染毛剤を用いる酸化染毛用混合剤の製造方法、及び酸化染毛方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪を脱色、染色するために、アルカリ剤を含む第1剤と、過酸化水素を含む第2剤とを備える多剤式の脱色剤や酸化染毛剤が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。上記第1剤と上記第2剤とを混合した混合剤によって、毛髪が染色される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−343219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の脱色剤は、混合剤中の過酸化水素の含有量が3質量%を超えるために、毛髪のダメージが大きくなるという問題がある。
【0005】
上記毛髪のダメージを低減するためには、混合剤中の過酸化水素の含有量を低減することが考えられるが、酸化染毛剤においては、染色力が低下する問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、毛髪に対するダメージを低減することができ、なおかつ、優れた染色力を発揮でき、更に、保存安定性にも優れている酸化染毛剤、酸化染毛用混合剤の製造方法、及び酸化染毛方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、第1剤に、炭酸塩及び炭酸水素塩からなる群より選ばれた化合物、リン酸ジアルキル、及び高級アルコールを用いることにより、過酸化水素の含有量を低減させた場合であっても、優れた染色力を発揮する酸化染毛剤が得られることを見出した。
【0008】
しかし、上記酸化染毛剤では、第1剤の粘度が経時で上昇してしまい、保存安定性が悪くなるという新たな欠点が生じることがわかった。
【0009】
従来、毛髪のダメージが小さく、優れた染色力を有し、さらには保存安定性が良好である酸化染毛剤は得られていないのが現状であるが、本発明者らは、これらの課題を解決できる構成を見出した。
【0010】
本発明に係る酸化染毛剤は、第1剤と第2剤とを少なくとも備え、前記第1剤と前記第2剤とは混合して用いられ、前記第1剤が、下記成分Aと、下記成分Bと、下記成分Cと、下記成分Dと、下記成分Eとを含み、前記第2剤が、下記成分Xを含み、前記第1剤において、前記成分Dの含有量が5.5質量%以下であり、前記第1剤と前記第2剤との混合剤において、前記成分Xの含有量が1.5質量%以上、2.7質量%未満である。
【0011】
成分A:アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びイソプロパノールアミンからなる群より選ばれた化合物
成分B:炭酸塩及び炭酸水素塩からなる群より選ばれた化合物
成分C:リン酸ジアルキル
成分D:高級アルコール
成分E:酸化染料
成分X:過酸化水素
【0012】
本発明に係る酸化染毛剤では、前記第1剤と前記第2剤との混合剤の25℃でのpHが8.8以上、10.0以下であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る酸化染毛剤では、前記第1剤が、前記成分Aとして、下記成分A’を含むことが好ましい。
【0014】
成分A’:モノエタノールアミン
【0015】
本発明に係る酸化染毛剤では、前記第1剤と前記第2剤との混合剤において、アンモニア及びアンモニウムイオンの合計の含有量がアンモニア換算で0.45mmol/g以下であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る酸化染毛剤では、前記第2剤が、下記成分Yをさらに含むことが好ましい。
【0017】
成分Y:ノニオン性界面活性剤
【0018】
本発明に係る酸化染毛剤では、前記第1剤がクリーム状であり、前記第2剤がクリーム状であることが好ましい。
【0019】
本発明に係る酸化染毛剤では、前記第1剤と前記第2剤とが、質量比で1:1.5〜1.5:1であることが好ましい。
【0020】
本発明に係る酸化染毛用混合剤の製造方法は、前記成分Aと、前記成分Bと、前記成分Cと、前記成分Dと、前記成分Eとを含み、かつ前記成分Dを5.5質量%以下で含む第1剤、及び前記成分Xを含む第2剤を少なくとも備える酸化染毛剤を用いて、前記第1剤と前記第2剤とを混合し、混合剤を得る混合工程を備え、得られる混合剤において、前記成分Xの含有量を1.5質量%以上、2.7質量%未満にする。
【0021】
本発明に係る酸化染毛方法は、前記成分Aと、前記成分Bと、前記成分Cと、前記成分Dと、前記成分Eとを含み、かつ前記成分Dを5.5質量%以下で含む第1剤、及び前記成分Xを含む第2剤を少なくとも備える酸化染毛剤を用いて、前記第1剤と前記第2剤とを混合し、混合剤を得る混合工程と、前記混合剤を用いて、毛髪を染色する染毛工程とを備え、得られる混合剤において、前記成分Xの含有量を1.5質量%以上、2.7質量%未満にする。
【0022】
本発明に係る酸化染毛用混合剤の製造方法及び本発明に係る酸化染毛方法では、得られる混合剤において、25℃でのpHを8.8以上、10.0以下にすることが好ましい。
【0023】
本発明に係る酸化染毛用混合剤の製造方法及び本発明に係る酸化染毛方法では、得られる混合剤において、アンモニア及びアンモニウムイオンの合計の含有量をアンモニア換算で0.45mmol/g以下にすることが好ましい。
【0024】
本発明に係る酸化染毛用混合剤の製造方法及び本発明に係る酸化染毛方法では、得られる混合剤において、前記第1剤と前記第2剤とが、質量比で、1:1.5〜1.5:1になるように、前記第1剤と前記第2剤とを混合することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る酸化染毛剤、本発明に係る酸化染毛用混合剤の製造方法及び本発明に係る酸化染毛方法では、本発明の構成が備えられることにより、毛髪に対するダメージを低減することと、毛髪に対する十分な染色力を発現させることとを両立できる。なおかつ、第1剤の保存安定性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明に係る酸化染毛剤は、第1剤と第2剤とを少なくとも備える。本発明に係る酸化染毛用混合剤の製造方法及び本発明に係る酸化染毛方法で用いられる酸化染毛剤は、第1剤と第2剤とを少なくとも備える。上記第1剤と上記第2剤とは混合して用いられる。上記第1剤と上記第2剤とは、使用時(即ち、毛髪の染色時)に混合される。
【0028】
上記酸化染毛剤では、上記第1剤が、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びイソプロパノールアミンからなる群より選ばれた化合物と、炭酸塩及び炭酸水素塩からなる群より選ばれた化合物と、リン酸ジアルキルと、高級アルコールと、酸化染料とを含む。本発明に係る酸化染毛剤では、上記第2剤が、過酸化水素を含む。
【0029】
本明細書においては、上記「アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びイソプロパノールアミンからなる群より選ばれた化合物」を「成分(A)」と称する場合がある。また、上記「炭酸塩及び炭酸水素塩からなる群より選ばれた化合物」を「成分(B)」と称する場合がある。また更に、上記「リン酸ジアルキル」を「成分(C)」と称する場合がある。上記「高級アルコール」を「成分(D)」と称する場合がある。さらに、上記「酸化染料」を「成分(E)」と称する場合がある。また、上記「過酸化水素」を「成分(X)」と称する場合がある。
【0030】
本発明に係る酸化染毛剤では、上記第1剤において、上記成分(D)の含有量が5.5質量%以下であり、上記第1剤と上記第2剤との混合剤において、上記成分(X)の含有量が1.5質量%以上、2.7質量%未満である。上記第1剤と上記第2剤との混合剤は、上記第1剤と上記第2剤とを混合した混合剤である。
【0031】
本発明に係る酸化染毛用混合剤の製造方法は、上記酸化染毛剤を用いて、上記第1剤と上記第2剤とを混合し、混合剤を得る混合工程を備える。本発明に係る酸化染毛方法は、上記酸化染毛剤を用いて、上記第1剤と上記第2剤とを混合し、混合剤を得る混合工程と、上記混合剤を用いて、毛髪を染色する染毛工程とを備える。
【0032】
本発明に係る酸化染毛用混合剤の製造方法及び本発明に係る酸化染毛方法では、得られる混合剤において、成分(X)の含有量を1.5質量%以上、2.7質量%未満にする。
【0033】
本発明では、上述した構成が備えられているため、過酸化水素の含有量がかなり少ないので、毛髪に対するダメージを低減することができる。過酸化水素の含有量がかなり少ないにもかかわらず、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)を併用することにより、毛髪を充分に染色することができる。これは、以下の推定に特に限定されないが、成分(B)によりpHをある程度低く保ちながら染色力が向上する効果と、成分(C)及び成分(D)の組み合わせにより、毛髪に混合剤が浸透しやすくなることにより染色力が向上する効果と、成分(D)により混合剤の粘度がある程度高くなることにより、混合剤の毛髪への密着性が向上することにより染色力が向上する効果との複数の効果によると推定される。
【0034】
さらに、本発明では、成分(D)の含有量を特定の範囲としているため、第1剤の経時での粘度上昇が抑制され、保存安定性を高めることもできる。
【0035】
本発明者らは、1)毛髪に対するダメージを低減することと、2)毛髪を充分に染色することと、3)第1剤の経時での粘度安定性を高め、保存安定性を高めるという3つの全ての性能を良好にするという、極めて困難な問題を解消できる上記の構成を見出した。
【0036】
加えて、本発明では、成分(B)が脱色力を発揮することから、白髪と黒髪とが混ざった毛髪に使用する場合には、染毛後に染色された白髪と染色された黒髪との色の差異を小さくすることができ、所謂白髪馴染みが良好となる効果も発揮される。なお、本発明に係る酸化染毛剤は、白髪が混ざっていない毛髪にも使用可能である。さらに、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の効果により、使用時の刺激臭も低減される。
【0037】
上記酸化染毛剤では、上記第2剤が、ノニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。
【0038】
本明細書においては、上記「ノニオン性界面活性剤」を「成分(Y)」と称する場合がある。
【0039】
上記第1剤は、成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)と成分(E)とを少なくとも含む。上記第1剤は、他の成分を含んでいてもよい。上記第2剤は、成分(X)を少なくとも含む。上記第2剤は、成分(Y)を含むことが好ましい。上記第2剤は、他の成分を含んでいてもよい。成分(A)、成分(B)、成分(D)、成分(E)、成分(Y)及び他の成分はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
上記酸化染毛剤では、上記第1剤と上記第2剤とが混合された混合剤において、アンモニア及びアンモニウムイオンの合計の含有量はアンモニア換算で、好ましくは0.20mmol/g以上、より好ましくは0.25mmol/g以上、好ましくは0.45mmol/g以下である。アンモニア及びアンモニウムイオンの合計の含有量が上記範囲であると、染色力がより一層高くなる。また、脱色力が向上し、白髪馴染みがより一層良好になる。さらに、アンモニア及びアンモニウムイオンの合計の含有量が上記上限以下であると、使用時の刺激臭や刺激感がより一層低減される。アンモニア又はアンモニウムイオンを生じさせる成分としては、特に限定されないが、例えば、成分(A)として用いられるアンモニア;成分(B)として用いられる炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなどが挙げられる。
【0041】
以下、上記酸化染毛剤に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0042】
(成分(A))
成分(A)はアルカリ剤である。成分(A)は、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びイソプロパノールアミンからなる群より選ばれた化合物(少なくとも1の化合物)である。
【0043】
染色力をより一層高める観点からは、成分(A)は、モノエタノールアミン及びイソプロパノールアミンからなる群より選ばれた化合物(少なくとも1のアミン化合物)であることが好ましく、モノエタノールアミン(以下、上記「モノエタノールアミン」を成分(A’)と称する場合がある)であることがより好ましい。上記第1剤が、成分(A)として、成分(A’)を含むことが好ましい。
【0044】
混合剤100質量%中において、成分(A)の含有量、及び成分(A’)の含有量はそれぞれ、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、好ましくは7.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下である。成分(A)及び、成分(A’)の各含有量が上記下限以上であると、染色力がより一層高くなる。成分(A)及び、成分(A’)の各含有量が上記上限以下であると、毛髪のダメージがより一層低減される。
【0045】
(成分(B))
成分(B)はアルカリ剤である。成分(B)は、炭酸塩及び炭酸水素塩からなる群より選ばれた化合物(少なくとも1の化合物)である。成分(B)は、染色力を向上させ、成分(X)の低減に伴う染毛力の不足を補う役割を果たす。また、成分(B)は脱色力を向上させるため、白髪と黒髪とが混ざった毛髪に使用する場合の白髪馴染みも向上させる。さらには、成分(B)を用いることにより、混合剤のpHが低く抑えられるため、刺激臭や刺激感がより一層抑えられる。
【0046】
成分(B)としては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸グアニジン、炭酸水素グアニジン、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム及び炭酸バリウム等が挙げられる。
【0047】
白髪馴染みをより一層良好にする観点からは、成分(B)は、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群より選ばれた化合物(少なくとも1の化合物)であることが好ましい。中でも、成分(B)は、炭酸水素アンモニウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群より選ばれた化合物(少なくとも1の化合物)であることがより好ましい。染色性を良好にする観点で、成分(B)は、炭酸水素アンモニウムであることが更に好ましい。上記第1剤は、成分(B)として、炭酸水素アンモニウムを含むことが好ましい。
【0048】
混合剤において、成分(B)の含有量、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムから選ばれた化合物の含有量、炭酸水素アンモニウム及び炭酸水素ナトリウムから選ばれた化合物の含有量、及び炭酸水素アンモニウムの含有量はそれぞれ、好ましくは0.03mmol/g以上、より好ましくは0.20mmol/g以上、更に好ましくは0.25mmol/g以上、好ましくは0.70mmol/g以下、より好ましくは0.65mmol/g以下である。成分(B)等の各含有量が上記下限以上であると、染色力がより一層高くなる。また、白髪馴染みが良好となり、更に使用時の刺激臭及び刺激感がより一層低減される。成分(B)等の各含有量が上記上限以下であると、毛髪のダメージがより一層低減される。
【0049】
(成分(C))
成分(C)であるリン酸ジアルキルは、毛髪に混合剤を浸透しやすくして、染色力をより一層高める。また、使用時の刺激臭をより一層低減できる。上記効果は、成分(C)と成分(D)と併用することで、より一層優れる。
【0050】
染色力を更に一層高める観点からは、成分(C)のアルキル基の炭素数は、好ましくは12以上、好ましくは24以下、より好ましくは20以下である。
【0051】
中でも、成分(C)は、リン酸ジセチル(以下、成分(C’)と称する場合がある)であることが好ましい。上記第1剤は、成分(C)として、成分(C’)を含むことが好ましい。
【0052】
第1剤100質量%中において、成分(C)の含有量及び成分(C’)の含有量は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。成分(C)及び成分(C’)の各含有量が上記下限以上であると、染色力が更に一層高くなる。また、使用時の刺激臭がより一層低減される。成分(C)及び成分(C’)の各含有量が上記上限以下であると、製剤安定性がより一層高くなる。
【0053】
(成分(D))
成分(D)を所定の量で用いることで、第1剤及び混合剤の粘度を適度に高め、混合剤の毛髪への密着性を向上させて、染色力を向上させることができる。なおかつ、第1剤の経時での粘度上昇を抑制して、第1剤の保存安定性を高めることができる。
【0054】
成分(D)の炭素数は、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、好ましくは22以下、より好ましくは18以下である。第1剤の保存安定性をより一層高め、混合剤の粘度をより一層良好な範囲に制御する観点からは、成分(D)は、脂肪族1価の高級アルコールであることが好ましい。
【0055】
成分(D)としては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール及びバチルアルコール等が挙げられる。
【0056】
第1剤の経時での粘度上昇を抑制して保存安定性を高める観点からは、上記第1剤100質量%中、成分(D)の含有量は5.5質量%以下である。第1剤の保存安定性をより一層高める観点からは、上記第1剤100質量%中、成分(D)の含有量は、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下である。なお、第1剤をクリーム状とし、混合剤の毛髪への密着性をより一層高めて、染色力をより一層向上させる観点からは、成分(D)の含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上である。
【0057】
(成分(E))
酸化染料である成分(E)を用いることで、毛髪を所定の色に染色することができる。
【0058】
「酸化染料」は、自身の酸化重合により発色する酸化染料前駆体と、酸化染料前駆体との反応により種々の色に発色させるカップラーとの双方を意味する。上記酸化染料前駆体及び上記カップラーはそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
上記酸化染料前駆体としては、フェニレンジアミン類、アミノフェノール類及びジアミノピリジン類、並びにこれらの塩類等が挙げられる。該塩類としては、塩酸塩及び硫酸塩等が挙げられる。
【0060】
上記フェニレンジアミン類としては、p−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、トルエン−3,4−ジアミン、2,5−ジアミノアニソール、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−メチル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、6−メトキシ−3−メチル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジエチル−2−メチル−p−フェニレンジアミン、N−エチル−N−(ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、N−(2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、2−クロル−6−メチル−p−フェニレンジアミン、2−クロロ−p−フェニレンジアミン、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2,6−ジクロル−p−フェニレンジアミン及び2−クロル−6−ブロム−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。上記アミノフェノール類としては、パラアミノフェノール、オルトアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、5−アミノサリチル酸、2−メチル−4−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、2,6−ジメチル−4−アミノフェノール、3,5−ジメチル−4−アミノフェノール、2,3−ジメチル−4−アミノフェノール、2,5−ジメチル−4−アミノフェノール、2−クロロ−4−アミノフェノール及び3−クロロ−4−アミノフェノール等が挙げられる。上記ジアミノピリジン類としては、2,5−ジアミノピリジン等が挙げられる。
【0061】
上記カップラーとしては、例えば、レゾルシン、m−アミノフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、5−アミノ−o−クレゾール、2−メチル−5−ヒドロキシエチルアミノフェノール、2,6−ジアミノピリジン、カテコール、ピロガロール、α−ナフトール、没食子酸及びタンニン酸、並びにこれらの塩類等が挙げられる。
【0062】
成分(E)の含有量は、染色する色調及び染色力を考慮して適宜調整される。混合剤100質量%中において、酸化染料の含有量は好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。成分(E)の含有量が上記下限以上であると、染色力がより一層高くなる。成分(E)の含有量が上記上限以下であると、皮膚刺激が少なくなる。
【0063】
(成分(X))
過酸化水素である成分(X)は、アルカリ剤と混合されると、毛髪を脱色及び染色させる。
【0064】
本発明では、毛髪のダメージを低減するために、成分(X)は比較的少ない量で用いられる。従来、基本性能である染色力を発現させるために、混合剤中の過酸化水素の含有量は、一般に2.7質量%以上に設定されている。これに対して、本発明では、成分(X)の含有量は、かなり低く設定されている。すなわち、本発明では、混合剤において、成分(X)の含有量は、1.5質量%以上、2.7質量%未満である。成分(X)の含有量は、好ましくは1.7質量%以上、好ましくは2.5質量%以下である。成分(X)の含有量が上記下限以上であると、染色力がより一層高くなる。成分(X)の含有量が上記上限以下であると、毛髪のダメージがより一層低減される。
【0065】
本発明では、混合剤において、成分(X)の含有量が2.7質量%未満であっても、成分(A)〜(D)を用いているために、染色力が十分に高くなる。
【0066】
(成分(Y))
上記第2剤が、ノニオン性界面活性剤である成分(Y)を含むことが好ましい。成分(Y)を用いることによって、混合剤の毛髪への密着性をより一層高め、染色力をより一層向上させることができる。
【0067】
成分(Y)としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、アルキルポリグルコシドを用いることが好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを用いることがより好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル及びポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル等が挙げられる。なお、上記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのアルキレンオキシドの付加モル数は特に限定されない。
【0068】
上記第2剤100質量%中、成分(Y)の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下である。成分(Y)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、第2剤の保存安定性がより一層高くなり、かつ混合剤の毛髪への密着性がより一層高くなる。
【0069】
(その他の成分)
上記第1剤及び上記第2剤は、それぞれ水を含む。上記水は、特に限定されないが、精製水が好ましい。上記第1剤100質量%中の水の含有量及び上記第2剤100質量%中の水の含有量は、特に限定されないが、それぞれ50質量%以上であることが好ましい。
【0070】
色調を調色するために、上記第1剤は、直接染料を含んでいてもよい。直接染料としては、パラニトロオルトフェニレンジアミン、ニトロパラフェニレンジアミン、硫酸パラニトロメタフェニレンジアミン、2−アミノ−5−ニトロフェノール及びピクラミン酸等が挙げられる。
【0071】
上記第1剤は、還元剤をさらに含むことが好ましい。上記還元剤は、第1剤が大気暴露された際に、酸化染料の発色を抑制する。
【0072】
上記還元剤としては、N−アセチル−L−システイン、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム及びチオグリコール酸等が挙げられる。これらの塩を用いてもよい。上記還元剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
使用前に酸化染料の発色を効果的に抑える観点からは、上記第1剤100質量%中、上記還元剤の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0074】
上記第2剤は、高級アルコールを含むことが好ましい。上記第2剤において、上記高級アルコールは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0075】
上記高級アルコールの炭素数は、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、好ましくは22以下、より好ましくは18以下である。第1剤及び第2剤の安定性をより一層高める観点からは、上記高級アルコールは、脂肪族1価の高級アルコールであることが好ましい。
【0076】
上記第2剤に用いることができる上記高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール及びバチルアルコール等が挙げられる。
【0077】
第2剤の保存安定性をより一層高める観点からは、上記第2剤100質量%中、上記高級アルコールの含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下である。
【0078】
上記第1剤は、成分(C)以外の界面活性剤を含むことが好ましい。上記第2剤は、ノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤を含んでいてもよい。上記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤等が挙げられる。上記界面活性剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0079】
上記アニオン性界面活性剤としては、硫酸エステル型アニオン性界面活性剤、リン酸エステル型アニオン性界面活性剤、リン酸エーテル型アニオン性界面活性剤、スルホン酸型アニオン性界面活性剤及びカルボン酸型アニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0080】
上記両性界面活性剤としては、グリシン型両性界面活性剤、アミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤及びスルホベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリニウム型両性界面活性剤、アミンオキサイド型両性界面活性剤及びホスホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0081】
上記カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0082】
上記第1剤に用いることができる上記ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、アルキルポリグルコシドを用いることが好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを用いることがより好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル及びポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル等が挙げられる。なお、上記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのアルキレンオキシドの付加モル数は特に限定されない。
【0083】
上記第1剤100質量%中、上記界面活性剤の含有量(成分(C)以外の界面活性剤の含有量)は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下である。
【0084】
上記第1剤及び上記第2剤の内の少なくとも一方が、増粘性高分子を含んでいてもよい。増粘性高分子としては、カチオン化セルロース、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー等が挙げられる。上記増粘性高分子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0085】
上記カチオン化セルロースとしては、塩化−O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース及び塩化ジアリルジメチルアンモニウム・ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。
【0086】
上記カチオン性ポリマーとしては、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリル4級アンモニウム塩重合物、ジアリル4級アンモニウム塩/アクリル酸共重合物、ジアリル4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物及び4級ポリビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。上記カチオン性ポリマーの具体例としては、塩化−O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]グアーガム、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体液、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体及びビニルピロリドン・ジメチルアミノメタクリレートの硫酸ジメチルによる4級化誘導体等が挙げられる。
【0087】
上記アニオン性ポリマーとしては、キサンタンガム、アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・ポリオキシエチレンステアリルエーテル共重合体、アクリル酸アルキル・メタクリル酸ポリオキシエチレンべへネスエーテル共重合体、アクリル酸アルキル・イタコン酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル共重合体及びアクリル酸アルキル・メタクリル酸ポリオキシエチレンステアリルエーテルクロスポリマー等が挙げられる。
【0088】
上記第1剤及び上記第2剤の内の少なくとも一方が、炭化水素類を含むことが好ましい。上記第1剤及び上記第2剤はそれぞれ、炭化水素類を含むことが好ましい。上記炭化水素類は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0089】
上記炭化水素類としては、パラフィン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワレン及びスクワラン等が挙げられる。上記炭化水素類は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0090】
上記第1剤100質量%中及び上記第2剤100質量%中、上記炭化水素類の各含有量はそれぞれ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。混合剤100質量%中、上記炭化水素類の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。上記炭化水素類の含有量が上記上限以下であると、染毛後の毛髪の滑らかさがより一層良好になり、更に過剰な炭化水素類による染色阻害が生じにくくなる。
【0091】
上記第1剤及び上記第2剤の内の少なくとも一方が、シリコーン油を含むことが好ましい。上記第1剤及び上記第2剤はそれぞれ、シリコーン油を含むことが好ましい。シリコーン油の使用により、染毛後のすすぎ時の手触りがより一層良好になり、更に染毛後の毛髪の滑らかさがより一層良好になる。
【0092】
上記シリコーン油としては、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、アミノ変性シリコーン及びポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。上記シリコーン油は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0093】
上記第1剤及び上記第2剤の内の少なくとも一方が、多価アルコールを含むことが好ましい。上記第1剤及び上記第2剤はそれぞれ、多価アルコールを含むことが好ましい。上記多価アルコールは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0094】
上記多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール及び1,2−オクタンジオール等が挙げられる。
【0095】
上記第2剤は、過酸化水素の安定剤を含んでいてもよい。上記過酸化水素の安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0096】
上記過酸化水素の安定剤としては、フェノキシエタノール、フェナセチン及びヒドロキシエタンジホスホン酸等が挙げられる。
【0097】
上記酸化染毛剤では、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば、ソルビトール、マルチトール及びトレハロース等の糖アルコール;金属イオン封鎖剤;酸化防止剤;植物抽出エキス;顔料;pH調整剤;香料;防腐剤;溶剤等を用いてもよい。
【0098】
(多剤式の酸化染毛剤の詳細)
上記酸化染毛剤は、上記第1剤と上記第2剤とを少なくとも備える。すなわち、上記酸化染毛剤は、上記第1剤と上記第2剤とを少なくとも備える酸化染毛剤キットである。上記酸化染毛剤は、上記第1剤及び上記第2剤に加えて、第3剤をさらに備えていてもよい。第3剤としては、ヘアリンス剤、ヘアトリートメント剤及びヘアコンディショニング剤等が挙げられる。上記酸化染毛剤が上記第3剤を含み、上記第3剤が上記第1剤及び上記第2剤と混合して用いられる場合に、上記混合剤は上記第3剤を含み、上記混合剤は、上記第1剤と上記第2剤と上記第3剤とを混合して得られる。
【0099】
上記酸化染毛剤では、上記第1剤と上記第2剤とが混合されて混合剤として用いられる。上記第1剤、上記第2剤及び混合剤の性状としては、液状、乳液状、ジェル状及びクリーム状等が挙げられる。
【0100】
混合剤の毛髪への密着性を高め、染色性をより一層向上させる観点からは、上記第1剤がクリーム状であることが好ましく、上記第2剤がクリーム状であることが好ましく、上記混合剤がクリーム状であることが好ましい。
【0101】
上記混合剤の25℃での粘度は、好ましくは7000mPa・s以上、より好ましくは10000mPa・s以上、好ましくは30000mPa・s以下、より好ましくは25000mPa・s以下である。上記混合剤の粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、1)使用時の刺激臭がより一層低減され、2)毛髪に対するダメージがより一層低減され、更に、3)毛髪がより一層効果的に染色される。
【0102】
混合剤の粘度は、B型粘度計(トキメック社製)を用いて、25℃にて、ロータNo.4、12rpm及び1分の各条件で測定される。
【0103】
上記混合剤の25℃でのpHは、好ましくは8.8以上、好ましくは10.0以下である。混合時のpHが上記下限以上及び上記上限以下であると、1)使用時の刺激臭の低減、2)毛髪に対するダメージの低減、3)毛髪の染毛の3つの性能をバランスよく高めることができる。
【0104】
上記酸化染毛剤は、混合容器中で混合されてもよく、櫛上で混合されてもよく、毛髪上で混合されてもよい。第1剤及び第2剤は、別々の収容容器から混合された状態で吐出されてもよく、別々の収容容器から混合されていない状態で吐出されてもよい。
【0105】
混合容器として、容器本体と、吐出ノズルを有する蓋とを備える混合容器が挙げられる。上記収容容器としては、エアゾール容器等が挙げられる。
【0106】
上記酸化染毛剤では、上記第1剤と上記第2剤とは、質量比(第1剤:第2剤)で、1:5〜5:1で用いられることが好ましく、1:3〜3:1で用いられることがより好ましく、1:2〜2:1で用いられることが更に好ましい。第1剤と第2剤とを良好に混合し、更に1)使用時の刺激臭の低減、2)毛髪に対するダメージの低減、3)毛髪の染毛の3つの性能をバランスよく高める観点からは、上記第1剤と上記第2剤とは、質量比で、1:1.5〜1.5:1で用いられることが好ましい。従って、上記酸化染毛剤キットにおける上記第1剤と第2剤との質量比(第1剤:第2剤)は、好ましくは1:5〜5:1、より好ましくは1:3〜3:1、更に好ましくは1:2〜2:1、特に好ましくは1:1.5〜1.5:1である。即ち、上記混合剤(第1剤と第2剤との混合剤)は、第1剤と第2剤との質量比(第1剤:第2剤)が1:5〜5:1(より好ましくは1:3〜3:1、更に好ましくは1:2〜2:1、特に好ましくは1:1.5〜1.5:1)である混合剤であることが好ましい。
【0107】
上記酸化染毛剤は、黒髪、茶髪、黄髪及び白髪入り毛髪に用いることができる。染毛力に優れているので、本発明に係る酸化染毛剤は、白髪入り毛髪等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0108】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0109】
(実施例1〜14及び比較例1〜7)
下記の表1〜4に示す各成分を下記の表1〜4に示す含有量で配合して、第1剤及び第2剤を得た。第1剤、第2剤、及び混合剤の具体的な製造方法は下記のとおりである。
【0110】
<第1剤の製造方法>
80℃に加熱して十分溶解させた水相に、80℃に加熱した油相を徐々に入れた。ホモミキサーで2500rpm/分、5分間で攪拌し、乳化を行った。乳化後、40℃まで冷却し、アルカリ剤を入れた。その後、十分に均一攪拌して、第1剤を得た。
【0111】
<第2剤の製造方法>
80℃に加熱して十分溶解させた水相に、80℃に加熱した油相を徐々に入れた。手で5分間攪拌し、乳化を行った。乳化後、40℃まで冷却し、酸化剤、安定剤、pH調整剤を入れた。その後、十分に均一攪拌して、第2剤を得た。
【0112】
<混合剤の製造方法>
第1剤と第2剤とを1:1の比率(質量比)で混合し、混合剤を得た。
【0113】
(評価)
<評価用毛束の調製方法>
得られた混合剤を、白色人毛毛束(ビューラックス社製、長さ10cm、重さ1g)、及び黒色人毛毛束(スタッフス社製、長さ10cm、重さ1g)に塗布し、30℃で10分間放置した。その後、シャンプーで混合剤を水洗し、ドライヤーを用いて乾燥し、白色人毛毛束を染色した評価用毛束、及び黒色人毛毛束を染色した評価用毛束を調製した。
【0114】
(1)混合剤のpH
pHメーター(堀場製作所社製、F−74)を用いて測定した。
【0115】
(2)刺激臭(アンモニア検出濃度)
第1剤2.5g、第2剤2.5gを100mLビーカーに入れ、混合し、表面を平坦にした後、該100mLビーカーを2Lビーカー中に置き、密閉して1分間放置した。放置後、アンモニア検知管(ガステック社製、No.3M)を用いて、ビーカー内の気体100mLを吸引し、アンモニア濃度を測定した。
【0116】
(3)毛髪のダメージ
得られた混合剤によって黒色人毛毛束を染色した評価用毛束を用いて評価を行った。自動接触角計(協和界面化学社製、DM500型)を用い、上記評価用毛束から採取した毛髪に、精製水0.5μLを滴下し、毛髪における水の接触角を測定した。
【0117】
なお、染色処理を施していない未処理の黒色人毛毛束における水の接触角は125.2°であった。
【0118】
接触角の値が110°以上である場合に、毛髪へのダメージが少ないと判断できる。
【0119】
(4)染色力
得られた混合剤によって白色人毛毛束を染色した評価用毛束、及び染色処理を施していない未処理の白色人毛毛束を用いて評価を行った。分光測色計(ミノルタ社製、CM3610d型)を用いて、評価用毛束、及び未処理の白色人毛毛束のそれぞれの、L表色系のL値、a値、b値を測定し、評価用毛束と未処理の白色人毛毛束との色差ΔEabを算出した。
【0120】
なお、ΔEabが大きいほど、良好に染色されており、染色力が高いことを示す。ΔEabの値は39以上が好ましく、40以上である場合には染色力がかなり良好であった。
【0121】
(5)白髪馴染みの良さ
混合剤によって白色人毛毛束を染色した評価用毛束、及び混合剤によって黒色人毛毛束を染色した評価用毛束を用いて評価を行った。分光測色計(ミノルタ社製、CM3610d型)を用いて、白色人毛毛束を染色した評価用毛束、及び黒色人毛毛束を染色した評価用毛束のそれぞれの、L表色系のL値、a値、b値を測定し、白色人毛毛束を染色した評価用毛束と、黒色人毛毛束を染色した評価用毛束との色差ΔEabを算出した。
【0122】
なお、ΔEabが小さいほど、白色人毛毛束を染色した評価用毛束と、黒色人毛毛束を染色した評価用毛束の色の差が目立たず、白髪馴染みが良好なことを示す。ΔEabの値は、18以下が好ましく、17以下である場合に白髪馴染みがかなり良好であった。
【0123】
(6)第1剤の保存安定性
得られた第1剤40gをアルミチューブ(サイズ:直径25.4mm×125mm)に充填し、サイクル運転[5℃1時間保持、11時間で45℃まで昇温、45℃で1時間保持、11時間で5℃まで降温を繰り返す]の恒温槽内にて2週間放置した。放置後の第1剤の性状を観察し、第1剤の保存安定性を下記の基準で判定した。
【0124】
[第1剤の保存安定性の判定基準]
○:調製直後と変化なし、又は、わずかに粘度上昇が認められる
×:調製直後と比較して明らかな粘度上昇が認められる
【0125】
組成などの詳細及び評価結果を下記の表1〜7に示す。下記の表1〜4における各成分の含有量の配合単位は「質量%」である。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】
【表5】
【0131】
【表6】
【0132】
【表7】