(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359670
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】吸水性ポリマー及びその調製プロセス
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20180709BHJP
C08F 2/14 20060101ALI20180709BHJP
C08F 20/06 20060101ALI20180709BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20180709BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
C08J3/12 101
C08F2/14
C08F20/06
B01J20/26 D
B01J20/30
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-541088(P2016-541088)
(86)(22)【出願日】2014年12月22日
(65)【公表番号】特表2017-501278(P2017-501278A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】IN2014000790
(87)【国際公開番号】WO2016056019
(87)【国際公開日】20160414
【審査請求日】2017年12月11日
(31)【優先権主張番号】4001/MUM/2013
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】IN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513202971
【氏名又は名称】リライアンス インダストリーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RELIANCE INDUSTRIES LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】スブラマンヤム,エランゴ
(72)【発明者】
【氏名】チョウダリ,マンジート シン
(72)【発明者】
【氏名】ジャスラ,ラクシャ ヴィル
(72)【発明者】
【氏名】パレック,アシシュクマル インドラヴァダン
(72)【発明者】
【氏名】ガネシュプール,プラルハド アンバダス
(72)【発明者】
【氏名】ガリメラ,パドマヴァティ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォラ,ヤエシュ プラフッラ チャンドラ
【審査官】
藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−158209(JP,A)
【文献】
特開2009−091499(JP,A)
【文献】
特開2002−086624(JP,A)
【文献】
特開2006−274227(JP,A)
【文献】
特開昭48−17888(JP,A)
【文献】
特開2009−237342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28
99/00
C08F 2/00− 2/60
B01J 2/00− 2/30
20/00−20/28
20/30−20/34
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性ポリマーの調製プロセスであって、前記プロセスは次の手順より構成される:
i.逆拡散重合化による水を吸収するポリマー粒子から成るスラリーの調製であって、
ここに、前記のポリマー粒子の量がスラリー全量の40%〜55%を占める。
ii.加熱と攪拌によってスラリーを均質化し、均質スラリーを取得する。
iii.均質スラリーを噴霧乾燥機中で、乾燥媒質に窒素を用いて噴霧乾燥し、吸水性ポリマー粒子を取得する。
【請求項2】
請求項1に請求されるプロセスであって、ここに、スラリーを調製する方法手順は次の項目から構成される。
(a)規定濃度の水性単量体溶液を規定濃度のアルカリ溶液で部分中和し、部分中和された水性単量体溶液を得る。
(b)規定重量比の一つ以上の架橋剤と一つ以上の遊離基開始剤を部分的に中和された水性単量体溶液に添加し、結果としての溶液を得る。
(c)一つ以上の有機溶媒を一つ以上の拡散剤と規定温度で連続攪拌して混合し、非水性混合液を得る。
(d)前記の結果として得られた溶液を非水性混合液に滴下しつつ、温度範囲55〜110℃で60〜180分の間で変動する時間範囲内に連続攪拌し、スラリーを得る。
【請求項3】
請求項2に請求されるプロセスであって、ここに、単量体はアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリルアミドから成るグループから選択される一つ以上の単量体を含む。
【請求項4】
請求項2に請求されるプロセスであって、ここに、架橋剤はN,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールトリアクリレート、グリセロールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリグリコールジアクリレートから成るグループから選択される一つ以上の化合物を含む。
【請求項5】
請求項2に請求されるプロセスであって、ここに、遊離基開始剤は過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、アルカリ金属塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、アスコルビン酸塩、フェライト及びこれらの混合物から成るグループから選択される一つ以上の化合物である。
【請求項6】
請求項2に請求されるプロセスであって、ここに、前記有機溶媒はシクロヘキサン、N−ヘキサン、N−ヘプタン、トルエンから成るグループから選択される一つ以上の溶媒である。
【請求項7】
請求項1で請求されるプロセスであって、ここに、手順(ii)のスラリーの均質化は40〜50℃の範囲の温度で実行される。
【請求項8】
請求項1で請求されるプロセスであって、ここに、噴霧乾燥機の入口と出口の温度は、それぞれ70〜220℃と70〜140℃の範囲にある。
【請求項9】
請求項1で請求されるプロセスであって、ここに、均質なスラリーの噴霧乾燥を投入速度範囲0.5〜1.5kg/時、吸引器のスピード範囲1300〜2800rpm、水柱−70〜−170mmの範囲で変動する真空度の下で行うもの。
【請求項10】
請求項1で請求されるプロセスであって、ここに、取得される吸水性ポリマーは共重合体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸水性ポリマー及びその調製プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性ポリマー(ハイドロジェル又は超吸収性ポリマー(SAP))の特殊な親水性によってこれらの物質は多くの種類の液体を吸収させるのに役立つ最適な吸収剤である。吸水性ポリマーはそれ自体に含まれる水の重量の数百から数千倍の水を吸収し、保持することができる。優れる吸収と保持容量があるので、吸水性ポリマーは使い捨て衛生用品、例えば、おむつ、生理ナプキンやこの種の製品、蝋燭、香料の担体、冷却ジェルパック、通信ケーブル、園芸用保水材料さらに映画や舞台の人工雪等極めて広範囲に応用されている。
【0003】
吸水性ポリマーの調製プロセスはこの分野では周知である。商業規模において、吸水性ポリマーはバルク、溶液、拡散(油中の水式拡散又は逆拡散重合化)や乳化重合化プロセスによって製造されている。
【0004】
米国特許番号4,076,663はでんぷん挿入アクリル酸ポリマーを調製する溶液重合化プロセスを提案している。溶液重合化プロセスにおいて、単量体を水中で重合化し、高粘性のジェルを生成し、これを帯状、膜状に押出成形し、乾燥して水性溶媒を除去している。次に乾燥ポリマーを磨り潰して吸水性ポリマー粒子を取得する。次に媒体として水を使用して溶液重合化プロセスを実行すると、吸水性ポリマーは大量の水を吸収し、これを乾燥等の適切な方法を使用して取り除く。
【0005】
米国特許公開番号20100234233も溶液重合化プロセスを使用した吸水性ポリマー ハイドロジェルの調製を提案しており、ここにおいては一つ以上の親水性ポリマーから成る水性溶液を架橋剤としてポリカルボキシ酸を使用して架橋する。その結果得られるポリマージェルを水や極性有機溶媒で洗浄し、炉内で乾燥する。
【0006】
次に、日本特許公開番号S56-161408、S57-158209、S57-198714等を例とした、吸水性ポリマーを調製する逆拡散重合化プロセスも提案されている。日本特許公開番号S57-198714で請求されたプロセスにおいては、吸水性ポリマー ハイドロジェルを拡散剤と架橋剤を添加してα、β不飽和カルボキシ酸/又はその塩基性金属塩の油中水型の逆拡散重合化によって調製している。スラリーに含まれる水分を、ヘキサン等の有機溶媒の中で共沸蒸留によって除去する。乾燥してさらに残留水を除去している。
【0007】
米国特許番号4,446,261も、油中水拡散重合化プロセスを使用して高吸水性ポリマーを調製するプロセスを提案している。このプロセスでは、エチレンにより不飽和処理された単量体等の水溶性単量体の水性溶液に微量の架橋剤を添加して拡散させ、炭化水素又はハロゲン化炭化水素の拡散媒体中で懸濁させ、水溶性の遊離基反応開始剤を添加して吸水性ポリマーを生成するものである。
【0008】
吸水性ポリマーを調製する上記の既知のプロセスは通常の場合ポリマーの調製、スラリーからのポリマー分離、ポリマーの乾燥という方法手順を経て余分な水分を除去し、乾燥ポリマーを磨り潰して吸水性ポリマー粒子を得ている。吸水性ポリマーは通常の場合、ろ過、遠心分離等の伝統的方法を使用してスラリーから分離されている。スラリーから分離された吸水性ポリマーは通常の場合、ドラム乾燥機、ペダル乾燥機、トレイ乾燥機、真空乾燥機等の方法を用いて乾燥される。しかしながら、これらの伝統的方法はポリマーの黄ばみ、残留単量体、オリゴマー等による汚染を伴うといったデメリットがまつわりついている。さらに、吸水性ポリマーからの余剰な水分の除去プロセスはエネルギー集約的である。上記に記述されたプロセスにおいて認められるもう一つの大きなデメリットとして、吸水性ポリマージェルを挽き粉砕して均一なサイズの吸水性粒子を生産する点にある。しかし、所望のサイズの吸水性ポリマー粒子を生産するのに加え、吸水性ポリマーを挽いて粉砕すると極めて繊細なポリマー粒子が生成され、これは流体への吸収性が低いため望ましくない。
【0009】
米国特許番号6,600,011はポリマー ハイドロジェルの精製及び乾燥方法を提案しており、この場合、ポリマー ハイドロジェルを水洗媒体で洗浄してハイドロジェルを含むスラリーを得、さらに、水洗媒体によって未反応の単量体、オリゴマーその他汚染物質が大幅に削減された。ポリマー ハイドロジェルと水洗媒体から成る生成スラリーを噴霧乾燥している。生成スラリーは大量の水(80〜98 wt%)及び比較的少量の固形ポリマー ハイドロジェル(2-20wt%)から構成される。従って、上記の米国特許に提案されているプロセスは、固定ポリマー ハイドロジェルを僅かに含むスラリーの噴霧乾燥を利用しており、このプロセスはエネルギー集約的で時間と費用ともに効率性に劣る。
【0010】
従って、吸水性ポリマーを調製するプロセスを提供する必要性が認識され、ここに上記のプロセスが持つ不利な点は削減される。
【0011】
本発明で用いている「逆拡散重合化」という用語は、水溶性単量体を非水溶性相の中に滴下させて拡散し、水溶性架橋剤と遊離基開始剤を添加して滴下中に重合化する重合化プロセスを意味する。
【0012】
本発明で用いている「負荷下吸収率(AUL)」という用語は、本発明による吸水性ポリマー粒子が0.9 % NaCl溶液(生理的食塩水)を0.3 psiの圧力下で吸収する能力を指している。負荷下吸収率は、European Disposable and Non-Woven Association (欧州不織布協会、EDANA-442-1-99)により規定されている試験方法に従って測定される。
【0013】
本発明で用いている吸水性ポリマー粒子の「渦時間」とは、吸水性ポリマー粒子の食塩水への吸収率を意味する。
【0014】
本発明で用いている「ASTM D7481-09 方法」という用語は粉体の緩んだ状態及び固めた状態でのバルク密度決定に用いる標準的試験方法を指す。
【0015】
本発明の一部の目的について次に説明する。
【0016】
先行技術の持つ一つまたは複数の課題を改善するかまたは少なくとも有用な代替手段を提供することが本発明の目的である。
【0017】
吸水性ポリマー粒子を調製するためのプロセスを提供することが本発明のさらに一つの目的である。
【0018】
本発明のさらに一つの目的は、吸水性ポリマー粒子を調製するための極めて簡素なプロセスを提供することであって、このプロセスにおいては、従来の吸水性ポリマー調製プロセスで用いられてきた異なるプロセス手順(吸水性ポリマーの何回もの洗浄手順、乾燥や研磨)を迂回できる。
【0019】
本発明のさらに一つの目的は、吸水性ポリマー粒子の経済的で省エネ形調製プロセスを提供することであり、このプロセスにおいてはスラリーが高濃度である。即ち、比較的多量のポリマー粒子から組成されるスラリーを噴霧乾燥する。
【0020】
本発明のさらに一つの目的は、均一な粒子サイズの分布、高い吸収率、高純度の吸水性ポリマー粒子を提供する吸水性ポリマーの調製プロセスである。
【0021】
本発明のその他の目的と優位性は本発明の範囲をこれに限定することは意図されていない付随する図面を参照しつつ読むと以下の説明からさらに明らかとなる。
【0022】
本発明に従い吸水性ポリマーの調製プロセスを提供する。前記プロセスは以下の手順から構成される。
i. 逆拡散重合化による水を吸収するポリマー粒子から成るスラリーの調製であって、ここに、前記のポリマー粒子の量がスラリー全量の40%〜55%を占める。
ii. 加熱と攪拌によってスラリーを均質化し、均質スラリーを取得する、
iii. 均質スラリーを噴霧乾燥機中で噴霧乾燥し、吸水性ポリマー粒子を取得する。
【0023】
スラリー調製の方法手順は以下のステップから成る:
a. 規定濃度の水性単量体溶液を規定濃度のアルカリ溶液で部分中和し、部分中和された水性単量体溶液を得る。
b. 規定重量比の一つ以上の架橋剤と一つ以上の遊離基開始剤を部分的に中和された水性単量体溶液に添加し、得られる混合液を得る。
c. 一つ以上の有機溶媒を 一つ以上の拡散剤と規定温度で連続攪拌して混合し、非水性混合液を得る。
d. 前記の結果として得られた混合液を非水性混合液に滴下しつつ、温度範囲55〜110
oCで60〜180分の間で変動する時間範囲において連続攪拌し、スラリーを得る。
【0024】
単量体はアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリルアミドから成るグループから選択される一つ以上の単量体である。
【0025】
架橋剤はN,N’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジアクリレート, ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、グリコールトリアクリレート、グリコールトリメタクリレート、トリメチルプロパントリメタクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、トリグリコールジアクリレートから成るグループから選択される一つ以上の化合物であってよい。
【0026】
遊離基開始剤は過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウウム、塩基性金属塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、アスコルビン酸、フェライト又はこれらの混合物から成るグループから選択される一つ以上の化合物であってよい。
【0027】
有機溶媒は、シクロヘキサン、Nヘキサン、ヘプタン、ペンタン、トルエンから成るグループから選択される一つ以上の溶媒であってよい。
【0028】
典型的に、方法手順(ii)のスラリーを温度範囲40
oC〜50
oCで一定に攪拌しながら加熱する。
【0029】
典型的に、噴霧乾燥機の入口と出口の温度はそれぞれ110〜220
oC及び70〜120
oCとする。
【0030】
均質なスラリーの噴霧乾燥は、投入速度範囲0.5〜1.5 kg/時、吸引器のスピード範囲1300〜2800 rpm、真空範囲が水量-70〜-170 mmの下で行うことができる。
【0031】
均質なスラリーの噴霧乾燥は窒素を乾燥剤として使用して行うことができる。
【0032】
こうして得られる吸水性ポリマーは共重合体になることができる。
【0033】
こうして得られる吸水性ポリマーはグラフト共重合体であることができる。
【0034】
本発明に従い、ASTM D7481-09の方法で測定した前記の吸水性ポリマーの容積密度が0.69 g/cc以上であることを特長とする本発明のプロセスに従い調製される吸水性ポリマーを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
付帯図面の
図1は、本発明のプロセスに従い(A)噴霧乾燥した吸水性ポリマー粒子(例1)の偏光観察法による画像、及び(B)空気乾燥した吸水性ポリマー粒子(例2)を図解したものである。
【0036】
伝統的吸水性ポリマー調製方法に伴うデメリットを本発明が吸水性ポリマーの調製プロセスを提供することで克服する。このプロセスにおいて、比較的多量のポリマー粒子から成るスラリーを調製し、直接噴霧乾燥して、吸水性ポリマー粒子を取得する。ここに、吸水性ポリマー粒子は均一な粒子サイズが分布しており、未反応単量体、溶解性オリゴマーやこれらの類似物質等残留汚染物の量が極めて少ない。
【0037】
本発明による吸水性ポリマー調製プロセスは、スラリー総質量に湿る重量比が40%以上のポリマー粒子を含むスラリーの調製手順からなり、ここに、前記のポリマー粒子が吸水し、次にスラリーを噴霧乾燥して吸水性ポリマー粒子を得る。
【0038】
既述の通り、スラリー/懸濁液/乳状液/比較的固形分が少ないその他任意の塊状材料の噴霧乾燥は、コスト高となる。例えば、US 6,600,011に提案されるポリマー ハイドロジェルの乾燥プロセスは多くの費用が掛かる。従って、本発明の発明者らは、吸水性ポリマー粒子を調製する経済的な代替手段を提供した。ここに、スラリーは非水性相に懸濁された比較的多量のポリマー粒子を調製し次に噴霧乾燥プロセスによって乾燥する。比較的多量のポリマー粒子を含むスラリーは、逆拡散重合化プロセスによって取得され、生成されるポリマー粒子が初期に取得された水分を全て吸収し、逆拡散重合化反応を起こすことができるので、その中に吸収された水を含む。
【0039】
吸水性ポリマーを調製する逆拡散重合化プロセスは周知のプロセスであり、先行技術において既知の従来の方法を用いて実行することができる。しかし、本発明による逆拡散重合化によるスラリー調製の特に優先されるプロセスを次に説明する:
水溶性単量体を水性媒質に溶解する。水溶性単量体の例として、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリルアミドから成るグループから選択される一つ以上の単量体である。水溶性単量体と水性媒質は典型的に規定重量比で混合される。水性単量体溶液はアルカリ溶液によって部分的に中和される。本発明のプロセスに適したアルカリ溶液は水酸化ナトリウム溶液である。部分的に中和された水性単量体溶液に規定重量比の架橋剤と遊離基開始剤を添加する。本発明のプロセスで使用される架橋剤と遊離基開始剤は水溶性であり、関連する先行技術において従来周知の群から選択することができる。しかし、本発明の例示的な実施形態のうち一つに従い、水溶性架橋剤はN,N’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジアクリレート, ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、グリコールトリアクリレート、グリコールトリメタクリレート、トリメチルプロパントリメタクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、トリグリコールジアクリレートから成るグループから選択される一つ以上の化合物であってよい。
【0040】
本発明の例示的な実施形態のうち一つに従い、遊離基開始剤には過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウウム,塩基性金属塩、還元開始剤から成るグループから選択される一つ以上の開始剤を含む。本発明の目的に適す還元開始剤の例には亜硫酸塩、チオ硫酸塩、アスコルビン酸、フェライト及びこれらの混合物を含む。架橋剤と遊離基開始剤を窒素発泡処理によって添加する。窒素発泡処理は典型的に、澄んだ溶液が結果として得られるまで実行する。
【0041】
別個のプロセス手順においては、非水性相を調製する。このためには、規定重量比の有機溶媒を連続的に攪拌しつつ一つ以上の分散剤と混合する。重合化プロセスにおいて形成される吸水性ポリマー粒子を安定化するのに足りる量の分散剤だけ通常の場合添加される。本発明のプロセスで使用される分散剤は、先行技術において従来周知の化合物のうち任意の物から選択することができる。本発明の例示的な実施形態のうち一つに従い、分散剤は、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウレート、ステアリルフタル酸ナトリウム、蔗糖、脂肪酸エステル、脂肪族アミン変成粘土、エチルセルロース、シリカ、変成ポリラウリルメタクリレートから成るグループから選択される一つ以上の化合物を含む。
【0042】
次のプロセス手順では、生成された澄んだ溶液を非水性相内の滴として分散させる。分散の間、非水性相の温度を 典型的に30〜 80
oCに維持する。結果として得られた溶液を完全に分散した後、80〜110 oCへ加温し 60〜180分維持してスラリーを得る。分散滴に含まれる単量体はこれらの滴内部で重合化され、非水性相に分散した吸水性ポリマー粒子を提供する。吸水性ポリマーが結果として得られる溶液の分散滴の中で形成され始めると直ちに、ポリマーは分散滴の中にある水分を吸収し始め、重合化反応が終わると水を含んだポリマー粒子として生成される。ポリマー粒子内に吸収された水の量は滴内に含まれる水の量と等しい。従って、本発明のプロセスに従い調製されるスラリーは、非水性相に分散されたポリマー粒子から成り、ここに、ポリマー粒子は吸収された水を含む。スラリーに含まれるポリマー粒子の量は、スラリーの全質量に対して重量比40%〜70 %の範囲にある。
【0043】
本発明によるプロセスは吸水性ポリマー粒子の分離と乾燥の方法手順から成る。吸水性ポリマー粒子を分離と乾燥するため、本発明の発明者らは、噴霧乾燥プロセスを使用してメリットが得られた。
【0044】
固形分が多いポリマー粒子を含む スラリーの噴霧乾燥は高圧滴下及びその後のパイプラインとプロセス容器の閉塞が原因で通常困難になる。従って、本発明のプロセスに従い調製されるスラリーは高濃度スラリーであって、本発明の発明者らはこのため噴霧乾燥機を使用した。ここにプロセスパイプを適切に設計して圧力降下とそれ以降の詰まりを回避した。本発明のプロセスに従う噴霧乾燥機のプロセスパイプとは供給タンクと噴霧器を接続する供給管を指す。
【0045】
本発明のプロセスに従い調製されるスラリーを供給タンクに投入する。従って、本発明のスラリーは高濃度となり、一貫した濃度を維持しポンプ処理し易くするため、連続攪拌しつつ規定温度まで加熱する。このため、供給タンクに一つ以上の攪拌装置と一つ以上の加熱装置を装備する。本発明のプロセスで使用される攪拌装置は頭上搭載式攪拌装置又は磁気攪拌装置を使用することができる。供給タンクでは、スラリーは一定に攪拌しつつ典型的に温度範囲40
oC〜50
oCの間に加熱し、均質なスラリーを得る。次に均質なスラリーは供給タンクと噴霧乾燥機を相互接続している供給管を通して噴霧乾燥機に吐出される。
【0046】
高濃度スラリーの吐出を容易にするため、本発明の発明者らは、従来の噴霧乾燥プロセスで使用される供給管より短い供給管を使用したところメリットが得られた。本発明の例示的な実施形態のうち一つに従い、供給管の長さは50〜150cmの範囲の物を使用する。均質なスラリーを噴霧乾燥機へ容易に吐出させるために、供給管にぜん動ポンプを装備する。
【0047】
次に本発明による均質なスラリーを噴霧器を通して噴霧し、高温ガス流の中で乾燥して吸水性ポリマー粒子を取得する。均質なスラリーは典型的に、ノズル径範囲0.7〜1.5mmの噴霧装置を通して噴霧する。噴霧乾燥機入口と出口の温度は典型的にそれぞれ70〜220
oC、70〜140
oCの範囲に維持する。均質なスラリーの噴霧乾燥時のその他の稼働条件は以下の通りである: 投入速度:0.5〜1.5 kg/時、吸引器のスピード:1300〜2800 rpm、真空度:水量-70〜-170 mm、乾燥剤として窒素。
【0048】
米国特許6,600,011で提案されたプロセスとは異なり、本発明によるプロセスは、スラリーを直接噴霧乾燥し、噴霧乾燥前のスラリー洗浄という方法手順を経ない。米国特許6,600,011に提案されたポリマーと調製プロセスは本発明のプロセスとは明確に異なり、従って、本発明によるスラリーの方法手順は噴霧乾燥前には実施できないし不要でもある。
【0049】
さらに、本発明のプロセスに従い調製される吸水性ポリマー粒子は極めて大量の水を吸収し、例えば、本発明の吸水性ポリマー粒子1 gは水500〜1000 gを吸収することができる。
【0050】
本発明のプロセスに従い調製される吸水性ポリマー粒子は粒子サイズの分布、吸収度、容積密度、渦時間の特性につて定性分析される。本発明の吸水性ポリマー粒子の吸収度は以下の通りである:水378g/g、生理的食塩水73g/g、加圧生理的食塩水27 g/g。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の吸水性ポリマー粒子の水分も解析したところ、約10 %であることが判明した。水分解析は欧州不織布協会が規定する手順に従って行われた。本発明の吸水性ポリマー粒子サイズの分布を異なるメッシュサイズのストレーナーによって測定したところ、以下のようであった:19.31、29.31、22.79 (>500 μ)。56.78、55.89、71.57 (180-500 μ)。24.59、14.79、5.63 (< 180 μ)。ASTM D7481-09の方法で測定した本発明の吸水性ポリマー粒子の容積密度は、室温で0.69±0.01 g/ccであった。本発明の吸水性ポリマー粒子の渦時間は約35秒であった。
【0052】
本発明の実施例ならびに様々な特長および優位性の詳細を限定することのない実施例を参照することによって以下に説明する。確立している既存のコンポーネントならびに処理技術についての説明は省略し、本発明の実施例についての理解を不要に困難にしないようにした。本発明に使用されている例は単に本発明の実施例を実用化可能にする方法の理解を容易にし、この分野の技能を持つ者が本発明の実施例を実施することを可能にすることのみを目的としている。従って、例によって本発明の実施例の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【実施例1】
【0053】
この例は、本発明による吸水性ポリマーの調製プロセスを記述する。
手順1:相調製 (油相)
シクロヘキサン(400 ml)とモノステアリン酸ソルビタン(3.75 %)を頭上設置式攪拌装置、還流冷却器、熱センサーを搭載した反応容器に投入した。こうして得られる溶液混合液を所望温度 (〜55
oC)までゆっくりと攪拌しながら加熱し、窒素ガスを使用して15〜30分パージした。
手順2:分散相 (水性単量体溶液)の調製
水性アクリル酸 (〜47%)溶液を水酸化ナトリウム溶液(35% w/w)を滴下添加することによって磁気攪拌しつつ部分的(75%)に中和した。氷点に近い条件下で中和した。その後、0.15gmのN、N’-メチレンビスアクリルアミドを水溶性架橋剤として、過硫酸カリウム溶液(1.5 %w/w)を遊離基開始剤として添加し、澄んだ溶液が得られるまで、アクリル酸溶液を窒素発泡処理によって部分的に中和した。
手順3:重合化
方法手順2で調製された水性単量体溶液を方法手順1で調製された相に滴下添加した。分散は約55
oCでスピード180〜400 rpmで攪拌し続けつつ実施した。反応温度を80
oCへ上げ、単量体添加を完了してから60〜180分間この状態を維持した。こうして得られたスラリーを室温まで冷却した。こうして得られたスラリーには、吸水した固形ポリマー粒子が41 wt%含まれていた。
手順4:スラリーの噴霧乾燥:
以上のスラリーを噴霧乾燥して純粋な乾燥吸水性ポリマー粒子を取得した。噴霧乾燥を任意の噴霧乾燥機を使用して行った。手順(3)で調製されたスラリーを供給タンクへ移動し、攪拌し続けつつ40
oCまで加熱した。供給タンクからは、スラリーを径40 cmの供給管を通して噴霧乾燥機へ吐出し、スラリーの吐出操作を供給管の中に構成したぜん動ポンプを使用してさらに促進した。噴霧乾燥機の中で、スラリーをノズル径0.7〜1.5mmの噴霧装置に通して噴霧した。噴霧乾燥機の入口と出口の温度をそれぞれ、70〜220
oC、70〜140
oCに維持した。乾燥媒質として窒素ガスを使用した。噴霧乾燥中のその他のプロセス条件は以下の通りに維持した: 投入速度:55 rpm。吸引器のスピード:2000 rpm。真空度:水-170 mm。
【実施例2】
【0054】
この例は吸水性ポリマーの調製プロセスを記述する。ここに、吸水性ポリマーを従来式の乾燥方法によって乾燥した。
スラリーは例1に記述されたのと同じ方法で調製した。スラリーをデカンターで乾燥し、真空ポンプを使用してブクナー式ホッパーを通してろ過した。ろ過後に得られた吸水性ポリマーを100〜150
oCの気流中で2〜8時間乾燥した。乾燥ポリマージェルを実験室規模のハンマーミルで粉砕し、ストレーナーを通し粒子サイズ180〜850 μを得る。
【実施例3】
【0055】
手順(3)で調製されたスラリーを供給タンクへ移動し、攪拌し続けつつ40
oCまで加熱した。供給タンクからは、スラリーを径150 cmの供給管を通して噴霧乾燥機へ吐出し、スラリーの吐出操作を供給管の中に構成したぜん動ポンプを使用してさらに促進した。最初にスラリーを数分間噴霧乾燥したが、スラリーが詰まったたため供給管を通すことができなくなり、噴霧乾燥を中止した。原因は供給管が長かったからである。
【0056】
例1と2で得られた吸水性ポリマー粒子は偏光観察法(POM)を使用して定性分析した。付帯図面の
図1に示されるような偏光観察法の画像は、例2 (
図1Bを参照)に示される通り、吸水性ポリマー粒子が分散剤と共に結合し合い、直接乾燥法の場合と土曜に、分散剤はポリマー粒子の中に留まり、負荷下吸収率 (AUL)は75 %前後まで減少した。例1 (
図1Aを参照)に示されるように、本発明のプロセスにおいては、分散剤は噴霧乾燥中に除去され、吸水性ポリマー粒子は凝集しないままであった。本発明による未凝集形態の吸水性ポリマー粒子は、負荷下吸収率 (AUL)の増加を表しており、即ち約100%の負荷下吸収率(AUL)となった。
【0057】
試験方法:
1. 水 / 生理的食塩水内での吸収容量:
例1 (〜0.2 g)の吸水性ポリマー粒子の重量を精確に測り、蒸留水 / 生理的食塩水 (0.9% NaCl溶液)の多量の余剰(300 ml)に加え、30分室温でそのまま放置した。スラリーをガラス製の棒でときどき攪拌した。膨潤平衡に達した後(30 分後)、吸水性ポリマー粒子に吸収された水/生理的食塩水の量を重量分析によって同定した。次にスラリーをメッシュサイズ100μのワイヤーストレーナーでろ過した。水/生理的食塩水の吸収量(Q)を吸水性ポリマー粒子の重量を測り同定し、以下の方程式を用いて計算した:
Q (g / g) = (W
2 - W
1) / W
1
W
2 = 膨潤吸水性ポリマー粒子の重量
W
1 = 乾燥吸水性ポリマー粒子の重量
2. 負荷下の吸収率 (AUL):
AULテストは吸水性ポリマー粒子の膨潤容量を適度の圧力下で測定する。A 多孔性フィルタープレートをペトリ皿に入れ、液体のレベルがフィルタープレートの先端と並び生理的食塩水で濡らすことができるまで生理的食塩水を追加した。例1 (〜0.9 g)の吸水性ポリマー粒子を精確に計量してフィルタースクリーンテストデバイスとして使用する400 メッシュSS布がシリンダーの底に備わっているプレクシガラス製シリンダーに均一に分散した、プレクシガラス製シリンダーに自由に滑らせることができる間ピストンを乾燥した吸水性ポリマー粒子に置いた。所望の負荷をピストンに乗せ、圧力0.3 psiに到達させた。次にセット全体を計量し、フィルタープレートに乗せた。60分後、膨潤した吸水性ポリマー粒子を再び計量し、AULを次の方程式を使った解いた:
AUL (g / g) = (W
3 - W
2) / W
1
W
1 = 乾燥吸水性ポリマー粒子の重量;
W
2 = 乾燥吸水性ポリマー粒子の重量とピストンとシリンダーを合わせたの重量
W
3 = ピストンとシリンダーを含む膨潤した吸水性ポリマー粒子の重量。
3. 渦時間:
本発明の吸水性ポリマー粒子の渦時間は以下のようにして測る:
渦テストは、1グラムの吸水性ポリマー粒子が50 mlの生理的食塩水溶液を600 rpmで磁気攪拌装置上で攪拌することによって生成される渦を捉えるための所要時間秒数を測るもので、寸法7.9 mm x 0.32 mmのテフロンで覆われた磁気バーを使用するもので、渦が把捉すべき吸水性ポリマーが擁した時間は、吸水性ポリマーの自由膨潤吸収率を表す。
【0058】
本明細書を一貫して用語「成す」「構成する」やその類語としての「組成する」または「なしている」は記載されている要素、整数または手順または要素、整数または手順の群を含むがその他の要素、整数または手順またはその他の要素、整数または手順の群を除くことなくこれらを含むことを含意している。
【0059】
「少なくとも」または「少なくとも1つの」という表現の使用は、1つまたは複数の目的物質または結果を得るために、本発明の実施例において使用される場合があることに従い、1つまたは複数の要素または成分または数量の使用を示唆している。
【0060】
本発明の実施例ならびに多様な特長および優位性の詳細を限定することのない実施例を参照することによって次に説明する。確立している既存のコンポーネントならびに処理技術についての説明は省略し、本発明の実施例についての理解を不要に困難にしないようにした。本発明に使用されている例は単に本発明の実施例を実用化可能にする方法の理解を容易にし、この分野の技能を持つ者が本発明の実施例を実施することを可能にすることのみを目的としている。従って、例によって本発明の実施例の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【0061】
前記の具体的実施例は本発明の実施例が持つ一般的性質をじゅうぶんに明らかにしているので、現状の知識を適用することにより他者は前記の一般的概念から乖離することなく前記の具体的実施例を異なる用途のために変更および/または適合することができる。従って、同適合や変更は本発明の実施例と同等の物としての意味およびその範囲で理解されるることが意図されるべきであり、意図されている。本明細書に使用されている句節の用法や用語は説明目的のためであって限定するために使用されてはいない。従って、本明細書に記載された実施例は優先的実施例に基いて説明されていると同時に、同分野の技能を有する者は本明細書に記載された実施例が本明細書で説明された実施例の意図および範囲で変更しても実践可能であることが認められる。
【0062】
吸水性ポリマーを調製するためのプロセスに関わる本発明は、次の技術進歩を提供する:
・ 吸水性ポリマーの分離、洗浄、研磨といった手順を不要にする簡素かつ経済的プロセス。
・ エネルギー効率の高いプロセスであって、ここに、比較的多量の水を吸収したポリマーから成るスラリーを噴霧乾燥する。
・ 粒子サイズ分布が一様であり脱色や汚染のない吸水性ポリマー粒子を提供すること。
・ 高負荷下吸収率を持つ吸水性ポリマー粒子。
【0063】
異なる物理パラメータ、寸法や数量を表す数値は概数であって、物理パラメータ、寸法や数量に代入された数値より高い値は本発明と請求項の範囲に含まれることが意図されている。但し、明細書に逆の記載がなされている場合はこの限りではない。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態が説明されたが、これらの実施形態は例までとしてのみ記載されているのであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明のプロセスまたは合化合物または処方または組み合わせの変種または変更は本発明の範囲内である限り、本発明を検討するに当たり当分野に関する技能を有する者には可能でありうる。このゆな変種や変更は本発明の範囲に含まれる。付帯請求項その等価項目は本発明の範囲と本質の範囲に入る同形態または変更を含むことを意図している。