(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6359700
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】屋上用目地カバー装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/68 20060101AFI20180709BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-24766(P2017-24766)
(22)【出願日】2017年2月14日
【審査請求日】2017年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110365
【氏名又は名称】ドーエイ外装有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英夫
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5296035(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地部を介して設けられた左右の躯体間の目地部をカバーする屋上用目地カバー装置であって、一方の躯体に設けられた水切りカバーと、該水切りカバーの上部にその突出端部が位置し、基端部が他方の躯体の外壁に取付けられた目地カバーと、この目地カバーの突出端部と前記水切りカバーの目地部側の端部の間に設けられた防水手段とを備え、
前記水切りカバーは、一方の躯体に固定され、かつ、上面が傾斜面状に形成された水切りカバー本体と、この水切りカバー本体の傾斜面上を左右方向にスライド移動可能に設けられ、被係合部を有する可動水切りカバーと、該可動水切りカバーを一方の躯体側に付勢する付勢手段とで構成され、地震で目地部が広くなるように前記左右の躯体が揺れ動いた場合に、前記目地カバーに設けられた係合部が前記可動水切りカバーの被係合部に当接し、可動水切りカバーを前記付勢手段の付勢力に抗して目地部側へスライド移動させる屋上用目地カバー装置。
【請求項2】
前記水切りカバー本体は、一方の躯体側の端部に下方へ突出する誘導側壁を備えていることを特徴とする請求項1に記載の屋上用目地カバー装置。
【請求項3】
前記可動水切りカバーは、その上面が傾斜面状に形成されるとともに、その先端部は水切りカバー本体の上面に略線接触状態で当接するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の屋上用目地カバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目地部を介して設けられた躯体の間の目地部を塞ぐ屋上用目地カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の屋上用目地カバー装置は、低い一方の建物のパラペットに取付けられた目地部側が上方へ突出する防水カバー支持片が形成されたクランク状の水切りカバーと、この水切りカバーの上部を覆う高い他方の建物の外壁に取付けられ、かつ、先端部が下方へ突出する側板を有する目地カバーと、この目地カバーの側板と前記水切りカバーとの間より内部に水が浸入するのを阻止する防水カバー装置とで構成されている。
【0003】
しかしながら、このような屋上用目地カバー装置では、地震によって目地部の寸法分左右方向に揺れ動く場合(目地部の幅が略0〜2倍程度になる)、目地カバーの先端部が壁面等に衝突しないためには、目地部の幅の約3倍の長さがなければ設置することができず、低い方の建物のパラペット付近に躯体の壁面等の障害物がある場合には、屋上用目地カバー装置の目地カバーが躯体の壁面等(障害物)に衝突するという問題点があった。
その結果、目地カバーや躯体の壁面等が損傷してしまう、又は、目地部を十分に覆う寸法の目地カバーを設置できず、地震によって目地部が広くなった場合には、目地カバーと水切りカバーとの間に隙間が開いてしまうという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−212465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、壁面等を目地部付近に有する躯体にも設置可能で、確実に目地部をカバーすることができる屋上用目地カバー装置を提供することを目的としている。
【0006】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の屋上用目地カバー装置は、目地部を介して設けられた左右の躯体間の目地部をカバーする屋上用目地カバー装置であって、一方の躯体に設けられた水切りカバーと、該水切りカバーの上部にその突出端部が位置し、基端部が他方の躯体の外壁に取付けられた目地カバーと、この目地カバーの突出端部と前記水切りカバーの目地部側の端部の間に設けられた防水手段とを備え、前記水切りカバーは、一方の躯体に固定され、かつ、上面が傾斜面状に形成された水切りカバー本体と、この水切りカバー本体の傾斜面上を左右方向にスライド移動可能に設けられ、被係合部を有する可動水切りカバーと、該可動水切りカバーを一方の躯体側に付勢する付勢手段とで構成され、地震で目地部が広くなるように前記左右の躯体が揺れ動いた場合に、前記目地カバーに設けられた係合部が前記可動水切りカバーの被係合部に当接し、可動水切りカバーを前記付勢手段の付勢力に抗して目地部側へスライド移動させる。
【発明の効果】
【0008】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、目地部が広くなるように地震で左右の躯体が揺れ動いた場合に、前記目地カバーの突出端部に設けられた下方へ突出する係合部が前記可動水切りカバーの被係合部に当接し、可動水切りカバーを目地部側へスライド移動させることができる。
したがって、水切りカバー部分の寸法を小さくすることができ、壁面等を目地部付近に有し、壁面等まで目地部の3倍以上の寸法を確保できない躯体にも設置することができる。
(2)また、可動水切りカバーが目地部側へスライド移動するので、地震で左右の躯体が揺れ動いた場合であっても目地部に隙間が生じることなくカバーすることができる。
(3)請求項2に記載の発明においても、前記(1)〜(2)と同様な効果が得られると共に、確実に下方へ排水することができ、雨水等が水切りカバー本体の取付部に入り込むことを防止できる。
(3)請求項3に記載の発明においても、前記(1)〜(2)と同様な効果が得られると共に、可動水切りカバーの先端部が水切りカバー本体の上面と略線接触状態で当接するため、左右方向にスライド移動する際の摩擦抵抗を小さくすることができる。
したがって、スライド移動をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1乃至
図9は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図10乃至
図12は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
【
図1】第1の実施形態を示す屋上用目地カバー装置の平面図(通常時)。
【
図8】地震で目地部が狭くなった正面視側からの動作説明図。
【
図9】地震で目地部が広くなった正面視側からの動作説明図。
【
図10】第2の実施形態を示す屋上用目地カバー装置の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
図1乃至
図9に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は目地部2を介して設けられた一方の躯体3及び他方の躯体4間に設置された屋上用目地カバー装置である。
なお、左右方向とは
図1(平面視)における左右方向であり、前後方向とは
図1における上下方向、上下方向とは
図2における上下方向をいう。
【0011】
また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。
【0012】
本実施形態の屋上用目地カバー装置1は、
図1乃至
図3に示すように、一方の躯体3のパラペット8に設けられた水切りカバー5と、該水切りカバー5の一方の躯体3側の端部付近にその突出端部6aが位置し、他方の躯体4の外壁4aに取付けられた目地カバー6と、この目地カバー6の下方へ突出する突出端部6aと前記水切りカバー5の目地部側の端部の間に設けられた防水手段7とで構成されている。
【0013】
水切りカバー5は、
図4に示すように、水切りカバー本体9と、この水切りカバー本体9上を左右方向にスライド移動可能に設けられた可動水切りカバー10と、該可動水切りカバー10を一方の躯体3側に引っ張るように付勢する付勢手段11とで構成されている。
【0014】
水切りカバー本体9は、
図5に示すように、一方の躯体3の目地部2側の上面、本実施形態においては一方の躯体3のパラペット8の上面に固定され、上面が傾斜面状に形成されている。この水切りカバー9の一方の躯体3側(目地部2の反対側)の端部は、パラペット8の内側壁面に当接するように、下方へ突出する誘導側壁9aを備えている。
この水切りカバー本体9は、パラペット8の上部に複数本のアンカーボルト等で、所定間隔を隔てて複数個設けられた水切りカバー取付具23を介して方の躯体3のパラペット8の上面に固定される。
【0015】
可動水切りカバー10は、
図6に示すように、その先端部10aが前記水切りカバー本体9の傾斜面状の上面に当接した状態で左右方向にスライド移動可能に設けられており、目地部2側の側面には、略垂直に上方へ突出する被係合部12を有する。
可動水切りカバー10は、その上面が傾斜面状に形成されており、その先端部10aは水切りカバー本体9の傾斜面状の上面に略線接触状態で当接するように、例えば、より急角度の傾斜面となっている。
【0016】
可動水切りカバー10は、目地部2側の端部に下方へ延在する板状の側壁10bを備えており、この側壁10bの下端部付近には付勢手段11が設けられている。可動水切りカバー10は、この付勢手段11によって一方の躯体3に取り付けられる。
【0017】
このように水切りカバー5を水切りカバー本体9及び可動水切りカバー10から構成することにより、水切りカバー5の左右方向の寸法を短くしても、地震による揺れ動きを吸収することができ、左右の躯体3、4の間の距離が目地部2の幅の約3倍以下となるようなスペースの限られた場所であっても、設置することができる。
【0018】
付勢手段11は、一方の躯体3の壁面に形成され、左右方向に延在する挿入孔13と、可動水切りカバー10の側壁10bに設けられ、該挿入孔13に左右方向にスライド移動可能に挿入される取付軸14と、該取付軸14を一方の躯体3側へ引っ張る引きバネ15とで構成されている。なお、この挿入孔13と取付軸14に脱落防止用のストッパー等を設けてもよい。
【0019】
目地カバー6は、他方の建物4の壁面に複数本のタッピングビス等によって所定間隔で固定された複数個の目地カバー支持金具24に支持されるとともに、他方の躯体4の壁面に取付端部が固定され、目地部2をカバーするものである。この目地カバー6は、
図7に示すように、上面が傾斜面状に形成されており、その突出端部6aは、本実施形態においては水切りカバー5(水切りカバー本体9)の一方の躯体3側の端部付近に位置する。また、目地カバー6の突出端部寄りの部位には略垂直に下方に突出する係合部16が設けられている。この係合部16は、後述する防水シート18よりも目地部2側(他方の躯体4側)に設けられることが望ましい。
【0020】
なお、目地カバー6の前後方向の両側には、ヒンジ部材20を介して回動する側部カバー板21が設けられている。また、この側部カバー板21の下部には、左右方向に伸縮する壁面用目地装置22を設けることが望ましい。この壁面用目地装置22は公知の壁面用目地装置を用いることができるので、ここではその説明は割愛する。
【0021】
防水手段7は、本実施形態においては、目地カバー6の突出端部6a側の底面に設けられ、内包する重り17によって下端部が常時水切りカバー5の上面に当接する防水シート18で構成されている。この防水シート18は、水切りカバー本体9又は可動水切りカバー10の上面に接触しており、雨水等がこの防水シート18よりも目地部2側へ侵入することを防止している。
【0022】
ところで、本実施形態においては、防水効果を高めるために、目地カバー6の係合部16の下端部に水切りカバー本体9と通常状態で当接するゴム製のカバー片19を備えている。
【0023】
地震で躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が狭くなると、
図6に示すように、目地カバー6が一方の躯体3側へ突出するようにスライド移動し、地震による揺れ動きを吸収する。
【0024】
地震で躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が広くなると、
図7に示すように、目地カバー6の係合部16が可動水切りカバー10の被係合部12を押圧し、可動水切りカバー10が他方の躯体4側へスライド移動する。このように可動水切りカバー10がスライド移動することにより、目地部2が開口することなく地震による揺れ動きを吸収することができる。
【0025】
地震による揺れ動きが終了すると、目地カバー6は通常時の位置に復帰するとともに、可動水切りカバー10も付勢手段11の引きバネ15の付勢力によって通常時の位置に復帰する。
【0026】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、
図10乃至
図12に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
図10乃至
図12に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、目地部側の端部に防水シート取付部19を備えた可動水切りカバー10Aを用いた水切りカバー5Aとし、該防水シート取付部25と目地カバー6の突出端部6aの間に防水シート18Aを架け渡すように設け、該防水シート18Aを保持する防水シート保持装置26を用いた防水手段7Aにした点で、このような屋上用目地カバー装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0027】
なお、本発明の実施形態においては、可動水切りカバーを付勢する付勢手段として引きバネを用いるものについて説明したが、他方の躯体の壁面に押しバネを備え、可動水切りカバーの側壁を一方の躯体側へ押圧するように付勢してもよい。
【0028】
また、本発明の実施形態においては、パラペット等の躯体に直接付勢手段の挿入孔を形成するものについて説明したが、パラペット等の躯体の壁面にブラケット等で挿入孔を有する筒部材を固定し、この筒部材に取付軸及び引きバネ等を挿入し付勢手段としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は屋上用目地カバー装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0030】
1、1A:屋上用目地カバー装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5、5A:水切りカバー、 6:目地カバー、
7、7A:防水手段、 8:パラペット、
9:水切りカバー本体、 9a:誘導側壁
10、10A:可動水切りカバー、
11:付勢手段、 12:被係合部、
13:挿入孔、 14:取付軸、
15:引きバネ、 16:係合部、
17:重り、 18、18A:防水シート、
19:カバー片、 20:ヒンジ部材、
21:側部カバー板、 22:壁面用目地装置、
23:水切りカバー取付具、 24:目地カバー支持金具、
25:防水シート取付部、 26:防水シート保持装置。
【要約】 (修正有)
【課題】確実に目地部をカバーすることができる屋上用目地カバー装置を提供する。
【解決手段】屋上用目地カバー装置1は、一方の躯体3に設けられた水切りカバー5と、水切りカバーの上部にその突出端部が位置し、基端部が他方の躯体の外壁に取付けられた目地カバー6と、この目地カバーの突出端部と水切りカバーの目地部側の端部の間に設けられた防水手段7とを備え、水切りカバー本体9の傾斜面上を左右方向にスライド移動可能に設けられ、被係合部を有する可動水切りカバーと、可動水切りカバー10を一方の躯体側に付勢する付勢手段11とで構成され、地震で目地部が広くなるように左右の躯体が揺れ動いた場合に、目地カバーに設けられた係合部16が可動水切りカバーの被係合部12に当接し、可動水切りカバーを付勢手段の付勢力に抗して目地部側へスライド移動させる。
【選択図】
図1