特許第6359685号(P6359685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359685
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】バラン回路
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/10 20060101AFI20180709BHJP
【FI】
   H01P5/10 C
   H01P5/10 D
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-561377(P2016-561377)
(86)(22)【出願日】2015年4月7日
(65)【公表番号】特表2017-517178(P2017-517178A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】US2015024712
(87)【国際公開番号】WO2015157282
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2017年1月12日
(31)【優先権主張番号】61/976,199
(32)【優先日】2014年4月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503019176
【氏名又は名称】シナジー マイクロウェーブ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Synergy Microwave Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】ポダー,アジャイ・クマール
(72)【発明者】
【氏名】カウル,シバン・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ローデ,ウルリッヒ・エル
【審査官】 岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−075101(JP,A)
【文献】 特開2007−013809(JP,A)
【文献】 米国特許第04882553(US,A)
【文献】 英国特許出願公開第02057196(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の第1の表面上に形成される同一平面をなす第1のブランチ及び第2のブランチを有する出力ストリップラインと、
前記基板の前記第1の表面上に形成される入力ストリップラインと、
前記基板の第2の表面上の接地面内に形成される1つ又は複数のスロットラインであって、該1つ又は複数のスロットラインは前記入力ストリップラインと、前記第1の出力ストリップラインブランチ及び前記第2の出力ストリップラインブランチとの間に伝送経路を形成する、1つ又は複数のスロットラインと、
前記接地面上に形成される三角形メタライゼーションであって、前記第1のブランチの少なくとも一部は前記メタライゼーションの第1のエッジと一致するように位置決めされ、前記第2のブランチの少なくとも一部は前記メタライゼーションの第2のエッジと一致するように位置決めされる、三角形メタライゼーションと
を備えてなる、バラン回路。
【請求項2】
前記出力ストリップラインの前記第1のブランチ及び前記第2のブランチは、200オームの特性インピーダンスと、1:4のインピーダンス変換比とを与えるように構成される、請求項1に記載のバラン回路。
【請求項3】
前記バラン回路は、11GHzより高い周波数、または5GHz〜30GHzの任意の周波数において動作するように構成される、請求項2に記載のバラン回路。
【請求項4】
前記出力ストリップラインの前記第1のブランチ及び前記第2のブランチは、それぞれ均一な幅からなり、
前記出力ストリップラインの前記第2のブランチは、前記第1のブランチと対称に配置され、
前記出力ストリップラインの前記第1のブランチ及び前記第2のブランチ、並びに前記入力ストリップラインはそれぞれ、開放端不連続部を有する終端点を含む、請求項1に記載のバラン回路。
【請求項5】
前記1つ又は複数のスロットラインは互いに平行に前記接地面内に形成される2つのスロットラインを含み、該2つのスロットラインのうちの第1のスロットラインは、前記入力ストリップラインと、前記出力ストリップラインの前記第1のブランチとの間の伝送経路を形成し、該2つのスロットラインのうちの第2のスロットラインは、前記入力ストリップラインと、前記出力ストリップラインの前記第2のブランチとの間の伝送経路を形成するものであり、
前記2つの平行なスロットライン間の距離は、50マイクロメートル〜100マイクロメートルであり、
前記第1のスロットライン及び前記第2のスロットラインのそれぞれの各端部は、開放端不連続部を有するラジアルスタブである終端点を含み、
前記出力ストリップラインの前記第1のブランチ、前記出力ストリップラインの前記第2のブランチ及び前記入力ストリップラインはそれぞれ、開放端不連続部を有する終端点を含み、
前記入力ストリップライン、前記第1のスロットライン及び前記第2のスロットライン、並びに前記出力ストリップラインの前記第1のブランチ及び前記第2のブランチの前記終端点にある前記開放端不連続部は、互いに寸法が異なる、請求項に記載のバラン回路。
【請求項6】
基板と、
前記基板の第1の表面上に形成される第1の出力ストリップラインと、
前記基板の前記第1の表面上に形成される第2の出力ストリップラインと、
前記基板の前記第1の表面上に形成される入力ストリップラインと、
前記第1の表面の反対側にある前記基板の第2の表面上に形成されるスロットラインであって、該スロットラインは第1の端部及び第2の端部を有し、各端部はスタブを含み、前記第1の端部は前記第1の出力ストリップラインと重なり、前記第2の端部は前記第2の出力ストリップラインと重なり、前記入力ストリップラインは前記第1の端部と前記第2の端部との間の途中で前記スロットラインと重なり、それにより、前記マイクロストリップ入力ライン及び前記マイクロストリップ出力ラインそれぞれとマイクロストリップ/スロットライン交差接合移行部を形成する、スロットラインと
を備えてなり、
前記入力ストリップライン、前記第1の出力ストリップライン及び前記第2の出力ストリップラインのうちの少なくとも1つは、前記基板の1つの側からそれぞれのマイクロストリップ/スロットライン交差接合移行部まで直線に沿って延在し、
前記第1の出力ストリップライン及び前記第2の出力ストリップラインは互いに実質的に回転対称であり、
前記第1の出力ストリップライン、前記第2の出力ストリップライン、前記入力ストリップライン、及び前記スロットラインの各端部はそれぞれラジアルスタブである終端点を含み、前記スロットラインは、前記第1の端部及び前記第1の出力ストリップラインそれぞれの前記ラジアルスタブである終端点のそれぞれの付け根において前記第1の出力ストリップラインと重なり、前記スロットラインは、前記第2の端部及び前記第2の出力ストリップラインそれぞれの前記ラジアルスタブである終端点のそれぞれの付け根において前記第2の出力ストリップラインと重なる、バラン回路。
【請求項7】
前記バラン回路は、11GHzより高い周波数、または5GHz〜45GHzの周波数範囲において動作するように構成される、請求項に記載のバラン回路。
【請求項8】
前記第1の出力ストリップライン及び前記第2の出力ストリップラインはそれぞれ直線であり、前記入力ストリップラインは約90度の角度に曲げられ、前記第1の出力ストリップライン及び前記第2の出力ストリップラインはそれぞれ、前記スロットラインから離れていく方向において徐々に広くなる不均一な幅からなり、前記入力ストリップラインは均一な幅からなるものであるか、
前記第1の出力ストリップライン及び前記第2の出力ストリップラインはそれぞれ約90度の角度に曲げられ、前記入力ストリップラインは直線であるものであるか、または、 前記第1の出力ストリップラインは前記スロットラインと前記基板の第1の端部との間に延在し、前記第2の出力ストリップラインは前記スロットラインと前記第1の端部と反対側の前記基板の第2の端部との間に延在し、前記入力ストリップラインは前記スロットラインと、前記第1の端部と前記第2の端部との間にある前記基板の第3の端部との間に延在するものである、請求項6に記載のバラン回路。
【請求項9】
請求項に記載の第1のバラン回路と、
同じく請求項に記載の第2のバラン回路と、
前記第1のバラン回路及び前記第2のバラン回路にそれぞれ結合され、前記第1のバラン回路及び前記第2のバラン回路それぞれの出力周波数を混合するように動作するスイッチと
を備えてなる、ダブルバランスドミキサ回路。
【請求項10】
前記ダブルバランスドミキサ回路は単一の基板上に形成され、前記第1のバラン回路及び前記第2のバラン回路は互いに回転対称である、請求項に記載のダブルバランスドミキサ回路。
【請求項11】
入力ストリップラインと、
同一平面をなす第1の出力ストリップライン及び第2の出力ストリップラインと、
前記入力ストリップライン並びに前記同一平面をなす第1の出力ストリップライン及び第2の出力ストリップラインを接続する1つ又は複数の同一平面をなすスロットラインと
を備えてなり、
前記第1の出力ストリップラインの第1のブランチと前記第2の出力ストリップラインの第2のブランチとの間の距離は、互いに、1:1より大きいインピーダンス変換比を与えるうに構成される、基板上に形成されるバラン回路。
【請求項12】
前記バラン回路は、200オームの特性インピーダンスと、1:4のインピーダンス変換比とを与えるように構成されるか、または150オームの特性インピーダンスを与えるように構成される、請求項11に記載のバラン回路。
【請求項13】
前記バラン回路は、11GHzより大きい周波数、または5GHz〜45GHzの任意の周波数において動作するように構成される、請求項11に記載のバラン回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、バラン回路に関し、平面マイクロ波伝送構造におけるそのような回路の帯域幅改善に関する。そのような改善は、例えば、マイクロストリップ−スロットライン移行媒体において実現することができる。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2014年4月7日に出願された米国仮特許出願第61/976,199号の出願日の利益を主張するものであり、この仮特許出願は、その開示内容を引用することにより、本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0003】
バラン回路は通常、平衡回路(例えば、アンテナ)を不平衡回路に接続するために使用することができる3ポート受動デバイスの形をとる。例えば、バラン回路は、1つの不平衡伝送線路と2つの平衡伝送線路との間の接続を与えることができる。そのような例では、バラン回路は、平衡伝送線路が、大きさは等しいが、180度の位相差を有する信号を出力するように設計することができる。
【0004】
マイクロ波信号を伝送するための1つのタイプのバラン回路は、マイクロストリップ/スロットライン移行部を使用する。この移行部は一般に、スロットラインを介して互いに結合される単一入力ストリップライン及び単一出力ストリップラインを含む。従来のマイクロストリップ/スロットライン移行バラン回路は、帯域幅及び周波数に関する制約を受ける。したがって、超広帯域マイクロストリップ/スロットライン移行バラン回路が必要とされている。そのような回路は、11GHzより大きい周波数、45GHzより大きい周波数、又は110GHzを超える周波数、更には200GHzの周波数において動作することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本発明の1つの態様は、基板と、基板の第1の表面上に形成される同一平面をなす第1のブランチ及び第2のブランチを有する出力ストリップラインと、基板の第1の表面上に形成される入力ストリップラインと、基板の第2の表面上の接地面内に形成される1つ又は複数のスロットラインとを備えるバラン回路を提供する。1つ又は複数のスロットラインは、入力ストリップラインと、第1の出力ストリップラインブランチ及び第2の出力ストリップラインブランチとの間に伝送経路を形成することができる。バラン回路は、接地面上に形成される三角形メタライゼーションを更に備えることができ、第1のブランチの少なくとも一部はメタライゼーションの第1のエッジと一致するように位置決めされ、第2のブランチの少なくとも一部はメタライゼーションの第2のエッジと一致するように位置決めされる。
【0006】
幾つかの例では、出力ストリップラインの第1のブランチ及び第2のブランチはそれぞれ均一な幅からなることができる。出力ストリップラインの第2のブランチは、第1のブランチと対称に配置することができる。また、出力ストリップラインの第1のブランチ及び第2のブランチ、並びに入力ストリップラインはそれぞれ、開放端不連続部を有する終端点を含むこともできる。
【0007】
幾つかの例では、バラン回路は、互いに平行な2つのスロットラインを含むことができ、第1のスロットラインは、入力ストリップラインと、出力ストリップラインの第1のブランチとの間の伝送経路を形成し、第2のスロットラインは、入力ストリップラインと、出力ストリップラインの第2のブランチとの間の経路を形成する。2つの平行なスロットライン間の距離は、約50マイクロメートル〜約100マイクロメートルとすることができる。スロットラインそれぞれの各端部は、開放端不連続部(例えば、ラジアルスタブ)を有する終端点を含むことができる。出力ストリップラインの第1のブランチ、出力ストリップラインの第2のブランチ及び入力ストリップラインはそれぞれ、開放端不連続部を有するそのような終端点を含むことができる。さらに、入力ストリップライン、第1のスロットライン及び第2のスロットライン、並びに出力ストリップラインの第1のブランチ及び第2のブランチの終端点は、互いに異なる寸法からなることができる。
【0008】
本発明の別の態様は、基板と、基板の第1の表面上に形成される第1の出力ストリップラインと、基板の第1の表面上に形成される第2の出力ストリップラインと、基板の第1の表面上に形成される入力ストリップラインと、第1の表面の反対側にある基板の第2の表面上に形成されるスロットラインとを備えるバラン回路に関する。スロットラインは、第1の出力ストリップラインと重なる第1の端部と、第2の出力ストリップラインと重なる第2の端部とを有し、入力ストリップラインは、第1の端部と第2の端部との間の途中においてスロットラインと重なることができる。この点において、スロットラインは、マイクロストリップ入力ライン及びマイクロストリップ出力ラインのそれぞれとマイクロストリップ/スロットライン交差接合移行部を形成することができる。入力ストリップライン、第1の出力ストリップライン及び第2の出力ストリップラインのうちの少なくとも1つは、基板の1つの側から、それぞれのマイクロストリップ/スロットライン交差接合移行部まで直線に沿って延在することができる。さらに、第1の出力ストリップライン及び第2の出力ストリップラインは、互いに実質的に回転対称とすることができる。
【0009】
スロットラインは、第1の端部及び第1の出力ストリップラインのそれぞれの終端点のそれぞれの付け根において第1の出力ストリップラインと重なるように構成することができる。また、スロットラインは、第2の端部及び第2の出力ストリップラインのそれぞれの終端点のそれぞれの付け根において第2の出力ストリップラインと重なるように構成することもできる。第1の出力ストリップライン及び第2の出力ストリップラインはそれぞれ、スロットラインから離れる方向において徐々に広がる不均一な幅からなることができ、入力ストリップラインは均一な幅からなることができる。
【0010】
第1の出力ストリップライン及び第2の出力ストリップラインはそれぞれ約90度の角度に曲げることができ、入力ストリップラインは直線とすることができる。代替的には、第1の出力ストリップライン及び第2の出力ストリップラインはそれぞれ直線とすることができ、入力ストリップラインは約90度の角度に曲げることができる。
【0011】
幾つかの例では、第1の出力ストリップラインは、スロットラインと基板の第1の端部との間に延在することができ、第2の出力ストリップラインは、スロットラインと、第1の端部の反対側にある基板の第2の端部との間に延在することができ、入力ストリップラインは、スロットラインと、第1の端部と第2の端部との間にある基板の第3の端部との間に延在することができる。
【0012】
また、幾つかの例では、第1の出力ストリップライン及び第2の出力ストリップラインは、約70オームの特性インピーダンスと、約140オームの差動インピーダンスとを与えるように構成することができる。
【0013】
本発明の更なる態様は、上記のバラン回路のうちの2つと、バラン回路のそれぞれに結合され、第1のバラン回路及び第2のバラン回路のそれぞれの出力周波数を混合するように動作するスイッチ(例えば、クロスオーバクワッドダイオードリングを有する)とを備えるダブルバランスドミキサ回路に関する。ミキサ回路は、単一の基板上に形成することができ、バラン回路のそれぞれの入力ラインはいずれも直線とすることができ、基板の第1の端部と、反対側にある第2の端部との間に延在する。幾つかの例では、バラン回路は、互いに回転対称とすることができる。
【0014】
本発明の更に別の態様は、入力ストリップラインと、同一平面をなす第1の出力ストリップライン及び第2の出力ストリップラインと、入力ストリップライン並びに同一平面をなす第1の出力ストリップライン及び第2の出力ストリップラインを接続する1つ又は複数の同一平面をなすスロットライン(すなわち、スロットラインは互いに同一平面をなす)とを有する、基板上に形成されるバラン回路を提供する。第1の出力ストリップライン及び第2の出力ストリップラインは、1:1より高いインピーダンス変換比(例えば、約200オームの特性インピーダンス及び約1:4のインピーダンス変換比)を与えるように構成することができる。それに加えて、又はその代わりに、バラン回路は、約150オームの特性インピーダンスを与えるように構成することができる。幾つかの例では、バラン回路は、11GHzより高い周波数において、及び/又は約5GHz〜約30GHz、約5GHz〜約45GHz、約5GHz〜約110GHz、若しくは約5GHz〜約200GHzの任意の周波数において動作するように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本発明の一態様による、バラン回路の平面図である。
図1B図1Aのバラン回路に対応する等価回路図である。
図2A図1Aのバラン回路の損失特性を表すグラフである。
図2B図1Aのバラン回路の位相インバランス特性を表すグラフである。
図3A】本発明の一態様による、別のバラン回路の平面図である。
図3B図3Aのバラン回路に対応する等価回路図である。
図4A図3Aのバラン回路の損失特性を表すグラフである。
図4B図3Aのバラン回路の位相インバランス特性を表すグラフである。
図5】本発明の一態様による、更に別のバラン回路の平面図である。
図6A図5のバラン回路の損失特性を表すグラフである。
図6B図5のバラン回路の位相インバランス特性を表すグラフである。
図7A】本発明の一態様による、ダブルバランスドミキサ回路の平面図である。
図7B図7Aのダブルバランスドミキサ回路の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1Aは、本発明による、第1の例示的なバラン回路100を示す。バラン回路100は基板101上に形成される。図1の例では、基板は誘電体材料(例えば、ロジャース基板、積層板、低温同時焼成セラミック、サファイア等)から形成される。また、図1の例では、基板は概ね正方形である。しかしながら、他の例では、基板は異なる形状にすることができる(例えば、長方形、円形等)。
【0017】
バラン回路100は、入力ストリップライン110と、2つの同一平面をなす出力ストリップライン120及び130(例えば、ストリップライン)と、一対のスロットライン140及び150とを含む。ストリップラインはそれぞれ基板101の第1の表面上に形成され、スロットライン140及び150(図1Aにおいて破線で示される)はそれぞれ基板101の第2の表面上の接地面内に形成される。第1のスロットライン140は、誘電体基板を通して、入力ストリップライン110を出力ストリップラインのうちの第1の出力ストリップライン120に接続し、第2のスロットライン150は、誘電体基板を通して、入力ストリップライン110を出力ストリップラインのうちの第2の出力ストリップライン130に接続する。
【0018】
入力ストリップライン110は、均一な幅からなり、第1の端部(又は終端点)112と、第2の端部114と、屈曲部115とを含む。第1の端部112は開いており、バラン回路100のための入力ポートとしての役割を果たす。第2の端部114は閉じているが、第2の端部において開回路を擬似的に作る(simulate)開放端不連続部(例えば、ラジアルスタブ)を備える。屈曲部115は、第1の端部及び第2の端部を約90度の角度において接続し、それにより、入力ストリップライン110が、接続スロットラインのそれぞれと重なることができるようにする。
【0019】
同一平面をなす出力ストリップラインの第1のブランチ120は、均一な幅からなることが好ましく、第1の端部122及び第2の端部124を含む。入力ライン110の第1の端部112と同様に、同一平面をなす出力ストリップラインの第1のブランチ120の第1の端部は開放されており、それにより、バラン回路のための第1の出力ポートとしての役割を果たす。図1Aの例では、バラン回路100の入力ポート112は基板101の第1の端部に位置し、出力ポート122は、基板101の反対側の第2の端部に位置する。さらに、入力ライン110の第2の端部114と同様に、同一平面をなす出力ストリップラインの第1のブランチ120の第2の端部は閉じているが、開放端不連続部(例えば、ラジアルスタブ)を備える。
【0020】
同一平面をなす出力ストリップラインの第2のブランチ130は、第1のブランチ120と実質的に平行であり、かつ対称である(例えば、基板101の入力ポート側から出力ポート側まで延在する主軸Aに沿って鏡面対称をなす)。したがって、第2のブランチ130の第1の端部132及び第2の端部134は、第1のブランチ120の端部に相当する。第1のブランチと第2のブランチとの間の距離は、50オームより大きい場合がある所望のインピーダンスをもたらすように選択される。この点において、入力インピーダンスが50オームである入力ストリップラインを有するバラン回路の場合、バラン回路のインピーダンス比は、1:1より大きい場合がある(例えば、1:2又は1:4)。図1Aの例では、選択される距離は約0.4ミリメートルであり、結果として、200オームの出力インピーダンスが生成され、バラン回路のインピーダンス比は50:200、すなわち、1:4になる。他の例では、選択される距離は更に長くすることができ、結果として、バラン回路の種々の特性に応じて、異なる出力インピーダンスを生成することができる。
【0021】
第1のスロットライン140は、第1の端部144及び第2の端部146を含む。第1の端部144は、入力ライン110の第2の端部114と重なるように位置決めされ、それにより、入力ライン110と第1のスロットライン140との間に交差接合移行部、すなわち、伝送経路を形成する。第2の端部146は、第1のブランチ120の第2の端部124と重なるように位置決めされ、それにより、第1のスロットライン140と第1のブランチ120との間に交差接合移行部を形成する。第1のスロットライン140の第1の端部及び第2の端部はそれぞれ閉じられているが、開放端不連続部(例えば、ラジアルスタブ)を備える。交差接合移行部は、開放端不連続部それぞれの重なり合う付け根において形成される。
【0022】
第2のスロットライン150は、第1のスロットライン140と同一平面をなし、平行であり、かつ対称である(例えば、主軸Aに沿って鏡面対称をなす)。したがって、第2のスロットライン150の第1の端部154及び第2の端部156は、第1のスロットライン140の端部に相当する。図1Aの例では、スロットライン間の金属の幅は約50マイクロメートル〜100マイクロメートルであるが、他の例では、その距離はより狭い場合があるか、又はより広い場合がある。
【0023】
スロットラインの第1の端部144及び154は、入力ラインの第2の端部114のラジアルスタブの付け根が2つのスロットライン140と150との間の途中の点において交差し、スロットラインの第1の端部144及び154のラジアルスタブの付け根と同じラインにおいて垂直に(例えば、軸Aに対して垂直に)位置合わせされ、それにより、入力ライン110と、スロットライン140及び150それぞれとの間に交差接合移行部を形成するように、入力ライン110の第2の端部114と重なるように位置決めされる。
【0024】
図1Aの例では、基板101は、出力ポートを有する基板の側にエッチングされた溝160も含む。二等辺三角形の金属化された部分162が基板の接地面上にエッチングされ、溝160の中に延在する。第1のブランチ120及び第2のブランチ130はそれぞれ、基板101の表面上で三角形テーパ160のそれぞれのエッジに沿うように、又は一致するように曲げられる。テーパ160、及び出力ラインをテーパのエッジに一致するように位置決めする目的は、出力ラインのインピーダンス整合を容易にし、それにより、スロットライン/マイクロストリップ交差接合移行部における(例えば、同一平面をなす出力ストリップライン120、130の第2の端部124、134の付け根における)任意の急峻な不連続部を回避することである。
【0025】
図1Aの例では、開放端不連続部はそれぞれラジアルスタブである。他の例では、マイクロストリップ端部及びスロットライン端部は、異なる開放端不連続部(例えば、フレア開放端、円形開放端、フレア開放端及び円形開放端の組合せ等)を含むことができる。また、図1Aの例では、入力ストリップラインのラジアルスタブ114、並びに第1のスロットラインの第1の端部のラジアルスタブ144及び第2のスロットラインの第1の端部のラジアルスタブ154は全て同じ寸法を有する。同様に、同一平面をなす出力ストリップラインの第1のブランチのラジアルスタブ124及び第2のブランチのラジアルスタブ134、並びに第1のスロットラインの第2の端部のラジアルスタブ146及び第2のスロットラインの第2の端部のラジアルスタブ156は全て同じ寸法を有する。しかしながら、スタブ114、144及び154の寸法は、スタブ124、134、146及び156の寸法とは異なる。
【0026】
図1Aのバラン回路100の動作は以下の通りである。入力信号が入力ストリップライン110を通って伝搬し、交差接合移行部を通って第1のスロットライン140及び第2のスロットライン150のそれぞれに伝送される。スロットラインそれぞれにおいて伝送される信号は互いに合わせられるが、バラン回路設計における非対称性に起因して、わずかに異なる振幅を有する。スロットライン内の信号は、その後、第1の出力ストリップライン120及び第2の出力ストリップライン130のそれぞれに反対方向に電界を生成する(excite)。例えば、入力信号が1つの方向に(例えば、図の紙面の中への)電界を有するとき、第1のブランチ120の出力信号は同じ方向に電界を有するのに対して、第2のブランチ130の出力信号は、反対方向に(例えば、図の紙面から外への)電界を有する。この点において、出力ポート122及び132のそれぞれにおける出力は、互いにおよそ同じ振幅及び周波数を有するが、約180度だけ位相差がある伝送を搬送する。これは、出力ラインを対応するスロットラインに対して反対方向に位置合わせすることによって成し遂げられる。
【0027】
図1Bは、図1Aのバラン回路100の等価回路図である。図1Bに示されるように、領域111は、図1Aの入力ストリップライン110の等価回路であり、領域121は、第1の同一平面をなす出力ストリップライン120の等価回路であり、領域131は、第2の同一平面をなす出力ストリップライン130の等価回路であり、領域141は、第1のスロットライン140の等価回路であり、領域151は、第2のスロットライン150の等価回路である。それらの領域は図1Bにおいて破線によって分離される。マイクロストリップ及びスロットラインの開放端不連続部はそれぞれインピーダンス及び電気長を有する(入力ストリップラインのラジアルスタブ114’の場合にZim及びθim、各スロットラインの第1の端部のラジアルスタブ144’及び154’の場合にZos及びθs、各スロットラインの第2の端部のラジアルスタブ146’及び156’の場合にZos及びθs1、各マイクロストリップ出力のラジアルスタブ124’及び134’の場合にZom及びθоm)。Zl及びθLは、各スロットライン140及び150それぞれの特性インピーダンス及び電気長を表す。
【0028】
図2A及び図2Bは、或る範囲の周波数にわたる図1Aのバラン回路の挿入損失及び位相インバランス特性を示す。図2Aに示されるように、バラン回路の振幅バランスは約35GHzまでの周波数の場合に約5dB以下である。また、図2Bに示されるように、バラン回路の位相バランスは約35GHzまでの周波数の場合に約±5.5度であり、約40GHzまでの周波数の場合に約±8.5度である。それゆえ、図1Aの例示的なバランは、約5GHz〜約35GHzの任意の周波数(11GHzより高い動作周波数及び約30GHzより高い動作周波数を含む)において動作することができる。図2A及び図2Bの特性は、約0.2ミリメートルの厚さ、3.55の比誘電率及び0.0021の損失目標値を有するロジャースRO4003C基板上に形成されたバラン回路に基づくが、他の例では、バラン回路は、異なる厚さを有することができ、異なる誘電率及び/又は損失目標値を有することができる。
【0029】
図1の例示的なバラン回路は、2つの同一平面をなし、平行なスロットライン140及び150を含む。しかしながら、他の例示的なバラン回路は、入力ストリップラインを第1及び第2の同一平面をなす出力ストリップラインの両方に接続する単一のスロットラインを含むこともできる。そのスロットラインの出力端における開放端不連続部は円形開口部とすることができ、第1及び第2の同一平面をなす出力ストリップラインの一部が円形開口部のそれぞれの側の上を覆う。
【0030】
図3Aは、本発明による、第2の例示的なバラン回路200を示す。バラン回路200は、図1Aの例の基板に相当する、接地面を伴う誘電体基板201上に形成される。
【0031】
図3Aのバラン回路200は、第1の端部212(入力ポート)と、第2の端部214(ラジアルスタブ)と、屈曲部215とを有する入力ストリップライン210を含む。図3Aの例では、屈曲部は約90度であり、曲線をなすが、他の例では、異なる角度及び異なる形状(例えば、直角、曲線、単一の留め継ぎ等)の屈曲部を有することができる。第2の端部のラジアルスタブの付け根はスロットライン240の中点と重なる。また、バラン回路は、第1の出力ストリップライン220及び第2の出力ストリップライン230も含む。出力ラインはそれぞれ、第1の端部222及び232(出力ポート)と、第2の端部224及び234(ラジアルスタブ)とを含み、直線である(曲げられた入力ストリップライン210とは対照的である)。第2の端部それぞれのラジアルスタブの付け根は、スロットライン240のそれぞれの端部におけるラジアルスタブ244及び246の付け根を覆う。
【0032】
図3Aの例では、入力ポート212並びに2つの出力ポート222及び232はそれぞれ、基板201の異なる側に形成される。具体的には、第1の出力ポート222(第1の出力ストリップライン220に関連付けられる)は基板の第1の側に位置決めされ、第2の出力ポート232(第2の出力ストリップライン230に関連付けられる)は、基板の反対側の第2の側に位置決めされ、入力ポート212は、第1の側と第2の側との間にある基板の第3の側に位置決めされる。
【0033】
入力ストリップライン210及びスロットライン240は通常、均一な幅からなるのに対して、出力ストリップライン220、230は通常、不均一な幅からなる。具体的には、出力ストリップライン220、230はテーパを付けられ、第2の端部において第1の幅を有し、第1の端部における第2の幅まで徐々に広くなる(すなわち、スロットライン240から離れていく方向に広くなる)。ストリップライン内のテーパは、インピーダンス整合(例えば、ラジアルスタブの付け根における約70オームから出力ポートにおける約50オームへのインピーダンス整合)を容易にする。図3Aの例では、テーパはそれぞれ実質的に線形であるが、他の例では、テーパは異なる寸法からなることができる。
【0034】
図3Aの例では、入力ストリップラインのラジアルスタブ214並びに出力ストリップラインのラジアルスタブ224及び234は同じ寸法を有する場合も、同じ寸法を有しない場合もあり、スロットラインの第1の端部のラジアルスタブ244及び第2の端部のラジアルスタブ246は同じ寸法を有する。しかしながら、スタブ214、224及び234の寸法は、スタブ244及び246の寸法とは異なる場合がある。
【0035】
以下に図4A及び図4Bとの関連で論じられる所望の挿入損失及び位相インバランス特性を達成するために、バラン回路200の幾つかの態様が対称に形成される。それらの態様は、限定はしないが、バラン回路200が入力ストリップライン210から第1及び第2の出力ストリップライン220及び230に信号を伝送するために単一のスロットライン240を利用することと、入力ストリップラインとスロットラインとの間の接合移行部がスロットラインの中点に位置決めされることと、スロットラインが均一な幅からなることと、スロットラインと各出力ストリップラインとの間の接合移行部が入力ストリップラインとの接合移行部から等距離に位置決めされることと、出力ストリップラインがそれぞれ互いに回転対称であることとを含む。
【0036】
図3Aのバラン回路200の動作は、図1Aのバラン回路100の動作に類似しているが、バラン回路100とは異なり、入力信号が、2つの平行なスロットラインに沿って伝搬するのではなく、単一のスロットラインに沿って伝搬する。出力ラインをスロットラインに対して反対方向に位置合わせすることによって、各接合部において伝送される信号の位相差が約180度になり、それにより、回路200の平衡出力をもたらす。
【0037】
図3Bは、図3Aのバラン回路200の等価回路図である。図3Bに示されるように、領域211は図3Aの入力ストリップライン210の等価回路であり、領域221は第1の出力ストリップライン220の等価回路であり、領域231は第2の出力ストリップライン230の等価回路であり、領域241はスロットライン240の等価回路である。マイクロストリップ及びスロットラインの開放端不連続部はそれぞれインピーダンス及び電気長を有する(入力ストリップラインのラジアルスタブ214’の場合にZim及びθim、スロットラインのラジアルスタブ244’及び246’の場合にZos及びθs、各出力ストリップラインのラジアルスタブ224’及び234’の場合にZom及びθоm)。入力ストリップラインから一方の出力ストリップラインに伝送される信号はスロットラインの半分のみにわたって伝搬するので、Zl、θL/2は、スロットライン240の半分の特性インピーダンス及び電気長を表す。
【0038】
図4A及び図4Bは、或る範囲の周波数にわたる図3Aのバラン回路の挿入損失及び位相インバランス特性を示す。図4Aに示されるように、バラン回路の振幅バランスは、約47GHzまでの周波数の場合に約1dB以下である。また、図4Bに示されるように、バラン回路の位相バランスは、約47GHzまでの周波数の場合に約±5.0度である。それゆえ、図3Aの例示的なバランは、約3GHz〜47GHzの任意の周波数(11GHzより高い動作周波数及び約45GHzより高い動作周波数を含む)において動作することができる。図4A及び図4Bの特性は、約0.2ミリメートルの厚さ、3.55の比誘電率及び0.0021の損失目標値を有するロジャースRO4003C基板上に形成されたバラン回路に基づくが、他の例では、バラン回路は、異なる厚さを有することができ、異なる誘電率及び/又は誘電正接を有することができる。
【0039】
図5は、本発明による第3の例示的なバラン回路300を示す。バラン回路300は、図1A及び図3Aの例の基板に相当する、接地面を有する誘電体基板301上に形成される。
【0040】
図5のバラン回路300は、第1の端部312(入力ポート)及び第2の端部314(ラジアルスタブ)を有する入力ストリップライン310を含む。第2の端部のラジアルスタブの付け根はスロットライン340の中点と重なる。また、バラン回路は、第1及び第2の出力ストリップライン320及び330を含む。出力ラインはそれぞれ、第1の端部322及び332(出力ポート)と、第2の端部324及び334(ラジアルスタブ)と、屈曲部325及び335とを含む(直線である入力ストリップライン310とは対照的である)。図5の例では、屈曲部は約90度であり、曲線をなすが、他の例では、異なる角度及び/又は異なるタイプ(例えば、直角、曲線、単一の留め継ぎ等)の屈曲部を有することができる。各第2の端部334、324のラジアルスタブの付け根は、スロットライン340のそれぞれの端部344及び346におけるラジアルスタブの付け根を覆う。
【0041】
図3Aの例と同様に、入力ポート312並びに2つの出力ポート322及び332はそれぞれ、基板301の異なる側に形成される。具体的には、第1の出力ポート322(第1の出力ストリップライン320に関連付けられる)は基板の第1の側に位置決めされ、第2の出力ポート332(第2の出力ストリップライン330に関連付けられる)は基板の反対側の第2の側に位置決めされ、入力ポート312は、第1の側と第2の側との間にある基板の第3の側に位置決めされる。
【0042】
図5の例では、入力ストリップライン310及び出力ストリップライン320、330、並びにスロットライン340はそれぞれ均一な幅からなる(各出力ストリップラインがテーパを付けられる図3Aの例とは対照的である)。出力ライン320、330は同じ長さ及び幅からなるが、スロットラインと比べて異なる幅を有することができ、入力ストリップライン310の幅とは異なる幅を有することができる。ストリップライン内にテーパが存在しないことは、入力において50オームを有し、出力のそれぞれにおいて70オームを有し、それにより、2つの出力間に140オーム差動インピーダンスを生成することによって、バランの挿入損失/反射損失を改善する。140オーム差動インピーダンスは、類似のインピーダンスを有する構成要素とのインピーダンス整合の場合に(例えば、広い周波数範囲にわたって約150オームのインピーダンスを有するミキサ、ダイオードにおいて)特に有益である。140オーム差動インピーダンスは、バラン回路の反射損失の改善にも有益である。
【0043】
図5の例では、入力ストリップラインのラジアルスタブ314並びに出力ストリップラインのラジアルスタブ324及び334は全て同じ寸法を有する。同様に、スロットライン340の第1の端部のラジアルスタブ344及び第2の端部におけるラジアルスタブ346も同じ寸法を有する。しかしながら、スタブ314、324及び334の寸法は、スタブ344及び346の寸法とは異なる。
【0044】
図3Aの例示的なバラン回路と同様に、この例示的なバラン回路300の幾つかの態様も、(以下に図6A及び図6Bとの関連で論じられる)所望の挿入損失及び位相インバランス特性を達成するために対称に形成される。それらの態様は、限定はしないが、バラン回路300が入力ストリップライン310から第1及び第2の出力ストリップライン320及び330に信号を伝送するために単一のスロットライン340を利用することと、入力ストリップラインとスロットラインとの間の接合移行部がスロットラインの中点に位置決めされることと、スロットラインが均一な幅からなることと、スロットラインと各出力ストリップラインとの間の接合移行部が入力ストリップラインとの接合移行部から等距離に位置決めされることと、出力ストリップラインがそれぞれ互いに回転対称であることとを含む。
【0045】
図5のバラン回路300の動作は、図3Aのバラン回路200の動作に類似している。出力ラインをスロットラインに対して反対方向に位置合わせすることによって、各接合部において伝送される信号の位相差が約180度になり、それにより、平衡出力をもたらす。
【0046】
図6A及び図6Bは、或る範囲の周波数にわたる図5のバラン回路の挿入損失及び位相インバランス特性を示す。図6Aに示されるように、バラン回路の振幅バランスは約110GHzまでの周波数の場合に約±1dB以下である。また、図6Bに示されるように、バラン回路の位相バランスは約110GHzまでの周波数の場合に約±5.0度である。それゆえ、図5の例示的なバランは、約5GHz〜約110GHzの周波数(11GHzより高い動作周波数及び約45GHzより高い動作周波数を含む)において使用することができる。図6A及び図6Bの特性は、低温同時焼成セラミック基板上に形成されたバラン回路に基づくが、他の例では、バラン回路は異なる特性を有することができる。図6A及び図6Bは約110GHzまでの周波数の場合の振幅バランスを例示するが、上記の例示的なバラン回路は、更には約200GHzを含む約200GHz以下の任意の周波数において動作するように構成することができる。
【0047】
図7は、本発明の別の態様による、上記のバラン回路の例示的な適用例を示す。具体的には、例示的な適用例は、図5のバラン設計を使用するダブルバランスドミキサ回路400である。ミキサ回路は、単一の基板401上に形成され、第1のバラン回路410及び第2のバラン回路420を含む。第1のバラン回路410は、基板401の第1の側から延在する第1の入力ストリップライン412と、第1の出力ストリップライン414及び第2の出力ストリップライン416とを含む。第2のバラン回路は、第1の側の反対側にある基板の第2の側から延在する第2の入力ストリップライン422と、第3の出力ストリップライン424及び第4の出力ストリップライン426とを含む。第1の入力ストリップライン412及び第2の入力ストリップライン422は、ミキサ400の第1の入力ポート及び第2の入力ポートとしての役割を果たす。出力ストリップライン414、416、424及び426は、ミキサの動作を制御する(例えば、第1のバラン回路及び第2のバラン回路の出力周波数を混合する)スイッチ又はスイッチのような回路(例えば、クロスオーバリングクワッドダイオードIC)430に電気的に接続される。スイッチ430は、2つのラインを介してミキサ400の出力を与え、2つのラインは、出力ポート432において1つのラインに合流する。図7の例では、出力ポート432は、第1の側と第2の側との間にある基板401の第3の側に位置する。
【0048】
図5のバラン回路300の設計と同様に、ミキサ400の入力ストリップラインはそれぞれ直線であり、出力ストリップラインはそれぞれ曲げられる。しかしながら、本発明の範囲内の他のミキサは、異なる屈曲部を有する他の設計を利用することができる。
【0049】
このミキサ400の幾つかの態様は、所望の変換損失(すなわち、無線周波数(RF)から中間周波数(IF)への変換損失)特性を達成するために、(上記のように、個々のバラン回路の対称な特性に加えて)対称に形成される。それらの態様は、限定はしないが、ミキサ400がスイッチ430から出力ポート432まで延在する主軸Aに沿って実質的に対称な構成を有することと、第1の入力ストリップライン412及び第2の入力ストリップライン422が互いに対して鏡面対称及び回転対称の両方(例えば、それぞれ、主軸Aに対して鏡面対称及び基板の中心点の周りで回転対称)を有することと、各バラン回路のスロットラインが互いに対して鏡面対称及び回転対称の両方(例えば、それぞれ、主軸Aに対して鏡面対称及び基板の中心点の周りで回転対称)を有することと、第1の出力ストリップライン414及び第4の出力ストリップライン426が互いに回転対称であることと、第2の出力ストリップライン416及び第3の出力ストリップライン424が互いに回転対称であることとを含む。さらに、第1の出力ストリップライン414及び第2の出力ストリップライン416は互いに実質的に回転対称であり、一対の対応する屈曲部415及び415’が同じ方向に曲げられることを除いて、2つのストリップラインの全て対応する屈曲部対(例えば、留め継ぎ屈曲部)が反対方向に曲げられる。屈曲部415及び415’が同じ方向に曲げられる目的は、2つの出力ストリップラインの同じ電気長を維持しながら、両方のストリップラインを、基板の反対側に接続するのではなく(図3A及び図5Aの例の場合と同様)、同じスイッチに接続することである。第3の出力ストリップライン424及び第4の出力ストリップライン426も同様に互いに実質的に回転対称である。
【0050】
図7に示されるミキサは、図5の第3の例示的なバラン回路300のうちの2つを利用する。しかしながら、それに加えて、又はその代わりに、図1A及び図3Aに示されるような他の例示的なバラン回路を利用することができる。
【0051】
本発明の1つの例示的なバラン回路の特徴は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他のバラン回路において利用できることが当業者に認識されるであろう。一例の場合、図3Aの例示的なバラン回路において利用されたテーパ付きのマイクロストリップを、他の例示的なバラン回路において利用することもできる。更なる例の場合、それぞれの出力ストリップラインにおいて利用される特定の屈曲部(例えば、図1Aにおける曲線をなす屈曲部、図3Aの場合のように屈曲部を利用しない、図5における90度の屈曲部)は、入れ換えることができ、及び/又は入力ストリップラインの場合に利用することができる。特定の開放端不連続部も入れ換えることができるか、又は他の開放端不連続部(例えば、円形、フレア等)で置き換えることができる。
【0052】
本明細書において特定の実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理及び応用形態を例示するにすぎないことを理解されたい。そのため、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に数多くの変更を加えることができ、他の構成を考え出すことができることを理解されたい。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B